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2010.12.16

20周年記念 JTF 翻訳祭 - ご報告

20周年記念ということで、JTF としてはほぼ初めてのマルチセッション形式を採用した今年の翻訳祭。来場者数は例年の 2 倍近く、夕方からの交流パーティーまで含めて大盛況でした。

私が参加したセッションについて簡単にご報告しておきます。

基調講演「翻訳研究と実務の接点」水野的氏

前半はふつうにアカデミックな展開でしたが、後半からは実例を交えて実に興味深い内容でした。どんな分野にも、やはり「研究」と「実践」という 2 つの相があるもので、私自身は --- たぶん現役翻訳者さんの多くもそうだと思います --- 前者にほとんど接したことがありませんでした。

このセッションで紹介されたような「翻訳研究」の実践的応用が進むと、機械翻訳と人間翻訳の仲立ちが進むのかもしれない、と個人的には思いました。そんな空想は別にして、テーマとレーマ、結束性、連続主題と前進主題といった考え方は、翻訳者の今の仕事にもダイレクトに役立つはずです。

実は 13 日はほぼ朝まで仕事をしていて 2 時間くらいしか寝てなかったのですが、がんばって基調講演から聴くことにして正解でした。


D-1「翻訳者だからできる!世界に向けたアプリの開発と販売」西野竜太郎氏

西野さんについては、ブログ(IT翻訳者Blog)を以前から拝読していて、「翻訳」だけではない広い視点を持つ翻訳者さんとして注目していました。

今回の講演内容も、つきつめて言えば「翻訳者が翻訳以外に見出せる可能性」ということで、同じ IT 分野を扱う翻訳者としては、いろいろと共感できる点がありました。直接お会いするのは初めてでしたが、お人柄もおおむねブログから想像していたとおりでした。

実は、西野さんについては、準備段階で委員の河野弘毅さんとお会いしたとき、「西野さんという人に講演をお願いしてみようと思うけど、どうかな」と尋ねられ、そのときすでにブログの読者だった私が「はい、ぜひお話を聴いてみたいし、会ってみたいです」と推した、という経緯がありました。


その次のコマ、本当はジャンクリストフさんの D-2「No.1フリー翻訳支援ツール OmegaT 入門」を聴きたかったのですが、控え室に行ったら SDL の並木さんがいて、ちょっと話し込んでいるうちにスライドの修正とかそんな話になり、セッションには参加できませんでした。

C-3&4 について別エントリで書きます。


D-5「ポストエディット入門2010」斎藤玲子さん

Buckeye さんの講演はもちろん気になったのですが、すでに超満員と聞いていたので遠慮しました、というのもなかば本当ですが、ポストエディットはもちろん気になる話。

オラクルさんで機械翻訳 + PE というプロセスが始まったという話は周辺でも聞いていなかったのですが、伺ったところ、やはりまだ社内検証の段階とのこと。ルールベースと統計ベースの長所・短所、それぞれに対して PE を行うときの長所・短所、フルエディットとライトエディットなど、なるほど「入門」的な内容でした。

ちなみに、Buckeye さんは基調講演以外すべて私と違うセッションに参加なさっています。

リンク: 20周年記念JTF翻訳祭: Buckeye the Translator

リンク: 「機械翻訳時代に翻訳者の生きる道」@20周年記念JTF翻訳祭: Buckeye the Translator

Buckeye さんご自身のセッションは当然ながら立ち見が出るくらい大盛況だったそうです。

今回の翻訳祭は、機械翻訳を含めた「支援ツール」が大きな柱のひとつだったわけですが、その中にあって「機械翻訳時代に翻訳者の生きる道」というテーマがこれほど注目される、そのこと自体が今回のテーマ設定に対する答えのひとつなのだろうと思います。そして、産業翻訳業界の全体が大きな転換期を迎えつつある証拠でもあります。

02:02 午後 その他 |

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コメント

ご推薦いただいていたんですね。
どうもありがとうございます!
ご期待に沿えるような出来になっていたらよいのですが…。

投稿: 西野 | 2010/12/17 0:49:29

西野さん、コメントありがとうございます。

いえいえ、「推薦」というほど大袈裟なものではないんですよ。河野さんとしては、西野さんに声をかけるというのは既定の事実だったんだと思います。私には確認してきた程度というか、示し合わせるまでもなく二人とも西野さんのブログを知っていたというのが、奇遇というかむしろ当然というか、そんな間合いだったんですよ。

投稿: baldhatter | 2010/12/17 20:50:53

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