タグをめぐる話
(オリジナル投稿 2008/7/19)☆
Trados を使うと少なくとも処理が簡単になる点として、タグの処理を挙げることができます。HTML や XML などのいわゆるマークアップ言語系ファイルをネイティブに扱う場合には、たとえばテキストファイルのまま扱うより、タグを壊してしまう危険性がはるかに少なくなります。
もっとも、この恩恵を受けるのも結局はローカライズや IT 翻訳が中心になるわけで、それ以外の分野には特にありがたみのない機能だとも言えます(IT 以外の分野でも FrameMaker マニュアルは人気があるようで、それをコンバートした STF(RTF)ファイルというのも Trados が得意とするファイル形式のはずなのですが、これについてはまたいろいろと問題点があるので、その話はまたいずれ)。
ここで書きたいのは、そのタグ処理機能のことではなく、ある翻訳者さんとのマークアップ言語ファイルをめぐるやりとりについてです。
初めにお断りです。ときには意外と狭い業界だったりもするので、もし以下の話にお心当たりのある方がいらっしゃいましたら、もう時効ということでご容赦いただきたいと思います。
私が翻訳会社に勤務していた頃の話です。あるとき非常に優秀な翻訳者さんの応募があり、もちろん即採用となってさっそくジョブを打診したのですが、初回からいきなり断られてしまいました。
依頼内容は HTML 形式ヘルプの翻訳だったのですが、「タグ処理その他、翻訳に直接関係のない "作業" が多すぎる。私は翻訳者なので、純粋に文章の翻訳なら引き受けるが、それ以外は引き受けられない」というのが、受注不可の趣旨でした。
私も社内の PM もこの反応に最初は驚いたのですが、よく考えてみれば、翻訳の腕に自負があってそれなりの実績も残している人なら、こういう方針を貫くのも当然といえば当然なのでした(と同時に、ローカライズ業務というものの認知度の低さを感じる出来事でもありましたが)。
★HTML や XML のタグを理解したうえで、その処理も翻訳者が行う★
のかどうか、実はローカライズベンダーの中でもその方針は分かれているようです。翻訳者にはタグをすべて削除したファイルを渡して翻訳だけしてもらい、戻ってきた内容を社内でマークアップファイルに戻すというベンダーもあれば、タグ処理を原則的にすべて翻訳者に委ねるというベンダーもあります。比率としてどちらが多いのか、私は知りません。
私が在籍していた会社はたまたま後者だったので、タグ処理(や関連の検証作業)を翻訳者が行うのは当たり前と思っていましたし、私はそういった作業が嫌いではなかったのですが、ローカライズ以外の翻訳者さんから見れば、「そんなのは翻訳者の仕事じゃない」というのも、しごく当然の意見だろうと思います。
ローカライズというのがそれくらい特殊な世界であって、Trados が現在もっとも真価を発揮しているのがその特殊な業界である、ということは承知しておくべきでしょう。
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