« つづきの話 | トップページ | タグをめぐる話 »

2009.09.16

普及の背景

(オリジナル投稿 2008/7/17)☆

前エントリの最後に、誤った Trados 導入のことを書きましたが、そういったことも起きかねない、今の業界の悪しき風習というものがあります。

Trados は本来、ローカライズのような特殊な分野を限定的にターゲットとして開発されてきたツールのはずです(さすがにローカライズや IT だけではありませんが)。それが、まるで産業翻訳全般で必須のツールであるかのような扱いをされている。そんな状況になってしまった要因は主に 2 つあると思っています。

1. メーカー側が巧みな営業を展開してきた
2. ドキュメンテーションコスト削減のニーズに合致していた

私が 1. のように考えるひとつの理由は、「対応フォーマットこそ拡張を続けているものの、基本機能(特に構文解析エンジン)は初期バージョンからほとんど進歩していない、それにもかかわらずこれだけ普及してきた」という点です。これほど進歩しないアプリケーションも珍しいのではないかと、個人的には感じています。

2. については、Trados が普及してきたこの 10 年ほどというのが、ちょうど景気の悪くなっていく時期に当たり、IT 系に限らずどの企業でもドキュメンテーション部門のコスト削減は大歓迎という風潮があったという状況があります。「翻訳資産の再利用」という謳い文句が、それにうまく一致したわけです。実際にも、ドキュメンテーションコストを削減できた事例は少なくなかったでしょう。

ところが、そういう営業や成功事例に動かされたと思しき会社が、その業種や業態、ドキュメンテーション practice の差異などを無視して「Trados を導入したい」と相談してくる例を、私も勤務時代にたくさん見てきました。そういう会社を見ていると、実は今でも、導入の成果をあまり考えずとにかく Trados を導入してしまったというところがありそうです。

と、そんなことを書きつつ Buckeye さんのブログを覗いたら、最大の問題点はもうご指摘済みでした(今朝ですね)。

翻訳メモリとか機械翻訳ソフトとかの現状について私が問題視するのは、「功罪半ばするソフトだ」という情報がない点です。「こんなにいいソフトだ」「これからは、こういうソフトが使えないとダメ」という話ばかりで、訳文を作るという翻訳者にとって一番コアな部分にどういう悪影響があるのかというデメリットの話は誰も言いません。せいぜいが「操作がややこしくて覚えるのが大変」くらいで。

もうひとつの問題点として私は「ヨーロッパ言語中心の発想ばかりである」点も挙げたいと思いますが、その話はまた別の機会に。

09:33 午前 翻訳メモリー |

はてなブックマークに追加

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13481/46225320

この記事へのトラックバック一覧です: 普及の背景:

コメント

コメントを書く

## コメントは承認制なので、公開されるまでに時間のかかることがあります。



(必須ではありません)