翻訳前後の処理 - その2「翻訳」
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ログファイルの説明が終わったところで、翻訳前後の処理の 2 番目、「翻訳」です。翻訳といっても自動翻訳をするわけではなく、動作はこんな感じです。
1. 翻訳メモリーを検索する。
2. 指定したマッチ率以上の既訳があればセグメントを作って訳文を埋め込む。
3. 既訳がない場合、原文-訳文のセグメントを作るかどうかはオプションで選択できる。
4. 既訳がない場合に、用語集の対訳だけを埋め込むオプションも選択できる
[解析](アナライズ)
[ツール]→[解析]を選択し、各オプションを指定、ファイルを選択して実行します。
以下、オプションの使い方です。
[% 以上の一致精度]
通常は、デフォルトの「100%」で使います。つまり、「完全一致の既訳だけ訳文を埋め込む」ということです。
このように原文-訳文のセグメントが作られ、100%一致の既訳が埋め込まれます。
ここの数値フィールドを変える状況は、いくつか考えられるのですが、今回は省略します。
[識別できない文を分節化]
このオプションをオフにしておくと、上記の埋め込みが行われない、つまり既訳のない箇所は原文のままになります。オンにすると、下の図のように既訳のない箇所も「原文-原文」の形でセグメントが作られます。
このオプションの使い方は、ファイルやメモリーの状況によって異なります。たとえば、100 既訳率が圧倒的に高く作業対象がごくわずか、という場合にはこれをオンにすれば、マッチ率を示す「0」を検索すれば済みます。また、IT 翻訳ではよくあることですが、原文の文字列を訳文中でも使うことが多いような場合は、やはりオンのほうがいいかもしれません。
私の個人的な趣味でいえば、状況にかかわらずオフのほうが好きです。Word の場合は埋め込まれたフォントを引きずってしまいますし、この状態ではセグメントの拡張/縮小に手間がかかるからです。なにより、作業中に確定した訳をそれ以降で再利用するとき、いちいち[取得]する手間が増えます。
[変更された翻訳を更新]
これは、まっさらの原文ファイルではなく翻訳途中のファイルに対して[翻訳]処理を実行するときに意味を持つオプションです。なんらかの理由で、ファイル上の訳文とメモリー内の対訳が一致しない状況があります(たとえば、ファイル上だけで用語を一括置換し、その変更をメモリーに登録していない場合など)。
このようなとき、ファイルの内容をイキにしてメモリーを更新する場合は[TMを更新]、ファイルのほうを更新する(メモリーの訳に戻す)場合は[文書を更新]を選択します。デフォルトは[無視]で、変更箇所については何も処理されません。
[既知の用語を翻訳]
埋め込みできる既訳がないときに用語集の訳語を埋め込む機能です。実はこの機能、今まで自分では使ったことがなく、フォーラム勉強会のために使ってみました。SimplyTerms にこれと似た機能があるので、案の定フォーラムではこの機能を紹介する場面がありました。
当然ながら、この機能を使うには、対応するバージョンで作成された MultiTerm 辞書が必要です。デフォルトは[無視]、つまり用語の埋め込みを行いません。
[置換]を選択すると、用語集にある対訳が埋め込まれます。
このように、セグメントの訳文部分に対訳が青字で埋め込まれます。このような英和混在の形が見やすいかどうか、フォーラムでも意見が分かれていたようです。
[挿入]を選択すると、用語集が上記のように混在で埋め込まれるのではなく、Word のコメントとして挿入されます……が……
実は、この[挿入]よりもっと笑える結果もあることが、今回やってみて初めてわかりました。
[置換]を選択すると、「セグメントの訳文部分に対訳が青字で埋め込まれる」と書きましたが、つまりこの機能を使うときには必ず前述の[識別できない文を分節化]もオンにしておかなければならない、ということです。
[識別できない文を分節化]をオンにせず、[既知の用語を翻訳]で[置換]を選択すると、こんな風にセグメントを作らず、原文上でいきなり対訳だけを置換してしまいます。これでは、原文がオリジナル状態ではなくなってしまうので、通常の Trados 作業には使えません。
※「Trados を使用せず Word ファイルを上書き翻訳するが、用語集の用語だけは埋め込む」という場面があれば使えるのかもしれませんけど。
こういうときは、[置換]を選択すると[識別できない文を分節化]も自動的にオンになる、というのが親切設計だと思うのですが、インターフェース設計にそこまで気が回っていないところが、やっぱり Trados というところでしょう。
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