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2011.08.06

翻訳支援ツールのインターフェース


翻訳支援ツールのインターフェースは、大きく言って、

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このように原文と訳文が縦に並ぶパターンと、

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こんな風に原文と訳文が横に並ぶパターンがあります(色付けに特に意味はありません)。ここでは、前者を「V 型」、後者を「H 型」と呼ぶことにします。

すでにご存じのように、Trados の場合は 2007 までずっと V 型でしたが、Studio 2009 から H 型に移行しました。SDLX は昔から H 型です。

これって、どっらが使いやすいんでしょうか。私個人は --- 慣れの問題かもしれませんけど---、V 型のほうが原文と訳文を見比べやすいし、語句レベルの見落としなども減ると感じているのですが。

V 型と H 型のどちらを採用するか。これは当然、Trados や SDLX のような市販アプリケーションだけでなく、Omega-T のようなフリーウェア系でも、あるいは大手 IT クライアントが社内で使っている --- 表立って名前を言うこともふつうは御法度とされている --- 専用ツールでもつきまとう問題です。

好みによって V 型/H 型を選べたら話は簡単だと思うのですが、そういうツールはまだひとつも出てきていないようです。と言っても、翻訳支援ツールって実はもうたくさんあって、私が知っているのはそのごく一部にすぎません。もし V/H 選択可能なツールがあったら、ご紹介ください。

以下、私が直接知っている支援ツールの一部を挙げておきます。

Trados
2007 までは V 型。Studio 2009 から H 型。


SDLX
H 型。


Idiom Desktop Workbench
H 型。


A 社のツール
変則型。
このツール、10 年以上前にちょっと使ったことがあっただけでしたが、最近また動かす機会がありました。記憶の中では V 型だったのですが、実際には違ってました。原文と訳文が別々のフィールドになっているのではなく、一見するとただのエディタ上で、アクティブなセグメントだけが編集可能になり、メモリーを参照しながら上書きするという形式です。私にはイマイチ使いにくいのですが、ふつうに上書き翻訳している感覚に近いのかな。よくわかりません。


B 社のツール
V/H 併用型。
同じインターフェースの中に、原文と訳文を示すテーブル形式のセクション(H 型)と、原文と訳文が縦に並ぶ編集セクション(V 型)が同時に表示される形式。

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前後関係がテーブルで見やすくなっている一方、実際の翻訳作業は V 型部分で行えるので、個人的にはけっこう気に入っています。しかもこのツールの場合、中間ファイル(バイリンガル形式でこのアプリケーションが使うファイル形式)が XML ファイルなのですが、xliff などよりずっと見やすい形になっていて、加工操作なども簡単。こういうシンプルなアーキテクチャって好感が持てます。

ただし、このツールで扱えるターゲットはやはりこの会社独自のファイル形式に限られるようで、一般のファイルに対する汎用性はあまりなさそうです。


C 社のツール
V/H 混在型。

B 社のように V 型と H 型が同時に表示されるのではなく、最初は H 型のグリッド表示になっており、セグメントを選択すると別の編集ウィンドウが開き、その編集ウィンドウは V 型になっている。混在型というより混乱型と言いたくなるような困りもののインターフェースです。しかも、メモリーからの候補は編集ウィンドウで別タブに切り替えなければなりません。

こいつについては、そのほかにも文句はたくさんあるのですが、詳しく書くとマズいかもしれないのでいちおう自粛しておきますw

IT 業界の大手各社が翻訳支援ツールを自社開発してしまうというのは、発想としてはよくわかります。発端はおそらく、ドキュメントの翻訳ではなくソフトウェアリソース、つまり UI 翻訳の必要性にあったのだろうと推察されます。

よく言われるように、UI をそれだけで訳すのはなかなか大変です(文脈がないので)。どうしたって、翻訳後にはそれを実際のアプリケーション画面に表示してみて、適切かどうか検証するプロセスが必要になります。となれば、翻訳後のファイル形式なども自社アプリケーションのリソースとして使いやすいほうがいいに決まっています。ファイル形式でも文字列操作でも、市販製品をカスタマイズするより自分ちで開発しちゃったほうが早いし小回りもきく、そう考えたのだと思います。

でも、大手として開発力があればあるほど、翻訳者の発想とはかけ離れたツールが出来上がってしまう、そんな気がします。翻訳者の視点 --- まあそれも個人差があるでしょうけど --- で考えればありえない、そんな作りや動作があまりにも多いですから。

そんなわけで、世に言う「翻訳支援ツール」はけっして「翻訳」を支援してくれるものではなく、単に翻訳工程の効率化 --- しかもたいていは開発側にとっての効率 --- とコストダウンを図るための、「翻訳作業支援ツール」にすぎず、まして社内専用ツールとなれば、その度合いはますます強くなる、ということのようです。

「翻訳作業」ばっかりやってて「翻訳」ができなくならないように、くれぐれも注意しなければなりませんね。自戒自戒。

Omega-T とか MemoQ とか、実は試してみなければならない支援ツールがまだまだたくさんあります。それらは、もしかするともう少し「翻訳支援」になっているのでしょうか。実際に使っている方のご意見を聞いてみたいところです。

06:02 午前 ローカリゼーション, 関連ツール |

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コメント

私の場合、原文にも訳文にも(正面から)正対していたい(そうでないと何となく落ち着かない)ということで、どうしてもV形でないと嫌だ・・という派ですw なので、従来のTrados方式が一番。

投稿: Yoshi | 2011/08/06 7:17:55

> どうしてもV形でないと嫌

私も同様です。2011以降でもしレイアウト選択式になったら、かなりウケると思うんですよね。

投稿: baldhatter | 2011/08/16 0:14:59

2007 およびそれ以前のユーザでした。
1 つのファイル内の文章(セグメント)を頭から翻訳するのではなく自由に前後を行き来しながら翻訳するために、SDLX を(それがH型であることを 1 つの理由として)10年以上使い、SDLX の TM を Trados の TM に変換していました。
2009 以降はH型とのこと知りませんでした! 2011 に移行する気になりつつあります。

投稿: mt | 2011/10/25 23:29:39

> 自由に前後を行き来しながら翻訳するために

そうなんです。一覧性とか、ファイル全体での移動ということを考えると H 型にもメリットはあるんですよ。特に、今回の2011にも、ステータス別に必要なセグメントだけをフィルタリングして表示する機能がありますが、そのためには H 型にするしかありません。

だから、やはり理想は併用型、または切り替え可能型かなぁ。

投稿: baldhatter | 2011/11/04 8:54:47

こんにちは。Isometryという翻訳支援ツールは、V型とH型が選べます。
(http://app.isometry-trans.com)

投稿: Toshiya | 2012/10/18 13:52:15

Toshiyaさん、コメントありがとうございます。

Isometryって、名前だけは聞いたことがあります。さっそくリンク先に行ってみたのですが、トップページでいきなり

「Googleアカウントでログインが必要です」

って、ちょっとイヤですね。まるでスパムサイトみたいで、感心しません。

投稿: baldhatter | 2012/10/18 18:38:51

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