# 『翻訳英和辞典』補完計画 5 - apparently
apparently pp.25-26
このシリーズで外すことのできない単語ですが、なかなかいいタイミングです。
先日2/4のセミナーで、私が当日の課題としてarguablyを出したら、深井裕美子さんがまっ先に
「arguably、イヤ~。apparentlyと同じくらいイヤ~」
と叫びました。そのapparentlyが、本書でも取り上げられています。
どのような文脈に使われていても,この語を「明らかに」と訳す人が(英文科の学生にも翻訳者にも)多いが,要注意。『プログレッシブ』は、第3版になって,「『明らかに』の意で用いるのは((まれ));evidentlyが普通」と的確な説明をつけた。
続いて、『グランドセンチュリー』(三省堂、2000年)からも「(実際にはともかく)外見上は,見たところ……らしい(seemingly)」という語義も紹介されています。
このシリーズ、いつも記事を書きながら手元の辞書をいろいろと引いているわけですが、今回は引く前に予想してみます。
おそらく、(今はもう)ほとんどの辞書がこうなっているんじゃないでしょうか。
1 ADV ADV with cl/group, ADV before v vagueness
You use apparently to indicate that the information you are giving is something that you have heard, but you are not certain that it is true.
* Oil prices fell this week to their lowest level in fourteen months, apparently because of over-production.
2 ADV ADV with cl/group, ADV before v
You use apparently to refer to something that seems to be true, although you are not sure whether it is or not.
* The recent deterioration has been caused by an apparently endless recession... 【COB】
外見、という観点はまったくないのがおもしろいですね。1. は「伝聞」、2. は「確度の不足」というところでしょうか。
1. [sentence adverb] based on what you have heard is true, although you are not completely sure about it:
・Nelson apparently committed suicide. ・Apparently, it was a really good party.
2. according to the way someone looks or a situation appears, although you cannot be sure:
・Campaign funds have been used for apparently illegal activities. 【LDOCE5】
Longmanも、1. は同じです。2. がCOBUILDとは違い、「外見や様子」という解釈になっています。
1 based only on what you have heard, not on what you are certain is true
2 used for saying what seems to be true when people do not yet know all the facts of a situation 【MED2】
用例は省きました(以下同)。Macmillanの語釈もCOBUILDとほぼ同じですが、yetと入っているところが、おもしろい。たしかに、「まだよく知らないこと」について言う場面は多そうです。
1 見たところでは, 見掛けは, 外見上, どうも…らしい (seemingly).
2 《まれ》 明白に (evidently).
3 《廃》 公然と (openly), はっきりと. 【新英和大】
【1】《文修飾語》 外見上,見たところでは,どうも…らしい:
【2】明らかに,明白に
*この意味では通例 evidently を用いる.【RHD2】
1 [しばしば文修飾](実際はともかく)見たところは…らしい《◆only, merely と共に用いることが多い;cf. evidently, obviously》
2 明らかに∥(Very)
3 [文修飾](予測・見かけとは違って)実際は(in fact) 【G大】
三大英和は、さすがにしっかりおさえています。『新英和大』に《廃》語義 3. が載っているところは、「Shakespeare から IT まで」という同書のモットーどおりです。
『ランダムハウス』には、ラベルはありませんが語法の注意書きがあります。ちなみに、RHD2の親辞書と同内容の『Random House Webster's Unabridged Dictionary』には、形容詞apparentしか載っていませんでした。
『ジーニアス大』が語法を詳しく書いているところにも、この辞書の特徴がよく出ています。
『リーダーズ』は、第2版になかった《まれ》というラベルが第3版で追加されいます。
最後に紹介するのは、これ。
どうですか、この詳しさ!
圧倒的じゃないか、ウィズダムは!
と、思わず銀河万丈の声で叫んでしまいたいほどです。
[推測]
[疑念]
[矛盾]
のように大まかな意味が書かれていますが、このスタイル、私はけっこう好きです。「英和辞典の使い方」を見ると、
機能語や多義の項目,談話辞などでは,語義の冒頭に[[ ]]に大まかな意味・用法を示す.
と説明してありました。
学習英和辞典の良さを紹介するとき、これからはapparentlyを使うことにしましょう。
『ジーニアス英和』も、かなりのスペースを割いています。G4とG5でもだいぶ違うので、お持ちであれば比べてみてください。
◆
なお、apparently はこちらの本でも取り上げられています。
私が持っているのは、分冊だった時代のやつで、これの第1巻と第3巻に登場します。
この本の説明、河野先生とちょっと違います。お持ちの方は、見比べてみるのも一興です。
今は、合本にさらに改訂を加えたこちらが出ていますよね。
01:41 午後 『誤訳をしないための翻訳英和辞典』補完計画 | このエントリ | コメント (0)
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