2020.08.05

#『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』

ちょっとおもしろい用字用語辞典が出ました。

マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典 (三省堂)です。

私たち翻訳者が準拠する用字用語辞典といえば、

『共同通信社 記者ハンドブック』

とか

『時事通信社 最新 用字用語ブック』

が一般的ですが、「マスコミ用語担当者がつくった」と謳っているだけあって、なかなかおもしろい工夫があります。

しばらくは、これをいろいろと使ってみようと思います。

『記者ハンドブック』のように項目ごとに章立てするのでなく、ほぼすべての情報がふつうの国語辞典と同じように五十音順で並んでいます。

あ、そうそう。横書きなのも用字用語辞典としては珍しい。

2008051
まとう[◆纏う]「身にまとう」

のように常用漢字外の漢字は◆で、また

けれん[◇外連]「けれん味のない文章」

のように常用漢字外の読みなどは◇で表し、最小限の例文を「一般的な表記」のほうで示しています。このあたりは他の用字用語辞典とだいたい同じですが、漢字の使い分け情報などは記者ハンより詳しい気がします。

おさまる・おさめる
収まる・納める 中に入れる。収拾する。取り込む。良い結果を得る。
「争い・インフレ・風=が収まる / 丸く収まる / 不平が収まらない / 怒り・成果・利益=を収める / カメラに収める」
納まる・納める あるべきところに落ち着く。とどめる。引き渡す。納付・納入する。「椅子・写真・ビデオ=に納まる / 得意先に品物を納める / 税金を納める / ひつぎ・胸=に納める / 納まり返る / 歌い・聞き・見・仕事=納め」
治まる・治める[←→乱]問題のない状態になる。鎮まる。統治する。癒える。「痛み・気・せき・国=が治まる / 暴動・水・領地=を治める」
修まる・修める 人格・行いを立派にする。身につける。「身持ちが修まらない / 学業・身=を修める」

漢字の意味と使い分けの例が、このように簡潔に、かつ必要十分に書かれています。国語辞典や他の類語辞典でも、なかなかこうはいきません。簡単なコロケーション集にもなっています。

かと思うと、

マティーニ[martini][カクテル]
マナグア[Managua]ニカラグアの首都。
マツダ 日本企業。*1984年に「東洋工業」から社名変更。ロゴは「MAZDA」。

といった百科的な名詞が、ごく簡単な説明とともに(場合によっては英語の綴りも)載っています。[カクテル]というのはカテゴリー表記ですね。ちなみに、「マティーニ」は記者ハンのカタカナ語リストにも載っていますが、記者ハンには英語綴りも説明もありません。「マツダ」の説明文も、分量と加減がなかなかいい感じじゃありません?

まつもと 姓
松本 松本幸四郎(歌舞伎俳優。十代目=1973~)
松元 松元恵実(ミュージカル俳優。1988~)

代表的な日本人の姓を示した項には、主な著名人が登場します。

コロコロ|商|〔ニトムズ〕→ 粘着式クリーナー
manaca(マナカ)|商|〔名古屋交通開発機構、エムアイシー〕 → 交通系ICカード

登録商標の言い換えは、かなり充実しています。何がいいって、上の〔ニトムズ〕みたいに、商標を所有している企業が書かれているところです。これはなかなか楽しい。

ってか、「コロコロ」って商標だったんですね。「チンする」みたいな、ただの俗称かと思ってました。また、この逆に、

サイコロキャラメル *商標は「北海道サイコロキャラメル」〔明治〕

と一般名詞から商標を教えてくれる項目もあります。

誤用や俗用も載せていますが、一方的に「誤り」とするのではなく、世論調査のパーセンテージを示したうえで、○や△を付けるという方針です。

しきいがたかい 敷居が高い |世論調査|「あそこは敷居が高い」
○相手に不義理をしてしまい、行きにくい。*2008年度 42.1%
△高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい。*同45.6%
△「店構えが立派過ぎて私には敷居が高そうだ」は「気後れしそうだ」などと言い換える。「ゴルフを始めていきなりコースに出るのは敷居が高い」のように、達成するには難度が高いと言う場合は「ハードルが高い」などとする。

誤用には、こういう重言の指摘もあります。

|重|初デビュー → デビュー *debut(仏語)=初舞台。

「ソーシャルディスタンス」とか「コロナウイルス」「COVID-19」などの新語が載っているあたりは、さすがに新刊だけありますが、そのほかにも、たとえば

ディーエイチシー DHC 日本企業。*登記名は「ディーエイチシー」。DHCは旧社名「大学翻訳センター(Daigaku Honyaku Center)」の略。

こんなのまでありました。

そのほか、本書は「マスコミ」が前提なので、アクセントの表記や解説もたっぷり。たとえば、

「時」を表す言葉のアクセント

というコラムには
①「おとといは雨だった」
②「おととい受けた試験」
この2つで「おととい」のアクセントが違うことも解説されています。

ただし、「言い換え」が必要という点ではぜひ載せてほしい不快語・差別語はあまり(ほとんど?)載っていません。「外人 → 外国人」など、わずかです。

また、記者ハンにある「肩書きの付け方」とか「数字の書き方」などの情報はまったく載っていないので、記者ハンなどを完全に代用するものではありません。

かなり実用的で、それでいて、ときどきおもしろい発見がありそう。近年にない収穫です。

※記事中、|重|、|商| のように表記した箇所は、実際には丸付き文字です。

10:14 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2020.07.15

# 「おうちでレッスンシリーズ」始まります!

すでにご連絡しているとおり、翻訳フォーラムのリアルイベントも今年は中止になりました。

その代わりとして、しばらく前から過去のイベントの内容をYouTubeチャンネルでお届けしています。

side A:# 翻訳フォーラムのYouTubeチャンネル

今のところ、動画が9本アップされています。

そして、いよいよ「レッスンシリーズ」もオンラインで再開することになりました。

リンク:「最初に買う辞書・使う辞書」(翻訳フォーラム・おうちでレッスンシリーズ#1)

2007151

第1回は今月の26日(日)、午後2時から。
講師は深井裕美子が務めます。

今までのレッスンシリーズと違って、日本の

世界中どこからでも

参加できます!(時差はいかんともしがたいのですが……)

[題材・持参物について]
※以下の講義で使用した「犬のビデオ」を使います。

「犬のビデオ」って何? という方は、ぜひご参加ください。翻訳学習中でも翻訳のベテランでも、きっと「目からウロコ」の体験を味わえます。

あ、そうそう、念のため。「ビデオ」というのはあくまでも素材であって、映像翻訳に寄った講座ではありません。分野に関係なく、翻訳に必要なお話です。

「犬のビデオ」で「ああ、あれね!」と思った方、2度目でもかなりの確率で発見があるはずです。私自身、今までに3回くらい参加していますが、毎回「あぁ、なるほど」と思わされました

↑ なんか、怪しい講座の体験談みたいですが、これ本音です。

そもそも、同じ言葉を扱っても毎回なにかしら違うことを発見するって、そのこと自体、翻訳に大いに通じるところがあると思いません?

「おうちでレッスンシリーズ」は今後も、不定期ですが続く予定です。

「おうちで」がとれて、リアルの「レッスンシリーズ」を再開できる日が待ち遠しいのは確かですが、オンラインにもいろいろなメリットがあります。今後とも、ご期待ください!

05:24 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2020.06.28

# では、有料の辞書サイトだったらどこまでいける?

前回の記事、

「# 無料の辞書サイトでどこまでいける?」

の最後にまとめた総論をもう一度引用します。

無料で使える辞書サイトは―
英英は◎ 学習レベルから一般レベルまで、無料サイトだけでも十分
英和・和英は× 無料サイトだけではどうにもなりません
・国語は△ 大辞泉、大辞林は役に立ちますが、小型国語辞典は必要です

これでわかるように、英和・和英と国語を補完しなければなりません。

では、有料の辞書サイトまで広げてみたら、上記の不足分を補完して、翻訳者としていちおう恥ずかしくない

最低限の辞書環境

そろえられるのでしょうか。そろえられるとしたら、

どのくらいの投資が必要

なのでしょうか。

有料の辞書サイト一覧

まず、有料の辞書サイトにどんなものがあるか、いくらかかるのかを一覧にしてみます。料金はすべて税込みです。

ジャパンナレッジ
JKパーソナル …… 16,500円/年
JKパーソナル+R …… 22,000円/年
※JAT、JTFの会員は2割引き

研究オンライン・ディクショナリー KOD
個人スタンダード …… 6,050 円/年
個人アドバンスト …… 12,100円/年


このほか、三省堂にも有料サイトはあるのですが、今年の9/30で終了になると発表されているので今回は除外しました。

DONGRI
辞書ごとに購入。1コンテンツあたり1,000円/年前後から。

三省堂デュアル・ディクショナリー
サイト自体は無料だが、書籍辞書の購入が必要

Oxford English Dictionary
$295/year
前々回の記事で詳しく書きました。

Merriam Webster Unabridged
$29.95/year
前回の記事で軽く触れています。


最後の2つは英英の一般辞典で、ここまでは要らないという人も多そうなので除外し、国内の辞書サービスに限って見ていくことにします。

なお、前回の無料サイトにはありませんでしたが、「専門辞典」というカテゴリーも加えています。有料サイトになると、専門系の辞書も充実してくるのが特長のひとつだからです。


ジャパンナレッジ

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(クリックで拡大できます。以下同)

詳しくは、コンテンツ一覧をご覧ください。アスタリスク*を付けたコンテンツは、「パーソナル+R」で使えます。

英和・和英辞典のラインアップ:
『ランダムハウス英和大辞典』
『プログレッシブ英和第5版、和英第4版』
『ビジネス技術実用英語辞典V6』(うんのさん)*

専門辞典のラインアップ:
研究社『理化学英和辞典』*
研究社『医学英和辞典』*
小学館『SPED理工系英和辞典』*
小学館『プログレッシブビジネス英語辞典』*

国語辞典のラインアップ:
小学館『日本国語大辞典第2版』
小学館『デジタル大辞泉』
小学館『デジタル大辞泉プラス』

ランダムハウスをオンラインで使えるのは、現在ここだけです。プログレッシブは、コトバンクより版が1つずつ上がっています。うんのさんは、パーソナル+R コースでないと使えませんが、オンライン版は更新が続いています。

このほか、+R にすると各種専門辞書がぐっと増えるので、6,000円弱の差額分の価値は十分あります。+Rで増える専門辞典のうち、『プログレッシブビジネス英語辞典』は、日向清人さんも執筆に加わっている名辞典の電子版です。

国語辞典は、日国を除くと無料のコトバンクと変わりません。日国は、あればもちろん便利なのですが、さらに上級向けという位置付け。ひとまず辞書をそろえたいというニーズから考えると、翻訳者必携というほどではないでしょう。

(帽子屋よりひと言)
残念ながら、総合的には文句なくトップランクと言えるジャパンナレッジも、こと英和・和英に関しては△です。英和・和英の拡充という目的だけ考えると、お薦めからやや外れてしまいます。国語辞典も一般的には十分ですが、翻訳者の用途を考えると、まだ△です。一方、専門辞典の充実ぶりは、他のサイトの追随を許しません。


研究オンライン・ディクショナリー KOD

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アスタリスク*をつけたコンテンツは、「アドバンスト」で使えます。上のスクリーンショットで選択できないのがアドバンストのコンテンツです(私はスタンダード契約なので)。

英和・和英辞典のラインアップ:
研究社『新英和大辞典第6版』
研究社『新和英大辞典第5版』
研究社『リーダーズ第3版+プラス』
研究社『ルミナス英和・和英』
研究社『新編英和活用大辞典』*

専門辞典のラインアップ:
研究社『英和コンピュータ用語辞典』*
研究社『理化学英和辞典』*
研究社『医学英和辞典』*

国語辞典のラインアップ:
三省堂『スーパー大辞林3.0』
研究社『日本語表現活用辞典』*
研究社『類義語使い分け辞典』*

翻訳者必携の新英和・和英大辞典とリーダーズがオンラインで使えるのはここだけです。これだけでも、使う価値は十分。そのうえ、オンラインの特性を生かして、新語も定期的に追加されています(Oxford や Merriam Webster ほどの早さはありませんが)。

アドバンストコースにすると専門辞典が増える点はジャパンナレッジと同じですが、日英翻訳に欠かせない『新編英和活用大辞典』も使えるようになります。また、国語系も増えるのがKODの特長です。

『日本語表現活用辞典』は、こちらの書籍の電子版。

また、『類義語使い分け辞典』の元本はこれ。

(帽子屋よりひと言)
翻訳者必携の英和・和英をオンラインでそろえる、という条件だけ考えれば、KODは唯一の選択肢となります。こちらも、どうせならアドバンストにして専門辞典も利用できるようにするといいのかもしれません。


DONGRI

少し前に記事を書きました(# 辞書サービス「DONGRI」)。

辞書コンテンツを年間ライセンスで購入するタイプです。学習者(小中高生)がメインのターゲットなので、翻訳者ご用達のコンテンツは多くありません

ただし、どこでも電子化されていない『現代国語例解辞典』があります。それも含めて、『明鏡国語辞典 第二版』と『新明解国語辞典 第七版』もあるので、オンラインで小型国語辞典を使いたいというニーズなら、ここしかありません。

『明鏡国語辞典 第二版』1,100円/年
『新明解国語辞典 第七版』980円/年
『現代国語例解辞典』980円/年

と、お値段も手頃です。『明鏡国語』の再現性もなかなかです。

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三省堂デュアル・ディクショナリー

サイト自体は無料で、

書籍辞書を購入すれば利用できる

という変わったサービスです。『ウィズダム英和辞典』のほかにもコンテンツはありますが(多くありません)、ウィズダムのためだけに利用しても十分に元が取れるサービスです。ちなみに、ウィズダムに関しては、第2版~第4版までそろっています。

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(帽子屋よりひと言)
個人的には、ある意味、最も理想的な辞書サービスの形態だと思っています。学習英和辞典は、やはり紙で引きたいときが少なくありません。基本語などを集中的に読みたい場合などです。その一方で、オンラインの手軽さも捨てられない。その両方を満たしてくれるからです。『三省堂国語辞典 第七版』もぜひ収録してほしい。


以上が有料の辞書サイト。思いのほか少ない。ちなみに、英辞郎にもWeblioにも有料版はありますが、ちょっと趣旨が違うので今回も取り上げていません。

さて、無料で足りなかった分を、有料サイトで補完できたでしょうか。

●英和・和英辞典
まず選択肢になりそうなのは、KODのスタンダードでしょうか。6,050 円/年ですから、まだ初期投資が厳しい学習段階などでも手が届きそうです。ただし、三大英和のうち『ランダムハウス英和大辞典』と『ジーニアス英和大辞典』はあいかわらず欠けたままなので、翻訳者の辞書環境としては、ぎりぎり最低限です。

もう少し余裕があるなら、ジャパンナレッジのパーソナル+R なのですが、22,000円/年というのはかなり割高感があるでしょうか。他のヨーロッパ語もときどき扱うとか、いろいろな分野を相手にするので百科系が必要という方にはお薦めなのですが……。

学習英和は、ルミナスとプログレッシブばっかりです。ウィズダムの書籍版を買って、ぜひデュアル・ディクショナリーを使いましょう。


●国語辞典
有料まで広げても、一向にそろわないのが国語辞典です。どうも、世間的には中辞典とか大辞典があればいいだろうという認識なのでしょうか。

「辞書に限っては、大が小を兼ねない」というのは、出版社側として当然の常識のはずなのに、小型の国語辞典がどうも冷遇されています。そんななかで唯一DONGRIだけは、小型国語辞典が充実しています。『明鏡国語辞典』と『現代国語例解辞典』の2冊を使うためだけでも、利用する価値があります。


●専門辞典
専門辞典は、KODでもジャパンナレッジでも、上級コース(アドバンスト、+R)にしないと使えないようになっています。はなっから、専門辞典は投資の対象という前提のようです。


以上、前回と今回とで「無料と有料の辞書サイト」をまとめてご紹介しました。翻訳者として仕事をしていける辞書環境をそろえるには、やはりまだ足りません。

では、オンライン以外の辞書に、あとどのくらい投資すればいいのでしょうか。次の記事をお待ちください。

p.s.

個人的には、オンラインでどれだけそろったとしても、それだけで安心はできないと考えています。無料サイトは、明日いきなりサービスが終了しても文句が言えません。実際、『ランダムハウス英和大辞典』はしばらく前まで、無料のgoo辞書で使えましたが、何の予告もなく、いきなり消えてしまいました。

有料サイトでも、サービスの終了(今回の三省堂のように)もありますし、先方のサービスが落ちたり、最悪のシナリオとして自分のネット接続が不調になったりしたら、たちまち使えなくなってしまいます。

それでは、プロが使う道具

とは言えない、そんな気がします。

05:35 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2020.06.27

# 無料の辞書サイトでどこまでいける?

前回は、オンライン辞書のなかでもおそらく最も料金の高いサイトを取り上げました。そこで、今回は逆に

無料の辞書サイトで、どこまでまかなえるか

を考えてみます。オンライン辞書については、これまでも何回かご紹介していますが(参照:オンライン辞書サイトを比較してみた)、情報は毎回新しくなっているので、何度やってもいいでしょう。

なお、英辞郎とWeblioは取り上げていません。自己責任でお使いください ^^;

無料で使える辞書サイト

コトバンク

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(クリックで拡大できます。以下同)

国内の無料辞書ポータルとしては最大です。収録されている辞典・事典の一覧はこちら。更新情報も載せているので、辞書ポータルとしては良質と言えます。

【概要】
国語辞典と百科事典は充実しています。英語系は学習レベルのみ

【英語系コンテンツ】
小学館『プログレッシブ英和中辞典(第4版)』
小学館『プログレッシブ和英中辞典(第3版)』

プログレッシブの最新は英和が第5版(2012年)、和英が第4版(2011)ですが、学習辞典という目的からは問題ないでしょう。

(帽子屋からひと言)
学習英和としては悪くありませんが、さすがに、翻訳者として使う以上これだけではどうにもなりません。コトバンクは小学館系列のサイトなのですから、せめて『ランダムハウス』が入ってくれたら、それなりに翻訳者ご用達になると思うのですが……

【国語系コンテンツ】
小学館『デジタル大辞泉』
小学館『デジタル大辞泉プラス』
三省堂『大辞林 第三版』
小学館『精選版 日本国語大辞典』

大辞泉シリーズは、どちらもオンラインで更新され続けているので、版の表示はありません。『デジタル大辞泉プラス』は、

人物・企業・商品・文学や映画などの作品・作中人物・観光スポットなどを広く集めた「固有名詞に特化した辞典」

なので、映像とかエンタメ系の翻訳者には便利です。

『大辞林』も、最新は第4版(2019)ですが、翻訳者が使う国語の中辞典としては『広辞苑』より向いています。

『精選版 日国』は、なんで無料で使えるの? というラインアップですが、翻訳者が常用する国語辞典ではありません。

(帽子屋からひと言)
翻訳者に必要なのは、大~中規模の国語辞典よりむしろ小型国語辞典です。語法にうるさい『明鏡国語辞典 第二版』(大修館)や、現代日本語の相をよく反映している『三省堂国語辞典 第七版』『新明解国語辞典 第七版』(三省堂)などが別途必要です。

【百科系・現代用語系コンテンツ】
小学館『世界大百科事典 第2版』
ブリタニカ・ジャパン『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』
小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』
朝日新聞出版『知恵蔵』

百科系は、ほぼ十分という感じです。

その他、人名事典とか、各種のビジネス系用語辞典も収録されています。よくも悪くも、とりあえずまず調べてみるサイト、と位置付けておけそうです。


ルミナス英和・和英辞典

ご存じのように、研究社にはKODという有料の辞書サイトがあります。『ルミナス英和・和英』はそちらにも収録されていますが、なぜかルミナスだけは無料版もあります(明記されていないが、内容は第二版のはずです)。

(帽子屋からひと言)
無料で使える英語系のコンテンツは、以上で終わりです(Weblioには少しある)。三大英和辞典やリーダーズなど、翻訳者として必携と言えるメインの辞典は、オンラインだろうとインストール版だろうと、やはりお金を出してそろえる必要があります。

ここからしばらくは、英英辞典が続きます。


Collins Dictionary

2006272

同じサイトで、COBUILD(学習英英)も、English版、American版も一度に見られるのが便利です。上の図は、私がよくCOBUILDの特徴を説明するために示す insight の例です。COBUILDの「センテンス定義」がなぜ英語学習者にとって、ひいては日英翻訳にも有益か、この例でおわかりいただけると思います。

If you gain insight or an insight into a complex situation or problem, you gain an accurate and deep understanding of it.

① 可算としても不可算としても使える名詞であること、② gainという動詞を使うこと、③ 後ろの前置詞には into を使うこと、という文法・語法まで、意味と同時にわかるわけです。

さらには、コロケーションとかトレンドといった情報も載っていて、情報はなかなか充実しています。

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(帽子屋からひと言)
英英の辞書サイトとして必ず押さえておきたい筆頭です。なお、しばらく前からEBWin4では表示できなくなっています。表示できないだけではなく、EBWin4自体が死んでしまうので、いったん[Web辞書の編集]機能で[Enabled]のチェックを外しておくといいでしょう。

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Cambridge Dictionary

辞書特集などでもあまり名前はあがってこないのですが、Cambridge University による辞書サイトです。イメージ的に古そうな印象があるかもしれませんが、ちゃんと新しい単語や語義も載っています。

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ちなみに上の例は、「プレスカンファレンス」の意味の presser です。現時点で、英和辞典にはほぼどれにも載っていません。

おもしろいのは、BUSINESS としてときどきビジネス系の語義が載っていること。

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予想以上に、産業翻訳にも使えるということです。

(帽子屋からひと言)
学習英英として、Cambridge Advanced Learner's Dictionary 3rd(CALD3)が手元にありますが、その内容をベースに新しい単語・語義が追加されているので、思いのほか重宝します。用例も豊富。なお、English-Japanese にも対応していることになっていますが、出てくる日本語は……まあ、期待できません^^


LONGMAN

macmillan dictionary

語義説明の流儀によって、お好みでどうぞ。個人的に、Macmillan の平易さはけっこう好きです。

(帽子屋からひと言)
Macmillan のほうは最近、新語に強くなりました……と思ったら、どうやら読者投稿による語義が載るようになったようです。これは鵜呑みにはできません。


Merriam Webster

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"Webster"という名前は、紆余曲折を経て、辞書を表す一般名詞になってしまいましたが、こちらはいわゆる「Webster の大辞典」(Webster's Third New International Dictionary)の伝統を継ぐ本家 Merriam Webster のサイトです。さすがに、新語対応が早い。内容は Collegiate 版に当たります


Merriam Webster Learner's Dictionary

Merriam Webster 版の学習英英です。学習英英といっても、Longman やCOBUILDより定義がネイティブ向けに近く、こちらのほうがしっくり来るときも、よくあります。

(帽子屋からひと言)
LogoVista から出ている『メリアム・ウェブスター英英辞典』は、上の学習英英に当たります。製品名称が非常によろしくない。また、上の2つとは別に、Webster's Third New International Dictionary に当たる Unabridged 版は、有料サイトとして公開されており、しかもオンラインで更新が続いています。第4版が出る見込みはまずないということでしょう。


Oxford Dictionary

ちょっと、入口が使いにくくなった印象です。ODE(Oxford Dictionary of English)に相当する無料版は、Lexicoという名前になりました。

LEXICO

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こちらも新語対応が早く、Thesaurus や Grammar へのリンクもあります。Oxford はもちろんイギリス英語のサイトですか、US にも対応しています。

(帽子屋からひと言)
Oxford系の辞書といえば青系、だったのですが、Lexico では基調が緑になりました。何があったのでしょうか^^


Wordsmyth

ご紹介するのは初めてです。しばらく前に見つけたのですが、一般の出版社系ではなく、Robert Parks さんという人が始めたプロジェクトから生まれ辞書サイトのようです。

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このサイトでおもしろいのが、検索フィールドの下にある
・Beginner's Dictionary
・Intermediate Dictionary
・Advanced Dictionary
というレベル選択の機能です。たとえば、同じく insight を[Beginner]で引いてみると、

definition 1: the power to understand deep meanings or truths.
definition 2: an instance of this power.

と定義されています。1と2の違いは、COBUILDが "insight or an insight" と説明していた可算/不可算の違いに当たります。レベルを[Advanced]にしてみると

20062711

definition 1: the power of mind to grasp an essential meaning or truth.
definition 2: the understanding or knowledge of essential meanings or truths.

とだいぶ詳しくなります。こんな風に、レベルを変えて説明されていると多角的に把握しやすくなることがあるので、とらえにくい単語に遭遇すると、ときどき使っています。


ライフサイエンス辞書

名称とは違い、科学一般の語句に広く対応しています。

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英和・和英のインターフェースだけ使っていると、ただの用語集くらいにしか見えませんが、[シソーラス]に切り替えると、類語ではなくいろいろな関連用語が見つかります。また、[コーパス]にすると、

20062713

膨大な数のコーパスを見ることができます。

(帽子屋からひと言)
『ライフサイエンス辞書』は、毎年EPWINGデータも販売されています。絶滅危惧種のEPWING仕様を応援したい方は、こちらの購入もご検討ください。


DictJuggler.net 辞遊人

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一見すると、古風な辞書ポータルといったインターフェースなのですが、ここにある「翻訳訳語」は、たいへん貴重な辞書です。詳しくは、こちらの説明をご覧ください。


以上、無料で使える辞書サイトについてまとめると、こういうことになります。

・英英は◎ 学習レベルから一般レベルまで、無料サイトだけでも十分。
・英和・和英は× 無料サイトだけではどうにもなりません
・国語は△ 大辞泉、大辞林は役に立ちますが、小型国語辞典は必要です。

02:04 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2020.06.26

# OEDのオンライン版~まさに格の違い~

3月くらいから、Oxford English Dictionary(OED)のオンライン版を使い始めました。

2006261


通常のサブスクリプション料金は年間215ポンドまたは295ドルと、国内辞書サイトで最も高いジャパンナレッジと比べても、かなりいいお値段です。

さすがにこの値段だし、手元にはCD-ROM版の『OED 2nd』がある(こちらでも、2006年くらいまでの比較的新しい語句が Draft Entry として収録されている)ので、今まで見送っていたのですが、3月頃ふと見たら、割引きキャンペーン中でした(来年の3月いっぱいやってます)。なんと

年間90ポンド!

当然その先は通常料金に戻るのでしょうが、それでもこれはお試しのいい機会、ということで使い始めました。

結論から先に書くと、産業翻訳者にも間違いなく役に立ちます。私は、来年以降も正規料金で使い続ける予定です。それ以上に、ひと言で言って、

辞書(サイト)としての格の違い

をまざまざと見せつけられた思いです。

「世界最大の辞書」の名にふさわしい内容は言わずもがな、辞書サイトとしての機能という点でも、他のサイトを圧倒しています。


まず、インターフェースに品があります。日常的に使う以上、これって実は重要。

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(クリックで拡大できます。以下同)

検索フィールドのほか、最新の更新情報なども載っていることがひと目でわかります。

たとえば、私がつい先日調べた presser という単語を引いてみます。

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最初の検索結果ページでは、
・2 つのエントリがあること、
・各エントリの概要(最初の2行)
などが示されます。それだけではなく、Widen search? として、いま調べている単語を phrase 検索する、definition の中から検索する、full text 検索するなどのオプションが並んでいます。

しかも、ページの右のほうにはさらにオプションが表示されていて、いろいろな観点で検索を絞り込むことができます。

2006264

今回探していたのは、noun の2番目です。そちらをクリックしてみると、

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いわゆる「プレスカンファレンス」を意味する口語ということがわかります。ちなみにこの語義、今のところ英和辞典ではどれにも載っていません。英辞郎くんも含めて。一方、英英だと American Heritage とか Cambridge、Merriam Webster に載っていました。英語圏の辞書サイトと、日本の各出版社との間で時差がある一例でしょう。

項見出しのすぐ下には、View as: Outline | Full entry というスイッチがあります。右上にはQuotations: Show all | Hide allという切り替えもあり、もちろん Thesaurus などへのリンクもあります。

ページの右端には、前後の見出しも出ています。

そして、「辞書(サイト)としての格の違い」の最たるポイントが、

This is a new entry (OED Third Edition, March 2019).
Entry history
Entry profile

と書かれた部分。この見出しがいつ収録されたか、初出の用例はどこから採取したかといった詳しい情報が載っています。

まあ、ふつうに辞書を使っている分には、こんなところまで見ることはそうそうないかもしれませんが、この例のように新しい語義だと、「いつ頃から使われてるんだろ?」と疑問に思いますよね。そういう情報がちゃんと載っている。


別の例として、authenticate という動詞を引いてみます。

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6. の語義 Computing というラベルで、IT の文脈に出てくる意味がちゃんと載っています。自動詞も他動詞もあり、初出は1977年の Computerworld。IT 屋さんにはおなじみの雑誌名ですね。1993年の用例も UnixWorld

そして、ここで注目なのが、右のほうにある書誌情報(←この用語の使い方はあってるのかな……)です。

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この項目が2014年6月に更新されていることがわかるだけでなく、Previous version: OED2 (1989) というリンクもあります。そう、

旧版の様子まで見られる

のです。これって、すごくないですか? 「格の違い」ということを、わかっていただけたでしょうか。

OEDの偏執狂的なまでの編集方針については、ご存じの方も多いと思います。

とか、

あるいは

が参考になります。OEDの背景にある哲学を簡単には言い表すことはとてもできませんが、

英語という言語の、時間的にも空間的にも広大な世界に散らばっている、そしと次々と現れる無数の言葉の実相を記録にとどめておきたい

そんな執念が形をとったものと言えます。その執念が、オンラインでも見事に再現されている、そんな感じがします。

OEDなんて、英文学の専門家くらいしか使わないんじゃん?――

OEDという辞書の存在は知っていても、大半のイメージはこんなものではないでしょうか。でも、繰り返しますが、産業翻訳者にも間違いなく役に立つはずです。ためしに、

Updates to the OED

のページを見てみてください(こちらはサブスクライブしてなくても見られます)。今年4月だけでも、

Covid-19
infodemic
self-isolate/isolation
self-quarantine
social distancing

などが追加されています。

08:33 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2020.06.20

# 日本通訳翻訳フォーラム2020(JITF)のご案内

日本会議通訳者協会(JACI)が主宰するオンラインイベントのご案内です。

2006201

日本通訳翻訳フォーラム2020

8月のまる1か月をかけて開催するという、通訳翻訳業界としてはおそらく史上最大規模のイベントになります。

申し込みサイトはこちら。早割は本日まで。


なお、こちらは

「翻訳フォーラム」のイベントではありません。

翻訳フォーラム」(http://www.fhonyaku.jp/)は毎年5月末に「シンポジウム」を開催していましたが、今年は中止になったことをお伝えしたばかりです。

また、略称はJITFで、

日本翻訳連盟(JTF)のイベントでもありません。

とは言いつつ、私も登壇しますし、翻訳フォーラムの4人(高橋さきの、井口耕二、深井裕美子、高橋聡)も登壇します。さらに、高橋さきの、深井裕美子のセッションもそれぞれあります。

翻訳フォーラム:「翻訳者のなり方・続け 方」
高橋さきの、白倉淳一:「翻訳者と通訳者が語順について語る」
深井裕美子:「パンクチュエーションのひみつ」
高橋聡:「翻訳者と辞書」

そのくらい、通訳・翻訳業界を広く巻き込んだイベントになる予定です。ということで、かなり豪華な顔ぶれです。

2006202
(クリックで拡大できます)

翻訳フォーラムのYouTubeチャンネルでも、さっそく4人で紹介しています。

オンラインということで、いつものイベントとは違った雰囲気になると思いますが、お楽しみに!

06:24 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2020.05.15

# ウィズダム英和辞典 オンライン版の使い方

「三省堂デュアル・ディクショナリー」は、書籍版の辞書を買うと、対応しているオンライン版も使えるという、三省堂さんのすばらしいサービスです(どういう仕組みかは、調べてみてください)。私も、『ウィズダム英和辞典 第4版』をいつもここで使っています。

ただし、インターフェースの使い勝手に以前から疑問がありました。ちょっと調べてみましたので、デュアル・ディクショナリー普及のためにも、記録しておきます。

疑問があったのは、主に成句など複数語を検索するときの動作です。

ログインすると、こういう画面になります(※以下、スクリーンショットはクリックで拡大できます)。

2005151

検索フィールドの左にあるドロップダウンメニューから[見出し語・複合語で]と[成句で]を選択できます。1単語の見出しや複合語(下の例、day off とか health care)は、ふつうに検索できます。左カラムに結果候補が出るので、それをクリックすればOK。

2005152


ところが、実は

成句がうまく引けない

のでした。下の図のように、検索メニューが[見出し語・複合語で]のままだとダメ、これはわかります。

2005153


では、検索メニューを[成句で]にしたらできるだろう……と思ったのですが、これができないわけです。
2005154


ちなみに、iOSで使える物書堂アプリだと、[成句]で問題なく検索できます(インデックスの関係なのか、put off については[見出]のままでもヒットしました)。
20051510


そこで、検索フィールドの上にある「使い方」を見てみることにします。
2005155

成句…慣用句など、2語以上の語の結びついたもの

という説明があり、[成句で]の検索メニューも表示されていますが、検索例は plane という1単語。ここを見ても、成句の検索方法は確認できませんでした。そこで、今度は「便利な検索」を調べてみます。

2005156

なるほど、AND検索(/)とOR検索(|)が使えるのですね。どちらも半角です。

まさか……と思ってやってみたら、

2005157

なんと、成句検索でもスラッシュ(/)を入れてAND検索にしないといけないようです。11件ということで、物書堂アプリと同じ検索結果を、ようやく得られました。

そして、この動作は「用例検索」でも同じです。

2005158

as well as を引こうとしましたが、このまま入力してもヒット件数は0。そこで、スラッシュを入れて as/well/as としてみたところ―

2005159

53件がヒットしました。



ということで、

成句や用例を調べるにはAND検索のスラッシュが必要

というのが、デュアル・ディクショナリー版ウィズダム英和辞典の仕様のようです。

ちょっと予想外の結果でした。Googleでもそうですが、何も記号を使わずに複数語を入力したら、暗黙的にAND検索になるのがふつうだと思うのですが……。

使えば慣れるかもしれませんが、できたら改善されるといいなぁ……

05:37 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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# 翻訳フォーラムYouTubeチャンネル、これまでの動画

しばらく前に、翻訳フォーラム・シンポジウムの中止と、翻訳フォーラムYouTubeチャンネルの開設についてお伝えしました。

その後、何本か動画を公開しましたので、まとめてご紹介します。

ご挨拶編もあわせて、全部で5本が公開されています。

【字幕付】シンポジウム&大オフ2020中止とYouTubeチャンネル開設のお知らせ


【字幕付】お籠り読書のススメ①シルヴィア先生とサラ先生(翻訳フォーラムYouTube Ep.2)


【字幕付】コーパスで文例を探そう①青空WINGと国語辞典(翻訳フォーラムYouTube Ep.3)


【字幕付】コーパスで文例を探そう②オンラインコーパスいろいろ(翻訳フォーラムYouTube Ep.4)


【字幕付】お籠り読書のススメ②日本語の接続詞(翻訳フォーラムYouTube Ep.5)

01:47 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2020.05.13

#十人十色のオンラインイベント!

翻訳者はもともと慣れているとはいえ、引きこもり生活にもいささか疲れてきたところではないでしょうか……。

そんななか、同業者の皆さんにうれしいお知らせです。

Facebookの翻訳勉強会「十人十色」が、駒宮俊友さんを講師にお招きして、オンラインのセミナーを開催します。

2020年5月24日10時~
プロ翻訳者に役立つ「翻訳ストラテジー」入門編 #1
https://peatix.com/event/1480614

2020年5月24日14時~
プロ翻訳者に役立つ「翻訳ストラテジー」入門編 #2
https://peatix.com/event/1480638

2020年5月25日18時~
プロ翻訳者に役立つ「翻訳ストラテジー」入門編 #3
https://peatix.com/event/1481393

2020年5月25日14時~
駆け出し翻訳者にも役立つ「翻訳ストラテジー」入門編
https://peatix.com/event/1481412


上の3つがプロ(現役)向けで、#1~#3は同じ内容です。都合に合わせて選んでいただけるよう、日付と時間帯を変えて3回開催します。

最後の1つは初心者(翻訳学習者)向け。

それぞれのリンク先は Peatix のサイトですが、閲覧にはパスワードが必要です。パスワードは、Facebookグループ、翻訳勉強会「十人十色」のページをご覧ください。

※つまり、このイベントに参加するには、FBグループ「十人十色」への参加が必要ということです。まだ参加していない方で、今回のオンラインセミナーに興味のある方は、ぜひグループにご参加ください。翻訳者、翻訳学習者と確認できしだい、承認します。

さて、セミナータイトルにある「翻訳ストラテジー」って何でしょうか。以下、募集記事から引用します。

翻訳とは、原文を単にフィーリングで訳して終わり、 という仕事ではありません。はじめに原文内容を分析し、 翻訳の想定読者や使用用途を検討し、 さらにクライアントからの指示を踏まえたうえで、翻訳の方向性や 訳し方を決めていきます。こうした「翻訳の作戦」を決める過程を、 翻訳学の世界では翻訳ストラテジー(translation strategies)と呼んでいます。

駒宮さんの著書

のなかでもキーワードになっています。私も発刊当時に読んでブログ記事を書いているので、あわせてご覧ください。

リンク:# 『翻訳スキルハンドブック』と、記念トークショー

今回のセミナーも、その「ストラテジー」を中心にお伝えします。翻訳者でも翻訳学習者でも、目からウロコ! の発見があるはずです。

11:05 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2020.04.04

# 翻訳フォーラムのYouTubeチャンネル

ここ数年、だいたい5月くらいに開催してきた翻訳フォーラム・シンポジウムですが、今年は昨今の社会状況を踏まえて中止と決まりました(6月上旬にIJET福岡が予定されていたため、こちらは例年より少し遅くして、6月末に開催する予定でした。ちなみに、IJET福岡も来年に延期となりました)。

かわりに、当面はオンラインで何かしらのコンテンツを配信していく予定です。

その準備として、YouTubeに翻訳フォーラムのチャンネルを作りました。

翻訳フォーラム公式

主に、過去のシンポジウムのコンテンツなどを配信する予定ですが、新しいコンテンツもあるかもしれません。

ぜひ、チャンネル登録をお願いします!

あ、そうそう。上の動画をご覧いただくと、手術後の私の頭も見られます。

11:51 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2020.02.26

# 「翻訳訳語辞典」バージョンアップ支援のクラウドファンディング

故・山岡洋一さんがお作りになった「翻訳訳語辞典」。今も DictJuggler.net として運営・公開されています。

リンク:翻訳訳語辞典

実際の翻訳で使われた「活きた訳語」が載っていて、しかも類語辞典ともリンクしているとあって、翻訳者に定評があります。私も、常用というほどではありませんが、ときどきお世話になっています。

その「翻訳訳語辞典」が、整備と拡充のために、クラウドファンディングで資金を募っています。

リンク:READYFOR:「翻訳訳語辞典」のバージョンアップ

2002261

私も、ささやかながら参加しました。その時点ではまだ1桁万円でしたが、2日ほどでこの金額まで進んでいます。目標額はクリアしそうですが、みなさんもよろしかったらどうぞ。

※上のREADYFOR内の説明文、山岡さんの名前が「山岡洋二氏」になってます。関係者の方、修正お願いします!


さて、この「翻訳訳語辞典」、現在のデータであれば、ブラウザでも使えますし、EBWin4のWeb検索機能に登録して使うこともできます。

2002262

が、どうせEBWin4を使うなら、こちらのEPWINGデータを使って他の辞書と一緒に使うのがおすすめ。URLがクリッカブルになっていて、そのままサイトを開くことができます。

2002264

方法は、3年くらい前に書いた以下の記事をご覧ください。

リンク:# 『翻訳訳語辞典』の見出しEPWINGデータが登場!

EPWINGデータなのでJammingでも使えますが、表示されるURLからリンク先に飛ぶことはできません。ぜひEBWin4でどうぞ。


08:24 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2020.02.23

# サン・フレアで単発セミナー「帽子屋の辞書講座 とことん実践編」

※最近の記事、セミナーや講座の告知ばっかりでごめんなさい。

Sunflare


リンク:帽子屋の辞書講座 とことん実践編~辞書から考える、英和翻訳の日本語表現~

2020年4月4日(土)13:30~17:30

サン・フレアさん、前回のセミナーは、TQE過去問も使って主にマーケティング翻訳を中心に扱いましたが(おかげさまで満員御礼でした)、今回は分野を特に限定せず、

辞書から訳し方を選ぶ、決める

過程を文字どおりとことん突き詰めるということをしてみます。久しぶりに4時間のロングコース(午前中のフェローが始まる前なので、早めに始められるのです)。

上記のセミナー案内ページでは、loyal、loyaltyという単語を例にあげました。これ、私が最近ずっとやってる仕事にたびたび登場し、しかも loyal である人間の関係が毎回違うので、そのたびに頭を抱えている単語です。ちなみに、当日はこれの元ネタが何かも公開します^^。

英和、英英、英語の類語、国語辞典、国語の類語 …… あらゆる辞書を駆使して、納得できる訳し方を見つけるまでのプロセスを一緒に考えていきます。

同業者であれば毎日のように繰り返している作業で、そのプロセスを少しでもクリアにできれば、という趣旨の講座です。

loyal のように語義の範囲が広い単語、日英で概念がずれていて苦労させられる単語、英和辞典ではカバーしきれていない単語、凝った言い回、
さらには、povide のような定番中の定番の訳し方まで取り上げます。

単に「辞書にこういう訳し方があります」ということではなく、

・どんな辞書を探せばいいのか
・辞書でどの情報をどう見ればいいのか
・どういう経路で訳し方を見つけていくのか
・最終的にどう訳すのか

という流れを、例文ひとつひとつについて、じっくり解きほぐします。

辞書の使い方にも多少は触れますが、今回はあくまでも、

訳し方にたどり着くプロセスを確認する

ことが目標です。

今までの私の辞書講座は、そろえ方・使い方・調べ方・読み方が中心で、具体例を出しても訳し方まで進めることはほとんどありませんでした。今回は、そういう

辞書引きの最終段階

まで突き詰めることになります。どうぞ、お楽しみに。

03:01 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2020.02.19

# アビリティ・インタービジネス、今年も開講します - 体験授業あり

2018年、2019年と続いたAIBS(アビリティ・インタービジネス・ソリューションズ)の翻訳講座、今年2020年も開講します。

Aibs

リンク:AIBS翻訳スクール:プロフェッショナル翻訳者育成コース

今年は4/8(水)開講。申し込み締め切りは3/25。

昨年と同様、これに先立って体験授業も実施します。

リンク:翻訳体験講座

2時間の授業が3,500円

ですから、たいへんお得です^^;

帽子屋がこんなことを話す、というのを聞きにくるだけでも、ぜひ。


AIBSさんのスクールでは、フェロー・アカデミーのコースのように特定分野には特化せず(マーケティングの英文も扱いますが)、

・総合的な翻訳スキル
・日本語ライティング
・実際の翻訳業務に必要な知識

を身に着けることを主眼に置いています。というのがこちらの講座の特長です。つまり、翻訳課題を解く一方で、私がふだんからあちこちで情報発信しているノウハウもお伝えするという構成になっています。

・辞書のちゃんとした使い方
・日本語文法や英文法
・翻訳者として知っておきたい検索技術
・翻訳に必要な背景知識
・翻訳者として呼んでおきたい参考図書

など、課題中心の講座だけではなかなかお伝えできない内容がもりだくさんです。

01:34 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2020.02.11

# 『この英語、訳せない!』、インデックスデータをEPWING化

越前敏弥さんの近著『この英語、訳せない!』

同業者の皆さんは、もうお読みになっているかと思います。関連イベントもすでに何回か開かれました(私は、どれも都合がつかず、泣く泣くあきらめました)。

同業者も含め、英語に携わっている人であれば何度も首がもげるくらい頷くこと必至。逆に、(私は)知らなかった話もたくさんありました。読み物として楽しく通読できるのですが、この本を辞典的にも使えるようにということで、著者の越前さんがインデックスデータを公開してくださいました。

リンク:翻訳百景:『この英語、訳せない!』インデックス

せっかくなので、index.txtを元に、EPWINGデータも作ってみました。以下のリンクからダウンロードできます。

ダウンロード - echizen_yakusenai_index.zip

解凍したら、EPWINGデータを読み込める辞書ソフト(Jamming、Logophile、DDWin、EBWin4)でお使いいただけます。 ※ごめんさない、私自身はJammingとEBWin4でしか動作確認していません。

他のEPWINGデータと同じく、辞書追加の手順で、CATALOGファイルを選ぶだけです。

言うまでもなく、項目にただ原著のページ数(部、項目番号も)が書かれているだけです。もしまだの方は、この機会にぜひ著書をお買い求めください。

07:19 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2020.02.02

# フェロー・アカデミー、2月の集中講座

これまでに2度(2019年の今頃と夏)やった集中講座が、この2月にも開講されます。

リンク:翻訳のためのPCスキル・一般教養講座

Fellow_20200202115001


これまでは全5回でしたが、今回は全4回のコース。

2/19(水)から毎週水曜19:00~21:00です。

第1回(2/19)
 PCの基本・作業環境/文字入力/検索スキル(ワイルドカード、
 ネット検索)/便利なツール

第2回(2/26)
 翻訳者の辞書環境/情報収集について

第3回(3/4)
 ヨーロッパ文化と英語圏文化(ギリシャ・ローマ神話から聖書・
 シェイクスピアまで)

第4回(3/11)
 現代の英語圏文化についての雑学(映画など)/トライアルと
 今後の勉強方法

第3回と第4回は、翻訳フォーラムなどでやった、通称"サブカル講座"の拡大版ですが、古典の内容が増えています。第2回も、辞書について最新の情報に更新してお伝えする予定です。

なお、フェローはこの2月末に校舎を移転しますが、この講座はひとあし早く移転後の新しい校舎(麹町)で開かれます。

どごて呑もうかな~ ^^;


11:55 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2020.01.15

# 関山先生のJTF関西セミナーに、「おまけ」が付きます

●はじめにお断り●

ここ数年このブログでやってきた年頭あいさつ、今年はできずじまいでした。年末28日に自転車で転倒して軽いケガをし、年末・年始をばたばたと過ごしたためです。年賀状も出せませんでした。各方面、申し訳ございません。

さて、先月来お伝えしているとおり、来週1月24日(金)に、辞書学の関山健治先生がJTF関西セミナーにご登壇なさいます。

その追加情報なのですが、私も10分くらい「おまけ」としてお話をすることになりました。

リンク:シソーラスは”宝物”:-たくさんのことばと出会える魔法の辞書を使いこなす-

【追加情報】 帽子屋こと高橋聡(個人翻訳者、JTF理事)もちょっとだけ登壇します。翻訳者ならではの視線で、辞書に関する最新情報をお伝えします。10分ほどですが、お楽しみに!

関山先生のお話を伺うと、いつも、辞書という広大で深い世界に圧倒されます。私たち翻訳者も、世間一般と比べれば辞書と仲良くしている部類ですが、専門家の知識と経験、そして辞書愛にはとうてい及びません。特に、類語辞典となると、知らないことがまだまだあります。

類語辞典についてのイメージがガラっと変わるはず

です。

一方、おまけの私からは、

翻訳の現場で類語辞典をどう使うか

という観点で同業の皆さんにとって身近なお話をする予定です。

申し込み締め切りは21日(火)です。みなさん、大阪でお会いしましょう!

01:37 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.12.26

# 関山先生がJTF関西セミナーに!

辞書学の関山健治先生(中部大学)のことは、翻訳者もしくは辞書好きの方ならご存じかと思います。

私も、辞書の話をするたびにこの本(2017年刊)を推薦しています。

その関山先生、2017年のJTF(日本翻訳連盟)翻訳祭と、翌2018年のJTF翻訳セミナーにお呼びしましたが、今回はいよいよJTF関西セミナーに、ご登壇くださります。

リンク:シソーラスは”宝物”:-たくさんのことばと出会える魔法の辞書を使いこなす-

日時:2020年1月24日(金)14:00~17:00、懇親会17:00~19:00
会場:大阪大学中之島センター 3階304(大阪市北区中之島4-3-53)

類語辞典・シソーラスが、英語でも日本語でも翻訳者にとって不可欠なツールであることは言うまでもありません。これまでの翻訳祭と翻訳セミナーでは総論的なお話でしたが、今回はぐっと具体的に、私たち翻訳者にとって必聴の内容になりました。以下、講演のポイントです。

【講演のポイント】
◎シソーラス=類義語辞典?
◎アルファベット順(五十音順)配列と意味分類順配列
◎英語のシソーラスと日本語のシソーラスの違い
◎シソーラスに語義は必要か?
◎ロジェのシソーラスとWord Menu
◎シソーラスとしてのWordNet
◎こんなシソーラスはいかが?
◎シソーラスとコロケーション(連語)辞典

類語辞典の必要性は感じていながら、使うきっかけがつかめない、類書の違いがわからない、使いこなせていない、という方には熱烈おすすめです。

大阪開催ですが、

この内容を聞き逃すわけにはいかない

というわけで、私も参加します。

それもあって、今月のはじめ、もうひとりの理事(関西セミナーの委員)と一緒に、中部大学の研究室にお邪魔してきました。

中部大学は、名古屋からJR中央本線で約30分の「神領」という駅から、さらに15分ほどバスに揺られた山の上にあります(愛知県春日井市)。

キャンパス人口が1万人を超えるというマンモス校なんですね。

平地より明らかに寒かったのですが、先生の研究室は、予想を超えるパラダイスでした(個人の感想です)。

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(主に英語系)


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(主に国語系)

左右の壁に、おおむねカテゴリー別に辞書がぎっしり。壁際だけでなく、机の周りからその周囲の床にも辞書の山ができていて、ほとんど人が入る余地もないほど^^

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毎日こんななかで仕事している先生が、とても羨ましい(いえ、もちろん、大学のお仕事にはいろいろとご苦労も多いことは承知していますが)。

床だけではなく本棚の上方にも隙間はなく、「地震が来たら~」とつい心配になりました。

1912264

手書きで番号が書いてあるのは、Concise Oxford Dictionary(通称、COD)の各版ですね。ちなみに、ウチには4、5、6版と復刻初版しかありません(電子版は10、11、12がありますが)。


そして、関山先生がほかの辞書マニアとひと味違うのは、膨大な数の電子辞書端末もコレクションなさっていること。そのなかで、異色のモデルを見せていただきました。

1912265

今はなきSII(セイコーインスツル)の製品ですが、ふつうの電子辞書端末よりふた回りくらい小さく、左上に十字カーソルがあって片手で操作できるというモデルです。しかも、左のモデルは珍しいCOD搭載版。

Img_0516

書籍版ではこんなのもあって、これはとても楽しかったので、帰りがけに思わずポチりました。

10:35 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.11.24

# Google検索でWeblioが邪魔 - AHKで排除

先週の11月17日、告知していたとおり、東京ほんま会の「初級AutoHotKey講座」を開催しました。

テリーさんと私がかけ合いで進める形(と言いながら、主にテリーさんに喋ってもらって、私が補足するくらいでしたが)で、かつ内容もかなり絞り込んだ結果、みなさん、いつも以上に満足していただけたようです。こんなブログ記事も。

リンク:東京ほんま会、初級AHK講座のレポート

まず、講師が2人という形式でちょっとした質問もためらわずにできます。また、いただいたマニュアル資料は全7ページで簡潔かつ理解しやすいものでした。これでマニュアルが何十ページもあると初心者は強い抵抗感を覚えるわけです。

進め方と資料については、こちらが狙った以上の効果があったようで、これはとてもうれしいレポートです。Yujiさん、ありがとうございます!

さて、それで今回のお題になるわけですが――

最近のGoogle、何か検索すると、やたらとWeblioが上位に出てくるようになってませんか? 後でいくつか例を出しますが、特に簡単な日本語を検索したときがヒドい。

聞くところによると、やはり検索結果で上位に来るような「施策を多量に、かつ継続的に行って」いるんだそうです。

そういうことなら、こちらも自衛策をとるしかありません。Google検索では、除外キーワードを指定できるのと同様、

マイナス記号でサイトごと除外

することもできます。そして、先週の初級講座でやったように、AutoHotKeyでGoogle検索するようになっていれば、これも簡単に実装できます。

先週の初級講座で説明したGoogle検索のスクリプトはこうでした。

vk1D & g::  ※無変換キー+G の場合
  Clipboard =
  Send ^c
  ClipWait,1
  Run https://www.google.com/search?q=\"%Clipboard%\"
  Return

この、Runの行にサイト除外を指定するだけです(下記の太字部分)。

Run https://www.google.com/search?q=\"%Clipboard%\" -site:weblio.jp

参考までに、Weblioが現状どのくらい邪魔かというと、

・専門性の高い単語になると、それほど出てこない
・日本語でも英語でも、簡単な語句になるとたちまち上位に顔を出す

という感じです。いくつか例をあげてみます。

1911246

これ(root of trust)はセキュリティの専門用語なので、さすがに出てきませんが……

1911242

このくらいの用語(retail price)とか、

1911245

こういう基本英語(curation)になると、ほぼ上位に来ます。英辞郎さんは、残念ながらいつも後塵を拝していますね^^、それ以外の辞典サイトは、さらにその後です。

日本語になると顕著になる。

1911243

このくらいの慣用句(先例にならう)とか、

1911241

こんな基本語彙(従う)になると、圧倒的にWeblioが優勢。しかも、複数の項目が並ぶので、ウザいことこの上ない。

サイト除外を使うと、たとえば最後の2例はこうなります。

1911247

指定したオプションが効いています。

1911248

もちろん、Weblioを除いた検索結果が即信用できる、ということではありません。が、煩わしさはずっと減ります。

AHKを導入できた方は、お試しあれ。

12:51 午後 翻訳・英語・ことば 翻訳者のPCスキル | | コメント (0)

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2019.11.23

# よい子のみんな 大人の言うことには気をつけようね

通訳・翻訳者をめざしているみんな、見てるかな。

さいきん、「だれでも通訳になれる」ってせんでんしてる "こうざ"(おべんきょう、だね)のサイトがあるの、見たことあるかな。

英語講師 翻訳 通訳
自由度 塾や予備校に通い、拘束時間が長い。勤務地か別の件になることもしばしば 納期があり間に合わなければ長時間になることも 自分の都合のいい日に決まった時間で可能
競 合 参入敷居の低さから同業が多く、競争が激しい ・能力が低いとワード単価も低くなってしまう・すぐに高い単価はなかなか取れない 需要過多のため参入すればすぐに稼ぎ出すことが可能
難易度 高い 中~高 低い

漢字が多くて、みんなにはちょっとむずかしいかな。かんたんに言うと、

通訳にはなるのは、かんたん!

ってこと。

だから、だれでも通訳になれるんだって。

すごいね~。あこがれちゃうよね~。この "こうざ" って、聞いてみたくなるよね。

でもね、ちょっとフシギなんだけど、おなじ人が、ついこの前まで、翻訳者になる "こうざ" もせんでんしてたんだけど、そのときはね、こう言ってたんだよ。

通訳はネイティブ並みに英語を話せることはもちろんのこと様々な分野の幅広い知識が必要とされるためかなり難易度が高かったり、クライアントに付きっきりで仕事しないといけないため拘束時間がかなり長いのです。

これも、漢字が多くてむずかしいけど、

通訳になるのは、むずかしい

ってことなんだ。

あれれ~、おかしいぞ。まったくぎゃくのこと言ってるよね~。

そうなんだ。いいかい、大人のなかには、こういう変なことを平気で言う人がいるんだよ。

みんも、気をつけようね~。

06:18 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.10.05

# 翻訳フォーラム・レッスンシリーズ #15「『翻訳と〝絵〟』ワークショップ」

先週、私が担当した「辞書のホントの使い方」が終わったばかりですが、11/9(土)には次のレッスンシリーズが決まっています。

リンク:「『翻訳と〝絵〟』ワークショップ」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#15)

1910051

11/9(土)13:00~
定員 35名程度

翻訳フォーラムのシンポジウムやレッスンシリーズでは、ことあるごとに

絵を描く

ということを言います。これを聞いて、どのくらいピンくるでしょうか。

・文芸翻訳じゃないんだから、絵は描けなくていいんじゃない?

・わかる気はするけど、実際にはどうすればいいの?

・絵は苦手~!

・原文から訳文へ、言葉を置き換えてるだけかも―

そんな方は、ぜひ今回のレッスンシリーズにお越しください。

絵がうまい必要はありません。

でも、絵を、イメージを思い描けなければ、それは原文をちゃんと読めたことになりません。原文をちゃんと読めなければ、正しい訳文にはつなげられません

「絵を描く」ことは、「しっかり原文を読み取る」ために不可欠だということです。


「絵を描く」とはどういうことなのか、実際にはどうすればいいのか、「絵を描く」コツはあるのか ―― 原文読解の真髄に、じっくり取り組んでみませんか。

12:58 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.09.23

# EBWin4 v4.7.2 - 短縮名の完全制御が可能に!

辞書ブラウザ「EBWin4」、8月28日に最新版が公開されていました。Ver.4.7.2です。

リンク:EBWin4

4.7.0でドッキングウィンドウ化されたとき、作者のishidaさんがそろそろ最終形みたいなことをおっしゃっていましたが、今回のバージョンアップでいよいよ本当に最終形に近づいた気がします。ついに、辞書の「短縮名」が自由に編集できるようになったからです。

EBWin4に辞書を登録すると、デフォルトでは3文字の名前が辞書バーにならびます。これが辞書の「短縮名」です。

1909231

特に何もしなければ、内部的に設定されている名前が自動的に使われますが、[ファイル]→[辞書の編集]で[短縮名]に任意の名前を入力して変更することができる……はずなのですが、実はそれがうまく反映されないことがあって、長らく不満でした。

1909233

4.7.2.では、これがちゃんと変更できるようになりました。個人的には、とてもうれしい進化です。

注意:
EBWin4、進化しているのはうれしいのですが、バージョンアップしようとしてインストールに失敗する例も報告されています(私の環境でもありました)。必ず旧バージョンのインストーラは確保しておいてください。また、公式ページに「EBWin4.5.5 R2 - ドッキングウィンドウ化前の安定版」というのが公開されているくらいなので、4.7.0以降は特に不安定になっている可能性もあります。





原因は前からわかっていました。

たとえば、"うんのさんの辞書"(ビジネス技術実用英語大辞典)の第1版から第6版改訂版(6.0.2)までを登録したグループを作ると、デフォルトでは辞書バーはこうなります。

1909232

(拡大してご覧ください)

ぜんぶ違う辞書のはずなのですが、「ビジネ」とか「用例フ」とか、同じ短縮名がいくつも並んでいます。[辞書の編集]でがんばって短縮名を変えてみても、うまくいませんでした。原因は、EPWINGを格納しているフォルダー名にあります。

うんのさんの辞書、ここ最近はフォルダー名が変えてあるのですが、少し前のEPWINGデータを見ると、

バージョン5:
EIWAWAEIフォルダー(本文)
YOUREIフォルダー(用例)

バージョン4:
BODYフォルダー(本文)
BODY2フォルダー(用例)

バージョン3:
BODYフォルダー(本文)
YOREフォルダー(用例)

バージョン2:
BODYフォルダー(本文)
YOREフォルダー(用例)

バージョン1:
BODYフォルダー(本文)
YOREフォルダー(用例)

と、特にバージョン4以前はフォルダー名が重複しています。こうなっていると、EBWin4がグループデータを設定するとき、このフォルダー階層が優先されてしまい、[辞書の編集]で[短縮名]をいくら変更しても上書きできない仕様になっていたようです。

今回のバージョンアップのおかげで、「うんのさん」グループの辞書バー、とてもきれいになりました。

1909234_20190923175701

うんのさんの辞書、持っていないバージョンもあったので、オークションやフリマアプリで探し回り、少し前にコンプリートしました。

06:07 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.09.14

# 知識不足、経験不足で語る強さ|怖さ - 最新のある事例について

1週間ほど前から、ある事例が翻訳業界を騒がせています。
 
すでに、テリーさんもブログ記事にしてくださいました。
リンク:翻訳横丁の裏路地 - 翻訳会社関係各位:ご注意を  
もちろん、テリーさんは名指ししていませんし、私もURLなどはいっさい出しません。ただし、テリーさんが書いている実績疑惑は問題の一角にすぎません。その問題のほとんどは、渦中の人物の知識不足・経験不足に起因しています。
 
このブログを呼んでくださっている同業者は先刻ご承知のことばかりですが、最近は志望者や学習中の方もけっこう読んでくださっているので、念のために私が把握している問題点を挙げておきます。以下、渦中の人のことはZ氏と書きます。
 
なお、以下はすべて、公開されている情報から私が確認した範囲の内容です。
 
 
 

「翻訳実績」の記載について  
これについては、すでにテリーさんが記事で書いています。
 
練習問題やトライアルで扱った題材を「実績」として載せてよい  
こんな話が通用しないのは、翻訳に限らずどんな業界でも常識です。

実際の功績・成果。【岩国五】
それまでに残してきた成績や功績。【明鏡二】
実際にやり遂げた成果・業績。【大辞林】

当たり前すぎてどの業界でも「実績」の定義などしていないでしょうが、日本語として当たり前のことです。だからこそ、その常識の裏をついてきたとも言えますが、動画を見るとZ氏は必ず「~と思います」と付けていることに注意してください。
 
練習問題などで扱った題材は「実績」と書いていいと思います  
です。つまり、これはあくまでもZ氏の個人的見解にすぎません。翻訳会社が100社あれば100社とも拒否するはずです。こんな言説を、うかうかと信用してはいけません。
 
 
翻訳に英語力は要らない。大切なのは検索力  
具体的には「TOEIC 500点あれば」という数字をあげています。いちばん問題な発言はこれです。というか、巧妙に論点をずらしている(あるいは、気づかずに論点がずれているのかも)。
 
これが、「今はTOEIC 500点くらいの英語力でも、私の指導を受ければ(英語力が上がって)翻訳者になれます」という言い方なら分かる。それを本当に実践しているとしたら、むしろ頭が下がります。でも、翻訳するのにTOEIC 500点くらいの英語力しか必要ない、というのがZ氏の主張。英語力や専門知識がなくても、今の時代は辞書とネットをちゃんと検索できれば翻訳はできる、のだそうです。
 
そんなやり方でいい翻訳なんて、残念ながら、というか幸いにして、私は知りません。
 
実際、そうやってZ氏が検索だけで英文を「翻訳」している例も、ある動画で見ることができますが、そこで示されている訳文は商品として通用するレベルではありませんでした。
 
参考までに、TOEICは翻訳の実力の目安になるとかならないとかよく取り沙汰されますが、一般的に翻訳会社が出すのは800~900点の範囲です。そのうえで「TOEICの点数だけでは何の参考にもならない」と言っています。
 
 
トライアルに受かれば仕事が来る、プロになれる  
これ、私の知っている常識とはずいぶん違います。私はいつも、「トライアルに受かっても、すぐに仕事が来るとは限らない」と話していますし、業界内でもたいていそうだと聞いてるんですけど、私、間違ってます?
 
Z氏によると、CVにいいかげんな「実績」を載せる理由もここにつながっています。「トライアルに受かれば仕事は来るのだから、トライアルにたどり着くことが必要。そのためにはCVにいろいろ盛る必要がある」んだという理屈です。
 
 
トライアルより実際の案件のほうがずっと簡単  
これも初耳です。そうなんですか? そんなお仕事があるんだったら、紹介してもらいたくらいですけど……。いや、やっぱ要らない。
 
 
特に「産業翻訳」は簡単  
Z氏が請けているのは「産業翻訳」で、「産業翻訳」とは「マニュアルや企業のホームページ」なんだそうです。IT分野もあるけど、それは「IT翻訳」とは別だということで、この分け方も私にはよく分かりません。
 
特許翻訳は難しいので取得に時間がかかる。映像翻訳は特殊。金融や法律は専門知識が欠かせない。だけど、「産業翻訳」は簡単なので英語力も専門知識もたいして要らない、と。いったい、どんな世界の「産業翻訳」なのかなぁ。
 
 
翻訳学校には通うな  
 
個人的には、かなり迷惑する謳い文句ですね^^ Z氏も半年間通ったけどまったく役に立たなかったんだとか。まあ、そういうことはなくもないので別にいいのですが、問題はこんな発言です。
 
「翻訳学校というのは、課題を出して添削して答えを示すだけ。翻訳するプロセスを示してくれないから、通っても意味がない」
 
あー、うーん、なかにはそんな指導をしている学校もあるの? ないと思うけどなぁ。少なくとも、私はしてませんし、私が知っている範囲で講師をしている人に、そんな授業やってる人はひとりもいません。
 
 
トライアル不合格の分析をしている  
法的にいちばん問題かもしれないのはここです。Z氏の講座では、トライアルに受からなかった場合に、その理由を分析しているそうなのですが、ってことは、トライアルの文章を共有してるってことですよね? これ、
 
業界的には完全にアウト  
の行為ですからね。トライアルの文章を受領するとき、たいていは部外秘であることが書いてあります(書かれていないこともあるんですが)。それを、たとえ一部とはいえトライアル受験当事者以外に公開・共有しているとしたら、これは重大なルール違反になります。
 
しかも、Z氏はこの行為の問題性を認識しているはずです。というのも、実は1年ちょっと前に、Z氏はある翻訳者グループで「トライアルの課題と答えを共有しませんか」と持ちかけたことがあり、そのとき他の翻訳者から厳重にたしなめられているからです。本人もそのときには「わかりましたから」と発言しています。
 
 
機械翻訳の精度はまだまだ低い  
だから、翻訳という仕事は10年~20年は安泰だ、と。うれしいお言葉ですね^^
 
でも、Z氏は「検索力とITスキルだけで翻訳はできる」と謳っているわけで、それってまさに、近いうちに機械翻訳にごっそり持っていかれる部分なのでは?
 
要するに、どうやら極端に狭いご自分の経験と知識だけで物を言っているように、私には見えます。それが、意図してのことなのか、気づいてすらいないのか分かりませんが、どれもこれも業界の一般常識に反することばかりです。一般常識に反していても、なにか画期的な学習方法とか翻訳方法でイノベーションを起こそうとしているということなら、百万歩譲ってまだ分かりますが、別にそういうわけではない。
 
そんなやり方がそうそう通用するほど、翻訳業界は甘くありませんよ。
 
運よく自分はそれで通用しているのかもしれないけど、よく分かっていない素人を巻き込むのも考えものです。

02:35 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (1)

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2019.08.22

# 「英語辞典ナイト(昼)」(笑)、ついに開催!

JACET(大学英語教育学会)さんで、こんなイベントがあります。

JACET英語辞書研究会:「英和辞典を日本語から考える」
日時:2019年10月19日 (土)  13:00〜16:20
場所:早稲田大学11号館4階

情報は、こちら。
大学英語教育学会 英語辞書研究会
2019年度JACET英語辞書研究会:「英和辞典を日本語から考える」

または、こちらから。
日本語学会 学界消息(新着順)
JACET英語辞書研究会:「英和辞典を日本語から考える」

イベントって呼んじゃいけないのかな。学会ですしね。JACETさんの研究会、私も昨年の12月に英辞郎の話をさせていただきました(参考:# 英辞郎についてのセミナー)。

でもでも、です。今回はあえて「イベント」と呼びたくなるようなメンバーなわけですよ、これが。

なにしろ、セッションの内容が。

Part 1「英語辞書のヒトと国語辞書のヒトが見る「英和辞典」」 司会:小室夕里(中央大学)
 吉村由佳(『ウィズダム英和辞典』編集委員)
 見坊行徳(国語辞書マニア・校閲者)
Part 2 飯間浩明先生(国語辞典編纂者)ご講演 司会:大塚みさ(実践女子大学短期大学部)

ですからね(敬称略)。

吉村さんは、私の推し辞書ウィズダムの編集委員ですが、そのほかは、見坊さんと飯間さん。そう、国語辞典ナイトの常連おふたりです。

だから、裏タイトルとしては「国語辞典ナイト(昼)」(見坊さんの命名)。

もちろん、私もフェローが終わってから走ります。

03:19 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.08.01

# 「辞書のホントの使い方」、ちょっと詳しくご紹介

先日お伝えした翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#14「辞書のホントの使い方」ですが、どんな内容になるのか、ちょっとだけ具体的にご紹介します。

本日時点で、すでに定員の3分の2くらい席が埋まっています。直前枠(9/20~)もありますが、なるべくお早めに^^

 

 

たとえば、5月のシンポジウムや先日の大阪でのセミナーで井口耕二さんが例に出した

millions of

は、いわゆる三大怪獣英和大辞典ではどうなっているでしょうか。

『研究社 新英和大辞典第6版』(以下、「新英和」)

3 [pl.] 多数, 無数. millions of books 無数の本.

『ランダムハウス英和大辞典 第2版』(以下、「RHD2」)

3 《millions》million で表される数量[額],100万台
▶ 100万以上10億未満:
His fortune was in the millions of dollars. 彼の財産は何百万ドルにものぼった.

『ジーニアス英和大辞典』(以下、「G大」)

[語法]
(1)数詞または数量詞がつく場合も -s をつけない( →hundred [語法](1)): two ~ 200万 / several ~ 数百万.
(2)端数のあるとき及び名詞を修飾するときも -s をつけない: six ~, three hundred and five thousand 630万5千.
5 [~s of ...] 何百万という…;((略式))非常に多数の…(→hundred 9)∥Fossil fuels are called nonrenewable resources because it takes millions of years to replace them. 化石燃料は回復するまで何百万年もかかるので回復不可能資源と呼ばれている. 

この例だけでも、三大怪獣英和の特徴がよくわかります。

「新英和」の売りは、「バランスのよさとピンポイントの精度」です。この3つのなかではいちばん情報量が少ない。にもかかわらず、millions ofの訳としては、不正確になる可能性がある「何百万の」ではなく「無数の」を載せている。この的確さが新英和です。だから、私は「ひとまず引く」ときにはまずここから引きます。

「RHD2」で目を引くのは、なんといっても「100万以上10億未満」という注釈でしょう。かつては専門用語の多さも身上のひとつでした。さすがに少し古くはなりましたが、今でも基本的な専門用語については頼りになります。それも含めて「語義分類と事実の解説の細かさ」がRHDの特長です。たとえば、他の辞書が5項目に分けている単語がRHD2では8項目というように、分け方が細かい。millions ofに対するこの注釈も、細かい解説の一例です。

「G大」では、他の大英和にない「語法」情報が光ります。ジーニアスは、学習用の『ジーニアス英和辞典』が先に編纂され(このとき、業界に先駆けて本格的にコーパスが使われました)、それをふくらませてG大が作られました。そのため、大英和でありながら、学習辞典のような情報が豊富に載っている。加算と不可算の記号を名詞すべてに付けているのも、G大だけです。

三大英和については、これだけ押さえておくだけでも、使い分けができるようになるはず。

次は、英英辞典のCOBUILD。

セキュリティの文脈でよく出てくる

vulnerability

という単語。語法に詳しいG大を見ても、[U] つまり不可算という情報しかありません。が、COBUILDを引いてみると、形容詞vulnerableの派生語として載っているだけですが、ちゃんと使い方がわかります。

少し古い版(DAYFILER搭載版など)だと、N-VARというラベルが付いています。最近の版(オンライン版)では、variable nounがこれに当たり、どちらも「基本的に不可算だけど、加算にもなる」名詞というラベルです。念のために、COBUILDの凡例(参考記事:# COBUILDの凡例はこちら)を見ると、こう説明されています。

N-VAR
A variable noun typically combines the behavior of both count and uncount nouns in the same sense (see N-COUNT, N-UNCOUNT). The singular form occurs freely both with and without determiners. Variable nouns also have a plural form, usually made by adding -s. Some variable nouns when used like uncount nouns refer to abstract things like hardship and technology, and when used like count nouns refer to individual examples or instances of that thing, e.g. Technology is changing fast ... They should be allowed to wait for cheaper technologies to be developed. Other refer to objects which can be mentioned either individually or generally, like potato and salad : you can talk about a potato, potatoes, or potato.

http://www.sanseido.biz/main/Dictionary/Hanrei/CobldEJ.aspxより、赤字は引用者)

語法については、最終的に英英の学習辞典も忘れずに確認したい、という例でした。

最後は、これも英英辞典ですが、版が変われば情報も変わるという話。

たぶんどの電子辞書端末にも入っているODEで、

compromise

という単語を引いてみてください。あ、動詞のところだけ見ればOKです。

ちなみに、カシオの電子辞書端末だと、ODEは今でも「改訂2版」のようです。DAYFILERの最終モデルあたりでは第3版が採用されています。あ、そうそう。ODEとOEDの違いはご存じですよね?

では、今度はオンライン版のOxford Dictionaries(https://www.lexico.com/en)でも引いてみて、内容を見比べてみてください。

語義の分け方なども変わっていますが、注目すべきはここです。オンライン版にしかありません。

3.1 Cause to become vulnerable or function less effectively.
‘yo-yo dieting can compromise your immune system’
‘last month's leak of source code will not compromise your IT security’

https://www.lexico.com/en/definition/compromiseより)

「危うくする」という元々の意味が、システムとかコンピューターなどについて使われるようになった用法です。「侵害する」とか「侵入する」と訳されることもありますが、まだ載っていない辞書がほとんどです。『リーダーズ第3版』には、「危殆化する」などという特殊な訳語が載っています。

これは、同じ辞書でも版が新しくなれば情報がどんどん変わるという例です。

 

いかがでしょうか。

ほんの2例だけですが、今回のセミナータイトルに付けた「大辞典・学習辞典・英英辞典はここを読め」という副題の意味を、ちょっとは感じてもらえたのではないかと思います。

ということで、

・具体例で、各辞典の主な特徴をつかむ

・各辞典の凡例を知る

・われらの味方「うんのさん」の用例を使いこなす

・無料で使えるEPWING辞書「WordNet」を使いこなす

・国語辞典で日本語を調べるとき、読み取るべき情報を知る

などなど、濃~い内容でお届けする予定です。

01:23 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.07.23

# 翻訳フォーラム・レッスンシリーズ「辞書のホントの使い方」

前エントリに続いて、セミナーのご案内です。

翻訳フォーラムのレッスンシリーズ、いつの間にか第14回になりました!

「辞書のホントの使い方~大辞典・学習辞典・英英辞典はここを読め~」
(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#14)

1907231
(上のリンク・画像から申し込みページを開けます)

日時:9月28日(土)13:15~16:45

場所:としま南池袋ミーティングルーム ※いつものIKE Bizではありません、ご注意ください!

その申し込みが、今日7/23の正午に始まります。いきなり売り切れになるこはないと思いますが、みなさん、スタンバイください^^

以下、案内ページよりもう少し詳しく内容を予告しておきます。

 

 

これまで、もう何度も辞書の話をしてきました。

でも、すでにお気づきの方もいらっしゃるとおり、これまでは「辞書環境をどうやってそろえればいいのか」という話が中心でした。

一部のセミナー、たとえば2018年2月の「脱・辞書の持ち腐れ」とか、フェロー・アカデミーの通信講座第3回などでは、実際に辞書のどこを見て、どんな情報を読み取るかということまで立ち入りましたが、そのときはあくまでも課題文を読み解くという前提でした。

今回は、翻訳者がよく使う辞書(ラインアップは案内ページを参照)について、凡例と特長をひとつひとつ説明したうえで、

・3大英和辞典の使い分け方

・COBUILDの読み方

・WordNetの使い方

・国語辞典の使い分け方

などを取り上げ、各辞書はどんな作りになっているのか、どんな情報が載っているのか、それをどう読み取ればいいのか、を説明します。

いわば、帽子屋の辞書シリーズ、新章スタート!です。

当日は、実際に辞書を引きながら説明していきます。ご参加くださるみなさんも、PCや電子辞書端末、スマートフォンやタブレットなどを使って手元の辞書を引きながら聞いていただくと、いっそう楽しめるのではないかと思います。

 

ご参加、お待ちしております!

09:07 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.07.21

# 翻訳のためのPCスキル・一般教養講座

フェロー・アカデミーで、今年の1~3月に実施して好評だった講座が、8月22日から、また始まります。

リンク:翻訳のためのPCスキル・一般教養講座

190720

8月22日より、毎週木曜日、全5回です。

※前回は隔週でしたが、今回は毎週で5週連続となります。

案内文にもあるとおり、

・翻訳者が知っておきたいPCの基本スキル

・検索スキル

・辞書の話

・英語圏の文化に関する基礎的な知識

を集中的に扱います。

前回と違うのは、「古典作品から現代のサブカルチャーまで」の前半部分を拡大して、

ギリシャ・ローマ神話

も取り上げることにしました。

 

ご興味のある方、ぜひご参加ください~。

10:19 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.07.17

# SII DAYFILERからの移行を考える、2019年7月版、参考価格付き

昨日、リストをアップしましたが、せっかくなので、

移行する場合の参考価格

も付けて更新してみました。一部、修正もあります。

ダウンロード - migration_from_df_190717.xlsx
(Excelファイル:約13KB)

価格は、7/17時点のAmazonやLogoVista、AppStoreなどで調べたもので、変動はありますから、ご注意ください。特に、アプリは安売りのタイミングが狙いどき。

合計金額はあえて書きません(笑)が、あらためて、電子辞書端末のコストパフォーマンスには驚かされます。

 

予算に余裕があるなら……
・LogoVistaでメインをそろえ、英英はオンラインでまかなう
・アプリでメインをそろえ、英英もそろえる

予算に余裕がなければ……
・有料オンラインでメインをそろえ、英英はオンラインでまかなう
・PC上には、少しずつ予算をかけて増やしていく

というところでしょうか……。ちなみに、オンラインの場合

・KODアドバンスト:1年間11,880円 
・JKパーソナル+R  :1年間21,600円

です。

 

ただ、最低限必要な辞書だけは、PC上でさっと引けたほうがいいことは、言うまでもありません。

最後に、DAYFILERからの移行に限らず、帽子屋が考える最低限のラインアップ、も考えてみました。

研究社 新英和大辞典 第6版(LV)
研究社 新和英大辞典 第5版(LV)
ビジネス技術実用英語大辞典 第6版(EP)
リーダーズ英和辞典 第3版(LV)
リーダーズプラス(LV)
大辞林(アプリかオンライン)
明鏡国語辞典 第二版(LV)
ウィズダム英和辞典 第3版(書籍)

このくらいは、手元にそろえておきたいものです。英英はオンラインで。

以上の辞書であれば、書籍のウィズダムを除いて、EBWin4上で使えます。

ただし、LogoVistaのタイトルはいつ仕様が変わるかわからないので、EBWin4上で使えない可能性もあります(特に、新しくセットになっている商品は怪しいかもしれません)。その場合は、LogoVistaの辞書アプリケーションで使えます。

12:38 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.07.16

# SII DAYFILERからの移行を考える、2019年7月版

Facebookでまた、DAYFILERユーザーさんの投稿がありました。

辞書ビジネスから撤退してからもサポートだけ続けてくださっていたSIIさんですが、そのサポートも

2020年3月末

でとうとう終了するということです。

ちなみに、Windows 7はそれよりひとあし早く、2020年1月14日にサポートが終了します。

で、DAYFILERからの移行については、以前に記事を書きました。

リンク:# SII DAYFILERからの移行を考える

その後また状況も少し変わっているので、最新の状況を一覧表にしてみました。

ダウンロード - migration_from_df_190716.xlsx
(Excelファイル:約12KB)

 

 

ざっくりとですが、

・英和辞典系はLogoVista版を購入
・英英辞典はオンライン

で、おおむねまかなえそうです。ただ、今までDAYFILER(だけ)に頼ってきた人だと、かなりの設備投資になります。

 

オンラインも視野に入れると、

KOD(研究社オンライン)

が、やはりいい選択肢になるかもしれません。

そう考えたとき、やはりいちばんネックになるのが「ランダムハウス」ですね。コトバンクから外れてしまいましたから、アプリくらいしか選択肢がありません。となると、

ジャパンナレッジ

も検討の余地が出てきます。

小学館さん、専用インターフェースだけでいいので、再刊してくれませんかね~。

11:52 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.07.07

# 今野真二『日日是日本語』

『日本語が英語と出会うとき』に続いて、こちらも読みました。

『日本語が英語と出会うとき』と違って国語系・国文学系の話が圧倒的に多いので、私には最初のうちちょっと取っつきにくかったのですが、読み進めていくとなかなか味わい深く、示唆に富んだ一冊です。

感想をひとことで。

研究室のお金でいろいろと古書を買えるの、うらやましい~

そう叫びたくなるくらい、いろいろな古書が出てきます。大半は国文学系なので私には無縁ですが、なかには古い辞書もあって、もちろん無制限ではないでしょうが、研究室として購入できるんですね。

そういえば、6月1日のトークショーのときも、日国の初版セットが大学にはなくなっていて(しばらく前に処分されたらしい)、今回のイベントのために古書でそろえ直してもらった、とおっしゃってました。

 

本書は、タイトルどおり日記形式の本(2018年1月~12月)で、今野先生の日々の心情、言葉に対する思いや考え方がぽろぽろと語られます。『日本語が英語と出会うとき』を執筆なさっていた時期とも重なるので、あわせて読んで正解でした。

印象に残った言葉を拾ってみます。日記ということもあり、全編を通じてけっして声を大にすることはなく淡々と日々の様子と思いを語っているのですが、ときどきハッとするようなくだりがあります。

筆者は自信が購入した本も、預かり物だと思っている。またちりぢりになって次の人の手にわたるまでいったん預からせてもらっている。だから、せいぜいいいコンディションを保つようにする、という気持ちだ。

長野にある古書店「バリューブックス」の企業哲学ともちょっと通じる考えかもしれません。

歴史に(必然的に)含まれている「詩的なもの」というとらえかたはおもしろい。ふと白土三平の『カムイ外伝』第十九話(『週刊少年サンデー』一九六七年一月八日号初出掲載)で、カムイがリンドウを見ながら「あれがこの世で見る最後のもの……」と思うシーンを思い出した。現在はさまざまなことに「詩的なもの」が欠落しているということはないだろうか。

(赤字は帽子屋)

たしかに、あの話は特に秀逸です。

先生、私より少し年長なだけなので、マンガもけっこうお読みなんですよね。なにしろ、先日のイベントでも、「日国を読み通したときメモに使った」として見せてくださったノートが、バルタン星人の表紙でしたし^^

それにしても、その『カムイ外伝』を紹介するとき、ちゃんと初出の情報を出してくるところが、いかにも、です。

細かな概念差、表現差が捨象されて、おおざっぱな表現になる。それが「わかりやすい」といわば勘違いされているのではないだろうか。筆者などには、こうした(おおざっぱな表現に向かって行く)「日本語再編成」が急速に進行し始めたように感じられている。

(赤字は帽子屋)

12月21日の記事です。この指摘には、同業者の皆さんも198回くらいうなずくはずです。機械翻訳の話は、この傾向を抜きに語るわけにはいきません。

ちなみに、この次の記事(23日)には、S&GのHomeward Boundが出てきます。やはり世代が近い^^

2冊のご著書とイベントで、今野先生がとても身近になりました。

01:41 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.06.13

# 今野真二『日本語が英語と出会うとき』

6月1日に開催されたトークイベント「来たるべき辞書のために」(ジャパンナレッジ主催)は、期待どおり、なかなか充実した内容でした。

といっても、「翻訳者が辞書を使う」という実用のうえで参考になるというより、やはりあくまでも「辞書というモノが好き」という人種向けだろうと思います。

この本も、その延長上にある感じで、翻訳者に即おすすめという内容ではありません。

もちろん、持参してちゃんとサインをもらってきました(仲介してくださったネットアドバンスのNさん、ありがとうございます!)。

 

本書『日本語が英語と出会うとき』は、幕末から大正あたりまでの英和辞典・和英辞典を、日本語学者である今野先生が、

日本語の側から

俯瞰した内容です。

英和・和英という二国語対照辞典(ときには、英中和、仏英和のような三言語)において、それぞれの時代にコンテンポラリーだった日本語がどう選択され、解釈され、表記されてきたか、という視点で書かれています。つまり、あくまでも辞典という世界で展開される日本語がテーマなわけで、だからこそ、本書のタイトルは

日本語英語が出会う

ではなく

日本語英語と出会う

なわけです。

そういう視点でいろいろな辞書を読み解いていくと、たとえば日本最初の英和辞典と言われている『英和対訳袖珍辞書』について、こんな記述が出てきます。

つまり、『英和対訳袖珍辞書』初版の時点で、すでに「具体性の付与」「現代的」「ストレート/シンプル」ということがいわば意識されていたことになる。

この辺のくだりは、なかなかスリリング。

また、当時の日本語に関する「類義」語意識、明治期独特の「漢字」の使われ方と変遷、幕末から明治期の印刷事情などについても知ることができます。

1924年刊の『スタンダード和英大辞典』(宝文館)では、前書きに今で言うコーパス活用のような表現が出てくるとか、同辞典の巻末では早くも「ジャパニーズイングリッシュ」を嘆く声が現れているとか、そんなエピソードも楽しい。

本書に出てくる英和・和英(その他)辞典は、おおむね以下のとおりです(編纂に参照された辞典などは載せていません)。

『波留麻和解』1796年
『訳鍵』1810年
  『改正増補 訳鍵』
『暗厄利亜語林大成』1814年
『増訂 華英通語』1860年
『英和対訳袖珍辞書』1862年
  『改正増補 英和対訳袖珍辞書』1866年、67年、69年
  『改正増補 和訳英辞書』1869年
  『英和対訳辞書』1872年

『英和・和英語彙』1830年
  『英語箋』1857年、63年
『永峰秀樹訓訳 華英字典』1881年
『仏英和辞書』1866年

『袖珍英和節用集』1871年
『西洋画引節用集』1872年
『本朝辞源』1871年
『以呂波/字引 和英節用』1885年
『附音/挿畫 英和玉篇』1886年

『和英語林集成』1867年
  『改正増補 和英英和語林集成』

『英華字典』1869年
  『訂増 英華字典』1883年
『英華和訳字典』1879年
『英和字典』1872年
『英和双解字典』1885年

『附音挿図 英和辞彙 初版』1873年
  『附音挿図 英和辞彙 第二版』1882年

『和英/両訓 伊呂波字引』1882年
『和英大辞典』1896年
『和訳英語聯珠』1873年
『英和和英 辞彙大全』1885年
『和英対訳 いろは字典』1885年
大槻文彦『英和大辞典』原稿
『井上 英和大辞典』1915年
『新訳和英辞典』1909年
『武信和英大辞典』1918年
  『研究社 新和英大辞典 第二版』1931年
  『研究社 新和英大辞典 第三版』(勝俣銓吉郎)1954年
『冨山房 大英和辞典』
『研究社 新英和大辞典』
『新案/記憶式 和漢英活用字典』1920年
『井上 和英大辞典』1921年
『スタンダード和英大辞典』1924年
『模範英和辞典』1911年
  『模範新英和大辞典』1919年

インデントしてあるのは、同辞書の版違いで、そこに意味がある場合です。

今から見れば、まあ「骨董」的な辞書の話ですが、最後のほうでは、私たちが直接知っている『研究社新和英』とのつながりも見えてきます。

ただし、本書で扱われているのは最新でも大正あたりまでです。つまり、「日本語が英語と出会うとき」に起きる化学作用というのは、たぶんその辺でほぼ落ち着いたということ、あるいはそこから先は別の視点が必要になるということかもしれません。

ちなみに、Amazonのカスタマーレビューには「書名が内容と一致していない。明治、大正、昭和におよぶ150年の発展過程の概観を期待して購入するとガッカリ」という趣旨の声がありますが、本書に登場するのは、上にあげたように1796年の『波留麻和解』から1954年の『研究社 新和英大辞典 第三版』まで。その間は158年なので、けっして書名に偽りがあるわけではありません。

10:36 午前 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.06.10

# うんのさん、Ver 6.0.2公開

翻訳フォーラム・シンポジウムから早くも2週間たってしまいました。

標題のように、『ビジネス技術英語大辞典V6』のマイナーバージョンアップがあったということを、シンポジウムのときに海野ご夫妻からお知らせいただきました。

海野さんのこちらのサイトに情報が載っています。

リンク:『ビジネス技術実用英語大辞典V6』

1906101

細かい調整だけなのですが、V6が出たとき、見出し語のあとで改行されずに本文が続いていたのは、確かに「あれ?」という感じでした。

1906102

その点が改良されただけでも、見た目がずいぶん良くなっています。

そのほか、ラベルを「省略しすぎず見やすくした」などの変更があるそうです。

06:12 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.06.03

# EBWin4最新版、タブモードを搭載してDockableに!

辞書ブラウザー「EBWin4」の最新版、Ver.4.7.0が公開されました。

リンク:EBWin4

作者によると、この4.7系が最終版になり、今後はあまり更新されないとのことですが、今回はかなり大きい更新です。いろいろありますが、なかでも大きいのは、

  • タブモードを採用
  • ドッキング可能(Dockable)

の2つでしょう。

1906031

 

1. タブモード

今までも見た目はタブのような表示でしたが、実際には辞書を切り替えると1つのタブで内容が切り替わるだけでした。

最新版では、左側の辞書リストから選択すると、辞書の内容が新しいタブで開いていきます。

1906033

『学研国語』『岩波国語七』『明鏡国語二』の3つがタブで表示されたところです。ドラッグすれば、タブの順序も入れ替えられます。

ウィンドウの大きさ次第ではタブが増えると表示しきれなくなりますが、右端の下向き▼をクリックすると、すべてのタブが一覧として出てきます。

1906034

Web検索の結果もタブになります。この図で「入力 - 基本検索」となっているのが、ジャパンナレッジを検索したタブです。

タブモードは、[設定]のオプション(または[表示]メニューから)オン/オフできるので、今までどおりの動作のほうがよければ、オフにしてください。

1906032

 

2. ドッキング可能

どのウィンドウも、すべて「ドッキング可能(Dockable)ウィンドウ」になりました。

ドッキング可能というのは、ウィンドウを切り離して独立(フロート)させることもできるし、好きなところに配置もできるという仕組みです。Trados Studioのインターフェースに慣れている人はピンとくるかもしません。

左側の[検索結果]リストも、検索結果の各タブも、さらには[複合検索](デフォルトでは右端にあります)ウィンドウも自由に配置できるようになっています。

1906035

 よく見ると、[検索結果]の右側に模様が付いています。これがドラッグできるようになった目印です。

 ただ、ここから先の操作はちょっとトリッキーです。ドラッグし始めると、ウィンドウが薄青になります。

1906036

同時に、ウィンドウには移動先を選ぶマーカーも表示されます。

1906037

薄青くなっている(=移動中)ウィンドウをこのマーカーまでドラッグすると、貼り付く位置がやはり薄青で示され、そのままドロップすると移動します。どのマーカーにもドロップしないでマウスを離すと、独立したウィンドウになります。

検索結果のウィンドウも同じように移動・配置できるので、たとえば、こんな表示もできるようになりました!

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複数開いたタブウィンドウは、[表示]→[すべてのドキュメントを閉じる]でまとめて閉じることができます。

また、レイアウト変更がうまくいかなくてメチャクチャになっちゃった場合は、[表示]→[画面レイアウトの初期化]で元に戻ります。

 

3. [複合検索]を常時表示できるように

以上の機能追加のおかげで、[複合検索]ウィンドウを常に表示しておけるようになりました。個人的には、これがいちばんうれしいかも。

[複合検索]というのは、複数の語を指定して(AND)検索するときに使います。成句や用例を引くときなどに重宝します(※ふつうの検索フィールドで & 演算子を使う手もありますが、検索結果がちょっと変わるようです)。

今までは、検索オプションで[複合検索]を押すとウィンドウが表示され、検索方法を変えれば当然消えていました。それが、デフォルトで右端にある[複合検索]をドラッグすれば、好きな位置に固定して表示しておけます。

1906039

これで、今まで使いにくかった[複合検索]も、一気に使いやすくなりました(もちろん、インデックスが対応している辞書のみ)。

 

4. その他

ちょっとおもしろい無料辞書データ「EDICT2」(詳しくはこちら)がバンドルされたり、PDIC辞書など非EPWING系辞書データでもブックマークできるようになったりしています。

 

最終形に近いというのはちょっと残念ですが、辞書ブラウザーとして今のところいちばん使いやすいことは間違いなく、ありがたいアプリケーションです。

05:49 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.05.18

# ジャパンナレッジのトークイベントに今野真二さん!

6月1日に、ジャパンナレッジのトークイベント第2弾があります。

リンク:来たるべき辞書のために 今野真二×佐藤宏クロストーク

1905181

日時:6月1日(土)14:00~15:30(13:30受付開始)

会場:清泉女子大学 2号館4階 240教室(品川区東五反田3-16-21)

参加費:500円

 

今回の登壇者、お一人は第1弾(後述)にも登壇なさった『日本国語大辞典第二版』の編集長・佐藤宏さん。

そして、もうひとりは、清泉女子大教授の今野真二さんです。今野さんは、最近「東大王」のテレビなどでもよく拝見しますが、何といっても

「日国をぜんぶ読んじゃった」

という変人とんでもない方です。

こんなお二人のお話ですから、おもしろくないはずがない! しかも参加費はたったの500円!!

辞書マニアはもちろん、日本語を使って仕事をしている方なら見逃せないトークイベントです。

かなり広い会場ですが、主宰のネットアドバンスさんによると、お席はかなり埋まっているとのこと。もちろん私も、フェローの授業が終わったら駆けつけます。

 

今野さんですが、最近ご著書の新刊が立て続いています。

私も読み始めていますが、さすがに日本語の話がマニアックすぎ。おもしろそうな記事だけ拾い読みしています。

もう1冊はこちら。まだ刊行前で、楽しみに待っているところです。

ちなみに、ジャパンナレッジのトークイベント第1弾は、2月5日に開かれました。このときは、佐藤宏さんと、辞書コレクター・辞書研究家の境田稔信さんのディープなお話でした。イベントレポートが、ジャパンナレッジのサイトに掲載されています。

リンク:ここでしか話せない楽しくてディープな辞書の世界

04:39 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.05.12

# 翻訳フォーラム・シンポジウム2019 & 大オフ

こちらでの告知がすっかり遅くなりましたが、もちろん、今年もやります!

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5月26日(日)12:00から。場所はいつもどおり、お茶の水女子大。

そして、今年のテーマは「足さない・引かない」です。美味しいウィスキーの話ではありません。翻訳者なら誰しもピンとくる話のはず。

そのせいもあってか、第一次申し込みはあっという間に定員に達しました。直前枠申し込みは、明日

5月13日(月)正午から

です。直前枠はそれほど多くありません。どなた様も、お見逃しなく!

01:57 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.04.18

# 辞書編集者の本 x 3

『悩ましい国語辞典』シリーズでも知られる神永暁(かみながさとる)さんの最新刊。

神永さんは、『日本国語大辞典』の元編集長。『現代国語例解辞典』や『使い方の分かる類語例解辞典』なども、神永さんが世に送り出した辞書です。

これを読んだのをきっかけに、辞書編集者の本を立て続けに読みました。

こちらは、岩波書店で『広辞苑』や『岩波国語辞典』を作った増井元さん(2013年刊)。

こちらは、三省堂『大辞林』初版を担当した倉島節尚さん(2002年刊)。

小学館、岩波、三省堂と、いずれも日本を代表する国語辞典を担当してきたベテラン編集者ならではの話をいろいろな角度から読むことができます。ばらばらでなく、続けて読んだのでよけいにおもしろかったかも。

 

神永さんは、つい先日の国語辞典ナイト9にも登壇なさり、『辞書編集、三七年』に出てくるエピソードをいくつか紹介してくださったので、なかなか立体的に楽しめました。

 

1904181_1

(写真真ん中で立っているのが神永さん)

エッセイものとしては、これがいちばん楽しめるでしょう。『日国』第二版のときには、校正が六校からさらに念校、念々校まであったとか、類語情報が詳しい『現代国語例解辞典』や『使い方の分かる類語例解辞典』が生まれた経緯なども書かれています。

国語辞典ナイトでも、話し方がとてもうまく、これからも機会があったらぜひ話を聞いてみたい方です。ちなみに、この本の表紙には『日国』の第二版、第三校のときのゲラがデザインされています。たくさん赤が入ってるのは、昨年末に亡くなった・松井栄一さんの字なんだそうです。

続けての2冊は、この本で紹介されていて買ったものです。

『辞書の仕事』の増井元さんは1945年生まれで、30数年の間に『広辞苑』と『岩波国語辞典』を担当してきた方。文章を読んでいても、「たしかに岩国の人だなあ」と感じます。3冊のなかではバランスはいちばんいいので、「国語辞典の編集ってどんな仕事か」を知るには最適です。

第4章「辞書編集者になりますか」には、国語辞典の項目について解説を書くときはどうするかという具体的な話が出ているので、国語辞典をちゃんと読みたい人は必読。第5章「辞書の宇宙へ」の「辞典、各社各様」の項は、国語辞典選びの参考にもなります。

最終章では電子辞書についても触れており、その中に興味深い一節がありました。

データ容量は圧倒的なものがあります。私個人が(中略)その容量を使って遊んでみたいことが二つあります。/一つは、『岩波国語』であれ『広辞苑』であれ、現行の版の他に、初版以来のこれまでの版のすべてを収録して、同一の項目について初版から現在の版にいたる履歴が一望できるようにした辞書が欲しいということです。

これは確かにほしい!

『辞書と日本語』の倉島節尚さんは1935年生まれ。三省堂『大辞林』初版の企画段階から、その26年後(1988年)の発行まで共に歩んだきたという、まさに「大辞林そのもの」みたいな人です。

一九八八年に『大辞林』が出た時点では、家内よりも『大辞林』との付き合いのほうが長かった。

ということで、その言葉には重みがあります。

文章がやや冗長な印象もあるのですが、『大言海』など 古い辞書についての言及も多く、辞書の歴史はいちばん詳しく扱われています。第8章「辞書の歴史」では、国語辞典の歴史上重要な3人が取り上げらてれいます。『和英語林集成』のヘボン、大槻文彦、そして見坊豪紀です。

あ、そういえば。国語辞典ナイト9で見坊さんが「"的を得る"を誤用と言ったのは見坊豪紀です」とか、ポロッと言ってたなぁw

そして倉島さんも、「辞書の近未来」と題した丸一章を使って、これからの辞書のことを書いています。ここでおもしろかったのが「電子化辞書」という言葉。つまり、今ある"電子辞書"のほとんどは冊子辞書の媒体を変えただけなので、いわば「電子化辞書」である、と。それに対して、

人間がページを繰って引くことをまったく考慮に入れず、コンピュータで使用することだけを考えて、それに対応する構造と記述形式をもつ辞書

こそが「電子辞書」であり、まだその意味の「電子辞書」は現れていないと述べています。その条件を読むと、この本より後に出てきたWordNetが近いのかなと思われます。

「外国人のための日本語辞典が必要」ということも書かれています。

日本を代表する辞書編集者3人。細かいところは別として、基本的な考え方は驚くほど(あるいは当然)共通していました。「辞書は規範ではない」「言葉は変わりゆくもの。辞書はその変化も記録しなければならない」……。

この3冊を読みながら、また手元の辞書と本が何冊も増えたことは言うまでもありません。

こういう方々のおかげで、手元の辞書がとんどん増えていく私たちの仕事は成り立っているのです。

 

 

11:40 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.03.31

# 東京ほんま会、WildLight中級講座です!

東京ほんま会、昨年はとうとう1回もセミナーを開催できませんでしたが、今年はなるべく開こうと思っています。

第1弾は、あちこちからご要望があった「WildLight中級」講座を開きます。

リンク:【開催】WildLight 中級セミナー

日時:4月21日(日)13:00~16:30
講師:齊藤貴昭
定員:10名
受講料:4,000円(事前振込み)

第1部として、Wordのワイルドカード基礎を学んだうえで、第2部でWildLightの具体的な使い方に入ります。WildLightの基本機能を使っていて、さらに充実したWildLight生活をめざしたい人におすすめ。

講師はテリーさんですが、いつものように、ほんま会スタッフがバックアップします。

手取り足取りのハンズオン形式のため、ごく少人数制です。満員の際はご容赦ください。

 

04:31 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.03.29

# 『ウィズダム英和辞典 第4版』対応サイト、オープン!

『ウィズダム英和辞典』は、書籍版を購入するとネット上のサービス Sanseido Dual Dicionary でオンライン版も利用できるようになっています。

三省堂さんのこのサービス、書籍辞書の売上を確保したうえで検索の利便性も提供するという、ある意味この時代にふさわしい形のひとつだと思います。


そして、昨年出た『ウィズダム英和辞典 第4版』に対応したページもついに開設されました。書籍版をご購入済みの方は、第4版のサイト(http://wisdom.dual-d.net/ej4/)からアクセスして、クイズに答えれば、すぐにオンライン版も使えるようになります。
しかも、Sanseido Dual Dicionaryの素晴らしいところは、旧版もそのまま設置している点。ウィズダムも、第2版、第3版、第4版を別々に使えます。

 

ウィズダムの進化の例を、先日もひとつ見つけました。


pumpという単語、米語では「ガソリンスタンド」を表すこともあるのですが、これが辞書にはなかなか載っていません。それが、ウィズダム第4版には、at the pumpという成句の形で載りました。


学習英和辞典というと、語義の補足や文法・語法情報の充実が最大の売りなわけですが、こんな風に、私たちの仕事に直結するような新しい情報もちゃんと追加されていく。本当にありがたいことだと思います。

02:37 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.03.14

# おおきいすうじ

翻訳のお仕事をしていて出てくる大きい数字といえば、せいぜい

million 百万
billion 十億
trillion 一兆

までなわけですが、ちょっとした確率計算の出てくる案件で、その上の

quadrillion 千兆

というのが出てきました。そのひとつ上が

quintillion 百京

です。国家予算の話とかしていると、たまに「京」は出てくるので、日常的に使う単位といえば、まあこのくらいまででしょう。


そういえば、小学生の頃、漢字で表す大きい数字の単位を覚えました。一、十、千、万、億、兆、京、垓………と、途中まで漢字1文字が続いて、最後のほうになると恒河沙、阿僧祇……と熟語になって、最後が

無量大数

になるやつです。


それで、ふと気になって、英単語では上のほうはどうなってるのか調べてみました。

研究社の新英和大で millionを引くと、ちゃんと表が載っています。

ただし新英和大では、対応する漢字が載ってるのは

quadrillion 千兆

までで、その上からは「10の18乗」のような乗数表現しか載せなくなります。


ちなみに、ランダムハウスとかリーダーズ第2版には、

クワデリリオン
クィンティリオン(クウィンティリオン)
セクスティリオン


とカタカナ表記も載っているのですが、そんなカタカナ使う場面って、ちょっと想像がつきませんよね。

リーダーズ第3版になると、がんばって

sextillion 十垓(がい)
septillion 一𥝱(じょ)
octillion 千𥝱(じょ)

までは載っていて、それ以降がやはり乗数表記になっています。


対応する漢字がほしいなぁ、と思っていたら、ちゃんとまとめている人がいました。

リンク:英語で大きな数を表す|Colorless Green Ideas


これを参考に、表を作ってみました。ついでに、ゼロも並べてみたw

1903151
(クリックで大きくなります)

無量大数がいちばん大きいと思っていましたが、英語には

centillion

などというとんでもない単位があるんですね。OEDにも載っている。

もちろん漢字では書けませんし、ゼロを並べるのは諦めました。

06:39 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.03.10

# Wifi Keyboardを使うときの注意点

前エントリで書いたとおり、物書堂さんの辞書アプリが統合されたので、Wifi Keyboardを併用する意味がずっと広がってきました。

Wifi Keyboardの使い方は、前エントリでも書いたように、

リンク:side A: # Wifi Keyboard + EBPocketで作る準PASORAMA環境

こちらの記事に書いてありますが、改めて注意するポイントだけ、まとめておきます。


  1. Wifi Keyboardと同様のアプリはAndroid版も出ているようですが、物書堂アプリはiOSにしか対応していないので、ご注意ください。パソコン側はWindowsでもMacでもOKです。
  2. パソコンとiPad/iPhoneが同じネットワーク上にないといけません。ここが最大のポイント。自宅であれば、有線でも無線でも同じルーターを使っていれば大丈夫なはず。
  3. インストールするアプリはこれです。
    19030810
    同名のアプリがありますが、検証したところ、あまり使い勝手がよくありませんでした。これも注意してください。
  4. 基本は無料ですが、240円払わないと、日本語に対応しません。
  5. インストールしたアプリを起動しても、ヘルプが表示されるだけで、何も起きません。
  6. iPad/iPhoneの[設定]で、キーボードとして「Wifi Keyboard」を追加してください。
  7. 物書堂の辞書アプリを開いたら、検索モードに切り替えます。
  8. 地球儀アイコンをタップしてキーボードを切り替えると、
    1802183
    という表示になり、すぐ
    1802184
    という表示に切り替わります。
  9. ここに表示されたIPアドレスを、ブラウザのURLバーに入力すると、
    1802185
    こういう画面になって入力できるようになります。
  10. これからもよく使うので、この画面はブラウザでブックマークしておきます。
  11. ただし、Wifi Keyboard側のIPアドレスは、ときどき変わるはずです。IPアドレスは、たとえば

    192.168.10.9:8080

    というパターンになっていて、この例で言うと「9」の部分が入れ替わります。家庭用のルーターでは、そういう仕組みになっているからです(詳しい説明は省略)。

  12. 検索して、iPad/iPhone側の表示が変わると、ブラウザ上のウィンドウは入力できない状態になります。iPad/iPhone側を検索ウィンドウに戻すと、入力できるようになります。
  13. また、iPad/iPhoneのキーボードはいろいろなタイミングですぐに切り替わってしまいます。他の入力モードに切り替わったときも、ブラウザ上のWifi Keyboardウィンドウは入力を受け付けなくなります。必ず、上記のようにWifi Keyboard用のキーボードになっている状態でつかってください。

というわけで、ハッピーな辞書ライフをお楽しみください。

p.s.
翻訳者ご用達の辞書のうち、どれがアプリでそろうのか、リストをまとめているところです。完成したら公開します。

12:09 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典iPhone/iPad | | コメント (0)

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2019.03.08

# 物書堂の辞書アプリが統合!

私も辞書セミナーなどでおすすめしている物書堂さんの辞書アプリが、ついに統合型アプリになりました!

1903081

これで、物書堂さんの辞書アプリを

一括 "串刺し" 検索

できるようになったということです。

インターフェースもいろいろ変わり、全体にかなり使いやすくなりました。

今までは「1辞書1アプリ」だったので、それぞれを起動しなければなりませんでした。

EBPocketで「Web検索」に登録すれば串刺し検索も可能ですが、最大8つまでしか登録できず、辞書間の移動もスムーズとは言えません。


そんな不便が一気に解消されます。

こうなってくると、アプリ辞書という選択肢が翻訳者にとっても、がぜん有力な候補になってきたと言えそうです(iOSだけですが)。


統合版への移行

まず、統合版になった「辞書 by 物書堂」アプリをダウンロードします。

1903082


今まで持っていた辞書アプリも、すべてアップデートされているので……

1903083_2

すべてアップデートしてください。


アップデートが終わったら、今までの個別アプリを起動すると、こんな画面が出ます。

1903084

["辞書 by 物書堂" に移行する]をタップして、指示に従えば移行できます。


操作が完了しないままウィンドウを閉じてしまい、移行が完全に終わっていない場合は、個別辞書の

1903085

このメニューを開けば移行を続けられます。

手持ち辞書の移行がすべて終わって、「辞書」アプリを開くと、このように[コレクション]ウィンドウが表示されます。

1903086

★注意★

まだ一部のアプリは統合に対応していないそうで、その場合は、単体を起動したときに上記のメッセージが出ず、単体のままになります。

私の手元にある辞書だと、『オックスフォード英語類語辞典』、『角川 類語新辞典』などが未対応です。


統合版の使い方

統合が終わったら、[検索]フィールドに語句を入力すれば串刺し検索ができます。

最初の検索時点では、[国語]・[英和・和英]・[英英辞典]の3つから(独和とか仏和があるときは、増えるのかな?)カテゴリーを選ぶ必要がありますが……

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1903088

いったん検索したあとは、ドロップダウンリストを使って

1903089

すべての辞書間を移動

できるので、もう圧倒的に便利です。


さて、物書堂の辞書アプリがこれだけ使いやすくなったら、これはもう、ぜひこちらも試したいところです。

リンク:side A: # Wifi Keyboard + EBPocketで作る準PASORAMA環境

リンク:Wifi Keyboard

こちらの記事では、EBPocket の使い方まであわせて紹介していますが、この部分は不要です。

Wifi Keyboard + 辞書 by 物書堂

だけで、

PCから引ける串刺し辞書環境

が実現します(もちろん、PASORAMAほど便利ではありませんが)


ちなみに、1月に出たアルクの『翻訳事典 2019-2020』、付録DVDにも、Wifi Keyboard の使い方を収録しています(画像がよくないんですが……)。


★★注意★★

……と思ってApp Storeを見にいったら、ほぼ同じ名前で類似のアプリも出ていたようです。

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19030811

私がおすすめしているのは、上のほう、グレー系のアイコンのやつです。

もうひとつのほう、念のため検証してみたのですが、いまひとつ使い勝手がよくありません(バグもあるっぽい)。しかも、ときどきインターフェースの日本語が変です。

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ちなみに、まだ出たばかりでオンライン版のサービスもまだ始まっていないウィズダムの第4版もそっそく物書堂アプリになっています。

ということで、物書堂さん、これからも目が離せません。


05:57 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (3)

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2019.03.01

# アビリティ・インタービジネスさんの4月期講座 - 体験授業あり

すでにご案内しておりますが、広島の翻訳会社アビリティ・インタービジネス・ソリューションズさんの東京校で、4月17日から私の講座が始まります。

リンク:東京校|AIBS翻訳スクール

Aibs


それに先立って、体験講座もあります(こちらを案内するの、忘れてました)。

3月6日(水)19:00~

リンク:翻訳体験講座(東京校)|東京校|AIBS翻訳スクール


アビリティさんの講座は、ITや技術系に限定せず、「どの分野にも共通する翻訳スキル」ということを前提にしています。また、それ以上に「実際の翻訳業務に直結する」内容を目指していますので、

・日本語ライティングのコツ
・辞書の引き方
・翻訳の勉強方法
・翻訳に関する情報収集

といった実践的な内容も取り上げます。


3月6日の体験講座も、そういう大前提をふまえた内容です。

事前課題はありませんが、帽子屋があちこちでお伝えしている内容をギューって凝縮してお伝えします。

しかも、本番と同じ2時間の授業としては格安の受講料^^

01:20 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.02.22

# 「翻訳を勉強する会」公開勉強会in東京、いよいよ来週です

お伝えしていました、
「翻訳を勉強する会」公開勉強会in東京
の開催が、いよいよ迫ってきました。来週3月3日(日)です。
1901161
(すでに定員に達し、申し込みは終了しています)


ご参加のみなさんには、

・事前課題の提出期限……2/23(土)24:00
・事前アンケートの記入期限……2/24(日)24:00
というご案内のほか
懇親会の出欠確認
もお願いしています。
メールが届いていない、という方は、東京事務局までご連絡ください。
(東京事務局のメールがわからない方は、コメントください)

11:31 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.02.11

# 春からのコース開講、2つ

暦の上では立春も過ぎましたが、寒い日が続いています。

とはいえ、冬来たり因幡の白兎春遠からじ。この4月から、また翻訳学校の新学期が始まります。


定番のフェロー・アカデミーでは中級コースと上級コース。そして、昨年から始まったアビリティ・インタービジネス・ソリューションズの講座も開講の予定です。


Fellow_2

リンク:フェロー・アカデミー 実務翻訳コース[中級]IT・マーケティング

― 中級は4月13日(土)開講。毎週土曜日です。

リンク:フェロー・アカデミー 実務翻訳コース[上級]IT・マーケティング

― 上級(ゼミ)は4月9日(火)開講で、隔週火曜日。


Aibs

リンク:AIBS翻訳スクール 東京校

― アビリティは4月17日(水)開講の、隔週水曜日。


フェローのほうは、2018年秋季(この3月で終わります)が、おかげさまで中級・上級ともほぼ定員いっぱいでした。


アビリティのほうは、フェローよりももっと実務よりの授業を展開します。翻訳そのものはもちろん、実務的なハウツーとかツールの使い方も紹介する実践的な内容です。

それぞれ、お楽しみに~。

11:51 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.02.07

# 翻訳エージェントと翻訳者をむすぶイベント

紹介が遅くなりましたが、来週2/13(水)にこんなイベントがあります。

190207

「“i” translate.」は、翻訳に関わる翻訳エージェントと翻訳者の方々を結び付け 翻訳業界全体を盛り上げるためのイベントです。

こういうイベントスペースを使うというのは、翻訳業界としてはほぼ初めてのことかもしれません。かなり斬新な試みです。

それだけに、堅苦しくない雰囲気ですし、値段もカジュアル。翻訳祭のような公式イベントではなかなか翻訳会社とコンタクトできない、という人に特におすすめです。

11:30 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.02.01

# 『翻訳事典 2019-2020』がすごい!

アルクの『翻訳事典』、最新号が1/31に発売されました。

すでに、FacebookやTwitter、同業者のブログなどでも紹介されており、いろいろと話題になっています。

Amazonでは、「翻訳」カテゴリで1位は当然として、全体でも131位(2/1、2:30am現在)と、大健闘しています。

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アルクの佐藤さんによれば、翻訳事典としても新記録になるのだそうです。


毎年1月に出るムックなので、この時期に話題になるのは恒例なのですが、今年はちょっと様子が違います。

全体にすばらしいコンテンツぞろいの今回、特に話題になっているのが、p.33からの特集記事

「機械翻訳と人間翻訳者

です。

業界全体が機械翻訳(とその後処理としてのポストエディット)一色になろうとしているなか、この特集記事は、その大きなうねりに貴重な疑問を投げかけています。

なかでも、

「ニューラル機械翻訳 翻訳者の目で検証してみよう」(高橋さきの)

「私が考える「翻訳」 機械翻訳+PEと翻訳の違い」(井口耕二)

の2本には、同業者の多くが感動し、歓呼の声をあげています。


今回の「翻訳事典」、なかでもこの機械翻訳特集がこれだけ話題になっているのは、記事のすばらしさもさることながら、そもそも機械翻訳をこういう方向性で取り上げようとしたアルクの、つまりは

編集人の佐藤直樹さん

の方針も大きかったと言えます。

毎年この「翻訳事典」を編集しながら、長年にわたって翻訳業界を真摯な視線で見つめてきた佐藤さん自身が、機械翻訳をめぐる昨今の流れに疑問を感じ、編集者として、出版人として何らかの一石を投じずにはいられなかった---そんな思いが誌面の端々から伝わってくるからこそ、その思いに共感が集まっているのだと感じています。


翻訳者志望の方には、p.45からの特集

「翻訳者志望者への 直言、助言、愛のムチ」

も必読です。実務翻訳は豊田憲子さん、出版翻訳は田内志文さん(これはかなり珍しい!)、そして映像翻訳はJVTAの新楽直樹さんが担当。ありがちな「あなたも翻訳者になろう」的な内容ではなく、今の翻訳業界をしっかり見据えたうえでの、貴重なアドバイスになっています。


そのほかの記事も、掛け値なしに、読み応えたっぷりです。

新潮社「翻訳校閲ゼミ」レポート

私も聴講した回ですが、実によくまとまっています。


辞書をめぐる冒険 レキシコバトル

十人十色が9/8に開催したイベント「辞書をめぐる冒険 Part2」のレポート。私も出てきますが、そんなことより、ほかの登壇者にご注目ください。見坊行徳さん(国語辞典マニア)、和爾桃子さん(出版翻訳者)、関山健治さん(辞書研究者)、大久保克彦さん(言わずと知れたEPWINGジェダイ)、土部隆行さん(インドネシア語翻訳者)

いま思い返しても、よくこれだけ贅沢なメンバーが集まったと思います。簡単ですが、そのときの様子を感じとっていただけるはず。


フリーランスなら知っておきたい税金のこと

昨年、井口富美子さんと庄野彰さんが登壇したJTFセミナーのレポートです。これから個人事業者になろうという人は必読。


翻訳で活きる人 ヒト ひと

いろんな同業者が登場します。フェローで私のクラスも受講したことがあり、私なんかよりずっと活躍していらっしゃる方。いつも元気な女性の同業者も何人か登場します。

字幕翻訳の岡田壮平さんとは、昨年ゆっくりお話しする機会がありましたが、こうして活字になっているのはうれしいかぎり。


特別付録DVD

今回の大きい目玉のひとつは、翻訳事典として初のDVDコンテンツが付いたこと。

「プロ翻訳者の仕事場」では、越前敏弥さんの仕事環境や仕事のしかたをじっくり見ることができます。

「動詞のパワーを全開に!」には、日英翻訳でおなじみの遠田和子さんの講演がそのまま採録されています。

そして、「公開! 辞書ソフトの使い方」は、私がEBWin4の使い方を動画付きで紹介したもの。

……なのですが、ご覧になった方はおわかりのように、画質があまりよくありません。私の手元にはもっと画質のいいファイルがあるんですが、DVD用に変換すると、どうしてもこうなっちゃうんだそうです。

かろうじて画面の字は読めるので、多少なりともお役に立てばいいのですが。


●巻頭マンガ「ススメ! 翻訳ガール」

DVD付録と同じくらい、あるいはそれ以上に新機軸だったのは、この巻頭マンガかもしれませんね^^

まあ、なんというか……。私も驚きましたw


ムックは、書籍と違って基本的に増刷がありません。翻訳事典のバックナンバーは今でも買えますが、ことによると今号は売り切れという事態も考えられます。お買い求めは、ちょっと急いだほうがいいかもしれません。


【2/2 追記】 最高で59位を記録しました! Amazonでは品切れになったようです

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03:34 午前 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.01.25

# 柳瀬尚紀『辞書を読む愉楽』

個人的にまだ柳瀬尚紀ブームが続いていて、今年に入ってから最初にAmazonで注文したのはこれだった。

柳瀬氏は2016年7月に73歳で亡くなったが、この本に収められているのは、『本の旅人』(KADOKAWA)に1995年11月から2003年1月まで連載していたエッセイ。

タイトルどおり、毎回必ずなんらかの辞書に言及があるので、この本を起点に、また次々と辞書を買ってしまう。とても危険な一冊だ。


辞書の話といってもスゴいのは、連載当時の最新と言える電子版もちゃんと使っているところ。


当時、柳瀬氏は52歳~59歳。

今の自分と大差ないが、氏は1943年生まれで、世代がまったく違う。戦中生まれでありながら、1995年には当たり前のようにコンピューターを使っていらっしゃる。知人に作ってもらったPCに、7連だか8連だかのCD-ROMドライブをつないで電子辞書を使いまくっていたのだそうだ。

だからこのエッセイには、まだ書籍版しかなかった『日国』のような定番だけでなく、OED のCD-ROM版 ver.3.0 などまで登場する。リーダーズのほかにリーダーズ・プラスもそろっていて、国語辞典だと大辞林とか大辞泉も次々とCD-ROM版が出始める時代。その検索性の愉しさに感心する様子が、たびたび描かれている。

それどころか、氏がこの頃使っていたとして紹介されるCD-ROM辞書のなかには、今では手に入らないタイトルまで並んでいて逆にうらやましいくらいだ。


もちろん、辞書の話に限らず、氏のエッセイは読んでいて愉しい。

ちなみに、「インターネット」という記事(1996年11月号掲載)には、

英語では the Internet と、定冠詞がついて頭文字は大文字で記される。

と書かれている。IT系の文書ではだいぶ前から小文字表記も珍しくなかったが、小文字表記が正式に認められたのは、わりと最近の話だ。


柳瀬尚紀は競馬が大好きだったので---東江一紀さんもそうだったらしい---競馬ネタになるとあまり楽しめないのは惜しい。今からでも覚えようかしら。


将棋ネタも多くて、2001年11月号掲載の「定跡」という話には、藤井猛竜王(当時)という名があった。将棋に疎い私は、「最近話題の、なんだっけ、藤井聡太くんか。あれのお父さんかしら」と思って調べてみたが、聡太くんは祖父母に将棋を習ったらしい。


「チューインガム」というエッセイには、イチローが大リーガーとして登場する。2001年6月号の掲載で、野球にもあまり詳しくない私などは

「え、イチローって、あの頃もう大リーグにいたの? もう18年たつのに?」

と思ってしまったのだが、調べてみたら、鈴木一郎は2001年4月にマリナーズで初出場していた。なるほど。


というわけで、どこを読んでも楽しい柳瀬尚紀。


09:44 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2019.01.06

# 「サブカル講座 in 大阪」にお申し込みの方、メールをご覧ください。

1月20日の

「翻訳に使える文化・雑学・サブカル知識」 in 大阪

は、おかげさまで満員御礼となりました。ご参加のみなさん、よろしくお願いします!


ちょうど2週間前ですが、ご参加の皆さんには PassMarket からメールをお送りしました。詳しくは、メールをお読みいただきたいのですが、内容は以下の2点です。

● 事前課題

提出の必要はありませんが、事前課題を添付しています。ぜひ、楽しみながらやってみてください。

●書籍の頒布

こちらの本を、著者から預かって、関西のみなさんにお届けしようと思います。

リンク:悩み別にみる 辞書の選び方 特設ページ

Nayami

"辞書マニア" 西練馬さんの新作です。


事前に希望の部数を確認したいので、こちらは私宛てにメールを送っていただくようお願いしています。


「こんなことを調べたい」という場面別に、国語辞典・類語辞典の特徴が紹介されています。

翻訳者にも国語辞典、国語の類語辞典が必須なのは言うまでもありません。そのために欠かせない、最良のガイドブック。ぜひお買い求めください!

05:30 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2019.01.04

# 『図解 英語基本語義辞典』、1月中旬発売の予定です

『図解 英語基本語義辞典』についての続報です。

拙ブログにコメントをくださったアドスリーの三井様から、見本を1部いただきました。Amazonにはまだ情報がなく、hontoでも書影が出ていませんが、こんな表紙です。

1901041

実際には、こんな帯が付くはず。

1901042

「ロングセラーな」という用法は?ですけど、まあいいでしょう。


発売日は、まだ「1月中旬」までしか発表になっていません。詳しくわかったら、またお伝えします。

ということで、この辞書のおもしろさを改めて、いくつか紹介してみます。

1901043into

前置詞 into の用法。翻訳者ならもちろん、すでにしっかり把握している概念ですが、「場所」と「様態」の両方があるということをきちんと確認できます。


あるいは、newのこの図。

1901043new

「時間軸上で新しい」の意味と、「取って代わって新しい」の意味は当然おさえておく必要があります。


1901043key

次はkey。なんでもない日常語ですが、「点線の先にゴール」が書かれている点が秀逸です。key to successというのは、あくまでも点線の部分であって、successが100%保証されるわけではないということ。

the thing that will do most to help you to achieve something

Macmillanでもこう説明されています。


最後はこれ、mindの項ですが、heartとの比較が付いています。

1901043mind

わかっている人には何でもないことですが、翻訳学校の受講生さんあたりだと、この区別が怪しい人もときどき見かけます。

この違いは、河野一郎先生の『翻訳英和辞典』にも書いてあります。

mindもheartも,抽象名詞としてはともに「こころ」と訳されることがあるので,初学者には区別がつきにくい。いちおうmindには「思考・理性・知性」,heartには「心情・愛情・熱意」などの訳語が当てられているので,おおよその違いはわかるが,次のNewsweek誌の記事のように併記されると翻訳にとまどう。

How old a child must be to both know in his mind and feel in his heart that lying, stealing, cheating, hurting―let alone murdering―are morally wrong is a matter of scientific debate.

ちなみに、昨年の11月に出て「語のイメージ」表示が話題になった『コンパスローズ英和辞典』には、この4語のうちintoだけ図示がありました。

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基本語義として「めり込む」まで書いてある点は○ですが、図示のしかたはどうでしょうね。好みもあるかもしれませんが、「状態の変化」という点は『英語基本語義辞典』のほうがわかりやすいと、私は思います。


というわけで、ご予約くださった方は、発売日までもうしばらくお待ちください。


02:44 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.12.18

# 『図解 英語基本語義辞典』、奇跡の復刊!

私があちこちでおすすめしている辞書

『図解 英語基本語義辞典』

が、なんと復刊されます。2019年1月に発売されるとのことです!


コメント欄に情報をくださった発行元の方から、チラシもいただきました。

1812181

PDFファイルはこちら:図解英語基本語義辞典 復刊チラシ


PDFでチラシをダウンロードしていただくと、注文書が付いています。

コメントをくださった方によると、

本書を全国の書店に配本したく、(中略)そのためチラシにより、「最寄りの書店」さんから「発売元の丸善出版」に注文を出してほしいのです

ということですので、ご購入をお考えの方は、ぜひとも上記チラシをダウンロードし、

書店注文

にてお買い求めください!


元々の値段は分からなくなっているのですが、2,800円というのは、かなりリーズナブルだろうと思います。

この辞書、今年2月のこの記事をはじめ、あちこちでおすすめしています。

リンク:禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # 『図解 英語基本語義辞典』と『図解 英単語イメージ辞典』

1812182_2

おすすめしておきながら、実は絶版で、最近は古本もだいぶ高騰していました。6,000円~30,000円超まで!


たびたび残念に思っていたところへ、この記事に発行元の方からコメントをいただきました。


発行元は、学術書などを中心に扱っているアドスリーという出版社。

こちらが、著者である政村秀實先生の許可を得て、丸善出版から出るということです。


最近は、Twitterで話題になってこんな本が復刊するという事件もありましたが、この辞書も、そういう幸運に巡り会えたようです。

06:31 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.12.11

# 大阪レッスンシリーズ、予定の新ネタ

リンク:「『翻訳に使える文化・雑学・サブカル知識』 in 大阪」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#11)

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おかげさまで残席わずかとなりました。

大阪編では、9/30に東京でお伝えした内容に加え、新ネタをいくつか増やす予定です。


ひとつは、これです。

リンク:Gigazine:歴史上最も影響力のある映画は「オズの魔法使」

以前も、どなたかに「英語圏のネタ元として、『オズの魔法使い』はどうですか?」と訊かれたことがありました。たしかに、いろいろな場面で比喩として出てきますね。

そのほか、この記事に出てくる映画はいくつか取り上げようと思います。


そして、もうひとつはこちら。

日本語訳としては、ほぼ30年ぶりの新訳です。

これがどうやら、翻訳者の視点で見ても、いろいろ興味深いようです(12/8の十人十色「辞書をめぐる冒険3」で、大久保さんから伺いました)。12/10発刊ということで、間もなく手に入ります。

もちろん、私は聖書について蘊蓄を傾けられるわけではありません。あくまでも、翻訳者としての立場で取り上げます。


ということで、年明け早々1月20日の「レッスンシリーズ in 大阪」

御用お急ぎでない方は、ぜひ、お付き合いください。

10:44 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.11.30

# 帽子屋のサブカル講座拡大版、大阪でも!

5月の翻訳フォーラム・シンポジウムに続き、9月30日にはレッスンシリーズ第10弾として、

「英語圏の文化・教養・雑学・サブカル~引用に強くなろう~」

という拡大版セミナーを開催しました(台風の影響でバタバタしましたが)。


なかなかのご好評をいただいたおかげで、同じ内容を大阪でも開催することになりました。

リンク:「『翻訳に使える文化・雑学・サブカル知識』 in 大阪」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#11)

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日時:2019年1月20日(日)12:00~
場所:神戸大学学友会大阪クラブ セミナールーム

です。

申込み開始は、12/3(月)正午


タイトルは少し変えましたが、基本的に同じ内容をお届けします。ただし、時間が少しだけ長くなる分、さらに発展版にしようと、ネタを仕込み中です。


上記の案内サイトのほか、以下のリンク先もご覧ください。

リンク:side A: # レッスンシリーズ第10弾 - サブカル講座発展編、やっちゃいます!

リンク:屋根裏通信 2018年10月04日


下のリンクは、9/30に参加くださった Sayo さんのブログ記事です。今回、レッスンシリーズ第11弾を大阪に呼んでいただいたのも、実は Sayo さんやしんハムさんが中心になったグループです。お呼びいただき、ありがとうございます!


ということで、新年早々、また大阪にお邪魔します。よろしくお願いいたします。

07:31 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.11.24

# 英和学習辞典、新版が立て続けに

強力な学習英和辞典の新版が、あいついで刊行されました。


まず、11月16日にこちらが。

『ライトハウス』の上位版だった『カレッジライトハウス』の系譜、直接的には『ルミナス』の新版だと思いますが、『コンパスローズ』と名前を改めて登場。


続いて、11月22日にこちら。

私がここのところ推薦し続けているウィズダムの新版です。


もうひとつ、

こちらも10月に出ているのですが、まだ確認していません。『オーレックス』より低い学年向けです。


こうやって、学習レベルの英和辞典がきちんと版を重ねているのは、なんともうれしい限りです。しかも、どんどん進化し続けています。

内容がどう変わったか、詳しくはいずれまたレポートしたいと思います。

『コンパスローズ』は、本文も充実していますが、何と言っても売りはこれでしょう。

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語のイメージ表示です。絶版になってしまった『図解 英語基本語義辞典』には、まだ及びませんが、かなり迫っている感じです。

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この「語義のマッピング」もなかなかいい工夫。

(図は、ともに研究社のパンフレットより)


こういう辞書がある今の高校生って、なんと恵まれているんだろうと、つくづく思います。


収録語彙では、まだざっと見ただけですが

・internetの小文字が載った

・provideの語義が増えた

・leverageとかlogisticsの語義が増えた

など、翻訳者にとっても実用的にうれしい進化を遂げています。


『ウィズダム』も、『コンパスローズ』のように目立った新機軸こそありませんが、確実に進歩しています。

コーパスを中心にした編集に、さらに磨きが掛かっているようです。

語彙レベルでも地味な進化がいくつもあり、「受験・ビジネスに」という謳い文句も伊達ではありません。Internetはまだ大文字だけですが、Internetで始まる関連語は13語ありました。

『コンパスローズ』より60ページくらい多いのですが、それでも『ウィズダム』のほうが薄いのは、さすが「辞書の三省堂」のノウハウでしょうか。

オンラインも含めた、今後の電子メディア展開も気になります。

ウィズダムは、最近の電子辞書端末でよく採用されているので、来年のモデルにはきっと第4版が載ることでしょう。

書籍を購入するとオンライン版も使えるようになるDual Dictionaryも、いずれ第4版に対応する予定とのことです。

ちなみに、Dual Dictionaryのサイトは、新版が出ても旧版が残るしくみになっていて、各版ごとに書籍を買っていれば使えることが分かりました(今も、英和第3版と英和第2版、その他があります)。

ただし、その場合のユーザー登録と新規登辞書追加の方法がちょっと分かりにくいので、注意書きを引用しておきます。

一度ユーザー登録と認証クイズをした後で、他の辞書もご購入いただいた場合は、再度のユーザ登録は不要です。
追加でご購入された辞書のログインページからすでにお持ちのID、パスワードでログインされて、最初に表示されるクイズにお答えいただければ、それ以降、その辞書にもお手持ちのアカウント(ID、パスワード)が有効になります。)

アプリはどうでしょうね……。物書堂さん、よろしくお願いします!


コンパスローズは、今ルミナスを載せているKODに収録されるのを期待したいところです。

07:31 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.11.20

# オンライン辞書サイト比較 - 更新版、グラフ付き

先週土曜日(11/17)、ジャパンナレッジと翻訳フォーラムのコラボセミナーで配布した比較表ですが、あれは完全版を印刷しやすいようにまとめたものでした。

どうせならということで、完全版にグラフを付けて再アップロードしました。

ファイル:オンライン辞書比較 2018年11月17日版
※Excelファイル(約32KB)のダウンロードが始まります。


そのほか、JKでわかったことがあるので、以下をお読みください。


ジャパンナレッジさんからお話があって、デジタル大辞泉に類語のセクションがあるというのが話題になっています。


ただ、デフォルト状態だと下のほうにあって、なかなか目に触れない存在なんですね。

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そこで、[前項目一覧]と[後項目一覧]を折りたたんでしまえば---▲をクリックして▼に---、こうやって類語セクションが上のほうに来ます。

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そして、項目によっては、類語だけでなくことわざ、数え方といった関連語も出てくるのでした。

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ことわざと類語は大辞泉のデータですが、数え方は小学館『数え方の辞典』のデータですね。この前、古本で買ってきてから、JKに収録されてることに気づいたやつだ ^^;


デジタル大辞泉、人気急上昇中です。

11:23 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.11.16

# 英辞郎についてのセミナー

ふだんとはちょっと違う環境で、オンライン辞書「英辞郎」を取り上げるセミナーがあります。

リンク:JACET英語辞書研究会主催「『英辞郎』が拓く未来の英語辞書」


英語辞書研究会というのは、「英語辞書・英語語法に関する研究」を行っている先生方の集まりです。

そんなアカデミックな場なのですが、関山先生に呼んでいただいて、私も英辞郎について少ししゃべることになりました。

日時:2018年12月15日(土) 15.00~17.30(14.30 受付開始)
会場:早稲田大学 11号館 4階 大会議室
参加費:500円

タイムテーブルは、以下のとおりです。

15.00 Part 1:辞書ではない『英辞郎』を辞書学的に解剖
 小室夕里(中央大学)「『英辞郎』はなぜ辞書ではないのか」
 井上亜依(防衛大学校)「English Phraseology(英語定型表現研究)の観点から見た 『英辞郎』の有用性と発展性」
 関山健治(中部大学)「電子辞書時代を駆け抜けた『英辞郎』の魅力と課題:検索インターフェイスの観点から」
15.50 休憩
16.00 Part 2: 『英辞郎』と翻訳者
 高橋聡(翻訳者・日本翻訳連盟理事)「『英辞郎』だけで翻訳はできるのか」
16.30 Part 3: 書籍版『英辞郎』とオンラインサービス「英辞郎 on the WEB」の制作サイド
16.40 休憩
16.50 Q&A(ファシリテーター:関山健治)
17.20 閉会

つまり

まずは、大学の先生方が学問的に英辞郎を解剖

私が翻訳者としての立場からコメント

そして最後は、英辞郎の"中の人"が話す

という構成です。


ふだんとあまりに違う環境、こんなスゴいメンバーのなかで話をするというのは、なかなかドキドキものです。


英辞郎を一方的にdisるつもりはありません。無料版とPro版の違いも含め、翻訳者が英辞郎をどう考えればいいのか、具体例を紹介しつつお伝えしようと考えています。


英辞郎について、これだけまとまった形で議論するというのは、かなり珍しい機会だと思います。

事前申し込みは不要のようです。


お時間と興味のある方は、ぜひお越しください。

12:18 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.11.11

# オンライン辞書サイトを比較してみた

最初は、「予算別、辞書環境ガイド」みたいな記事を書きかけたのですが、ゼロ円で構築しようとすると、結局はオンライン辞書に頼らざるをえません。

そこで、まずは無料・有料のオンライン辞書サイトのラインアップを比較してみました。

英英と、英辞郎、辞書ポータルは対象外です。

ファイル:オンライン辞書比較 2018年11月11日版

※Excelファイル(16KB)のダウンロードが始まります。


今回気づいたこと:

・goo辞書で、ランダムハウス英和が使えなくなってました。

・コトバンクは、国語辞典だけならひとまず足りますが、英語系は圧倒的に足りません。

・KODは、ラインアップと料金のバランスでやはり優秀かもしれませんが、国語系が足りません。

・ジャパンナレッジは、やはり圧倒的。どうせなら + R がいい。

06:23 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.11.06

# フェロー・アカデミーで、こんな単発講座やります

ふだん「IT・マーケティング講座」を担当しているフェロー・アカデミーで、来年の1月から3月、こんな単発講座を開きます。

リンク:実務翻訳に必須の周辺知識


1/15(火)~3/12(火)、隔週の全5回です。

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翻訳の周辺で

・必ず知っておきたいこと

・知っておくと仕事に役立つこと

・知っておいたほうが何かとうれしいこと

などなど、これまではまとめて取り上げられる機会がなかったテーマを一気にこなします。


どのテーマも、ごくごく基本の内容から中級くらいの内容まで扱う予定です。産業翻訳者であれば、分野を問わず参考になる情報をお届けします。

10:58 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.10.28

# 第28回翻訳祭 - すばらしい出会い

第28回JTF翻訳祭、ひとまず無事に終了しました。

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初めて、ではなく実は久しぶりに関西での開催となった今年の翻訳祭。内容については、もちろんご意見ご批判など多々あることと思います。その点について、ここでは詳しく触れません。

京都開催という珍しさもあって、いろいろな方にお会いできましたが、特にうれしかった出会いがひとつありました。

何をおいても、まずそのことを書いておこうと思います。

翻訳祭には毎年、ほんやく検定1級合格者をご招待し、交流パーティーで紹介・表彰しています。今年は、例年よりその参加者が多かったのですが、情報処理の分野で合格したある女性に声をかけていただきました。私を見つけて、えらく勢い込んでこう切り出します。

「わたし、アメリアの定例トライアルで先生にA評価を2回いただいたんです!」

アメリアの定例トライアルについては、ちょっと前にこんなブログ記事が公開されています。

リンク:「定例トライアル」の審査員と評価基準を公開!

リンク:「定例トライアル」評価基準

前任者から引き継いで定例トライアルを担当するようになって5年以上たちますが、「AA」を出したのはたしか1回だけ、「A」はいつも数名です。

また、アメリアには

同一分野で12カ月以内に2回A以上を取得するとクラウン会員登録資格取得!

という規定があります。クラウン会員になると、求人応募が有利になる(らしい)のですが、A評価の頻度から言って当然、これに該当なさる方もごく少数です。

「A評価だったのは、どの問題でした?」などと詳細を伺ったところ、2問とも私が○を付けた(プラス評価した)箇所があったとのこと。たしかに、どちらも難解な厄介な箇所でした。

言うまでもありませんが、採点するときには受験者の名前は分からないしくみになっています。誰にAを付けた、ということも分かりません。

審査員などと偉そうな名前で答案を拝見はしていますが、自分の採点と評価判断にいつも揺らぎない自信があるとは限りません(責任は持っているつもりです)。でも、こうして声をかけていただいたおかげで、

同じ人にちゃんとA評価を出していた

つまり、自分の評価判断に、まずまずブレがなかったということを確認できたわけです。いつも思いがけない出会いがある翻訳祭ですが、今回は個人的にこのうえなくうれしい年になりました。

Kさん、お声をかけていただき、ありがとうございました!

このエピソード、さらに驚きが続きます。翌26日、すべての日程が終了した頃のことです。あるセッションにもご登壇くださった広島の翻訳者T氏(だじゃれ魔王の、あの方です)が、このKさんと一緒にいるところを見かけました。T氏は、広島の翻訳会社が運営している翻訳スクールで講師をなさっているのですが、なんと、Kさんはそのスクールの受講生さんだったとのこと。

しかもその翻訳スクール、東京でも今年の春から半年実施され、こちらは私が講師を務めていました。

まとめると、

1 私も縁のある翻訳スクールの受講生さんが
2 私の担当する定例トライアルでA評価を2回とり
3 JTFほんやく検定でも1級をとった

ということです。

もちろん、Kさんは最初から一定以上の実力がおありだったのでしょう。でも、翻訳スクール、定例トライアル、ほんやく検定という3つ別々の場がそれなりの機能をちゃんと果たしているらしい、と改めて確認できたと事例だったと言ってもいいのかな、と。

講師業にしてもトライアル採点業務にしても、同業者の間ではあまり歓迎されない仕事です。翻訳しているのと比べれば、実入りがいいとはけっして言えないからです。でも、こんな出会いがあるだけで、その苦労もいっぺんに報われる思いがします。

今年は、少なくともその点で特別な翻訳祭となりました。

10:11 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.09.24

# 「JTFジャーナル」のこと

日本翻訳連盟(JTF)が隔月で発行している「JTFジャーナル」。

今年に入ったあたりから、誌面の傾向が変わったという声がちらほら届いています。同連盟の理事という立場で、別に今のジャーナルを弁護も養護もするつもりはなく、その声は真摯に受け止めたいと思っています。


そんな折も折、日本工業英語協会が発行している「工業英語ジャーナル」の目次を見る機会があり、ああそういうことなのかな、と思い至った点があります。

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今のJTFジャーナルは、

情報は豊富だが、コンテンツが少ない

ということなのかもしれません。

「工業英語ジャーナル」最新号の目次はこうです。

・仕事はスピードと精度 ビジネス技術英語ライティングの基本(2) 中山裕木子
・工業英検4級頻出文法(33):動詞3 岡裏佳幸
・職場における「英文ライティング教育」(74):電磁気の基礎(その5) 酒井正臣
・科学技術政策と科学技術英語(45) 高橋正人
・科学技術英文作成における注意すべき英語表現(22) 興野登
・楽しく学ぶ英語語法(73):almostとnearlyの差について 田中成幸
・工業英検2級、1級受験勉強のためのアイデア(32):油と脂肪の話(2) 足立圭介
・技術翻訳としての特許翻訳(13):電気化学的に卑な金属 倉増一
・自動車産業の新たな人材、外国人留学生 郷古実
・特許明細書における論理の重要性(80) 仲吉洋一
・図面の英語(5):図面の注記例文ー成型加工 板谷孝雄
・大学英語教育の現状と課題、その対策と背景(2) 時國滋夫
・平成29年度工業英検 文部科学大臣賞受賞者
・E-コマース/E-ビジネス-テクニカル・コミュニケーションー(27) 藤岡慎弥

これだけ「コンテンツ」がそろっていれば、読んでみたい、という気も起きようというもの。


コンテンツというのは、「ほかでは読めないもの」、「読んでみたい」と思わせる内容、だと私は思っています。


一方、今年に入ってからの「JTFジャーナル」の特集タイトルを並べてみると―

2018/1月号「第27回JTF翻訳祭」

2018/3月号「巻頭対談:ニューラル翻訳を超える未来へ」

2018/5月号「翻訳会社の声」

2018/7月号「TCシンポジウムに行こう」

2018/9月号「IJET-29大阪/ISO規格の最新動向」

こうなっています。

これは「コンテンツ」ではなく「情報」。翻訳業界の現状や、それを取り巻く技術の動向を知るために、読む必要がある内容です。

業界団体の雑誌である「JTFジャーナル」には、業界関係者に必要な情報を発信するという大切な役割があります。その情報が業界にとって有益であることも確かです。こうした情報発信は、今後も続けていかなければなりません。

が、有益な情報も、読んでもらわなければ意味がない。雑誌を開いてもらうには、必要に迫られて読む情報だけでなく、読みたいと思えるコンテンツが必要なはずです。

特に個人翻訳者には、そういう「読みたい」という吸引力がなければ、まった振り向いてもらえません。

私が「JTFジャーナル」に関わり始めたのは、2011年5月号からです。

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まだ内容は刷新されていませんが、少しでも個人翻訳者に興味を持ってもらおうと、翻訳者の間でだいぶ使われ始めていたTwitterのアイコンを並べるようにしました。ちなみに、この号でさっそく登場した Madhatter が当時は私のアイコンでした。

翌2012年には、テリーさんや松田さん、遠田さんと一緒にジャーナル編集委員を拝命し、それぞれが連載コーナーをもつようになります。

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手前味噌にはなりますが、このコーナー連載が続いた2012~2015年の4年間は、個人翻訳者にも読んでもらえるコンテンツが、それなりにはあったように思います。

たとえば、この間に私のコーナー「フリースタイル、翻訳ライフ」には、こんな方々に寄稿いただきました。

鈴木立哉さん●朝型フリーランスの優雅な(?)1日
大光明宜孝さん●「ストレスフリーの仕事スタイル
庄野彰さん●生活リズムは夜型ベースで時にランダム。田舎での電脳生活を満喫
仙野陽子さん●字幕翻訳者・仙野陽子のハッピー翻訳ライフ
マーナー摩美子さん●「ちょうどいい」を大切に、マイペースで楽しむフリーランス翻訳ライフ
松丸さとみさん●マインドフル、フルマラソン、充実フリーランス
渡部優一さん●新鮮な刺激を求めて――京都で楽しむフリーランス翻訳ライフ
国枝史朗さん●仕事でも趣味でもことばと格闘
高橋聡●特集:名古屋の翻訳ライフ
青山万里子さん●海を眺めながらのんびり楽しむ翻訳ライフ
セランド修子さん●言語が与えてくれる本質への視点
中村泰洋さん●不明瞭な会社の将来像と明瞭な自身の将来像
大久保雄介さん●「半農半翻訳」はじめました
井口 富美子●かけがえのないもの ― IJET-25実行委員を経験して
三浦朋子さん●ほんやく検定受験 ― 私の場合
中澤甘菜さん●勉強会が教えてくれること
中島拓哉さん●地方都市におけるネットワーキング
糸目慈樹さん/西垣内寿枝さん●ほんまかい
畝川晶子さん●異業種による学びの場「西日本医学英語勉強会」
井口富美子さん●翻訳勉強会十人十色

今こうして振り返ってみても、ご執筆いただいたみなさんには、いくら感謝してもしきれません。

このほかにも、2012~2015年の連載コーナーはいま見ても読み応えたっぷりです。バックナンバーで読めますので、まだの方はぜひ(すべて、無料でダウンロードできます)。

2016年の春には誌面が一新し、新しく(ほぼ)固定の執筆陣による連載がスタート。これが2年間続きました。

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この連載もバラエティー豊かで、やはりそれなりの「コンテンツ」だったと思うのですが.、いかがだったでしょうか。


この春から、遠田さんなどの連載も始まっていますが、やはりまだバランスが気になります。もう少し、個人翻訳者や、翻訳会社の中の個人に届く「コンテンツ」を増やしたいですよね。

ついでに言うと、日本工業英語協会は、個人の年会費が15,000円。これだけのコンテンツが年3回発行され、セミナー等のイベントでも会員と非会員の参加費に2倍の差があります。

これで、個人会員はどのくらいいるんでしょうね、ちょっと気になっています。


01:41 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.09.05

# ジャパンナレッジ紹介イベント

翻訳フォーラムは、2016年から不定期で「レッスンシリーズ」を開催してきました。フォーラムの主宰者と幹事が交代で講師を務め、主に、毎春恒例のシンポジウムで取り上げたテーマをさらに深く掘り下げています。

これとは別に、外からゲスト講師をお招きして翻訳に関わるお話をしていただく新シリーズを開くことになりました。題して「レッスンプラス」です。


その第1回を、11/17(土)に開催します。

リンク:「ジャパンナレッジと見坊さん~優良辞書の選び方・使い方~」(翻訳フォーラム・レッスンプラス#1)

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申し込みは、すでに上記サイトで始まっています。


今回のテーマは2つ。

ひとつは、日本最大の有料辞書ポータル「ジャパンナレッジ(JK)」の詳しい紹介。

運営会社である株主総会ネットアドバンスの中の人に、JKの詳しい使い方を解説していただきます。JKサイトの検索オプションや、コンテンツの特長など、まだ使っていない人はもちろん、使っている方でも見えていない全貌を知る絶好のチャンスです。また、利用者の希望や、収録辞書に関する要望などを伝える時間も設ける予定になっています。

参考リンク:side A: # 『精選版 日本国語大辞典』と、ジャパンナレッジ

レッスンプラスの参加者には

「ジャパンナレッジ+R」1ヶ月お試し権(2,160円相当)

が付いてくるほか、JKにお申し込みになる場合には

ジャパンナレッジ年会費割引サービス

の適用も予定しています。


JKは、けっして安くはありませんが、翻訳者にとってもそれだけの価値があるリソースです。そのことを、改めてご理解いただけるのではないかと思います。

もうひとつのテーマは、見坊行徳さんによる

『場面別にみる辞書の選び方』

見坊行徳さん、知る人ぞ知る辞書マニア。国語辞書マニアが集まって楽しく遊ぶイベント「国語辞典ナイト」のパネリストのひとりですが、ご存じない方は、たとえばこちらの記事をご覧ください。

リンク:#国語辞典ナイト 7 今回は「校正・校閲」大特集!プロの校正者による実演やあのドラマへのツッコミも…? #カルカル

リンク:「チャンピオン」や「りぼん」から国語辞典にのせたい言葉を探す - デイリーポータルZ


見坊さんの話は国語辞典が中心になりますが、どんなことを調べたいとき、どんな辞書を引けばいいかという、翻訳者としては必聴の内容です。

そして、さらにおまけ情報。

会場は、新装移転・オープン直後となる、あの日本出版クラブビル(千代田区神田神保町1-32 神保町駅下車2分)です!

これまでは神楽坂にあり、翻訳者にとっては「洋書の森」の拠点としおなじみでした。

このたび、神保町に移転。11月にオープンとなります。いつもの翻訳フォーラムとはちょっと違うぞ、というスペースを使わせていただけることになりました。

02:23 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.08.06

# フェロー・アカデミーの講座が新しくなります

フェロー・アカデミーで、この秋から担当講座の名前が変わります。


これまでは、中級・上級とも「IT・テクニカル」という名前の講座でしたが、「IT・マーケティング」として生まれ変わります。

リンク:実務翻訳コース[中級]IT・マーケティング

リンク:実務翻訳コース[上級]IT・マーケティングゼミ



「マーケティング翻訳」っていう言葉、ちょっと変な使われ方をしているようにも思うのですが、ともかく何やらどういうわけか、そういうマーケットがあるのは確かです。

IT系翻訳の求人にしても、そういう内容が圧倒的に増えてきています。同業者にしても私自身にしても、「IT翻訳者」の仕事の比率はだいぶ変わってきました。


マーケティング資料や、製品紹介、Webページ、ニュース、ブログなどは、これまでのコースでも扱ってきましたが、さらにその比重を増やすほか、企業紹介などの動画字幕も扱います。できれば、動画字幕編集のフリーウェアも授業で使ってみたいと考えています。

また、マーケティング翻訳に必要なデジタルマーケティングの基礎知識にも触れるつもりです。

Customer Journey

とか

funnel

とか、ああいうやつね^^


開講は10月。


私としても初めて試みることがたくさんあるので、大変ですが、また楽しい半年になりそうです。

07:41 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.07.20

# サン・フレアで辞書セミナー ~TQE過去問も使いながら~

ほぼ2年ぶりくらいだと思いますが、サン・フレア アカデミーさんで、辞書のセミナーを担当します。

リンク:実例から学ぶ辞書活用セミナー~TQE過去問を題材に~ | サン・フレア アカデミー

9月1日(土) 14:00~17:00

の3時間コースです。


辞書については、もうあちこちで話していますし、フェロー・アカデミーでも全3回にわたるオンライン講座が年2回くらいのペースで公開されています。

が、今回は3時間とたっぷり時間のあるコースなので、いろいろな情報をかなりまとまってお伝えできるのではないかと考えています。具体的には―

・辞書の種類(英和、和英、英英、国語、類語:規模など)
・辞書のメディア(書籍、CD-ROM、アプリなど)
メディアごとの上手な使い方
・汎用辞書ブラウザの特徴と使い方
・LogoVista辞書データの扱い方
・EBWin4の使い方
各辞書の特徴
おすすめ辞書ラインアップ
・実際に辞書を使ってみる~TQE過去問を使って~

といったアジェンダを予定しています。特に、赤字で書いた部分は、時間制限の関係で今まであまり取り上げられなかった内容です。

また、扱うTQE過去問は、ITに限定しません。広報やマーケティング、時事関連などの文章も使って、そのなかで特徴的な、ぜひ辞書で確かめたい単語を取り上げます。


いつも、できるだけ「常に新しい情報があること」を心がけていますが、今回も3時間という枠をめいっぱい使って、翻訳者の辞書ライフ充実にお役に立てるような講座にしたいと考えています。


とくとお急ぎでない方は、ぜひお越しください。

01:03 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.07.15

# 電子辞書端末にしかできない使い方

前エントリで書いたように、PASORAMA対応の電子辞書端末には、端末上でしか使えない機能がかなりいろいろあるということを、関山先生に教わりました。

ともかく、買ってきたらすぐPCにつないでしまったので、そもそも本体を開いたのは片手で数えられるくらい。機能としても、序文や凡例を端末上でしか見られない、ということくらいしか知りませんでしたので、この情報を得られたのはとても貴重でした。


長くなったので、前エントリと別の記事にしました。


※以下、できるだけ手元の実機(DF-X10000改)でも確認してみました。さらに、同じ機能を他の辞書環境で使えるかどうかも検証しています。

●平凡社 世界大百科事典

収録項目数が約84,000項目、索引数が約350,000項目です。このうち、PASORAMA上では見出し語の約84,000項目しか検索できませんが、端末上だと索引検索ができるので、候補がずっと増えます。

また、端末上だと分野別のツリー表示もできるそうです。

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●リーダーズ第3版

訳語から、和英の逆引きができます。

1807153

これは実機で試してみました。

1807154

ちなみに、他のプラットフォーム上のR3でも似たような検索はできますが、まったく同じ動作にはならない感じです。

たとえば、PASORAMAの直接の後継に当たる「語句楽辞典」では、「その他」のメニューに「訳語」がありますが、

1807155

和英検索というより、用例から「硬い」(およびその活用形)を拾ってきているようです。

LogoVista上では、明確に使い方が書いてありませんが---こういうところが気になるんですよね---、「前方一致」で和英方向の検索ができました。ただ、結果は端末上とも「語句楽辞典」とも違います。

1807156

また、LogoVistaデータを登録した汎用ブラウザ上だと、
Jamming/EBWin4の「前方一致」は、LogoVistaと同じで16件、
Jammingの「一網打尽」とEBWin4の「自動検索」がともに18件、
でした。


●OSDを単語の属性で検索

OSD(Oxford Sentence Dictionary)とは、20億語のデータベースからなる「Oxford English Corpus」から採用した約100万の例文集です。DF-X10001や、最近のカシオ製品などにもたいてい収録されています。


PASORAMA上では、「例文検索」機能で出てきますが、「例文検索」だと辞書が選べないため、えんえんとスクロールする必要があります。しかも、辞書メニューからOSDを選ぶこともできません。

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こういう使い方をするまでもなく、端末上ならOSDを指定して検索できます。

PASORAMA、成句検索はけっこう強いのですが、用例検索機能はけっこう不完全ですね。


●Britannica Concise Encyclopediaの全文検索

サーチエンジンのように使える、ということです。ふだんから百科はあまり使わないので、これはいいかな^^


●角川類語辞典のカテゴリ検索

たしかに、PASORAMAからは単語でしか検索できません。

iOSアプリ(物書堂)版が、カテゴリ検索に対応しています。


●新編 英和活用辞典の連語パターン検索

ちょっと分かりにくいかもしれませんね。これは、英語のコロケーションを調べる辞書ですから、見出しから、たとえばexciteを引くと、

【副詞1】 例文
【+ 前置詞】例文
【to do】 例文
【+ -selft】例文
【雑】

のように、連語のパターン別に例文が表示されます。ふだんは、こういう分類から例文を探しますが、連語パターン検索だと、最初から連語のパターンを絞って検索できるということです。

たとえば

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こうやって条件を絞ってからexciteを検索すると---そのたびに入力が必要なのは不便ですが---、

1807159

このように、うしろに前置詞が続くパターンだけ探せるわけです。たしかに、そういう検索が必要になる場面はあるかもしれません。


これ、LogoVistaではできませんが、EPWING汎用ブラウザならできます。

18071510

EBWin4なら、検索方法として[複合検索]を選択します。[Complex Seach]というダイアログが開くので、[連結パターン]から[動詞 + 前置詞]を選択し、[単語1]に「excite」と入力します。これで、さっきと同じ結果が得られます(Jammingでもできます。Logophileには「詳細検索モード」というのがありますが、こういう使い方はできません)。


実は、このEBWin4の「複合検索」という機能、私の各種セミナーでもあまり説明はしていません。辞書ごとに、指定する項目かせばらばらだからです。

ただ単語を複数入力して検索する辞書もあれば、この新編活用の「連結パターン」のように指定項目がある辞書もあります。


あ、そうだ。最後に。

電子辞書端末の中古を買うときの注意がありました。液晶画面の経年劣化の問題です。

「ビネガー症候群」と言うそうですが、液晶画面を使わないまま長期間(場合によっては4、5年程度で)放置しておくと、画面が黒ずんでしまうそうです。開いて使っていれば、つまり液晶画面を「空気に触れさせていれば」いいが、開かずに時間がたつのがよくないらしい。


ちなみに、関山先生は、電子辞書端末を百数十台お持ちだそうです……。

05:21 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.07.05

# 7/13(金)JTF翻訳セミナーは、翻訳者必聴!

前々エントリでもご紹介したとおり、来週7/13(金)には、辞書のプロ関山健治先生がJTF翻訳セミナーにご登壇なさいます。

リンク:ネットに頼らない,日英語辞書環境構築入門


以下、講演概要から引用します。

インターネットの普及に伴い,誰もが無料で膨大な情報にアクセスできるようになって久しい。駆け出しの翻訳者も,ベテラン翻訳者も同じ情報検索環境を享受できるようになった一方で,辞書についての正しい知識を身につけ,様々な辞書を使い分けながら,ネット検索では得られない信頼性の高い情報を手にする機会が少なくなってはいないだろうか。

本講演では,昨年秋に開催されたJTF翻訳祭における講演をふまえつつ,英語に加え,日本語の辞書の使い方,使い分け方も紹介したい。英語辞書学の研究者として,実際に辞書の校閲,編集にも携わった経験から,「ことばのプロ」である翻訳者がどのような辞書を揃え,使い分ければいいのかを考える。オークションで安く入手できるようになった電子辞書専用機の意外な活用法,辞書の執筆,編集の現場から見た辞書活用のあり方など,他では得られない内容も盛り込みたい。

申込期限は7/10(火)ですが、翻訳セミナーはいつも直前で一気に席が埋まるので、興味のある方は今週中に申し込んだほうがよさそうです

関山先生については、このブログでも過去に何回かご紹介しています。

side A: # 『英語辞書マイスターへの道』、翻訳者にもおすすめ




これらの本の著者であり、私があちこちでおすすめしている『ウィズダム英和辞典 第3版』でも執筆なさっています。


私もこの数年、辞書についていろいろと話をしていますが、関山先生の知識見識博識眼識にはとうてい及びません。

電子辞書端末、書籍辞書、オンライン辞書、英和・和英・英英・国語と、ともかく私たち翻訳者がふだん使っているあらゆる辞書に精通なさっています。

ふだんは、どちらかというと高校生・大学生を対象にして情報を発信なさっていますが、昨年の翻訳祭でお話しくださった内容からも分かるとおり、私たち翻訳者にとっても有益な情報がたくさん出てきます。


講演のポイントにも注目。

◎ 今,なぜネットに頼らない辞書環境が求められるのか
◎ 電子辞書専用機ならではの機能を翻訳に活かす
◎ 国語辞典の個性を知る
◎ 学習英和辞典・一般英和辞典・和英辞典・英英辞典の「御三家」とは
◎ 特殊辞典はこんな時に役立つ
◎ 翻訳者・辞書編集者・辞書研究者が相互に連携することで辞書は変わる
◎ 昔の辞書・今の辞書・これからの辞書

というわけで、貴重な2時間半になることは間違いなさそうです。


私も、懇親会まで含めて参加します。

02:00 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.06.28

# レッスンシリーズ第10弾 - サブカル講座発展編、やっちゃいます!

前エントリで今後のイベントをまとめて紹介しましたが、レッスンシリーズ第10弾について、あらためて詳しくご案内します。


5月の翻訳フォーラム・シンポジウムで私が担当したコーナー「ヲタクじゃないけどサブカル講座」の、拡大発展版です。

リンク:「英語圏の文化・教養・雑学・サブカル~引用に強くなろう~」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#10)

9/30(日)13:15~16:45

発売開始が来週、7/3(月)12:00です。

私はちょうど、大阪から京都に移動している頃になってしまうので、早めに告知しました。

【7/4追記】

発売開始から24時間ほどで、定員に達してしまいました。m(__)m
あとは、9/20から直前販売枠があります。



5月のシンポジウムにいらっしゃった方はご存じのように、「サブカル講座」とは言いながら、「サブ」以前の話もいろいろしました。

英語を読んだり訳したりするうえで

・知っておきたい

・知らなきゃいけない

・知っていると楽しい

ことはいろいろあって、それに気づかないと困ったことになる。そういう内容を「文化・教養・雑学・サブカル」とまとめてみました。


いま、「知らなきゃいけない」と書きましたが、何でもかんでも知っているなんてことはできません。

翻訳者として大切なのは、

知らなかったとしても、気づいて調べられる

かどうかです。


そもそも私自身、文化とか教養についてエラそうに人前で語れるような人間ではありません。雑学とかサブカルについてなら、まあ人より少しは知っていることもある、くらいです。


でも、幸いなことに、ある程度の

基本をおさえておけば、勘がはたらく

ようにはなる。その「基本」すらないと、ちょっとマズいかも、ということなのです。


ということで、レッスンシリーズ第10弾では、元ネタについて勘がはたらくくらいの基本をご紹介しようと思っています。

お楽しみに~。

10:53 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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# 今後のイベント予定

5月末に、今年前半のビッグイベント「翻訳フォーラム・シンポジウム 2018」が終わりました。

ここから数か月で私が参加する、もしくは登壇する翻訳関連のイベントを並べておきます。


IJET-29 大阪

6/29(金)~7/1(日)

公式サイト:IJET-29 大阪

いよいよ明日からですね。私は、翻訳フォーラムのメンバーとして7/1(日)の最終コマ(15:00~)に登壇します。

リンク:翻訳フォーラム・ベストセレクション

帽子屋のパートは「翻訳者の辞書環境、最新情報」ということで、できるだけ最新の情報をお届けする予定です。

IJET自体にも参加するつもりだったのですが、いろいろな事情により、登壇でのみお邪魔します。

翻訳フォーラム・レッスンシリーズ in 大阪

7/2(日)12:00~16:00

リンク:「『述語から読む・訳す』ワークショップ in 大阪」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#9)

すでにお伝えしているとおり、東京で続けているレッスンシリーズを、大阪で初めて開催します。過去のレッスンシリーズで特に好評だった「述語から読む・訳す」です。私はサポート役。

すでに定員に達していますが、「残念、参加したかった!」という声がたくさん上がれば、大阪開催第2弾もきっとあることでしょう…… :)


ついでに、イベントではないんですが、翌日7/3には、10月に開催されるJTF翻訳祭の会場を下見に行ってきます。

今年は、3月に続いて2度目の大阪です。みなさん、またよろしくお願いしま~す!


十人十色、辞書セミナーとミニミニ辞書発表会

7/8(日)13:05~17:00

リンク:十人十色「辞書をめぐる冒険 - 辞書セミナー + ミニミニ辞書発表会」
※Facebookグループのイベントページです。十人十色に入っていないと見られません。

川月現大さん、高橋さきのさん、帽子屋の3人が辞書について話しますが、今回の目玉はむしろ、「ミニミニ辞書発表会」でしょう。

参加者全員が、3分以内で自分のイチオシ辞書---実際に役立っている辞書でも、とにかく好きという辞書でも、なんでもかまいません(詳しくはこちら)。

とても十人十色らしい試みで、私も今から楽しみです。

こちらは、いったん満席になりましたが、キャンセルが出て6/28時点で1席だけ空きがあったような……。


なお、十人十色のイベントはもうひとつ決まっているのですが、まだ告知されていないので、発表がありしだい、こちらでも詳細をお伝えします。


JTF翻訳セミナーに関山健治先生が登場!

7/13(金)14:00~17:00

リンク:ネットに頼らない,日英語辞書環境構築入門

昨年の翻訳祭で好評だった関山先生、拡大版として、JTF翻訳セミナーに登場です。もちろん、私も聴きにいきます。

お申し込みは7/10(火)まで!


●7/14(土)--この日もイベントがあるのですが、全面公開ではないので、ここでは控えます。


『翻訳地獄へようこそ』刊行記念トーク

7/28(土)

リンク:『翻訳地獄へようこそ』(アルク)刊行記念 翻訳家の天国と地獄

実は私、宮脇孝雄さんのお話を一度も聞いたことないんです。なので、これに申し込みました。

まだ席はあるのでしょうか……。ジュンク堂に電話で申し込めます。


越前さんが、東江さんについて語る会

8/4(土)『ねみみにみみず』の快進撃

『ねみみにみみず』が出てすぐにもトークイベントはあったのですが、そちらに参加できなかったので、こちらに。

人生初の「朝カル」です。メンバーカードなんとも届いて、ちょっとうれしい。


サブカル講座、拡大版

9/30(日)13:15~16:45

5月のシンポでやって「ヲタクじゃないけどサブカル講座」の拡大版を、レッスンシリーズ第10弾として開催することになりました。詳しくは、次の記事で。

03:04 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.06.14

# 十人十色イベント、「辞書を巡る冒険」

7月8日(日)13:00から、翻訳勉強会グループ「十人十色」のイベントがあります。

リンク:辞書を巡る冒険 - 辞書セミナー+ミニミニ辞書発表会
※Facebook上のイベントページです。アクセスできない方は、以下の情報をご覧ください。


今回は、セミナー形式と、全員参加形式の2本立てです。

参加者全員

が、イチオシの辞書または珍しい辞書について、一人3分以内で発表する形をとります。


発表が必須だからと言って、臆することはありません。不安な方は、以下をよ~くお読みください。

参加者には、ミニミニ発表用の定型フォームを用意しています。


・ふだんよく使っている辞書

・これがなかったら仕事にならない、という辞書

・特定の専門分野にとにかく強い辞書

・電子版がなくてお世話になっている紙の辞書

・こだわって使っている古い版の辞書

・今は手に入らない秘蔵の辞書

・学生時代に赤線を引きまくってボロボロになった辞書

・著者(編者)のサイン入り辞書

・なんらかの思い入れのある辞書

……などなど、どんな内容でもOKです。


「発表」というと身構えてしまうかもしれませんが、心配には及びません。前に出て話すのではなく、各自の席で順に話していくことにしました。いわば、全員で、

辞書について少しずつネタを提供する

くらいの軽いノリで考えれば大丈夫でしょう。


勉強会「十人十色」はもともと、

翻訳に関するいろいろなことを、お互いに見せ合う

ところから始まった会です。

一方的に聴くだけではなく、「自分も発表者になる」ことで見えてくる世界があります。そして、発表しようとすれば、必ず自分の辞書環境について発見、再発見があるはずです。

セミナーパートのほうは、以下のような内容を予定しています。

高橋さきのさん 「辞書を科学する」

アルク『翻訳事典2018~2019』に載った「辞書を科学する:辞書は組み合わせて使う」に関連する内容です。


川月現大さん 「頭の中の辞書*を拡張する」

* 頭の中の辞書=メンタルレキシコン(心的辞書)

辞書は「使われる」ものではなく「使う」もの。辞書に正解を求めるだけではいけない。その場面で最もふさわしい言葉を見つけるにはどうすべきか、というお話です。


帽子屋 「紙の辞書もいいぞ!」

私は、紙の辞書の話をします。

以下、募集要項を貼っておきます。

★Facebookの参加ボタンを押しただけでは参加になりません★

6月13日(水)午後8時からメールによる募集を開始します。メールの先着順ですが、初参加またはご遠方の方を7名優先します。

◆必ず以下の件名でお送りください(返信される際も件名は変更しないでください。Gmailでは同じ件名はひとまとまりになるので事務処理がしやすく助かります)

【★初参加・遠方:辞書を巡る冒険 - 辞書セミナー+ミニミニ辞書発表会
】+(フルネーム+Facebook登録名)

その他の方は

【★★一般:辞書を巡る冒険 - 辞書セミナー+ミニミニ辞書発表会
】+(フルネーム+Facebook登録名)

としていただき、FBで使用されているフルネームを本文にも記入の上、十人十色のメアド
10.10.honyaku@gmail.com
宛てに、6月13日(水)午後8時以降、メールをお送りください。

★★それより早く届いた方は無効となります★★。

人数が確定した時点で、返信メールを差し上げます(すぐには返信できませんのでご了承ください)。返信メールで参加費の振込先をお知らせいたしますので、振り込まれた時点で参加確定となります。


参加者全員で、楽しく辞書について語り合う―― 十人十色ならではのイベントです。

ぜひ、気軽にご参加ください!

11:36 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.06.07

# 柳瀬尚紀の『ことばと遊び、言葉を学ぶ』

先週末に買って読んだエッセイ本を、もう一冊ご紹介。

久しぶりに柳瀬節を読みました。

私の好きな翻訳者のひとりで、エッセイも昔から好んで読んできましたが、最近しばらくまじめに追っていなかったので、うかつにも、『日本語は天才である』というのが出ているのを知りませんでした。

これも慌てて注文しましたが、本書でも

日本語の豊かさを信頼していて、探せば必ずぴったりの語が見つかるという信念があるからです。

という言葉が、とても印象的でした。


さらに、あとがきではこうも書いています。

私は、翻訳というものについて、翻訳者の個性というよりは、翻訳の言葉が日本語のほうから降ってきてくれるものだと考えるようになりました。翻訳をするときには、私は、日本語を通訳しているだけなのです。

英語も日本語もあれほど自由闊達縦横無尽変幻自在空前絶後に操れるようになって初めて出てくる言葉ですね。ずっしりと、重みがあります。


柳瀬氏の訳業は、ルイス・キャロルからロアルド・ダール、ジェイムズ・ジョイスまで幅広く、私もさすがに『ユリシーズ』は読んでいませんが、たとえばこんな作品で手軽に接することができます。

19世紀イギリスのナンセンス作家、エドワード・リア。たぶん、日本には柳瀬氏が紹介したと言っていいはず。

伝承童謡 Nursery Rhymes(マザーグース)から、ルイス・キャロル、そして20世紀的痛烈ギャグ集団モンティ・パイソンまで連綿と続く、英国ナンセンスジョークの系譜に位置する重要なひとりです。


そして、柳瀬氏が、文字どおりぼろぼろになるまで使い込んだというのが、

『熟語本位 英和中辞典』

言わずと知れた、斎藤 秀三郎編の名辞書です。今では、CD-ROMも付いた新版が出ています。

今までなかなか買えずに--むかし書籍版を持っていたので、正確には買い換えられずに--いたのですが、これを機に購入に踏み切りました。

だからといって、柳瀬尚紀の真似ができるわけではとうていありませんが、氏がほれ込んだ辞書に、あらためて触れてみたいと思いました。

ところで、本書『ことばと遊び、言葉を学ぶ』のイラストは、古川タクが付けています。

古川タク

って、ご存じでしょうか。知る人ぞ知るアニメーション作家なのですが、日本のいわゆる「アニメ」ではないアニメーション作品の世界の人です。

こんな感じの絵、見たことありませんか?

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「みんなのうた」、などでもときどき見かけます。


エドワード・リアは、イラストも自分で描くのですが、古川タクの絵はちょっとリアの絵にも通じるところがあります。

10:08 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.06.05

# 東江一紀さんの『ねみみにみみず』

読み終わってから、改めて帯を締めたら、いや本の帯を見たら、

おもしろうてやがていとしきエッセイ集

と書かれていました。まさに、そういう一冊でした。

残念ながら、生前の東江さんには(もちろん、生後の東江さんにも)面識はないのですが、この本を読み終わった頃には、そのお人柄の1億分の1くらいには触れられたかもしれないという気になった感じがしないでもありません。

そんな私がこの本のことを書いたりするのは、僭越至極恐縮千万呉越同舟傍若無人で、畏れ多くて恐れ入谷の鬼子母神なのですが、まあここは私のブログなので、好きに書きます。


翻訳に携わっている人、翻訳者をめざしている人にとって必読かどうかは分かりませんが、少なくとも

「厄介な仕事だ、まったく」

の章だけは読んでください。山岡洋一さんの『翻訳とはなにか』とは、言うまでもなく文体もスタンスも何もかも違いますが、でもこの短い章に書かれていることって、どれも翻訳という仕事の本質です。

もちろん、東江さんの魅力に触れたければ、そのほかの章もやっぱり読みましょう。本が売れたほうが、ご本人もきっと喜んでくださるでしょうし。


アマゾンでひとつだけ付いているコメントを見ると、『ストーナー』などで東江さんの文体に触れた人にとっては、『ねみみにみみず』の全編に流れる"おちゃらけ"文体は意外なようです。

私などは、どちらかというとデイブ・バリーのシリーズみたいなノリが大好きだったので、この文体は、さもありなんでした。


本書に収められた数々のエッセイ、その洒脱な文章の裏に垣間見える故人の巨大さ。まさに「翻訳の巨人」です。

もちろん、こんな巨人の文章を真似しようとしたら火傷をするに決まっているので、翻訳にしてもエッセイにしても、ただただ名人芸を楽しむのみ。

後進を育てる際の厳しさとやさしさも、ときどき顔をのぞかせます。自分の甘さを恥じ入るばかり。

とは言っても、けっして堅苦しい本ではないので、好きなお酒でものみながら読むというのが、本書の正しい取り扱い方でしょう。私もそうしました。


それなのに、そんな読み方をしていても、読み終わると襟をただしたくなるのが不思議です。その秘密のひとつは、たぶん編集後記にあります。

「変な表記、じゃない、編者後記」

と題した編集後記は、編者を務めた越前敏弥さんによるものですが、これが本書の仕上げです。ただの編集後記ではありません。

東江さんの遺した文章を並べて、おそらくは何度も再読し、再構成しながら東江さんの姿を思い出し、そして最後には、遺影のようにその姿を前にしながら、越前さんは編集後記をお書きになったのではないか――勝手な想像ですけど、そう想像したくなるほど、編者後記まで含めて完成した形になっている。私はそう読みました。

東江さんと越前敏弥さんのことで、どうしても心残りなことがあります。この機会に書いておきます。


東江さんがお亡くなりになったのは、2014年6月21日でした。

私はというと、ちょうど前日から東京ビッグサイトのそばに泊まって、翻訳業界の一大イベントのまっ最中。そう、東京で開催されたIJET-25のちょうど期間中でした。

そして、越前さんには、私がお願いして、そのIJET-25の2日目(22日)にご登壇をお願いしてあったのです。

たしか、21日のうちに越前さんから「東江さんが亡くなった」と連絡があり、委員会側ではこんなチラシも用意していました。

1806051

それでも、越前さんは予定どおり、翌22日にはビッグサイトにお越しくださったのですが、ふだんとは明らかに様子が違っていました。

私はたぶん、哀悼の意すらろくに示さず、ともかく越前さんの登壇するセッションのことしか考えていなかったと思います。

あのときの越前さんのご心中を察していれば、こちらからもっと強硬に、「登壇なんかキャンセルして、あちらにいらっしゃってください」、と申し出るべきだったんじゃないか……。


あれ以来、ずっと気になっていました。

それだけに、編者後記の最後の一文が、よけいに響きます。

01:02 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.05.24

# 「うんのさんの辞書」、いよいよV6が登場!

「うんのさん」の愛称を知らない人はモグリと言われる……

『ビジネス技術実用英語大辞典』という正式名称をみんな言えない---私も今、書きながら確認しました---。

これが初めて搭載された電子辞書は大歓迎された---私ももちろん買いました---。


……などと言われるほど、今や翻訳者ご用達となった辞書の新版が、2010年以来8年ぶりに発売されます。


リンク:Project-Pothos.com

リンク:海野のビジネス技術実用英語大辞典

※上のリンク先がプロジェクトポトスの公式サイトですが、以下の内容は下のリンクからのほうが分かりやすいと思います。


1805243_2

現行のV5に続くV6。もちろん、今回も

EPWING

仕様です!


しかも、旧版をお持ちの方には、何パターンかアップグレード割引きがあるので、上記の公式サイトで必ず詳細をお確かめください。


そして、いよいよ今週末に迫った翻訳フォーラム・シンポジウム2018では、海野さんご夫妻から直接、このV6を買えることになっています。

・公式発売より1日早い販売!

・シンポジウム特別価格で、さらにお得

ちなみに、日外アソシエーツやAmazonでも取り扱いは6月からとのこと。


うんのさん公式での割引き価格は、以下のページに説明があります。

リンク:ビジネス技術実用英語大辞典V5からV6へのアップグレード割引

簡単に書いておくと(以下、すべて税込み)、

  • 定価は、12,096円(V5の所有は関係なし)
  • プロジェクトポトス(公式サイト)直販で、
    • 新規購入の場合は、9,990円
    • V5のシリアルコードがあれば、番号によって6,480円または5,400円(下記に注)
ということです。


そして、27日の翻訳フォーラム・シンポジウムでは、上記からさらにサービスしてくださいます。

リンク:翻訳フォーラム・シンポジウムにおけるビジネス技術実用英語大辞典V6アップグレード割引

  • 新規購入の場合は、9,000円
  • V5のシリアルコードがあれば、6,000円または5,000円(下記に注)
端数ばっさり切り捨て!


シリアルコードは、V5のパッケージに入っています。これです。

1805241

私のは、コードの末尾番号が 4 でした

【訂正】
ご指摘いただきました。私のは、たまたま見えてる部分の最後が 4 なだけで、サイトで説明している「末尾の付加番号」ではありませんでした。ハイフン付きの -4 があるかどうかですね。

たぶん、わりと最近(V6のリリースが決まってから)購入した場合に付いている。つまり、よくあるように「最近V5を買った人は、その分安くV6にアップグレードできる」というパターンです(ってか、ご夫妻にそう説明された気もします)。


シリアルコードが見つからない!

ということもありますよね。そんな場合も、かなり丁寧に対応してくださいます。上記サイトをお確かめください。


パッケージはあんまりとっておかない私の手元に、なんでちゃんとコードがあったかというと、

1805242

ご夫妻のサインをもらった大切なパッケージだからです。

リンク:side A: # 「うんのさんの辞書」V5 発刊記念パーティー

このとき購入して、サインをいただきました。


27日のシンポジウムにご参加の方も、ご夫妻から直接V6を購入できる、またとないチャンスです。

きっと、ご夫妻のサインももらえます!


今回のV6は、公式データによると、

・英和編 親見出し約24,360語、副見出し1,370語、用例 約115,850件

・和英編 親見出し約27,610語、副見出し160語、用例 約119,310件

ということです。V5が

・英和 ― 見出し22,583語、副見出し1,342語、用例のべ105,588件

・和英 ― 見出し25,753語、副見出し157語、用例のべ109,233件

ということですので、見出しはそれぞれおよそ2,000語、用例は10,000例増えているようです。もちろん、これがどれほど大変な作業だったか、想像に難くありません。


ちょうどいい機会です。V5をお持ちの方は、ぜひ「はじめに」をお読みになってください。

EBWin4 では[検索]→[メニュー]、Logophile では[検索]→[メニュー検索]です。

特に27日のシンポジウムにいらっしゃる方は、「はじめに」を読んでからご夫妻に会うと、印象が絶対に違うはず。


V6でどんなところが変わっているのか、私も手にするのが楽しみです。

11:01 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (1)

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2018.05.18

# EBWin4 64bit版

さっき、なぜかEBWin4がまったく起動しなくなりました。原因はわかりません。Windows UpdateなどでOSに変化があったわけでもないしなぁ……。


で、新バージョンも出ているし、インストールし直してみようかと思ったのですが、しばらく前に64bit版も出はじめていたので、試してみることにしました。

リンク:EB series support page

最新版はv4.5.5(4/24)で、インストーラをダウンロードすると、64bit版と32bit版が両方入っています。

以下、注意点と簡単な報告です。


【注意】

2017年7月に公開されたv4.4.5から、インストーラの形式が変わりました。64bit版/32bit版とも、

1805183

このように、.exeと.msiが入っています。

初めてインストールする場合には、.exeをダブルクリックすれば必要なコンポーネントも含めて、問題なくインストールできるでしょう。

一方、すでに旧バージョンをインストールしている場合などは、.exeを実行すると途中でエラーメッセージが出て進めなくなります。

1805185

この場合は、.msi のほうをダブルクリックすればインストールできるはずです。詳しくは、過去の記事もご覧ください。

参考リンク:side A: # EBWin4 4.5.1 --- いろいろ進化してた!

64bit版と32bit版は共存できるということなので、上書きインストールではなく別インストールしてみました。

そうすると、いろいろと設定のし直しが必要かと思いましたが、登録辞書については、今までの設定をすべて引き継いでくれました。

C:\Users\<ログインユーザー>\AppData\Roaming\EBWin4

にあるデータです。これは助かりました。


インターフェースデザインやフォントなど、アプリケーション自体の設定は改めて必要になります。これは以前から変わらない動作。ちなみに、ウチのEBWin4はこんな設定です。

これが一般的な動作設定。

1805181

[連続表示]のオン/オフは、インターフェース上でも切り替えられます。[語尾補正]と[アクセント記号を除去して検索]は、たいていオンでOK。


1805182

フォントの色は好みですが、[行間]はこのくらいがいいかも。デフォルトは[1/4]ですが、けっこう詰まった印象です。

11:13 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.04.30

# 【速報】レッスンシリーズ、大阪開催が決定!

これまで8回、東京で開催してきた翻訳フォーラム・レッスンシリーズですが、ついに

大阪で開催

できることになりました。


皆さんもご存じのように、6月29日から7月1日まで、日本翻訳者協会(JAT)の年次イベントIJETが、今年は大阪で開催されます。

リンク:IJET-29 (大阪)

翻訳フォーラムの4人も、最終日に登壇します。


で、せっかくフォーラムとして関西に行くのだからということで、翌7月2日(月)に、レッスンシリーズ第9弾もやっちゃおう、ということになった次第。

お題は、昨年の10月に東京で開催して好評だった、

「述語から読む・訳す」ワークショップ in 大阪

です。


詳細の発表はこれからですが、募集人数は多くない予定なので、興味のある方は今のうちにまず日程だけ空けておいてください。


なお、今回の大阪開催にあたっては、関西在住のSayoさんとしんハムさんが全面的にお手伝いくださっています。

Sayoさんは、昨年10月の「述語から読む・訳す」ワークショップにご参加になり、ブログにそのレポートを書いてくださっています。

リンク:屋根裏通信 「述語から読む・訳す」ワークショップ


「述語から読む・訳す」

という考え方は、これに先立って春のシンポジウムなどでちらっと概念だけ紹介されました。それを、レッスンシリーズの第7弾として実施したのが、このワークショップでした。

Sayoさんのブログにもかなり詳しく書いてありますが、講師である高橋さきのが考案したオリジナル教材を使うこのワークショップは、いま現在どんな形で翻訳と携わっている方にとっても、目からウロコの発見があるはずです。


ということで、詳細はしばらくお待ちください。m(__)m


ちなみに、講師は高橋さきの、進行補助を深井裕美子が務めますが、私もサポートとして参加します。

02:01 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.04.27

# シンポジウム2018 & 大オフ、第2次受付中!

翻訳フォーラム主催のシンポジウムと大オフ、第1次発売分はおかげさまで予定数に達し、現在は第2次申し込みを受付中です。

リンク:シンポジウム2018 ~つなぐか切るか~

ギリギリまで日程が固まらない方のために直前枠もありますが、そちらはごく少数です。お申し込みは今のうちに。


そして、シンポジウムのみお申し込みの方、大オフ参加をまだ迷っている方、特に翻訳フォーラムのイベントが初めての方は、

大オフのほうもぜひ

参加してみることをおすすめします。


大オフには、

「人と人とのつながり」

が待っているからです。

翻訳するうえで必要な要素はなにか、という問いの答えとしてあげられるのは、一般的に

・原文を読みとる「読解力」

・訳文を書く「文章力」

・いろいろなことを調べる「調査力」

の3つでしょう。


しかし、翻訳を仕事にする(仕事として続けていく)うえで必要な要素となると、もうひとつ

・人とのつながり

も、欠かせないファクターになってきます。


ひと昔前であれば、翻訳者とは「ひとり家にこもって黙々と仕事をするもの」というイメージだったかもしれません(その当否はともかくとして)。

今でも、それで仕事が成り立たないわけではありませんが、そのままでは必ずどこかで壁にぶつかります。

翻訳スキルも伸びにくくなり、仕事の広がりにも影響します。


同業者の多くが翻訳者どうしで勉強会を開き、研鑽に努めているのは、そのためです。また、仕事についても

紹介を通じた請けた仕事のほうが、総じて良い

と、みなさん異口同音に言っています。私自身も、まったく同感です。


そういうつながりを作れる格好の機会が、おおぜいの翻訳者の集まる場です。

そして、翻訳フォーラムの大オフは、そういう翻訳者の集まりに初めて参加するにも最適だと思っています。

・個人翻訳者がたくさん集まる

・社内翻訳者もたくさん集まる

・いろいろな分野の翻訳者が集まる

・いろいろな経験年数の翻訳者が集まる

からです。


「人とのつながり」っておもしろいもので、一度つながりができると、そこから先はおもしろいように広がっていきます。

そういう最初の一歩を作れていないという方こそ、ぜひ大オフにも参加してみてください。

01:29 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.04.07

# フェロー・アカデミー、オンライン辞書講座・第3弾

フェロー・アカデミーで、これまでに2回、私の「オンライン辞書講座」が配信されました。

第1弾:翻訳者のための辞書セミナー〜選び方と読み方を見直してワンランク上の翻訳を!〜

第2弾:翻訳者のための辞書セミナー~オンライン英英辞書を使いこなそう!~

※第1弾と第2弾は、すでに配信を終了しています。そのうち、また配信されるかもしれませんが……。


そして現在は、第3弾を配信中です。

第3弾:翻訳者のための辞書セミナー~辞書引きから訳文作りの実践へ~

2月の翻訳フォーラム・レッスンシリーズ、3月のJTF関西セミナーでそれぞれ開催した「脱・辞書の持ち腐れ」に近い内容ですが、第1弾と第2弾の復習にあたる内容も盛り込んでおり、取り上げている課題も異なります。

内容のご紹介:

1.どんな辞書を引くか(約35分)
 ・英和、和英、英英、国語
 ・大辞典、中辞典、学習辞典、専門辞典
 ・辞書の発行年
 ・辞書の形態
2. どのように引くか(約15分)
 ・成句をどう引くか――辞書の形態ごとに
 ・語義や語法をどう読むか
3.課題(事前課題/練習問題)の解説(約30分)

配信期間(4/14~5/6)であれば何度でも視聴することができ、講師である私に1回だけ質問できるというおまけも付いています。


申し込み締め切りは明後日、

4/9(月)

です。


東京と大阪で「脱・辞書の持ち腐れ」にご参加になれなかった方も、ぜひこちらをどうぞ!

12:51 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.03.31

# 翻訳フォーラム・シンポジウム2018 & 大オフ

翻訳フォーラム・シンポジウム & 大オフ、今年もやります!

ということで、告知サイトがオープンしました。

リンク:シンポジウム2018 ~つなぐか切るか~

1803311

今年のテーマは、「つなぐか切るか」です。

多くの翻訳者が悩むのが、文やパラグラフは、原文通りに切るべきか、状況に応じてつないでも良いものかということ。そこにルールはあるのか、正解はあるのかを、様々な角度から論じます。


申し込みは、まだちょっと先ですが、昨年と同じく第一次と第二次に分けて行い、直前枠も若干ですが用意します。

第1次発売 4/15(日)10:00~5/24(木)10:00

第2次発売 4/20(金)18:00~5/24(木)10:00

直前 販売 5/14(月)10:00~5/24(木)10:00


例年、大オフのほうが先に満員御礼になってしまうので、今年は大オフ会場を大きくしました。

みなさん、今年も、チケット発売開始に向けて、スタンバイをお忘れなく!

シンポジウムの会場は、過去何回かと同じくお茶の水女子大

大オフは、池袋ですが、東京芸術劇場の2Fという好立地です。


《テーマと登壇者(予定)》

第1部 11:00-12:35

1)「文の構造、段落の構造」高橋(さ)・井口・高橋(聡)

2)「2018辞書最新情報」深井裕美子/高橋(聡)

昼休憩(50分)

第2部 13:25-15:00

3)「ヲタクじゃないけどサブカル講座」高橋聡

4)「今こそ学ぶ!先達の翻訳論」星野靖子(めだかの学校)

5)「パンクチュエーション101」深井裕美子

休憩(15分)

第3部 15:15-17:00

6)「コヒージョンを考える」佐復純子(めだかの学校)

7)「さようならブチブチ文~文章の『きれつづき』」高橋さきの

8)「何が出るかなQ&A」高橋(さ)・井口・高橋(聡)・深井


今年の大テーマは「つなぐか切るか」ですが、第2部の3)と4)は、テーマを離れた余談コーナーです。


そして不肖・帽子屋は、熱いご期待に応えて、ついに

「翻訳者向けのサブカル講座」

をやってみようと思っています。


1803312

これとか、

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これとか

1803314

これとかが、いったい何を表していて、最近の英語圏文化を知るうえでは、

・聖書

・シェイクスピア

・Nursery Rhyme

などと並ぶ周辺知識としてどれだけ欠かせなくなっているか、ということをお伝えしようと思っています。

03:20 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (1)

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2018.03.20

# フェローのほかでも、授業が始まります

アビリティ・インタービジネス・ソリューションズ

という、広島の翻訳会社さんがあります。

本拠地・広島では、しばらく前から翻訳学校も運営しており、東京でもこの春から「プロフェッショナル翻訳者育成コース」が開校することになりました。

リンク:AIBS翻訳スクール


その講師を、帽子屋が務めます。

リンク:プロフェッショナル翻訳者育成コース|東京校|AIBS翻訳スクール


開講は4月18日(水)。隔週で全10回を予定しています。


フェローとはもちろん違うカリキュラムですが(全10回)、帽子屋が持っている翻訳のノウハウをとことんお伝えする点は変わりません。翻訳会社の運営なので、フェローより、さらに実践的、実務に即した内容になりそうです。


現在、説明会を随時開催していますので、興味のある方はぜひお問い合わせください。

10:20 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.02.27

# 関西セミナー、本日18:00締切です!

すでにご案内しているJTF関西セミナー、いよいよ今週の金曜日に迫ってきました。

脱・辞書の持ち腐れ《60Hz》~どの辞書をいつ引くか~


深井裕美子さんと帽子屋という辞書コンビ、初の関西登壇です。


お申し込みは、本日18:00までです。


なお、今回の参加者特典として、帽子屋が作った

「EBWin4マニュアル」も配布

します。


ご参加予定のみなさん、よろしくお願いします!

09:50 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.02.19

# EBWin4、Web検索URLの更新版

汎用辞書ブラウザEBWin4で、URLを登録しておいて各種辞書サイトを検索できる「Web検索」の機能については、これまでにも何度かご紹介しました。

昨年7月には、(たぶんレッスンシリーズの後で)私が手元で登録しているURLリストも公開しています。

参考リンク:side A: # EBWin4のURLリスト - 8/17版


ところが、辞書サイトのURLはわりと頻繁に変わったりします。

特に最近多いのは、URLの先頭で httphttps に変更されるケースです。

HTTPSで始まるサイトは、大ざっぱに言うとSSLというしくみでセキュリティが強化されています。以前から、オンライン決済を使うサイトなどは必ずHTTPSでした。一般のサイトはHTTPも多かったのですが、Google先生が「HTTPSサイト以外は信頼しないかんねー」と言ったりした経緯もあって、HTTPSに移行するサイトが増えています。

EBWin4に登録してあるURLを調べたところ、やはりほとんどのサイトがHTTPSに移行していました。

HTTPのままでもリダイレクトされるので、使えるには使えるのですが、この際ですから更新しましょう。


今回の更新にはもうひとつ理由があります。

イギリス語系の辞書サイトも、たいていはアメリカ語の検索オプションが用意されています。

1802191
こちらはOxford Dictionaryのサイト。

1802192
これはCambridgeです。


このようにサイト上では選択できなくても、オプション設定でBritish/Americanを切り替えられるサイトもありました(Macmillan)。


どの場合も、切り替えて検索してみると、結果のURLが違いました。URLのどこかにAmericanとかUSなどの文字列が追加されているケースがほとんどです。


そこで、British/Americanを使い分けられるサイトは、せっかくなのでEBWin4のWeb検索でも登録を分けてしまおうということです。


以下に最新のURLを掲載します。http→ https の変更だけではない場合もあるので、該当する辞書をお使いの場合は、まるっと変更してください。

※昨年7月より、いろいろ増えています。

※以前と変わっていないURLも一部あります。

※赤字が、米語系のサイトです。

ジャパンナレッジ
http://japanknowledge.com/psnl/search/basic/?q1=

WikiPedia(jp)
https://ja.wikipedia.org/wiki/

WikiPedia(en)
https://en.wikipedia.org/wiki/

Wiktionary
https://en.wiktionary.org/wiki/

Google Japan
https://www.google.co.jp/search?output=&sitesearch=&hl=ja&q=

AHD
https://www.ahdictionary.com/word/search.html?q=

Cambridge
https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/

Cambridge American
https://dictionary.cambridge.org/us/dictionary/english/

Collins
https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/

Collins American
https://www.collinsdictionary.com/us/dictionary/english/

Longman ※米語はないようです
https://www.ldoceonline.com/dictionary/

Macmillan
https://www.macmillandictionary.com/dictionary/british/

Macmillan American
https://www.macmillandictionary.com/dictionary/american/

Merriam-Webster
https://www.merriam-webster.com/dictionary/

Webster Learner's
http://learnersdictionary.com/definition/

Merriam Unabridged(有料)
http://unabridged.merriam-webster.com/unabridged/

Oxford Dictionary
https://en.oxforddictionaries.com/definition/

Oxford American
https://en.oxforddictionaries.com/definition/us/

Oxford Learner's
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/

Oxford Advanced American
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/american_english/

Oxford Reference
[URL]http://www.oxfordreference.com/search?q=
[Post]&searchBtn=Search&isQuickSearch=true

WebLSD
https://lsd-project.jp/cgi-bin/lsdproj/ejlookup04.pl?opt=i&query=

Urban Dictionary
https://www.urbandictionary.com/define.php?term=

Green's
https://greensdictofslang.com/search/basic?q=

訳語辞典
http://www.dictjuggler.net/yakugo/?word=

類語玉手箱
http://www.thesaurus-tamatebako.jp/?s=

コトバンク
[URL]https://dic.yahoo.co.jp/search/?ei=UTF-8&fr=kb&p=
[Post]&dic_id=all&stype=full ※なくても可

goo辞書(RHD2が使えます)
[URL]https://dictionary.goo.ne.jp/srch/all/
[Post]/m0u/ ※必要

Dictionary.com(レイアウト崩れ)
[URL]http://www.dictionary.com/browse/
[Post]?s=t ※なくても可

The Free Ditctionary(レイアウト崩れ)
https://www.thefreedictionary.com/

OneLook(レイアウト崩れ)
[URL]https://www.onelook.com/?w=
[Post]&ls=a ※なくても可

英辞郎
https://eow.alc.co.jp/search?q=

英辞Pro(有料)
https://eowp.alc.co.jp/search?q=

MSランゲージポータル
[URL]https://www.microsoft.com/ja-jp/language/Search?&searchTerm=
[Post]&langID=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E&Source=true&productid=%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%81%AE%E8%A3%BD%E5%93%81
※必要

KOD(有料)
[URL]https://kod.kenkyusha.co.jp/service/search/search_frame.jsp?back=false&page=form.jsp&methodName=%95W%8F%80%8C%9F%8D%F5&sortkey=index&field=
[Post]&subMethod=wildcard&method=normal&book=normal-set&checkedBook=plus_e&checkedBook=eidai&checkedBook=eiwa&checkedBook=lumi_eiwa&checkedBook=wadai_j&checkedBook=waei&checkedBook=lumi_waei&checkedBook=plus_j
※必要

07:06 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.02.18

# Wifi Keyboard + EBPocketで作る準PASORAMA環境

2/4の「脱・辞書の持ち腐れ」セミナーでは、アプリの名前をちらっと出しただけだったので、改めてご紹介しておきます。

かつてのPASORAMAのように、パソコンからスマートフォンやタブレット上の辞書を操作できる環境を、PASORAMAほど完全ではないながら、部分的に再現するしくみです。

≪重要≫
PCとスマートフォン/タブレットは、同じネットワーク上にある必要があります。たとえば一般家庭であれば、PCを有線/無線接続している同じルーターに、スマートフォン/タブレットもWi-Fi接続していることが前提です。

使うのは、次の3つのアプリです。

Wifi Keyboard
Wiki_keyboard_4

EBPocket
Ebpocket_3

Evernote
Evernote_4


※私がAndroidを使っていないので、紹介するのはiOS環境だけです。「Wifi Keyboard」はAndroid版もあるのですが、同じかどうか確認していません。


ただし、「辞書を操作できる」と言っても、できるのは基本的に、

PC上のブラウザを使って端末上で入力する

言い換えれば、「ブラウザ上で入力した文字列を端末に渡す」だけです。

PASORAMAのように辞書の内容がPC上に表示されるわけではなく、表示されるのは端末のアプリ上です。検索以外の操作(検索方法の切り替え、スクロール等)はアプリ側で行うことになりますし、もちろんコピーもできません。それでも、検索語をPC側、つまりふだんのキーボード上で入力できるというのは雲泥の差です。この環境のおかげで、アプリ辞書の導入がだいぶ気軽になりました。

逆に、「ブラウザ上で入力した文字列を端末に渡す」しくみなので、用途は辞書引きに限りません。たとえば、PCで見ているページをiPadで開きたいときは、URLをコピーそのままiPadに入力できます。

以下、iPadで説明しますが、iPhoneでもだいたい同じだと思います。

1. Wifi Keyboard

無料アプリですが、日本語対応させるには240円かかります。Wifi Keyboardは自体は、インストールしても何もしません。ATOKなどと同じように、使えるキーボード設定が増えるだけです。

[設定]→[一般]→[キーボード]→[キーボード]と進み、[新しいキーボードを追加...]をタップして[Wifi Keyboard]を選択します。

1802181_2

こうなればOK。

1802182_2

これで、オンスクリーンキーボードを切り替えると、Wifi Keyboardが表示されるようになります。切り替えると、一瞬だけ

1802183

と表示され、すぐにIPアドレスの表示に切り替わります。

1802184

このIPアドレスを、PC上のブラウザのアドレスバーに入力すれば、

1802185

ブラウザ上でこんなインターフェースが開くはずです。この画面で文字列を入力し、Enterキーを押せば、iPad側に文字列が渡されます。


ただし、この入力インターフェースは、iPad上で入力フィールドにフォーカスがある状態でないと使えません。それ以外の状態のときは、

1802186

このようにDisconnectedとなって入力できなくなります。

このしくみを、iPad上の個々の辞書アプリで使ってもいいのですが、準串刺し環境になるように組み合わせるられのが、EBPocketです。EBWin4と同じシリーズとしてと公開されているアプリで、iPad上でEPWINGデータを使うことができます(ここでは、EPWING辞書を使うのが目的ではないので、その説明は割愛)。

有料版と無料版がありますが、できれば有料版を。以下に紹介する串刺し的使い方には、有料版が必要です。

EBPocketには、EPWINGデータを登録して使うことができるほか、「Web検索」という便利な機能があります(有料版のみ)。文字どおり、よく使うWebサイトを登録して辞書引きと並んで検索できる、つまりEBWin4の「Web検索」と同じ機能です。

ところが、EBPocketのWeb検索には、もうひとつ便利な使い方があります。iOSにはアプリから別アプリ呼び出すしくみがあり、その呼び出しをURLで指定することができます。このしくみを「URLスキーム」といい、アプリ固有のURLが公開されていれば、それをふつうのURLと同じようにWeb検索に設定できるのです。

物書堂のアプリはほとんど、このURLが公開されています。

リンク:物書堂のサポートページ

このページを見ると、辞書ごとのスキーム名と、指定方法が書いてあります。

たとえば、物書堂『ウィズダム英和・和英辞典 2』のURLスキーム名はmkwisdom2と分かるので、

設定メニュー(歯車アイコン)から[Web検索]を選んで---

1802187_3

mkwisdom2:///search?text=

と入力するだけです(名前は適宜)。

1802188_4

Web検索に、辞書は8個まで登録できます。

なお、物書堂アプリは、右上の[…]メニューを開くと[URLスキームをコピー]というコマンドが用意されているので、登録はさらに簡単になっています。


実際にブラウザ上で入力し、EBPocketで検索した画面は、たとえばこのようになります。

1802189

「内蔵辞書」というのはEPWING辞書。「外部辞書」以下に出てくるのが「Web検索」に登録したアプリ辞書です。ここから辞書名をタップして選択すると、各アプリに移ります。

他の辞書を見るには、いちいちこの画面に戻ってくる必要があります。ただし、物書堂のアプリどうしは、アプリ内でも移動できるようになっています。


ということで、Wifi Keyboardの準備をし、EBPocketでWeb検索を設定すれば、iPad上でアプリ辞書を引くのは格段に楽になります。

さて、PASORAMAと大きく違うのは、iPad上で検索した結果をPC側に取り込めないという問題です。これは、Evernoteを使って解決しました。

iPad側で検索結果をコピー(部分でも全部でも)したら、iPad上のEvernoteで新規ノートを作り、そこに貼り付けます。PC上のEvernoteで同期を実行すれば、コピーした内容をPC側ですぐに利用できます。


辞書データがアプリ中心になってきた今、この

Wifi Keyboard + EBPocket + Evernote

というセッティングは、私にとっては重要な辞書環境のひとつになりました。iPadをお持ちの方はぜひお試しください。

02:42 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.02.12

# 辞書は、かならず版と発行年を確認して使おう

この1月に『広辞苑』の新版が出て、いろいろと話題になっています。今回が第七版だということも、だいぶ知られているでしょう。

ちなみに、『広辞苑』の最近の発行年はこうでした。

1991年 第四版
1998年 第五版
2008年 第六版
2018年 第七版

大ざっぱに言うと、最近は10年周期で改訂されてきたことになります。


英語でも国語でも、辞書は

発行年

版(バージョン)

を確認したうえで使うというのが、基本中の基本です。

しかも、私たち翻訳者は電子データを使うことが多いので、

書籍版と電子版の違い

電子辞書などでの収録状況

まで把握しておかないと、それぞれの辞書を十分には使いこせないことになります。そんな例をいくつか紹介します。


最初に取り上げるのは、『明鏡国語辞典』(大修館書店)です。

「明鏡」の発行年度と版は次のとおり。

2002年 第一版
2010年 第二版

では、みなさん、お手元の「明鏡」はどちらだか把握していますか?

LogoVista版をお使いであれば、まず第二版です。

カシオの電子辞書、この5年くらいの製品であれば、これもおそらく第二版でしょう。

セイコーインスツル(SII)のDAYFILERシリーズなどは……、これが意外なことに第一版なんですね。

このように、電子辞書端末などのプラットフォームの場合、製品の発売時期と、収録コンテンツの版が必ずしも比例しないことがあります。

たとえばOxford Thesaurus of Englishは、第3版(2009)が最新ですが、カシオの製品では、この2月に出る最新モデルに至るまで、なぜか第2版のままです。こういうところにも、注意が必要ということになります。


さて、その「明鏡」で奇特という単語を引いてみてください。版によって記述が違うはずです。


《名・形動》 行いや心がけがまれに見るほどすぐれていること。殊勝。きどく。「今時―な人もあるものだ」 [派生]‐さ 【明鏡】

《名・形動》 行いや心がけがまれに見るほどすぐれていること。殊勝。きどく。 「今時━な人もあるものだ」
[注意]近年、「こんなものを買うなんて奇特なやつだ」など、風変わりの意でも使われるが、誤り。 [派生]‐さ 【明鏡二】
(赤字は引用者)


第二版では、最近の使われ方を載せたうえで、それを誤りと断じています。

「明鏡」はこのように「誤り」と断じることが多い辞書です。「奇特」の新しい使い方を、たとえば『三省堂国語辞典 第七版』は、〔俗〕というラベルを付けて示すだけで、「誤り」とは指摘していません。

※『明鏡国語辞典 第二版』で「誤り。」を全文検索すると、557件もヒットします。参考までに、『岩波国語辞典 第七版』では41件、『新明解国語辞典 第七版』では21件にとどまっています。ほかの言い方で指摘しているケースもあるとは思いますが、傾向は明らかです。

「明鏡」の誤り指摘はいきすぎ、という指摘もあります。しかし、翻訳しているときには正用・誤用についてわりと保守寄りのほうが無難なことも多いので、そういう拠り所として「明鏡」は便利です。

次は、『ランダムハウス英和大辞典 第二版』(以下、「RHD2」)です。実は、私も今日まで気づいていなかったのですが、RHD2は、

書籍版と(私たちがいま使っているほとんどの)電子版

とで内容が同じではありません。


お手元のRHD2で、memeを引いてみてください。

おそらく、《インターネット》というラベルが付いているはずです。

1802112
これがDF-X10001の画面。

1802114
こちらは、ジャパンナレッジ収録のRHD2。


RHD2の発行年は1993年ですから、常識的に考えると、このラベルが付くにはちょっと早すぎます(たとえば、『データパル』では1998年版に「インターネット」あり)。


ということで書籍版を確認してみると、meme という単語そのものが載っていないことが分かりました。
※私の手元には今ないので、お持ちの方にご協力いただきました m(__)m

念のために、RHD2の製品ヘルプを見てみると、

ランダムハウス英語辞典 (Windows版)
1998年11月26日 Version 1.0 発行
2002年11月29日 Version 1.5 発行

と書籍版より新しく、またReadmeには

この度は、『ランダムハウス英語辞典』をご購入頂きましてありがとうございます。 『ランダムハウス英語辞典』は、「ランダムハウス英和大辞典」(第2版)を原典とした、最新の英語辞典です。

と書いてありました。

関山先生によると、やはり電子化の段階で、「コンピュータ関係の新語を増補したはず」だということです。


三大英和大辞典の発行年度は、古い順から並べると

1993年 ランダムハウス英和大辞典 第二版
2001年 ジーニアス英和大辞典
2002年 研究社 新英和大辞典 第6版

なので、「ランダムハウスはちょっと古い」という判断になりますが、一部の語彙については必ずしもそうではない、ということになるわけです。


ちなみに、先ほど引いたmeme。

もともとは、言うまでもなくRichard Dawkinsの学説に由来する言葉ですが、最近インターネット上で使われる「ミーム」には、かなり違う意味があります。かなり新しい辞書でないと載っていないかもしれません。

2.
a. An image or short video clip, often accompanied by a humorous saying or popular catchphrase, that is transmitted virally, especially on social media.
b. A humorous saying or popular catchphrase that is transmitted virally, especially as a caption for such an image or video clip. 【AHD】

など、主なオンライン英英には載っています。

2) インターネット上で拡散する画像[動画など].【R3】

さすがに『リーダーズ 第3版』は間に合ったようです。

改訂周期の短い学習英和のうち、『ウィズダム 第3版』(2012)は間に合っていませんが、『オーレックス 第2版』(2013)には載っています。タッチの差ですね。


このように、辞書の版と発行年を再確認するには、自分の持っている辞書をときどき総ざらえするといいかもしれません。私も今回、やってみました。

1802111

こんな感じです。

以上、「発行年と版を知っておくことが大切」という話でした。ところが、そのわりに、カシオや、かつてのSII、あるいはLogoVistaなどでも、発行年や版についての情報が示されていないことがあるのは、辞書を扱うという観点から、なんとも残念です。

12:08 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.02.09

# 『図解 英語基本語義辞典』と『図解 英単語イメージ辞典』

『図解 英語基本語義辞典』という名辞書がありました。

1989年に桐原書店から出版されました(私が持ってるのはこれ)。今は絶版。

まだ中古は出回っているものの、10,000円を超える高値が付くことも珍しくありません(この記事の執筆時点で4,000円ちょっとから、上は30,000円くらいまで)。

その後2012年には、国際語学社というところから再版されましたが、

こちらも今は中古だけのようです。

この辞典の前書き(pp.vii~xi)で、「なぜ語義の図示・図解なのか」という問いに著者の政村秀實氏は次のように答えています。

簡潔に言えばイメージだからと答えたい.ことばのイメージは,意識して頭の中に描かれるものではなく,人が生まれてから現在に至るまでの生活の実体験を通してつくられるものである.ところが外国語の場合は,ことばと実体験を結ぶ場がきわめて少なく,このために自然な状態でイメージを育てることが非常にむずかしい.

著者には、こういう「イメージ」を中心にした著作がいくつかあります。そして、この2月にはこういう辞典が出ました。

『図解 英語基本語義辞典』の後継なのだろうと予測していましたが、大修館書店のサイトで見本ページを確認できたので、さっそく購入しました。

でも、結論から言うと、

同じ著者の系譜には違いないが、かなり別もの

です。使い途はあるのでもちろん損をしたとは思っていませんが、『基本語義』と比べると、がっかり感が大きかったことも否めません。


まず、収録語数とボリュームがだいぶ変わりました。

『図解 英語基本語義辞典』(以下、『基本語義』)は500語(辞書には書かれていない。Amazonの商品説明より)で、本文は483ページ。1ページ1単語が原則です。

『[図解]英単語イメージ辞典』(以下、『イメージ辞典』)は1,416語で、本文は708ページ。1ページ2単語で、例外はなさそう(708 x 2 = 1416)。


これだけ見ると、内容が充実したように見えるのですが(そういう面はもちろんある)、肝心の

図示・図解

の部分がかなり変わってしまいました。また、ページ数は増えた一方で語数が3倍に増えた分、1単語あたりの例文は減っています。


先ほど冒頭を引用した「なぜ語義の図示・図解なのか」を見ると、『基本語義』の図示・図解は、以下のように説明されています。

A.分析的方法

(1)語源の図示・図解

(2)意味の物理的図解

B.感覚的方法

(1)語源のイメージ図示

(2)典型的場面の具体的な図示

たとえば、A(1)の例がembarass。

1802091gogiembarrrass

A(2)の例がanother。中高生にとっても、重要語のひとつです。

1802092gogianother

また、B(1)例がrunです。

1802093gogirun


一方、『イメージ辞典』のほうは、「はしがき」にこう書かれています。

絵本のような英語の辞典をつくってみたいという思いが編集部と通じ合い,本書への取り組みが始まりました。すべての見出し語(1461)語にその語義イメージを描き出すこと(一語一絵).これが本書の大きな特徴です。
(赤字は引用者)

つまり、同じ著者ではあるが、方針が違っているらしいということです。

たとえば、上にあげたembarrassはこうなりました。

1802094imageembarrass

たしかに、ただの「絵本」です。embarrassingな場面を絵にしただけで、『基本語義』のように「語源の図示・図解」になっていません。ただし、

語源と語義の変遷

については『イメージ辞典』のほうが充実しているので、図示・図解ではなく文字情報を中心として「語源に基づくイメージ辞典」として利用するのであれば、こちらも買い、と言えます。

ただし、『基本語義』では

1802095gogicommit

こういう多面的だった図解が、『イメージ辞典』では

1802096imagecommit

こんな一面的な絵になってしまいましたし、『基本語義』に載っていた

1802097gogireach

reachとarriveの違いを示した図もなくなってしまいました。

やっかいな前置詞 across も、

1802098gogiacross

これが、

1802099imageacross

このように変わってしまい、語源解説は詳しいのですが、図示・図解で直感的につかめるという特長は弱くなってしまいました。


ただし、reachそのもの、あるいはlikelyやrunといった語、つまり『基本語義』でBの(1)に分類されていた単語については、わりと『基本語義』時代のままのようです。たとえば、

18020910imagerun

run などは、『基本語義』よりいい絵ですし、語源と、そこからの語義の展開に関する解説はずっと充実しています。

『基本語義』の分類Aにあたる単語の図解は、いろいろとかなり残念です。

ignore、insult、outsideなど、『基本語義』になかった単語も1,000語近く追加されましたが、ただの「挿絵」です。

explainやpowerのように『基本語義』にあった単語も、ただの「挿絵」になってしまいました。


ということで、『イメージ辞典』のほうが詳しくなった情報も多い反面、旧著と比較してしまうと、かなりもの足りない。両方あれば、いろいろ補完しあっていいかもしれません。

04:51 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (3)

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2018.02.05

# 帽子屋の辞書ばなし、目録

昨日、翻訳フォーラムのレッスンシリーズ第8弾「脱・辞書の持ち腐れ《50Hz》」が無事に終わりました。

辞書に関する話はずいぶんしてきましたが、毎回やはり初めての方がいらっしゃり、「EBWin4の基礎を知りたい」などのご要望をいただきます。


ちょうど、フェロー・アカデミーの「オンライン講座」(Web上で何度でも視聴できる動画配信)でまた基礎編があるのですが(2/9~28配信)、1/31で締め切られていました。ごめんなさい m(__)m

リンク:フェロー・アカデミー「オンライン講座」

同じオンライン講座で、第2弾として「オンライン英英辞書を使いこなそう!」というのもあり、こちらは2/15申込み開始です。


一定数の需要があれば、辞書ブラウザの基本(昨年7月のレッスンシリーズ第6弾、「手取り足取り」のような)は何度でも再演しますが、私があちこちで書いたものもありますので、よろしければ、そちらもご覧ください。

ということで、帽子屋による辞書ばなしのうち、文字として残っているものの総目録を作っておくことにしました。


なお、昨日の内容に近い話「脱・辞書の持ち腐れ 《60Hz》」を、来月3月2日には大阪でも開催します。

リンク:JTF関西セミナー「脱・辞書の持ち腐れ《60Hz》~どの辞書をいつ引くか~」

懇親会は定員に達してしまいましたが、セミナーのほうはまだ受付中です。関西方面の方、ご参加をお待ちしております。


『プロフェッショナル4人が本気で教える 翻訳のレッスン』

まずはこちら。

辞書ブラウザのことも含め、翻訳者が使う辞書の基本事項をいちばん詳しくまとめてあります(レッスン3)。それ以外にも、翻訳フォーラムのメンバーがお伝えしたいことが凝縮されていますので、まだの方はぜひ。


『翻訳力を鍛える本』
『新・翻訳力を鍛える本』


イカロスのムックです。赤いほうが新しく、昨年10月に出ました。青いほうは2015年10月刊行で、中古なら手に入るかもしれません。

青いほうで基本中の基本を書きました。赤いほうは、それに続いて発展させた内容ですが、基本にもすこし触れています。

書くときでも話すときでも、時期が違うと内容はけっこう変わっています。辞書環境が目まぐるしく変化しているからですが、私の環境や使い方が変わっていくという理由もあります。

私の辞書の使い方が大きく変わってきたのは、簡単に言うと、以前は汎用辞書ブラウザなど

できるだけ1つの環境で辞書を引きたい

という発想でした。それが最近は、

オンラインでも紙でも、使えるものは何でも使おう

と言う考え方に変わったということです。『翻訳力を鍛える本』と『新・翻訳力を鍛える本』で私の記事をお読みいただくと、その変化が分かっていただけると思います。


『通訳翻訳ジャーナル 2016年4月号』

同じイカロスさんでは、季刊誌「通訳翻訳ジャーナル」のこの号にも寄稿しました。内容は、時期的なこともあって上の青い本に似ています。


『翻訳事典 2017』
『翻訳事典 2018』

ムック本でいうと、アルクさんの「翻訳事典」にも辞書の話が載っています。


ただし、私の寄稿ではなく、2017年版(2016年1月刊)はその前年2015年の10月に、今回と同様、深井裕美子さんと帽子屋のふたりがJTFセミナーに登壇したときのレポートです。

また、2018年版(2017年1月刊)は2016年5月の翻訳フォーラム・シンポジウムのレポートです。

どちらも、辞書に関する情報は少なめですが、ほかの記事も充実しているというのでおすすめ。ちなみ、『翻訳事典』の最新版も出たばかりです。年度表記が変わりましたね。「2018-2019」となりました。


JTF発行『日本翻訳ジャーナル』

JTF(日本翻訳連盟)が隔月刊で発行している『日本翻訳ジャーナル』に、2016年5/6月号(#283)から、辞書に関する話を連載しています。

辞書のことを書いたり話したりするといっても、個々の辞典について歴史や特徴を詳しく書ける場はないので、この連載でやっています。題して、「帽子屋の辞典十夜」

第8回まで、以下の内容で書きました。

第1回 「Webster 辞書のなぞ」 (2016年5/6月号)
第2回 「ホーンビー博士のOALD」 (2016年7/8月号)
第3回 「Longmanを使い倒そう」 (2016年9/10月号)
第4回 「COBUILD~コーパスから生まれた学習英英」 (2016年11/12月号)
第5回 「日本語と英語の“大辞典”」 (2017年3/4月号)
第6回 「リーダーズの系譜」 (2017年5/6月号)
第7回 「英和大辞典のご三家」 (2017年7/8月号)
第8回 「翻訳者におすすめの学習英和辞典」 (2017年11/12月号)

なお、同ジャーナルには、翻訳フォーラムのメンバーが交代で書いている「続・翻訳者のための作戦会議室」という連載もあります。

ジャーナルのサイトには、このブログの右カラムにある画像からアクセスできます。お読みになるには、メールアドレスの登録が必要ですが、ほかの連載も読み応えたっぷり。(今はまだ)無料でお読みいただけますので、ぜひPDFをダウンロードしてお読みください。

もちろん、このブログでも過去にいろいろと、辞書に関する記事を書いてきました。左カラムにカテゴリー別のリンクがあり、「辞典・事典」からアクセスできます。

あるいは、右カラムにある検索窓に、たとえば「EBWin4」などと入力して検索してみてください。

ただし、けっこうな記事数があるので、ちょっと重たいかもしれません。2005年以来、この記事を除いて141本ありました。たぶん、私が辞書について言いたいこと・書きたいことはほとんど書いてあるんじゃないかと思います。

12:45 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.02.02

# ジャパンナレッジ、キャンペーン適用入会

先月もご案内したとおり、JAT/JTF会員の方が、

・現在ジャパンナレッジを使っていて、

・JAT/JTF会員特典(年会費2割引)を利用したい

場合は、

契約満了を待ってから

キャンペーンコードを使って再入会する必要があります。前回もその手順は書きましたが、私が実際に再入会の手続きを済ませたので、改めてご紹介しておきます。

まず、契約が満了すると、こんなメールが届きます。

1802027_2

普通ならドキっとしてしまいますが、今回はこれで大丈夫。


試しに、これまでのIDでログインしようとすると、こんなメッセージが出ます。

1802026


で、再入会の手続きに進むわけですが、通常の入会画面に進んではいけません。会員割引キャンペーンを使いたい場合は、

http://cam.japanknowledge.com/

このURLからアクセスします。

すると、

1802022

こういう画面が出るはずなので、ここでJAT/JTFそれぞれのキャンペーンコードを入力します。

注意:

JTFのキャンペーンコードについては、1/19に会員宛てメールが届いています。そこで案内されているPDFをご覧ください。

JATのキャンペーンコードについては、JAT会員専用のフォーラムページに書いてあります。


コードを入力して、[キャンペーンで入会する]ボタンをクリックすると、後は一般の入会手順と同じです。

1802021

どうでもいいことですが、「業種・職業」にちゃんと「通訳・翻訳者」という選択肢があるのはさすがです。

1802023


入力後の確認画面に進むと、

1802024

適用したキャンペーンとして

日本翻訳連盟優待(2割引)

と書かれています。こうなっていることを確認してください。


次に進むとコース選択画面になりますが、ここでも

1802025

年会費が割引価格で表示されます(通常は、パーソナルが16,200円、パーソナル+Rが21,600円)。ここも、念のため確認してください。


あとは、支払いのクレジットカード情報を入力し、メールを受信すれば再入会手続きは終わりです。

ログイン画面では、新しいIDを使うのをお忘れなく。


ちなみに、私はよく使うオンラインIDの後に「2018」と付けました。


もちろん、EBWin4のブラウザ連携でジャパンナレッジを使っている場合は、EBWin4でも新しいIDを。

09:18 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.01.27

# SII DAYFILERからの移行を考える

セイコーインスツル(SII)の電子辞書「DAYFILER」シリーズ、メーカーのサポートはまだ続いているのですが、PC連携ソフトウェア「PASORAMA」のほうは、

Windows 10 Fall Creators Update

以降は動かなくなります(それ以前は、ドライバのバージョンアップがあって、使えていたようです)。

1801263

1801262

これまでPASORAMA対応DAYFILERに頼っていた方は、これを機会に辞書環境の移行をお考えになるかもれません。

2016年10月の名古屋勉強会、昨年7月22日の翻訳フォーラム・レッスンシリーズなどにご参加くださった方には、DAYFILERに搭載されている辞書タイトルの代替方法をまとめた資料をお渡ししました。

Windows 10 Creators Updateで、いよいよPASORAMAを使えなくなる人が増えそうなので、同じ情報をこちらにもあげておきます。

【後日の追記】

Windows 10 Fall Creators Updateを適用したマシンでもPASORAMAを使えている、というご報告をいくつかいただいています。以前から、マシンによっては接続した端末が認識されないとか、PASORAMA機能が使えないという報告もあったので、けっこう環境依存なのかもしれません。

もちろん、かつてのSII製品をすべて網羅しているわけではありません。

DAYFILERシリーズのフラッグシップモデルだった「DF-X10001」と、DAYFILERシリーズになる前の代表モデル「SR-G9003」(NH3などが付くモデルも同じ)のタイトルだけです。

また、ここで紹介するのは辞書・辞典だけで、百科事典や実用書コンテンツは取り上げていません。あらかじめご了承ください。


DF-X10001収録の辞書タイトル

・研究社 新英和大辞典 第6版
・研究社 新和英大辞典 第5版
・研究社 リーダーズ英和辞典 第3版
・研究社 リーダーズプラス
・大修館 ジーニアス英和大辞典
・研究社 新編 英和活用大辞典
・岩波書店 広辞苑 第六版
・大修館書店 新漢語林
・大修館書店 日本語大シソーラス 類語検索大辞典
・大修館書店 明鏡国語辞典

以上のタイトルは、LogoVistaデータ + 辞書ブラウザに移行できます。以下、「辞書ブラウザ」という場合は、特筆しないかぎり

Logophile

EBWin4

どちらでもかまいません。

『ジーニアス英和大』だけは、EPWING版もまだ入手できそうですが、LogoVista版でも同等に機能するので問題はありません。


・小学館 ランダムハウス英和大辞典 第2版

アプリがありますが、PC用に新たにそろえる手段は、残念ながらありません(中古のCD-ROM版を入手できればラッキー)。ただし、ありがたいことにgoo辞書に完全収録されています。

英和辞書 - ランダムハウス英和大辞典


・ビジネス技術実用英語大辞典 V5(うんのさん)

EPWINGデータ + 辞書ブラウザに移行できます。V5は現在、ダウンロード購入のみ。もうすぐV6が出そうです。


・日外アソシエーツ 180万語対訳大辞典
・日外アソシエーツ 人文社会37万語英和・和英

EPWINGデータ + 辞書ブラウザに移行できます。日外アソシエーツのサイトから購入可。高いですけどね~。


・研究社 プログレッシブ和英中辞典 第3版
・Oxford Dictionary of English, 3rd
・Oxford Thesaurus of English, 3rd

以上のタイトルは、アプリで入手できます。『Oxford Dictionary of English, 3rd』については、オンラインの

Oxford Dicitonaries

がほぼ同等のうえ、常に更新されています。


・ロングマン英和辞典
・小学館 精選版 日本国語大辞典
・角川類語新辞典

以上のタイトルは、アプリまたはジャストシステムのATOK用辞書があります。


・Oxford Advanced Learner’s Dictionary, 8th
・Collins COBUILD Advanced Dictionary of English
・Collins Wordbank
・Longman Dictionary of Contemporary English 5th
・Oxford Collocations Dictionary for students of English, 2nd

以上の学習英英辞典は、独自CD/DVD-ROMですが、辞書ブラウザ「Logophile」であれば、登録して使うことができます。詳しくは、過去記事をご覧ください。

なお、OALDは9th、LDOCEは6thが出ていますが、それらはLogophileでは使えません。

リンク:side A: # Logophileのみ対応している辞書タイトル


・Oxford PHRASAL VERBS Dictionary for learners of English, 2nd
・Oxford IDIOMS Dictionary for learners of English
・Oxford Collocations Dictionary for students of English, 2nd

これらは、書籍版のみです。


SR-G9003 収録の辞書タイトル

・研究社 ルミナス英和辞典2版

書籍版のほか、アプリがあります。


・岩波書店 岩波理化学辞典 第5版

LogoVistaデータ + 辞書ブラウザに移行できます。


・The Concise Oxford English Dictionary, 11th Ed

独自CD-ROMのみです。最新版の12thも出ています。


なお、SIIがiOS用アプリとして展開している「語句楽辞典」という選択肢もありますが、PC上で使えないので、今回は枠から外しました。


こうして見てみると、ほとんどタイトルはEPWING、LogoVista、アプリ、書籍のいずれかで代替できるのですが、『ランダムハウス英和大辞典』だけは移行先がありません。これは何とも残念です。

12:07 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2)

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2018.01.25

# 「脱・辞書の持ち腐れ」セミナーでお話しすること

2月4日(日)に東京で、3月2日(金)に大阪で、

「脱・辞書の持ち腐れ」

と題したセミナーをそれぞれ開催することは、すでにお伝えしたとおりです。

リンク:「脱・辞書の持ち腐れ《50Hz》~お題に挑戦~」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#8)

リンク:「脱・辞書の持ち腐れ《60Hz》~どの辞書をいつ引くか~」(通算第4回)


2月4日《50Hz》東京のほうは、通常申し込みが定員に達し、現在は「直前販売」枠を受付中です(こちらの枠はごく少数)

3月2日《60Hz》大阪のほうは、まだ満席という連絡は来ていないので、たぶんまだ空いてます。


さて、

「いつ」「どの辞書を」「どの単語で」「どのようにして」引くかを、実例を出しながら解説し、「紙辞書」「電子辞書」「CD-ROM辞書」「アプリ辞書」「オンライン辞書」等、さまざまな辞書環境を組み合わせた調べ方についての情報を提供する。
(JTF関西セミナーの告知ページより)

このようにご案内していますが、具体的にはどんなことをお話しするのか、ちょっとだけご紹介しておきます(私だけではなく、深井さんとのコラボですが、全体的にこんな内容になります)。

※2月4日レッスンシリーズのほうは、すでに事前課題をお送りしています。

たとえば、『英語辞書マイスターへの道』(関山健治、ひつじ書房)の33ページ。

up in the airを英和辞典で引いてみましょう。

という例題はどうでしょうか(ボールドは引用者)。

・紙の辞書
・EPWINGベースの辞書ブラウザ環境(Jamming、Logophile、EBWin4)
・LogoVistaブラウザ
・PASORAMA(SIIの電子辞書端末)
・電子辞書端末
・アプリ

など、いろいろな辞書環境をお使いだと思いますが、成句のヒットのしかたは環境によってかなり違うはずです。


また、『誤訳をしないための翻訳英和辞典』(河野一郎、DHC)の21ページには、

翻訳にまだ慣れていない人たちのとまどいやすい表現に,You and your computer... というよく使われる言い回しがある。「そらまた,きみの口癖の[十八番の]コンピューターが始まった」という意味だが、どの辞書もこの表現はとてもわかりにくいところに隠れている。

とあります(ボールドは引用者)。

自分の使える辞書環境では、どうやって引いたらこの表現が出てくるでしょうか。


このように、まず辞書環境それぞれの特性を知り、使い方を把握しなければ始まりません。道具として「辞書」を使いこなすためのノウハウを、まずおさえます。

"I saw a gangly, freckle-faced eighth-grader edging his way into the crowd around the Teletype, all arms and legs and nervous energy," Allen recalled.

これは、元マイクロソフトのポール・アレンが、初めてビル・ゲイツを見たときの印象を語った言葉です。このnervous energy、辞書で確認できるでしょうか。


controversial という単語はどうですか。

One of the seemingly most controversial aspects of Apple's (NASDAQ:AAPL) flagship iPhone X smartphone is the cutout at the top of the display.
(https://www.fool.com/investing/2018/01/24/apple-inc-is-trying-to-change-this-controversial-i.aspx)

辞書にも載っていますし、わかりにくい単語ではありません。でも、いざ訳そうとすると、けっこう悩まされます。「議論の的になる」とか「異論が多い」とか、フレーズとしての"訳語"しか載っていないので、さらっと簡潔には訳せないのです。

こういうとき、どんな経路をたどれば、うまい訳語にたどり着けるのでしょうか。

inspiringとかencouragingあたりの形容詞も、文脈によってはたびたび苦労させられます。

英和、和英、英英、国語、類語の各辞典をどんな風に使いこなせば、訳語のバリエーションを広げられるのでしょうか。


今までの辞書セミナーであまり踏み込めなかったのが、この部分です。実際に私たち翻訳者は、どうやって訳語にたどり着けばいいのか。そのプロセスを一緒に考えてみたいと思います。

03:48 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.01.24

# 『誤訳をしないための翻訳英和辞典』、補完計画を始めます

河野一郎先生の名著のひとつ『誤訳をしないための英和翻訳辞典』。

初版は2002年にDHCから出ましたが、昨年の春「改訂増補版」が出ました。

どのページを開いても、ハッとさせられる内容が次々と目に飛び込んできます。収録されている情報量を考えたら、1,700円というのは格安と言っていいでしょう。

「辞典」という体裁ではありますが、通読すべき一冊。その意味では、宮脇孝雄さんの『英和翻訳基本辞典』などと同じです。私も、少しずつですが読み進めています。


ただし、「○○の辞書に載っている、載っていない」という指摘には、ときどき今の状況に追いついていない部分もあります。

たとえば、『ウィズダム英和辞典』は引用元辞書として取り上げられていません。『ジーニアス英和』は3版までですし、『リーダーズ』も第3版については言及されていません。本書を読みながら、こういう新しめの辞書を確認してみると、なかなかおもしろい発見があります。


そこで、こんなことご本人の前では絶対にできそうにないのですが、僭越ながら勝手ながら、恐れながらさりながら、当ブログでその部分を補ってみることにしました。本書に載っている項目について、最近の辞書ではどうなっているのか、確かめてみようという趣旨です。

題して、


『誤訳をしないための翻訳英和辞典』補完計画


もちろん、自分が読み進めるための動機付け、というのが最大の理由ではあります。

基本的には、本書の構成どおりアルファベット順に進み、もちろん収録項目の全部を取り上げられるはずもないので、私がおもしろいと思った項目だけ紹介していく予定です。

ちなみに、2002年に出た初版はこちら。

増補版で増えたのは、323ページからの「増補60の表現と背景」です。

すべてを精査したわけではないのですが、それ以前の本編に関しては、ページ構成までまったく同じなので、おそらくあまり手が入っていないだろうと推察します。

もちろん、その増補部分にも有用な情報がたくさん載っているので、本書をお持ちでない方は、ぜひ増補版をお買い求めください。


個人的には、河野先生が『ウィズダム英和辞典』をどう評価しているのか、聞いてみたいところです。

01:09 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.01.19

# 『翻訳スキルハンドブック』と、記念トークショー

昨年の11月に発売され、翻訳者のあいだで話題になっている本があります。


そして、この本の刊行を記念して、著者の駒宮俊友と、テリーさんこと齊藤貴昭さんとの対談イベントがあります。

リンク:駒宮俊友さん×齊藤貴昭さんトークショー 「翻訳者に求められるスキルとは?~みなさんの疑問にプロが答えます!」

日時:1月24日(水)19:00~21:00
場所:ブックファースト新宿店地下2階Fゾーンイベントスペース(新宿区西新宿1-7-3)


後述するように、本書『翻訳スキルハンドブック』は、翻訳を勉強中の方や仕事を始めて日の浅い人にとって最良の指針になるのはもちろんのこと、すでに何年か翻訳で食べている人にも参考になる一冊です。

トークイベントでは、著者の駒宮さんと、"翻訳チェックのプロ" テリーさんに直接、質問もできます。『翻訳スキルハンドブック』を予習して、おふたりに疑問をぶつけてみませんか?


※開催まで1週間を切ってしまいましたが、もちろん、私も聴きにいきます!

『翻訳スキルハンドブック』は、世に出ている翻訳指南書のなかで、いちばん

仕事としての翻訳という現実

を知り、実践するのに適していると言えます。

目次
第1章 翻訳者に求められるスキルとは
第2章 翻訳のプロセスと基本スキル1 原文分析スキル
第3章 翻訳のプロセスと基本スキル2 リサーチスキル
第4章 翻訳のプロセスと基本スキル3 ストラテジースキル
第5章 翻訳のプロセスと基本スキル4‐1 翻訳スキル“翻訳作業スタート編”
第6章 翻訳のプロセスと基本スキル4‐2 翻訳スキル“完成までのブラッシュアップ編”
第7章 翻訳のプロセスと基本スキル5 校正スキル
第8章 納品時の注意点
第9章 より良い翻訳のためのヒント
(目次はAmazonより)

注目すべきは、本書の17ページ以降で紹介される「英日翻訳の基本プロセス」です。

17801192

駒宮さん、図版の無断引用、ごめんなさい!


いわゆる翻訳指導というのは、とかく「翻訳」の部分に終始していますが、それ以上に大切なのは、最初の2つのプロセス、

・原文分析

・ストラテジー

です。

簡単に言えば、

・原文をきちんと読み込み(原文分析)

・どう翻訳するか作戦を立てる(ストラテジー)

ということですが、具体的にどんなプロセスかは、ぜひ本書をお読みください。


もちろん、ある程度きちんと翻訳に向かい合った人であれば、とっくに分かっているはずのことでしょう(分かっていなかったら、それはそれで、かなり問題)。

手前味噌ながら、翻訳フォーラムの4人が書いた『翻訳のレッスン』で、「読めないものは訳せない」とか「準備7割」とか書かれているのも、この部分を指しています。

私も翻訳学校などではこういう点を説明はしていますが、上の図のようにきちんとこの概念を定義して図式化したうえで、翻訳経験の浅い人にも分かりやすく示してくれているのが、本書最大の特長です。この辺は、インペリアル・カレッジ・ロンドンで翻訳研究を実践したという駒宮さんならではでしょう。

「何年か翻訳で食べている人にも参考になる」と書いたのも、こういう基本姿勢を再確認できるからです。

一方、「翻訳」と「校正」のプロセスに進むと、流儀は人によって違ってくるかもしれません。

たとえば、本書が「校正スキル」として取り上げているなかで---

校正スキル3 長過ぎる主部は短くする

校正スキル6 「柔らかな表現」というテクニック

校正スキル7 読点のプロを目指す

校正スキル8 主語と述語の関係を明確にする

校正スキル9 修飾語の位置を検討する

校正スキル10 言葉のニュアンスを意識する

校正スキル12 重要な情報はなるべく前に

などは、私としては「翻訳」プロセスに入ります。もちろん、見直し・読み直しの段階でこういう点に注意するという姿勢に反対するものではないのですが、こういうポイントを後から仕上げようとは、あまり考えません。

つまり、よく言われるような「粗訳してから最終的に仕上げる」というのを私はあまりやらないのですが、この辺の翻訳スタイルは人それぞれでいいと思います。

いずれにしても、こんな風に自分のふだんの翻訳プロセスを見直す、いいきっかけにもなる。これも本書の効用です。


逆に、第5章「翻訳」はある意味もの足りないと感じられるかもしれません。が、この部分は類書で補えるでしょう。

本書の肝は第2、3、4章であり、そして全編を通して明晰に整理されている

「翻訳というプロセス」

の全体像です。


24日のトークイベントでも、駒宮さんが考える「翻訳プロセス」がどう語られるのか、とても楽しみです。

しかも、そこにテリーさんがからむというのは、これは必聴でしょう!

【追記】

整理券方式ですが、電話予約もできます。

ブックファースト新宿店 電話:03-5339-7611

01:34 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2018.01.17

# ジャパンナレッジ、JTF/JAT会員向けキャンペーンについて

小学館の有料辞書サイト「ジャパンナレッジ」、今年も「お友達紹介キャンペーン」が実施されています。1月31日までです。

1801171

もし、この紹介キャンペーンをお使いになりたい方は、帽子屋までご連絡ください(メールアドレスは、右カラムの「プロフィール」から確認できます)。


ただし、昨年ご案内したとおり、ジャパンナレッジ(以下、JK)を

JTF/JAT会員は永年20%割引

で利用できるという特典があります。

リンク:side A: # ジャパンナレッジ、JTF/JAT会員は永年20%割引に!


昨年の今ごろJKに登録した方には、ぼちぼち『更新手続きのご案内』というメールが届き始めているかと思います。このメール案内に従って更新手続きをしてしまうと、JTF/JAT

会員向け特典が適用されない

ので、ご注意ください。

会員特典を適用する手順を、以下にまとめました。


以下、JKの運営会社であるネットアドバンス様からご案内いただいた手順です。

  1. 契約満了の1か月前に、登録メールアドレス宛てに『更新手続きのご案内』というメールが届きます。現在の契約の満了日は、JKにログインして、画面右上のメニューから

    1801172

    [登録情報の確認と変更]→[登録コース確認]に進むと確認できます(途中でアカウント確認が入ります)。


    ただし、この案内メールから更新手続きをしてしまうと、割引が適用されません。

  2. 現在の登録は何も手続きをしなければ月末に「自動退会」となります(年間契約は初月無料の特典がありますので、1月31日までの契約期間の場合は2月1日に再入会の手続きを行えばぴったり13か月ご利用いただけます)。
  3. 自動退会になるのを待ってから、改めて下記URLから入会手続きを行ってください。その際にキャンペーンコード(次項を参照)を入力します。

    【ジャパンナレッジ 入会手続き(優待利用)】
    http://cam.japanknowledge.com/

    こういう画面のはずです。

    1801173

  4. キャンペーンコードは昨年、

    ・JTF会員向けにはチラシで
    ・JAT会員向けにはメーリングリスト(およびチラシ)で

    届いています。が、おそらく紛失してしまったという方もいるのではないかと思います。そこで、JTF/JATから会員向けにキャンペーンコードを連絡してもらうように手配しているところです。

  5. システムの関係上、再入会手続きの際には、元の会員IDを使えないそうです。新しい会員IDを使ってください。ブラウザのログイン設定なども更新することになります。

特に面倒なことはないと思いますが、退会 → 再登録の際に何かトラブルなどありましたら、ご報告ください。

01:44 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2018.01.14

# EBWin4 4.5.1 --- いろいろ進化してた!

11月から年末・年始は、ほんとに

あっ

という間に過ぎてしまった気がします。その間に、辞書ブラウザEBWin4が大きく進化していました。最新バージョンは、4.5.1です。

リンク:EBWin4

EBシリーズ全体のサイトはこちら

着実なバージョンアップ、作者のhishida様、いつも本当にありがとうございます。

【速報追記】

4.5.1をインストールしたら起動しなくなったというご報告がありました。

実はウチでも最初はそうでした。ウチの場合、いったんアンインストールしてから再度インストールしたら、起動するようになりました。原因は不明です。なお、アンインストールしても辞書設定などは削除されません(……のはずです)。EBWin4の設定は

C:\Users\<ログインユーザー>\AppData\Roaming\EBWin4

にあるので、心配な場合はこれをバックアップしてからアンインストールしてください。

フォントのサイズや色など、[ファイル]→[設定]にあるオプションはデフォルトに戻ってしまいますが、これは上書きインストールのときでも同じです。


EBWin4のバージョンアップに伴う最近の大きい変化は、こんなところでした。

2017/06/18 v4.4.4
・コマンドライン引数に/M=検索方法 を追加

 たしか、テリーさんのリクエストに応えてくださった形でした。


2017/07/28 v4.4.5
・Visual Studio インストーラに変更。
・PCに必須コンポーネント(.Net Framework4, Visual C++2010 ランタイム)がインストールされていない場合、自動的にインストールを行う。

 これ、レッスンシリーズのときに、新しいインストーラでインストールできないケースが出て慌てました。


この後しばらく大きい更新はなかったのですが、11月以降、更新ラッシュがあったようです。以下、特に大きい変更点は赤字にしてみました。

2017/11/08 v4.4.6
・ドラッグ&ドロップによる辞書追加
・GIF画像の表示(EBStudio2で作成できるようになったため)

2017/12/02 v4.4.8
・PDIC/Unicodeの長い訳語が表示できない問題を修正
・PDIC,StarDict,MDictでアクセント記号付Latinはアクセント記号無で検索

2017/12/09 v4.4.9
・PDIC,StarDict,MDictでアクセント記号無で検索をオプション化

2017/12/25 v4.5.0
・ALT+←→で戻る・進む
・辞書バーの複数行表示
・本文中のfile://をリンクとして解釈
・辞書個別CSSサポート。CATALOGSの存在するディレクトリに、<辞書ディレクトリ名>.cssを配置する。


ひと目で分かる変化は、v4.5.0で実装された

辞書バーの複数行表示

でしょう。

1801141

今までは、ウィンドウ幅に収まらない分は省略表示(残りを見るには右端をクリック)されていたので、常用辞書をすべては並べきれず、私も「英語グループ」、「国語グループ」のようにグループ分けして使っていました。でも、これでいつでも「すべての辞書」の状態で使えます。これはうれしい。


そして、v4.4.6で実装された

ドラッグ&ドロップによる辞書追加

は、今までの辞書ブラウザになかった画期的な機能です。これで、EBWin4導入のハードルが一気に下がるのではないでしょうか。

使い方はいたって簡単です。

EPWING形式の場合はCATALOGファイル、LogoVista辞書の場合は.idx(.IDX)ファイルを、EBWin4の辞書リストウィンドウまでドラッグ・アンド・ドロップするだけ。

1801142

LogoVista辞書は、ものによって .idx(.IDX)ファイルが複数あったりします(『研究社大英和』などがそうです)。その場合は、いちばん「それらしいファイル名」を選んでください。

この手軽さはすばらしいですよ。

表示名の変更などは、今までどおり「ファイル」→「辞書の編集」を使うことになりますが、追加だけなら本当に簡単。これなら、今までJamming/Logophileなどを使っていてEBWin4をためらっていた方も、手持ちの辞書データをドラッグ・アンド・ドロップで追加して、EBWin4を気軽に試せるのではないでしょうか。


そのほか、表示履歴をAlt + ← → で前後できるというのも、使い勝手のうえではなかなかありがたい更新です。

ただ、インストールのときに困る人が出てくるかもしれないので、インストールについて補足しておきます。

インストーラをダウンロードして解凍すると、

1801143

こういう内容が展開されます。setup.exeを実行すると、まずこんなダイアログが表示されるはずです。

1801144

「Visual C++ 2010ランタイム」(プログラムに必要な実行環境です)がインストールされるというメッセージですが、これより新しいランタイムがすでに入っているPCだと、次のようなエラーが出てしまいます。

1801145

ここで慌ててはいけません。同梱のREADME.txtを読めば、ちゃんと書いてあります。README、大事ですね~。

「より新しいバージョンのMicrosoft Visual C++ Redistributableがコンピューター上で検出されました」  と表示されてインストールが中断した場合は、EBWin4.msiを実行してください。

インストーラのほかにEBWin4.msi というファイルがあるので、こちらから使えということですね。


ただ、マニュアルには書いてありませんが、ここでさらにつまずくことがあります。というか、私は先ほどトラブりました(v4.4.5までは大丈夫だった。たぶん、後述する設定をどこかで変えていたのかも)。

以下は、マシンによって症状が違うかもしれませんので、Windows 7での例として参考までに。


README.txtに書かれているとおりに、EBWin4.msi をクリックしたら、私のマシン(Windows 7 64bit)では、こんなエラーが出ました。

1801146msi_error

変な日本語ですが、要するにこのマシンのセキュリティ設定によってインストールが制限されているということ。

これを回避するには、ちょっとシステム設定を変える必要があります。

[スタート]メニューから[ファイル名を指定して実行...]を選び、gpedit.mscと入力して[OK]をクリックします。

1801147_gpedit

[ローカル グループ ポリシー エディター]という、なにやらコワそうなダイアログが開くので、下のスクリーンショットのような設定を探します。

1801148_local_policy

[コンピューターの構成]→[Windows の設定]→[セキュリティの設定]→[ローカル ポリシー]→[セキュリティ オプション]の、[ユーザー アカウント制御: 管理者承認モードですべての管理者を実行する]です。これが[有効]になっていると思います。

これをダブルクリックするとダイアログが開くので、オプションを[無効]にします。最後に、PCを再起動。

これで、EBWin4.msi を実行できるはずですが、msi 関連のエラーは、ほかにも何パターンかあるようなので、困った方がいらっしゃったら、EBシリーズのサポートをご利用ください。

01:51 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2)

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2018.01.07

# JTF翻訳セミナー、異色のトリオが語る通訳と翻訳

2月のレッスンシリーズと3月の関西セミナーについては、すでに告知したとおりです。

リンク:side A: # 「脱・辞書の持ち腐れ」セミナー、東京と大阪で開催


加えて、急な話ですが、2月のJTF翻訳セミナーにも登壇することになりました。

テーマとしては「通訳と翻訳」を取り上げ、顔ぶれがなかなかユニークです。

リンク:JTF翻訳セミナー「翻訳と通訳のあいだ~思考プロセスの狭間を可視化する」

日時:2月8日(木)14:00~
場所:千代田区紀尾井町3-27 剛堂会館ビル1F(明治薬科大学 剛堂会館)

1801071

一緒に登壇するのは、会議通訳者でありJACI(日本会議通訳者協会)理事を務める関根マイク氏と、実務翻訳者・ライターの松丸さとみさんです。


関根マイク氏は、かなりズバズバとものを言う強烈なキャラクターで知られています。先日の第27回JTF翻訳祭に登壇し、「翻訳者の営業」について、かなりセンセーショナルなプレゼンテーションを演じてくださいました。

冒頭で帽子屋をdisったw

とも聞いていますが、マイク氏の話は、JTFのイベントではなかなか聞けない内容でした。そもそも、話のノリがふだんのJTFセミナーとはかなり違うので、今回の翻訳セミナーも、いい意味で予想のつかない展開が予想されます。


松丸さとみさんは、2年続けて翻訳祭実行委員を務め、今年は交流パーティーの司会も担当してくれました。BBCニュースの翻訳だけでなく、そのナレーションも担当しているだけあって、聞き惚れてしまうような美声です。

また、出版翻訳を語るセッションにも井口耕二さんとのコンビで登壇し、「聞き役」として名人芸を披露してくださいました。今ではすっかり、

翻訳業界の黒柳徹子

と呼ばれています。その異名はだてではありません。


私としては、10月に続いて同じ年度内で2度目のJTF翻訳セミナー登壇、ということになりました。これも異例のことです。マイクさん、さとみさん、帽子屋---この3人で語るお題は、

通訳と翻訳のはざま

です。

JTFが通訳も扱うようになったことは、まだあまり知られていません。通訳の方は、時間と場所の制約があるという業務の性質上、平日のセミナーには翻訳者ほど気軽に参加できないとも聞いています。そこで、通訳だけを対象にするのではなく、

翻訳者と通訳者の基本的な思考プロセスを比べ、市場に求められる翻訳・通訳の品質に関して議論し、ビジネス面も含めて翻訳者から通訳者(またはその逆)へのキャリアシフト、または兼業の可能性を検討する

ことにしました。

通訳・翻訳を問わず、Translationに携わるどなたにも参考になるはずです。


通訳と翻訳のはざまで繰り広げられるバトルにご期待ください。

08:47 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.12.11

# 「脱・辞書の持ち腐れ」セミナー、東京と大阪で開催

ここ数年、翻訳者としてどんな辞書を、どんな環境でそろえればいいのか、それぞれの辞書にどんな特長があるのかといったことを、あちこちで話したり書いたりしてきました。


せっかく辞書をそろえたら、

実際にどう使いこなして翻訳に活かすのか

ということも考えないといけません。そこで、そんなテーマで新しい辞書セミナーを開催します。


しかも、共通するテーマで形式の違うセミナーを

東京と大阪で開催

するという連続企画になりました。


東京編は来年2月4日(日)、翻訳フォーラム・レッスンシリーズの#8として開催。

大阪編はその1か月後の3月2日(金)に、JTF関西セミナーの第4回として実施。

どちらも、私ひとりではなく、深井裕美子さんとのデュオでお送りします。


リンク:「脱・辞書の持ち腐れ《50Hz》~お題に挑戦~」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#8)

リンク:「脱・辞書の持ち腐れ《60Hz》~どの辞書をいつ引くか~」(JTF翻訳祭関西セミナー)


東京・大阪とも、申し込みはすでに始まっています。来年の話ではありますが、興味のある方はお早めに!

特に、東京のレッスンシリーズは人数限定のワークショップ形式で、だいぶ席が埋まりつつあります。

すぐ上にも書いたとおり、レッスンシリーズのほうはハンズオン形式です。

事前課題もあり、当日も例題をいっしょに考えていきます。

「売っている限りの辞書を手に入れて、一瞬で引けるように辞書環境を整えたのに、思うような結果が出ない」「他の人はさっと調べ物ができるのに、わたしは時間がかかって、しかも結果が芳しくない」こういうお悩みはありませんか。
今までレッスンシリーズでは「辞書の選び方」「辞書環境の整え方」を取り上げてきましたが、今回は具体的に「どんな辞書」を「いつ」「どうやって」引くかがテーマです。
事前にお知らせする簡単な「お題」について、参加者の皆さんそれぞれの環境で調べてきていただき、ワークショップ形式でその筋道を比較検討します。また、翻訳作業中に遭遇しがちな辞書引き事例をいくつか取り上げ、「紙辞書」「電子辞書」「CD-ROM辞書」「アプリ辞書」「オンライン辞書」等、さまざまな辞書環境での調べ方をお話しします。
(レッスンシリーズ#8の紹介より)

先日の翻訳祭にもご登壇くださった関山健治先生のこの本と、

翻訳フォーラムメンバーによるこちらの本をあらかじめ読んでおくと、いっそう理解が深まるはずです。

一方、関西セミナーのほうは、いつものような講義形式になります。

翻訳者と辞書は切っても切れない関係だ。優れた辞書を複数手元において、頻繁に参照することは、とても大切である。一方、辞書は数を揃えればいいというものでもない。上手に使ってこそ、辞書が生きてくる。 本セミナーではまず、どの分野の翻訳者も必ず持っていたい辞書は何か、どのようなプラットフォームで揃えるのが良いかといった、辞書の基礎情報について簡単に説明する。
さらに、「いつ」「どの辞書を」「どの単語で」「どのようにして」引くかを、実例を出しながら解説し、「紙辞書」「電子辞書」「CD-ROM辞書」「アプリ辞書」「オンライン辞書」等、さまざまな辞書環境を組み合わせた調べ方についての情報を提供する。
これから辞書環境を整え始める初学者・初心者はもとより、すでに仕事をしている方たち、ベテランの皆さんにも、ぜひご参加いただき、「原文を正確に読む」「原文の内容を過不足なく訳文に記す」という翻訳技術の向上にお役立ていただきたい。
(JTF案内ページより)


事前課題はありませんが、お伝えしたい基本は同じです。

形式が違うので、東京と大阪、両方お聴きくださっても、損はさせません!


深井と帽子屋の辞書引きに関するノウハウを全力でお伝えしようと、今からいろいろと仕込んでいます。

乞うご期待!

12:13 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.12.08

# 第27回JTF翻訳祭、補足その他

翻訳祭交流パーティーの後は、いつもであれば事務局が二次会を設定しているのですが、今年はもう好き好きにどうぞということで、敢えて設定しませんでした。


私は、1コマ目にご登壇くださった柴田耕太郎先生たちが集まる少人数の席のご相伴にあずかりました。

「(7月に亡くなった)田中さんがとっておいてくれた日本酒を預けてあるお店があるんです」

ということだったので、神楽坂のお店にお邪魔し、田中さんに献杯。とても美味しいお酒でした。

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偶然ながら、同席した女性のひとりも同学でしたが、私の大学時代の同級生に教わったという世代でした(それでもまだ西ヶ原の世代ではあったそうです)。これも、田中さんのお引き合わせだったとしか思えません。

さて、第27回JTF翻訳祭については、ご参加くださった方がブログやTwitterでいろいろと感想やレポートなどをあげてくださっています。全部はカバーできていないと思いますが、以下にご紹介しておきます。

漏れがあったら教えてください。

※12/26追記あり


翻訳祭に関するツイートのまとめ

リンク:togetter「第27回JTF翻訳祭まとめ」

翻訳祭1週間前の11/21から、今のところ12/5までのツイートがまとめてあります。

テリーさん、ありがとうございます。


ご参加くださった方々のブログ

※順不同です。


村井理子さんのブログ

リンク:翻訳祭、その他
リンク:20171204 雑記

滋賀県からご登壇くださった、村井理子さんのブログです。

先に何が起きるのか心配するのは、それが起きるであろう5分前で十分だと私は思う。

翻訳祭のセッションでもこのように語られていたそうで、Twitterでもたびたび引用を見かけました。一緒にご登壇くださった、編集者の伊皿子さんも、ありがとうございました!

「雑記」のほうは、翻訳祭に来てくださった児島修さんに関する、村井さんの連続ツイートが引用されています。こちらもぜひお読みください。


Sayoさんのブログ

リンク:屋根裏通信 JTF翻訳祭2017

昨年は、翻訳業界を下支えする翻訳者視点から翻訳祭を考えてみようという、全体的なバランスを考えながら「原点回帰」を試みた年だった(らしい)と記憶しています。
今年は、もう少し広いところから、翻訳と業界を考えてみようという感じになっていたような気がします。

委員会の意図がちゃんと伝わったんだー、と思えるうれしい総評でした。この後にも、Sayoさんが聴講なさった4つのセッションについて、怒濤の投稿が続いています。

リンク:屋根裏通信 JTF翻訳祭 セッション1 「翻訳教育のススメ」
リンク:屋根裏通信 JTF翻訳祭 セッション2 「翻訳の過去・現在・未来」
リンク:屋根裏通信 JTF翻訳祭 セッション3 「書籍を訳すという仕事」
リンク:屋根裏通信 JTF翻訳祭 セッション4 「出版翻訳入門 ~産業翻訳からのアプローチ~ 」
リンク:JTF翻訳祭 おまけ

Sayoさん、ありがとうございます!


Gravity_Heavenさんのブログ

リンク:2017年翻訳祭(1)まっとうであること
リンク:2017翻訳祭(2)こころと、からだ
リンク:2017翻訳祭(3)わがままな翻訳者

1と3は、Sayoさんと同じセッションですが、まったく違う切り口、語り方をお楽しみください。

つまるところ、当たり前のことを当たり前にやるしかないんです。原文の情報をそっくりそのまま、日本語として正しく伝えること。「これだったら機械翻訳でもいいじゃん」と言われるようなミスをしないこと。読み手に「読んでよかった」、「楽しかった」、「参考になった」、「翻訳された情報のおかげで契約が結べた」と思っていただける翻訳をするしかないんです。

こういい感想がいただけるのも、とてもうれしいですね。当たり前がいかに大変か……。


あきーらさんのブログ

リンク:技術者から翻訳者へのシルクロード:人にたくさん会ってきた(十人十色セミナー+翻訳祭+宴×2)

リンク:「二足の草鞋」時代の自分が今回の翻訳祭に出席していたら何を聴講しただろう?

1本目は、前日に開催された十人十人十色の前夜祭に関するレポートもセットです。2本目は、実にあきーらさんらしい視点の記事。

今回聴講した4講演とすべて異なる。ただ、上記の4講演は、今回聞いてみたいと思ったのも事実。それだけ、今回のプログラムが実務翻訳者にとって関心を呼ぶものであったこと、実務経験の多寡にかかわらず魅力を感じる講演が多かったことを物語っているのだと思う。

なるほど~。こういう見方をしたことはありませんでした。


テリーさんのブログ

リンク:翻訳祭:ミニ講演会登壇報告

初めての試みであるミニ講演会に、テリーさん自ら登板してくださいました。さぞ、「超高速」だったのだろうと思います ^^


映像翻訳者集団 Tri-Logue のブログより、chocoさんの投稿。

リンク:Tri-Logue: 遅ればせながら…今年も参加しました『JTF翻訳祭』と『前夜祭』

映像翻訳のプログラムをなかなか用意できず、申し訳ありません。それでも、

そして、何よりありがたいのは「刺激」を与えてもらえることです。翻訳祭の帰り道には、いつも心の中で自分会議。今回も学びがいっぱいでした!

こうおっしゃっていただけるのは、ありがたいことです。


ローズ三浦さんのブログ

リンク:翻訳祭のミニ講演会の御礼&発表スライドの公開 - 機械学習/ディープラーニング/AIと翻訳

ミニ講演会にご登壇くださった三浦さん。AI翻訳者への道まっしぐら。


主婦ときどき出版翻訳さんのブログ

リンク:JTF翻訳祭 感想 ~出版翻訳は儲からないけれど~: 主婦ときどき出版翻訳 ~千里の道も一歩から~

前エントリでも書いたとおり、今年は意図的に出版系を増やしたので、こうして出版翻訳の方がご報告くださっているのは、実にありがたいと思います。


つくしさんのブログ

リンク:出会い(2017年翻訳祭、その1) : ことりのうたに耳を澄まして

今年は、昨年できなかったこと…ほかの参加者の方との交流…ができたらいいなと思い、翻訳者という看板をやっと掲げたところという私、かなり勇気がいったのですが(超緊張)懇親会まで参加させていただきました。経験年数や年齢、立場や所属(講演者、翻訳会社、クライアント、翻訳者、学習者…)などを問わずお話できる機会というのはとても貴重で、ありがたいことだなと思いました。

これからも、翻訳祭がこうおしゃっていただける場であり続けてほしい、と切に思います。


Shinako Komoriさんのブログ

リンク:JTF翻訳祭のボランティアに参加して

ボランティアだけで、午後のセッションはお聴きになれなかったとのこと。運営にご協力くださり、ありがとうございました! またの機会にゆっくりお聴きください。


カセツウさんのブログ

リンク:JTF翻訳祭で講演してきました

カセツウ代表の酒井秀介さんは、ミニ講演会にご登壇くださったほか、午後はボランティアとしてもご協力くださいました。ありがとうございます! 私自身は拝聴できなかったので、今度どこかでまた、ゆっくりお話を聞かせてください。


テクノプロさんのブログ

リンク:第27回JTF翻訳祭 ミニ講演会のスライド資料 – トライアルに合格していただくために (Hiro)

梅田社長と加藤泰さんも、名コンビでミニ講演会に駆けつけてくれました。いつもありがとうございます。m(__)m


ぽつりと気ままにblog…☆さんのブログ

リンク:翻訳祭2017年を終えて

専門はITって言ってるし、その分野は好きなんだけど、かと言って専門性がめちゃめちゃ高いわけでもないのに、変な情報を公式に発信したらブランディング的に単にマイナス印象なんじゃないかとも思うし、実際そうだと思う。

こういうお悩みをおもちの翻訳者さんは、とても多いはずです。そういう方々に、翻訳祭が少しでもヒントになれば……と思います。


真栄里さんのブログ

リンク:楽しかった翻訳祭(JTF)! | 株式会社 英文契約サポートセンター沖縄|Contract - JAPAN

電車のない沖縄とは違って、東京では、終電間近になると店から一気に人がいなくなる…。 終電というものがない沖縄では、飲みたいだけ何時までも店にいることができるので、終電に合わせてサッと帰る東京の方々は凄い!と思います。

そうなんですか!

いつの日か、沖縄で呑みましょう!


KIZUNAさんのブログ

リンク:JTF翻訳祭(11/29)に行ってきた。 - ニューイングランド師匠

それはそうとして、よく笑う中山さんってキュートな方だ。

同感です。講演は聞けませんでしたが、ご挨拶だけはできました。


まゆみさんのブログ

リンク:JTF翻訳祭

たった10分なのに、こんなにわくわくするお話が聞けるなんて (^^)

通訳案内士をめざして学習中の方だそうです。ミニ講演会、やってよかった。


Memsourceさんのブログ

リンク:JTF翻訳祭 2017 と MEMSOURCE ユーザー交流会のお礼とご報告

書いてるのは、たぶん加藤さんですよね?

Memsource、最近ほんと急上昇中。


ヨシダヒロコさんのブログ

リンク:第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(1)プレゼン資料(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)
リンク:第27回翻訳祭ミニ講演会『専門外から生物・バイオ系を武器に ~メディカルの基礎にも』資料(2)書籍情報など(2017/11/29、アルカディア市ヶ谷)

こちらも、ミニ講演会にご登壇くださった方のブログです。

いろいろな方に発表の場を提供したい、という考えで新設したこの企画。やはりやってみて正解でした。ヨシダさんの記事、特に2つ目はそのまま資料になりそうですね。ありがとうございます。


「翻訳者の暮らし」、リスノさんのブログ

リンク:JTF翻訳祭2017に参加して

ここでも大学時代に同じキャンパスで過ごした仲間と再会して感慨深かったです。

思わぬ出会いや再会があるのも、翻訳祭のいいところです。たまたま翻訳プラザに顔を出したら、リスノさんが感激の再会をしているところでした。しかも、その相手というのは私がよく知っている、業界のK氏。おもしろいものです。

リンク:JTF翻訳祭2017と来年の開催予定

第4セッションの話と、来年の翻訳祭、その他いろいろなイベントも紹介してくれています。


akoronさんのブログ

リンク:JTF翻訳祭に行ってきました

akoronさん、はるばる広島からご参加くださいました。しかも、前日に開かれた十人十色の前夜祭からです。私もお久しぶりでしたが、ありがとうございました!


白須清美さんのブログ

リンク:フィッシュアンドチップスにうってつけの日

白須さんには、村井理子さんのセッションの書記もお願いしました。ありがとうございます!


COM2 Blogさんのブログ

リンク:第27回JTF翻訳祭に行ってきました

1つのセッションについて、内容を簡潔にまとめてくださいました。いつもありがとうございます。m(__)m ブログ主さんとは、なかなか落ち着いてお話しする機会がないですよねー。


成瀬由紀雄さんのブログ

リンク:「翻訳祭」に参加して考えたこと

JTFについても、翻訳祭についても、だいぶ手厳しいご意見をいただきました。ミニ講演会にもご登壇くださったのですが、

> 講師で10分だけ話せば5000円という法外な参加費が無料になるとのことなので、ついその気になった

そういう動機でご登壇になったという方もいらっしゃるということを、肝に銘じておきたいと思います。


みなさん、ツイートや記事の投稿、ありがとうございました。

08:33 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.12.07

# 第27回JTF翻訳祭、終わりました!

(なかなか時間がとれず、1週間も経ってしまいました……)

かねてからご案内していたとおり、さる11月29日、日本翻訳連盟主催の「第27回JTF翻訳祭」が開催されました。

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ご参加くださった方の声を聞いたり、その後のブログやツイートを読んだりしたかぎりでは、ひとまず好評のようです。

これもひとえに、実行委員会と事務局のみなさん、当日のボランティア、登壇者のみなさま、そして何より、朝早くからご参加くださった皆さまのおかげです。

あらためて、厚くお礼を申し上げます。


「個人翻訳者にもっと足を運んでもらおう」

という方針のもと、昨年は委員のひとりとして、今年は委員長として2年にわたり翻訳祭の準備・運営に携わってきました。

昨年も今年も、その趣旨に見合ったコンテンツをどうにかそろえることができたようで、

個人翻訳者の目をJTFに向ける

という役目は、ひとまず果たせたのではないかと思っています。


昨年は、前年比で個人翻訳者の参加が2倍になるなど大きい目標は達成できた反面、会場の制限もあって、運営面にいろいろと悔いや課題が残りました。

また、内容面でも、もっと魅力的なコンテンツを用意したい、業界全体が盛り上がるイベントにしたいという欲が出てきました。

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(第27回JTF翻訳祭パンフレットより)

そのための核になるもの、翻訳者と翻訳業界を支えているものは何だろう――そう考えて出てきた答えは、やはり「言葉」でした。今年のテーマに委員会一同が込めたのは、そんな思いです。


思いがかたまったとき、コンテンツの方針も自ずと決まり始めました。


出版翻訳のセッションは絶対に入れよう。

結果的に、出版系としては2つのセッションが実現。委員でもある井口耕二と松丸さとみが、"徹子の部屋"風の対談をやってのけてくれました。

そして、村井理子さんと編集者の伊皿子さん! このお二人をお呼びできたのは、今年の翻訳祭でも特に大きい成果だったと思っています。

もともとは同じく出版系というつもりでお呼びした柴田耕太郎さんは、私たちの予想を超えた「翻訳教育」という枠で「翻訳」を語ってくださりました。


ひとりでも多くの方に、業界へ向けて何かを発信してもらいたい。

そんな思いつきから、「10分間ミニ講演会」というのも、初めて企画してみました。はたして応募はあるのか――そんな不安をよそに予想以上の反応があり、1コマ予定だったこの企画を、急きょ2コマとしました。結果的には、これがなかなかおもしろかったそうで(私は見られませんでした)、今後も少しずつ形を変えて続けていけそうな手応えがありました。


通訳のセッションも充実させないと……。

JTFの約款に通訳も加わったため、昨年から通訳のセッションは増えています。

今年は、日本会議通訳者協会の関根マイク氏に早くから協力を依頼し、単に通訳という枠ではなく「通訳者への転身」(白倉淳一さん)、「大学と通訳翻訳業界の連携」(松下佳世さん)という魅力的な内容をそろえていただきました。

そのマイク氏ご本人も、「ぶっちゃけるので運営による録画も禁止」というくらいの過激さで、個人翻訳者の営業について語ってくれました。


「言葉」がテーマなら、やっぱり辞書の話を入れたい……。

そんなことを考えていた折も折、以前このブログでも紹介した『辞書マイスターへの道』という本が出ます(7月)。

さっそくコンタクトをとった関山健治先生が快諾してくださり、このセッションは私が自ら司会も務めました(8月には一度お会いし、翻訳祭の2倍以上の時間、個人的にお話を伺いました。ささやかな役得)。


これからの翻訳を考えるなら、翻訳の歴史を振り返ろう。

今年の5月に"チラ見せ"だった、高橋さきのさんの翻訳史をロングバージョンで再演してもらいました(深井裕美子さんのナビゲーション付き)。


そのほか、フリーランスにとって大切な「お金の話」(古川智子さん)や、「中国語翻訳の品質管理」(村井見栄子さん)などは、今までの翻訳祭になかった異色のセッションです。一方、"定番"としておさえたのが、新田順也さんの「Office製品の活用術」。


機械翻訳についても、2つのセッションを用意しましたが、予想どおり、どちらも立ち見が出るほどの盛況でした。


日英翻訳の需要も大きいようで、朝いちばんにもかかわらず、ベンジャミン・トンプキンスさんのセッションは超満員。今まで西日本でご登壇になったことは多かったものの、東京では初開催というのも一因でした。

一方、キャパとして限界に近づきつつある会場の混雑をどうするか、というのが、今年の委員会にとって最大の懸念材料でした。

そこで、昨年のMaxより大きい部屋を用意したうえで、「時間割と会場は後から決める」という思い切った方針に踏み切りました。そのために、事前にはセッションの内容だけをご案内し、セッション聴講アンケートの様子を見ながら、後から時間割を決め、会場まで決定したのは、11月なかばとなりました。

お申し込みの段階でタイムテーブルが分からないということで、皆さまにはご不便をおかけしましたが、結果的には、この方針が功を奏したように思います。幸いなことに、同じ会場、ほぼ同数の参加者数にもかかわらず、昨年のような大混乱はなく当日を乗り切ることができました。


今年は、思い切ってパンフレットのデザインも一新しています。昨年までと大きく変わったパンフレット、いかがだったでしょうか。

このパンフレットをデザインしてくださったのは、JTFジャーナルの編集、デザイン、レイアウトにも協力してくださっている、Charlie's HOUSEの "チャーリー" こと、中村ヒロユキさんです。

1711293

そして、来年の第28回JTF翻訳祭は、なんと

京都で開催

することが決まっています。今回の交流パーティーのとき、正式に発表されました。日程は、

2018年10月25~26日

です。東京以外での開催というのも初めてなら、2日間(実際は1.5日間)というのも初めてです。

1711294

まだJTFサイトはオープンしていませんが、Facebookページができています。

第28回翻訳祭

コンテンツはこれから決めていくわけですが、目玉として、

飯間浩明さん

のご登壇がすでに決定しています!


というわけで、第27回翻訳祭にかかわったみなさん、ありがとうございました!

そして、第28回翻訳祭も、どうぞ、お楽しみに!

07:36 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (2)

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2017.11.27

# 第27回JTF翻訳祭、Tipsの追加

翻訳祭にご参加になる、特に初めての方に向けて、いくつかTipsを追加します。



会場の移動

受付は3Fですが、講演・パネルディスカッションの会場は5Fと6Fです。

移動には、エレベーターか階段を使うことになりますが、エレベーターは2基しかないため、休憩時間にはそれなりに混み合います。

階段のほうが早そう……なのですが、実は階段もあまり広くありません。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、早めの行動が吉です。


お手洗い

休憩時間、もっと混み合うのが女性用のお手洗いです。

そこで今年は、

3Fのみ、男子用も女子用

として使うことにしました。不十分ではありますが、すこしはマシになるのではないかと思います。

逆に、3F翻訳プラザにお越しの男性は4F以上、もしくは1F、2Fをご利用ください。


座席について

どのセッションも、お席は椅子のみで、机はありません。

ノートPCやタブレットを使ってメモをとることをお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、その場合は文字どおりラップトップで使っていただくことになりますので、あらかじめご了承ください。


セッション中の退席について

セッションの途中でご退席いただくのはかまいません。講演者や、他の参加者も軽くご配慮くだされば幸いです。


SNSへの投稿、ツイート

翻訳祭の様子や各セッションの内容など、SNSへの投稿やツイートは基本的に自由です。

ただし、登壇者の希望によっては、ツイート等を控えてくださるようお願いするセッションもあります。その場合は、なにとぞご協力のほど、よろしくお願いいたします。

Twitter公式タグは、

#2017JTF

です。

ただし、会場にWi-Fiの用意はありません。

01:14 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.11.25

# 翻訳祭、セッションのタイムテーブル、会場入り

第27回JTF翻訳祭、会場まで確定したタイムテーブルを作成しました。


一昨日の記事でもお知らせしたように、今年はタイムテーブルのタテヨコが変わりますので、それに合わせた形になっています。

当日のパンフレットにもっときれいなテーブルは載りますが、最終的に聴講するセッションをご検討するになるときにお使いください。

171125timetable

こちらは画像ですが、印刷するには解像度が足りないので、元データのExcelファイルもアップします。

ファイル:第27回JTF翻訳祭 タイムテーブル(会場、時間帯確定版)

このファイルを、用紙=横、「1シート1ページ」などの設定で印刷すると、まあまあ実用になるかと思います。


今のところの予報では、29日はわりと暖かい日になるようです。

04:35 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.11.23

# 第27回JTF翻訳祭、参加する方へのTips

今年の翻訳祭、いよいよ来週に迫ってきました。

第27回JTF翻訳祭

日時:11/29(水)9:30~20:30(開場・展示会開始9:00)
場所:「アルカディア市ヶ谷(私学会館)」
 東京都千代田区九段北4-2-25
 TEL:03-3261-9921


ご好評につき、昼間の有料プログラム(講演、パネルディスカッション)については事前申し込みの時点で定員に達したため、

当日受付なし

となっております。あらかじめご了承ください。

一方、

翻訳プラザ(展示会場)

プレゼン・製品説明コーナー

は、事前申し込みなく、どなたでも

無料で自由にご参加

になれます。

翻訳プラザとプレゼン・製品説明コーナーだけでも、業界関係者とのネットワークを築いたり、最新情報を仕入れたりするには十分です。お時間のある方は、ぜひアルカディア市ヶ谷にお越しください。

昨年も同じ時期にアップしましたが、翻訳祭へのご参加を予定しているみなさんに、ご参加にあたってのTipsを紹介しておきます。

受付のしかたなど、昨年までの変わった部分もありますので、初めてでない方もぜひご一読ください。


まずは、事前準備編---


名刺

ぜひ、名刺を用意しましょう。

すでに作ってある方は増刷を。

まだ名刺を作っていない方は、今からでも遅くありません。オンラインサービスだとギリギリくらいかもしれませんが、「ラベル屋さん」のようなユーティリティで自作する手もあります。

Facebook、Twitter、ブログなどで実名を出していない方は、名刺のどこかにオンラインネームも書いておくと、後日のつながり方が大きく違ってきます。

参考までに、私の名刺を載せておきます。

1711231

これが表のデザイン。

名前の読みがレアなのでローマ字表記も入れ、ハンドルネーム「baldhatter」と並べてあります。英語ネイティブの方だと、まずこのハンドルネームでおもしろがってくれます。帽子のイラストも、(法人名ともども)初対面の方はたいてい興味を示してくれます。

名刺というのは、相手の記憶に残らないと効果が半減してしまいます。イラストでも写真でも言葉でも、何かインパクトの強いものを載せましょう。

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こちらが裏のデザイン。

扱う分野の詳細、肩書き、昨年出た共著の書影、顔写真まで載せました。

ちなみに、これは「ラベル屋さん」を使った自作。エーワンの両面印刷マットタイプ用紙(品番51861)を使っています。


服装

堅苦しい格好は不要です。翻訳会社の方はスーツですが、フリーランスは、フリーランスならではのカジュアルな格好でどうぞ。

現在の予報を見ると、29日はわりと温かそうですが、季節としてはもうほぼ真冬です。

ただし、セッション会場はけっこう暑くなることがあるので、脱ぎ着で調節しやすい服装がおすすめです。空調はもちろんありますが、個人差や場所による差もあり、万全には対応できないからです。

なお、アルカディア市ヶ谷の1Fにクロークもあります。特に荷物の多い方など、積極的にご利用ください。



では、いよいよ当日編です。

※お申し込みいただいている方には、事前のご案内メールが届くはずです。必ずお読みください


交通について

会場となるアルカディア市ヶ谷。最寄りはJR市ヶ谷駅、東京メトロ有楽町線または南北線・市ヶ谷駅、都営地下鉄新宿線・市ヶ谷駅のいずれかです。

JR(総武線)ご利用の場合、ホームから地上に出る階段は新宿寄りです。地下鉄の場合は、A1出口またはA4出口が便利。


受付 ★変更あり★

8:45
講演・パネルディスカッション受付:総合受付(3階エレベーター前)

13:00
交流パーティー受付(3階エレベーター前)

変更のポイントは以下のとおりです。

・受付開始が、9:00ではなく8:45になりました。ご注意ください。

名刺、もしくは受付確認メールのプリントアウトをご用意ください。

・参加者の名札は、昼間の分は廃止となりました。参加証となる首かけ式ホルダーのみお渡ししますので、名刺を入れるなり、ご自由にお使いください。

・交流パーティー用には、従来どおり職種別の名札をお渡しします。

・昼間の講演・パネルディスカッションと、夕刻からの交流パーティーは、受付が分かれました。

・朝からの受付と別に、13:00から交流パーティーの受付を開始します。交流パーティーのみご参加の方は、そこで名札をお渡しします。昼間から引き続きご参加の方には、あらためて交流パーティー用の名札をお渡しします。交流パーティーにご参加になる方は、13:00(2コマ目の終了時)から夕刻までの間に、受付で名札をお受け取りください。


配布資料 ★変更あり★

昨年まではJTFの紙封筒でしたが、今年から持ち手のある袋をご用意します。安っぽいですが、持ち運びは楽になると思います。


パンフレット ★変更あり★

<11/24追記、加筆>
(特に、例年お越しくださっている方)今年は、パンフレットのデザインが変わります。今までは会場(トラック)がヨコ並び、セッション(時間枠)がタテ並びでしたが、今年はヨコが時間枠、タテが会場となっています。

当日配布されるパンフレットは、会場案内図とタイムテーブルが中心で、各セッションの詳しい内容は載っていません(この点は例年と同じです)。

各セッションの詳細を書いた「セッション内容のご案内」という小冊子が、

・過去にJTFのイベントにご参加くださった方には、お送りしており、

・翻訳祭のサイトにも、PDFをアップしてあります、

ので、必要であればこの小冊子をお持ちいただくか、Webサイトでご確認ください。

「セッション内容のご案内」は、JTFイベント(翻訳祭、翻訳セミナーなど)に初めてお申し込みなった方にはお送られておりません。必要な方は、サイトにあるPDF版をプリントアウトしてお持ちください。

リンク:第27回JTF翻訳祭「セッション内容のご案内」
(直接PDFが開きます)


セッションの聴講について

どのセッションも入れ替え制です。同じ会場で続けてお聴きになる場合も、いったん場外に出て列にお並びいただきますので、ご協力をよろしくお願いいたします。

なお、昨年は予想を大幅に上回るご来場があったため、一部のセッションでかなりの混乱をきたし、ご迷惑をおかけしました。今年は、昨年ほどの大混乱はないと思います。運営側も、ご迷惑をおかけしないよう、全力を挙げて対処する予定です。


翻訳プラザとプレゼン・製品説明コーナー ★変更あり★

昨年までは、翻訳プラザの一角で製品説明等のプレゼンを行っていましたが、今年はプレゼン・製品説明コーナーが別会場(4階 鳳凰の間)に移しました。それぞれ、落ち着いてご参加いただけます。

<11/24追記>
事前申し込み不要の無料エリア(翻訳プラザとプレゼン・製品説明コーナー)のみご利用になる場合、名札がわりのホルダーはお渡ししません。翻訳会社や翻訳者との交流を目的にいらっしゃる場合は、自前でホルダーをご用意になり、Twitterアイコンの拡大版とか、なにか目立つものを身に着けているといいかもしれません。


ランチについて

アルカディア市ヶ谷の中の飲食店はいっぱいになります。休憩時間を13:00~14:30と長めにとっていますが、外のほうがいいかもれません。

周囲の飲食店については、ご参考までに、こちらなど。

また、付近のコーヒー屋さん、ファーストフードとしては、

プロント(アルカディアからJR駅方向)

ドトール(道路をはさんでアルカディアの対面)

タリーズ(アルカディアからJR駅と反対方向、道路反対側)

ルノアール市ヶ谷駅前店(川を渡らず、JR市ヶ谷駅の東側)

ルノアール市ヶ谷外堀通り店(川を渡って右)

マクドナルド(川を渡ってすぐ)

松屋(プロントの隣)

などがあります。

あらかじめ、参加する知人・仲間などが分かっている場合には、事前に打ち合わせておき、ランチ時間もぜひ交流にお使いください。


それでは、11月29日(水)、市ヶ谷でお会いしましょう!

01:56 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2)

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2017.11.13

# 第27回JTF翻訳祭、締め切り間近

先日よりご案内している

第27回JTF翻訳祭

171113

申し込み締め切りが、今週11/15(水)に迫ってきました。


昨年より1週間早くなっている


ので、ご注意ください(特に、法人のみなさん)。


また、昨年と同様、事前申し込みの状況によって


当日申し込みはなくなる


可能性があります。ご参加予定の方は、一刻も早いお申し込みをおすすめします。


11月29日、アルカディア市ヶ谷でお会いしましょう!


10:27 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.11.02

# 『日本人のための日本語文法入門』

私たち翻訳者は、日本語文法の専門家になる必要はありません。

必要なのは、ちゃんとした日本語を書くために必要な最小限の文法概念を理解・整理しておくことです。

これまでも、そんな観点から日本語の文法に関する本を紹介してきましたが、これもかなりおすすめです。


実は、同じ著者のこちらを先に買っていて、

授業で使ったり、紹介したりしていたのですが、こちらは言ってみれば演習編でした。まずは、『日本人のための日本語文法入門』をサクッと読むほうがいいでしょう。

★私が授業で紹介して、『考えて、解いて、学ぶ日本語教育の文法』のほうを先に買っちゃった人、とっつきにくいと思ったら、まず『日本人のための日本語文法入門』から始めましょう。順番が逆になっちゃって、ゴメン!



日本語文法って、いろんな学派・流派があって、言ってることはいろいろ違ってますよね。日本語文法の専門家だったら、お互いに異論反論あるのでしょう。でも、素人である私たちは、納得できる説を見つけて---イイトコ取りして---自分の仕事に活かせばいいんじゃないかと私は思っています。

日本語の文法議論のなかでも、特に議論の的になるのが、たとえば「主語」をめぐる考え方や、「は」と「が」の説明です。テンスとアスペクトについては、ぜひ知っておきたいところです。

この本は、そういう基本について、けっこう納得できました。

目次
第1章 学校で教えられない「日本語文法」
第2章 「主題と解説」という構造
第3章 「自動詞」と「他動詞」の文化論
第4章 日本人の心を表す「ボイス」
第5章 動詞の表現を豊かにする「アスペクト」
第6章 過去・現在・未来の意識「テンス」
第7章 文を完結する「ムード」の役割
第8章 より高度な文へ、「複文」


主語については、「ない」とするのではなく、ひとまず忘れて「述語」を中心に考え始める。述語以外は、主語も含めてすべて、述語に係っていく成分と考える。そのなかに必須の成分と必須でない成分がある。

主語より大切なのは「主題」で、日本語の文は「主題」とそれに関する「解説」で構成されている。「~は」というのは、主題化のための表し方である。

日本語で、自動詞と他動詞とはどういうものか。そこからつながって、ボイスにはどんな機能があるのか。

「あげる」「くれる」「もらう」はどんなはたらきをしているのか

日本語のアスペクトとテンスはどうなっているのか。絶対時制と相対時制も知っておくと便利。

日本語におけるムードとはなにか。

「複文」をどう考えればすっきりするか。


「入門」と題した一般向け新書なので、随所に不足を感じる部分もありますが、その場合は『考えて、解いて、学ぶ日本語教育の文法』を併用するといい感じです。

10:24 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.10.29

# 新しく出る紙の辞書、2点

本が売れない、辞書はもっと売れていない……

辞書の話題になると必ず出てくる話ですが、そんなご時世に、紙の辞書が2点も出ます。


ひとつは、第六版から10年ぶりの改訂となる『広辞苑 第七版』(岩波書店)。

リンク:『広辞苑 第七版』 - 岩波書店

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来年1月12日の発売ですが、新語の採用状況などをめぐって、早くもあちこちで話題になっています。


もうひとつは、実に23年ぶりとなる『角川 新字源 改訂新版』(KADOKAWA)

リンク:角川 新字源 改訂新版 | KADOKAWAの辞書

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こちらは、明日10月30日に出ます。


『広辞苑』の現行第六版は、ほとんどの電子辞書端末に採用されており、EPWINGデータもいまだに手に入ります。

私のまわりでは当然ながら、電子媒体がどんな形でいつ出るかという点に話題が集中しています。まだ電子媒体についての情報はなく、ひとつだけ見つけたのがこれです。

リンク:広辞苑第六版〔第七版移行版〕 for iOS

いまの第六版を買うと(キャンペーン価格8,800円)、第七版のアプリが出たとき無償で移行できるという、なかなか良心的なサービス。ただし、旧版データは完全に上書きされるため、併用はできないそうです。そういうところ、アプリの売り方としては正しいのかもしれませんが、辞書ファンの気持ちはわかってくれていない。

販売元は計測技研。辞書アプリをそれなりに出している会社で、アプリとしての完成度は物書堂ほど高くない印象もあるのですが、今回はいち早く商売に動いたようです。

『角川 新字源』は、通常版

のほかに、こんな版も出すというのが目を引きました。

このイラストレーター、私は知らなかったのですが、末っ子に見せたら「学校の音楽の教科書、表紙がこの絵師さんだった」と。調べてみたところ、中村佑介さんといって、最近けっこう活躍してらっしゃる方なんですね。

辞書のジャケ買いなんてするのかなぁ……とは思うのですが、どの辞書だったか、ピンク系の装丁のが圧倒的に売れているという話も聞いたばかり。この表紙の効果で、少しでも売れてくれるなら、いい試みでしょう。

せっかくなので、私もこちらを予約してみました。


見かけだけじゃなく、中身もよさそうです。上記の特設サイトから、「もっと読みたい方はこちら」をクリックすると、PDF 20ページ分もの見本を見ることができます。

なんか、実にすっきりしたデザインで、見やすい。

二色刷ですが、色や記号の使い方がいいのでしょう。見出し字の直下にある情報の示し方も見やすい。視覚的にとても心地よいレイアウトです。漢和辞典で、ここまで楽しくなりそうな作りって、珍しいのではないでしょうか。

03:50 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.10.28

# 『新 翻訳力を鍛える本』 - 辞書の話を担当

2年前に出たイカロスさんのムック本、新作が出ました。ちょうど本日発売です。

前回が青い表紙、今回は赤い表紙。まるで、

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あるいは、

1710282

のようです。


コホン...。

私は前回と同じく、辞書の話を担当しています。

そのほか、どのコーナーも有益な情報が満載です。翻訳のお仕事を始めたばかりの方、学習中の方は、ぜひどうぞ。

2年後には、緑版が出るはずです(ウソ)。

さて、私の辞書の話(pp.20-25)は、2年前の内容とだいぶ変わりました。

いつもどおり、PC上でそろえる辞書環境にも触れていますが、むしろ

PC上の環境を中心に、必要なものは何でも使う

というスタンスです。

ご存じの方も多いと思いますが、辞書の環境については、自分自身、今もなお手探りを続けている状態です。よって、発信する内容も日々変わっています。

今回の赤版で書いたのは、最近で言うと、先月の「博多で翻訳勉強会」で話した内容がいちばん近いはずです。


それから、私の記事は「効率&スピードを上げる」というコーナーに収録されていますが、そもそも

辞書は効率のために引くんじゃない

ということを冒頭で書いています。

最終的には効率化につながるかもしれませんが、効率化のために辞書環境をそろえる、という話とは少し違っていますから、あらかじめご承知おきください。

同じ「効率&スピードを上げる」のコーナーには、もっと、文字どおり効率化につながる情報がいろいろ載っています。ぜひ参考にしてください。

ただ、そちらだって効率が最終目標でないことは、言うまでもありません。大切なのは、効率化したうえで何をめざすのかです。


そのほかのコーナーは「ミスをなくし品質を上げる」、「英訳力を身につける」、「日本語力を強化する」、「対エージェント力を鍛える」。

青版のときとは、また切り口が違っていますが、いっそう実践的になっている気がします。

07:13 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.10.06

# JTFセミナー、来週です!

いくつかのイベントと一緒にまとめてご紹介したまま、改めて告知していませんでしたが、いつの間にか来週に迫ってきました。

リンク:JTFセミナー:それぞれの翻訳品質 ~発注企業、翻訳会社、翻訳者の視点から~

発注クライアント、翻訳会社、個人翻訳者

という三者がそろって「翻訳品質」とその評価のことを語ります。これって、実はありそうでなかった企画です。


私も、個人翻訳者の立場から、かなり

言いたい放題

を言うつもりです。


告知が遅れてしまいましたが、申し込みの締め切りは

10月10日

だそうです。お急ぎください!


できれば、会場からも個人翻訳者の援護射撃があったりしたらうれしいな、と思っています。


登壇者は、以下のとおり。

ソースクライアントからは、ネットアップの上田有佳子さん。

翻訳会社からは、川村インターナショナルの森口功造さん。

個人翻訳者として、不肖、私。

そして、「翻訳品質評価」について語り、たぶん全体を進行することになるのが、西野 "ドラゴン" 竜太郎さんです。


西野さんは、先日お亡くなりになった田中千鶴香さんの後を継いで、JTF翻訳品質委員会の委員長に就任なさったばかり。

それ以前から、同委員会では、各国で設けられている品質評価基準のフレームワークについて詳しく研究・紹介するなど、精力的に活動してきました。現在の翻訳業界で、「翻訳品質」を語るのに、彼ほどふさわしい人物はそうそういないでしょう。

「翻訳品質」については、おそらく集まった人の数だけ考え方は違うでしょう。したがって、それをどう「評価」するかという基準も多様です。その評価方法について、統一的なフレームワークを設けるなんて不可能……そういう意見が多数派でしょう。

そんな枠組みを日本でも作ってみたい、と言い出したのは、故・田中千鶴香さんでした。7年前の今ごろ、「標準スタイルガイドを作ってみたい」と言って私を委員会に誘ったときと同じ、いや、おそらくそれ以上に無謀な挑戦です。

今回のセミナーも、実は田中千鶴香さんと西野さんが登壇する予定でした。田中さんはきっと、その無謀な挑戦を業界に向かって宣言するおつもりだったのではないかと思います。新たに決まった登壇者一同は、その田中さんの遺志を継ぐつもりで13日のセミナーに挑みます。

無謀な試みかもしれませんが、それでも翻訳品質というのは、業界の全員が常に考えていなければいけない、最優先事項のはずです。であれば、業界関係者の全員が集まってそれを話し合う場が、もっともっと存在してしかるべきです。

今回のセミナーが、そういう潮流を作るきっかけになれば――そう考えています。

ぜひ、一緒に翻訳品質のことを考えてみませんか。

10:25 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.10.04

# 翻訳祭、セッションのタイムテーブル発表!

今年の翻訳祭、サイトが正式にオープンし、プログラムも発表されましたが、各セッションの時間帯はまだお知らせできていませんでした。


おかげさまで、オープンから2週間ほどで早くもかなりのお申し込みがあり、タイムテーブルを決めることができました。と言っても、

各セッションの時間帯

が決まっただけで会場割はまだなのですが、ご参加の皆さん(と、検討中の皆さん)が、聞きたいセッションをお選びになるには十分お役に立つはずです。

リンク:講演・パネルディスカッション【有料セッション】

こちらのページだと、テーブルになっていないため、一覧性に欠けます。

こちらに、タイムテーブルを用意しましたので、ご覧ください。

1710041timetable

(画像のクリックで拡大できます)


「あー、あのセッションとあのセッションが重なっているのかー!」という声が聞こえてきそうです。

ご登壇くださる皆さんのご協力のおかげで、今年もかなり魅力的なコンテンツがそろったのではないかと思います。そろいすぎて、時間帯によってはどうしても重なるセッションが出てきてしまいます。

対象オーディエンスを考えながら、できるだけ重ならないように組んでみたのですが、これが精一杯でした。


というわけで、今年も11月29日に、市ヶ谷でお会いしましょう!

10:57 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.10.02

# 『英語辞書マイスターへの道』、翻訳者にもおすすめ

英語辞書の使い方を主に学習者向けに発信している関山健治先生の新刊が出ています(7月刊)。

関山先生は、今年の翻訳祭にもご登壇くださいます(私がお呼びしました)。そのご縁で8月には東京でお会いし、先日は拙ブログにもコメントをいただいたところです。


本書も、主な想定読者は高校生や大学生、あるいは英語再学習者(そういうシリーズの1冊)なのですが、辞書を日常的な仕事道具として使っている翻訳者にとっても、役に立つヒントが満載です。

本書の「辞書を引こう」や「やってみよう」にあげられている

例題を自分の辞書環境で

試してみてください。ふだん使っている辞書の特徴や限界など、いろいろな発見があるはずです。

そして、この本には読者向けのうれしい特典があります。本書に収録しきれなかった情報、特に

各辞典の特徴

をまとめた小冊子をダウンロードできるというサービスです。英語の辞書(と、一部の国語辞典)の特徴が実にコンパクトにまとめてあるので、翻訳者必携です。


ただ、本書に掲載されているダウンロードURLが、最近になって機能しなくなってしまいました。

関山先生に問い合わせたところ、さっそく新しいURLを教えてくださり、このブログでも告知していいというご了承をいただきました。本書をお買いになった方は、以下のURLにアクセスしてください。

https://www.dropbox.com/s/gwlxlh9wbt4dcsd/英語辞書マイスターへの道・サポートサイト表紙.pdf?dl=0
(リンクは貼っていません。コピーしてください)

ということで、改めて本書について紹介します。

直接的には、先生の以前の著書

の続編であり、辞書の電子化に伴うアップデート版、といった位置づけです。前著も2007年の発行でしたので、もちろん電子辞書については触れられています。が、中心はあくまでも辞書の使い方の基本---ラベルの見方、語法の読み方など---でした。

10年たって、その内容を電子環境にさらに適応させた、それが本書なので、電子媒体の辞書にふだんからお世話になっている私たち翻訳者の役に立たないはずがありません。

ただし、前著に書かれていたような基本の一部は省かれているので、本当の基本にまで立ち返りたい方は、前著『辞書からはじめる英語学習』も、併せてお読みになるといいかもしれません。


例をひとつだけ紹介しておきます。

辞書を引こう2
up in the air を英和辞典で引いてみましょう。
(p.33より)

この例題を、お手持ちの電子辞書端末、EPWING環境、各種辞書サイトなどの電子環境で引いてみてください。

おそらく、媒体ごとに得意不得意があるはずです。使い方のコツについても、発見があるはずです。


目次

1 辞書メディアの種類と特徴
(冊子辞書、電子辞書専用機 ほか)

2 辞書はこうやって使う
(日常的な英語学習で使う、資格試験の勉強で使う ほか)

3 英和辞典を使いこなそう
(英和辞典の種類、学習英和辞典のその先へ ほか)

4 英英辞典を使いこなそう
(こんな時に英英辞典を、英語学習者向け英英辞典と一般英英辞典 ほか)

5 こんな辞書も使ってみよう
(シソーラス(類語辞典)、コロケーション(連語)辞典)


すでにお気づきのように、私がここ数年のセミナーなどで話している内容にも、当然ですが似ている部分はあります。が、関山先生は辞書の専門家。とらえ方も説明も、私などよりはるかに精確であり、説得力があります。

10:07 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.09.27

# 「博多で翻訳勉強会」、登壇報告

何度かご案内していたとおり、福岡翻訳勉強会のみなさんが主催する「博多で翻訳勉強会」に登壇してきました。

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会場は、昨年と同じ「ももちパレス」。

それなりに古い公共の施設ですが、付属のレストランも味がいいし、使いやすい環境です。2度目にして、すでに「帰ってきたよ~」という気分。

セッションの内容については、ご参加くださったデシュムク陽子さんが、さっそくブログにまとめてくださっています。デシュムクさん、ふだんはインドにお住まいで、昨年も今年も(一時帰国を兼ねてと本人はおっしゃってますが)はるばるインドからご参加くださいました。フリーランスとは言え、頭が下がります。


リンク:2017年も「博多で翻訳勉強会」①高橋聡先生「辞書を読む、訳語を選ぶ」


リンク:2017年も「博多で翻訳勉強会」②遠田和子先生の「『英語らしさ』って何?」


遠田先生とは、一昨年の合宿以来です。あいかわらず見事な日英翻訳セッション。JATのベンジャミンさんをはじめ、英語ネイティブの方も4人ほど参加なさっており、その方たちからのフィードバックも交えた、日英翻訳談義になりました。


私のほうは、辞書の基本をおさえたうえで、そこからどう訳語を選ぶかというプロセスの話をしました。最終的なテーマは、これまでと大きく変わっています。

電子の辞書がなければ、紙の辞書を引けばいいじゃない

ですw

つまり、今までのように効率重視で電子媒体でいろいろ揃えるのもいいけど、紙の辞書を引くスキルも落としてはいけないんじゃないか、という話。

おもしろかったのは、

1

この資料について説明したときです。英語ネイティブの方たちが、「これは難しい」とおっしゃっていました。確かにそうかもしれません。

主宰メンバー4人からは、茅乃舎のだしをいただき、

170926_7

ある参加者には、(先日、オンラインでちょっとした疑問にお答えしたお礼ということで)

170926_8

日本酒をいただいちゃいました! 獺祭、東洋美人、雁木 というすばらしいセット(しかも、後ろにあるバッグに入れて)。


ご参加くださったみなさん、そして今年も大奮闘ですばらしい会を開いてくださった主宰メンバーのみなさん、ありがとうございました!


なお、福岡翻訳勉強会は、早くもまたすごいイベントを企画していらっしゃいます。遠からず発表があると思うので、お楽しみに!

12:02 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.09.19

# 第27回JTF翻訳祭、プログラム発表!

みなさん、お待たせしました。

第27回JTF翻訳祭

公式サイトでプログラムが発表され、同時に申し込みもスタートしました。

リンク:日本翻訳連盟 - 第27回JTF翻訳祭

リンク:翻訳祭プログラム詳細


ただし、今年はまだ

セッションの時間帯と部屋割りが未定

の状態です。


ご存じのように、昨年は個人翻訳者を中心に参加者が大幅に増えました。ありがたいことでしたが、一部のセッションが過剰なまでの人気となったため、ご参加のみなさんにはたいへんご迷惑をおかけする結果となってしまいました。

今年は、そのような混乱を避けるため、聴講希望について傾向だけでも事前に把握したうえで、時間帯と部屋割りを決めたいと考えています。


もちろん、「時間帯が決まっていないと聴講するセッションを決めにくい」という方も多いと思います。ですので、傾向がつかめしだい、できるだけ早く時間帯から決定していきたいとは思っています。


申し込みの段階では、ひとまず時間帯などは関係なく、「これは聴きたい!」というセッションをお選びください。

今年の翻訳祭、例年と違う点が大きく2つあります。


1. ミニ講演会の開催

リンク:ミニ講演会 10分1本勝負!

通常のセッションのほか、ミニ講演会というものを企画してみました。

1人10分という短い時間で、翻訳にまつわるどんなことでも自由にお話しいただく、という企画です。TED の翻訳祭バージョンという感じ。

初めての試みでしたが、おかげさまで多数のご応募があり、当初は1枠のみの予定だったのを急きょ2枠にして開催します。個人翻訳者から企業の方まで、いろいろな登壇者がそろいました。


2. プレゼン・製品説明コーナー

昨年までは翻訳プラザ(展示会)の片隅で実施していた各社の「プレゼン・製品説明コーナー」を、今年は別の部屋で独立して開催します。各社のプレゼンも落ち着いて聴けますし、逆に展示会の会場が騒がしくなる心配もありません。

こちらは、すでに時間帯も決まっています。

注目のセッションについては、また順々にこちらでも紹介していこうと思います。

03:01 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.09.11

# 「日本翻訳ジャーナル」9/10月号

日本翻訳連盟(JTF)が発行する「日本翻訳ジャーナル」、9/10月号が発行されました。


右カラムの表紙画像からアクセスできます。

※すでにお伝えしているように、JTF会員には印刷版が配送されます。PDF版をダウンロードするには、会員/非会員とも、ログインが必要です。


今回の号、「帽子屋の辞典十夜」は1回お休みです。

そのかわりに、翻訳フォーラムの連載「続・翻訳者のための作戦会議室」が私の番だったので、そちらで

「なぜ辞書の話をするのか」

という総論めいたことを書いています。

そのほか、7月に急逝した田中千鶴香さんの追悼文も書かせていただきました。

01:04 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.09.09

# Microsoft Bookshelfについて

Bookshelf については、これまでも何度か触れており、一度だけまとめて記事にしたこともあります。

参考リンク:side A: # カシオXD-N10000 - 『日本国語大辞典』とBookshelf


もちろん、今ではふつうに売っている商品ではありませんが、オークションサイトなどで中古が頻繁に出回っています。なかなか魅力的なコンテンツが収録されているものの、バージョンと収録コンテンツがややこしいようなので、整理しておきます。これから入手しようという方の参考になれば。


※以下の内容は、私の知っている範囲で書いています。もっと詳しい方がいらっしゃったら、コメント欄かメールでぜひ補完情報をお寄せください。


BookshelfとBookshelf Basic

まず気をつけるのは、製品版のMicrosoft Bookshelfと、Officeに付属していたMicrosoft Bookshelf Basicがあることです。

製品版「Microsoft Bookshelf」のほうは、「Encarta 総合大百科」という名前で売られていたこともあります。

Bookshelf、Bookshelf Basicとも、1.0、2.0、3.0まで出ていたようです。

1.0 はどんなだったか、持っていないのでわかりませんが、Bookshelf 2.0とBookshelf 3.0は、以下の構成でした。

【9/13追記】

コメント欄に、『英語辞書マイスターへの道』の著者、関山健治様から情報をお寄せいただきました。ラインアップはコメント欄にもありますが、『プログレッシブ英和中辞典』が第2版だったそうです。また、(今回は百科事典系をあまり取り上げていないのですが)データパルも少し古いバージョンの模様。


Microsoft Bookshelf 2.0

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収録コンテンツ

・国語大辞典(新装版)小学館
・プログレッシブ英和中辞典 第3版 小学館
・プログレッシブ和英中辞典 第2版 小学館
・The American Heritage Dictionary of the English Language 3rd
・類語例解辞典 小学館
・故事ことわざの辞典 小学館
・電子ブック版・データパル(1991-92 年度版から 1998-99 年度版までの 8年)

ラインアップを見ればわかるように、American Heritageを除けば、すべて小学館のコンテンツです。

『国語大辞典(新装版)』は、

『日本国語大辞典』 の要約を基礎に、新しい情報を加え、新たな工夫をこらしてまとめられた。

と書かれているので、『日本国語大辞典』 初版の1巻本と言ってもいい内容です。つまり、いま私たちが気軽に買えるようになった『精選版 日本国語大辞典』の "叔父さん" といったところでしょうか。これの書籍版は、パッケージの写真と収録語数などから察すると

これらしいのですが、確認はとれていません。

『プログレッシブ英和中辞典』は、現在iOSアプリなどで入手できる第5版の2つ前の版。

『類語例解辞典』については、先日、類語辞典に関する記事で言及しました。かつてはSIIの電子辞書端末にも収録されていたコンテンツですが、こっちのほうがずっと見やすい。

American Heritageも、やや古い版ながら電子データというのは貴重です(iOS版は第5版ですが、iOS 10になってから、まともに動いていません)。


Microsoft Bookshelf 3.0

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収録コンテンツ

・新英和中辞典 第6版 研究社
・新和英中辞典 第4版 研究社
・新明解国語辞典 第五版 三省堂
・Encarta World English Dictionary

小学館オンリーだった2.0から、研究社と三省堂になりました。この間に、いったい何があったんでしょうね。

コンテンツとしては、明らかに2.0より見劣りします。「Encarta 総合大百科」のおまけという位置付けになってしまったからかもしれません。

なのに、なんで最近これを手に入れたかというと、Encarta World English Dictioary というのを見てみたかったからです。あまり見たことのないタイトルの辞書ですが、

しばらく前に読んだこの本に、こんな記述がありました。

1つ目は,特定の国に偏らず,世界の英語圏からのデータを収集したことである。

こういう辞書はちょっと珍しいので、ちょって手に入れておきたいな、と。たとえば、こんな単語が載っています。

lah
particle
Malaysia Singapore used to show informality: added to something said to indicate informality and intimacy(informal)


研究社の英和中・和英中は、現在LogoVista版やアプリ版で入手できる「英和中第7版・和英中第5版」のちょっと前のバージョン。


Microsoft Bookshelf Basic1.0~2.0

1.0はまだ入手できておらず、2.0だけ手元に複数枚ありますが、Wikipediaの記事によると、1.0と2.0の収録コンテンツは同じだそうです

【9/10修正追記】

すいません、コメント欄でもご指摘いただきましたが、Wikipediaの記事を読み誤ってました。1.0と2.0ではプログレッシブの版が違うようです。

1.0と2.0は、Office 97、Office 2000時代の付属品でした。

1.0収録コンテンツ

・国語大辞典(新装版)小学館
・プログレッシブ英和中辞典 第2版 小学館
・プログレッシブ和英中辞典 第2版 小学館


2.0収録コンテンツ

・国語大辞典(新装版)小学館
・プログレッシブ英和中辞典 第3版 小学館
・プログレッシブ和英中辞典 第2版 小学館

つまり、Bookshelfからメインのコンテンツのみ抜粋したバージョンということです。American Heritageその他のコンテンツはサンプルだけ入っていて、製品版「Microsoft Bookshelf」の購入に誘導するしくみになっています。


Microsoft Bookshelf Basic3.0

収録コンテンツ

・新英和中辞典 第6版 研究社
・新和英中辞典 第4版 研究社
・新明解国語辞典 第五版 三省堂

これも、Bookshelfの収録コンテンツを絞り込んだ内容ですね。Office XPの付属品。


入手するとしたら

おもしろいことに、ヤフオクやメルカリ(何かと問題のあるサービスですが……)などで、頻繁に出回っています。

製品版のMicrosoft Bookshelfは、さすがに少ないようです。私は今までに、ヤフオクとAmazonマーケットプレイスで2.0と3.0を1回ずつ見つけて落としました。2.0は2,500円(2014年5月)、3.0のほうは7,800円(2017年1月)でした。

3.0はあまり見かけませんが、2.0はかなり安く出回っていることがあります。収録コンテンツを考えれば、とてもお買い得だと思います。


一方、Microsoft Basicのほうは、ほとんど投げ売りのような値段で、いつもたくさん出品されています。ただし、出品者があまり詳しくないせいか、

バージョンがわからない

出品がほとんどです。

見分けるためには、出品写真でOfficeのバージョン番号を確認するといいかもしれません。

1709094

Basic 1.0はOffice 97、Basic 2.0はOffice 2000、Basic 3.0はOffice XPの付属品ということですから、この写真のように

Windows NT
Windows 98

と書いてあるのは、1.0か2.0の可能性が高いと考えられます。Basic 3.0の出品が確認できたら、追記します。


修論コンテンツを見ればわかりますが、1.0と2.0が出品されていたら、買っておいて損はありません。『国語大辞典』が載っているからです。

しかも、

手順: Bookself Basic の EPWING 化プロジェクト

などに書かれているように、『国語大辞典』をEPWING変換することもできます(EPStudioは有料ライセンスが必要)。念のために付け加えておきますが、この変換スクリプトは、あくまでもBookshelf Basicにしか対応していません。手元のBookshelfデータで試しても、うまくいきませんでした。

『精選版 日本国語大辞典』とまったく同じというわけではないものの、それとかなり近い内容のEPWINGデータを確保したければ、この手しかありません。

なにしろ古い製品なので、最近のWindowsではインストーラーがまともに動かないこともあります。その場合は、CD-ROMの中身をまるまるハードディスクにコピーして、そこからセットアップを実行するとインストールできたりします。

いずれにしても、購入からインストール(さらには、EPWING変換)まで、、中古商品を扱うときはすべて自己責任でお願いします。

09:43 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (5)

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2017.09.01

# いろいろな類語辞典(日本語) - 書籍版

続いて、書籍版です。手元にある類語辞典の一部を並べてみました。

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本棚、圧迫されますよねぇ。自炊も考えてはみるものの、書籍としての辞書というモノに愛着があって、なかなか踏み切れません。せめて、索引だけでもEPWINGデータにしたい。

以下、それぞれの特徴を説明しながら、入手状況についても触れています。



『講談社 類語辞典』

オーソドックスな分類型の類語辞典です。以下は、「帰る」を引いたところ。「帰る」に関連したいろいろな言葉とその説明が、細かいカテゴリごとにグループ化して表示されています。

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たくさんの類語のなかから使いたい言葉を選ぶときに使います。その点は、電子版が手に入る『日本語大シソーラス』と同じですが、語釈や、ときには使い分け情報まで載っている点が便利です。書籍版が、ふつうに手に入ります。

『使い方の分かる 類語例解辞典』 小学館

同じく分類型で、実際には索引から引きますが、こちらは類語をたくさん並べるというより、書名どおり「使い分け」の説明に重点が置かれています。

そして、実は書籍版を買ってしまってから、電子版が手元にあったことに気づいたタイトルでした。この辞書は、初版が1994年ですが、わりと早くから電子化の波に乗っていたようです。かつては、EPWING版もありました。

私の手元にあるひとつが、セイコーインスツルの初期PASORAMA対応モデル、「SR-G9003」です(まだ、中古で買えます)。

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もうひとつは、かつてMicrosoft Officeに付属していたBookshelf 2.0です。こちらは、中古を狙っているとときどき出回ります。

関連リンク:side A: # カシオXD-N10000 - 『日本国語大辞典』とBookshelf

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Bookshelf版のほうが、だんぜん見やすいですね。SR-G9003付属(DAYFILERシリーズの前)のPASORAMAは、インターフェースがまだまだ未熟でした。

このように、『使い方の分かる 類語例解辞典』の場合は、同じく「帰る」を引くと、「帰る/引き返す/戻る」の使い分けが、マトリックスも交えて示されます。

私は主に、翻訳答案を添削するとき、微妙に違う言葉を修正するとき、その根拠にこういう使い分け情報を利用しています。添削するときの根拠がほしい---これも、紙の辞書が増えている大きい理由のひとつです。

『使い方の分かる 類語例解辞典』でいいのは、「だが/しかし」のような機能語も出ていること。講談社には載っていません。

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書籍版は、ふつうに入手できます。

『現代語古語類語辞典』 三省堂

最近手に入れたこれ、なかなかおもしろい発想で編集されています。

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ある言葉を引くと、現代語から古語まで(時代を分けて)類語が載っているという変わり種。分類型ではなく、主見出しの五十音順です。

たとえば、「帰る」を引くと、

[近代](明治から昭和20年まで) というラベルで、「回帰、ひきあげる、リターン」、[近世](江戸期)として「とんぼがへり、まひもどる」、[中世](鎌倉・室町期)として「帰還、帰着、とってかへす」などが載っています。

必然的に、漢語だけでなく、カタカナ語や、

和語もたくさん載っている

というのが特長です。そのうえで、「京都に帰る」のは「帰京、帰洛」とか、「行くことと帰ること」は「ゆきつもどりつ、往返」などと、関連表現も載っています。

また、たとえば「ころがる」を引くと、「ころがるさま」として

[近代]ごろごろ。[近世]すってんころり。[中世]ころころ。ころり。ごろり。

などと擬態語まで載っている。「古語」と銘打ってありますが、いま使えない言葉とは限らないのです。

ページをめくっていると、」楽しくてついつい寄り道してしまう」タイプの辞書と言えます。これも、書籍版をふつうに購入できます。

『表現類語辞典 新装版』 東京堂出版

おもしろい辞典をたくさん出している東京堂出版ならではの一冊です。書籍版が手に入るはずです。

編者のひとり藤原与一による「序」が、やたらと熱い。

これも、主見出しの五十音で引けるタイプで、それぞれの語の説明文が徹底しています。類語から言葉を選ぶという使い方ではなく、じっくりと

それぞれの語義と向き合う

ための辞書という感じです。

たとえば「かなり」という副詞を引くと、主見出し「かなり」の大項目のなかに、「かなり、だいぶ、相当、ずいぶん、よほど、なかなか」が載っていて、程度の大きさを中心に説明されています。

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「だいぶ」は、「<かなり>と近い使い方をする」とか、「相当」は「前の二語よりもかなり程度が大きい場合を言う」、「ずいぶん」は「前の三語に比べて、程度のよりはなはだしいさまを言う」とか、それぞれの類義語どうしが比較されている点に注目です(ただ、それが間違いなくそうかどうか、自分の感覚と合うかどうかは別)。

用例は、すべて近代文学から採られているのが特長的。

『日本語 語感の辞典』 岩波書店

類語辞典とはちょっと違うかもしれませんが、ひとつ前の『表現類語辞典』をもっと推し進めたような辞書です。

たとえば上のスクリーンショットは「永遠」の説明ですが、長嶋茂雄の引退スピーチを引用しながら、

時を超越した栄光を称えることばとしては、「永久」より「永遠」のほうがさらにふさわしく耳になじむとする日本人の語感を物語る事実である。

と説明していて、なるほどと思わせます。書名どおり、「語感」を説明する辞書というわけです。編者・中村明の個人的な語感に寄りすぎていると考える人もいるようですが、これも読んでいて楽しい辞書です。

書籍版が、ふつうに入手可能。

『日本語類義表現 使い分け辞典』 研究社

いわゆる類語辞典のイメージとは違います。「帰る」(動詞)とか「かなり」(副詞)のような中心的な語彙ではなく、助詞や助動詞、接続詞などの使い分けを詳細に説明しています。

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たとえば上のスクリーンショットは、「~なら、~たら、~ば、~と」という、おなじみの使い分けに関するページ。

ただし、説明に使われる文法用語が容赦ないので、読み解くのはなかなか苦労です。「語感」のような本ではなく、むしろ徹底的に

理屈で使い分けを説明

するタイプの本と言えそうです。

このほか、国語辞典で類語の使い分け情報が充実しているのが、

『小学館 日本語新辞典』

です。

判型が、国語の小辞典ではなく中辞典、つまり広辞苑などと同じなので―厚みはそこまでない---、さらに本棚を圧迫します。

03:25 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (7)

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# いろいろな類語辞典(日本語) - 電子版

類語辞典は、国語系辞典のなかでもなかなか電子化が進んでいない部類です。

電子版で手に入るものは全部そろえましたが、必要と趣味から、ここ半年ほどでにわかに、書籍の類語辞典も増えてしまいました。


媒体別に、いろいろな類語辞典を紹介します。

電子データ - PC上で使えるもの

PC上で使える類語辞典として、今も入手できるのは、おそらく以下の2つだけです。

デジタル類語辞典 第8版

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ただ類語や関連語が並ぶだけですが、とっさに訳語を検討するときには、わりと重宝します。1年ほど前に詳しく紹介しました。

関連リンク:side A: # 『デジタル類語辞典』のこと


大修館 日本語大シソーラス

リンク先はLogoVista版ですが、EPWING版もまだときどき手に入るようです。LogoVista版でも、汎用ブラウザ上でちゃんと使えので、ご心配なく。

カテゴリ分類型の類語辞典です。詳しくは、過去記事をご覧ください。

関連リンク:side A: # 日本語の類語辞典 ― 『日本語大シソーラス』と「シソ改」

EPWINGジェダイの大久保さんが、変換スクリプトを作ってくださっています。こちらで変換したデータ「シソ改」のほうが、普通の国語辞典のように使えて便利かも。EPWINGからも、LogoVista版からも変換できます。

リンク:シソ改 ~~ 『日本語大シソーラス』の全語彙検索EPWING化 ~~


iOSアプリ

上記『日本語大シソーラス』も出ているほかは、おそらく以下の2つだけです。


角川 類語新辞典(大修館)

分類型ですが、検索機能から引くことができます。

1709012

※リンク先はiTunes Storeです。

検索直後は類語が並んでいるようにしか見えませんが、タップすると、詳しい語釈や用例が出てきます。物書堂アプリなので、『大辞林』や『三省堂国語辞典』と相互に行き来できます。


三省堂 類語新辞典(大修館)

1709013
※リンク先はiTunes Storeです。

分類型ですが、見せ方がなかなか楽しいインターフェースです。

1709014

分類項目をタップすると、画面がずりずり動いていきます。

といっても、たとえばこのスクリーンショットで見えている「かなり」という単語を、「文化 → 認定・形容 → ひろがり → 程度 → かなり」とたどれる人は、たぶんこの辞書を編纂した方たちだけでしょう。当然ながら、こちらも検索から引けるようになっています。


電子辞書端末

今や、見るべきはカシオの製品くらいしかありません。そのフラグシップモデル

には、以下の類語コンテンツが収録されています。

『大修館 日本語大シソーラス』

『小学館 使い方の分かる類語例解辞典』

『角川 類語新辞典』

このうち、『使い方の分かる類語例解辞典』については、次のエントリで詳しく紹介します。


12:36 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.08.30

# 9月~10月のイベント情報

私が関わっている翻訳関連のイベント情報をまとめておきます。

11月にはもちろん翻訳祭もありますが、ひとまず、9月と10月だけ。


このほか、通訳・翻訳関連のイベント情報は、こちらが充実していますので、あわせてご覧ください。

リンク:セミナー&イベント | 通訳翻訳WEB

最近、ほんと、通訳・翻訳関連のイベント増えましたね。


9月9日(土) 13:00~17:00

十人十色 2017 Part2

7月に続き、今年2回目となる参加型の勉強会です。テーマは自由で、発表時間は1人20分が目安。定員まであとわずかですが、まだ受付中です。

リンク:十人十色勉強会2017 part 2
※Facebookのグループイベントなので、「見られないけど興味ある」という方は、私にご連絡ください。


9月23日(土) 13:30~18:00

博多で翻訳勉強会2017

このブログでもすでに何度かお伝えしているように、福岡翻訳勉強会が、昨年に続き今年も「博多で翻訳勉強会」を開催します。日英翻訳の遠田先生と、私が登壇します。

リンク:福岡翻訳勉強会 「博多で翻訳勉強会」2017年9月23日

おかげさまで、こちらは満席となりました。あと1か月を切りましたが、追加募集があるといいですね。


10月1日(日) 13:15~16:45

翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#7 「『述語から読む・訳す』ワークショップ」

5月のシンポジウムで紹介された「述語から読む・訳す」という話を、ワークショップ形式で取り上げます。ワークショップ形式は、昨年のレッスンシリーズ#4「訳出のバリエーション」でも好評でした。

リンク:「『述語から読む・訳す』ワークショップ」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#7)

紹介を一部引用します。

「[シンポジウム2017では]《翻訳というのは不自然な作業で、ほっておけばことばのスキルが落ちる》という前提のもと、スキルをなるべく落とさぬ方策として、《述語から読む・訳す》ことの大切さ――つまり、(1)述語を見つけられれば、その過程で述語を中心とする文の構造が見えてくるし、(2)そうすると訳出の自由さが格段にアップするということ――について説明した」

これを、実際に手を動かして体験し、身に着ける一日です。

こちらも、だいぶ席は埋まりつつありますが、まだ空きがあるようです。


10月13日(金) 14:00~16:40

JTFセミナー「それぞれの翻訳品質 ~発注企業、翻訳会社、翻訳者の視点から~」

タイトルのとおり、ソースクライアント、翻訳会社、翻訳者それぞれの立場から「翻訳品質」について考えるパネルディスカッションです。

リンク:JTFセミナー「それぞれの翻訳品質 ~発注企業、翻訳会社、翻訳者の視点から~」

ソースクライアントとして、ネットアップ株式会社の上田有佳子さん
翻訳会社として、川村インターナショナルの森口功造さん
翻訳者として、私

が登壇します。さらに、JTF翻訳品質委員会を代表して、同理事の西野竜太郎さんが、第1部と、全体の進行を担当します。

こちらも、紹介文の一部を引用します。

セミナーの第1部では、翻訳品質に関する業界動向を取り上げる。今年から議論が始まったISO 21999、JTFで検討している翻訳品質ガイドライン、さらに「仕様」に基づく考え方を紹介する。
第2部では、まず発注企業、翻訳会社、翻訳者という3者の代表から品質に関する考え方を発表してもらう。次に、会場からの意見も受けつつパネル・ディスカッションを実施する。今回はIT分野を中心に議論するが、他分野であっても参考になると考える。

まだ募集は始まったばかりですが、対象者が広いため、満員も考えられます。お申し込みはお早めに。

10:08 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.08.27

# AmiVoiceについて少し補足

AmiVoiceについて、少し補足しておきます。


1. 音声認識の限界 - 専門語

まず予想されることですが、一般性の低い専門用語はほとんど認識されません。これには、単語登録で対応します。

私の仕事だと、「マルウェア」は最初から認識されましたが、「ランサムウェア」はだめでした。そのほか、「インシデント」とか「シームレス」とか、カタカナ語はどんどん登録しています。「アシュ=亜種」も認識されなかったので、登録しました。

医薬や金融のように、専門性がもっと高いと、音声入力は厳しいかもしれません。

2. 音声認識の限界 - 音節の少ない単語

単語やフレーズではなく長い文章で発声したほうがいいと書きましたが、音節数の少ない単語は、文脈にかかわらず認識されないことがあります。

何度やってもだめなのが、「ニンイ = 任意」でした。n音のあとに母音が続くので、もともと発音しにくい=聞き取りにくい単語なのでしょう。

それから、「ほぼ」も、先ほどの記事では「ほぽ」(濁点ではなく、半濁点)になっていて、JustRightで間違いが見つかりました。「ひっしゃ=筆者」もダメで、もしかするとハ行始まりは全般的に苦手とも考えられます(私の発音が悪いだけかも)。


3. 音響学習

認識機能を最初からトレーニングする必要はありませんが、使っているうちに、ユーザーの音声の特徴を学習していく機能があります。使えば使うほど認識精度が上がってくるということです。

たとえば、先ほど「ニンイ = 任意」がなかなか認識されないと書きました。実は、今はもう文脈なしに「任意」という単語だけ発声しても正しく認識されています。「ひっしゃ=筆者」も、そのうち正しく認識されるようになるかもしれません。


4. 音声コマンド

改行するとか、何文字か戻るとか、そういうコマンドも音声でコントロールできます。キーの組み合わせを登録してカスタムコマンドを登録することもできます。

私などは、手の補助として音声入力を使っているだけですが、もっと全面的に音声に依存するユーザーが、音声コントロールだけでどこまでコンピューターを使えるものか、今はまだ判断できません。


5. 英語音声の認識

たとえば、「あんどろいど」と発声すると「アンドロイド」のほかに「Android」も候補として表示されます。でも、これは固有名詞として登録してあるだけです。

「英語の発音には対応していない」

とマニュアルに書いてありました。英語音声を入力したい場合は、やはりDragonでしょうか。


6. 発声について

私が音声入力するところを聞いていた家族が、「意外と、ぼそぼそしゃべるんだね」と言ってました。たしかにそのとおりで、頑張って声を張り上げたりしなくても、きちんと認識してくれます。

逆に、周囲の音を拾いすぎてしまうということも、まずありません。いつもどおり、PC脇のスピーカーからBGMが流れていても、まったく影響しないくらいです。もっとも、これはAmiVoiceの性能(だけ)ではなく、マイクのノイズキャンセリング性能のおかげかもしれません。

ということで、翻訳に音声入力を使う場合、分野によっても向き不向きがありそうです。試してみたいという方は、まず体験版からどうぞ。

08:56 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2)

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# 転んでもただでは起きない - その2:音声入力

前エントリーで書いたように、左肘の骨折に伴ってエルゴノミクスキーボードを導入しましたが、それでも通常の入力速度にはとうてい及びません。

ちょうどいい機会なので、音声入力を本気で導入してみることにしました。


実は、何年か前にも、DragonSpeechが付属するパッケージ版のATOKが出たときに、音声入力は試してみたことがあります。このときとは、インストール直後のトレーニング操作がやや分りにくく、あっさり投げ出しました。

人間、本当に必要に迫られないと新しいことはなかなかできないということでしょう。


今回、試用版から使ってみることにしたのは、AmiVoice。実際に使っている同業者がいらっしゃって、そこからのお勧めでした。


公式サイトから、体験版をダウンロードできます。

リンク:音声認識ソフト AmiVoice SP2


総合評価 ★★★★☆

試用期間は2週間で、なかなか具合がよかったので製品版に移行しました。


※Amazonのこのページでは、評価の平均点がやたらと低くなっています。見てみると、会議の音声メモから文字を起こそうとして購入した方のようです。製品サイトの紹介ページに、議事録作成にも使えるようなことが書いてあるせいかもしれません。


インストール直後から、ほぼ直感的に使えました。ヘッドセットかマイクを接続し、AmiVoiceを起動したら、

1708271

左端の録音ボタンを押して発声を始めるだけです。

マイクの性能や環境によって、マイク音量と感度は設定したほうがいいようです。

1708272

たしか、デフォルトで最大だったと思います。いろいろ変えてみて、私の環境では結局、最大で落ち着いています。


最初は、家にあった適当なヘッドセットを使ってみましたが、認識精度が芳しくありませんでした。同業者のアドバイスによると、ノイズキャンセリング機能の付いた有線のマイクを使うとまったく違うということ。

そこで、さっそくこれも購入しました。


アドバイスどおり、効果は抜群でした。

ふだんの仕事で入力するくらいの文章は、かなりの精度で入力できます。この記事も、最初からからずっと、音声入力で書いています。


好みと作業環境に応じて、入力モードも選択できます。

1708273

デフォルトは、エディターモードです。入力したいアプリケーションと別に、

1708274

このような入力専用エディターが開きます。ある程度まとまったところまで入力したら、「転送」コマンドを使うと、アプリケーションに文字列が確定入力されます。

漢字変換が間違っている場合には、そこにカーソルを持っていけば、変換候補を選び直せるようになっています。

1708275

しばらくはこのモードを使っていましたが、今はほぼ直接入力にしています。直接入力モードでは、入力したいアプリケーションのウィンドウ上に確定(転送)前の文字が暫定的に表示されます。仕事には、このほうが向いている気がします。

エディターモードと直接入力モードで大きく違うのは、転送のタイミングです。

直接入力モードでは、ひとまとまりで発声した文字列だけがバッファに保持され、次のまとまりを発声し始めると、前のまとまりは確定されてしまいます。漢字変換が間違っていた場合に別の候補を選び直せるのも、このまとまりで暫定表示されている間だけです。

一方、エディターモードでは、「転送」コマンドを使うまで、入力した文章をためておくことができ、その間はどの部分も自由に変換候補を選び直せます。ちょっと難しい文章で、変換違いが多そうな場合は、こちらのモードのほうが向いているかもしれません。


使ってみて感心したのは、文脈認識性能の高さです。短い単語やフレーズほど誤認識が多く、

長くまとまった文になるほど精度が高く

なります。

したがって、これを翻訳に使うと、訳文を作るときの頭のはたらき方がかなり変わってきます。

ふつうにキーボードを打つときは、英文を読みながら、いきなり文字を打ち始めることもあります。しかし音声入力では、一定以上の長さでまとまって入力しようと思うと、頭の中である程度の長さの訳文を作ってから、一気に発声することになる。訳文の性質も変わるでしょう。いい方向に変わるように、しばらくは模索が続きそうです。


入力が終わった文章の見直しポイントも、ふだんのキー入力のときとは勝手が違ってきます。

この文章を打ち終わってから見直したときも、こんな誤入力が見つかりました。

キーボート → ○キーボード

議事録作成にも使えるようなことは書いてある → ○~ことが書いてある

ふだんの仕事で入力するくらいの文書 → ○~文章


「キーボード」の濁点が落ちて「キーボート」。ふだんの入力ならこんな誤字はまず起こりません。単語登録してあるからです。

「が」→「は」の助詞の違いは、私が間違ったわけではなく、音声認識のミスです。「を」などの助詞が落ちる場合もあります。

「文章」→「文書」は、発音があまりよくなかったのかもしれません。

おおむね満足なのですが、録音ボタンのキー割り当てはオプションが少なすぎます。

1708276

オプションが単独のキーだけで、どれも他の機能に使うものばかりです。なぜコンビネーションキーの選択肢がないのか不思議です。この点だけはぜひ、今後のバージョンアップで改善されてほしいものです。


ケガが治ってからも音声入力を使い続けるかどうかは、まだ何とも言えません。

07:43 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.08.20

# 転んでもただでは起きない - その1:エルゴノミクスキーボード

先週お伝えしたように、左肘を骨折し、手首までしっかりギプスで固定されてしまったため、ふつうのキーボードはほぼ使用不能になってしまいました。

全治1カ月の間ずっと仕事をせずにいられればいいのですが、骨折した時点で1カ月分近いバックログもあったし、定期・不定期のニュース、ブログもあるので、まったく仕事をしないというわけにもいきません。

ということで、腕を固定された日のうちにこれを注文し、翌日から使い始めました。


1週間ほど使ってみたので、現時点での使用感レポートをお届けします。

総合評価 ★★☆☆☆

ただし、私はもともとメカニカルキーボード(茶軸)を愛用しているので、メンブレンキーボードに対しては点が辛くなります。


第一印象。とにかく、バカでかい。

1708201

奥にあるのが、ふだん使っているFILCO Majestouchの茶軸です。

エルゴノミクスということで、左右に広がっている分大きくなるのは当然なのですが、そのほかにも最奥にホットキー(銀色のキー)を並べた分が場所をとっています。なにより、手前にあるパームレストの存在感が半端じゃない。開梱時には、このパームレストの下に"はかま"---手前をさらに高くするための基部---が付いているので、さらに威圧感があります。

1708202
(Amazonの製品紹介より)

この"はかま"を付けたまま使うには、椅子をもっと高くするかキーボード位置を低くする必要があるので、すぐ外しました。

パームレストの質感はなかなかよく、キーボードの傾斜のおかげで、確かにギプスで固められた今の状態でも、かなりふつうにタイピングができるようになりました。


ホットキー、こんなにたくさん要らない

すでに、ふだんのキー操作をそれなりにカスタマイズしている場合、いちばん奥にあるホットキーはあまり必要ありません。ただし、専用ソフトでキーアサインをカスタマイズできるので、一部は重宝しています。なにしろ左手が不自由なので、Escキーも押しにくい。その分を、使わないホットキーに割り当てています。


ファンクションキーの追加機能、まったく要らない

ファンクションキー(F1~F12キー)のキートップに「元に戻す」とか「返信」とか、追加の機能が割り当てられています。通常のファンクションキーとの切り替えには、F12の隣にある[F Lock]キーを使います。

1708203

こいつがとにかく邪魔です。「開く」とか「転送」とか「スペルチェック」とか、使いもしない機能ばかり並んでいて、まったく不要。キーアサインで変更できますが、そもそもFキーといちいち切り替えて使うというのは不自由すぎます。

おまけに問題なのが、その切り替えに使う[F Lock]キー。気付かないうちにうっかり触ってしまうと、ファンクションキーを押したとき、思いもかけない動作をします。しかも、このキー自体はアサインを変更できないので……

1708204

キーをぶっこ抜いてしまいました。


キータッチは、かなり安物感あり

冒頭に書いたように、メンブレンキーボードはもともと苦手なのですが、この製品はとくにダメな感じです。

個体差もあるようなのですが、打鍵感がかなり悪い。しかも、まだ1週間しか使っていないのに、---一般的にいえば、1週間でもかなり酷使したと思いますが---日に日に悪くなってくるようです。

なんか、どのキーも打つときに妙な"引っかかり"があるのですが、最悪はスペースバーです。当然ながら、かな漢字変換のとき多用するのは、スペースバーの左右の端ですが、そのとき変な"はね返り感"がある。

これだけ図体でかいのに、Enterキーが小さいのも×です。

ファンクションキーが、左側5個、右側7個というのも、一般的な4つ区切りに慣れていると使いにくい。


まあ、総合的には「お値段なり」といったところでしょうか。

いずれ本格的にエルゴノミクスを導入するとしたら、店頭で触ってKinesisとかにしたいな。

06:12 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (1)

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2017.08.17

# EBWin4のURLリスト - 8/17版

EBWin4のWeb連携機能がなかなか便利だということを、前に書きました。

参考リンク:side A: # EBWin4でWeb検索―実はなかなか便利だった

その後、各種のセミナーなどでは、この機能に登録して使えるURLのリストを、機会があるごとに提供しています。

前回の記事から1年以上たち、このブログで公開しているURLリストもだいぶ古くなったので、最新版をお届けしようと思います。

登録の方法は、上記の参考リンクをご覧ください。


言うまでもなく、以下に示すのは、私の環境で設定してあるリストです。必要に応じてカスタマイズするなり、新しいサイトを追加するなりしてください。
[URL]と[Post]を両方あげてあるサイトは、EBWin4で[URL]と[Post String]をどちらも指定してください。URLしか書いていないものは、[URL]だけ指定すればOKです。

ジャパンナレッジ
http://japanknowledge.com/psnl/search/basic/?q1=

コトバンク
[URL]https://dic.yahoo.co.jp/search/?ei=UTF-8&fr=kb&p=
[Post]&dic_id=all&stype=full

WikiPedia(jp)
http://ja.wikipedia.org/wiki/

WikiPedia(en)
http://en.wikipedia.org/wiki/

Wikitionary
https://en.wiktionary.org/wiki/

Google Japan
http://www.google.co.jp/search?output=&sitesearch=&hl=ja&q=

WebLSD
https://lsd-project.jp/cgi-bin/lsdproj/ejlookup04.pl?opt=i&query=

Dictionary.com
[URL]http://www.dictionary.com/browse/
[Post]?s=t

AHD
https://www.ahdictionary.com/word/search.html?q=

Cambridge
http://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/

Collins
http://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/

Longman
http://www.ldoceonline.com/search/?q=

Macmillan
http://www.macmillandictionary.com/dictionary/british/

Merriam-Webster
http://www.merriam-webster.com/dictionary/

Merriam Unabridged
http://unabridged.merriam-webster.com/unabridged/

Oxford Dictionary
http://www.oxforddictionaries.com/definition/english/

Oxford Reference
[URL]http://www.oxfordreference.com/search?q=
[Post]&searchBtn=Search&isQuickSearch=true

Urban Dictionary
http://www.urbandictionary.com/define.php?term=

Green's
https://greensdictofslang.com/search/basic?q=

訳語辞典
http://www.dictjuggler.net/yakugo/?word=

類語玉手箱
http://www.thesaurus-tamatebako.jp/?s=

英辞郎
http://eowp.alc.co.jp/search?q=

MSランゲージポータル
[URL]https://www.microsoft.com/language/ja-jp/Search.aspx?sString=
[Post]&langID=ja-jp

Gartner IT Glossary
http://www.gartner.com/it-glossary/?s=

09:41 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.08.16

# 「Weblio英語表現辞典」とは何か~役に立つこともあるのに

このブログでは、Weblioの悪い面ばかり紹介していますが、役に立つ情報がないわけではありません。問題は情報の示し方です。そういう格好の事例に遭遇しました。

never-nude

という、見るからに要注意の語を調べていたときのことでした。もちろん、ふつうの辞書には載っていません。

ありがたいことに、私の辞書環境には、大久保さんが作ってくださったWiktionaryのEPWINGデータが入っていて、そこには載っています。

1708161

gymnophobiaというも未見の語でしたが「裸恐怖症」だそうです。世の中には、いろんな恐怖症があるものです^^

おもしろいのは語源欄で、"Arrested Development"というテレビドラマ(邦題『ブル~ス一家は大暴走!』)から生まれた言葉だそうです(ドラマ自体は未見)。

さて、このnever-nudeをネット検索してみると、おそらくトップにWeblioの定義が出てくるはずです。

1708162

訳語:全裸になることができない人、またその症状()。
解説:コメディシリーズArrested Developmentに登場するTobiasがこの病気を持っている

すごい! Wiktionaryより詳しいですよ。調べてみると、このドラマに関するWikipediaの項にも、こんな風に書いてあります(今回のウラ取りはこれで十分でしょう)。

Tobias is a self-diagnosed "never-nude" (a disorder comparable to gymnophobia), whose language and behavior have heavily homosexual overtones...


さて問題は、上のスクリーンショットにも出ている「Weblio英語表現辞典」というヤツです。クリッカブルなので飛んでみると、こんなページです。

1708163

ところが、これもまた「提供 Weblio」とあるだけで、要するに自前で用意した内容らしいという以上のことは、まったくわかりません。ためしに、上の解説文

コメディシリーズArrested Developmentに登場するTobiasがこの病気を持っている

をググってみましたが、このサイト以外にはヒットしませんでした。


さて、Weblioのnever-nudeの項には、Wiktionaryからの引用も載っています。

1708164

Someone who wears clothes all the time, even e.g. when showering.

ということですから、これを翻訳した(もしくは、機械翻訳した)ということでもありません。やはり「Weblio英語表現辞典」独自の語義・解説なのでしょうか。


となると、Weblioの中の人が、独自に語義・解説を書いているとしか考えられません。もし本当にそうなのであれば、

独自に編集している辞書データである

編集の方針はこれこれであり、何々を参考にしている。

といったことを、はっきり書くべきでしょう。

つまり、本来の辞書にある「序文」にあたる部分です。それをやらない限り、Weblio独自データが

「辞書」として信頼されることは永遠にない

のです。せっかくちゃんとした仕事をしているのであれば、それをきちんと表明すべきですよ、Weblioさん。


※ちなみに、このWiktionaryの定義が、私が引いたWiktionaryとは違います。私の手元にある大久保さん作EPWINGは、2017年3月1日版。Wiktionaryの履歴を見ると、4月7日に書き換えられていました。編集が加わるということは、少なくともアメリカではそれだけの知名度があるということなのでしょう。

11:59 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.08.06

# 「博多で翻訳勉強会」、満員御礼!

7月中旬から募集が始まった福岡翻訳勉強会のイベントですが、昨日8/5の時点で、予定していた定員がいっぱいになったそうです。

めでたく

満員御礼

です。


リンク:「博多で翻訳勉強会」2017年9月23日

なお、"福勉"さんの記事によると、

追加募集の有無については、あらためて当ブログにてご案内いたします。

ということですので、お申し込みが間に合わなかった人も、ちょこっとだけ希望があるかもしれません。続報をお待ちください。

11:43 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.07.14

# 「博多で翻訳勉強会」、申込み受付中!

先日ご案内した福岡の「博多で翻訳勉強会」、申し込みが始まっています。

リンク:2017年「博多で翻訳勉強会」お申込み方法

お申し込みは、専用フォームからになっています。


日 時:2016年9月23日(土) 13:30~18:00
会 場:ももち文化センター(福岡市早良区百道2-3-15)

テーマ:「あなたの訳文の磨き方、それでいいの?」
講 師:遠田 和子さん、高橋 聡

定 員:50名
受講料:5,000円(事前振込)

懇親会:5,000円(事前振込)


幹事のみなさんによると、初動ですでにかなりの申し込みがあったとのこと。ありがたいことです。


また、福岡翻訳勉強会さんのブログに、講師からのメッセージが順次アップされています(この記事も、随時更新します)。

リンク:講師からみなさまへ(1)
こちら、遠田先生からのメッセージです。

リンク:講師からみなさまへ(2) …その1
こちらは私から。「前振り」です ^^;

リンク:講師からみなさまへ(2)…その2
私からのメッセージ、本体も公開されました。


各地の勉強会のなかでも、今いちばん元気な感じがする福岡翻訳勉強会。


私も、9月にお邪魔したら、またたくさん元気をもらって帰れそうです。よろしくお願いします!

【追記】
元気なだけじゃないよ~

09:36 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.06.30

# 翻訳者の不安と自信

自分の翻訳に自信を持っているか。

翻訳を仕事にしている限り、きっと最後までついてまわる問いかけだ。

もちろん、ふだんは一定以上の根拠に立って、つまり自分で説明のできる形で翻訳物を納めてはいる。でなければ、恒常的に仕事なんてできないし、まして翻訳学校で「教え」たり、人様が作った訳文を添削したり評価したりなんてできない。

だけど、根拠があって説明もできることと、自信があることとは、ずいぶん違う。

いっとき自信(のようなもの)を持てても、少し時間が経ってみるとダメダメに見えてくる。ちょっとしたことでも、自分の力量に不安を感じるようになる。しばらく仕事をしていると、なんとか少しずつ回復してくる(でなければ、仕事として続けていられない)。たまさか称賛の言葉をもらったりすると、また自信(のようなもの)を取り戻すが、へたをすると、過信に陥ったあげくに痛い目を見ることもある。

自信を支えてくれるのは、日々の鍛錬だけ。その重さに、ときどき逃げ出したくなることもある。それでも、(ある程度以上)納得のいく訳文ができあがると、翻訳って楽しいと、うかつにも思ってしまう。

翻訳を続けていくというのは、そういう波の繰り返しなんだろう。

「自分の名前で訳書を出す」のが夢とか目標みたいに言われることが多いのは、おそらく翻訳者としての自信のひとつの目安になるからだ。

不安と自信と過信の波間を漂いつづける稼業。自信なんて、蜃気楼のように思えることすらある。

ただ、なんとなく分かっていることもある。

自分の翻訳の良し悪しが分からないなら、それはきっとまだ良くないんだろう

ということだ。言い方を変えると、

人の評価や添削を求めているうちは、まだまだ

なのかもしれないということだ。

だから、自分の翻訳を人がどう評価するか、と気をもみながら待っているよりは、それを何度も読み直して、良し悪しを自分で判断するほうがいいんだろう。たぶん、ある程度以上の自信を持てるレベルに達した人は、みんなそうしているのではないか(もちろん、良し悪しを自分で判断できないうちは、ちゃんと人に見てもらうほうがいい)。

では、訳文の良し悪しは何を基準に判断するのか。それはもう、自分の言語体験しかない。これまでの人生で読み、書き、話し、聞いてきたすべてだ。しっかりした基準を持つためには、たくさん読み、書き、話し、聞くしかない。そのなかで一番、誰にでも手軽にでき、かつ効果的なのが「読む」なのだろう。だから、「翻訳がうまくなりたければ、本を読め」となる。

たくさん読んで、たくさん訳して、たくさん考えて、またたくさん訳す。


本当は、しばらくそういう生活をしたいんだ、たぶん。

11:32 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.06.21

# オンラインのCOBUILDなら、凡例は要らないかも

ひとつ前のエントリを書いた直後に、オンライン版に触れていないことを思い出しました。

実は、

オンライン版でも V-LINK のような独自ラベルが使われていますが、不思議なことにオンライン版ではどこをさがしても凡例がありません――

と補足するつもりで、オンライン版を見にいったのですが、また進化していました。

リンク:Collins Dictionaries

どうも、独自ラベルをやめて、

凡例がなくてもわかる形式

に移行したようです。

その前に、サイトの作りもまた変わっていたので、そこを確認しておきましょう。

以前、オンライン英英のことをまとめたときには、こういうタブになっていました。

1706216

このあと、タブがなくなって、一般辞書の下に Learner 辞書が表示されるという作りに変わったのですが、今は、タブとスクロールが動的に連動するようになっています。

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このようなタブに変わっています。いちばん左が[Learner]で、これがCOBUILDに相当する学習辞典です。次が[English]で一般の英語辞典に当たり、[American]という米語のタブもあります。

タブを選択すると、画面がずりり~と下に勝手にスクロールしていきます。


そして、学習用の内容を見ると、

1706228

ここにある、passive verb とか link verb のように、「見ればわかる」形式になりました。

たしかに、このほうがわかりやすいですよね。


ちなみに、EBWin4 のオンライン連動で引いてみたら、内蔵ブラウザできれいに表示され、タブの切り替えもスムーズでした。Collins オンラインを使うなら、EBWin4、おすすめです。

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09:27 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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# COBUILDの凡例はこちら

学習英英辞典のなかでも定番中の定番、Collins COBUILD(正式名称は、Collins COBUILD Advanced Learner's Dictionary)。

語義だけでなく、センテンス表示で語法などまでわかる解説は、私たち日本人にも、とてもわかりやすい。

ただ、文法・語法の欄で使われているラベルが、けっこう特殊です。

1706211

たとえばこのエントリでも、UNCOUNT(不可算)とかVERB(動詞)はすぐにわかりますが、そのほかは、知らないと役に立てられない情報です。せっかく載っている情報を活かさないのはもったいない。


さて、その情報はいったいどこにあるのでしょうか。答えは「凡例」です。では、COBUILDの凡例って、どうやったら見られるのでしょうか……

これ、意外と知られていないかもしれません。


いちぱん手っ取り早いのは、オンラインで見つかる情報です。オンライン有料サイトの一角にありますが、無料で見ることができます。

三省堂ウェブディクショナリー

トップ →[使い方]→[各辞書の凡例一覧]→[コウビルド英英辞典]、または[コウビルド英英和辞典]

「英英」と「英英和」がありますが、凡例は大差ありません。


ジャパンナレッジ

トップ → [コンテンツ] → 『コウビルド米語版英英和辞典』をさがしてクリック → (黒い帯のなか)[凡例]


三省堂のほうが、全部1ページに収まっていて、しかも説明が詳しいようです。ジャパンナレッジのほうは、ページをめくる必要があります。

どちらも有料サイトですが、こういう情報を参照させていただくくらいは、かまわないでしょう。

それ以外のCOBUILDではどうなっているでしょうか。

CD-ROM製品版の第5版(COBUILD 2006)では、ヘルプから見ることができます。

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ちなみに、このCD-ROMはJamming/Logophile でも読み込むことができて便利ですが、もともとがヘルプ形式として独立している情報なので、Jamming/Logophile 上で凡例を見ることはできません。


電子辞書端末は、それぞれのモデルごとに見方があるはずです。参考までに、PASOMARA搭載モデルでは、PC上のPASOMARAからは見ることができません。これはちょっと残念です。本体の液晶画面でCOBUILDを選択し、画面の下部に表示される逆三角形を上にスワイプすると出てきます。


iOSアプリ版もありますね。現在は第8版です(バージョンについては後述)。

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これは、評価の高い物書堂さんのアプリ。「付録」のメニューにあります。

1706215

ちなみに、物書堂さんからは、COBUILDの米語版・第2版もアプリが出ています。

COBUILDって、版がはっきりしないことがよくありますね。JTFの「翻訳ジャーナル」、第286号(2016年11/12月号)にも書きましたが、ここにも簡単に書いておきます。


私の手元には、第4版(2003年)のEPWINGデータがあります。


Jamming/Logophile にそのまま登録できるのが、第5版(2006年)。第4版と比べると、smartphone などの新語が追加されました。


第6版は2008年に出て、電子辞書端末に広く採用されたようです。最後のPASORAMA搭載機種、DF-X10001 にも、第6版が集録されています。carbon footprint などが新語として追加されています。


第7版(2012年)は、書籍のほかにアプリが出ていたようですが、入手してませんでした。


最新版が第8版で、2014年。こちらは、物書堂さんのアプリを入手できます(上述)。

固有名詞として Android などが追加されています。

2 N-UNCOUNT

Android is an operating system for mobile phoens and tables. [COMPUTING, TRADEMARK]

3 N-COUNT

An Android is a mobile phone or tablet that uses this software. [TRADEMARK, COMPUTING]

OSとしては不可算名詞、端末としては可算名詞と言うことが、ちゃんとわかります。


改めてこうして並べてみると、かなり改訂の間隔が短いんですね。

08:48 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.06.17

# なぜ、「Weblio類語辞典」は「辞書」とはいえない、のか

毎日新聞・校閲グループさんが、ブログにこんな記事をアップなさっています。

リンク:ネットの類語辞典は辞書といえるか | 毎日ことば

既に5月のブログでその可能性には言及していましたが、もっと強調しなければなりますまい。「Weblio類語辞典」は「辞書」とはいえないと。
「Weblio類語辞典」は提供元がWeblioとなっています。市販の類語辞典から提供されたものではなく、独自に作っているのです。その中には、プログラムにより自動的に生成されたものもあるようです。


毎日新聞さんの投稿としては、ここまでで十分でしょう。ここから先は、帽子屋が引き受けようと思います。なぜ

「Weblio類語辞典」は「辞書」とはいえない

のでしょうか。

ちなみに、このブログでは過去にも何度かWeblioは取り上げています。

side A: # Weblio のご紹介

最初の記事がこれ。10年以上前です。私としてはただ、「変な用語集へのリンクが集まっているおもしろサイト」だと思っていました。

side A: # Weblio のこと・続

その少しあとには、運営者あてにスペルミスを報告したりしており、好感のもてるサイトでした。

side A: # ググるなとまでは言わないけれど

それから3年後、WeblioだけでなくGoogle全体の信頼度がだいぶ怪しくなってきた頃の記事がこちら。

side A: # Weblioを使うときの注意

さらにその3年後、いまから5年前ですが、この頃には収録データの

出典に注意する

よう、呼びかけています。この注意点には、あちこちのセミナーなどでも、繰り返し触れるようにしてきました。

では、Weblioで「そもそも」を引いてみましょう。

ただし、トップページ

1706171

から検索したときに出てくるのは、三省堂大辞林です。

1706172_2

出典情報として、ちゃんと「三省堂 大辞林」と書いてある点、覚えておいてください。もちろん、語義・語釈のなかに「基本的」などという類語は載っていません。


Weblioのなかで「類語・対義語辞典」というセクションに移動して---

1706173

---あらためて「そもそも」を検索します。

1706174

ありました、「基本的に」。

ここで注意するのが、さっきの「三省堂 大辞林」と同じ位置にある出典情報です。ここに

Weblio類語辞典

と書いてあるわけです。ここをクリックしてみましょう。

1706175

提供 Weblio
URL http://thesaurus.weblio.jp/

ということなので、このURLに移動してみます…… って、あれ、これは、さっき「そもそも」を検索した「類語・対義語辞典」セクションのトップですよね。戻ってきちゃいました。ここに、ちゃんと、この辞典の説明があったんでした。

1706176_2

Weblio類語辞典は、以下の辞書を利用しています。
「Weblio類語辞書」
Weblioシソーラス(自動抽出機能)

ん? んん?

「Weblio類語辞典は、以下の辞書を利用しています」として挙がっているのが、「Weblio類語辞書」?

これだけでもう、

辞書の出典情報としてはアウト

のはずですが、さらにその下に注目してください。「自動抽出機能」とあります。これについては、もっと下まで進まないと説明が見つかりません。

1706177

一部不適切なキーワードが含まれていることもあります

だそうです。


なんだか、どこかで見た気がしませんか。そう、機械翻訳の出力でもよく目にする免責の文言です。


機械翻訳は、この文言を入れておくことによって免責としているわけですが、それは同時に

これはちゃんとした翻訳じゃありませんからね

と宣言しているに等しい。


それと同じように、「Weblio類語辞典」も、

これはちゃんとした類語辞典じゃありませんからね

と宣言しているわけでした。

なんのことはない、「辞典として使っちゃダメですよ」って、Weblioさん自身がちゃんと書いてくれてたわけです。

使う側が気をつけなくちゃいけない……でも、ですよ。免責事項をこんな深いところに書いてたら、ふつうのユーザーはなかなか気づかないんじゃないかなぁ。そういう点では、サービスとして非常に問題だとは思います。

どんな辞書だって、無謬ということはありえません。誤植も含めて、どこかに必ず間違いはあるでしょう。でも、だからといって

一部不適切な語義・語釈が含まれていることもあります

と免責している辞典なんて、一冊も見たことありません。なぜか。それが、辞書編纂者の矜持だからです。


内容に間違いはあるかもしれない。だが、間違いがないよう、全力で編纂した辞典を作ったつもりだ。


どんな辞書も、そう言えるだけの過程を経て作られています。その努力は、小説・映画・アニメ『舟を編む』の終盤、「ちしお」のたった1語が抜けているために、『大渡海』の編集部がどれだけの苦労をしたかという、あの場面を見ても分かります。

誤解のないように書いておきますが、人が苦労をして作ったものだから良い、機械的にデータを集めただけのものだから悪い、と言ってるのではありません。

要は名乗り方と、使い方です。

「機械翻訳です」と断っている翻訳が、本来の「翻訳」を名乗ってはいけないのと同じように、「自動抽出データを使っている」と宣言しているデータ集が「辞典」を名乗るべきではない、そういうことです。

使う側も、そのつもりで使いましょう、ということ。

以下は余談。

「どんな辞書も、無謬ということはない。が、編集者は間違いがないよう全力を尽くしている。だから、免責の文言を書いたりしない」

これって、翻訳も同じですね。

「どんな翻訳も、誤訳がないということはない。が、翻訳者は間違いがないよう全力を尽くしている。だから、免責の文言を書いたりしない」


だから、免責の必要な機械翻訳に、人間の翻訳が負けるはずはないのです。

05:08 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.06.13

# テリーさんの「翻訳チェック」、関東ではこれが最後!

齊藤貴昭さん、通称「テリーさん」の翻訳チェックに関する話は、みなさん、もうお聴きになったでしょうか。


昨年のJTF翻訳祭では、「誰も教えてくれない翻訳チェック」と題したセッションが超満員となり、ご参加のみなさんには大変なご迷惑をおかけすることになりました。

それを受けて、先月22日には、JTF翻訳セミナーで同セッションを再演していただきました。こちらも満席でした。


たしかに、翻訳のこととか、翻訳環境のことを学ぶ機会はいろいろありますが、翻訳後に(人の、自分の)

訳文をどうやってチェックするのか

そもそも、訳文をチェックするときには、

どんな心構えで臨むべきなのか

ということは、誰も教えてくれません。多くの方がこの内容に関心をもったのも、当然と言えば当然です。実際に参加なさった多くの方が、今までになかった手応えを持ち帰っていらっしゃるようです。


そして、同じ内容を関東で聴けるのは、これが

最後のチャンス

になります。


6月24日(土)、日本翻訳者協会(JAT)が、年次総会の前に開催する基調講演です。

リンク:JAT通常総会・基調講演会・懇親会


テリーさんの「翻訳チェック」の話をまだお聴きになっていない方は、この機会をお見逃しなく!

翻訳に携わる、ありとあらゆる方、必聴です


費用は、JAT会員が3,500円、非会員が4,500円です。

テリーさんの話は9:45~11:30 ですが、その後、昼食をはさんで、機械翻訳をめぐるパネルディスカッションも続きます。

9:00~ 9:30 受付
9:30~ 9:45 開会の挨拶
9:45~11:30 私の翻訳チェック - 齊藤貴昭氏による基調講演
11:45~13:00 交流会・昼食
13:15~15:15 Is there an elephant in translation? 機械翻訳、まだ見かけていませんか? - パネルディスカッション(日英)


上記費用は、後半のパネルディスカッションまで含めた料金です。気になる機械翻訳のことを知るにも、絶好のチャンスです。


12:36 午後 翻訳・英語・ことばJAT・JTF | | コメント (0)

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2017.06.11

# 速報 - 「博多で翻訳勉強会」、今年も開催決定!

昨年の9月、福岡翻訳勉強会が主催するイベント「博多で翻訳勉強会」が開催され、私も応援にかけつけたことは以前、ご報告しました。

side A: # 福岡勉強会が始動、9月には第1回勉強会

side A: # 「博多で翻訳勉強会」、盛り上がりました!


今年も、同じ時期に

第2回を開催

することが決定し、勉強会ブログでも正式に発表があったところです。

リンク: 福岡翻訳勉強会:2017年も開催します

日 時:2016年9月23日(土) 午後
会 場:ももち文化センター 特別会議室
講 師:遠田 和子、高橋 聡


はい、今回は私も登壇します。


詳細な内容は、これから決めていく予定ですが――

遠田さんのお話は、

関東以外では、たぶんかなり貴重

です。この機会をお見逃しなく!


私のほうは、主催者の希望する内容に応じるつもりですが、たとえば辞書の話になったとしても、今までにしたことのない

新ネタ

を用意するつもりです。


ということで、今年もみなさん、博多でお会いしましょう!

03:35 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.06.09

# EBWin4でできること

先月の翻訳フォーラム・シンポジウムが終わってすぐに、レッスンシリーズ第6弾の開催が決まったことは、すでに当ブログでもお伝えしました。

リンク:「辞書ブラウザ 手取り足取り」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#6)

今回のレッスンシリーズは、少人数(定員15名)のハンズオン形式です。EBWin4の導入から、ひととおり検索できるようになるまでを、手取り足取りで説明します。


汎用辞書ブラウザ「EBWin4」は、無料で使えること以外、あまり特長が知られていないような気がします。7月22日のレッスンは、超基本から始めますが、時間の許すかぎり、EBWin4 の魅力をお伝えするつもりです。その一部をちらっと紹介しておきましょう。


成句の検索

たとえば、Jamming/Logophile、LogoVistaで、
成句とか用例がうまく引けない
と思っていませんか? EBWin4 なら、かなり効率的に検索できます。


オンライン辞書の検索

各種のオンライン辞書も、EBWin4 のウィンドウ内で使えます。無料で使える英英辞典、故・山岡洋一さんが遺してくださった「翻訳訳語辞典」、有料だけど素晴らしいジャパンナレッジなども、ブラウザで使うよりずっと手軽です。


リストや本文の保存

検索結果(画面の左側)とか、本文の内容(右側)を保存しておきたいと思ったことはありませんか? EBWin4 なら、どっちもできます。


PC上で使える辞書環境を整備したいとお考えの方、ご参加をお待ちしております!

07:13 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.05.29

# 「没交渉」の意味は? - 国語で困ったら和英も引いてみる

月曜日の朝、起きてPCをつけたら、こんなニュース見出しが目に飛び込んできました。

【今日の主要記事】 1.JASRAC、ヤマハ音楽教室とは「完全に没交渉状態」--京大は“引用”と判断

最近とかく話題になっているJASRAC問題。私が見たのは、CNET Japan のニュースレターでした。元記事はこちら。

リンク:JASRAC、ヤマハ音楽教室とは「完全に没交渉状態」--京大は“引用”と判断

「没交渉」って、こういう意味でしたっけ?

本文中では、小見出しと本文の2か所に使われています。

1705291_5

「完全に没交渉状態」(浅石氏)とし、ヤマハ音楽振興会などが立ち上げた「音楽教育を守る会」との直接話し合いは全く行われていない状態とした。

この書き方からすると、どう見ても

まったく交渉していない

状態を指して使っているようです。

「没交渉」と言ったら、具体的なnegotionがあるとかないとかいう話ではなく、「関係がない、付き合いがない」の意味だというのが私の理解だったのですが……、こういう使い方もあるのでしょうか。


気になったので、とりあえずコーヒーだけいれて、手元でさっと調べられる国語辞典を片っ端から引いてみました。


かかわりあいのないこと。また、そのさま。無関係。 【日本国語大】

かかわりあいのないこと。また、そのさま。 【精選版 日国】

交渉がないこと。無関係なこと。ぼつこうしょう。 【学研国語大】

交渉がないこと。無関係。 【岩波国語 七】

交渉をもたないこと。かかわりあいのないこと。ぼつこうしょう。 【明鏡国語 二】

かかわるところが無いこと。ぼつこうしょう。 【新明解 七】
※四、五、六も、かなづかいを除けば同じ

交渉がなく関係が断たれていること。また、そのさま。 【大辞林】

かかわりあいのないこと。無関係。ぼつこうしょう。 【広辞苑 六】

交渉がないようす。無関係。ぼつこうしょう。 【三省堂国語 七】

交渉がなく関係が断たれている。また、その状態。=ぼつこうしょう。 【ベネッセ表現】

交渉のないこと。ぼつこうしょう。【角川 必携】

(「ぼつこうしょう」とも)かかわりあいのないこと。無関係。 【国語大辞典】

(ぼつこうしょう)
交渉がないこと。かかわりをもたないこと。また、そのさま。無関係。 【デジタル大辞泉】

(ぼつこうしょう)
交渉のないこと。無関係であること。 【現代例解】

(ぼつこうしょう)
交渉がないさま。無関係なさま。ぼっこうしょう 【集英社】

(ぼつこうしょう)
交渉のないこと。無関係であるさま。 【国語新辞典】

※下線は引用者

ちなみに、親見出しは最後の4つが「ぼつこうしょう」、残りが「ぼっこうしょう」でした。


「交渉」の語が使われていないのは、下線を引いた4つだけ(日本国語大、精選、広辞苑、新明解)で、ほかはすべて

交渉がない

という否定の形で説明されています。これなら、冒頭にあげたニュースでの使われ方も、間違っていないことになります。でも、もちろんこれではちっとも納得できません。こういうときは、もとになっている「交渉」も引かないとダメです。今度は二、三の例でいいでしょう。

①相手と話合いをして、取り決めようとすること。かけあうこと。「諸外国と―する」「値引きを―する」「団体―」

②かかりあいをもつこと。関係。つきあい。「彼女と―がある」「没―」 【岩波 七】

(1)ある事柄を取り決めようとして、相手と話し合うこと。かけあうこと。かけあい。談判。

(2)かかわりをもつこと。また、かかわりあい。特に男女の性的な関係。 【日国】

どうやら、大きく2系統の意味があるようです。

「没交渉」=「交渉がない」という定義なら、なるほど、どちらの意味の否定でも使えることになります。そうすると、やはり件のニュースの使い方は、問題ないということになる。

ただし、岩波で②のほうの用例として「没-」があげられている点は、注目すべきでしょう。

② 人と人との交わり。かかわりあい。関係。 「没━」【明鏡 二】

2 交際や接触によって生じる関係。かかわり合い。関係。「悪い仲間との―を絶つ」「異性と―をもつ」「没―」 【デジタル大辞泉】

などの用例も同じでした。これを見ると、やはり「没交渉」は「関係」「かかわりあい」がないことであって、「negotiationがない」という話ではなさそうです。

もとの「交渉」に2系統の語義があって、否定形「没交渉」にも、その2系統に対応する使い方があるなら、「没交渉」を「交渉のないこと」と説明してもいいでしょう。しかし、2系統のうち一方の否定でしかないとしたら、「交渉のないこと」という語釈には問題あり、ということにならないでしょうか。


少納言で調べても、「negotiationがない」と解釈できる例は、皆無ではありませんが、少数派です。

青空WINGもざっくり調べてみました。178件ヒットします(2017/3/4完全版)。

彼の気分とは没交渉に、皆その日の生計を励んでいる。【芥川】


奇妙にも葉子とは全く無関係で没交渉だった。【有島】


其は古代の文法からは、没交渉なものと謂はねばならぬ。【折口】

……などなど、やはり「negotiationがない」系は見つかりません(全部は見てませんが)。

少納言や青空WINGでここまで確認できれば、やはり「没交渉」を「交渉のないこと」と書いてしまうのは、よろしくない気がします。


そして、翻訳者であれば、さらに

和英辞典

まで確認しておけば安心です。

彼の人生は芸術とは没交渉だった His life had nothing to do with art.

彼は世間とは没交渉だ He stands aloof from the world.

あの人たちとは没交渉です I do not associate with them.

国民の感情とは没交渉に政界の駆け引きが行われている  Political maneuvering is being carried on regardless [quite independently] of the people's feelings. 【プログレッシブ英和中】

ぼっこうしょう【没交渉】

lack of relation 《to…》. [⇒むかんけい]

…と没交渉である have no connection [relation, concern] with…; have nothing to do with…; have no hand in…; be independent of…

・その後彼女の家とはまったく没交渉である. Since then we have had nothing at all to do with her family.

…と没交渉に independently of…

・彼らは世間と没交渉に生きている. He stands aloof from the world. | He has cut adrift from society. 【和英大】

ぼつこうしょう〔没交渉〕

〈形〉Having no concern with (anything)

◆僕はそんなことには没交渉だ I have no concern with―have nothing to do with―such matters.

◆これと彼とは没交渉だ This has nothing to do with that.

◆彼は研究に夢中になっているから世間とは没交渉だ He is so absorbed in his study that he has no concernment with the world. 【斎藤和英】

※下線は引用者

このように、negotiationの意味で使われている例は、ひとつもありません。


以上のことから、かなり多くの国語辞典が「没交渉」を「交渉がない」系で説明している現状はいかがなものか……という結論になりそうです。

ところで、今回ニュースになったケースでは、この表現を使ったのはJASRAC側だったようです。

進捗については「完全に没交渉状態」(浅石氏)とし、
メディアであるCNETさんがこんな使い方をしたのではないことが、救いといえば救いでしょうか。

11:23 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (3)

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2017.05.27

# 翻訳は不自然な作業 - CATツール環境はもっと不自然

先日の翻訳フォーラム・シンポジウム、全セッションを通じて、いろいろと印象に残るキーワード、キーフレーズがあったことと思います。


なかでも、高橋さきののパート『述語から読む・訳す』の冒頭に出てきた話は、かなりインパクトがあったようです。

翻訳は不自然な作業

ほっておけば《勘》はどんどん鈍る。

翻訳をすればするほど、日本語単体の文章力は下がる


ふつうの翻訳でさえ「不自然な作業」であって、「翻訳するほど日本語の文章力は下がる」わけですから、

翻訳支援ツールを使うのは、もっと不自然な作業

だということは、容易に想像がつくでしょう。
※ここで言う翻訳支援ツールとは狭義、いわゆる翻訳メモリーアプリケーションのことです。


どんな文章でも、ひとつずつの文が独立して存在しているわけではありません。原文のライターが、1文ずつを、まったくばらばらの意識で書いてるなんて、ありえないからです。


どんな文と文にも、必ずつながりがある。

時系列に沿った説明、原因と結果、理由と結論、言い換え、反復、例示、順接、逆接、添加、反転……。明示的な接続語句があってもなくても、あらゆる文と文の間には、そういう関係がある。もちろん、英語でも日本語でも。

そして、文と文がつながってパラグラフになり、パラグラフとパラグラフがつながって文章ができあがる。


そういう流れ、かたまりを、1文ずつに切り離した状態で訳そうなんて、それはもう不自然のきわみです(差分だけの翻訳とか!)。

CATツールのメーカーは、「前後の文脈も見えるでしょ」と言うかもしれませんし、CATツールを日常的に使っている人なら、「文脈には気をつけて使っている」と言うでしょう(実際、そう意識しているのでしょう)。

でも、人間の感覚って、実はとても脆い。よく言えば、融通がききすぎる。だから、あの窮屈な

1文単位のインターフェース

をずーっと使っていたら、どうしたって影響を受けます。影響されないと考えているとしたら、それは錯覚です。


不自然な行為の影響をなくすには、どうすればいいか。その方法やヒントを、シンポジウムではお伝えしました。

スキルの落ちにくい訳出作業が必要

というのが、ひとつの解答でした。

「1文単位のインターフェース」の弊害はわかっていても、お仕事として使わなきゃならない。のだとしたら、その影響を相殺するには、ふつうの翻訳を並行して続けること、あるいはふつうの翻訳に置き換えてしまうことです。

ちなみに私は、CATツール指定案件でも、ちゃんと訳したいときは、ソース(PDF、Webページなど)から原文を確保して、それをふつうのインターフェース(ただのWordファイル)上で訳してから、最後にCATツールに貼り付けています。

手間は増えますが、私がこの方法をとるときって、そもそもCATを使うべきではない文章にCATが指定されているケースです。原文と訳文が一対一にならない部分も多くなりますが、それは当然だし、こういうケースなら訳文の再利用が発生する可能性はまずないので、問題化することもほぼありません。

そういうことを前提にしたうえで、CATの影響を回避するための、いわば自衛手段です。

CATツールを使っていれば、弊害には遅かれ早かれ気づくでしょう。もし、日常的にCATを使っていて、不自然さを感じていないとしたら要注意です。それどころか、あのインターフェースのほうが訳しやすいと感じているとしたら、1文単位の思考に慣れてしまい、文と文との間にあるはずのつながりに鈍くなっている兆候かも。


ましてや、翻訳の力が固まっていないうちにCATツールを導入し、メモリーの既存訳や用語集を頼りに「翻訳力をつけよう」という発想は論外です。しばらく続けていたら、表面的には何とか「訳文」を取りつくろえるようになるかもしれませんが、ちゃんとした力は身につかない。第一、そんな付け焼き刃でできるレベルなら、早晩、機械翻訳にとって代わられるでしょう。

シンポジウムに出てきた、鉄人28号の話も、そういうことです。

04:48 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (1)

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2017.05.25

# 翻訳フォーラム・レッスンシリーズ、EBWin4の超基本

翻訳フォーラムのシンポジウムと大オフ、みなさまのおかげで無事終了しました。

当日の様子は、こちらのツイートまとめをどうぞ。

リンク:翻訳フォーラム『シンポジウム2017』『大オフ2017』まとめ

また、ご参加くださった方々によるブログなども、ぼちぼちアップされ始めました。そちらは、しばらくしたらまとめたいと思います。


さて、シンポジウムが終われば、翻訳フォーラム・レッスンシリーズです。さっそく、第6弾となる次回の内容が決まりました。

きっかけは、シンポジウムが終わってから流れた、こんなツイート。

EBWinとEPWINGの発音も聞き分けられない(どっちが何か分からない)わたし。「そこから始める⁉︎ 辞書ブラウザ導入講座」とかあったら絶対に受講する。「腰が引けてる人のための〜」でもいいな。sorryの串刺し検索、してみたい。


やりましょう、「そこから始める!?」

というわけで、辞書ブラウザ「EBWin4」の超基本を、PC持ち込み、手取り足取りのハンズオン形式でご案内します。

・辞書ブラウザEBWin4の導入
・各辞書の入手と登録
・辞書グループの作成
・複数辞書の串刺し検索

までを半日で覚えます。

申し込みサイトはこちら。

リンク:「辞書ブラウザ 手取り足取り」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#6)

※申し込み開始は、28日の11:30からです。ただ、今回はハンズオン形式ということで募集が少数です。お気をつけください。

10:28 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.05.18

# 『英和翻訳基本辞典』もEPWINGに--見出しプラスアルファ

EPWINGジェダイの大久保克彦さんが、『翻訳訳語辞典』の見出しEPWINGを公開してくださったと、先日お知らせしたばかりですが、今度は、宮脇孝雄さんの『英和翻訳基本辞典』もEPWING化してくださいました。

リンク:Project Zephyr 宮脇孝雄『英和翻訳基本辞典』のEPWING(化)

見出しだけでなく、ごく簡単な説明文も付いています。そして、書籍のページ数が書かれているので、詳しくは書籍でそのページに当たることになります。


データ自体は、3年ほど前に越前敏弥さんが(もちろん、著者の許可をとって)作成してくださったテキストファイルが元になっています。

リンク:『英和翻訳基本辞典』インデックス: 翻訳百景

今までのデータでも、Jammingに登録すれば(ユーザー辞書という扱いになる)使えていました。

1705181

※なんか、いろんな記号が出てきちゃうのは、ウチのJammingだけかもしれません。これについては未検証。


これが、大久保さんのおかげでEPWINGになり、他の辞書と同じような体裁になったわけです。

1705182

ページを見て実際の書籍を開くのは、もちろん今までどおりですが、リンクがリンクとして機能します。

スクリーンショットは載せませんが、EBWin4にももちろん登録できます(Logophileは未確認)。


元データを作ってくださった越前さん、大久保さん、ありがとうございます!

前回の『翻訳訳語辞典』も、この『英和翻訳基本辞典』も、きちんとしたデータは他のサイトや書籍に当たらねばなりません。

しかし、このように手元の辞書で、まずエントリーの有無から確認できるという、それだけのことが私たち翻訳者にとってどれだけありがたいことか、お使いの方には十分おわかりでしょう。

まだお使いでない方は、ぜひ使ってみてください。言うまでもなく、『英和翻訳基本辞典』が必要ですが、これは翻訳者必携です。この機会に入手しましょう。


データ化されていない紙の辞書を、このような形で利用できるというのは、汎用辞書ブラウザの新しい使い方かもしれません。

紙の辞書の索引をスキャンしてテキストデータにできれば、それを元にいろいろなEPWINGデータが作れるはずです(実は私も試しているのですが、まだうまくいっていません)。それを公開するには、やはり著者の許諾が必要だろうと思いますが、この形はけっして、元の書籍の権利を侵すものではありません。

むしろ、書籍の売り上げ増につながるのですから、誰にとってもありがたいモデルではないでしょうか。


EPWING、いまだ滅びず!


21日(日)の翻訳フォーラム・シンポジウムでも、この話には簡単に触れる予定です。

02:56 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.05.14

# JTFジャーナル、配信と発送が変わります

右カラムにカバー写真を載せていますが、日本翻訳連盟の「日本翻訳ジャーナル」、最新号となる5/6月号(289号)が発行されました。

Jtfjournal289_2

そして、今号の公開をもって、JTFジャーナルの提供システムは以下のように変更されました。

  • JTFジャーナルは、今号より、JTF会員誌として会員向け限定の公開となります。

  • ただし、移行措置として2018年3月末まで(294号まで)は、アカウントを作成するだけで誰でも無料でお読みいただけます

  • JTF会員には、毎号(隔月)、印刷した紙版を郵送にてお届けします。


最新5/6月号の紙版が私の手元にありますが、なかなかいい感じの仕上がりです。

1年間の移行措置の後でも、非会員向けには、できるだけの情報提供を続けていく予定です。詳細は、ご報告できるようになったら、このブログでもお伝えします。

念のため、アカウント作成とログインの手順を記しておきます。

なお、JTF会員の方は、JTFジャーナルサイトへのログインについてご注意いただきたい点がありますので、以下をご確認ください。

JTFジャーナルWeb版 | 一般社団法人日本翻訳連盟 機関誌

で、今までのように表紙をクリックすると、

1705141

このようなページが表示されます。

このページにある「ログインページへ」のリンクから、あるいはページ右上の

1705142

ここから、ログインページに進みます。

1705143_2


初めての方は、ここでアカウントを作成してください。

なお、ジャーナルのPDFを閲覧するには、

JTF会員もアカウント作成が必要

ですので、ご注意ください。


JTFサイトで「会員ログイン」するだけでは、ジャーナルは閲覧できません。

JTF会員サイトとは違うアカウントになりますので、ご注意ください(会員サイトは、会員ID/パスワード。ジャーナルサイトは、メールアドレス/パスワード)。


ということで、今までよりちょっと手間が増えましたが、その手間に値する充実のコンテンツになっているのではないかと思います。

今後も、JTFジャーナルを、ご愛読いただければ幸いです。


06:11 午後 翻訳・英語・ことばJAT・JTF | | コメント (0)

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2017.05.12

# 『翻訳訳語辞典』の見出しEPWINGデータが登場!

翻訳フォーラムのシンポジウムが、いよいよ来週に迫ってきました。5/21(日)開催です。残席が僅少となりましたので、ご参加検討中の方は、お急ぎください。申し込みサイトはこちら

さて、そのシンポジウムで、私はまた辞書の話をします。今年は、汎用辞書ブラウザ EBWin4 を中心に、辞書ブラウザの使い方について、最新情報をお伝えする予定です。


そんな矢先、EPWINGの世界でまた、うれしいデータが公開されました。故・山岡洋一さんが遺してくださった貴重な訳語集(英日・日英 翻訳訳語辞典 — 辞遊人(DictJuggler))です。

山岡洋一『翻訳訳語辞典』の見出しだけEPWING

データを作成してくださったのは、もちろんEPWINGマスターの大久保さん。いつもながら、ありがとうございます!

辞書の内容がそのままEPWING化されたわけではなく、見出しと、そのURLが示されるだけという単純な構造ですが、汎用辞書ブラウザで串刺し検索を実行すれば、その結果からすぐに該当項目に飛ぶことができます。

つまり、今までのように、該当項目が

あるかどうかわからない

状態でサイトを調べにいくのではなく、

あるのを確認したうえで

サイトを参照できるわけです。

これが、どれほどありがたいことか、使ってみればすぐにわかると思います。

どの汎用ブラウザにも登録できるはずですが、Logophileは試していません。理由は以前書いたとおりです。


EBWin4 の場合

大久保さんも EBWin4 での使用を想定しているので、EBWin4 で使うのがいちばん簡単です。通常のEPWINGデータと同じように登録して検索すると、

1705121

このようにURLが表示されます。これをクリックすれば、EBWin4 内部で表示されます(使われるのは、Internet Explorer のエンジン)。

1705122

「詳細表示」をクリックすると、元の例文と出典がわかりますが、若干レイアウトが崩れます。これはしかたがないようです。

また、訳語自体もリンクになっていて、たとえば「楽しみ」をクリックすると、同じサイトの「翻訳類語辞典」に飛ぶようになっています。

1705123

つまり、調べたい単語 → 訳語 → 類語と流れるように検索していけるわけで、これまでこのサイトを愛用していた方も、それが最大の魅力だったようです。

EBWin4 には「進む/戻る」の左右矢印ボタンがありますから、訳語ページと類語ページの行き来も簡単。


Jamming の場合

Jamming でもURLは表示されますが、残念ながらクリックできません。

1705124

ここからURLを開くには、方法が2つあります。

まず、AHKを使う方法。これについては、くにしろさんがブログで紹介してくださいました。

リンク:AHKを利用して、Jamming で『翻訳訳語辞典』のURLにジャンプする | Memo 9246 :: 翻訳備忘録・雑記帳


もうひとつは、Jamming のWeb 検索機能を使う方法。

あるんですよ、実は、Jamming にもこの機能が。ただ、別ウィンドウを開いたままにするというのが、なんとなくスマートじゃない気がします。

それでも、Jamming 大好きで、AHK導入が難しい人は、この方法をお試しください。手順は、以下のとおり。

  1. Jamming の[ファイル]→[検索用URLを開く]で[URL]ウィンドウを開きます。
  2. [操作]→[新規URL]を選択して、[URLの編集]ウィンドウを開きます。
  3. [名称]に任意の名前を入力し、[URL]には
     http://www.dictjuggler.net/yakugo/?word=[WORDS]
    と入力します。

設定が終わっても、このウィンドウは開いたままにしておきます。Jamming 本体で何か検索してから、[URL]ウィンドウに表示されている名称(3.で決めたもの)をダブルクリックすると、ブラウザで該当ページに飛びます。

ちなみに、Logophileでも、Web連携のしかたはだいたい同じです。

こんな風に、今まで汎用辞書ブラウザでは使えなかったコンテンツが、翻訳者にとってありがたい形でデータ化される。素晴らしいことだと思います。

以前も、宮脇孝雄さんの『英和翻訳基本辞典』が、これに近い形でEPWING化されました。こちらは本体が書籍なので、書籍版を持っていないと意味がありません。当ブログの過去記事をご覧ください。

リンク:side A: # 『英和翻訳基本辞典』をJammingに

10:22 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.04.21

# 第27回 翻訳祭、始動!

※1年前の記事のコピーではありません!


昨年、第26回の翻訳祭は、おかけさまで大成功と言っていい成果をあげることができました。


今年、第27回翻訳祭も、昨年と同じくこの時期から準備がスタートします。


2017年の翻訳祭、開催の日時と場所は以下のとおりです。

日程:11月29日(水)
場所:アルカディア市ヶ谷


そして、これが今年の翻訳祭実行委員の面々です。

1704211

 ・
 ・
 ・

って、昨年とあまり変わっていないようにも見えますねー。


実は、昨年の成功を受けて、今年の翻訳祭も昨年に続き

個人翻訳者にとって魅力的なコンテンツ

を中心に組み立てていこうということに決まりました。

その方針のもと、実行委員会も、昨年の委員が全員残ったうえで、新たに2人が加わるという布陣になった次第です。


ちなみに、今年の実行委員長は、不肖・帽子屋が務めさせていただくことになりました。


委員長を拝命したからには、昨年に負けないコンテンツをそろえるつもりです。

また、会場は残念ながら、引き続きアルカディア市ヶ谷となります。

昨年は一部のセッションが超満員になり、ご参加の皆さんにはたいへんご不便・ご迷惑をおかけすることになりました。昨年並みの人気が予想されるコンテンツを用意しながら、会場については運営・整理の態勢を万全に整え、気持ちよくセッションを聞いていただこうと考えています。


そのほか、いろいろな面で昨年以上にご満足いただけるような翻訳祭にしたいと思っています。


(今年も)ご期待ください!

06:21 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (1)

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2017.04.09

# 翻訳フォーラム・シンポジウム、申込みは本日10:00から!

すでに日程だけはお伝えしていましたが、今年の翻訳フォーラム・シンポジウム、イベント告知サイトができました。

リンク:シンポジウム2017 ~直訳と意訳の間で~

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申込みは、シンポジウム、大オフとも、昨年と同じく第一次と第二次に分かれています。

第1次発売 4/ 9(日) 10:00~5/18(木) 19:00

第2次発売 4/14(金) 18:00~5/18(木) 19:00


ということで、第一次発売は、本日の朝10:00 です。


忘れずに、スタンバイを!

01:12 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.03.18

# 東京ほんま会、「ワイルドカードVS正規表現セミナー」

5月くらいまでのイベント予定でもお伝えしましたが、東京ほんま会、久しぶりにセミナーを開催します。

リンク:ワイルドなセイキの対決! ワイルドカードVS正規表現セミナー

日時:4月23日(日) 13:00~17:00(懇親会あり)

場所:株式会社翻訳センター

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以前も書きましたが、案内サイトから抜粋します。

・ときどき使ってはみるが、応用まではできていない
・うろ覚えの正規表現は、Microsoft Wordでは使えなかった
・あやふやなワイルドカードが、エディタやTradosで通用しなかった
・WildLightやSimplyTermsなどのツールで、検出パターンを定義したい


今回、ワイルドカードと正規表現を初歩から扱うことはしませんが、どちらか一方を、少しくらいは使っているという方にはおすすめです。


募集開始から2週間ほど経っているため、お席はすでに4分の3ほど埋まっています。いつものペースですと、あと1か月弱で満席~キャンセル待ちになります。

興味のある方はお急ぎください。

ということで、ワイルドカードと正規表現についてのアンケートも実施しています。

・こんな検索や、あんな置換をしてみたい。

・ふだん秀丸エディタでやっている検索を、Wordのワイルドカードではどうやるのか。

そんな質問を募集しています。

04:24 午後 翻訳・英語・ことば 翻訳者のPCスキル | | コメント (0)

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2017.03.12

# 柳父章『日本語をどう書くか』

(3/14修正:なんか、タイトルもAmazonのリンクも違ってた~)

自分の不勉強を、あらためて恥じ入っている。

柳父章の著作は、右カラムの書棚にも置いてある『翻訳語成立事情』くらいしか読んでおらず、最近になってようやくこれを読んだ。


こんなことを書くだけでも浅学をさらけ出すことになるが、いやそもそも浅学は広く知れわたっているのだから気にせずに書いてしまおう、私が今までに出会った翻訳関連の本のなかでは、故・山岡洋一氏の『翻訳とは何か―職業としての翻訳』以来の衝撃だったかもしれない。

もっと早く読んでおきたかった一冊だ。

・日本語の「文」とはどんな単位なのか。

・どうして、読点の打ち方は難しいのか。

・助詞の「は」が、なぜ文を超えて効力をもち続けるのか。

・常体と敬体とは何なのか。

・日本語の文末の種類が乏しいのはなぜか。

・「だ」と「である」はどう違うのか。

・「~のだ、~のである」文末はどんな機能を果たすのか。

・英語と日本語のテンスとアスペクトはどう違うのか。

・「~ている」という表現は何なのか。

・漢語(熟語)はどういう性質をもっているのか。


--- といったことの手がかりが、全部この本には載っている

あくまでも「手がかり」であって、「答え」ではないかもしれない。少なくとも、この本だけで何もかも解決するわけでは、たぶん、ない。

が、上に挙げたような疑問---翻訳者なら何度も遭遇しているはずの---について、今までにきちんと考えたことがあり、別の機会に聞いたり読んだりしていれば、この本を読んでいろいろと腑に落ちるはずだ。


以下、特に印象的だった箇所をふたつだけ引用する。

この熱心な翻訳受け入れ国、日本の翻訳方法は、通常考えられている二言語併用の立場とは本質的に違っていた。それは、彼方の話し言葉をこちらの話し言葉に移し入れる、という方法ではなかった。彼方とこちらの二つの話し言葉の間に、言わばもう一つの日本語とも言うべき、翻訳用の書き言葉を作り出す、という方法によったのだ。

私は日本語学の専門家ではないし、この言説が学問的にどう評価されているのかは知らない。だが、この一文で、翻訳をめぐるいろいろなモヤモヤが、すとんと収まった。


言葉は、その使用者が知って意識している以上の意味を、自ずと心得ている。人が知っているのは、その一部にすぎない。使用者が知っている以上の意味は、いざ使用してみたときの、ほとんど無意識的な、感覚が教えてくれる。語感である。そして、歴史の古い言葉は、この語感が豊かなのであり、逆に新造語は、何与野もこの語感に乏しい。

辞書を引くとき、訳語を選ぼうとするとき、頭の片隅にしっかりとどめておこうと思う。


こんな風に、(私にとっては)ハッとさせられる指摘が随所にあった。翻訳者として日本語を見つめ、英語と日本語という二言語のあいだに立って考えをめぐらすとき、この本は大きい指針になる。


そういうわけで、これから柳父章の著作は、手に入るかぎり読み尽くそうと考えている。


聞くところによると、この本もなかなか "スリリング" らしい。

到着を心待ちにしているところだ。

01:04 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.03.07

# お持ち帰り

帽子屋の別ブログ「私家版英語辞典@帽子屋」に、takeawayという単語のことを書きました。

リンク:私家版英語辞典@帽子屋: take-away, takeaway

どんな意味かは、リンク先をご覧ください。


これに関連して、研究社のKODには収録されているのかどうか、Facebookで訊いてみたところ、まだだということです。しかも、そのFBスレッドにおもしろいコメントをいろいろいただきました。

まず、最近やはり仕事で遭遇した、という声もいくつかありました。

ここ数年、セミナー関係文書によく出てきますよね。でも、私が見た例は「結論」とか「教訓」とかいうよりも、「このセミナーで持って帰っていただきたい重要な事柄」みたいな感じでしたが…んー「結論」とも言えるんですかねぇ…


そうそう、やはり字面どおり、基本的には「参加者に持ち帰ってもらうもの」という発想から広まった言葉のようです。

なかには、もう10年くらい前に最初の例を見たというコメントもあったので、けっこう前から使われていたのでしょうか。


そして、当然ですが、名詞化される前に動詞としてこの意味で使われていたという証言も通訳者からいただきました。成り立ちの経緯としては、実によくわかります。

The message that I want you to take away from today's lecture is...みたいな。それが、次にtakeaway messageになり、message が落ちてtakeawayになった、そんな印象です。


また、生で耳にしたという体験も。

Then, XXXX, what is your takeaway? とやられました。とっさにリフレーズを求めてwhat you learnt can bring to our business. くらいな説明してくれました。


「giveaway と対になっている」というご指摘も。たしかにそうですね。


それで、なんとなく「気づき」みたいな気持ち悪さを感じると私が書いたら、

うざい業界用語の10番に入ってる

んだそうです。こんなページ。

リンク:17 irritating jargon phrases, and awesome new sayings we should use instead | Nonprofit With Balls

あはは。やっぱり~。

そう言えば、以前、やはりマーケティング系で多用されていたleverageについて調べていたときも、

Apparently you can leverage anything.

なんてフレーズを見かけました。


ちなみに、成り立ちから考えて「お持ち帰り」みたいな言葉がいずれ定着するかも、と思いながら「お持ち帰り」をググったら、まったく違う俗語がヒットします。が、そんな俗の語義も三省堂国語辞典には収録済みでした。

②〔俗〕飲み会などで知り合った異性を、そのままつれて帰ること

03:49 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (5)

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2017.03.05

# 3、4、5月の翻訳関連イベント

もちろん、ほかにも翻訳関連のイベントはあるはずですが、帽子屋が把握している/関係している範囲で、まとめておきます。


毎年だいたい、イベントが増えてくるのはこのくらいの時期から、という気もしますね。



3月23日(木)
JTF翻訳セミナー(2016年度第6回)
翻訳界に、Game Changer『使える自動翻訳』が、降臨!

時間:14:00~16:40(懇親会もあり)
場所:明治薬科大学 剛堂会館

機械翻訳研究の第一人者、隅田英一郎(NICT)さんの講演です。隅田さんは、昨年の翻訳祭でも、機械翻訳の現状について、かなり詳しくお話しくださいましたが、今回は切り口が違うとのことです。

以下、案内サイトから抜粋します。

【講演のポイント】
◎全ての関係者が自由に本音でコミュニケーションできる場と議論の種を提供する。
・ニューラル翻訳は高精度か、統計翻訳はどうか、参加者で検証する。
・自動翻訳は翻訳関係の仕事を奪うか、新たな付加価値の高い仕事を生み出すのか、議論する。
・『使える自動翻訳』の出現という変化に応じて打つ手を考える。
・衆知を集めて、翻訳サービスのより良いステージを目指したい。
◎今回はDVDはつくりませんので現場に参加してください。

機械翻訳の発展で自分のこれからの仕事がどうなるのか、と気になっている人は足を運ぶ価値があるでしょう。もちろん、私も聴きにいきます。

★お申し込みは3営業日前だそうなので、3/20までかな。


4月23日(日)

東京ほんま会
ワイルドなセイキの対決! ワイルドカードVS正規表現セミナー

時間:13:00~17:00(懇親会あり)
場所:株式会社翻訳センター

東京ほんま会、昨年はセミナーの実施回数が少なかったのですが、今年はやっと動き出します。

第1弾は、テリーさんと帽子屋がダブルで担当し、ワイルドカードと正規表現をいっぺんに扱います。こんな方におすすめします(案内サイトから抜粋)。

・ときどき使ってはみるが、応用まではできていない
・うろ覚えの正規表現は、Microsoft Wordでは使えなかった
・あやふやなワイルドカードが、エディタやTradosで通用しなかった
・WildLightやSimplyTermsなどのツールで、検出パターンを定義したい

★こちらは、定員になりしだい〆切になります。すでに募集は始まっていますので、興味のある方は、お早めにどうぞ。


5月21日(日)

翻訳フォーラム
シンポジウム2017&大オフ2017

時間:11:00~17:00(シンポジウム)→ 18:30-20:30(大オフ)
場所:お茶の水女子大(シンポジウム)→ 池袋(大オフ、予定)

今年もやります!

詳しい内容などについては、上記リンク先ページで随時お知らせしますが、すでにスタッフでいろいろと仕込み中です。お楽しみに。

★申し込み開始は、4月上旬を予定しています。

昨年も一昨年も、申し込み開始後、かなりのスピードで座席が埋まってしまったイベントです。申し込み開始の前には、必ずこちらのブログでもあらためて告知します。今しばらくお待ちください。


5月22日(月)

JTF翻訳品質セミナー 第1回/第2回

時間:10:00~12:00(第1回)/13:30~15:30(第2回)
場所:明治薬科大学 剛堂会館

翻訳フォーラム・シンポジウムの翌日です。遠方からいらっしゃる方は、ぜひ続けてどうぞ!

第1回(午前)が、テリー斉藤さんの「誰も教えてくれない翻訳チェック~翻訳者にとっての翻訳チェックを考える~」

タイトルからわかるとおり、昨年の翻訳祭で超満員となり、入場できなかった人もいた超人気セッションの再演です。翻訳祭で聞けなかった方は、ぜひどうぞ。

第2回(午後)は、石黒圭さんの「文書作成における接続詞の役割 ~接続詞を使うと文書は論理的になるのか~」

こちらについては、先日、石黒さんの著書をご紹介した記事でお伝えしたとおりです。


5月26日(金)

JTF翻訳品質セミナー 第3回

時間:10:00~12:00
場所:明治薬科大学 剛堂会館

同じ週に、第3回も開催されます。

「論理的で翻訳しやすい日本語を書く」というタイトルで、テクニカルコミュニケーター(TC)協会理事の中村哲三さんが登壇します。テクニカルコミュニケーター協会と言えば、この本です。

★JTF翻訳品質セミナーは、第1回~第3回まで申し込みがすでに始まっています。通常のJTF翻訳セミナーとは違い、オンラインフォームではないので、ご注意ください。

なお、JTF翻訳品質セミナーを開催するのは、JTFの「翻訳品質委員会」です。「標準スタイルガイド検討委員会」から改称されました。


6月以降には、また翻訳フォーラムのレッスン・シリーズなども予定されていますが、ひとまずは5月までの予定をお知らせしました。

08:54 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.02.26

# 無料で使える文章チェックツール

先日、WildLightのサンプルを紹介しました。

参照リンク:side A: # こそあど、~という、~こと、~ている - WildLightの活用例


私自身がふだんからやりがちなポイントを定義ファイルに書き、WildLightで実行してマーカーを付けるという(←ほら、すぐ「~という」を使っちゃう)基本的な使い方でした。定義の内容は、(前回からすこし修正し)

・こそあど言葉のうち、「これ」系と「それ」系

・形式名詞の「もの」と「こと

・文末の「~ている、strong>ていた、strong>ています」

・文末、文節末の「~ており

・文節末の「~が、

です。

このうち、「~てい」と「~ており」だけは、前に来る動詞が音便---「騒いでいる、読んでいる」のような形のこと---を起こしているときのために、ワイルドカードを使って

[てで]い
[てで]おり

としています。


さて、WildLightも無料で公開されていますが、ほかにも無料で公開されている文章チェックツールがあるので、ご紹介しておきます。

リンク:小説推敲補助ソフト「Novel Supporter」 - クロノス・クラウン -

リンク:Tomarigi | PaWeL:日本語表現法開発プロジェクト-青山学院大学-



まず、サンプルとしてWilidLightを実行したファイルを貼っておきます。使ったのは、昨日2/25の当ブログの記事です。予想どおり、「~という」とか「~が、」がけっこうありますね。恥ずかしいですが、サンプルなのでこのままにしておきましょう。
「225.docx」をダウンロード

さて、ご紹介する1つ目は、クロノス・クラウン(柳井政和さん)で最近公開されたツールです。以前---Windowsであまりにメモリー管理がずさんだったころ---からフリーウェア「めもりーくりーなー」で有名だったサイトですね。
(余談ですが、ついに小説家としてもデビューしたようです。しかもイラストは『スティーブズ』の、うめ!)

「小説推敲補助」という名のとおり、そのまま翻訳に適しているとは限りません。

現時点で実装されているチェック機能は、以下のとおり。

・単語近傍探索(同じ単語の連続)
・こそあど確認(こそあど言葉)
・文末重複確認(同じ文末(現在形や過去形の連続))
・段落先頭重複確認(段落の先頭が同じでうるさく見えないか)
・文章警告(表現上注意すべき点や凡ミスを)
・画数ヒートマップ(文字の画数を元に文字の背景色を変え、読みやすさを視覚化)
・文長ヒートマップ(1文の長さに応じて文字の背景色を変え、長すぎる文を可視化)
・ルビ追加(様々な形式でルビを追加)
・文字種表示(文字種で文字の背景色を変更。漢字とかなの混じり具合や比率を確認)
・指定文字数改行(指定した文字数で改行)

使い方は簡単。起動したら、ファイルを開き(完成したファイルでなく、一時的なチェックなら、左ペインに貼り付けるだけでもOK)チェック項目を選んで「全て実行」をクリックするだけです。「ブロック実行」なども可。ほぼ一瞬で、右ペインに結果が表示されます。

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同じく2/25の当ブログ記事で「単語近傍探索」を実行してみたところです。

実際にどの機能が有用かどうかは、各自お試しください。たとえば日英翻訳なら、原文の日本語に対して「単語近傍探索」を実行すれば、キーワードの確認に使えるかもしれません(英文には使えないので、英日翻訳では使えない)。私は、「画数ヒートマップ」がけっこう気に入っています。

また、設定を変えるにはJSONファイルを直接編集しなければならないので、ちょっと上級向けです。起動ファイルが、ふつうにexeファイルではなくbatファイルというところも、発想が技術屋さんです。

2つ目の「Tomarigi」は、青山学院大学で、言語研究プロジェクトの一環として開発されたツールです。

形態素解析の機能まで備えており、使いこなせばけっこういいツールになりそうです。翻訳者(や志望者)なら、うまく使えばかなり役に立つと思われます。

Tomarigi 本体のほかに、
・形態素解析ツール Mecab v0.996以上
・係り受け解析ツール Cabocha v0.68以上
が必要ですが、サイトの指示に従ってインストールすれば、特に難しくはありません。

文字数にはある程度の制限があるようですが(実際の制限と速度は、おそらくPCのリソースしだい)、機能はかなり抱負で、指摘の結果もいろいろと参考になります。


こちらも使い方は簡単。ファイルを開くか、ウィンドウに直接貼り付けて「実行」ボタンをクリックするだけ。

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上の例では、敬体の文末(です、ます)が緑色で指摘されているほか、

「接続表現を中心とした著作の多い石黒先生」

という箇所もピンク色になりました。右ペインでそこをクリックすると、右下に詳細な指摘内容が表示されます。

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二段構えの修飾節が存在する長文です.

と指摘されています。これが、JustRightなどにもない注目の機能です。具体的にどんなことなのかは、「図表」ボタンをクリックしてみるとわかるでしょう。

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・「接続表現を中心とした」が、<連体修飾節>として「著作」を修飾しており

・その修飾節を含む「接続表現を中心とした著作の多い」が、次の<連体修飾節>として「石黒先生」を修飾している

という二段構えの修飾構造になっている。そう指摘されているわけですね。もちろん、これを修正するかどうかは、また別の問題。


さらに、「修正」の隣にあるボタンを押すと、

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こういう係り受けの図も表示できます。学校やトライアルの答案でも、係り受けの変な訳文をかなりの頻度で見かけます。係り受けに自信がない人は、この図で自分の訳文を分析すれば参考になるのではないでしょうか。


別の指摘例も挙げておきます。

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こちらは、MS Wordの校正機能でも指摘される「連用形中止法の多用」です。4か所と指摘されていますが、実際に連用形中止法になっているのは、

~読んで
~強くなり

です。たしかに、しまりがない感じ。

また、ここで指摘されているセンテンスの最後にはグレーの四角とピンクの丸もあります。グレーの四角をクリックすると同音語が注意され、
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ピンクの丸をクリックすると、長文だと注意されます。
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ただし、上の例で「読ん/詠ん」と書かれているのを見てもわかるとおり、同音語のチェックはちょっとうるさすぎるようです。


チェック項目は、かなり細かくカスタマイズできます。

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これは、敬体/常体によって文末の指摘を選べる設定。

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これは助詞の連続。「の」だけ、または「それ以外」も含めてチェックでき、連続回数も指定できます。

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かな/漢字の使い分けは、デフォルトでも設定されていますが、任意で追加できます。


以下、チェックできる項目だけ挙げておきます。

・ひらがな書きすべき副詞のチェック(カスタマイズ可能)
・漢字書きすべき副詞のチェック(カスタマイズ可能)
・英数字の全角/半角(設定の切り替え可能)
・漢数字のチェック(オン/オフのみ)
・読点のチェック(オン/オフのみ)
・常用漢字のチェック(常用漢字のほか、学年別指定にも対応)
・ひらがな書きすべき接続詞のチェック(カスタマイズ可能)
・連用中止形のチェック(オン/オフのみ)
・助詞の連続(カスタマイズ可能)
・ひらがな書きすべき形式名詞のチェック(カスタマイズ可能)
・同音語/同訓語のチェック(同音、同訓ごとにオン/オフ)
・不適切な表現(若者ことば)のチェック(オン/オフのみ)
・指示語の多用(しきい値のオプションあり)
・体言止めのチェック(オン/オフのみ)
・送りがなのチェック(カスタマイズ可能)
・句読点の統一(設定の切り替え可能)
・長文の指摘(オン/オフとしきい値を設定可能)
・敬体/常体のチェック(設定の切り替え可能)
・文末の冗長表現(カスタマイズ可能)
・ひらがな書きすべき補助動詞のチェック(カスタマイズ可能)
・当て字のチェック(カスタマイズ可能)


以上のオプションを見ただけでも、かなりの高機能です。ものによっては、JustRightでは拾えない項目もたくさんあります。

それから、あちこちに再生ボタン(右向き三角)もありますね。なんと、音声読み上げもしてくれます(音声エンジンは、環境によって異なる)。

これが無料というのは素晴らしいことです。ただ、あくまでも大学の研究室のプロジェクトですから、いきなりなくなってしまう可能性もあります。

JustRight!は、個人で買っても40,000円(税別)します。値段に見合う機能はあります。表記のゆれや、誤字・脱字の指摘はやはり強力(それでも、十分ではない)。

WildLightは、自分で定義ファイルを作ってサクっとチェックするには便利ですし、単なるチェック以外の機能も豊富です。

Tomarigiは、自分の書いた日本語をじっくり分析するのによさそうです。

ひとつ注意したいのは、チェックした結果からどこをどう直すかは、あくまでも自分の力量しだいだということです。単純なミスなら修正すれば済みますが、たとえば連用形中止法を自分でよしとするか修正するかは、最終的に自分の判断です。

とはいえ、翻訳をしていて大切なのは、自分の訳文をどこまで客観的に眺められるかいうこと。そのためには、こういうツールの導入は有効でしょう。

02:52 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.02.25

# 最近読んだ/買った国語関係の本

最近読んだ国語関係の本を紹介します。


接続表現を中心とした著作の多い石黒先生の、ちょっと前の本です。


英日翻訳で、日本語に悩んでいる人におすすめです。私も、付箋だらけになりました。


1 文法のルール―その定石と裏ワザ
 (テニヲハはきちんと守る、「~をしたい/~をできる」は使わない ほか)
2 文末のルール―その定石と裏ワザ
 (文末の時制は統一する、受身の表現は避ける ほか)
3 語彙のルール―その定石と裏ワザ
 (文章では話し言葉を使わない、漢語を使うと文章が硬くなる ほか)
4 表記のルール―その定石と裏ワザ
 (漢字が少ないと読みにくい、迷ったら平仮名がよい ほか)
5 構成のルール―その定石と裏ワザ
 (接続詞は前後の文の関係を示す、接続詞は文章を読みやすくする ほか)
(Amazonの目次情報より)

「裏ワザ」というタイトルどおり、いい文章を書くときの"定説"になっているルールをまず紹介し、「そうとも限らない」という「裏」を示すという構成です。

今日の授業でもちょうど、

「訳すとき、接続詞をどこまで補っていいのでしょうか」

という質問があり、この本のpp.174~185を紹介したばかりです。

英語と日本語では、論理の構成のしかた、文脈の運び方が違う。だから、原文にない接続詞を訳文で補うのが絶対に禁止というわけではない。ただし、日本語ではいわゆる接続詞を使わなくても文脈を作れる場合が多いので、そういう文の書き方も覚えよう。

そういう話を、授業でもしました。

同じ石黒先生の、接続詞(接続表現)に絞った本がこちら。

石黒先生の言う「接続詞」はかなり広い概念です。たとえば、使い方が難しい「~のだ(のである、のです)」という文末の使い方も、この本でよくわかるはずです(第七章「文末の接続詞」)。


なお、石黒先生は、5月にJTF(日本翻訳連盟)のセミナーにご登壇なさいます。

第2回JTF回JTFセミナー「文書作成における接続詞の役割 ~接続詞を使うと文書は論理的になるのか~」

ちなみに、同じ日の午前中がテリーさん。

第1回JTF回JTFセミナー「誰も教えてくれない翻訳チェック ~翻訳者にとっての翻訳チェックを考える~」
こちらは、昨年の翻訳祭で超満員となったセッションのアンコール企画です。



おなじみ飯間先生。

底本は、『三省堂国語辞典 第七版』が出たとき(2014年)、プロモーションの一環として出版された書籍(『三省堂国語辞典のひみつ』)。

文庫化されたので読んでみたのですが、文語版あとがきに、

今回、本書が新潮文庫の一冊として刊行されるに当たり、あまりにも「『三国』万歳」的な部分には手を入れました。

と書いてあったので、元本も読んでみたくなりました。

この本を読んで、「iPadに入っている三国を、ふだん使っているPCからもっと手軽に引けないものか」という思いが強くなり、それが先日のEBPocketの話につながったしだいです。


これは、読んだというより、買ってきたのを拾い読みしています。神田の古書店で見かけて買ってきた初版本です。

「明治大正~」というタイトルですが、発行は昭和59年と、わりと最近の辞書です。

本書は明治元年からから昭和二〇年までの間に誕生した新語・俗語八〇〇語を対象とした。
(凡例より)

ということですが、もっと時代が下った用例も採録されています(昭和54年の見坊豪紀とか)

実用的に使えるというより、完全に趣味の本です。適当に拾うだけでも実に楽しい。

たとえば「青田買い」という言葉が昭和初年にはもう使われていたことがわかります(確かめたら、使われている用例は日国と同じでした)。

「あんパン」の項には、こんな話も載っていました。

また、「あんパンを食う」とは、上等兵が新兵に小言をいう場合、「そういう事をしちゃいかんじゃないか、アーン」と言ってすぐにパーンと平手で頬をなぐることから、お目玉頂戴の意味

てなことが書いてあり、日国の解説より詳しくなっています。「あんパンを食う」っていう表現、子どものころ聞いた覚えがあります(使った記憶はない)が、今の国語辞典には載っていません。

「八百長」の語源説も---信憑性はわかんないですけどね---、日国よりずっと詳しく載っています。

(八百屋の長兵衛、通称八百長という人がある相撲の年寄とよく碁をうち、勝てる腕前を持ちながら、巧みにあしらって常に一勝一敗になるように手加減したところからという)【日国】

語源は明治時代のはじめ、相撲会所の出入りであった八百屋の長兵衛通称八百長が、当時の相撲年寄であった先々代伊勢の海五太夫の碁の相手をたびに、強いくせに、お得意様のご機嫌をとるために、わざと勝を譲ったことが仲間に知れわたり、それから相撲で故意に負けることを八百長するといい始め、いつしか相撲の隠語となった。【新語俗語辞典】
(表記はママ)


実は、別の辞書を古本で探しにいったのですが、思わぬ収穫でした。

10:47 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.02.21

# EBPocketで、アプリ辞書を串刺し!

前エントリまで、しばらくEBWin4のことを書いてきました。

ところで、EBWin4の作者であるhishidaさんは、iOS/Android上でEPWINGデータを使えるアプリも作成なさっています。

リンク:EBPocket for iOS
リンク:EBPocket for Android

Android版(とMac OS版も)もあるのですが、私が使える環境ということで、以下はiOSの話になります。


個人的には、PC上で(EPWINGデータを中心に)整備してある辞書環境を、iPadにまで持ち出す必要性はあまり感じていません。むしろ、iPadではiOSアプリでしか使えない辞書を中心にそろえています。そのため、EBPocketも、存在は知っていたのですが、試したことがありませんでした。

今回の一斉アップデートを機にちょっと見てみようと思い、Professional版を購入・インストールしてみたら---実はかすかに期待しながら---ちゃんと、他のアプリとの連携機能が用意されているじゃないですか!

なお、EBPocketをインストールすると、フリーの辞書データとしてEDICT2が入ってきます。この辞書の素性については、拙ブログの過去記事をご覧ください。
参考リンク:side A: # EDICTとE-DIC:ときどきおもしろい辞書たち

iOSアプリどうしが相互にデータをやり取りする(テキストをやり取りしたり、起動したりする)ために、「URLスキーム」という仕組みがあります。「検索ハブ」(残念ながら、諸事情でアップデートが止まってしまいました)も、この機能で各アプリを呼び出していました。また、物書堂さんの辞書では、検索後に他の辞書を呼び出すことができます。これも、おそらくURLスキームを使っているようです。

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EBPocket Professionalをインストールして、設定画面を開いてみると、[Web検索]という設定項目があります。

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これを開くと、デフォルトではYahooとかWeblioなどのサイトが登録してあります(下図は、もう設定が変わっています)。

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ここを、使いたいアプリ辞書のデータに書き換えれば、EBPocketの検索結果から他のアプリに飛ぶ、つまり擬似的にではありますが、アプリの串刺し検索ができるというわけです。

ただ、URLスキームというのは開発者が独自に決めるので、公開されていないと使えません。この点でも、物書堂さんはユーザーに親切な会社で、基本的にすべてURLスキームを公開なさっています。

リンク:物書堂:辞典Appで検索

物書堂さん以外のアプリは、検索するとURLスキームが見つかるもの(BIGLOBEの『オーレックス』や、計測技研の『プログレッシブ』など)もあれば、公開されていないもの(MobiSystemsのAHD、ODEなど)もあります。

あとは、ここにあるデータをどうやってURLの形にすればいいか、が分かればいいのですが、この段階で私も試行錯誤しました。

指定の基本は以下のフォーマットです。

<辞典スキーム名>://<辞典アプリID>/search?text=

たとえば、『精選版 日本国語大辞典』の場合、<辞典スキーム名>が mknds 、<辞典アプリID>が NDS です。このほか、アプリとその会社ごとにURLの構成要素は違ってきます。物書堂さんの『精選版 日本国語大辞典』の場合、URLは

mknds://jp.monokakido.NDS/search?text=

となります。この後にいろいろと検索オプションを付けることもできるのですが、今回はそこまでやっていません。


以下、私のiPadにあって、しかも私が優先的に使いたい8つの辞書について、設定を挙げておきます。私が設定していない辞書アプリについては、物書堂さんの上記サイトなどを参考に、試してみてください(うまくできない場合は、メールでご相談ください)。

以下に挙げる Name と URL を、EBPocket の[設定]→[Web検索]の該当フィールドに入力すれば、使えるはずです。Name は何でもOKです。

Name:ウィズダム2(物書堂)
URL:mkwisdom2://jp.monokakido.WISDOM2/search?text=

Name:オーレックス(BIGLOBE)
URL:olexbiglobe://search?query=

Name:プログレッシブ英和中(計測技研)
URL:osw-progressiveEJ5JE4://*?k=f&q=

Name:Collins(物書堂)
URL:mkced://jp.monokakido.CED/search?text=

Name:精選日国(物書堂)
URL:mknds://jp.monokakido.NDS/search?text=

Name:大辞林(デフォルト)

Name:新明解(物書堂)
URL:mksmk7://jp.monokakido.SMK7/search?text=

Name:三国七(物書堂)
URL:mksankoku7://jp.monokakido.SANKOKU7/search?text=


「大辞林(デフォルト)」というのは、Web検索の設定に最初から設定されていたので、そのまま使っています。

また、Collinsというのは、学習英英の定番COBUILDではなく、Collins大辞典です(あまり知られていませんが)。


これで、iOS上の環境はできあがりました。EBPocketで何か検索すると、EDICT2の結果が並んだ最後に、登録したアプリの名前が並び、

1702214

と、ここまでがiOS上の動きです。これを、PASORAMA的にPC上から使うには、以前ご紹介した「Wifi Keyboard」というアプリを使います。

実は、上に挙げた8個のアプリ辞書の名前や、特にURLは、iOS上で入力しようとしたら大変です。これを設定する段階で、私は「Wifi Keyboard」を利用しました。これを使えれば、PC上でURLをコピペしてiOSに転送できるので、URLの指定もかなり楽になります。


いろいろと設定は手間かもしれませんが、ご参考までに。

12:59 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (3)

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2017.02.20

# EBWin4 4.4.2、「連続」と「全ての項目」の違い~国語

続いて、国語辞典ではどうなるかを紹介します。

結論から言うと、ほとんどのタイトルは前項で紹介した研究社英和大、その他と同じように動作します。

見え方が一気に変わるのが、『学研国語大辞典』です。
※残念ながら、この辞書のデータ版は入手が難しくなっています。Amazonなどで"Super日本語大辞典"を検索すると、まだときどき出回っていますが、そのままではEBWin4に載りません。変換スクリプトを使ってEPWINGデータに変換する必要があります。
参考リンク:side A: # Windows 7環境構築のまとめ - 辞書編

変換スクリプトは、EBWin4の作者のサイトにあります。
リンク:EBStudio 変換スクリプト集


『明鏡国語』を「自動検索」すると、こうなります。

「全ての項目」オフ
17022013

「全ての項目」オン
17022014

前項の英和で見たとおりの差が出ます。


次が『学研国語大辞典』です。ここでは、「完全一致」で検索しました。
「全ての項目」オフ
17022015

「連続」なので、発足、罰則、閥族、初空…… と続いています。


「全ての項目」オン
17022016

左ペインの一致候補に注目してください。
17022017
(ふだんより、ちょっと横に広げています)

お分かりでしょうか。

 はっそく【発足】

 ほっそく【発足】

というエントリに続いて、

 【発足】のシソーラス

という項目なども並んでいます。つまり、『学研国語大辞典』をEPWING化したデータは、完全一致で検索するだけでも、項目そのもののほか、シソーラス情報がヒットするということです。したがって、これを「全ての項目」表示にすると、シソーラスまで一気に表示されるわけです(通常、シソーラスがリンクになっている)。

シソーラスだけではありません。上の例ではウィンドウ外にあるので分かりませんが、実は用例も出てきます(通常、用例もやはりリンクになっている)

17022018

用例のエントリは最後に並ぶので、右ペインで下にスクロールすると出てきます。

経緯は不明ですが、『Super日本語大辞典』をEPWING化するスクリプトを作るとき、作者のhishidaさんがDDWinの「全ての項目」表示を意識してこのように作ったのかもしれません。

こういう機能が増えてみると、最近のLogoVista版タイトルをEBWin4(など)に載せられないのが、かえすがえすも残念です。

参考リンク:side A: # 翻訳者の辞書 - データ編 - 第2回

ここにも書いたとおり、『研究社 日本語表現活用辞典』、『研究社 日本語口語表現辞典』、『研究社 日本語コロケーション辞典』などは、EBWin4で使えたらずいぶん便利なのに...

05:23 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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# EBWin4 4.4.2、「連続」と「全ての項目」の違い~英和・和英

EBWin4に追加された「全ての項目」表示機能は、複数の辞書を検索したときに、その内容を右ペインでまとめて表示するというのが本来の趣旨です。

が、辞書タイトルによっては、単独で使っているときでも見え方が変わるという副次的な効果もあります。

さらに、4.2.2(2/18公開)で実装された「連続表示」と「項目毎」の切り替えボタンも併せて使ってみるとどう違うのか---さっそく試してみました。

なお、使ってみるとすぐに分かりますが、「連続表示」/「項目毎」の切り替えボタンは、表示されているのが今の状態です。つまり「連続」と表示されていたら「連続」表示であり、押すと「項目毎」表示に切り替わります。「連続」を押すと連続表示になる、のではないことに注意してください。

研究社英和大 第6版

まず、研究社英和大で、「全ての項目」はオフにして、「完全一致」検索します。

「項目毎」表示
17022000

「連続」表示
17022001

「連続」にすると、footprint以降、foot pump、footrace、footrail ... と続きます。見出しごとに区切り線が入っています。

ただし、項目によっては、必要以上に区切れている場合もあるようです。

17022002

for everという成句は、なぜか用例ごとに区切れてしまいます。「項目毎」表示では情報をすべて見られていないということです。


ジーニアス英和大

すでに書いたように、残念ながらG大は項目区切りにバグがあります。「項目毎」では必要な情報すらろくに表示されません。

17022004

必ず「連続」表示にしてください。

17022005


研究社和英大 第5版
ランダムハウス 第2版
リーダーズ 第3版(LV)
リーダーズ 第2版
うんの V5
英和中辞典 第7版
斎藤和英
COBUILD
OED 2
WordNet

主立ったタイトルはいずれも、英和大と同じ動作です(変な区切れはなさそうです)。なお、LVと書いたのはLogoVista版、※は、オリジナルデータEPWING変換したデータです。

「全ての項目」をオンにすると、「連続」/「項目毎」の状態にかかわらず、左ペインでヒットした項目すべてを対象にして「全ての項目」が表示されます。

したがって、「全ての項目」で表示される結果は、検索方法によってもだいぶ変わってきます。いろいろ試してみていただきたいと思いますが、ここでは、「リーダーズ2+プラス」で "required" を「自動検索」した結果だけ示しておきます。

「自動検索」、「連続」、「全ての項目」オフ

17022006

ヒットするのは13項目。いちばん上の NCR を選択すると、
【米】 National Cash Register Company; no carbon required.
がヒットしますが、その後に続いているのは、NCSA、NC-17、NCT... などです。NCRの語義にはたしかにrequiredが含まれていますが、それ以降はただ "辞書の上で後に続く項目" が表示されているにすぎません。左ペインでヒットしている2番目(req.)、3番目(reqd)、4番目(a required subject)は、それぞれをクリックしないと表示されないわけです。

17022007


「自動検索」、「連続 or 項目毎」、「全ての項目」オン

17022008

こうすると、ヒットした13項目がずらっと並びます。「全ての項目」を単独の辞書タイトルで使ったときの機能、これでだいぶはっきりしたのではないでしょうか。


したがって、「全ての項目」表示は、研究社和英大辞典を逆引きするときなどに、絶大な威力を発揮します。

「自動検索」、「項目毎」、「全ての項目」オフ

17022009

「自動検索」、「連続」、「全ての項目」オフ
17022010

「自動検索」、「連続 or 項目毎」、「全ての項目」オン
17022011

検索語(この例ではexcited)が強調表示されているので、よく見比べてください。"exciteを和英で逆引きして訳語の手がかりを探す" という使い方なら、このような一覧を得られるのがいちばんうれしいはずです。

ちなみに、この「全ての項目」表示にあたる機能は、DDWinにもあるようです。Jamming/Logophile にはありません。

今回、「全ての項目」機能が実装されたことで、EBWin4は大きく進化したと断言できます。

ここで、この検索結果をもっと有効に使う方法をご紹介しておきます。

「全ての項目」オンで検索したら、
・[ファイル]→[印刷]、または Ctrl+P
・右ペインのどこかを右クリックして[印刷]
をクリックすると、結果を印刷できます。

このとき、紙に印刷するのではなく「PDFに出力」することができれば、検索結果をPDFとしてストックすることもできます。

17022012


04:42 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (4)

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# EBWin4が、4.4.2にアップデート

先週、EBWin4に追加された「全ての項目」表示機能をご紹介し、それにあわせて、以前からあった「連続表示」のことも書きました。

参照リンク:side A: # EBWin4の新機能「全ての項目」表示~その1

参照リンク:side A: # EBWin4の新機能「全ての項目」表示~その2


そのときも書いたとおり、「連続表示」の設定は[ファイル]→[設定]を開いてオン/オフを切り替える必要がありました。おおむね「連続表示」のほうが使いやすいので、今までは、恒常的な設定で特に不自由はありませんでした(G大のように、「連続表示」にしないと使い物にならないタイトルもありましたし)。

が、「全ての項目」表示を使いこなすには、「連続/項目ごと」もインターフェース上で切り替えられたほうがいいと思ったので、作者のhishida様にリクエストしてみました(辞書名フィールドが広がったためツールバーが見えなくなる、というバグもあったので)。

そうしたら、わずか1週間で対応してくだり、バージョン4.2.2が公開されました。

リンク:EBWin4

hishida様、ありがとうございます!

02:34 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.02.14

# こそあど、~という、~こと、~ている - WildLightの活用例

Facebookの投稿で見かけたんだと思いますが、こんな記事を見つけました。

リンク:アフィリエイトの外注記事の品質を上げるための文章チェックマーカー(自作ツール紹介) - Webライターとして生きる


「~というもの」「~というのは」「~ということ」

「など」「たり」

「こと」「もの」「それ」「これ」

こういう言葉は、つい多用してしまうので、自分でブラウザベースのチェックツールを作ってみた、という記事です。


たしかに、ついつい使って「こと」だらけになったり、指示語が続いたりすることはよくあります。


この方のツールを使ってもいいのですが、テリーさんのWildLightでも、定義ファイルを作ればもちろん可能です。

実は、私自身も気になって、しばらく前に定義ファイルを作ってみたところです。

サンプルを示します。
ワイルドカードも何も指定しない、ごくシンプルなリストです。

----------サンプル始まり----------
' HColor:色番号,検索語
' 検索語を検索し、色番号で指定された蛍光ペン色を付けます。
' (検索語のみ指定色になる)
' [色番号]:01:緑, 02:明緑, 03:青緑, 04:濃青, 05:青, 06:水, 07:
' 桃, 08:紫, 09:濃い赤, 10:赤, 11:濃黄, 12:黄, 13:白, 14:25%灰,
' 15:50%灰, 16:黒, 17:蛍光ペンなし

WILDCARD:ON
HColor:02,そう
HColor:02,それ
HColor:02,その
HColor:02,そんな
HColor:06,こう
HColor:06,これ
HColor:06,この
HColor:06,こんな
HColor:07,こと
HColor:07,もの
HColor:12,という
HColor:14,てい
HColor:14,ており
----------サンプル終わり----------

指示語のうち、入れてあるのは「こ」系と「そ」系だけ。「あ」系と「ど」系は自分の翻訳であまり使うことがないため。「こ」系・「そ」系でも「ここ、そこ」「こっち、そっち」を入れていないのも、同じ理由。

上のサンプルをテキストファイルに貼って保存し、WildLightが参照するフォルダに入れてやれば、ほーら、あなたもWildLightユーザーの仲間入り :)

自分のクセと思える言葉を追加していけば、カスタム辞書ができあがります。


ちなみに、ワイルドカードを使えば、「の」の複数連続、みたいな箇所も検索できるようになります。

06:09 午後 翻訳・英語・ことば 翻訳者のPCスキル | | コメント (0)

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2017.02.12

# EBWin4の新機能「全ての項目」表示~その2

さて、新機能の「全ての項目の表示」です。

ひと言で言うと、検索結果一覧(左ペイン)に表示されている項目を、右ペインですべて表示するという機能です。したがって、前エントリで書いた[連続表示]のオン/オフと検索方法によって、「全ての項目の表示」の働きはだいぶ違った印象になります。以下、いろいろなパターンをやってみます。

・[連続表示]オフ
・辞書ひとつだけを選択
・[完全一致]

これだと、ヒットする項目がひとつだけなので、何も差が出ません。

[全ての項目]表示がオフのとき。
17021281
(スクリーンショットは、クリックで拡大できます。以下同様)

[全ての項目]表示がオンのとき。
17021282


区切り線の違いだけです。


・[連続表示]オフ
・辞書ひとつだけを選択
・[前方一致]

検索方法を[前方一致]に変えると、3つの項目がヒットします。今までは、

17021291

このように、ヒットした項目をクリックすると、その項目の内容だけが右ペインに表示されていましたが、[全ての項目]表示をオンにすると、

17021292

このように3つの項目がすべて表示されるようになります。


・[連続表示]オン
・辞書ひとつだけを選択
・[前方一致]

今度は、前エントリで説明した[連続表示]をオンにしてみます。この場合、[連続表示]の機能によって、検索項目だけでなくそれ以降の項目まで表示されるので、[全ての項目]表示をオンにしても、すぐには差がわかりません。

[全ての項目]表示オフ
170212101


[全ての項目]表示オン
170212102


よく見ると、画面右端のスクロールバーが違います。[連続表示]がオンなので、[全ての項目]表示がオフのときは、下にスクロールしていくと先をいくらでも読めます。[全ての項目]表示をオンにすると、ヒットした3つの項目だけになります。


・[連続表示]オフ
・複数の辞書を選択(串刺し)
・[完全一致]または[前方一致]

新機能「全ての項目の表示」がいちばん威力を発揮するのが、おそらくこの使い方です。

[全ての項目]表示オフ
170212111


[全ての項目]表示オン
170212112


このように、

複数の辞書で違いを見たい

ときに、実に便利です。

この状態で「本文内検索」(Ctrl+F)すれば、

170212121

目的の情報を細かく調べらることができます。

ちなみに、このスクリーンショットの例は、「~次第」という接尾語は、「連絡し次第」のように動詞連用形に付けるのが正しいはず、と思って引いたら、名詞に付ける俗語法もある、ということが『明鏡国語』に書いてあったという例です。

06:58 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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# EBWin4の新機能「全ての項目」表示~その1

このブログでも、各種のセミナーや記事でもご紹介しているEBWin4は、汎用辞書ブラウザとしては唯一、今でも着実にアップデートを続けている貴重な存在です。

リンク:EBWin4

そのEBWin4が、また大きく進化しました(最新バージョン、4.4.1)。

・全ての項目の表示(海野文男氏・海野和子氏開発協力)
・複合検索ダイアログをモードレス化

特に「全ての項目の表示」は、いろいろとおもしろい使い方ができそうです。

ただし、その話をする前に、今までにもあった2種類の表示モードのことを書いておくほうがよさそうです。これに気づいていない人もいたかもしれないので...。

EBWin4をお持ちの方は(最新版でも、それ以前のバージョンでも)、[ファイル][設定]ダイアログを開いてみてください。

1702121
(スクリーンショットは、クリックで拡大できます。以下同様)

[一般]タブに、[連続表示]というオプションがあるのはご存じだったでしょうか。同じオプションは、Jammingにもありました。何か辞書を開いて、このオプションのオン/オフを切り替えてみてください。

たとえば『研究社 英和大辞典』の場合、[連続表示]がオフだとこうですが---

1702122

[連続表示]をオンにすると、こうなります。

1702123

つまり、紙の辞書を見ているように、前後の内容まで見渡すことができるわけです。

EBWin4の作者、hishidaさんのブログによると、

EPWINGはもともと「電子書籍」を目指しており、一冊の本、または巻物のように、最初から最後まで通読できるようになっている。このため、EPWINGの公式ビューアであるCDView(富士通)、Viewing(イースト)、こととい(岩波書店)では、基本的に連続表示を行うようになっていた。

のだそうです。

ついでに言うと、画面下にある ▽ △ ボタン(または、[Alt +↓]、[Alt +↑])を押すと、連続表示した状態で前後に移動できます。これも、紙の辞書の前後を眺める感覚でしょう。


私たち翻訳者のふだんの使い方ではあまり必要ないように思えますが、そうとも限りません。同じブログに、こう書いてあります。

ただしEPWINGには項目の区切りという概念がないので、ソフトウェアで何の識別子を項目の区切りにするかを決定しないといけない。これはたぶんUnix上のEPWING検索システムや、DDWinのようなサードパーティ製のEPWINGビューアで出てきた概念だと思う。

この区切り設定のせいだと思いますが、『ジーニアス英和大辞典』で[連続表示]をオフにすると、最小限(下手をするとそれ以下)の情報しか出てきません。

1702124

[連続表示]をオンにしてようやくこうなります。

1702125

なんだか、G大は、やたらと「項目の区切り」が細かいようです。ほかの辞書は、ここまでではありません。ちなみに、私のG大はEPWING版で、LogoVista版については未確認なのですが、Amazonのレビューなどを見ると、版元のデータ構造をそのまま受け継いでいるため、LogoVista版でも同様ということです。

この区切りがどこにあるかは、[ファイル]→[設定]の同じ[一般]タブで、[区切り線]オプションをオンにするとはっきり分かります。

1702126

ふつうは、このCOBUILDのように単語ごとに区切りが入っていますが、G大になると

1702127

このように、うるさいくらい線が入ってしまいます(うるさいのはG大だけ。G大はJammingのほうでひくことがほとんどなので、私は[区切り線]オプションを通常オンにしています)。

そして、今回のバージョンで追加された新機能「全ての項目の表示」は、[連続表示]を使っていないほうが実感できるようです。

ということで、記事を改めます。

04:17 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.02.10

# 「翻訳に活かすSimplyTerms」 - レッスンシリーズ第5弾

開催間近となってしまいましたが、翻訳フォーラム・レッスンシリーズの第5弾についてお知らせします。


レッスンシリーズでは初となる、ツール系のお話。翻訳者支援ツール「SimplyTerms」のことを、作者である井口耕二さんご自身が解説します。

リンク:「翻訳に活かすSimplyTerms」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#5) in東京 - パスマーケット


さて、SimplyTermsって、どんなツールなんでしょうか。

すぐ上で、私は「翻訳支援ツール」ではなく「翻訳者支援ツール」と書きました。私にとってのSimplyTermsの位置付けは、まさにこの呼び方に凝縮されています。

ExcelやPowerPointからの原文抜き出し、表記の統一、用語の置換、改行取り、常用漢字のチェック...
(レッスンシリーズ案内ページより抜粋)


いわゆる「翻訳支援ツール」は最近ますます、(翻訳ベンダーやクライアント企業における)「大きい翻訳フローの支援」を主眼とするプラットフォームになりつつあります。「翻訳支援」という名前と現状の乖離は、広がるばかりです。

それに対し、SimplyTermsはちゃんと「翻訳者を支援」します。

詳しくは、SimplyTermsのサイトをご覧ください。

リンク:Translation Tools:翻訳支援環境 SimplyTerms

1702101


ここからは、帽子屋の私見が入ります。

一番の違いは、SimplyTermsが

ブラックボックスになっていない

ことにあるのだろうと思います。SimplyTermsが扱うのは、主にOffice系のファイル(Word、Excel、PowerPoint)やPDF、そしてテキストファイルです。プログラムで使われているマクロや定義ファイルも、すべてテキストベース。

だから、どんな機能が、どんな定義を使って、どんな処理をしているかが分かるわけです。ということは、何かトラブルが起きても対処しやすい。マクロでも定義ファイルでも、加工がしやすい。

ひるがえって、現在の「翻訳支援ツール」、たとえばTradosは、Studioプラットフォームになってから一気にブラックボックス化が進み、よほど熟練しないと、どんなファイルでどんな処理が進んでいるかまったく分からない(Trados 2007までのレガシーは、まだマシでした)。翻訳者個人もしばしばトラブルに見舞われるし、下流の工程でもそれは同じ。

そうなると、使用者は「ツールを使う」のではなく、どんどん「ツールに使われる」ようになってしまいます。


そういうわけで、SimplyTermsは、

★今までツールを使ってこなかった人

にも導入しやすいと思いますが、それ以上に「ふだんからツールを使っているつもりで、実は使われている気がする」人が、いま一度「翻訳者にとって本当の意味で支援環境になるツールとは何か」を見直す契機にもなるはずです。

そして、SimplyTermsについて公式に作者自身が解説してくれるのは、2009年以来、実に8年ぶり。

この機会にぜひ、SimplyTermsに触れてみてください。

10:40 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2017.02.08

# 『翻訳事典 2018年度版』

刊行から2週間近く経ってしまいましたが、今年もアルクさんの『翻訳事典』の季節がやってまいりました。

今年は、例年にもまして読み応えのある内容になっています。編集長・佐藤直樹さんの企画力の成果ですね。


翻訳者をめざしている方には、p.41からの「翻訳者になりたい人のための8つのドア」がおすすめです。


DOOR 1「翻訳者になるためには まず何をすべきか?」

DOOR 2「専門分野はどうやって選べばいいか?― 治験翻訳を例にして」

DOOR 3「仕事はどうやって獲得すればいいのか?」

DOOR 4「発注者(エージェント、出版社、製作会社)とどう付き合うか?」

DOOR 5「脱サラで翻訳者になることを考えたらすべきこと」

DOOR 6「プロに必要な日本語力は どうしたら身につくか?」

DOOR 7「機械翻訳で翻訳者の仕事はなくなるのか?」

DOOR 8「翻訳者がそろえるべき辞書、知っておくべき調べ物の方法とは?」

特に、これから翻訳の世界をめざしたいという人にとっては、これだけの情報がまとまっているというのは、すばらしい構成です。

しかも、DOOR1、3、4については、複数の分野(出版、実務、映像など)の翻訳者が執筆しているので、どの分野をめざす人にも役立ちます。

私は、DOOR 1 の実務編を書きました。見開きの反対側には、越前敏弥さんが並んでいます。ちょっとうれしい。


もちろん、現役翻訳者が読んでうれしい記事も満載です。

巻頭「特別企画」には、翻訳勉強会「十人十色」が開催した柴田元幸氏の講演録が載っています。扉を除いて全8ページ。当日の内容がほとんどそのまま読める感じで、圧巻です。

もう1本の特別企画は、昨年のJTFセミナーにご登壇くださった村井章子さんのセミナーレポート。こちらも5ページたっぷり使ってあり、参加できなかった私にはたいへんありがたい内容。

p.29からは、昨年5月の翻訳フォーラム・シンポジウムも大々的に取り上げていただきました。


最近の『翻訳事典』、本当に充実していると思います。


あ、そうだ。表記は「翻訳辞典」ではなく

「翻訳事典」

です。誤表記も多いそうなので、お間違えなく :)

12:55 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (2)

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2017.02.01

# 「東洋文庫」の作品リストを作ってみた

前のエントリでご紹介したジャパンナレッジ、百科事典や辞典だけではなく、他のコンテンツもかなり充実しています。

1702011

私が特に気になったのが、「平凡社 東洋文庫」です。

皆さんもご存じのとおり、モースやアーネスト・サトウの日記、『東方見聞録』、『和漢三才図会』など、いろんなところで引用元として出てくる資料がずらーっと並んでいます。

ジャパンナレッジには、現時点で700冊近くが収録されていて、入会していればそれがぜんぶ読める! そんなヒマはあるのか!!


でも、東洋文庫っていったい、どんな作品が入っているのか、全貌がつかめません。ジャパンナレッジのサイトに「搭載タイトル一覧」というリンクはあるのですが、解説も付いているので1ページあたり12タイトルずつしか表示されず、一覧性がありません。本家・平凡社のサイトにもないようですし、検索してもそのようなまとめはありません。

しかたがないので、自分で作ってみました。Facebookで聞いてみる、需要もありそうなので、公開することにします。

東洋文庫リスト
(クリックするとダウンロードされます)

ただし、おそらく完全には網羅されていないはずです。

このリストをどうやって作ったかというと、元データはebookjapanのサイトから取得しました(検索結果)。検索結果は674件で、27ページにまたがっていますが、Chromeの拡張機能「Autopagerize」を使うと、この27ページをすべて1ページとして読み込むことができます。そのHTMLソースを開いて適当に加工しただけです。

書名を、ジャパンナレッジで検索してみてください。

ただ、自分でも実際にいくつか開いてみたのですが、専用インターフェースの動きが、ちょっともっさりしてますね。スキャンデータも、作品によってバラツキがあるかもしれません。じっくり読みたければ製品版を買ってね、ということかもしれません。そういう見せ方、アリだと思います。

ついでに、検索機能をいろいろ使ってみましたが、辞書を検索できるのと同じように、東洋文庫をはじめとする全コンテンツを検索できるのですね。

全文検索

もできるし、「詳細(個別)検索」機能を使えば、AND/OR 演算子も使えます。

ためしに「スパム」を引いてみましたが、『イミダス』や『デジタル大辞泉』を中心に、かなりいろいろな用語が載っていました。新語の収録、かなりがんばってます。

しかも、『イミダス』、『デジタル大辞泉』、『現代用語の基礎知識』などは、実は見出し語に

英語も併記

してあるので、英和のリファレンスとしても使えます。これはなかなか便利。『イミダス』とか『現代用語の基礎知識』とか、今まであまり翻訳時の参考資料とは見なしていなかったので、これも新たな発見です。、


ダウンロードできるExcelファイルには、おまけとして、「JKコンテンツ」というシートもあります。

個人で入会するとき、JKパーソナルという基本コースのほか、JKパーソナル+Rというのがあって、月額は1,000円ほど、年額だと5,000円プラスすると、使えるコンテンツが増えます。そのコンテンツ一覧です。

C列に「R」とあるのが、JKパーソナル+Rでのみ使えるコンテンツ。これはこれで気になるのですが、ひとまず私はなくてもいいかな、と。

12:24 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (1)

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2017.01.30

# 『精選版 日本国語大辞典』と、ジャパンナレッジ

さて、問題です。

国語辞典の『広辞苑』や『大辞林』は、大型・中型・小型で分けると、どれに分類されるでしょう。


答えは「中辞典」です。国語辞典で「大辞典」と言われているのは、

小学館『日本国語大辞典』

だけなんですね。

1701302

通称「日国」。

初版が全20巻で45万項目・75万用例を収録。現行の第二版は全14巻(本巻13、別巻1)で50万項目・100万用例を収録と、英語圏のOEDに匹敵する、文字どおりの大辞典です。

図書館ならともかく、私たちのような個人が手元にそろえるのは、ちょっと無理というもの。


そこまでの国語大辞典を頼りたい場面というのはそう多くはないかもしれませんが、もちろん、電子的に利用する方法はあります。



KODなどと比べるとけっして安くはないのですが、ジャパンナレッジというサイトです。

リンク:ジャパンナレッジ


収録コンテンツを見るとわかりますが、使えるのは「日国」だけではありません。


『日本大百科全書(ニッポニカ)』、『改訂新版 世界大百科事典』、『デジタル大辞泉』などの百科事典

『小学館 全文全訳古語辞典』、『字通』、『日本方言大辞典』などの国語辞典系

『ランダムハウス英和大辞典』、プログレッシブ英和中辞典』(第5版)、『COBUILD英英辞典』などの英語系

などなど、かなりのコンテンツがそろっています。たしかに、辞書サイトというより「ナレッジ」サイト。

これだけあれば納得できる会費とも言えるのですが、個人の基本コースでも

月額 1,620円
年額 16,200円(2カ月分お得)

と、かなりいいお値段です。私もしばらく悩んでいましたが、思い切って入会しました。


そしたら、もう明日(1/31)までなのですが、紹介キャンペーンをやってまして---

お友達紹介キャンペーン 告知

1701301

明日までに入会すれば、月払いでも年間契約でもだいぶお得になるようです。

もし、紹介キャンペーンを使いたい方は、こちらのURLを使っていただけると、ちょっとうれしかったりします。

http://japanknowledge.com/camp/mgm/?km=1105332

本体は全14巻もある「日国」ですが、さすがに利便性を考えて簡約版が、かつて出ていましたし、現在も出ています。

1981年に出たのが、「小学館国語大辞典」という1巻本(25万項目)。

これの電子データ版と思われるコンテンツ「国語大辞典(新装版)」が、かつてマイクロソフトの Bookshelf 2.0 に収録されていました。

参考記事:side A: # カシオXD-N10000 - 『日本国語大辞典』とBookshelf


そして、今も出ているのが『精選版 日本国語大辞典』(以下、「精選」)です。

30万項目・約30万用例を収録するほか、「日国」にない新項目が約1,500項目・約5,000用例追加されています。

書籍版は全3巻で45,000円ですが、最近は電子データもだいぶ出回っています。

まっ先に採用されたのは、電子辞書端末でした。カシオが、3年ほど前のモデル XD-N10000 に採用し、続いてセイコーインスツルもDAYFILERの最上位機種 DF-X10001 に採用したので、今でもそれをお使いの方は多いでしょう。

昨年の今ごろはATOKの最新版に「精選」が載って話題になりました(このとき、新機能「イミクル」も盛り上がりましたが、その後はあまり話を聞きませんね...)。

そして、先日なんとiOSアプリ辞書も出ました。iOSアプリ辞書で定評のある物書堂さんです。

物書堂 精選版 日本国語大辞典

こちらも、明日(1/31)までなのですが、発売記念セールを実施していて、定価7,800円のところ、4,800円で買えます。

では、本家「日国」と精選版とはどう違うのでしょうか。

いちばんの違いは、用例の数です。精選版にも必要最小限の用例は載っていますが、日国の用例の多さには圧倒されます。

そのほか、「日国」だと方言や語源といった情報も楽しめます。

翻訳していて、直接の役に立つかどうかは分かりません。が、やはり自分の母語について、これだけ詳しい情報を利用できるというのは、ありがたいものです。

11:13 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (4)

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2017.01.26

# 『辞書力を鍛える - あなたの英語を変える快適辞書活用術』

辞書について、久しぶりにおもしろい本を読みました。

といっても、新しく出た本ではありません。初版が2002年と、紙の辞書の存在感が今よりはまだ大きかった時代の発行です。

その証拠に、読みはじめるとすぐ、こんな記述に出くわします。

手元にある自分の辞書にあまり連結(引用者注:コロケーションのこと)情報が載っていない場合はどうすればいいのだろうか。もちろん,別の辞書に買い換えるのも1つの手であるが,その前に,該当ページの余白に学習した連結を書き込む習慣をつけることを勧めたい。

辞書に書き込みする!

やってましたよね? 私も、恩師のもとで使っていた辞書(英和中辞典~現代英和辞典)には、引くたびにチェックマークを付け、いろいろとメモも書き込んだものでした。

関連記事:side A: # 辞書の記憶をたどってみた

この箇所を読んだだけで、きっと面白い本に違いないと直感しました。

そして、そのすぐ後に出てくるのが、「パラフレーズ思考」と「ループ思考」という本書のキーワード。

詳しくは、ぜひ読んでいただきたいのですが、英和、和英、英英のどの辞書についても、パラフレーズということの重要性が繰り返し出てきます。

考えてみれば、英英辞典というのは、的確なパラフレーズの集大成であり、各辞書の個性とは、そのパラフレーズのしかたの違いにほかなりません。それを意識して使えば、意味を知りたいときでも、自分で英語を書くときでも(本書は、「英語の発信」という言い方で、英語ライティングも重視しています)、英英辞典の語義の見え方が大きく違ってきます。

品詞やコロケーション、コンテキストの理解が重要であるということも、もちろん説明されています。あるいは、「動詞型のチェック: 最長一致の法則」という項には、こんな例文が出てきます。

They call on the state to educate police about domestic violence.

call onだけ調べていたのではダメで、call on ... to ... という成句を考えなければいけない。当たり前の話だとお思いでしょうが、いろいろな答案を見ていると、意外と引っかかる人が多いポイントです。

この例でもわかるように、具体例は大学受験から学部生くらいまでに適した内容なのだろうと思いますが、翻訳者として、自分の

辞書の読み方を見直す

にも適した一冊だと思います。

目次

第1章 ここから見直す英語辞書の活用法
 ・基本的活用法(でも知らないことも多いはず)
 ・歩進める英語辞書活用法
第2章 ここまでできる!各辞典に見る意外な活用法
 ・英和辞典の意外な活用法
 ・和英辞典の意外な活用法
 ・英英辞典の意外な活用法
 ・その他の書籍辞書の意外な活用法
 ・電子辞書はこんなふうに使ってみよう
第3章 辞書紹介と比較
 ・英和辞典はこれを見よ
 ・和英辞典はこれを見よ
 ・英英辞典はこれを見よ

COBUILD などで使われている文定義(かならず、文で語義を書く)がなぜ優れているのか、各種の英和学習辞典はそれぞれどんな特徴があるのか、辞書を選ぶときに何を目安にすればいいのか、などなど、改めて気づかされることは多いはずです。

第3章は、取り上げられているラインアップが今とだいぶ違うので、直接の参考にはなりませんが、英英ご三家(Longman、OALD、COBUILD)の違いなどは、今でも有効です。『ジーニアス英和大辞典』が出た直後の出版なので、G大がいかに画期的な辞書だったかも、よくわかります。

2
ただし、Weekly Asahi連載だったいうこともあって、「辞書の引き方を基本から体系的に説明している」わけではない点に注意してください。むしろ、ある程度は辞書を使いこなしているつもりになっている、くらいのレベルの方におすすめ。つまり、私たち翻訳者にぴったりということ。

もちろん、書かれている内容はどうしても古くなるわけですが、その古さが、逆にいま読むとおもしろかったりもします。

私たちがいまお世話になっているような環境については、DDWINしか紹介されていませんが、こう書かれています。

まずDDWINというフリーソフトをインターネットからダウンロードする(たとえば、ベクターのホームページwww.vector.co.jpから)。パソコン雑誌の付録になっていることも多々ある。

パソコン雑誌の付録!

そして、なんといっても時代の差をいちばん如実に感じられるのが、

12冊の「ポケット判英和」を比較・検証する(p.232~)

という項でした。この話は、ちょっとおもしろすぎるので、別の記事にします。

もっと基本のところが知りたいという場合は、こんな本も参考になります。

初版が2007年なので、電子辞書端末のノウハウなどまでカバーされています。

こちらは、岩波ジュニア新書ですが、ばかにしたものではありません。辞書を「読む」ためのヒントがたくさんあります。

そういえば、『辞書力を鍛える』って、どこかで見たなあと思っていましたが、一昨年の秋にイカロス出版から出た『翻訳力を鍛える』というムックで、私が担当した辞書のページ、タイトルの一部が「辞書力を鍛える」でしたw

06:37 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (4)

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2017.01.11

# 辞書ブラウザの本文内を検索

今まで、どのセミナーでも触れてこなかった辞書ブラウザの機能について、書いておきます。

単語を検索してから、検索の結果、つまり

本文内を検索する

という機能です。


つまり、昔なら 紙の辞書で単語を引く → 成句や用例を目で追いながら目的の語句を探す ということを当たり前にやっていたはずで、それをデータ上でもう少し効率的にやろうということ。

電子データになってからは、成句からでも引けるようになったので、このような使い方はあまりしなくなったかもしれません。が、インデックスの作りによっては、成句が見つからないこともよくあります。そんなときのために、昔ながらの「本文内検索」は、できるようにしておく必要があります。

「辞書ブラウザ」という言い方、だいぶ定着してきたかとは思いますが、念のためにここでも定義しておきます。

辞書ブラウザとは、

EPWING、LogoVstaなどの共通仕様データをまとめて登録し、一括検索できるアプリケーション

のことです。

Jamming(現在は入手は不可)
Logophile(Jammingの後継アプリケーション)
EBWin4
DDWin

などが代表的です。

以下、代表的な辞書ブラウザごとに、この機能を紹介します。


Jamming

[検索]メニュー → [本文内をテキスト検索]、または Ctrl + F

1701111_2

[本文内をテキスト検索]ダイアログが開きます。

残念ながら、オプションがいっさいなく、機能は貧弱です。しかも、いちど検索するとダイアログが閉じてしまうので、続けて検索するには、Ctrl + Shift + Fを押します。

検索した語は、その後もフィールドに残ります(検索履歴はない)。

※ただし、私のメインPCだけらしいのですが、Ctrl + Shift + Fを押すと、なぜか検索語入力フィールドが右寄せになってしまうという不思議な現象が起こります。


Logophile

[編集]メニュー → [本文内をテキスト検索]、または Ctrl + F

1701112

[検索]ダイアログが開きます。

だいぶオプションが増えています。いちど検索してもダイアログが閉じず、[次へ]で順々に検索していけるので、だいぶ使いやすくなりました。

ところが、検索した語が、フィールドに残りません。いくつかの語句を引き比べながら、同じ語句を本文内検索したいときには、けっこう不便です。


EBWin4

[編集]メニュー → [このページの検索]、または Ctrl + F

1701113

[検索]ダイアログが開きます。

Logophileのときとまったく同じ。おそらくWindowsで同じAPIを使っているのでしょう。機能もまったく同じですし、検索した語がフィールドに残らない点も同じです。

※ひとつだけ違う動作がありました。検索直後は、[このページの検索]がグレーアウトされていて使えません。フォースが結果リストのほうにあるからです。本文(右側)を1回クリックすると、このコマンドが使えるようになります。


LogoVista固有ブラウザ

[編集]メニュー → [本文内検索]、または Ctrl + F

ダイアログも機能も、Logophileとまったく同じです。


いままで、成句や用例を探そうとして見つけられなかった人は、この機能で本文も検索してみてください。

02:40 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2017.01.09

# 「訳出のバリエーションづくり」 - レッスンシリーズ第4弾

昨年から始まった、翻訳フォーラムの「レッスンシリーズ」、今年も1月、2月と続けて実施します。

ひとまず、1月分をご案内。

日時:1/29(日) 13:45~17:00
場所:アカデミー音羽 美術室

リンク:「訳出のバリエーションづくり~訳例カード・ワークショップ」(翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#4) in東京 - パスマーケット

今回のテーマは、「訳出のバリエーション作り」です。リンク先のイベント情報も併せて読めば、目的はおわかりいただけると思います。

原文に"most"とあったら、何と訳していますか?「たいていの」「ほとんどの」あたりでしょうか。しかし、いつもいつも「たいていの」「ほとんど」ではワンパターンになってしまいます。訳文の中で「浮いて」しまうこともあるかもしれません。他に訳し方はないのでしょうか。品詞を変えたり、位置を変えることでバリエーションを増やす方法はないでしょうか。
(イベント情報から引用)

ですが、タイトル後半の「訳例カード・ワークショップ」というのは、ちょっと説明が必要でしょう。

そもそも、訳出のバリエーション、訳出パターンの手持ちを増やすには、どうすればいいのでしょうか。

辞書が頼りになることは間違いありません。ためしに、oftenを引いてみましょう。

しばしば, 度々 (frequently)(cf. seldom).
・He often comes to see us. 彼はよく我々を訪ねて来る.
・I saw her there very often. 彼女とそこで何度も会った.
【研究社大英和6】

【1】しばしば,ひんぱんに,ちょくちょく,たびたび,何度も:
【2】たいてい,多くの場合:
We go to the station often by bus. たいていバスで駅に行く.
【RHD2】

しばしば, たいてい, よく;多くは
He has ~ found it to be wrong. 彼はこれが悪いことだとしばしば感じていた
he walked around here quite ~. 彼女がこのあたりを歩くことはかなりよくあることだった.
【G大】


三大英和辞典を引いてみました。訳語と用例がいくつかあがっているものの、G大の最後の例文を除けば、すべて副詞として訳出してあり、これではバリエーションがそれほど増えた感じはしません。


2 [複数形の名詞・代名詞とともに用いて] 多くの場合, よくあることだが
Children often dislike carrots. 子供はニンジンが嫌いなことが多い
【研究社 英和中7】


学習英和まで引いてみると、oftenに当たる部分を述語として訳すパターンも見つかり、ようやくバリエーションがすこし広がった気がします。


では、英和辞典や和英辞典から、oftenを使った用例をすべて抜き出してみたらどうでしょうか。


Fear is often begotten of guilt. 恐怖心は往々罪の意識から生じる.
Liberty often degenerates into lawlessness. 自由はややもすると放縦になる.
A person's age often shows itself first in the extremities. 人の年はまず手足に現れることが多い.
【研究社大英和6】

研究社大英和を全文検索した結果の一部です。副詞だけでも「往々」、「ややもすると」と、訳語欄ではあまり見かけない表現が見つかりました。「~が多い」という述語表現もあります。


訳出のときに選べる語彙は増えましたが、実は、大切なのはここからです。

「しばしば、よく、往々にして、ややもすると、まず……」 → グループ1

「よくあることだ、~ことが多い」 → グループ2

グループ1とグループ2では、oftenの訳に当たる部分の、日本語文における機能が違います。グループ1は副詞句であり、グループ2は述語として処理されています。

語彙を増やすだけではなく、訳出パターンをこのように機能別に整理しておくと、訳出パターンの手持ちが広がるうえに、それを意識的に使い分けられるようになります。


この整理のしかたを学ぶのが、

「訳例カード・ワークショップ」

です。

上にあげたoftenの場合、グループはとりあえず2つだけでしたが、ほかにもグループを作れるかもしれません。まして、もっと出現頻度の高い

most

だったら、どうなるでしょうか。


1回のワークショップを経験するだけでも、訳出パターンを意識的に使い分ける力がしっかり身につくことは、昨年の翻訳フォーラム・シンポジウムで発表があったとおりです。


そして、なぜその訳例を『研究社和英大辞典』から引くのか、その秘密も、当日お伝えする予定です。


翻訳フォーラムならではの「訳例カード・ワークショップ」、ぜひ参加してみてください。

01:14 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (4)

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2016.12.15

# 『翻訳というおしごと』刊行~鈴木立哉さんのセミナーは必聴

先日の翻訳祭で先行販売され、すでに噂になっていた翻訳関連の書籍が刊行されました。

ご自身も翻訳者である実川元子さんが、今の翻訳業界を代表する10人の翻訳者へのインタビューも交えながら、「翻訳の未来」をお書きになっています。


私もさっそく購入して読ませていただきました。

これからの「翻訳というおしごと」について、けっして悲観的になることなく、かといって理想論や建前だけをかざすのでもなく、厳しい現実と、そのなかで仕事をする素晴らしさがつづられています。翻訳業界入門にかっこうの一冊です。

経験や分野にかかわらず、翻訳に携わる全員におすすめしたい内容ですが、特に

翻訳者をめざしている方

業界に入って日の浅い方

必読です。

そして、この本のなかでもひときわ貴重なご意見を展開している翻訳者、鈴木立哉さんが、来週12月20日(火)のJTF翻訳セミナーに登壇します。

リンク:いつまでもアマと思うなよ 8年後の逆襲(?)

後援のポイントを一部だけ引用します。

◎独立する前にすべきこと、考えるべきこと
◎フリーランスのメリットとデメリット
◎自分から動かないと何も始まらない
◎お客様とどう付き合うか
◎実務翻訳と出版翻訳
◎僕が文芸翻訳を学ぶ理由
◎「好きを仕事にする」

ということで、こちらも、上に挙げたような方には必聴の内容です。


案内が送れてしまいましたが、申し込みの〆切は本日12/15(木)の18:00です。

平日はお仕事があるという方も、有給をとってでも聴きにいく価値あり

これから翻訳者として生きていくために具体的に役立つヒントが満載です。もちろん、私も聴きにいきます。

【12/15 13:15加筆】

そうそう、ひとつ書き忘れていました。鈴木さんが毎日365日欠かさずに続けているのが、「翻訳筋トレ」。

どんなものかは、この本にも書いてあるのですが、12/20のセミナーでは参加者にも実際にその「翻訳筋トレ」を体験していただけるように準備を進めていらっしゃる、ということです。これも楽しみ!

さて、この本の刊行記念ということで、13日には紀伊國屋・新宿店で、実川元子さんの講演会がありました。

リンク:『翻訳というおしごと』(アルク)刊行記念 実川元子さん講演会

鈴木立哉さんは、こちらにもゲストとしていらっしゃり、お二人とも巧みな話術でオーディエンスを楽しませてくれました。

161215
(紀伊國屋さんのページがなくなってしまうこともあるので、記念としてスクリーンショットを貼りました)


翻訳は、もちろん楽な稼業ではありません。学校の受講生さんには、故・山岡洋一さんの『翻訳とは何か―職業としての翻訳』を必読として紹介しています。

私も、折にふれて読み直し、翻訳者としての自分を見つめ直すきっかけにしています。翻訳者の精神を支える古典、だと思っています。


一方、実川さんの『翻訳のおしごと』は、これよりはるかに卑近な観点で翻訳を語っている実用書です。

が、読むと、翻訳者として背筋がピンと伸びるという点は共通しています。


この本を読んでから来週の鈴木さんの話を聞いてもいいですし、逆でもいい。ぜひ、「翻訳というしごとの未来」を自分で考えるきっかけにしてください。

12:40 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.12.08

# 最近買った国語辞典たち ~ すべて書籍版

紙の国語辞典が3冊増えました。

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本棚の整理と入れ替えが済んでいないので、PCデスクのすぐ横に積んだまま使っています。

きっかけは、この本でした。

言うまでもなく、「日国」こと『日本国語大辞典』の編者である松井栄一(まついしげかず)さんが、祖父~父~ご自身という三代にわたる辞書一家のことと、日国の完成に至る経緯を紹介した本。

『舟を編む』で感動した方は、その次に読むといいかもしれません。

この経験を踏まえ、日本語を学ぶ外国人に役立つようにと、配慮を加えた新しい辞書の第一歩として、私は『日本語新辞典』を二〇〇五年に刊行しています。

松井先生の『類語使い分け辞典』は持っていましたが、不勉強なことに、この辞書のことは知らなかったので、さっそく買ってみました。



辞書その他のセミナーで、私はよく「(英日翻訳で)日本語を書くとき、

自分の言葉選びに根拠を持てる

ようにしよう」という話をします。ところが、一般の国語辞典は、類語や使い分けなどの情報、それがわかる用例が十分とは言えません。そういう情報を得たければ、

外国人相手の日本語教師向けの参考書

が便利。ということもセミナーでよく紹介しています。スリーエーネットワークの一連の本などです。

『日本語新辞典』は、そういう「現代日本語の使い方についての情報をなるべく載せよう」という方針で作られました。

類語情報は、先に挙げた『類語使い分け辞典』とかぶっている部分もありますが、収録されているのは『類語使い分け辞典』が501グループ、約2400語。『日本語新辞典』が約1,500グループ、約4,500語と、だいぶ多くなっています。

たとえば、「特に/殊に/とりわけ」の使い分けなどは『日本語新辞典』にしかありません。「議論/論議」の使い方なども、かなり詳しく説明してくれています。

「相棒」の項に、「◆相手が目上の場合はあまり使わない」などの補足があるのも助かります。ちなみに、『新明解』には、「上下の意識なく一緒に仕事をする仲間」と書いてありますが、これはあくまでも意識の問題で、実際に「相棒」と呼ぶかどうかという「用法」を説明した情報ではないと思われます。

もう少し使い込んだら、改めてレポートを書くかも知れません。

他の2冊は、先週の土曜日に久しぶりにJAT(日本翻訳者協会)の忘年会に出かけたとき立ち寄った八重洲ブックセンターで見かけた1冊。

そして、あとからネットで買った1冊。

副詞や形容詞について、すべて「プラスイメージかマイナスイメージか」という解説が付いています。

みるからに[見るからに]
【解説】外見から典型的であることを推量する様子を表す。ややマイナスイメージの語。

こんな具合です。


副詞と言っても、広く連用修飾語が収録されているので、「ちかって」のような動詞の連用形とか、「ただもう」のような複合語も載っているところが◎です。

また、索引もかなり工夫があって、どんな人が使うかという観点や、どんな心理で使うかというシチュエーションから引くこともできます。

比較表現を訳すときにできれば使いたくない「より~」については、こんな例文と解説が載っています。

④よりよい地球の未来を目指します。(CM)
⑤計画がより具体化したところで改めて検討する必要がある。

④のように次にくる形容詞との結合が強くなると、一語の形容詞として扱われる。
⑤は信仰を表す動詞に係る修飾語の用法である。かなりかたい文章語で公式の発言や報道に用いられ、くだけた会話には登場しない。

安くない買いものでしたが、この2冊、かなり役に立ちそうです。

04:23 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (1)

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2016.12.01

# 紙の辞書はどうやって使う?

さてさて、日付が変わって今日から12月。

side Aも、しばらく翻訳祭ネタばかりでしたが、ぼちぼち通常モードに戻ります。


わりと先ほどですが、Twitterで

紙の辞書の箱は捨てるかどうか

という話が出てきたので、私が紙の辞書をどうやって使っているのか、紹介しておきます。このネタ、今までまったく思いついてませんでした。

1612011

私が主に常用している紙の辞書たちです。紙の箱、捨ててません。

と言っても、これは撮影用に置き直してあり、ふだんの状態とは違います。

・紙の箱を裏返す

・本体は横向きに、つまり箱に対してL字型を作るように箱に入れる

つまり、

1612012

こんな状態で置いています。

ぜんぶの辞書をこのように収納したところが、これ。

1612013

こうやって置くと、取り出すのも、元に戻すのも、けっこうスムーズです。箱があるので、本体もよれたりしないし。

それから、もうひとつメリットがあります。

小口に付箋が貼ってあるのが、上の写真でも見えています。この置き方にすると、上小口でも前小口でも、付箋を貼ったままにしておけるわけです。


12:49 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2016.11.30

# 翻訳祭、お礼とおわび

昨日、JTF翻訳祭が大盛況のうちに終わりました。


ご参加くださったみなさん、心よりお礼を申し上げます。


あまりの大盛況だったために、アルカディア市ヶ谷では建物全体も各会場も狭すぎて、人気のセッションでは立ち見が続出。それどころか、あまりに多すぎて、一部のセッションでは、床に座っていただくという事態になってしまいました。運営上の不備について、深くおわびを申し上げます。


コンテンツについては、かなりご満足いただけたようですが、運営、特に会場についてはいろいろと反省点も残る翻訳祭となりました。

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それでも、当初からの目的だった「個人翻訳者さんに、ひとりでも多く来てほしい」という目標は達成できたと思います。

昨年と比べると、実に2倍の数の個人翻訳者にご参加いただきました。一方で、翻訳会社からの参加数はほとんど減っていません。

このムーブメントを、来年にも必ずつなげていきたいと思います。


個人的には---

・沖縄在住の翻訳者に数年ぶりに会えたこと

・某ツールの開発者にようやく会えたこと

・定期案件の担当者さんに会えたこと

・かつての職場の同僚に10年ぶりに会えたこと

・フェローの在校生や卒業生もけっこう参加してくれたこと

などなど、うれしいことがたくさんありました。


ご挨拶できなかった方もたくさんいたと思います。なにとぞ、ご容赦ください。

09:32 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.11.27

# 翻訳祭、満員御礼 ~ 参加する方へのTips

おかげさまで、今年の翻訳祭は、事前受付の〆切時点で定員に達し、

当日受付はなし

となりました。

ぎりぎりまで様子を見ながら、当日お申し込みを考えていた方には、たいへん申し訳ございません。m(__)m

ただし、翻訳プラザには無料で入場できます。また、交流パーティーのみ当日料金で受け付けます(申し込みの受付開始は当日13:00以降)。

セッションは聴けなくても、同業者との交流や、翻訳会社への営業など、人脈づくりだけでも足を運ぶ価値はあります。よろしかったら、ご利用ください。

前エントリで書いたように、当日は実行委員のメンバーに、ぜひ気軽に声をおかけください。


初めての人、常連の方、久しぶりの人、いろいろいらっしゃると思いますが、私が思いつく限りのTipsをツイートしたので、それをこちらでもまとめておこうと思います。

Twitterの投稿した内容の拡大版です。前エントリの内容もかぶっています。


名刺について

オンラインで実名を出していない人は、Facebook、Twitter、ブログなどオンラインで使っている名前もかならず、名刺のどこかに出しておきましょう。そうすると、その場で認識してもらえる、あるいは後々まで覚えてもらえる度合いがまるで違ってきます。

裏面に顔写真があるともっといいのですが、似顔絵とか、特徴的なイラストでも記憶に残りやすくなります。

私の名刺も、裏面に顔写真と、今年出た『翻訳のレッスン』の書影が入っています。


服装について

今のところの予報では、29日、東京の最低気温は8度、最高気温は15度。だいたい平年並みですかねー。

【追記】

いま見たら、最低気温が6度、最高気温が13度になってました。ちょっと寒いかも。


ただし、会場、特にセッションの室内はけっこう暑くなることがあるので、脱ぎ着で調節しやすい服装がおすすめです。空調はもちろんありますが、個人差や場所による差もあり、万全には対応できないからです。

翻訳会社の方はスーツですが、フリーランスは、フリーランスならではのカジュアルな格好でどうぞ。

あ、私はもちろん帽子かぶってます。ほかの方よりは見つけやすいと思います。


交通について

会場となるアルカディア市ヶ谷。最寄りはJR市ヶ谷駅、東京メトロ有楽町線または南北線・市ヶ谷駅、都営地下鉄新宿線・市ヶ谷駅のいずれかです。

JR(総武線)ご利用の場合、ホームから地上に出る階段は新宿寄りです。地下鉄の場合は、A1出口またはA4出口が便利。


クロークについて

遠方からいらっしゃる、または遠方にお帰りになる、などで荷物が多い方、アルカディア市ヶ谷の1Fにクロークがあります。ご利用ください。上着も、預けちゃっていいと思います。


受付について

1コマ目のセッションは9:30から。受付の開始は9:00です。1コマ目も人気セッションが並んでいるので、9:00すぐには受付を通れるよう、早めにお越しください。

受付は、お名前の五十音別に並ぶようになっています。掲示してある五十音標識を見てお並びください。

受付に行ったら、お名前をおっしゃっていただき、

・資料の入った封筒

・ストラップの付いた名札

を受け取ることになっています。ストラップ付き名札は、セッション料金をお払いいただいた目印になりますので、必ずぶら下げておいてください。


セッション聴講について

前エントリでも書きました。聴きたいセッションについては

・早めの移動を心がける

第2希望、第3希望くらいまで考えておく

ことをおすすめします。


ランチについて

アルカディア市ヶ谷の中の飲食店はいっぱいになります。周囲の飲食店については、ご参考までに、こちらなど。

また、付近のコーヒー屋さん、ファーストフードとしては、

プロント(アルカディアからJR駅方向)

ドトール(道路をはさんでアルカディアの対面)

カフェ・ド・クリエ(アルカディアからJR駅と反対方向)

ルノアール市ヶ谷駅前店(川を渡らず、JR市ヶ谷駅の東側)

ルノアール市ヶ谷外堀通り店(川を渡って右)

マクドナルド(川を渡ってすぐ)

松屋(プロントの隣)

などがあります。


翻訳プラザについて

1コマ目と2コマ目の間、3コマ目と4コマ目の間の休憩時間は、それぞれ30分です。次のセッションの席取りも大切ですが、せっかくの機会ですので、登壇者と名刺交換したり、翻訳プラザで翻訳会社への挨拶などもぜひ。

翻訳プラザには、翻訳会社が勢ぞろいしています。ちょっと立ち寄って、営業かけてみませんか。

では、11月29日、市ヶ谷でお会いしましょう!

12:33 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.11.23

# 翻訳祭にいらっしゃるみなさんへ

いよいよ、第26回 JTF翻訳祭の当日(11/29)まで1週間を切りました。


初めて翻訳祭に参加なさる方は、戸惑ったり、臆したりすることがあるかもしれません。そんなときは、会場で

Members

この顔を見つけ、気軽にお声をおかけください。登壇前などはバタバタしているかもしれませんが、何かのお役に立てると思います。

以下のメンバーです。

実行委員長、古谷 祐一
Furuya_4


実行委員、井口 耕二
Inokuchi_3


実行委員、斉藤 貴昭(テリー)
Saito_3


実行委員、平野 久美
Hirano_3


実行委員、松丸 さとみ
Matsumaru_3


実行委員、矢能 千秋
Yanou_3


実行委員、高橋(帽子屋)
Takahashi_3


セミナーの合間でも、交流パーティーでも、ご希望があれば、翻訳会社の人に紹介したり、同じ分野の同業者を引き合わせたりできると思います。

そのためにも、当日はぜひ

名刺のご用意

をお忘れなく!


そして、

図々しいくらい積極的に

ふるまうのが、この手のイベントを有意義に活用するコツです。

そのほか、いくつかアドバイスを。初めての方も、そうでない方も……


1. セッション聴講について

どのセッションも、定員を超えると入室制限がかかる場合がありますので、希望セッションの会場には、早めの移動をおすすめします。

できれば、同じ時間帯のセッションで

第2希望、第3希望

まで決めておくといいかもしれません。まったく分野違い、というのでなければ、第1希望でなくとも必ずお役に立つはずです。


2. 服装について

ドレスコードはまったくありません。会社関係だと、男女ともスーツ姿が多いかもしれませんが、フリーランスなら、ふだんどおりのカジュアルな服装でOKです。

人気セッションだと、室内が暑くなって、空調が追いつかない場合があります。気温に合わせて調整しやすい服装がいいかもしれません。

なお、アルカディア市ヶ谷の1階にクロークがありますので、コートや大きいお荷物は、クロークをご利用ください。


3. ランチについて

会場のアルカディア市ヶ谷の中にはレストランが2つありますが、やはり混み合います。会場外の飲食店まで出かけていったほうがいいでしょう。

できれば、同業者どうし(同じ分野とか)で語らって出かけられれば、ランチ時間もいろいろと情報収集の機会になると思います。


4. 交流について

翻訳祭のメインはもちろんセッションですが、翻訳会社やクライアント、同業者に直接会える

交流の場

でもあります。つまり、営業のチャンスということにもなります。

セッションの登壇者、参加している翻訳会社の人(プラザにも勢ぞろいしています)、同業者に、臆することなくどんどん近づいて、つながりを作ってください。


11月29日、市ヶ谷でお会いしましょう!

02:44 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.11.20

# そして、今年も十人十色・前夜祭!

翻訳祭の前日、11/28(月)には、今回で5回目となる

十人十色 前夜祭

も開催します。

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本日の時点で、残席わずかですが、まだ申し込みは受付中です。


今年は、大阪から、しんハムさんこと小林晋也さんをお招きし、翻訳者にとっての「翻訳支援ツールの本質」を語っていただきます。

リンク:【告知】翻訳勉強会「十人十色」で翻訳支援ツール超入門

翻訳支援ツールの現状と将来について、肯定か否定かを単純に考えるのではなく、一度原点に戻って正しく考える

ということで、翻訳祭本番のトラック1セッション2「使われないツールの使い方 ― 十人十色のツール論」にそのまま続く内容です。

翻訳支援ツールの導入を迷っている方、そもそも翻訳支援ツールは必要なのかと懐疑的な方、翻訳支援ツールを使った仕事に疑問を持ち始めた方、などに特に聞いていただきたいと思っています。


時間帯がちょっと遅いのですが(18:00~)、しんハムさんのこの話、

東京では今回が最初で最後

です。お聞き逃しなく!


Facebookアカウントをお持ちの方は、こちらのページからどうぞ。

リンク:翻訳勉強会「十人十色」

Facebookアカウントをお持ちでない方は、以下のアドレスでメールにてお申し込みください。


終了後は、もちろん懇親会付き(別途お申し込み)。

文字どおり、前夜からみんなでお祭気分で盛り上がり、そのまま翻訳祭当日になだれ込もうという趣旨です。


翻訳祭への参加に

やや気後れしている方

こそ、前夜祭からいらっしゃいませんか?

11:41 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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# 翻訳祭、いよいよ来週!

これまで何度かお伝えしてきたJTF第26回 翻訳祭、いよいよ来週に迫ってきました。

リンク:JTF 第26回 翻訳祭

Img_01


個人翻訳者向けを中心にコンテンツの充実をめざしてきましたが、その成果か、参加者数はかなりの数になる見込みです。


事前申し込みの〆切は11/22(火)


当日申し込みもできますが、朝の受付も相当の混雑が予想されます。そこで時間をとられると、

聞きたいセッションに入れなくなる

恐れもあります(各セッション、定員があります)。

プログラムをご覧いただければ分かると思いますが、これだけの内容を4つ聞けて7,500円(非会員の場合)というのは格安だと、手前味噌ではなく思います。

また、交流パーティーは別途8,000円かかりますが(非会員の場合)、営業のための経費と考えれば、けっしてムダにはなりません。

交流パーティーには翻訳会社やクライアント企業の方も多数来場します。名刺をたくさん用意して、そういう方々に挨拶まわり。これだけで、あとから仕事につながったという実例は、たくさん耳にしています(私自身も、複数の事例あり)。

気後れするようなら、まずは帽子屋をさがしてください。挨拶したい会社の方につなぎます。

この顔です。

Akira_1507102

当日も、もちろん帽子姿です(この写真とは違う帽子ですが)。


昼も夜(交流パーティー)も、通翻クラスタでおなじみの、あんな人やこんな人が大集合します。これほどの機会はそうそうあるものではない、というくらい、文字どおりの「お祭」になりそうです。

今までこういうイベントに出たことがないという方にこそおすすめします。

11:22 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.11.13

# PASORAMA搭載機種の中古

PASORAMA搭載機種の入手について、ちょっとおもしろい話を聞きました。


ご存じのように、PASORAMA搭載機種のフラッグシップ、DF-X10001は、ときどき中古が出回っていますが、かなりの高値が付いています。

DAYFILERというキーワードで検索すると、こういう高額の商品しか見つかりませんが、実はDAYFILERの名を冠する前にもPASORAMA機能の搭載は始まっていました。

中古を探すとき、"DAYFILER" ではなく "セイコー PASORAMA" などで検索してみてください。そうすると、手頃な価格でPASORAMA搭載の機種が、まだ見つかります。

なかでも、おすすめなのがこれ。

……とか言って書いちゃったら、あっという間になくなりそうですが。


あるいは、これ。

「生協モデル」というのは販売形態が違っていただけで、実際にはSR-G9003です。型番がちょっと違いますが(-NH3)、これはコンテンツが少し増えたバージョンで、基本はSR-G9003と同じ。


私も、この機種持ってます。

リンク:side A: # 電子辞書 SR-G9003 を導入

5年前ですね。詳しくはこちらのブログをご覧ください。

DF-X10001と大きく違うのは、「リーダーズ第3版」が入っていないことと、いくつかの辞書でバージョンが違うこと。

逆に、DF-X10001に載っていない魅力的なコンテンツも入っています。

- 研究社 ルミナス英和辞典2版
- 岩波書店 岩波理化学辞典 第5版
- The Concise Oxford English Dictionary, 11th Ed

CODが載っている電子辞書端末というのは、かなりレアです。

端末そのものも、画面がモノクロ、タッチ操作非対応などと差はありますが、翻訳者には気にならないはず。


PASORAMA搭載端末、まだ入手のチャンスありです。

ただし、中古なので、必ず

状態や付属品を確認

してからご購入ください。


また、Windows 8や10では、PASORAMAがうまく使えない可能性があります。その場合は、ドライバが公開されていますので、試してください。

リンク:ダウンロードサービス|SII電子辞書

07:11 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2)

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2016.11.07

# Just Right!、なんだかんだ言って、翻訳者必携ではないか

文句を言ったり、ベンチマークテストを実施してみたりしたが、なんだかんだ言って、Just Right! は翻訳者としてやはり持っているべきアプリケーションじゃないだろうか。


通常版ともなれば、かなりの投資にはなる。

そして、もちろん万能ではない


だが、万能じゃないだけに、逆に言えば

Just Right!でも見つかるようなミス

は確実に防ぐことができる。

Just Right!の実力がどのくらいか、実例を出してみよう。

原文約29,000ワードの英日翻訳で、実際に私が手元で見ることになった訳文のチェック結果だ(内容は一部変えてある)。


まず「誤り」、つまり明らかな誤字・脱字と指摘されたリストの一部。

1611071_3

カタカナ語の誤表記として有名な、「シュミレーション」が連発。ATOKを使っていればもちろん指摘されるし、ATOKアドインの「はてな辞書」には、こう書かれている。

1611072_2

Wordの校正機能でもちゃんと指摘されるレベルだ。


次は「表現の洗練」、つまり明らかな間違いではないが書き換えを検討したほうがいいかも、と指摘される箇所。

1611073_2

何種類かの指摘があるが、ここに表示されているのは、「同一助詞の連続」だ。一部だけだが「の」の連続がかなり多いのがわかる。極端な箇所になると、こうだ。

~機能のレベルのためのアプリケーション開発の増大のために~

どんな種類の文章だろうと、「の」の5連発は通用しないだろう。


最後は、「表記ゆれ」

1611074

カタカナの長音、漢字/ひらがな、送りがななど、かなりの「ゆれ」があった。Wordの校正機能でも、表記ゆれはある程度チェックできるが、ここまで優秀ではない。


こういう訳文を納品してしまうリスクと、42,000円という投資額をてんびんにかけてみたら、結論は明らかだと思う。


02:06 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.11.05

# 「日本翻訳ジャーナル」11/12月号

日本翻訳連盟(JTF)が発行する「日本翻訳ジャーナル」の11/12月号(通算286号)が発行されました。

リンク:JTFジャーナルWeb

Hj_2016_4

巻頭特集では、ISOの動向がかなり詳しく紹介されています。私も読まなきゃ^^


私の連載「帽子屋の辞典十夜」は、第4回「COBUILD~コーパスから生まれた学習英英」です。


いつもどおり、無料でお読みいただけますので、ぜひお読みください。

11:42 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.11.04

# ツールの便利さとは

ときどき、

○○(ツールの名前)って、有益ですか?

という質問をいただくことがある。「○○」にはいろんなものが入るから、ひっくるめたら「ときどき」どころではなく、かなりの頻度かもしれない。曰く、

Wordマクロって、有益ですか?

秀丸エディタって、有益ですか?

SimplyTermsって、有益ですか?

Just Right!って、有益ですか?

Tradosって、有益ですか?


想像に難くないと思うが、これはかなり答えにくい部類の質問だ。「誰にとって」すらないが、そこは「質問者にとって」ということと考えて補ってみる。

○○(ツールの名前)って、私にとって有益ですか?


ここで、「私」に当たる質問者がどんな仕事をしているのか詳しくわかっていれば、まあ少しは答えられるかもしれない。

が、質問者が、どんな分野の翻訳をしていて、どんなスタイルで仕事をしているのか、ITスキルはどのくらいなのか、などなどがわかっていなければ、とうてい答えようがない質問だ。


どういうことをするうえで、「有益」さを求めているのか。

どんな種類の「有益」さなのか。

どうなったら「有益」と言えるのか。

「有益」になったとして、そこに何を見いだしたいのか。

そういうことをきちんと考えないで使ったら、どんなツールも「有益」にはならない。


言い方を変えてみよう。


どんなことに不便を感じているのか。

どういう形で解決したいのか。

解決して、何を得たいのか。


そういったことを考えて、その答えに適したツールを探さなければ、何の意味もない。


業界でデファクトだから使わなきゃいけない、そんなツールは(あまり)ない。

評判がいいから自分にも役に立つ、そんな保証はない。

万人にとって有益、そんなツールも(たぶんあまり)ない。


まず、今の自分の環境をきちんと把握して、自分がやりたいことを考える。

そうすると、足りない点が見えてくる。

足りない点を埋めるには、どんなツールがあるかリサーチする。


「有益ですか?」

と聞くのは、少なくともそれからじゃないだろうか。

11:53 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.11.03

# 現在の作業環境 - 2016/11/3現在

名古屋の勉強会で、私の辞書環境について質問をいただいたので、ホワイトボードに簡単な絵を描き、デュアルディスプレイ環境のことも含めて説明しました。

ちょうどいいので、最近のPC構成と、そこで主に使っているアプリケーションについて記録しておきます。


ちなみに、同じことを4年前の6月にやっています。このときも、直前に開催した翻訳フォーラムでデュアルディスプレイ環境の話が出た、その流れでした。

参照リンク:

禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # 現在の作業環境 - 2012/6/15現在

禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # 現在の作業環境 - 2台のマシンの ソフトウェア

禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # 変則デュアルディスプレイの使い分け

この頃とは、メインマシンが交代し、アプリケーションの使い方もいろいろ変わっています。


まず、私のPC机を写真で撮ったところ。

1611031

見かけ上、4年前と変わっているのは、手前にiPad Air2があることくらいでしょう。アプリ辞書がすっかり増えたためです。


見かけはふつうのデュアルディスプレイですが、Input Directorというソフトウェアを使った変則ディスプレイ。これも4年前と変わりません。配線は少し変わりました。

1611038

メインPCから左右に2画面を出力し、サブPCから右に1画面を出力しているので、いわば変則的なトリプル構成です。

以下の説明では、便宜的に「メインの左」とか「メインの右」のように書いています。


それぞれ、どんな画面になっているか、スクリーンショットでご紹介します。
(文字がつぶれないように、元画像は大きいサイズのままです)

1611032

まず、これがメインPCから出力されている左画面。翻訳作業をする基本ページです。Wordか秀丸エディタ、またはTrados Studioと、Jammingが中心。


いちばん翻訳に集中しているときは、これにメインPCの右画面が加わります。

1611034


上のスクリーンショット2つが、私の「ふだん使っている辞書環境」という答えになります。

左画面にJamming。右画面が、LogophileとEBWin4、デジタル類語辞典。ときどきLogoVistaです。

これ以外にも、必要に応じて独立アプリケーションの辞書が立ち上がります。

メインPCの左画面は、裏側でブラウザ(Chrome、ときどきFirefox)とか、Evernoteも使っています。

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あるいは、FileVisor7(ファイラー)とか、Twitterクライアントも。Twitterクライアントは、状況しだいで左右の画面間を移動します。

1611035


カレンダーとか秀丸メールも起動しています。

1611037


左右の画面で辞書をたくさん開く必要がないとき、右のディスプレイはサブPCの画面になっています。

1611033

主な用途は、iTunesとメーラー(Becky)。

上のスクリーンショットで、秀丸メールも起動してますね。実は、メインPCで秀丸メール、サブPCでBeckyと、メーラーは二重に使っています。以前、Beckyが機嫌を損ねて苦労したことがあるので、最近そうしています。

最後に、メインPCとサブPCで使っているアプリケーションも挙げておきます。

メインPC(Windows 7 SP1、Core i7-4770、32GB RAM)

FileVisor7
秀丸ファイラーClassic
秀丸メール
Chrome
Firefox
Jamming
秀丸エディタ
MS Office
SDL Trados 2007
SDL Trados Studio 2014 …… 以上、主に左画面で

Logophile
EBWin4
LogoVista
デジタル類語辞典
Chromeの別画面
Araxis Merge(差分比較)…… 以上、主に右画面で


サブPC(Windows 7 SP1、Core i5-2320、8GB RAM)

FileVisor4
Becky
iTunes
Firefox …… 以上、右画面


今のところ、この変則トリプルで間に合っているので、当面はトリプル(以上)にする予定はありません(PCデスクの関係で、これ以上は増やせないし)。


あ、そうだ。名古屋では、PCとiPadの連携をお見せできませんでしたね。これ、そのうち動画とかでご紹介できれば、と思います。

09:45 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.11.02

# 名古屋翻訳者勉強会、辞書セミナーのご報告

10月30日(日)、名古屋翻訳者勉強会にお邪魔して、ほぼ丸4時間、辞書についてお話ししてきました。


会場は、ウイルあいち(愛知県女性総合センター)。

行ったことあるような気もしましたが、2013年のIJET-25プレイベントで使ったのは、名古屋駅前の「ウィンクあいち」でした。紛らわしい^^

1610301


今回は、基礎編2時間と発展編2時間の計4時間。

今まででいちばんたっぷり時間をかけられただけあって、辞書の種類からそろえ方、辞書ブラウザの引き方、辞書の読み方まで、お伝えしたいことはほとんどお伝えできた気がします。

【11/3追記】

名古屋翻訳者勉強会さんのサイトにも、勉強会の報告記事が載りました。

リンク:第6回勉強会「辞書を使いこなそう」開催報告

大筋は、今までの辞書セミナーとおおむね同じですが、たとえばおすすめの辞書を紹介するページには、

1610302

こんな風に値段まで入れて、これから買いそろえる人の参考になりそうな資料にしてみました。


ほかにも、

1610303

こういうリストを改めて作ってみたり、

1610304

DF-X10001に収録されているコンテンツを、今後どの形式で確保できるかというリストも作ってみました。

事前アンケートを実施したところ、現在DAYFILERを使っている、使えなくなったときにどうすればいいか、という質問をたくさんいただいたためです。


このように、今回は今まででいちばん資料も豊富、というセミナーになりました。


終了後、名古屋翻訳者勉強会の代表の方から、こんなコメントをいただきました(ご了承をいただいて掲載しています)。

・凡例の理解(=辞書の読み方)が甘かったことに気づけました。単語の難易度(S1やW1など)や副詞の位置を辞書で確認できることを初めて知りました。

・「辞書はお金で買える実力」の意味が分かりました。より良い訳文にするためにどこまで辞書を活用できるかというのがポイントで、持っているだけではダメだけど、うまく使えば訳文は確実に良くなると思いました。

・辞書環境の整備の仕方については、疑問に思っていたことを一通り理解できました。費用を合わせて知ることができて、今後どうやって揃えていくか計画が立てやすくなりました。


名古屋翻訳者勉強会にお邪魔することになった経緯は、以前こちらに書きました。


どの土地に行っても、翻訳者のみなさんは、とても熱心です。

その情熱を受け取るのがうれしくて、日本全国あちこちに出かけている。そんなことを、今回あらためて感じました。


名古屋翻訳者勉強会のみなさん、ご参加くださったみなさん、このたびは本当にありがとうございました!

11:22 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.11.01

# Jammingの「入力文字種の変換オプション」に注意

お伝えしていたように、名古屋翻訳者勉強会で辞書の話をしてきました。その様子については、また改めてご報告しますが、なんとか、お伝えしたいことを伝えられたように思います。


さて、最近の辞書セミナーで、Jammingの機能にはあまり触れません。すでに入手できなくなっているからです。が、名古屋では、私がふだんどんな辞書環境を使っているか、という質問をいただいたので、

「実は、JammingもLogophileと並んでメインで使っています」

とお答えしました。


そのJammingで、日本語を検索するときのオプションに、私としては新しい発見がありました。

[オプション]メニューの上のほうにある機能です。


結論から先に書きます。

[オプション]メニューの上のほうに、こんなコマンドが並んでいます。

1611011


このうち、[欧→英]はデフォルトでもオンのようなので、そのままでかまいませんが、その下の「かな」と「カナ」のオプションです。これは

[かな・カナ]

にしておいたほうがよさそうです。


Jammingのユーザーズガイドには、こう書かれています。

1611012

これを見ると、
 カナ→かな
 かな→カナ
 かな・カナ
をそれぞれオン/オフできるようにも読めますが、実際にはexclusiveで、いずれか1つがオンになります。

[かな・カナ]

にすると、時間がかかると書かれていますが、私の環境ではそれほどでもありませんでした。

さて、このオプションに改めて気付いた顛末です。


今週のニュース翻訳案件に、bumpという単語が出てきました。調べていたら、

研究社大英和
RHD2
リーダーズ2
リーダーズ3

で、こんな語義が目にとまりました。

bump 2
n 《響きわたる》サンカノゴイの鳴き声.
vi 〈サンカノゴイが〉鳴く.

仕事に出てきたのは1のほうの語義なので、これは関係いのですが、「サンカノゴイ」という文字列が、なんとも気になりました。もしかしたら、ゴイサギ(五位鷺)の仲間かなぁと思ってググってみたら、案の定、サギの一種だそうで。

リンク:サンカノゴイ(Wikipedia)

なんで、そんなspecificな鳴き声が単語になってるんだ、と思いましたが、ゴイサギというのは鳴き声がけっこう特殊らしいので、そのせいかもしれません。


さて、ここからが辞書の話です。

この「サンカノゴイ」の話をFacebookに投稿しようと思いましたが、納品が終わって何時間かしたら、もう元の英単語をすっかり忘れていました。

さて、手元の辞書で、どうやって引けばいいでしょう。

「サンカノゴイ」からの逆引きかと思いましたが、LogophileとEBWin4では、「前方一致」だけでも、RHD2、リーダーズ2、リーダーズ3では bump 2 がヒットしました。

一方、Jammingだと、「前方一致」でも「一網打尽」でもヒットしません。


そこで、ふと気づいたのが、上述のオプションだったというわけです。

デフォルトがどれなのかわかりませんが、私のJammingは[カナ→かな]になっていたのでヒットしなかったようです。これを[かな→カナ]に変えるだけでもヒットしましたが、どうせなので、[かな・カナ]で使ってみることにします。


08:15 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2016.10.26

# 翻訳祭に関係するアンケート3件

すでにご案内しているように、今年のJTF翻訳祭(第26回)、申し込みが始まっています。

Festival2016__1


ちょうど、井口耕二さんも、ブログで熱く紹介してくださったところです。

リンク:JTF翻訳祭2016: Buckeye the Translator


ぜひ、ひとりでも多くの個人翻訳者にご参加いただき、来年(以降)に続けていきたいと思っています。


さて、その翻訳祭ですが、内容を充実させるために、いくつかのセッションでは

事前アンケート

が始まっています。

こちらにも載せておきますので、パンフレットとあわせてご覧ください。

リンク:翻訳祭公式パンフレット


●トラック3 セッション4
パネルディスカッション「翻訳者に聞きたいこと、翻訳会社に言いたいこと」 → アンケートはこちら


●トラック4 セッション2
「誰も教えてくれない翻訳チェック」 → アンケートはこちら


●トラック4 セッション4
「BBCエディターに聞く報道の現場と翻訳通訳」 → アンケートはこちら

以下は、独り言です。


お祭とかイベントって、参加するだけでもおもしろいですよね。

翻訳業界で大きいイベントは、この翻訳祭と、あとは日本翻訳者協会(JAT)のIJETがあります。

いちど参加するだけで、翻訳者としての視野がぐっと広がります。今まで自分が見てきた世界、知っていた常識が、大きく変わるはずです。

今年のJTF翻訳祭は、そういうきっかけとして絶好の機会になると考えています。


一方、イベントは運営する側に回ってみると、さらに楽しくなるものでもあります(これは、性格とか趣味にもよりますが...)。

アンケートにお答えいただけると、そういう運営側の楽しみを、ちょこっとだけ知っていただける、そんな気がします。当該のセッションを聴く聴かないにかかわらず、3つとも、ぜひアンケートにご協力ください。

第26回翻訳祭

2016年11月29日(火曜日) 9:30~

アルカディア市ヶ谷(私学会館)にて

05:09 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.10.09

# JTF翻訳祭、申し込み始まりました! ボランティアも募集中

すでに何度かお伝えしている第26回の翻訳祭、申し込みが始まっています。

リンク:第26回JTF翻訳祭


申し込みページはこちらです。

リンク:JTF翻訳祭参加申し込みフォーム

おかげさまで、発表になったプログラム内容があちこちで好評です。

〆切(11/22)ぎりぎりになると、今年はひょっとすると満員でキャンセル待ちという事態も考えられます。参加をお考えの方は、お早めにお申し込みください。

また、

ボランティアの募集

も始まっています。

リンク:第26回 JTF 翻訳祭ボランティア募集のお知らせ
(PDFファイルが開きます)


ボランティアの方には、2コマだけお仕事をしていただき、あとは好きなセッションをご覧いただけます。担当するコマは、ある程度ご希望に添いますが、必ずしも希望が通るわけではありません。

そのかわり、2コマ分の時間お仕事するだけで、セッションまる1日分の

参加費が無料

になります。
(懇親会は有料)


業務内容は以下のとおり。

受付
午前、午後、夜間のいずれかの時間帯です。

セッション司会進⾏
セッションが成功するかどうかは、司会進行にも大きくかかっています。得意な方はぜひ!
午前2コマか、午後2コマを選べます。

会場アシスタント
会場で、資料配布、空調管理、マイク運びなどを担当します。
午前2コマか、午後2コマを選べます。

書記
とても大切なお仕事です。
時間帯を問わず、得意な分野のコマを選べます(その後、調整はありますが)。
また、参加費無料のほか、JTFジャーナル規定の薄謝(クーポン券)も進呈。

写真撮影
ご自分のカメラ持ち込みになります。
午前、午後、夜間(懇親会)のいずれかの時間帯を担当します。

事務局作業
詳しくは、上記の申し込みページをご覧ください。


翻訳祭のボランティアは、単に参加費無料などの特典があるだけでなく、翻訳業界最大のイベントの運営に関与できるという意味もあります。

セッションの講師と交流できる、参加団体の様子を知ることができるなど、翻訳・通訳業界の様子をうかがい見るには、格好のチャンスです。

翻訳者はもちろんのこと、翻訳学習中の方も、ぜひ翻訳祭ボランティアを体験してみてください!

01:36 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.10.03

# 訳出のバリエーションと「EDICT2」

アルクさんの通訳・翻訳ポータルサイト「翻訳・通訳のトビラ」に、今春開催した翻訳フォーラム・シンポジウムの特集記事が掲載されていることは、すでにお伝えしました。以前は一部でしたが、記事がすべてそろいました。

リンク:「翻訳フォーラムシンポジウム2016」レポート|翻訳・通訳のトビラ|アルク

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最後に追加されたのが、「翻訳フォーラム・ワークショップ「めだかの学校」発表会」という記事です。

シンポジウム当日は、この発表内容が特に好評だったようで、このワークショップで取り上げた内容を聞いてみたいという要望が多く寄せられました。そこから生まれたのが、前エントリーでも紹介した「翻訳フォーラム・レッスンシリーズ」です。


今回は、この記事のうち「2. 訳例カード班」というセクションにご注目ください。形容詞mostをどんな風に訳せるか、そのパターンをいろいろと分析するという内容です。

同じ原語でもいろいろ訳し方を変えてみるというのは、翻訳者なら日常的にやっているはずです。が、それを「訳例カード」---辞書作りの現場を簡単に再現したイメージです---という形で実際にやってみると、驚くほどの再発見があります(訳例カードを使うレッスン・シリーズについては、決まり次第ご案内します)。


そこまでいかなくても、「意図的に訳出のパターンを変えてみる、手持ちの表現力を増やす」ということを意識していなかった人は、そこを意識してみることをおすすめします。

たとえば、at least という熟語を相手にしたとき、「少なくとも、最低でも」くらいの手持ちしかないと、前から修飾するパターンでしか訳文を作れません。前後のつながりによっては、使いにくいこともあるでしょう。

こんなときは、「うんのさんの辞書」に頼るのもひとつの方法です。うんのさんでも、版が変わると訳語が増えています。


少なくとも, 最低で, せめて, とにかく, いずれにせよ 【うんの 第3版】

少なくとも, 最低でも, せめて; とかく, とにかく, ともかく, いずれにせよ, いずれにしても 【うんの 第5版】


これだけ訳語候補が挙がっていますが、それでもすべて

「前から修飾」のパターン

しかないことにお気づきでしょうか。


辞書によっては、用例を見ていけば、「~以上」という訳し方は見つかるかもしれません。


こんなとき、なかなかやるなぁという辞書があります。しかも無料。以前もご紹介した、EDICT2です(参考過去記事:# EDICTとE-DIC:ときどきおもしろい辞書たち)。

EPWINGデータを以下のページからダウンロードできます。

リンク:EDICT2 (EPWING)の詳細情報 : Vector ソフトを探す!


このEDICT2でat leastを引いてみると、

~くらい、ぐらい
~だけは

という形式名詞を後ろに付ける"訳し方"も見つかります。


probablyを引いたときも、なかなかおもしろい訳し方が見つかりました。

~であろう
~まい probably isn't (doesn't, won't, etc.)
蓋し

海外の学者が作っただけあって、逆にふつうの英和辞典編集では採用できない形がいろいろと収録されているようです。

probablyの項に、「む」と出てくるのは、なかなか高度です。

(aux-v) (4) (after a -nai stem) probably

「ない」の語幹に続く助動詞、ということですね。「なから-む」という古語のことでしたw

01:33 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2016.09.30

# 「読解トレーニング~速く正確に読む~」 - レッスンシリーズ第3弾

福岡が一段落したので、あらためてこちらでも告知します。

翻訳フォーラム主催のレッスンシリーズ、第3弾が10月に開催されます。

リンク:「読解トレーニング~速く正確に読む~」(翻訳フォーラム「レッスン・シリーズ」#3)

10月23日(日)13:15~16:45

です。


講師は深井裕美子さん。


「読めてないものは訳せない」「読めてるつもりが読めてない」

という当たり前のことを、事前課題も含めて徹底的に追求します。プロの翻訳者にも有益な内容ですが、学習中の人にはぜひとも聞いてほしい。


『翻訳のレッスン』、特に講師が執筆した「レッスン2」を読んでおくと、当日の理解がスムーズです。


なお、案内はすでに始まっていますので、お席の残りはだいぶ少なくなってきました。


自分の「読み方」を考えなおす、絶好の機会です。

08:42 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.09.29

# 「博多で翻訳勉強会」、盛り上がりました!

お伝えしていたとおり、福岡翻訳勉強会が主催する第1回の大型イベント「博多で翻訳勉強会」に参加してきました。

リンク:福岡翻訳勉強会

1609241
(会場の、ももちパレス)


以前ご紹介したときには、3人の講師の紹介が順不同でしたが、当日は以下の順序でのご登壇でした。

・小林晋也さん「翻訳支援ツール超入門 ~ その是非を考える」

・テリー斉藤さん「翻訳チェック、そしてWildLight」

・深井裕美子さん「辞書とコーパス」


いずれも、翻訳において重要なテーマには違いありませんが、一見するとそれぞれはあくまでも独立したトピックであって、関連性はないように見えます。

おそらく、主催者側も参加者も、最初はそのように考えていたはずです。


が、実際に2時間の話が3つ終わってみると、3人の話が見事に有機的に連動し、参加者からは

「交響曲を聴いているみたいだった」

という感想が出るほどでした。


私が過去に見聞した勉強会、セミナーのなかでも特に参加者の満足度が高い結果に終わったのではないでしょうか。


初めての大イベントがこれほどの大成功に終わったのは、講師3人の充実したコンテンツと巧みな話術によるところが大きいのは言うまでもありませんが、福岡翻訳勉強会の代表3人の周到な準備とていねいな応対も、実に見事でした。そして、その準備スタッフを影で、そして遠方から支えたKさんの力も大きかった。

講師のひとり、しんハムさん(小林晋也さん)によると、

「天の時」、「地の利」、「人の和」が揃った勉強会

だったということになります。

講師のお三方、そして準備に奔走した福岡勉強会のみなさん、Kさん、お疲れさまでした。そして、大成功おめでとうございます!


登壇者や参加者のブログ記事がすでにあがっているので、そちらもご覧ください。

リンク:TRA Café:【開催報告】福岡翻訳勉強会(9/24)
 登壇者のひとり、しんハムさんのブログです。

リンク:【報告】福岡翻訳勉強会、無事に終了
 同じくテリーさんのブログ。

リンク:第1回 福岡翻訳勉強会は大好評!
 参加者のブログ。

リンク:博多で翻訳勉強会と懇親会
 参加者のブログ。続くエントリーには、各セッションの詳細もあります。

リンク:「博多で翻訳勉強会」に参加しました
 参加した猫先生のブログ。

【9/30追記】
リンク:福岡翻訳勉強会がらみのツイートを集めてみた - Togetterまとめ
 あきーらさんによるまとめ。私が当日やった実況ツイートなどがはいってます。

リンク:福岡翻訳勉強会関連ツイート(関係者視点によるw) - Togetterまとめ
 テリーさんによるまとめ。当日の様子のほか、話の発端から実施が決まるまでの顛末も読めます。


さて、ここからは裏話ですw


私の知っている限り、講師3人は、今回のセミナーまでこういう状況でした。

・しんハムさんは、深井さんの話もテリーさんの話も聞いたことがあった = ○○

・テリーさんは、深井さんの話を聞いたことがあり、しんハムさんの話は聞いたことがなかった = ○×

・深井さんは、しんハムさんの話も、テリーさんの話も聞いたことがなかった = ××


さて当日。

午前中のしんハムさんの話が終わった段階で、深井さんがとても興奮しながら寄ってきて、「おもしろい、おもしろい。今の話の流れで、スライドを1枚追加する」とおっしゃる。

そのときは知らなかったのですが、午後最初のテリーさんも、実はしんハムさんの話を受けてスライドを一部調整していました。


つまり、2番手のテリーさん、3番手の深井さんはどちらも、初めて聞いた話から、全員の話に共通する大テーマをすぐさま読み取って、自分のコンテンツの軌道を一部修正したということになります。

そういう柔軟性があって初めて、あの「交響曲」が完成したというわけです。


3つの話に共通する大テーマとは、

いかにして、ちゃんと翻訳するか

ということに尽きるわけで、まあ言ってみれば当たり前のことなのですが、その当たり前を実践することがいかに難しいか、私たちはみんな知っています。

だからこそ、どんなセミナーであっても、根底にその当たり前のことをしっかり置いて話をしたいし、話を聞くべきだと考えるわけです。


私自身も、実は3人の話は基本的にすべて知ってはいましたが、3人のあうんの呼吸には脱帽しました(帽子屋が脱帽するという、いつものネタではなくw)。


これからもめざしたい、セミナーの理想形を見た気がしました。

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懇親会は、もつ鍋屋さん。盛り上がってしまったので、肝心のもつ鍋の写真は撮り忘れましたが、本場のもつ鍋は美味かった!


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ホテルに帰宅して、ちょっとしてから中州の屋台ものぞいたのですが、懇親会でお腹がいっぱいでした(翌日にリベンジした)。


実は、九州上陸は初めてだったので、25日、26日は観光もしました。その話はまたいずれ書く予定ですが……。

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こんなとこにも行ってきました。

05:37 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.09.22

# 第26回 JTF翻訳祭、プログラム発表

昨日のまとめブログで「間もなく」とお伝えしていた、第26回 JTF翻訳祭のプログラムが発表されました。

リンク:翻訳祭 プログラム詳細

Img_01

今までどおり、6トラック×4=24セッション + 翻訳プラザ6セッション という構成です。


すでにお伝えしているように、今年は

翻訳者の視点

を前面に出してプログラムを考えました。

ここで言う翻訳者とは、けっして「フリーランス(個人)翻訳者」という狭い意味ではありません。

翻訳会社の社内翻訳者を含むのはもちろんですが、たとえば社内チェッカーやPMの方も、翻訳物に関わるという意味では「翻訳者」です。

「翻訳に関わる実務者」と言ってもいいでしょう。そういう

翻訳の現場でがんばっている人たち

のための翻訳祭をめざしました。

一方、翻訳会社の経営者やクライアント企業の方には、そういう「現場の声」をぜひ聞いてもらいたいと考えています。クライアント・翻訳会社向けでもあるセッションも数多く用意しました。


また、今年は日本翻訳連盟の定款に「通訳業」が追加されたため、トラック6の4コマはすべて通訳者向けコンテンツになっています。


トラックごとのターゲットオーディエンスは、特に明示してありませんが、私は以下のように整理しています。


トラック1
いちばん大きい会場です(150名)。過去の参加者数などを参考に配置しました。

午前中は、翻訳フォーラムと十人十色。セッション4の「実況、翻訳会社のトライアル採点」は、初の試みです。トラック3は機械翻訳の話ですが、機械翻訳のPRではなく、最新技術がどうなっているかという、わりとアカデミックな話です。


トラック2
クライアント企業と翻訳実務者の両方に向けたトラックです。

午前中は特許・知財関連。セッション3は翻訳品質の話(スタイルガイド検討委員会のセッションですが、私は登壇しません)。セッション4は、こちらも機械翻訳の話ですが、一転して現場サイドでの活用事例です。


トラック3
翻訳会社と翻訳者の関係向けのトラックです。

午前中は、これから有望そうなセグメント(インバウンド需要と、マーケティング)の話。セッション3では、ツールについて本音の激突が予想されます。"日頃のモヤモヤ"がたまっている翻訳者、翻訳会社の方は、ぜひセッション4にどうぞ。


トラック4
翻訳者と、翻訳学習者にも来ていただきたいトラックです。

セッション1は、おなじみ遠田先生の日英翻訳。セッション2は、テリー斉藤さんが"翻訳チェック"の本質に迫ります。セッション3とセッション4では、それぞれ翻訳の現場から、翻訳者がいま考えるべきこれからの展望をお届けします。


トラック5
関連団体と翻訳学校のトラックです。

午前中は、JATとAAMT。午後は、翻訳学校サン・フレア アカデミーとフェロー・アカデミーの「公開模擬授業」です。


トラック6
4セッションすべて、通訳トラックです。

どのトラックも、通訳の世界を代表する方々ばかり。セッション1は翻訳者にも気になります。セッション3は満席が予想されます。


11月29日は、市ヶ谷アルカディアでお会いしましょう!

10:38 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.09.21

# これからしばらくの翻訳関連イベント、勉強会

しばらく更新をサボっているうちに、すっかり秋らしくなってきました。

(「サボる」って打つと、こうやってカタカナで変換されるんですね。語源を考えると、これでいいのか)


これから予定されている翻訳関連のイベントや、私自身の登壇予定については、単発でご紹介していますが、ここにまとめておこうと思います。みなさんも、お見逃しなく!

9月24日(土)10:00~17:00
「博多で翻訳勉強会」

リンク:福岡翻訳勉強会

すでにお伝えしているように、深井裕美子さん、小林晋也さん、テリー斉藤さんという豪華メンバーが登壇します。私は、オーディエンスのひとりとしてお邪魔します。

10月5日(水)~7日(金)
TCシンポジウム2016 京都開催

リンク:テクニカルコミュニケーター協会 > TCシンポジウム

翻訳に直結するイベントではありませんが、翻訳業界の片隅にいる者として毎年気になっているイベント。個人で参加するには、お値段がいささか高いので、私も10年以上前に翻訳会社から参加して以来です。3日間フルには参加できないと思いますが、初日の交流会も含めて2日間はお邪魔する予定です。通翻クラスタの方々とお会いすることはあまりないかもしれませんが、どなたかにはお目にかかれるかもしれませんね。

10月9日(日)17:00~19:00
翻訳勉強会「十人十色」主催、「柴田先生、翻訳を語る」

リンク:「柴田先生、翻訳を語る」

翻訳家の柴田元幸先生がご登壇。十人十色としては、これまででいちばんビッグなイベントかもしれません。アルク『翻訳事典』のご協力で実現しました。聴衆が翻訳者のみ、というご講演は初めてだそうです。
(すいません、定員に達したため、申し込みは終了しています)

10月15日(土)14:00~17:00
サン・フレア アカデミー「続・読ませる翻訳セミナー Part II」

リンク:続・読ませる翻訳セミナー Part II 類語辞典とコーパスの活用~基本と実践 | サン・フレア アカデミー

柴田先生の記事の次に書くのは気が引けるなぁ。こちらは、先日ご案内したとおり、私の講座です。

10月23日(日)13:15~16:45
翻訳フォーラム「レッスン・シリーズ」#3「読解トレーニング~速く正確に読む~」

リンク:「読解トレーニング~速く正確に読む~」(翻訳フォーラム「レッスン・シリーズ」#3)

6月から始まった、翻訳フォーラム主催「レッスンシリーズ」の第3弾です。「読めてないものは訳せない」「読めてるつもりが読めてない」をキーワードに、原文をちゃんと読むことに焦点を当てます。こちらは、また改めて記事にもしますが、席に限りがありますので、お申し込みはお早めに。

10月30日(日)13:00~17:00
名古屋翻訳者勉強会 第6回勉強会「辞書を使いこなそう!」

リンク:名古屋翻訳者勉強会 | 次回勉強会

こちらもご案内済みですが、名古屋で辞書の話をします。4時間たっぷりで、基礎から実践までお届けします。名古屋周辺のみなさん、よろしくお願いします!

11月28日(月)夕方
翻訳勉強会「十人十色」、翻訳祭前夜祭

今年もやります! 詳しい情報は、Facebookのグループページに掲載しますので、ご注目ください。もし、このイベントに興味があって、十人十色に参加していない方は、帽子屋までご連絡いただいてもけっこうです。

11月29日(火)9:30~
第26回 JTF翻訳祭

こちらも、すでにご案内していますが、昨年までとはひと味違う翻訳祭をお届けすべく、翻訳祭委員会一同、気合いを入れて準備を進めているところです。プログラムは間もなく公開される予定ですので、お楽しみに!

こんなところかな?

12:24 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.09.20

# 「日本翻訳ジャーナル」9/10月号

(実は予定の発行日より遅くなってしまったのですが)

日本翻訳連盟(JTF)が発行する「日本翻訳ジャーナル」の9/10月号(通算285号)が発行されました。

リンク:JTFジャーナルWeb

Hj_2016_3_3

いつにもまして、表紙の写真がカッコいい!


それだけでなく、今号は内容も豪華、読み応えたっぷりです。会員・非会員を問わず

無料

でお読みいただけますので、ぜひダウンロードしてご一読ください。

巻頭特集は、「翻訳業界の団体学会」。

JAT(日本翻訳者協会)、 ベン・トンプキンス氏
JTA(日本翻訳協会) 、湯浅美代子氏
JAITS(日本通訳翻訳学会)、水野的氏
AAMT(アジア太平洋機械翻訳協会)、中岩浩巳氏
NIPTA(日本知的財産翻訳協会)、浜口宗武氏
JTF(日本翻訳連盟)、東郁男

と、日本の翻訳業界を代表する6つの団体・学会が一気に紹介されています。ここまでまとまった資料は、これまでなかったでしょう。

河野編集長、渾身の特集記事です。

連載記事では、第3回となる「帽子屋の辞典十夜」と、リレー形式になっている翻訳フォーラムの連載「新・作成会議室」と。2本を書かせていただきました。


翻訳支援ツールで、マッチ率ごとに単価が変わるしくみについては、p.20~の「いまさらながらの・・・CATツール★超基本」をお読みください。

新田さんの「翻訳者のためのWord再入門」(p.28~)は、今回もすぐに役立つ内容です。

「翻訳と私」には、藤田優理子さんが登場(p.32~)。


連載記事は、この春から始まっています。バックナンバーもすべて無料でお読みいただけますので、『何でも教えてキカク』、「機械翻訳の近未来」など、業界事情についての最新情報もバッチリです。

11:54 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.09.19

# 続・読ませる翻訳セミナー Part II 

サン・フレアさんではすでに告知が始まっているのですが、最近ここの更新頻度が落ちているせいで、まだご紹介していませんでした。

タイトルのとおり、この春に始まった「続・読ませる」シリーズ第2弾の開催が決まっています。

リンク:続・読ませる翻訳セミナー Part II 類語辞典とコーパスの活用~基本と実践 | サン・フレア アカデミー


10月15日(土)14:00~17:00
です。


前回は、辞書をいかにていねいに調べ、読み取って、その結果を訳文作りに活かすかという観点で構成し、それに沿った課題文を取り上げました。

今回は、それをさらに発展させます。「辞書を丹念に引く」という基本は変わりませんが、特に

類語辞典とコーパス

に焦点を当てる予定です。


Part Iも、おかげさまで同内容の2回開催となりました。今回も、お申し込みが多ければ追加開催があるでしょう、たぶん……

具体的には、以下の辞典とサイトについて、実際の利用方法を解説したうえで、課題文(もう送付が始まっていると思います)を解説する予定です。

●類語辞典

デジタル類語辞典

リンク:デジタル類語辞典 第8版 (シソーラス) シングルライセンス ダウンロード版 マインドマネージャーストア


日本語大シソーラス


●コーパスサイト

「現代日本語書き言葉均衡コーパス」 少納言

リンク:KOTONOHA「現代日本語書き言葉均衡コーパス」 少納言 - 検索条件


NLB

リンク:NINJAL-LWP for BCCWJ (NLB)


NLT

リンク:トップ┃NINJAL-LWP for TWC (NLT)

02:40 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.09.04

# 名古屋勉強会で辞書セミナー(10/30)

名古屋にも、2014年から活動を続けている翻訳者の勉強会があります。

リンク:名古屋翻訳者勉強会


そちらに呼んでいただき、名古屋でも辞書の話をすることになりました。


リンク:第6回勉強会のお知らせ

日時:10月30日(日) 13:00~17:00
場所:ウィルあいち(http://www.will.pref.aichi.jp/index.html


リンク先にも書いてあるとおり、今回は午後の時間帯をめいっぱい使って、翻訳者としてそろえたい辞書環境の基礎から、辞書ブラウザの具体的な使い方、代表的な辞書の特徴までお話しします。

また、初の試みとして、レベル別にそろえていきたい辞書セットを、実際の予算も示しながらご紹介する予定です。

定員が23名と少なめですので、ご希望の方はお早めにお申し込みを^^

ところで、私が名古屋に伺うのは、2013年10月以来3年ぶりになります。このときは、2014年6月に開催されたIJET-25のプレイベントが目的でした(地元の翻訳者さんと一緒にパネルディスカッションを行っています)。

名古屋翻訳者勉強会が生まれたのは、このプレイベントがきっかけでした。

IJET-25実行委員会のメンバーに地元の方がいらっしゃり、その方が中心となって、プレイベントの盛り上がりを機に勉強会を立ち上げたという経緯です。それから3年間、着実に活動を続けていらっしゃいます。


そして、私が今回の勉強会にお呼びいただいたのは、7月に静岡翻訳勉強会(通称「しず翻」)にお邪魔したのがきっかけでした。

さらにたどると、私がIJET-25実行委員のひとりとして名古屋プレイベントに参加したのは、その前年の2012年、私がIJET-23(広島)に参加してJATのイベントのおもしろさに引き込まれたからです。


つまり、2012年のIJET-23、2013年の名古屋プレイベント、その後ご当地で生まれた勉強会、今年7月のしず翻と、各地でこれまで続いてきた活動がつながりあった結果として、今回の辞書セミナーが実現したということになります。

これも、SNSのおかげで個人翻訳者どうしが横へ横へとつながれるようになった、ご縁のひとつですね。


2013年のプレイベントのときは日帰り強行軍で、懇親会の二次会にも出られずに帰京することになりました。今回は、ちゃんと宿泊して名古屋ステイも楽しんできたいと思っています。

名古屋地区のみなさん、よろしくお願いいたします。m(__)m

01:34 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.08.30

# アルクさん「翻訳・通訳のトビラ」

シン・ゴジラにやられっぱなしの8月です。


アルクさんの「翻訳・通訳のトビラ」、いくつかコーナーが更新されました。

リンク:「翻訳フォーラムシンポジウム2016」レポート|翻訳・通訳のトビラ|アルク

ひとつは、去る5月29日(日)に開催された翻訳フォーラム・シンポジウムの特集。

ワークショップの報告とトークセッションは近日公開ですが、ひとまず4人のセッションが公開されました。


そして、もうひとつはこちら。

リンク:プロに必要な仕事環境「わたしのセレクト」TOP|翻訳・通訳のトビラ|アルク

出版、実務からそれぞれ3人、映像から2人が、翻訳に必要な(と考えている)環境を紹介するという特集です。

私も実務部門のひとりとして書かせていただきましたが、なにより、計8人の違いが実におもしろいので、こちらもぜひお読みください。

【訂正のお知らせ】

タイトルと本文で「通訳・翻訳のトビラ」と書いてしまいましたが、正しくは「翻訳・通訳のトビラ」でした。某ジャーナルとは逆なのですね^^

ということで訂正しました。

02:39 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.07.24

# 『デジタル類語辞典』のこと

これまでの辞書セミナーなどでも、実はあまり詳しくお伝えしてこなかった辞書があります。

そのひとつが、これです。

リンク:デジタル類語辞典 マインドマネージャーストア

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なぜあまり紹介していないかというと、販売状況が微妙なことがあったからなのですが、現在の販売元(上記のサイト)に行けば入手できるようです。



7/24現在も、Amazonでは「取り扱っていません」あるいは「出品者からお求めいただけます」となっています。出品者名は上記サイトのメーカーです。

【7/25追記あり】
JammingとEBWin4の場合について、ちょっと補足しました。


その名のとおり、日本語の類語辞典です。

1607242

EPWINGなどの統一規格ではなく、データの変換もできないようなので、このように単独のアプリケーションとして使用します。

『日本語大シソーラス』のように、概念カテゴリで分類して示すのではなく、類語を羅列するだけです。訳語を悩んでいるときには、この形で候補をざっと眺めたほうがいいときも多いものです。

ただし、「同義語」、「広義語」、「狭義語」、「関連語」などの分類はあります。


こういう一覧を表示する最小限の使い方だけでも重宝しますが、いくつか便利かもしれない使い方を書いておきます。


類義語に移動

上のスクリーンショットは「冗談」を引いたところです。「諧謔」、「ユーモア」などの類義語が並んでいるので、これをダブルクリックすると、その語で改めて検索できます。つまり、表示された候補を次々とダブルクリックしていけば、類語ネットワークをどんどん移動していけるという仕組み。

移動した履歴は、ツールバーにある「前」/「後」ボタンで行ったり来たりできます。


他の辞書を引く

機能性にちょっと難点もあるのですが(後述)、なかなか便利な機能です。

候補の語を選択して右クリックすると、[他の辞書を引く]というコマンドがあります。これを使うと、設定してある辞書を検索できます。

製品の案内ページを見ると、連携できる辞書が実はかなり多彩です。

【連携可能な電子辞書】
・LogoVista辞典ブラウザ
・Microsoft Bookshelf 3.0
・Microsoft/Shogakukan Bookshelf Basic 2.0/3.0
・DDWin Ver2.59/Ver2.66
・Jamming Ver2.1/Ver2.3.1/Ver2.6.4/Ver3.9.9
・Personal Dictionary for Win32Ver4.33/Ver4.42/Ver4.53/Ver4.74
・PDIC/Unicode Ver.5.2.5
・広辞苑 第六版
・エンカルタ百科事典2001
・現代用語の基礎知識
・新英和・和英中辞典
・類語例解辞典
・マイペディア百科事典
・学研super日本語大辞典ver1.0.2
・マルチメディア総合辞典
・スーパー大辞林
・デジタル大辞典
・ザ・完字変換
・理化学辞典
・ViewIng Ver2.42/Ver3.0
・DTONIC Ver2.44
・ことといLight Ver3.5.2
http://v-networks.co.jp/SHOP/VNC_TH08.html より)

EBWin4はこのリストに入っていませんが、試してみたら大丈夫でした。


設定は簡単です。

  1. [ツール][他の電子辞書との連携設定]を選択する と、こんなダイアログが出てきます。

    1607244

  2. [名前]に辞書名を入力します(名前は任意ですが、入力は必須)。
  3. ダイアログにあるこのボタン
    1607245_2
    を、使いたい辞書の入力フィールドまでドラッグ&ドロップします。この操作、「かんざし」に似てますね。
  4. [状態]はデフォルトで[可]になるはずなので、そのまま[終了]をクリックします。

これで、語句を右クリックして[他の辞書を引く]すれば、たの辞書を引けるようになります。辞書はいくつでも登録できます。その場合は、「かんざし」のときと同じように1回の動作で複数の辞書が勝手に検索されます。


ただし、ちょっと機能に限界があります。

いったん辞書を設定しても、辞書の側で検索方法を切り替えたり辞書を切り替えたりすると、そこで連携が切れてしまうということです。

しかも、元の設定に戻してもダメで、「デジタル類語辞典」のインターフェース自体を再起動すれば、また使えるようになります。

たぶん、連携設定した時点の辞書側のウィンドウ状態を記憶しているからで、その状態がいったん変わってしまうと、元に戻してもダメなんでしょう。

ちなみに、私の環境では、こんな感じでした。

Jammingだと---
検索方法(前方、一網打尽など)を切り替えるとダメ。辞書を切り替えてもダメ。

EBWin4だと---
検索方法(前方、自動など)の切り替えだけなら連携は切れない。辞書を切り替えるとダメ。


Webサイトを検索する

EBWin4とかLogoVistaブラウザでもおなじみのWeb検索機能です。

[ツール][ウェブサイトの設定]で、Webサイトを設定します。

1607246

デフォルトで、Googleなどいくつかの検索エンジンが登録されています。[状態]が[有効]になっている検索エンジン全部で検索を実行してくれるので、オンラインの国語辞典を使っている人は、ここに登録しておくといいかもしれません。

不要なエンジンは[削除]もできますが、[状態変更]を押して[無効]にするだけでもOK。


で、おもしろいのはここからです。

デジタル類語辞典のインターフェースでは、複数の候補を選択できます。その状態でこのWeb検索機能を使うと、そのすべてをキーワードにしてWeb検索されます。

たとえば、上のスクリーンショットで「ユーモア」と「戯れ言」を選択してGoogle検索すると、

1607247

こうなります。


候補をコピーする

ヒットした各ウィンドウで語句を選択し、右クリックで[コピー]を選択する(または Ctrl+C を押す)と、その語をコピーできますが、複数選択(Shiftキーを押しながら、とかCtrlキーを押しながらとか)してコピーすることもできます。

類語候補をまとめて別ファイルに貼り付けて確保しておく、みたいな使い方ができそうです。

ただし、(おそらく著作権の問題で)複数コピーできるのは最大で10個ずつです。候補がそれ以上あるときは、改めて次のまとまりを選択する必要があります。

また、デフォルトでは、複数候補をコピーすると、区切りがまったくありません。つまり、たとえば上の例で「同義語」をすべて(6つの語句)をコピーし、貼り付けると、

諧謔こっけいユーモアかいぎゃくジョークじょうだん

こうなってしまいます。もちろん、設定で変更できます。

メニューから[編集][コピーセパレータ]を選択すると、

1607243

このダイアログで区切り文字を選択できます。


というわけで、基本機能だけ使っていたのではもったいない辞書の話でした。


【7/25追記】

Logophileには日本語辞典をほとんど入れていないので、JammingとEBWin4の場合について補足しておきます。

「辞書の側で、検索方法や対象の辞典(グループ)を切り替えると動かなくなる。類語辞典を再起動すると直る」

という点は変わりませんが、辞書によってこの辺の状況も変わります。


Jammingの場合、検索方法別に連携を登録しておく必要があるようです。

たとえば「前方一致」の状態でのみ登録した場合、「一網打尽」に切り替えると動作しなくなるのは通常どおりですが、類語辞典を再起動しても「一網打尽」に対しては動作しません。この2種類の検索方法をよく使う場合には、「前方一致」と「一網打尽」それぞれの状態で連携を登録する必要があります。


EBWin4の場合、検索方法を切り替えただけなら、類語辞典の再起動は不要です。この点は便利です。辞典(グループ)を切り替えたときは、もちろん類語辞典の再起動が必要。

12:57 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2016.07.15

# 『悩ましい国語辞典』

いわゆる「ことばの乱れ」とか、慣用句などの誤用を指摘する類の本って、あんまり好きではないのですが、これは書店で手に取ってみて、ちょっと違ったので。


書店で目についたのは、たとえば「まじ」。この言葉が実は江戸時代とかあった、みたいな話。

あるいは「右開き」。誤用とかではなく、実は解釈がいろいろあって困るという話。


タイトルに「国語辞典」と付いているのは、国語辞典だということではなく

「国語辞典を編纂するとき、こんなことが悩ましい」

ということですね。そんな悩みを綴ったエッセイが五十音別に並んでる感じの本です。


今朝、

「物議をかもす」

っていう句を使った訳文を納品してから、はたと

これ、間違ってなかったよな。間違ってるのは「かもし出す」だよな...

と不安になって、この本を見ましたが、もちろん「かもす」で合ってました。

最近は「物議を呼ぶ」という言い方も多いらしい(そっちを私は知らなかった)とか、「物議を起こす」という用例が正岡子規にあるとか、そんな話も載っています。


それからまた、前のほうをぱらぱらと読んでいて見つけたのが、

すくう【掬う】

という見出し。リードにはこうあります。

掬われるのは「足」か「足もと」か?


これですよ。これ!


翻訳フォーラムの、もうだいぶ前の勉強会のときのことです。私が、訳文で「足もとをすくう」というのを使ってて、Kさんに「"足をすくう"だよね?」と指摘されたのです。

そのときは、しまったーと思い、その後も、ことあるごとにそのときのことを思い出すのですが……


この本によると、「足もと」には「足のあたり」だけではなく「足の下部」という意味もある。だから、「足もとをすくう」もありえるのではないかと。そして、劇作家・三好十郎の用例も載っている。

ここで、中納言とか調べてもいいのですが、ここはあくまでも、本のご紹介でした。

(7/15 19:00追記)

そうだ、これを書こうと思っていて忘れました。

LogoVista版の『明鏡国語辞典 第二版』には、ちょっと変わったインデックスがあります。


左上のドロップダウンにある通常の検索方法ではなく、検索ウィンドウにある[問題なことば検索]というウィンドウです。これが、「物議」を引いたところ。

1607161

このインデックスは、Jamming/LogophileやEBWin4では再現されないので、LogoVista純正ブラウザでないと見られません。

ちょっとおもしろい機能です。

なお、上の図で[問題なことば]タブの右に見えている[付録]タブにも、ときどき眺めるとおもしろい情報がたくさん載っています。中高生が配られる――そして、あまり使わない――「国語便覧」の電子版といったところです。

1607162

この情報は、EBWin4などでは[メニュー]検索から見ることができます。

03:43 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (3)

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2016.07.10

# Logophileのみ対応している辞書タイトル

この話は、『翻訳のレッスン』でも軽く触れていますし(pp.104-105)、辞書についてのセミナーでも機会があれば紹介していますが、こちらのブログではまだ取り上げていませんでした。


Logophile(ver1.6)が対応している辞書の一覧は、ユーザーズガイドのページにあります。

リンク:Logophileユーザーズガイド


このうち、LogoVistについては、ある時期以降のデータを読み込めなくなっていることは、すでにご存じかと思います。

注目は、もともと単独のアプリケーションとしてインターフェースを起動しなければならない辞書タイトルが、Logophileにはそのまま登録できる(データの変換などが不要)ということ。

以下、そういう辞書タイトルのうち、私が使っているものを紹介しておきます。

リンク先はいずれもAmazon。アルファベット順です。

Cambridge Advanced Learner's Dictionary 3rd Edition(CALD3)

基本は英語ですが、米語にも対応しています。語釈はあくまでもオーソドックス。例文が豊富なのも長所です。

ただし、Logophileが対応しているのは第3版で、現時点で最新は第4版(2013年刊)です。ご購入の際はご注意ください。


Collins COBUILD 2006

説明は不要でしょう。豊富な用例のWordBankが付いています。Logophileに登録するときは、本体とWordBankを別々に登録します。


Longman Dictionary of Contemporary English 5th(LDOCE5)

こちらも説明は不要。最新は第6版ですが、データとして手に入るのはこれが最新です。

文法事項、類語情報なども高い再現性で収録されます。


Longman Advanced American Dictionary 2nd(LAAD2)

かなりの部分がLDOCE5と共通ですが、同じ単語を引いても、たとえば語義順やレジスターなどに違いがあるので、たとえばsmartなども、ずいぶん違います。


Macmillan English Dictionary for Advance Learners 2nd(MED2)

個人的に好きな辞書です。語釈は、ある意味でCOBUILDより平易。

単語によっては、大きいカテゴリーが冒頭にまとめてあるというタイプです。

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また、学習者向けの語法情報なども豊富です。

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Oxford Advance Learner's Dictionary 8th(OALD8)

これも、最新は第9版ですが、データとして手に入るのはこちらが最新。

次に紹介しているOLTの類語情報も、ある程度まではこちらでも確認できます。

音声やレイアウトまで含め、Logophileでの再現性がなかなか高いのもうれしいところです。


Oxford Learner's Thesaurus(OLT)

類語辞典として、私があちこちでお奨めしている辞書です。「類義語になっている」という観点だけでなく、「類義語になっていない」という観点まで考えると、うまく使いこなせます。


E-Dic 第2版

こちらは、以前紹介しました。

リンク:side A: # EDICTとE-DIC:ときどきおもしろい辞書たち

なお、以上で紹介したタイトルは、いずれもLogophileユーザーズガイドに掲載されているISBNからAmazonで検索したもので、旺文社など日本の会社が介在して販売している製品が多くなっています。

もともとの海外版でも、同じ版のCD/DVD-ROMなら読み込めると思うのですが、保証の限りではありません。

私自身も、素直にISBNで検索し、ここに挙げた商品を購入しました。

※つまり、ここから買ってくれるとうれしい、という意味です ^^

03:07 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2016.07.06

# EBWin4でWeb検索―実はなかなか便利だった

老舗のJammingやLogophile、DDWinになく、後発のEBWin4にある機能が「Web検索」です。


「辞書ブラウザで検索した語句を、そのままWebでも検索できたら便利かも?!」

という発想でしょう。自分はあまりそういう使い方をしないので、これまで試していませんでしたが、オンライン英英をよく見るようになってきたので、使ってみました。


結論から言うと、なかなか便利そうなので、使い方をご紹介することにします。と言っても、たいして難しくはないんですが……。

【2016/7/6追記:Logophileには、Web検索を設定する機能はありました。ただし、既定のブラウザで検索ページを開くだけで、Logophileウィンドウ内に表示されるわけではありません】

ちなみに、Web検索のできる辞書ブラウザは、EBWin4のほかにもあります。


ひとつは、Dicregate

電子辞書もWeb辞書も登録でき、すべてがタブ表示されます。ただ、このソフトウェアは検索オプションがないので、通常の辞書も含めてこれをメインで使う気にはなれません。


もうひとつはPASORAMAですが、指定できるWebが1つだけで、切り替えるにはいちいちオプションダイアログを開かねばなりません。

1607061


こう考えると、総合的にはEBWin4が私にはいちばん使いやすい。ただし、ふつうに検索して電子辞書とWebがいっぺんに検索されるDicregateと違って、通常の検索では電子書籍しか検索されません。Webを検索するには、その後で

1607062

オプションバーのこのボタンを押す必要があります。が、1回押せば、

1607063

このようにWebページが一覧されるので、後はクリックして切り替えられます。ひと手間多いだけです。

YahooやWikipediaなどのURLがあらかじめ登録されていますが、もちろん自分で追加できます。

  1. Web検索のアイコンにカーソルを置くと、右に下向き▼が表示されるので、そこから[Web辞書の編集]を選択します。

    1607064

  2. 左下にある[Add]ボタンをクリックします。
  3. [Name]に任意の名前を付け、[URL]に検索URL(後述)を入力します。
  4. [Post String]はほとんど必要ありません。
  5. [Enabled]をチェックします(これを忘れると表示されない=使えない)。

削除はしないが通常は使わないWebについては、[Enabled]のチェックを外します。

手順はこれだけで、削除もできるのですが、残念なことに

順序を変えるオプション

が今のところありません。暫定的な方法は、後述します。


さて、問題のURLですが、まず代表的な(無料の)英英辞典のURLを挙げておきます。これを[URL]フィールドにコピペすればOKのはず。

※上のスクリーンショットで赤く囲った6つのサイトはデフォルトです。

Dictionary.com
http://www.dictionary.com/browse/

American Heritage Dictionary
https://www.ahdictionary.com/word/search.html?q=

Cambridge Dictionaries Online
http://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/

Collins Dictionaries
http://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/

Longman English Dictionary Online
http://www.ldoceonline.com/search/?q=

Macmillan Dictionary
http://www.macmillandictionary.com/dictionary/british/

Merriam-Webster
http://www.merriam-webster.com/dictionary/

Oxford Dictionaries
http://www.oxforddictionaries.com/definition/english/

DictJuggler - 訳語辞典
http://www.dictjuggler.net/yakugo/?word=

Microsoftランゲージポータル
[URL]https://www.microsoft.com/language/ja-jp/Search.aspx?sString=
[Post String]&langID=ja-jp

※これだけは、[Post String]も必要です。


これ以外のサイトを使いたい場合も、特に難しいことはありません。

  1. 使いたいサイトに行って、何か検索します。
  2. 検索結果のURLバーを見て、検索語の前の部分を[URL]に、後の部分を[Post String]に入力します。たとえば、英辞郎(無料版)で fairy を引くと、URLはこうなります。
    http://eow.alc.co.jp/search?q=fairy&ref=sa
    この場合は、
    [URL]が http://eow.alc.co.jp/search?q=
    [Post String]が&ref=sa
    です。

いろいろ試してみてください。

ただし、検索サイトで特殊なスクリプトが使われていたりすると、うまくいかないこともあります。検索できても、表示が少し崩れることもあるようです。

また、

1607065

このように、検索フィールドが空になるサイトもありますが、検索はちゃんとできています(なぜか、American Heritageは、表示がかなり下になります)。

最後に、Webサイトを登録するダイアログで順序を変更できない問題について書いておきます。

Webサイトの指定は、以下のファイルに記録されています。

C:\Users\<ユーザーディレクトリ>\AppData\Roaming\EBWin4\engines.dat

こんな感じのテキストファイルです。

1607066

このファイルを編集すれば順序は変更できる……はずなのですが、私は一度、EBWin4自体が起動しなくなりました(このときは、デフォルトの6つのサイトを削除した)。

その後もう一度試したら無事に編集できましたが、起動しなくなった理由は不明です。

もし、このengines.datファイルを編集して順序を変えようという場合は、必ず正常な状態でengines.datのバックアップを確保してから作業してください。

02:15 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2016.07.04

# 『語句楽辞典』を、ちょっとだけPASORAMAライクに

DAYFILERに搭載されていたPASORAMAは、電子辞書端末のインターフェースが(ほぼ)PC上に再現されるという画期的なソフトウェアでした。

・PC上で入力・検索できる
・検索結果をPC上で見られる
・辞書の内容をコピーできる

iPad上のアプリ『語句楽辞典』も、メーカーさんがその気になってくれれば、PASORAMAと同じようなインターフェースをまた開発してくれる可能性がないでもありません(ないかもしれません...)。

少しでもそれに近い操作ができるものはないものものか---と探していたら、ひとつだけありました。

Wifi Keyboard

というiOSアプリです。

1607042

リンク:Wifi Keyboard


ここでは、『語句楽辞典』を使う前提で紹介しますが、基本的には

PCのキーボードを使ってiPad上で入力する

ためのツールです。たとえば、iPad上の「メモ」アプリとかEvernoteに、PCのキーボードを使って入力できるということです(それはそれで、使い道がありそう)。それを、辞書検索に使おうというわけです。


使うまでの設定は、以下のとおりです。

  1. iPadとPCを、同じLANに接続している必要があります。
  2. iPad上のApp Storeで「Wifi Keyboard」を検索し、インストールします。基本は無料ですが、日本語キーボードだと有料です。240円なので、アプリ内で購入しましょう。
  3. iPadの「設定」を開き、「一般」→「キーボード」と進み、「キーボード」→「新しいキーボードを追加...」の順にタップして「Wifi Keyboard」を追加します。

    1607043

  4. 追加された「Wifi Keyboard」をタップして、「フルアクセスを許可」をオンにします。
  5. メモでもなんでも、文字入力を伴うアプリを開いて入力モードにします。
  6. 地球儀アイコンをタップすると(あるいはしなくても)、スクリーンキーボードに次のようにIPアドレスが表示されます。

    1607044

  7. PC上で、ブラウザにこのIPアドレスを入力してアクセスすると、こんな画面になるはずです。

    1607045

    上の図のように、Connectedと表示されていれば成功。

これで、『語句楽辞典』を起動し、ブラウザの「Wifi Keyboard」ウィンドウに語句を入力すれば、あ~ら不思議。入力した文字が『語句楽辞典』の入力フィールドに入力されるはずです(ほかのアプリでも入力できるはず)。


もちろん、できるのは入力だけです。PASORAMAのように、結果がブラウザ上に出てくるわけではありません。検索結果を選んだり辞書を切り替えたり、これ以降は、すべてiPad上の操作になります。

それでも、入力をPC上でできるだけで、私としては十分に使いやすくなる気がします。これで、『語句楽辞典』は十分に常用辞書環境に組み入れられました。


ただし、iPad上で操作して、カーソルが検索フィールドから外れてしまうと、とたんにブラウザ上の「Wifi Keyboard」はこのように......

1607046

Disconnectedとなり、入力操作ができなくなってしまいます。こうなったら、iPad上で検索フィールドをタップすれば、瞬時にConnectedになります。


逆に、このソフトウェアを使うメリットがほかにもあります。

これは『語句楽辞典』の欠陥なのですが、いったん入力した検索フィールドを、いっぺんにクリアする方法がありません。Backspaceで1文字ずつ消すしかない。これはイヤです。

ところが、「Wifi Keyboard」には独自のショートカットがあります(ブラウザウィンドウの「Shortcuts & Functions」以下にある)。

ここに、

Delete (Word) Shift + Delete

Delete (Line) Shift + Ctrl + Delete

というショートカットが用意されています。これを使えば、語句楽辞典の検索フィールドを一発クリア。


iPad上で容量を確保できたら、あとはこのアプリでここまでできます。いかがでしょう。

06:00 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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# 『語句楽辞典』―SIIの辞書ビジネスがついに復活!

PASORAMA機能搭載のDAYFILERシリーズでたくさんの翻訳者に愛されていたセイコーインスツル(SII)さんが辞書ビジネス市場を去ってから、1年以上が経ちました。

撤退発表の声明文のなかに、こう書かれていたのを、覚えている方もいらっしゃるかもしれません。

なお、本事業で培った、辞書コンテンツの利用ノウハウやそれらを活用した検索サービス等については、セイコーホールディングスグループ内にて、ビジネス展開の可能性を検討していく予定です。
電子辞書ビジネスからの撤退について | セイコーインスツル株式会社


その言葉どおり、SII の辞書コンテンツが、ついに

iPadアプリとして復活

しました。

リンク:語句楽辞典 | 電子辞書アプリケーション | セイコーソリューションズ

リンク:セイコー電子辞書アプリ『語句楽辞典』

1607041

本体はiPadアプリで、ライセンスを購入するとデータをダウンロードできるというモデルです(iPhoneには対応していません。また、iPadも古い機種には非対応です)。


リンク:語句楽辞典を App Store で - iTunes - Apple

(本体アプリは誰でも無料でダウンロードできますが、これにはサンプルデータしか入っていません)


辞書データのほうは、

・高校生向け、2モデル(スタンダード、プレミアム)

・大学生向け、2モデル(スタンダード、プレミアム)

というラインアップで(収録コンテンツはリンク先を参照)、その名のとおり、対象は学生という位置付けです。

しかも残念なことに、(少なくとも当面は)高校生・大学生(および教員)向けにしか販売しないのだそうです。


が、しかし!

教育機関向けを除くと唯一、

翻訳フォーラムを通じて購入

できることになりました。

リンク:辞書アプリ『語句楽辞典』用コンテンツのご紹介

大学生向けと称していますが、上位バージョン(プレミアム)は、翻訳者も十分に使えそうなコンテンツがそろっています。

【英和・和英】
リーダーズ英和辞典 第3版(研究社)
リーダーズ・プラス(研究社)
ランダムハウス英和大辞典 第2版(小学館)
新英和大辞典 第6版(研究社)
新和英大辞典 電子増補版(研究社)
ビジネス技術実用英語大辞典 V5 英和編&和英編(プロジェクトポトス)
180万語対訳大辞典 英和・和英(日外アソシエーツ)

【英英・類語】
ロングマン現代英英辞典 6訂版 ★
オックスフォード現代英英辞典 第9版 ★
小学館オックスフォード英語類語辞典(小学館)

【英和・和英学習】
プログレッシブ和英中辞典 第3版(小学館)
ルミナス英和辞典 第2版(研究社)
ルミナス和英辞典 第2版(研究社)

【国語】
広辞苑 第6版(岩波書店)
デジタル大辞泉(小学館)
新明解国語辞典 第七版(三省堂)
新明解四字熟語辞典 第二版(三省堂)
全訳漢辞海 第三版(三省堂)、

【その他】
岩波 理化学辞典 第5版(岩波書店) ★


お手元の辞書ラインアップと比較してみてください。DAYFILER時代のSII 製品とかぶっているものも、そうでないものもあります。DAYFILERの最高峰だったDF-X10001と比べると見劣りしますが、特に★を付けたコンテンツは注目。

ロングマン現代英英辞典 6訂版(Longman6)

オックスフォード現代英英辞典 第9版(OALD9)

この2つは、電子データでほぼ入手できないタイトルです。

OALD9は、単独アプリケーションが売られていますが、どの辞書ブラウザにも載りません。Longmanは、書籍を除くとオンライン展開が中心になってしまい、Longman6の電子データは売られていません。唯一、カシオのXD-Y20000にはOALD9とLongman6がどちらも収録されています。

岩波 理化学辞典

は、SR-G9003(DAYFILERシリーズになる前のPASORAMA対応機種)に収録されていましたが、DF-X10001ではなぜか見送られました。


そのうえ、リーダーズ、研究社英和・和英、うんのさんという基本がそろい、「180万語」までそろっているのですから、

・これから辞書環境をそろえたい

・DAYFILERシリーズを買い損ねた

・DAYFILERを持っているが、壊れたら次はどうしよう

という方で、しかもiPadをお持ちであれば、かなりお手頃かもしれません。


そうなると、お値段が気になるところですが、実はSIIや加賀ソルネットのサイトには書いてありません。

翻訳フォーラムの特設サイト(こちら)には載せてあります。こちらでは具体的に書きませんが、かなりお得な価格です。


iPadとセットでこれからそろえるとなると、ちょっとかさみますが、iPadがあれば(容量が空けられれば)、これからの選択肢として、なかなかよさそうです。

とは言っても、PASORAMA時代と違って、iPad上でしか使えないんだったら、別にカシオの辞書端末でも変わらない……。

そうかもしれません。翻訳者にとっては、「PASORAMAに代わるもの」にはならないようです。


ただ、iPadアプリになったということは、今後もしかしたらPCから操作できるようになる――第2のPASORAMAが実現する――日が来ないとも限りません。


今のところ、少なくとも入力をPC側でできるソフトウェアを見つけました。

次のエントリで、それをご紹介します。


04:55 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2016.07.03

# 福岡勉強会が始動、9月には第1回勉強会

翻訳者による自主的な勉強会が、福岡でも本格的に始動しました。

リンク:福岡翻訳勉強会とは


そして、きたる9月24日(土)には、講師を3名も招いた豪華な勉強会が博多で開催されます。

リンク:「博多で翻訳勉強会」を開催します


登壇する講師は、

深井裕美子さん
小林晋也さん
テリー斉藤さん
(公式ブログでの掲載順)

まるで、通翻クラスタのオールスター戦、あるいは紅白歌合戦といった1日になりそうです。

詳細は上記リンク先をご覧いただきたいと思いますが、概要だけこちらでも紹介しておきます。

日 時:2016年9月24日(土) 10:00~16:30
会 場:ももち文化センター 特別会議室

テーマ:訳文をピカピカに磨き上げよう!-辞書とツールと翻訳チェック

講 師:(順不同)
 深井裕美子先生 「辞書とコーパス」
 小林晋也先生  「翻訳支援ツール超入門 ~ その是非を考える」
 藤貴昭先生  「翻訳チェック、そしてWildLight」

会 費:8000円 *うち500円は熊本地震の義援金として日本赤十字社に寄付いたします。


午前中から夕方までびっしりつまった、このコンテンツ。昨年から今年にかけて各地で開催され、いずれも好評だった講義を、博多の地でいっぺんに受けることができるというわけです。


お近くの方はもちろんのこと、遠方の方も九州観光を兼ねて足を運んでみてはいががでしょうか。ちょうど、こんなキャンペーンもあることですし。

リンク:【公式】九州ふっこう割お知らせサイト


定員は60名ということです。うっかりしていると、あっという間に満席になってしまうかもしれません。お申し込みはお早めに。


なお、私も応援を兼ねて駆けつける予定です。実は、九州ってまだ一度も行ったことがないので、観光も兼ねて : )

登壇はしませんが、ご質問などあれば、懇親会などでお答えできると思います。

翻訳フォーラムのように以前からあるコミュニティーとは別に、過去5年ほどで、翻訳者による自主的な勉強会が各地にどんどん生まれています。

仙台(JATのTRACが中心)、東京、静岡、名古屋、大阪、広島。そして、ついに九州にも。

あとは北海道と四国にできれば全国制覇ですW


11:26 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.06.28

# 十人十色、異例の出版系セミナー開催!

Facebookグループを基盤に、学習者からプロまでが広く集まっている翻訳勉強会「十人十色」。

今までも、いろいろとイベントの告知や報告をこちらでもしてきましたが、今回は異色です。

十人十色としては初めて、出版翻訳に関するセミナーを開催することになりました。以下の日時で、フリーの編集者、鹿児島有里さんをお迎えします。

【日時】2016年7月12日(火)18:00~

【場所】都内

※十人十色のイベントは平日の昼間が多いのですが、今回は夕方から。お勤めの方でも間に合う時間帯です。


Facebookにイベントページを立ててあるので、すでにメンバーであればイベントページを見られます。

リンク:「翻訳書の編集者の視点」 ~担当翻訳書100冊超の編集者が語る出版翻訳の世界~


が、十人十色にまだご参加していない方から、今回のセミナーに興味がある、参加したいとの声をいただいているようですので、こちらでもご紹介することにしました。

十人十色にまだ参加しておらず、このセミナーに興味がある方は、管理人である井口富美子さんのブログをご覧ください。

リンク:「翻訳書の編集者の視点」 翻訳勉強会「十人十色」 セミナーのお知らせ

【講演概要】

出版社所属の編集者として、フリーランスの編集者として、さまざまなジャンルの翻訳書を作ってきた経験をお話しします。編集者が求める訳文、翻訳者とは?そのために、編集者がすることは?コンテンポラリーな新作と古典の新訳では、やることは違う?

ベテラン翻訳者から学んだことはもちろんたくさんありますが、新人翻訳者から学んだこともあります。編集者としての私は翻訳者のみなさんに育てていただきました。自分が得たことを他の翻訳者の方々にもお伝えできればと思っています。

【講師略歴】

編集者。早川書房で海外文芸、ミステリ・ノンフィクション・演劇書など、光文社で古典新訳文庫を担当し、現在はフリーランス。担当した訳書は、カズオ・イシグロやダニエル・キイス、トリイ・ヘイデンなどの新作からF・S・フィッツジェラルド、サマセット・モームなどの古典に至るまで150冊近く。仕事をした翻訳者は、佐々田雅子氏をスタートに、鴻巣友季子氏、入江真佐子氏、黒原敏行氏、深町眞理子氏、小尾芙佐氏、小川高義氏など多数。

企画編集した本に『モンスターズ――現代アメリカ傑作短篇集』(古屋美登里訳、白水社)、『バン、バン! はい死んだ』(ミュリエル・スパーク/木村政則訳、河出書房新社)など。

10:01 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.06.22

# 古い辞書を調べるということ

Facebookにちらっと書いたとおり、たまたま空き時間ができたので、久しぶりに神保町に立ち寄り、古書店ものぞいてきました。

短時間だったし、あてもなくぶらぶら店頭をブラウズしただけですが、1軒だけちょっと時間をかけたのが、こちら。

リンク:英米文学・言語学・日本学・洋雑誌 小川図書

語学書や辞書の専門店なので、大学時代から必ず毎回寄っていたお店です。CODの旧版とかみ、ここで買いました。


『ランダムハウス英和大辞典』の元になった英英辞典(今ある、Random House Webster's ではない)とか、気になる辞書もたくさん並んでいるわけですが、もちろん紙です。お値段も当然、5桁。おいそれと手が出るものではないし、だいいち持って帰る気になれません。置く場所もない。


それで、特にビブリオ的に価値があるわけではない、こんなのを300円で買ってきました。

1606221

『斎藤和英大辞典』の編者、斎藤秀三郎と非常に紛らわしい名前ですw

それに「外国からきた」ってのも、時代を感じさせます。

初版が出たのは1961年のようですが、私が買った版の奥付には、こうあります。

昭和四十四年十月十日 改訂二十三版発行
昭和四十七年四月十日 新版八版発行

前書きは「増補改訂に際して」と題して、1970年5月 という日付になっています。

つまり、この辞書は

1970年5月時点の新語辞典

ということです。


当然、カタカナばっかり並んでいるわけですが---


たとえば、「ビット」は載っていますが、「バイト」は載っていません(当然、「キロバイト」、「メガバイト」なども)。

ビット[bit]情報量の単位.記憶容量を表わすのによく用いられ,0と1の2進数が保有し得る最大の情報量を表わす

と書かれています。


「ディスク」は、次のように②の語義まで載っていました。

ディスク[disk]①円盤,蓄音機のレコード.②電子計算機で,磁気ディスク記憶装置の略.

つまり、1970年の時点でコンピュータに使う「磁気ディスク記憶装置」というのが、一般的に知られていたことがわかります。ところか、今ならそれを「ハードディスク」と呼ぶはずですが、「ハードディスク」は載っていません。まして、「フロッピー」も見当たりません。

すこし調べればわかりますが、フロッピー、つまり「ハード」でないディスクが登場したからこそ、それまでの「ディスク」をわざわざ「ハード」と呼ぶようになったということでしょう。


こんな風に、今なら当たり前になっているカタカナ語が、40年以上前には使われていたのか、(辞書に収録されるくらい)一般的だったのか、ということを調べられて、なかなか楽しい。


ちなみに、初期の『仮面ライダー』で、ショッカーの首領が口にしていた「バーリア」---「バリアー」ではない---は載っていませんでした。それどころか、「バリアー」のほうもありません。

うーん、子どもたちまで「バリアー!」とか言い出した、もうすこし後だったかなぁ。


逆に、私はこんな単語が載っていてビックリしました。

シズル[sizzle]フライパンで肉を焼くときの音.用例:シズル効果(見込み客の感覚を刺激して引きつけること.次項参照)

で、その次項には「シズル セール」という項目がある。

それから、こんなのも。

ワン ストップ ショッピング[one stop shopping]消費者が商品を買う場合,1か所ですべての買いものをすませる購買行動.

もちろん、どちらもマーケティング用語ですから、その分野の人なら「けっこう昔からあったよ」と思うくらい当たり前の話なのかもしれません。でも、この2つ、どちらも私は、過去10年くらい以内に知った言葉でした。

使い方からして、かなり新しそうだと思うじゃないですかぁ。それが、大阪万博のころにもうあったなんて......。

こういうことって、英語ならGoogleのNgram Viewerで調べられるんですが、日本語はダメですよね。だから、こんな紙の情報が役に立つ。


これが300円なんて、とてもお得でした。

12:32 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (4)

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2016.06.15

# Webster辞書についての追記と、EPWINGデータ集

前エントリについて、Faceboookのほうでコメントをいただいて思い出した点があるので、追記しておきます。


ジャーナルの記事にも書きましたが、Webster辞書の初版は1828年に発行されました。この1928年版の内容が、オンラインで公開されています。

リンク:https://1828.mshaffer.com/

Search, browse, and study this dictionary to learn more about the early American, Christian language.

と書いてあって、なぜかトップページにはあらかじめmessiahのエントリが載っています。

続く第2版は1841年に刊行されました。

その第2版のうち、1844年に印刷された版を詩人のエミリー・ディキンソンが愛用したということで、ディキンソン研究者がEmily Dickinson Lexiconという名前で公開しています。

リンク:Emily Dickinson Lexicon

ちなみに、「私たちが直接知っている、1961年版のWebster大辞典(Webster's New International Dictionary of English Language, 3rd)は、今でももちろん紙版を入手できますが、とてもじゃありませんが、あの巨大な1冊を日常的に使うわけにはいきません。

データ版(CD-ROM)は、かつて出ていましたが、今ではほぼ入手できません。

(リンクは貼ってますが、「現在お取り扱いできません」です)


かわりに、時代に合わせてオンラインに移行しています。

リンク:Merriam-Webster Unabridged

ただし有料です。月額4.95ドル、年額29.95ドル(半年分で済む)。Unabidgedの内容が入っているほか、第3版以降の新しい内容も収録されています。また、Collegiateの内容も選択できます。

ちなみに、Merriam-Webster社には無料のオンライン版もあって(http://www.merriam-webster.com/)、通常はこちらで十分でしょう。

また、1913年版のダウンロードページを見て「聖書がある」と気づいてくださった方もいらっしゃったので、その点も書いておきます。


市販の辞書タイトルでEPWING仕様のものはすっかり減ってしまいましたが、今でもオンラインで手に入るいろいろなEPWINGデータがあります。

仕事に直接役に立つというより、むしろ趣味に関わるようなコンテンツが大半ですが、そんなデータをダウンロードできるサイトをまとめて紹介しておきます。


FPWBOOK

データだけでなく、EPWING変換のためのスクリプトも含まれている点に注意してください。

惡魔の辭典
Easton's 1897 Bible Dictionary
EDICT
Webster's Revised Unabridged Dictionary (1913)

WordNetのデータもありますが、もっと新しいバージョンが他のサイトにあります。


極めよDDwin+EPWING/EB辞書
更に極めよ「EPWING/PDIC辞書」

こちらは、どちらかというとデータそのものではなく、EPWING変換のためのスクリプトやノウハウを紹介したページ。


Maximilk

前エントリで、Webster 1913のリンク先として紹介したページです。そのほか、

EDICT2
Holy Bible(KJV)

などをダウンロードできます。


EPWING辞書のご紹介●大久保 克彦 | JTFジャーナルWeb

そして、EPWINGといえば、この方を紹介しないわけにはいきません。

WordNet最新版(3.1)
青空文庫

などのデータを作成して公開くださっているほか、

OEDの変換スクリプト

という、とんでもなくありがたいツールまであります。

【追記】

ちょっと前まで、Androidに対応したUnabidged版のアプリがあったのですが、今は見当たらないようです。

それから、1928年初版は、iOS対応のアプリがありました。

10:36 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2)

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2016.06.14

# 1913年版のWebster辞書

『翻訳のレッスン』、p.70の脚注に、

1913年発行の英英辞典
Webster's Revised Unabidged Dictionary

というのが出てきます。

本文を見ると、これが「古い辞書」であることはわかるのですが、もう少し補足しておきたいと思います。


なお、本記事と併せて、「JTFジャーナル」5/6月号で連載を開始した私の記事もお読みいただくといいと思います。

リンク:JTFジャーナルWeb

※リンク先のWebページではなく、PDFをダウンロードしてご覧ください。PDF版のp.16からです。

私たちが直接知っている「Websterの大辞典」は、1961年に発行された

Webster's New International Dictionary of English Language, 3rd ed., 1961

です。

Webster3rdinternational_2

タイトルに"New International"と付いてからの、これが第3版です。発行から50年以上経っていますが、第4版が出ていないので、これが「最新版」です(オンラインでは新しい語も追加されています)。

"New International"は、初版が1909年、第2版が1934年に発行されました。


タイトルに"New"が付いているので見当がつきますが、これ以前には、"New"の付かない"International"版がありました。

Webster's International Dictionary of English Language(1890)

Webster's International Dictionary of English Language(増補、1900)

です。1900年に発行されたこの"International"増補版の1913年版が、名前を変えて

Webster's Revised Unabridged Dictionary(1913)

となります。

これが、今オンラインで入手できる「1913年発行のWebster辞書」というわけです。


なお、オンラインではいろいろなサイトで公開されていますが、私たちが使うには、EPWING版のこちらがいちばん便利でしょう。

リンク:Webster's 1913(EPWING)

『翻訳のレッスン』にも、このWebster 1913の例が載っていますが、ここでは、computerを引いてみましょう。

n. One who computes.

今のようなコンピューターが生まれる以前にもcomputerという単語はあったのですが、当然ながら、「computeする人」という意味だったわけです。

あるいは、network はこうなっています。

1. A fabric of threads, cords, or wires crossing each other at certain intervals, and knotted or secured at the crossings, thus leaving spaces or meshes between them.
2. Any system of lines or channels interlacing or crossing like the fabric of a net; as, a network of veins; a network of railroads

09:45 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2)

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2016.06.13

# EDICTとE-DIC:ときどきおもしろい辞書たち

けっしてメインの辞書としては使えないものの、思わぬときに役立つことがある辞書を2つ紹介します。名前が似ていて、ちょっとややこしいのですが......。


1つ目は、EDICTという、無料で使える辞書データです。オーストラリア、モナシュ大学のJim Breenという教授が、研究の一環として作成した辞書データです。元はシンプルなテキストファイルで、現在のバージョン(ver. 0.5、2013/5/8)はこちらからダウンロードできます。テキストでも15MBあります。

リンク:The EDICT Dictionary File

見ればわかるとおり、辞書というより英和の単語帳みたいなものですが、こんなエントリがあったりします。

  100円均一   hundred-yen store; 100 yen shop

あるいは、実はこれを見つけたので改めてこの記事を書くことにしたのですが、こんなのも載っています。

  the fact is  のです(P);のだ(P);んです;んだ [exp](P)

こんな風に、ほかの辞書にはない言葉とか、意外な観点のエントリがあるので、ときどき感心させられます。


上のページにあるのはテキストファイルですが、これをEPWING化したデータも公開されています。

リンク:EDICT2 (EPWING)の詳細情報 : Vector ソフトを探す!


今や貴重なEPWING形式なので、汎用の辞書ブラウザ(Jammng、Logophile、EBWIN4)で使えますし、無料です。冒頭でも書いたようにメインの辞書にはなりえませんが、サイズもたいしたことなく邪魔にはならないので、入れておいてもいいのではないでしょうか。

もうひとつは、『E-DIC』という市販の製品です。

こちらのサイトでも、以下のように紹介されています。

素性のしっかりした様々な紙の専門辞書をまとめて電子化したもので、大変廉価な上にユーザー登録すると最新用語が無料で追加できるのもありがたい。基本的な英和・和英辞典は持っているという前提で、追加・補足的に使いたい。

「素性のしっかりした様々な紙の専門辞書」というのは、たとえば以下のような書籍版です。


『アメリカ口語辞典』


『最新日米口語辞典』


『米英俗語辞典』


『会話作文英語表現辞典』


『最新 和英口語辞典』


いずれも、今から見るとやや古い気もしますが、なにしろ用例が豊富なので、たとえばimpressを引いて

You've got to use your head if you want to impress the boss.
社長に認められようと思うなら、頭を使わなければだめだ。

こんな用例と訳が出てくるので、意外と使えます。


こうした、元々は市販の書籍タイトルだったもののほか、メインとして収録されているのは

E-DIC英和辞典

E-DIC和英辞典

なんだそうで、これの素性がはっきりしないのですが、この辞書の版元である朝日出版社がかつて運営していた、ASAHI PRESS SENTENCEといのがベースのようです。といっても、それがどんなものだったのかが、今となってはよく分からないのですが......。


最初のEDICTは、前から入れていましたが、E-DICのほうは、ネストさんに紹介されて買ってみました。

EPWINGデータではありませんが、Logophileにはそのまま載せることができます。E-DICオリジナルの検索アプリケーションももちろんインストールされますが、さすがにインターフェースが古くさい。


なお、上記の製品版に入っているアプリケーションは32ビット版のみで、最近の64ビットマシンでは起動しません。そのため、64ピット版アプリケーションは別途ダウンロードできるようになっています。

その辺の対応がきちんとしている点は、とても好感が持てます。

06:03 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2016.06.08

# 日本翻訳連盟(JTF)の理事に就任しました

一部の方にはすでにお伝えしておりましたが、本日6/8に開催された総会で正式に承認いただき、このたび

日本翻訳連盟(JTF)の理事

に就任いたしました。

Jtflogo


これまでにも同連盟には、スタイルガイド検討委員(2010年~)、ジャーナル編集委員(2012~)という形で関わってきましたが、翻訳業界の現状についていろいろと思うところもあり、さらにもう一歩を踏み込んでみることにしました。


お堅い組織の中で、個人翻訳者としてどれだけのことができるのかわかりませんが、せいいっぱい、やれるだけのことはやってみようと思います。


今年はまず、「JTF、ちょっと違うかも」と思っていただけるような翻訳祭をめざします。


※私と同時に、通翻クラスタでおなじみの方がもう一人、理事に就任しましたが、きっと本人がブログやSNSで発表すると思うので、ここには書きません。

10:48 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.06.05

# OALDのおまけ小冊子

学習英英辞典の定番OALD(Oxford Advance Learner's Dictionary)は、DVD-ROMの付いた書籍版、しかも旺文社がパッケージにして売っている製品を買うのが簡単です。

上が第8版、下が第9版です。

どちらも、購入すると「活用ガイド」という小冊子を入手できます。「OALD8活用ガイド」と「OALD9活用ガイド」、著者が違うため内容はだいぶ違いますが、どちらも一読をおすすめします。

1606051

※検索すれば誰でも無料でダウンロードできますが、購入者特典みたいな扱いでもあるので、いちおうURLは書きません。


特に、「OALD9活用ガイド」の第2部「OALD9の活用法」に書かれている、

「辞書検索の7ステップ」

というアプローチはおすすめ。

辞書の引き方は、人それぞれいろいろあっていいと思いますが、この「7ステップ」に書かれている概念は抑えておくと役に立つはずです。

OALD8とOALD9は、どちらも単独で起動するアプリケーション型ですが、第8版のほうは

Logophileに載せることができ

て便利です。


また、iOSアプリ版は、この前までOALD8だけでしたが、3月にOALD9が出ていたようです。

しかも、定価は3,600円ですが、アップグレードのオプションがあります。

1606052

OALD8を2015/6/3より前に購入した人は720円で、2015/6/3以降に購入した人は無料でアップグレードできます。

※ただし、アップグレードすると9だけになるのか、8と9の両方になるのかは不明です。試していません。

ところで、冒頭にあげた小冊子の写真。

言うまでもありませんが、ダウンロードできるのはPDFファイルです。これを、Acrobatの印刷オプション「小冊子」で印刷すると、ちゃんと中綴じ製本できるページ順に印刷してくれます(Acrobat ReaderでもOK)。

家庭用プリンターだと最大でA4なので、A5サイズの小冊子ということになります。

念のために書いておくと、「中綴じ製本できるページ順」というのは、たとえば全部で24ページの場合、

1枚目の右がp.1、左がp.24、その裏がp.2とp.23

のようになっている印刷です。

これを中綴じでホチキスどめするわけですが、こういうのを使います。

一見するとふつうのホチキスですが、

1606053

こんな風に90度回転して、中綴じができるようになります。

ちなみに、左のやつは私が学習塾で国語の教師をしていたころから愛用していた30年もの。右のが最近になって買い換えたやつです。


10:46 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2016.06.02

# 「辞書とコーパス1日マスター」のご案内

お知らせしていた翻訳フォーラム2016/大オフは、おかげさまで大盛況のうちに無事終了しました。

当日の参加者はスタッフも含めて140人ほどと、過去最大の規模になりました。そのうち60人くらいは、翻訳フォーラムのイベントに初参加とのこと。

当日流れていたツイートや、その後のブログなどの感想を見ると、内容にはおおむねご満足いただけたようです。

ご参加くださった方、ありがとうございました。

そんな大イベントが終わったばかりですが、今後も翻訳フォーラム主催のセミナーは継続的に実施されます。

その第1弾がこちら。

リンク:「辞書とコーパス1日マスター」(翻訳フォーラム「レッスン・シリーズ」#1) in東京 - パスマーケット

翻訳者に必要な辞書とコーパスの話を、

基礎から実践まで

含めて1日でこなしてしまおうというお得なセミナーです。


具体的に言うと、深井裕美子さんと帽子屋がこれまでにお話ししてきた以下の内容の総まとめということになります。


「訳語の選び方 ~辞書とコーパスを最大限に活用する方法~」(深井裕美子さん)

「JTFセミナー 『辞書・コーパス・用語集』最新情報」(深井さん + 帽子屋)

「続・読ませる翻訳セミナー~辞書引きの実践と、的確な日本語の選び方~」(帽子屋)


今までにふたりの話を聞いたことがない方や、今回のシンポジウムで初めて辞書の話に触れた方は、ぜひご参加ください。

また、これらの講座を一部または全部お聞きになったことがある方にも、復習になる内容ですし、

今までにない新しい情報

もある予定です(なにしろ、辞書をめぐる世界は変化が激しいので)。

実践編のための事前課題があります。実際の翻訳(英日)を通じて辞書の使い方を覚えていただきたいという趣旨です(課題文は、過去の出題と重複しません

なお、このセミナーは100人単位の規模ではなく、課題を添削したうえで解説できるくらいの人数で開催します。お席はだいぶ埋まりつつありますので、お申し込みは、ややお急ぎください。

翻訳フォーラムでは、この「辞書とコーパス1日マスター」を幕開けに、それ以降も連続してセミナーを開催する予定です。題して、

翻訳フォーラム・レッスンシリーズ

なお、こうしたセミナーやイベントのご案内など、翻訳フォーラムに関する情報はすべて、こちらのサイトにまとめてあります(ブックマーク!)。

リンク:翻訳フォーラムからのお知らせ


こちらでご案内しているとおり、レッスンシリーズは早くも第4弾まで予定されています。

2016/7/31(日)
翻訳フォーラム・レッスンシリーズ第2弾「テンスとアスペクト1000本ノック・ワークショップ」(高橋さきの)

今夏予定
翻訳フォーラム・レッスンシリーズ第3弾「アウトライン・リーディング集中講座(仮)」(深井裕美子)(詳細は後日)

今秋予定
翻訳フォーラム・レッスンシリーズ第4弾「語彙カード分類ワークショップ(仮)」(高橋さきの)(詳細は後日)


この内容、先日のシンポジウムにご参加くださった方ならピンとくるかもしれませんね。シンポジウムで概要だけお伝えした内容を、個々のセミナーでもっと掘り下げるという展開です。


第2弾以降も、ご期待ください!

01:10 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.05.28

# 『翻訳のレッスン』、出ました!

かねてよりご案内していたとおり、翻訳フォーラムの4人の共著が昨日(5/27)、無事に刊行されました。


明日のシンポジウムでも販売しますが、おかげさまで「翻訳」カテゴリで1位になってます。

1605271

そして、いよいよ明日は、刊行記念を兼ねた翻訳フォーラム・シンポジウム&大オフです。

ご参加のみなさま、明日お目にかかれるのを楽しみにしています!


それから、こちらは共訳書ですが、すこし前にIT関連の専門書が出ました。

専門書なのでめちゃくちゃ高いですし、監訳の段階でそうとう編集が入っていると思いますが。

併せてご紹介させていただきました。

05:29 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.05.22

# 翻訳フォーラムのサイト、リニューアルオープン、ほか

翻訳フォーラムのシンポジウム、いよいよ来週(5/29)に迫りました。


第三次まで募集しましたが、おかげさまでシンポジウムのチケットは完売。昨年までをかなり上回る規模の開催となりそうです。

その翻訳フォーラムの公式サイトが、リニューアルオープンしました。

リンク:翻訳フォーラムからのお知らせ

講演やセミナーのご案内、 刊行物などの情報、本家FHONYAKU掲示板へのリンクなど、翻訳フォーラムに関する情報をすべてまとめてあります。翻訳フォーラムについては、まずここからどうぞ。

1605221_2


そして、5/29のシンポジウム/大オフが終わった1か月後、6/26(日)には、翻訳フォーラムの新企画、「レッスン・シリーズ」が始まります。

リンク:「辞書とコーパス1日マスター」(翻訳フォーラム「レッスン・シリーズ」#1) in東京 - パスマーケット

5/27に刊行される『翻訳のレッスン』に凝縮した内容をベースに、翻訳フォーラムならではの「翻訳のレッスン」を実地でお届けしようというシリーズ企画です。

その第1弾「辞書とコーパス1日マスター」は、深井裕美子さんと帽子屋が担当します。


簡単に言うと、深井さんと帽子屋が昨年の1年間にあちこちでお話ししてきた内容を、実践演習まで含めてお伝えする、という内容です。

前半で辞書とコーパスの基礎を学び、後半では、事前課題に基づいて辞書とコーパスの使い方を具体的に説明します。


もっと具体的に言うと、

昨年10/15のJTFセミナー(詳細はこちら

と、

3/26、5/14にサン・フレア アカデミーで帽子屋が担当した「続・読ませる翻訳セミナー」

を併せたような形です。が、もちろん、最新の状況にあわせて、辞書環境についての最新情報もあります。


今までにまだ私たちの話をお聞きになったことがない人にまずおすすめですが、これまで散発的に参加くださった方でも、総復習にちょうどいいと思います(辞書環境は日々変わっているので、新しい情報もお見逃しなく)。

ちなみに、事前課題は、サン・フレアさんのときとは別のものを用意します。


ドリンクバー付きで、落ち着いた感じの会場です。

上記サイトで受付中ですが、関心のある方は、お急ぎください。

10:43 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.05.06

# JTF「日本翻訳ジャーナル」、誌面刷新!

JTFの「日本翻訳ジャーナル」、2016年の第1号となる5/6月号(通算283号)が発行されました。

リンク:JTFジャーナルWeb

最新号は、表紙PDFをクリックするとダウンロードできますし、コンテンツの一部はウェブでもお読みいただけます(左からの目次から)。

また、このブログの右カラムにあるPDFの画像リンクからでも上記のページにジャンプします。


そして、今号から誌面を一新し、

新しい連載記事が一気に9本

もスタートしました。

手前味噌は承知で言いますが、読み応えあります。

新連載記事の見出しと執筆者を挙げておきます。

  • 続・翻訳者のための作戦会議室 第1回 -- 井口 耕二
  • メディカル翻訳者のキャリアパス 一流翻訳者になるために -- 石岡 映子
  • いまさらながらの・・・CATツール★超基本 第1回そもそもCATツールって何? -- 加藤 じゅんこ
  • 帽子屋の辞典十夜 第1回「Webster 辞書のなぞ」 -- 高橋 聡
  • 『何でも教えてキカク』 ISO17100認証取得に必要な準備 -- 田嶌 奈々
  • 翻訳品質のランチボックス 翻訳の「品質」とは(1) -- 西野 竜太郎
  • 翻訳者のためのWord再入門 Wordの初期設定 -- 新田 順也
  • 機械翻訳の近未来 ドキュメント翻訳 -- 本間 奨
  • 翻訳テクノロジーを学ぶ ~導入編~ -- 山田 優

PDFは連載記事がメインとなり、そのほかの業界情報やイベント報告は、Web版をご覧いただく形になっています。

なお、これも完全に宣伝になりますが、「続・翻訳者のための作戦会議室」は、昨年まで4年間にわたってイカロスさんの「通訳翻訳ジャーナル」で連載していた「翻訳者のための作戦会議室」に続くシリーズです。

以前と同じく、翻訳フォーラムのメンバー4人のリレー形式でお届けします。


これからも続く連載記事、どうぞご期待ください!

04:59 午後 翻訳・英語・ことばJAT・JTF | | コメント (0)

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2016.05.04

# ミスリード

このタイトルを見て、どんな綴りを思い浮かべましたか?


日本語で使われるこのカタカナ語、元は mislead だと思うんですよね。国語辞典にもそう書いてあります。


《他動詞。「する」と結合してサ変動詞としても用いる》 誤った方向にみちびくこと。
〔新聞・雑誌などで〕見出しが記事の内容と異なること。▽mislead 【学研国語】

mislead
(名)スル(1)誤った方向に人を導くこと。
(2)新聞・雑誌などで、見出しと記事の内容が著しく異なっていること。 【大辞林】

[mislead]
①誤った方向に導くこと。誤解させること。
②新聞・雑誌などで、見出しが記事内容と違うこと 【広辞苑】

岩国、明鏡、新明解には立項がありませんでした。


ところが、最近いくつか見かけた使い方は、どう見ても misread のようです。あるいは、mislead のつもりで、間違った使い方がだいぶ広がっているのかもしれません。

ひとつ目は、実写映画がヒットしているらしい『ちはやふる』です。

1605031

(講談社『ちはやふる』第27巻より)


そして、もうひとつ。ゆうきまさみの『白暮のクロニクル』を再読していて気づきました。

1605032

(小学館『白暮のクロニクル』第4巻より)


上の例は「ミスリードさせられる」、下の例は「ミスリードさせようとする」で、品詞分解するとこうなります。

ミスリードさ + せ + られる

ミスリードさ + せ + よう + と + する

「せ」は使役の助動詞「せる」で、メインの動詞は「ミスリードする」というサ変動詞です。


さて、これが国語辞典にあるような mislead 由来の「ミスリード」だとしたら、他動詞で「<人を>間違った方向に導く」の意味なので、それぞれ

<私が>ミスリードされた

<俺を>ミスリードしようとしやがる

となるはずです。


一方、これがもし misread 由来だとしたら、「ミスリードする」は、「<内容を>誤って読み取る」の意味なので、それぞれ正しい使い方ということになります。


たぶん、末次由紀もゆうきまさみも、mislead か misread か、なんて意識せずに使ったんだと思いますが、編集さんは、何にも思わなかったんでしょうかねー。


調べてはいませんが、活字でも、こういう使い方、広がっているんでしょうか。

10:06 午前 翻訳・英語・ことばアニメ・コミック・サブカル | | コメント (2)

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2016.05.03

# JTFスタイルガイドセミナーのご案内

ちょっと前に掲載した記事で、5月のイベントとしてまとめてご案内しましたが、5月に入ったので、あらためてこちらをご紹介しておきます。

リンク:JTFスタイルガイドセミナー|JTF 日本翻訳連盟


昨年とは、内容と実施の順序が違います。

5/16(月)がツール編。

5/27(金)が日本語ブラッシュアップと入門編。

帽子屋は、最後の入門編を担当します。


5/16(月)のツール編は、午前も午後もハンズオン形式で、人数限定です。お申し込みはお急ぎください。

16日(月)の午前は「TransQAの基礎」

TransQAは、知名度こそまだ高くありませんが、実はいろんなファイル形式に対応できる、かなり高機能なチェックツールです。IT系の翻訳者に、特におすすめ。私自身も、初期に教えてもらったきりなので、改めて学んでみたいと思っています。


16日の午後は「JTF日本語スタイルチェッカーの基礎と応用」

こちらはブラウザベースの手軽なツールなので、社内や翻訳グループで標準ツールとして使うのに向いています。また、こちらの時間帯では正規表現の基本も扱います。


27日(金)の午前は「日本語ブラッシュアップセミナー ~表現重視編~」

昨年のスタイルガイドセミナーにご登壇いただいて以来、サン・フレア アカデミーなどでもすっかり名物となった、磯崎博史さんのセミナーです。しかも、昨年に続き今回はその発展編。残席わずかです。


27日の午後は「スタイルガイド入門」

帽子屋が担当します。スタイルガイドを使ったほうがいい理由。複数のスタイルガイドをうまく使いこなすコツ、など実践的な内容にする予定です。


また、当日は昼食時間(12:30~13:30)を利用して、ランチ会を開催します。午前か午後のセミナーに申し込むとご参加いただけます。食べ物は、持ち込みでもけっこうですし、お弁当を申し込みこともできます。

講師の面々と親睦を深められる、でも飲み会ほどではない、手軽な機会です。


01:02 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.04.29

# 第26回 翻訳祭、始動!

日本翻訳連盟(JTF)が毎年晩秋に開催している翻訳祭


第26回となる今年は、11月29日(火)です。


そして、4/27には、その準備を進める翻訳祭実行委員会の初会合が開かれました。

20160427_committee

これが、今年の翻訳祭実行委員会の顔ぶれです!


例年の翻訳祭をご存じの方であれば、この顔ぶれを見ただけで---というか、そもそもこういう写真が個人ブログで公開されているところからして---、なんか違うと感じませんか?


これまでの翻訳祭実行委員会は、法人会員の理事が委員長を務めるほか、委員も全員、企業会員の方々でした。

JTFは、法人会員(主に翻訳会社)だけで構成される団体ではなく、個人翻訳者も会員に抱える業界団体です。ではあるのですが、ここ数年の翻訳祭は、

個人翻訳者にとって魅力的なコンテンツが少ない

というのが正直なところでした。


翻訳会社だけでなく、個人翻訳者にも意味のあるイベントにしたい---委員長の古谷理事が、そんな思いで、私たちに声をかけてくださり、JTFとしては異例の委員会が成立しました。


このメンバーで、これから魅力的なコンテンツをそろえ、今までにない翻訳祭を作ろうと考えています。


ご期待ください!

12:57 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.04.26

# 翻訳フォーラム・シンポジウム、追加募集

リンク:「翻訳のレッスン」刊行記念 翻訳フォーラム・シンポジウム&大オフ2016 - パスマーケット


すでにお伝えしているように、5/29(日)開催予定のシンポジウムは、一次募集、二次募集とも、おかげさまであっという間に定員に達してしまいました。

そこで、同じお茶の水女子大学ですが、ひとまわり大きい教室に会場を変更して、さらに追加の募集を行うことにしました。


三次募集の開始日時は、以下のとおりです。

4/28(木)18:00~


泣いても笑っても、この募集が最後になります。一次、二次のタイミングを逃してしまった方は、こちらのお時間に、上記サイトにどうぞ。


なお、大オフのほうは、まだ若干名の余裕があります。

翻訳フォーラムの大オフには、分野も経験年数も、実にさまざまな翻訳者が集います。

「今までも、翻訳関係の集まりって行ったことない」という方、特に歓迎です。お待ちしてます!

03:36 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.04.20

# 翻訳フォーラム、今年もシンポジウム

正式に告知が出ましたので、こちらでもご紹介します。


今年も、翻訳フォーラムのシンポジウム+大オフを開催します。

リンク:「翻訳のレッスン」刊行記念 翻訳フォーラム・シンポジウム&大オフ2016 - パスマーケット


日時は、5月29日(日) ← すいません、今年は日曜日です!

場所は、昨年と同じくお茶の水女子大学。


タイトルにもあるとおり、翻訳フォーラムの主宰者ならびに幹事の4人(高橋さきの、井口耕二、深井裕美子、帽子屋)が執筆し、5月27日に出る本の刊行記念でもあります。


上記のサイトに行くとわかりますが、申し込み開始は4/10(日)からです。ただし、今年はチケットの販売を一次販売(4/10~)と二次販売(4/15)に分けました。


ふるってご参加ください。


【4/20】追記

みなさんにうれしいお知らせです。

一次募集、二次募集とも、主催者の予想を上回る早さで定員に達してしまったため、会場を再設定し、定員を増やせることになりました。

三次募集? は、あらためて通知があると思います(翻訳フォーラムのメーリングリスト、Facebook、Twitterなどで)。お見逃しなく!

10:38 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.04.13

# 5月のセミナーをまとめて

先日、5/29(日)に開催される

翻訳フォーラム・シンポジウム&大オフ2016

をご案内しました。チケットの一次販売は4/10(日)の午前10時に始まりましたが、予想どおり数時間で売り切れになりました。

二次販売は明後日、4/15(金)の19:00からです。平日の設定ですが、時間帯も違うので、くれぐれもご注意ください。

お申し込みサイトはこちらです。


そのほか、5月に予定されているセミナー情報をまとめておきます。


サン・フレア・フレア 5/14(土)

リンク:<追加開催>続・読ませる翻訳セミナー ~辞書引きの実践と、的確な日本語の選び方~ | サン・フレア アカデミー

3/26に開催したセミナーが満員御礼となったため、追加開催となりました。内容は3/26と同じです(が、課題文の答案しだいで、細かいところは変わる可能性がありますが)。〆切は5/5だそうです。


JTFスタイルガイドセミナー 5/16(月)、27(金)

リンク:JTFスタイルガイドセミナー|JTF 日本翻訳連盟

昨年に続いて、今年もスタイルガイドセミナー開催します。2日間にわたり、4つの内容があります。

・5/16(月)第1部(10:00~10:00~12:30)「TransQAの基礎」

・5/16(月)第2部(14:00~16:30)「JTF日本語スタイルチェッカーの基礎と応用」

第1部のTransQAは、昨年のJTF翻訳セミナーでも紹介したツールで、相当に高機能で汎用性も高いツールです。私自身、昨年の話を聞き損ねていたので、とても楽しみにしています(概要は知っているのですが)。

第2部は、こちらで手軽に使えるチェックツールですが、正規表現などについても詳しく説明します。

この日は、第1部、第2部ともハンズオン形式で、それぞれのツールの使い方をじっくり学ぶことができます。ただし、少人数制なので、お申し込みはお早めにどうぞ!


・5/27(金)第1部(10:00~12:30)「日本語ブラッシュアップセミナー ~表現重視編~」

・5/27(金)第2部(14:00~16:30)「スタイルガイド入門」

第1部は、昨年のスタイルガイドセミナーにお越しいただいてからすっかり評判になり、サン・フレア アカデミーなどでもセミナーが続いている磯崎さんの日本語セミナーです。しかも、今回はさらに上級編。こちらも、早々に満席にることが予想されます。

第2部は、スタイルガイドの基本を、実例に沿って解説します。


翻訳フォーラム・シンポジウム&大オフ2016 5/29

そして、5月最後の日曜日が、すでにご案内しているこちらです。


みなさん、どうぞふるってご参加ください!!

04:26 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.03.21

# 基本と無意識化~関西セミナーの報告を兼ねて

先週の金曜日(3/18)、お伝えしていたとおりJTF関西セミナーに登壇してきました。

会場は、2012年1月以来4年ぶりに訪れた大阪大学中之島センター。曇天ながら温かい一日でした。

1603181


当日は、「翻訳の基礎スキルを見直そう」と題して、日本語文法や英文法、辞書など基本スキルの話をしてきました。常に自分の訳文を「疑い」、「説明する」ためにはこんなスキルがあったほうがいい、という趣旨でお話ししたつもりです。


ちょうどその翌日、東京では村井章子さんの講演があったらしく、そこに参加した方のこんな報告を拝見しました。

「翻訳は英文法よりも文脈」「翻訳者が『この言葉の意味は・・・主語はどれで・・・目的語は、・・・文型は;・・・』」と考え始めたらその時点で問題と思った方がよい。

自分が、文法用語なども交えて英文法の話をしてきたばっかりだったので、なるほどと思い、ぜひ私も直接お話をお聞きしたかったと思ったしだいです。


19日の村井章子さんのお話を聞いて、上の言葉を曲解してしまうような方は、会場にはいらっしゃらなかったのだろうと思います。

言うまでもありませんが、この言葉は「英文法を軽視していい」ということではけっしてないはずです。

適切な英文法知識に基づいて的確に読むのは当たり前

であって、その前提に立ったうえで

文脈をしっかり読み取ることが大切

だということでしょう。話を聞いていない私の解釈なので、もっともっと深い意味があるのでしょうが、少なくともこの点だけは間違っていないと思います。


どんな分野だろうと、基礎スキルというのは意識の上にちょくちょく顔を出すのではなく、何も考えずに運用できるようになっていなければならない。つまり、

無意識化(自動化)

されているべきものです。だからこそ「基礎」スキルなわけです。

そうした基礎があって初めて、もっと上級のスキルや自分なりのノウハウがその上に構築される。


ただ、無意識に運用できるのはいいのですが、自分がいったん無意識化した領域を、

自覚的にきちんと説明

できるかどうか。そこは今一度、自分に問うてみる必要があるのではないだろうか――私が考えている、そして関西セミナーで伝えたかったのはそういうことでした。

別に、教師として誰かに伝授するとか、そういう話ではありません。

「なんで自分がここをこう解釈したのか」、「この言葉を選んだのはなぜか」ということを、翻訳者は求められたらちゃんと説明できたほうがいい、そういうことです。

あ、そうだ。

今回ご参加くださったある方が、前日にくださったメールにこんな句を書いてくれました。

明日は浪速か陸奥か、男帽子屋どこへ行く

なかなかうまい言葉^^ とても励みになりました。ありがとうございます。

11:39 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (1)

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2016.03.15

# 翻訳者の辞書 - データ編 - 第3回

第3回は、LogoVista(以下、「LV」)データについて、何点か補足です。


1. ユーザー登録

LVタイトルを買うと、なんらかの形で製品登録があるので、その段階でユーザー登録もしているはずです。ユーザー登録すると、購入した製品のインストーラを再ダウンロードできるなど、いろいろメリットがあります。購入したら、ユーザー登録、製品登録をお忘れなく(ポイントも付くし)。

2. インストール

Jamming/LogophileやEBWin4などの辞書ブラウザのように、「ブラウザに辞書データを登録する」という方式ではないことにご注意ください。数年前、マシンを移行するとき私自身が完全に忘れていたので、メモっておきます。


オンラインで購入すると、

Lvinstaller

こういうインストーラがダウンロードされます。インストーラといっても、実行可能(exe)ファイルで、実際には自己解凍形式の圧縮ファイルです。

ファイル名はまったくの暗号なので、どこかにメモしておかないと、

どれが何のインストーラだか

わからなくなります。


これを実行すると、一時フォルダにファイルが展開され、自動的に実行が始まります。

パッケージ製品の場合は、CD-ROMをドライブに入れると勝手にインストーラが起動してインストールが始まると思います。裏でやってることは、オンライン版のときと同じです。


LV製品を初めてインストールすると、辞書ブラウザもいっしょにインストールされ、そこに最初の辞書が登録される仕組みです。2つ目以降は、ちゃんと同じブラウザに追加されていきます。


なお、LV辞書のインストールディレクトリは、こういう構成です。

Lv3

デフォルトではProgram Files以下だったと思いますが、各辞書タイトルのデータがあるのは、

LogoVista\LVEDBRSR\DIC

です。汎用ブラウザで読み込むときは、この場所を見つけなければならないので、覚えておいてください。

DIC以下の辞書別フォルダも、ネーミングにちょっとクセがあります。

GENIUS43 …… G4

GENIUS53 …… G5

は見当がつきます。その上の「GEN2005」はG大です。

フォルダ名でどの辞書かわからない場合は、そのフォルダを開いてヘルプファイル

Hanrei

を開けば、

Hanrei2

ヘルプ形式で凡例が開くので、名前もわかります。


3. インストーラの再ダウンロード

ユーザー登録してあれば、LVサイトでログインしてください。「ユーザーマイページ」の下のほうに、こういうセクションがあります。

Lv

ここで、「所有製品(シリアル番号)の確認/新規ご登録と再ダウンロードサービス」に進むと、

Lv2

このように、再ダウンロードのボタン(左)があり、各製品のシリアル番号が書いてあります。


インストール回数に制限があるとのことです。ただし、LVさんに連絡すれば解除してくれる(その方法を教えてくれる?)そうなので、その点はあまり心配なさそうです。


4. 汎用ブラウザへの登録

Jammingの場合

[オプション]から[辞書の追加と削除]ダイアログを開き、

Jamming1

上の図で赤く囲ったボタンを押します。

※LogoVista辞書は、「システムソフト」という名前です(互換性のある昔のフォーマットのこと)。

ファイル選択ダイアログが開いたら、上で説明したDICフォルダの中で目的の辞書フォルダを探し、

Jamming2

IDXという拡張子のファイルを選択してください。

もし、数字にIDX(またはidx)という拡張子がある場合、そちらは選択しません。このようにIDX(またはidx)ファイルが複数あるタイトルは、汎用ブラウザでうまく読み込めない確率が高いようです。


Logophileの場合

LogophileDicManagerを開いて、[辞書を追加]ボタンを押します。

Logo1

次に選ぶのは、Jammingとは違って辞書の入っているフォルダです。

Logo2

DIC以下にある目的のフォルダを選べば、それを読み込めれば勝手にIDXファイルを認識してくれます。対応していなければ、読み込めずにそこで終わります。


EBWin4の場合

グループ化しない場合は[ファイル]→[辞書の追加]を選択します。

グループを作っている場合は、(そのグループを選んだ状態で)[ファイル]→[辞書の編集]を選んで[追加]を押します。

あとは、Jammingのときと同じようにIDXファイルを選択します。対応していなければ、読み込めずにそこで終わります。


5. 全文インデックスの作成

Logophileの場合、LogophileDicManagerで登録した後で、必ずインデックスを作成することになります。その時点で「全文」オプションも選択すれば、全文インデックスが作成されます。


EBWin4の場合、残念ながらのLogoVista純正データに対しては全文インデックスを作成できないことになっています。

ただし、その状態でも全文検索はできる(インデックスなしの全文検索。Jammingと同じ)のですが、当然、時間はかかります。全文インデックスを作りたい場合は、次の 6. の手順が必要です。


6. LVタイトルのEPWING化

LVタイトルをEPWING化できるユーティリティソフトウェアがあります。

リンク:dessed

ほかならぬ、EBWin4の作者様が公開しているソフトウェアです。Windows GUI版であれば、特に難しいこともなく使えると思います。

ただし、例によって最近のたタイトルはアウトです。


以上、LogoVista辞書の注意点と、それを汎用ブラウザで使う場合の特徴でした。


02:03 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2016.03.13

# 翻訳者の辞書 - データ編 - 第2回

間が空いてしまいました。

第2回は、今後も主力になりそうなLogoVistaデータです。

リンク:高精度翻訳ソフトと豊富な電子辞典|ロゴヴィスタ LogoVista


LogoVista(以下、「LV」)辞書については、まず以下の点をおさえておきましょう。

  • LV専用の辞書ブラウザがある。
  • 専用辞書ブラウザは、使い勝手が今ひとつ。
  • EPWING辞書ブラウザでも、LV辞書は使える。ただし、ある時期以降の辞書タイトルは不可。
  • インストール回数に制限がある(ただし、連絡すると解除してくれるとのこと)。
  • 内容をコピーすると出典情報が付いてくる。

LVタイトルを買うときは、本家とAmazonで価格変動をよく見ておくといいようです。というのも、本家では頻繁に50%引きなどのセールをしている(会員になる必要があります)一方、Amazonでもかなり安い場合があるからです。

ちなみに、『研究社 新英和大辞典第6版』は、定価が14,688円とかなりのお値段ですが、本家の「感謝セール」価格だと8,640円、Amazonでも同額です。

また、ダウンロード版だとさらに安くなるので、パッケージが不要な場合は、それもおすすめです(ダウンロード版で買った場合、インストーラは会員ページから再ダウンロードできるようになっています)。

以下、主なLVタイトルと、辞書ブラウザ対応状況をまとめておきます。
(私が持っていないタイトルも多いので、対応状況などの一部は、ほかの方のレポートなどに基づいています)

以下、タイトルはLogoVistaサイトに書かれているとおりに記載しました。

また、対応状況についての記号は次のとおりです。

◎ …… 正常に表示され、問題なく使える
○ …… ほぼ問題なく使える(必要に応じ補足)
△ …… 表示や機能に問題あり(必要に応じ補足)
× …… 使えない(必要に応じ補足)


■国語辞典系

広辞苑 第六版 DVD-ROM版-動画・画像・音声付きM版-動画・画像・音声付き

Koujien6
(発売日情報なし)

すいません、私自身がLV版を持っていないので、対応状況はわかりません。わかりしだい追記します。


岩波 国語辞典 第七版 新版

Iwakoku_3
(2013/8/30発売)

Jamming = △(文字化け、位置ずれ)
Logophile = ◎
DDWin   = △(文字化け、位置ずれ)
EBWin4  = ○(記号に一部文字化け)

本家LogoVistaでも、[検索結果]リストに一部文字化けがある?


大修館「明鏡国語辞典 第二版」

Meikyou_4
(2013/2/15発売)

Jamming = △(文字化け)
Logophile = ◎
DDWin   = △(文字化け)
EBWin4  = ◎


三省堂「新明解国語辞典 第七版」

Shinmeikai_3
(2013/2/15発売)

Jamming = △(文字化け、位置ずれ)
Logophile = ◎
DDWin   = △(文字化け、位置ずれ)
EBWin4  = ○(文字化け、位置ずれ)


大修館「日本語大シソーラス-類語検索大辞典-」

Jthesaurus
(発売日情報なし)

Jamming = ◎
Logophile = ◎
DDWin   = ○(下記参照)
EBWin4  = ◎

DDWinでは「クロス検索」が最大の検索方法ですが、他の3つはインデックスの組み合わせでもっと詳細な検索ができます。

本家LogoVistaでは、「クロス検索」と「条件検索」で違った結果が出ます。


研究社日本語表現活用辞典

Jhyougen
(発売日情報なし)

Jamming = ×
Logophile = ×(登録できるが表示されない)
DDWin   = ◎
EBWin4  = ◎

商品説明では、

一般の国語辞典ではなかなか引くことができない「日本語のコロケーション(語と語のつながり)」が分かる画期的な日本語辞典です。

と書かれていますが、インデックスの構成があまり良くなく、本家LogoVistaでさえ使いにくい気がします。内容的にも、少納言やNinjalがあれば要らない程度かも。


研究社 日本語口語表現辞典

Jkougo
(2015/2/27発売)

Jamming = ×
Logophile = ×(DicManagerがエラーになる)
DDWin   = ×(登録できるが表示されない)
EBWin4  = ×(登録できるが表示されない)

ひとつ前の「表現活用」と違って、中身はなかなかおもしろいのですが、LogoVistaブラウザ以外の対応は全滅。もったいない気がします。


研究社 日本語コロケーション辞典

Jcolo
(2015/2/27発売)

Jamming = ×(要注意。下記参照)
Logophile = ×(DicManagerがエラーになる)
DDWin   = ×(登録できるが表示されない)
EBWin4  = ×(登録できるが表示されない、場合によってはエラーになる)

Jammingでは、登録しようとしてエラーになるだけでなく、高い確率でJamming自体が起動しなくなります。

新しい辞書タイトルを追加しようとしてJamming自体が起動しなくなっ場合の対処方法は、本エントリの最後に書いてあります。


■英語辞典系

大修館 「ジーニアス英和大辞典」

Genius

これもLV版を持っていないので、対応状況はわかりません。わかりしだい追記します。
(たしか、大丈夫なはずです)


研究社 「リーダーズ英和辞典 第3版」

R3
(2014/3/28発売)

Jamming = △(文字化け、位置ずれ。下記参照)
Logophile = ○(下記参照)
DDWin   = △(文字化け、位置ずれ)
EBWin4  = △(文字化け、位置ずれ。下記参照)

LVタイトルを純正以外のブラウザでは正しく表示できないと話題になり始めたのが、そもそもR3あたりからでした。
しかも、R3は初期バージョンのインデックスに不備があってパッチが公開されるなど、商品展開上の不備も目立ちました。

R3のときは、大久保克彦さんが外字マップを作ってくださったので、文字化けはだいぶ解消されました(Jammingでは一部不完全など)。外字マップの設定方法については、こちらをご覧ください。

リンク:Project Zephyr


研究社「リーダーズ・プラス」

Rplus
(発売日情報なし)

これも、私自身がLV版を持っていないので、対応状況はわかりません。わかりしだい追記します。


なお、ご存じのことと思いますが、リーダーズ2 → リーダーズ3の編纂と、リーダーズ・プラスの編纂は別系統です。内容に一部重複はありますが、リーダーズ3にはプラスの内容がすべて反映されているわけではありません。

たとえば、

Dab Dab(ドリトル先生に出てくるアヒル)
Eagle Has Landed(Jack Higginsの小説、および同名映画)

のように、プラスにしか載っていない情報もかなりあります。

上に書いたのはR3とプラスそれぞれ単品ですが、セット商品も売っています。


研究社 新英和大辞典第6版

Eiwadai
(発売日情報なし)

研究社 新和英大辞典第5版

Waeidai
(発売日情報なし)

この2つも、私自身は持っていないのですが、各ブラウザで問題なく使えると聞いています。


研究社 「新編英和活用大辞典」

Shimpen
(発売日情報なし)

Jamming = ◎
Logophile = ◎
DDWin   = ◎
EBWin4  = ◎


研究社新英和(第7版)・和英(第5版)中辞典-音声付き

Eiwachu
(発売日情報なし)

Jamming = ◎
Logophile = ◎
DDWin   = ◎
EBWin4  = ◎


メリアム・ウェブスター英英辞典

Mw
(発売日情報なし)

Jamming = ◎
Logophile = ◎
DDWin   = ◎
EBWin4  = ◎

あちこちで言ったり書いたりしてますが、このタイトルは紛らわしいので注意してください。本来のタイトルは

Merriam Webster Advanced Learner's Dictionary

つまり、OALD、Longman、COBUILDなどと同じ学習レベルの辞典です。ご注意ください。


大修館 「ジーニアス英和(第5版)・和英(第3版)辞典」


G5

(2016/2/5発売)

Jamming = ×(要注意。下記参照)
Logophile = ×(DicManagerがエラーになる)
DDWin   = ×
EBWin4  = ×

R3のときはまだ何とか対応できましたが、最近出るタイトルについては、汎用ブラウザでもうどうにもならないようです。

G5が出たので、LogoVistaのサイトではG4はもう売っていません。新旧を比較してみたい、という用途でもないかぎり、今からG4を買おうという人はいないかもしれませんが、Amazonに行くと、まだG4も在庫があるようです。残りわずかかも。


■その他

旺文社「ロイヤル英文法改訂新版」

Royal
(発売日情報なし)

Jamming = ◎
Logophile = ◎
DDWin   = ◎
EBWin4  = ◎


岩波理化学辞典第5版

Iwascience
(発売日情報なし)

Jamming = ◎
Logophile = ◎
DDWin   = ◎
EBWin4  = ◎


岩波 生物学辞典 第5版

Iwabio
(2016/3/11発売)

Jamming = ×(要注意。下記参照)
Logophile = ×(DicManagerがエラーになる)
DDWin   = (×)
EBWin4  = (×)

こちらは、私が検証したわけではなく、翻訳フォーラムのメーリングリストで報告があったものです。

≪6/15追記≫

コメント欄に情報をいただきましたので、追記しました。


南山堂医学大辞典 第20版

Nanzando
(2105/10/2発売)

Jamming = ×(登録できるが検索できず)
Logophile = ×(同上)
DDWin   = (×)
EBWin4  = (×)


南山堂 医学英和大辞典第12版

Nanzando12
(発売日情報なし)

Jamming = ◎
Logophile = ◎
DDWin   = (◎ 未調査ながら、たぶん)
EBWin4  = ◎


研究社 医学英和辞典第2版

Kenkyushaigaku

Jamming = △(リンクに一部文字化け)
Logophile = ◎
DDWin   = (◎ 未調査ながら、たぶん)
EBWin4  = ◎

以上3タイトルの情報、ご提供いただいたべんがらさん、間接的に井口富美子さん、ありがとうございます。m(__)m

LogoVista辞書タイトルを登録しようとして、

Jammingが起動しなくなった

場合の対処方法を書いておきます。

登録した辞書の情報は、Jammingをインストールしたディレクトリにある以下のファイルに書き込まれています。デフォルトのままなら、Cドライブ以下です。

C:\Program Files (x86)\Jamming\初期設定\dicpath

これをテキストファイルで開くと、こんな風になっています。

Dicpath

この最後に、追加してエラーになった辞書のパスも入っているはずです。

そのなかで、

[SS-NEW]
B:\Dictionaries\LogoVista\LVEDBRSR\DIC\KQJCOLLO\KQJCOLLO.IDX

という2行を削除してください。

※ファイルの末尾にある [END] は削除しないこと!

こうすれば、Jamming自体はまた正常に起動するようになるはずです。

私が持っていないため対応状況を書いていないタイトルについて、もしご存じの方はコメント欄またはメールでご連絡いただけはれば、随時追加します。

04:33 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2)

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2016.03.10

# 共著書近刊のお知らせ

情報解禁になったので、こちらでも紹介しておきたいと思います。

リンク:近刊のご案内『翻訳のレッスン』


翻訳フォーラム(Nifty時代風に言うと、FHONYAKU)の4人、

高橋さきの
深井裕美子
井口耕二
高橋聡

による共著です。

1603101


私のいろいろな業界活動の土台になっているのは、やはり翻訳フォーラムです。

その翻訳フォーラムがこれまで開催してきた勉強会やシンポジウムの、、いわばエッセンスを凝縮したような1冊になりました。

なお、リンク先ページの末尾にもありますが、今年の翻訳フォーラム・シンポジウムは、5/29(日)です!

08:42 午前 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.03.01

# 翻訳者の辞書 - データ編 - 第1回

先日、フェローの受講生さんに、

「通翻ジャーナルや翻訳事典で辞書の記事を読んでいるが、おすすめの辞書でも手に入らないことがある」

という指摘をいただきました。ごもっともでござる。


記事だと、紙面の都合でどうしても具体的にデータ/書籍のことまでは書けないので、補足の意味で、何回かに分けて具体的なデータを書いておこうと思います。

基本的には、専門辞書は対象としない予定ですが、目についたものは載せるかもしれません。

ということで、第1回はEPWINGデータです。

現在(2016/3/1)、無理をせず入手できるEPWING仕様のデータは、ほぼ以下のとおりです。


ジーニアス英和大辞典 CD-ROM版


ビジネス技術実用英語大辞典V5 英和編&和英編 CD-ROM版



広辞苑 第六版 DVD-ROM版


主なところでは、たったこれだけです……。


たしかに、「おすすめされても手に入らない」というのは、そのとおりでした。


でも、ご安心ください。これ以外は、LogoVista版を買えば、EPWING仕様の辞書ブラウザ(Logophile、EBWin4)で使えます。

LogoVista版については、次回以降にまとめてご紹介します。


主な辞書で、LogoVistaまで含めてもほぼ入手できないタイトルは、以下のとおりです。


ランダムハウス英語辞典 第二版 CD-ROM版

※書影は載せましたが、中古まで含めて在庫はありません。

小学館さんは、CD-ROM版の販売をすっかりやめ、電子辞書へのデータ提供と、アプリ版の展開に限定してしまったようです。かわりに、と言ってはなんですが---

最近、goo辞書にランダムハウスが入りました。

リンク:ランダムハウス英和大辞典 - goo辞書 英和和英

オンラインでCD-ROMとおなじ内容をすべて閲覧できますし、簡単ながら検索オプションもあります。


なお、以下の書影の製品が中古で出ていることもありますが、これはEPWINGではないようです。私も未確認です。

1603011

それから、ONESWING規格の製品というのも、いくつか見つかります。

1603012_2

などです。

ONESWINGというのは、EPWINGの後継規格ということなのですが、LogophileとEBWin4はこの仕様に対応していないので、ご注意ください。

03:35 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (1)

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2016.02.29

# センテンス単位のインターフェース

長くなるので前エントリーでは触れませんでしたが、CATツールが翻訳の世界に持ち込んだいちばん大きいマイナスは、センテンス単位のインターフェースです。

センテンス単位の翻訳が当たり前になりすぎたせいで、ぶつ切り翻訳が当たり前になって、それがもう普通にまかり通りつつあります。

いろいろな事情で、CATツール案件を引き受けざるを得ない場合は(私も、一部はそうです)、できるだけツールのインターフェースから自由になった形で翻訳することをおすすめします。

文章は、全文を通してひとつの世界を構築しています。

その世界を構成する次の単位が段落、最小単位が文です(単語だとか、そういう話は別として)。その段落と段落、文と文は、いろいろな関係でつながっています。

接続詞などなくても、文と文の間にはつながりがあるものです。抽象→具体とか原因→結果の展開だったり、だいてい原文を読むときには無意識にそういう関係を読み取っています。あるいは、前方予測性とでも言いましょうか(なにか専門用語があるのかもしれませんが)、前の文を読んだら、次の文は当然こうなるという流れがありますよね。逆に、後方参照性かな、後ろの文を読むとき、前の文が前提になっているという流れ。

そういう文と文のつながりは、ふつうなら訳文にも反映するところです。

ところが、センテンス単位のインターフェースに接していると、そういう関係がたちまち見えなくなってしまいます。自分がどんなに注意しているつもりでも、目の前に置かれた「ワク」の力というのは想像以上に強いものです。

以下、具体例を挙げてみます。

As humanity evolves, we find more efficient ways to communicate. Grunting led to talking, which led to writing, which led to letters. We put those letters down with giant feather quills, then with printing presses, then with small plastic keys, and sent them out into the world first as bound books, as telegrams, and as emails. But it's only now, in space year 2015, that we've truly understood our ultimate form of communication ― emoji.
http://www.theverge.com/2015/11/4/9668136/emoji-keyboards-put-ghosts-and-smiling-poop-at-your-fingertips

某定例トライアルにも出題した文章です。

第1文で、"more efficient ways" を読んだ時点で、読み手はおそらくwaysの説明を期待します。第2文には、その期待どおりwaysの例示(talking→writing→letters)が続きます。例示であると同時に経時的変化です。その変化軸が第3文にも続きます。しかも、第3文は前半(feather quills→printing presses→small plastic keys)と後半(bound books→telegrams→emails)のそれぞれに流れがあります。

そういう流れ・つながりを翻訳に反映しないと、たぶん読みにくい日本語になるはずです(実際には、thoseとかthenとかキーワードがあるので、素直に訳していけば大丈夫でしょう)。

これは元がニュースなので、単純な産業翻訳案件とは違う、という感想もありそうなので、ではもうひとつ。家電製品の取扱説明書を見てみましょう。ネットでぱっと見つけて拾ってきた文書です。

Most electric cooking equipment uses two different electrical circuits. The heating elements usually run on 220 volts, and accessories such as lights, timers and rotisserie motors run on 110 volts. There are a few notable exceptions. Some smaller "apartment" cooktops run on 110 volts. Also, in some fixed-temperature switch applications, 110 volts is applied to a 220 volt surface unit (burner) to achieve a "low" heat setting.
http://www.appliancerepair.net/oven-repair-1.html

これも、第1文の "two different electrical circuits" を読んだ時点で「その2つの説明が続くよね」という予測がはたらきます。第2文でその予測が解決されます。第3文の "a few notable exceptions" でも同様の予測がはたらき、第4文と第5文がその説明になっています。

第1文の前方予測性を考えたら、第2文の訳としては、たとえば「ひとつは~、もうひとつは~」と訳したいところです。少なくとも「220ボルトで動作する~と、110ボルトで動作する~です」くらいにはしたくありませんか?

では、こういう原文が、こんなインターフェースで目の前に出てきたらどうでしょう。

1602291

第1文のことを忘れて、第2文を「~は220ボルトで動作し、~は110ボルトで動作します」と訳しても、たぶん合格でしょう。むしろ、第2文だけの独立性が保たれているのだから、既訳として残すには下手をすると、こっちの訳し方のほうが推奨されかねません。

いろいろ候補を考えたうえで、こういう訳になったのなら、それはそれで、その人の翻訳流儀と考えてもいいでしょう。が、ひとつのセンテンスに対してひとつの訳文を対応させ、そのほかの訳の可能性をみじんも考えなかったとしたら、それはすでにかなり重症です。

こういう訳で合格(もしくは推奨)という世界で仕事をしたいかどうか、それはもちろん個人の自由です。

ひとつだけ注意したいのは、こういうセンテンス単位で作業していて、「自分は意識しているから大丈夫」と思って接している場合です。本当に大丈夫かということ。

いえいえ、人のことを言ってるのではありません。わが身をふり返っての実感を書いているだけです。

12:08 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (4)

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# 翻訳 "支援" ツールという幻想

自分自身が長年のTrados使いでもあり、今でもTrados講習を担当したりしていますが、それでいて、というかそうだからこそ、翻訳 "支援" ツールの限界や危険性については、あちこちで論じてきたつもりです。


翻訳 "支援" ツールが本格的に登場してもう20年。

そろそろ、翻訳 "支援" ツールなんて幻想だということを、業界全体で認め、アプローチを変えるべきときに来ているのではないだろうか、そんな話をまとめてみました。


・翻訳 "支援" ではなく、翻訳 "業務支援" ツールだということ

・翻訳メモリー

・必然的な品質の低下

・低下した文章への慣れ

・せめて、囲いこみを

1. 翻訳 "業務支援" ツールということ

前から言っていることですが、CATツールは翻訳 "支援" ツールではなく、翻訳 "業務支援" ツールです。

これは、成り立ちの経緯から考えればごく当たり前と言えます。

CATツールは「翻訳にかかる経費をおさえたい」という発注側の発想から生まれました。具体的に言うと、「同じ翻訳に何度もお金を払うのは無駄だ、なんとかしてくれ」という注文です。

そこには当然、「効率改善」も含まれますが、これも「翻訳の効率」ではなく「翻訳業務の効率」です。

「翻訳品質の向上」という考え方も、多少はあったかもしれませんが、そこでいう「品質」というのは、せいぜいが用語の統一(もう一歩進んだとして、表現の統一)まででしょう。原理的に言って、CATツールがそれ以上の品質向上につながるわけがありません。むしろ、品質の低下を招いているはずです(この点は後述)。


どんな点から考えても、翻訳者からの要請で生まれたものではありません。

用語や表現の統一程度の「品質の保証」なら、(心ある)翻訳者なら自分でやっていたでしょう。「効率化」も同様で、(気のきいた)翻訳者なら自分なりの効率化を図っていました。

発注側や翻訳会社が、「翻訳者の負担を減らそう」と考えたのではないことも明らかです。だって、もしそうなら、「マッチ率によって単価に傾斜をつける」のはおかしいからです。


なかには、指定されてではなく自主的にCATツールを使っていて、「傾斜単価に利用されてはいない」とか、「自分なりの効率化と品質向上に有効」という人もいるようですが、それは例外的でしょう。翻訳品質については、なにか別の形で補っているはずです。そもそも、この後で述べるように、自分の過去訳を参照するのなら一般のメモリー運用とはだいぶ事情が異なります。


2. 翻訳メモリー

CATツールの成果で唯一、翻訳メモリーという名のデータベースは、限定付きで意味があると思っています。Tradosなどで実現されている、あいまい検索まで可能なデータベースです。

Google先生も、かなりアバウトな検索結果を出してくれますが、あれは広すぎます。翻訳メモリーのあいまいさ加減は、過去の翻訳を検索・参照するときには確かに便利です。

ただし、翻訳メモリーが便利なのは

自分の過去訳を参照する

ときに限ります。他人の残した既訳---運用されているたいていの翻訳メモリーはこれです---は、実はほとんど参考になりません。なぜなら、翻訳メモリーというのは、まさに

メモリー = 記憶

であるべきで、そこには原文と訳文だけでなく、

訳したときの思考経路

まで残っていなければならないからです。自分の過去訳であれば、翻訳メモリーに残っている原文と訳文だけでなく、自分自身の

メモリー = 記憶

の中に、その思考経路が残っているものです(よほど古いとダメなこともありますが)。「ああ、この案件で、あのときのファイルでは、あんな表現はこう訳したんだっけ」みたいな。

他人が残した既訳にそんな関連付けはありません。しかも、メモリーを使う以上は「既訳に合わせる」のが大前提です。すると、どういうことが起きるのか---


3. 必然的な品質の低下

訳したときの思考経路をたどれないまま、「既訳に合わせ」て他人様の既訳をなぞったり、部分的に利用したりして、ちゃんとした訳文を書くのはかなり大変です。容易に、変てこな日本語になってしまいます。

必然的に、翻訳メモリーを使って訳し終えた全体の翻訳は、前のバージョンより劣化します。同じメモリーを使い続けていけば、たとえば同じ製品のマニュアルは版を重ねるごとに、どんどん劣化していくはずです。

かつては、いったん大きい翻訳プロジェクトが終わると、最終版を仕上げつつ、終わったメモリーを精査するというプロセスを経ている会社もありました。おかしな既訳を直すとか重複を削除するとか、そんな作業を私もかつてやっていました。

でも、今やどこでもそんなことしてないようです。その証拠に、心ある翻訳者がCATツールを使っている現場には、必ずと言っていいほど「このメモリー使えない~!」という怒号が飛び交っています。


もちろん、一律に「既訳に合わせてください」ではなく、「既訳がおかしかったら、どんどん直してください」と言ってくる会社もありますが、それって、そもそもCATツール使うという前提が破綻しています。


4. 低下した文章への慣れ

そうやって、成果物が劣化し続けて20年以上経った結果どうなったか。

たぶん、日本中のユーザー全体が

おかしな日本語に麻痺

してしまいました。

たかだか20年ですが、その間に情報の密度がどんどん濃くなってきたからでしょうか、ユーザーが麻痺という方向に適応するには十分な時間だったようです。

あげくの果てに読まされるのが、こんな文章です。

より速くよりスマートに翻訳しながら、統一感のあるブランド展開を実現します。 SDL Trados Studioは、翻訳プロジェクトおよび企業用語集の編集、レビュー、管理を行う言語サービス部門向けの包括的な翻訳環境を提供します。 世界中の20万人を超えるプロの翻訳者が信頼するソフトウェアで、世界トップクラスのローカライズ済みコンテンツを提供し、グローバル市場での販売やマーケティング活動をサポートしましょう。
http://www.sdl.com/jp/cxc/language/translation-productivity/trados-studio/

これが、2/29時点で SDL Trados Studio 2015 のトップに出てくる日本語です。

ちなみに、原文はこう。

Translate faster and smarter while presenting a unified brand to the world. SDL Trados Studio is the complete translation environment for language professionals who want to edit, review and manage translation projects as well as corporate terminology. Deliver world-class localized content to support your global sales and marketing efforts with software trusted by over 200,000 translation professionals worldwide.

トップに堂々とこういう日本語を出しているということは、これがこの会社の考える

スタンダードな日本語

ということになりますよね。

市場シェアトップのCATツールが、そういう会社の製品であるという事実は、もっと知っておくべきでしょう。


5. せめて、囲いこみを

たぶん、IT 業界、特にローカリゼーション業界はもう手遅れでしょう。この20年間の流れを逆転させることはできません。IT 界隈は、上に挙げたような日本語に毒されきっていて、ユーザーももう慣れっこになりました。

こんな日本語でいいのなら、これからもどんどん翻訳 "支援" ツールを使っていけばいい。が、せめてこんな日本語は IT 業界だけに囲い込んで、そこから外には出てこないようにしたい。

同じ IT でも、Web ページやマーケティング素材にCATを使わせるところがありますが、まったく意味ありません(そういう案件が、私のところにも来ますが、ぜんぶベタで訳してからCATツールに流し込むという本末転倒で対応しています)。

翻訳 "支援" ツールというのは幻想だったと、業界もそろそろ認めてはどうでしょうか。少なくとも、そういうウソはやめたほうがいい。

10:41 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (2)

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2016.02.25

# タイピングの話

テリー斉藤さんが、先週のJTFツールセミナーの話をもとに、タッチタイピングの話を書いてらっしゃるので、私も自分のタイピングのことを書いてみることにしました。

リンク:タッチタイピング | 翻訳横丁の裏路地


私はもうずっと、かな入力ですが、かな入力は通翻クラスタでもごくごく少数派です。私の知っている限りで、私のほかに数人しかいません。

「かな入力のほうが打鍵数が少なくて効率的」

というのが一般的な言われ方ですが、そうとは限らない部分もあり、少なくとも単純に2倍の効率にはなりません。

  • QWERTYキーボードで、ローマ字入力は3段しか使わない(数字は除く)。かな入力では4段使う。しかも、段数だけでなく使うキーの範囲も、かな入力のほうが広い。

    109key

    かな入力だと、ローマ字入力ならほぼ使わない赤線で囲った範囲のキーが必要です。特に右手小指のカバーする範囲は広すぎ(だから、右手のホームポジションを1つ右にずらすという流儀もあるらしい)。それから、数字の入力にはどうしてもテンキーを使うので(そのつど英数入力に切り替えるのでない限り)、右手の移動範囲も広がります。

  • 濁音・半濁音のときは、濁点・半濁点を追加で打つので、ローマ字のときと打鍵数は同じ。
  • 拗音を含むときは、「nyu」に対して「にゅ」なので、2/3にしかならない。
  • 句点・読点と、長音記号を入力するとき、いちいちShiftキーが必要。

トータルすると、打鍵数はローマ字入力の1/2とはならず、ざっくり言って2/3くらいでしょうか(正確な数字はどっかにありそう)。


そういう効率ではなく、かな入力のメリットはやはり、日本語の文字をそのまま打てるというところでしょう。

> 自分がローマ字入力するのに、頭にアルファベットなんて飛び交っていないけどなぁ。初学者用の話なんだろうな
(2/18、テリーさんのツイートより)

たしかに、ある程度以上ローマ字入力をしていれば、アルファベット → 日本語という変換プロセスはもうとっくにルーチン化しているはずですが、それでも、ローマ字入力する方の脳内がどうなっているのか、私にはまったくわかりません。


通翻クラスタの一定年齢以上の方と同様、私もタイピングの初めは英文タイプライターでした。英語の恩師のところで、けっこう早くから触ってはいましたが、購入して本格的にタイピングを覚えたのは大学に入ってから。

1602251

当時けっこう割高でしたが、このデザインにひかれました(だから、Apple IIcが出たときも、すぐ飛びついた。この手のデザインに弱いんだな)。

英語屋でしたから、当然タッチタイピングは覚えました。

アルファベット入力にはそのくらい慣れていましたが、それでも、日本語ワープロが登場してJISキーボードを初めて目にしたとき、最初っからローマ字入力という選択は考えもしませんでした。

せっかく日本語を直接入力できるんだから、使わないともったいないじゃん

そう考えた記憶が、ぼんやりあります。

日本語入力の習得は我流でしたが、アルファベット打鍵でタッチタイピングの基本はできていたので、それを日本語に置き換えただけで済んだようです。


その後、編集プロダクションにいたとき、富士通の親指シフトも覚えました。あれは確かに早かったと思いますが、その後は使う機会がなく、きれいに忘れちゃいました。

誤入力のパターンを見ていると、かな入力かローマ字入力かわかることがありますよね。

ときどきアルファベット1文字が残っていることがあります。「入r力」みたいに。これ、かな入力ではまずありえません。

逆に、かな入力で多いのが濁点と半濁点の間違い。

プロパティ

と打ったつもりが

ブロパティ

になっていたりとか。「フ」を打ってから濁点・半濁点を追加するからこうなるわけで、ローマ字入力なら最初から buとpuで、たぶん間違えようはありません。


そんな風に、かな入力ならではの誤入力はけっこうあるので、私は上の例に出した「プロパティ」のように自分の仕事で多用する単語は、どんどん単語登録するようになりました(そういえば、単語登録するときの読みの付け方も、かな入力とローマ字入力では違ってきます)。

その単語登録の件数が今ではかなり膨大になっています(今数えてみたら、3,000超)。「かな入力+単語登録の効果」で言えば、総合的な入力負荷は、何もしていない人の半分くらいになっているかもしれません。


それでも、我流は我流なので、増田式は聞いてみたかったな……。

10:52 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (12)

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2016.02.18

# 4月10日は、仙台TRACでセミナー

2016年の上半期、セミナーなどに登壇する予定がだいぶ固まってきました。一部はすでにお伝えしましたが(末尾に改めてまとめます)、もうひとつ追加。

JAT(日本翻訳者協会)のサイトにはまだ案内が載っていませんが、メーリングリストで流れたので、こちらでもお知らせしておきます。

JATの地域活動委員会のひとつである東北地区活動委員会(TRAC)にお呼びいただきました。4月10日(日)、仙台で私のセミナーと、午後にはお花見があります。

【追記】
JATのページにも告知が出たようなので、リンクを貼っておきます。

リンク:イベント セミナー | 第8回TRAC定例会 「辞書と文法とスタイルガイド - 読みやすい日本語を書くために」&TRACお花見 | 日本翻訳者協会


メーリングリストで届いた案内は以下のとおりです。



「辞書と文法とスタイルガイド - 読みやすい日本語を書くために」

開催日:2016年4月10日
時間:10:30 am - 1:30 pm
場所:仙台市民会館 第6会議室
定員:30名
会費:JAT会員1,500円 / 非会員2,500円
お花見:2:00 pmより(場所は未定、食べもの&飲みものの屋台があります)
お問い合わせ:trac@jat.org

セッション内容:
自分の書いた訳文について説明責任をはたすには、きちんとした根拠が必要です。原文側でも訳文側でも、その根拠の土台となるのは、文法、語法、語義の正しい理解です。そのためには、文法の基本を理解し、正しい辞書の使い方を知る必要があります。
このセミナーでは、まず最低限の文法用語を復習しつつ、翻訳者が理解すべき概念という観点から、日英の文法を再確認します。次に、電子媒体が当たり前になった今だからこそ、知っておきたい辞書の使い方を説明します。
もうひとつ。お客さんに読んでもらうためには一定のスタイルガイドに沿うことも必要です。その工夫についてもお話しします。
そのうえで、辞書・文法・スタイルガイドを武器に読みやすい日本語を仕上げるコツをいっしょに考えましょう。
2014年の2月、IJET-25のプレイベントでお邪魔して以来、2度目の仙台です。みなさん、よろしくお願いいたします!
*セッションは日本語で行われます。



仙台には、2014年---ああ、もうあれから2年も経つのですね---に、IJET-25のプレイベントでお邪魔しました。

個人的にも初めての仙台でしたが、このときも雨男の面目躍如、仙台地方としても数十年ぶりという大雪に見舞われてしまいました。そのときの様子は、こちらの記事に。

リンク:# IJET-25、プレイベント仙台のご報告

このプレイベントがきっかけで、この地に東北地区活動委員会「TRAC」が誕生しました。


そして、今年の6月には、この仙台でIJET-27が開かれます。

IJET-27 in Sendai! | Japan Association of Translators

Ijet27_banner


花見という楽しいイベントに誘われたからでもありますが、いや、前回できなかった仙台~石巻観光をしたいからでもありますが、いや、たぶんこれもIJET-27のプレイベント的な扱いなんだと思います。それに少しでも協力しようと考えたしだいです。


仙台および周辺のみなさん、またよろしくお願いいたします! 東北地方で花見なんて、人生初めて!

ということで、当面のセミナー予定をまとめておきます。一部、まだ記事にしていない新着情報もあります。

3/18(金)14:00 ~ 17:00

JTF関西セミナー
「翻訳の基礎スキルを見直そう」


3月26日(土)14:00~17:00

サン・フレア アカデミー
「続・読ませる翻訳セミナー ~辞書引きの実践と、的確な日本語の選び方~」


4月10日(日)10:30~13:30

JAT東北地区活動委員会
「辞書と文法とスタイルガイド - 読みやすい日本語を書くために」


5月16日(月)14:00~16:30
5月27日(金)14:00~16:30

JTFスタイルガイド委員会主催
「2016年JTFスタイルガイドセミナー」

昨年と同様、セミナーは2回行われます。私がお話しするのは27日で、同日の第1部には磯崎さんも登壇なさいます。また、16日には、昨年のセミナーで話題になったTrans QAの詳しい解説と、もっと手軽なWeb版スタイルガイドチェッカー(西野さん開発)の話もあります。


01:23 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.02.14

# 辞書世界の新しいトレンドか - ATOK辞書のラインアップ

昨年1年くらいかけて、「翻訳者が使う辞書環境」のことを自分なりにいろいろと調べ、あちこちで話したり書いたりしてきたことは、すでに何回かお伝えしました。

おかげで、現状と対策がおおむね見えてきたかな、というところでしたが、ここにきて(2016年2月)、また新しいトレンドが出てきました。前エントリでも書いた、ATOK(ジャストシステム)の連携辞書です。

もちろん、これまで慣れてきたEPWING辞書ブラウザなみの検索機能はないのですが、LogoVistaの新タイトルが汎用ブラウザに対応しなくなった今となっては、このATOK連携辞書が充実していけば、新しい選択肢になりうるかもしれません。


現時点で、どんな辞書があるのか、まとめてみました。

リンク先はすべて、ジャストシステムのオンラインショップです。特に、各辞書の版にご注意ください。

ジャストシステムの製品は、会員になっておくと若干お得です。

また、たいていはパッケージ版とダウンロード版があり、ダウンロード版のほうが若干お得。インストールCDがないと不安になるかもしれませんが、製品登録しておけば、会員専用ページで再ダウンロードできるので、心配はありません(インストール時に必要なシリアル番号も表示されます)

会員価格でダウンロード版だと、一般価格のパッケージ版より1,000円くらい安くなるようです。


明鏡国語辞典・ジーニアス英和/和英辞典 /R.4 for ATOK

パッケージ版

ダウンロード版

以下の辞書のセットです。

・明鏡国語辞典 第2版。現時点で最新版であり、LogoVista製品と同等です。

・ジーニアス英和 第4版/和英 第3版。ジーニアスは、最新(G5)ではなく、ひとつ前のバージョンです。ご注意ください。


三省堂 スーパー大辞林・敬語のお辞典 for ATOK

パッケージ版

ダウンロード版

「スーパー大辞林3.0」という、書籍版『大辞林 第三版』を増補したデータです。これ、単体で入手できるのは、この製品だけのようです(そのほか、iOS用などのアプリあり)。


広辞苑 第六版 for ATOK

パッケージ版

これは、パッケージ版しかないみたいですね。今のラインアップのなかでは比較的古い製品で、インターネット連携機能について「対応ブラウザはInternet Explorerのみです」などと書いてあるのは、今だったらどうなるのか気になるところです。


角川類語新辞典 for ATOK

パッケージ版

ダウンロード版

これも、単体のデジタル製品は出ていません。アプリケーションはあります。1981年に出た版のままですが、まあ新語を求めるタイプではないので問題ないでしょう。

ただし、こちらはATOK連携辞書ではなく、連想変換辞書なので、変換中に参照できるタイプです。イミクルには対応していません。


ロングマン英英/英和辞典 for ATOK

パッケージ版

ダウンロード版

以下の辞書のセットです。

・ロングマン現代英英辞典(LDOCE)4訂増補版

・ロングマン英和辞典

ロングマンは、最新版ではなく第4版です。もっとも、新語ではなく基本語彙を確認する目的のほうが多いでしょうから、あまり問題はないかもしれません。

参考までに、LDOCEの最新は第6版(2014年)ですが、最新版はCD/DVD-ROM付属の商品がなく、どうもオンラインのサブスクリプションが付くだけのようです。

CD/DVD-ROMが付属する範囲の最新は第5版で、LDOCE5であれば、単体として使うほか、Logophileでも使えます。

ロングマン英和辞典のほうは、SIIなどの電子辞書に載っているのと同じ版です。というか、新版は出ていません。

これも、単体のデジタル製品はなく、電子辞書か、アプリしかありません。


医学辞書2015 for ATOK

パッケージ版

ダウンロード版

すいません、こちらは私の専門外なので、よくわからないのですが、製品紹介ページに、辞書の詳しい説明がありません。

収録語数50万語以上。日本語入力システム「ATOK」と連携し、医療用語や病名をスムーズに変換。電子カルテの入力はもちろん、各種書類やレポート作成がスピーディーに行えます。

辞書の素性が書いてないとは……。まるで●eblioの一部のデータみたいで、これはよろしくありません。あ、こちらの製品情報ページに載ってました。

リンク:医学辞書2016 for ATOK

出典は必ず確認して購入しましょう^^


ライフサイエンス辞書Plus 2015 for ATOK

ダウンロード版

ダウンロード版だけです。また、こちらは「専門用語変換辞書」なのですが、辞書を検索したときにも表示されるということです(井口富美子さん情報)。

これも、製品についての詳しいページはこちら。ライフサイエンス辞書は、定評があります。

主なラインアップはこんなところですが、ほかにも以下のようなデータがあります。タイプ別に名前だけ挙げておきます(私は使ったことありません)。

専門用語変換辞書

・NHK 漢字表記辞書2015 for ATOK(ダウンロード版のみ)

・共同通信社 記者ハンドブック辞書 第12版 for ATOK(ダウンロード版のみ)

・社団法人日本原子力学会 原子力用語辞書2010 for ATOK(ダウンロード版のみ)


連携辞書

・角川俳句歳時記 第四版 for ATOK(パッケージ版、ダウンロード版)

・建築・土木用語変換・対訳 for ATOK(ダウンロード版)

01:35 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2016.02.10

# 翻訳中の頭と作業インターフェースの話

翻訳に使うインターフェースについては、これまでにも、

side A: # 原文-訳文の縦並びと横並びについての仮説

などで、何回か書いたことがありました。


今回は、翻訳しているときの「頭のはたらき」との関係から、このことをまたちょっと考えてみました。もちろん、今回も個人的な感覚の域を出ない話ではあります。

翻訳フォーラムなどで翻訳の話をすると、よく

英語と日本語の間を、何十回、何百回と行き来する

というような言い方をします。1秒間に何万回とか、ヘルツで測れそうな極端な言い方もありますが ^^


たしかに、翻訳中の翻訳者の頭の中では、英語と日本語の間を、意識的にでも無意識にでもいろんなレベルで行ったり来たりします。

もしかすると、翻訳インターフェースって、こういう頭のはたらきと無関係ではないのかもしれない、というのが今回の仮説です。


1602101

これは、2007までのTradosの画面です。Tradosと言っても専用のインターフェースがあるわけではなく、Word上でこのように、原文と訳文が交互に並んでいました。

今でも、特定のジョブにはこのインターフェースを使っています。定型の文や表現がそれなりに出現するからですが、定型以外には、既訳の再利用という目的はほとんどなく、むしろ過去の言い回しを避けるために使っています。


1602102

こちらは、特になんの指定もなく、いちばんフリーハンドで作業できるときの一例。

パラグラフ単位で、原文の下に訳文を書いていき、最後に訳文を消して納品状態にするという、わりと原始的な使い方です。Tradosなどの翻訳支援ツールは使っていませんが、こういうバイリンガル状態で残しておけば、過去の訳し方はだいたい参照できるものです。


さて、支援ツールの有無はありますが、上ふたつの使い方で共通しているのは、インターフェース上で

原文と訳文の間を行き来しやすい

という点です。同じファイル上で、どこにでもカーソルキーだけで移動でき、英語と日本語のあいだが、なんというか地続きになっています。


1602103

一方、こちらがTrados Studioのインターフェース。

横並びになったうえに、英語と日本語のあいだを行き来するには、デフォルトだと[F6]キーを押す必要があります。感覚的にわかりやすくするために、私は[Tab]キーを割り当てていますが、それでも英日間を移動するたびに、なんというか

よっこらしょ

と、敷居をまたぐような感覚があります(少なくとも、私には)。


Trados Studioに限らず、最近の翻訳支援ツールはこれと似たインターフェースが多いようです。


まず、英語と日本語がそれぞれ「枠」で囲まれていますよね。その時点でもう、上のような地続きの感じがほぼ失われています。だから、英日間を移動するたびに、壁の存在が意識され、「英語と日本語の間を、何十回、何百回と行き来する」という感覚が阻害されてしまいます。


頭の中で無限回の行ったり来たりをする以上、その「頭」と「手」と「目」をつなぐインターフェースも、同じように自由に行ったり来たりできなければいけないはず。


そう考えると、どんな形にせよ、

翻訳者の思考に不要な負荷をかける

インターフェースには、くれぐれも用心すべきです。

03:42 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.02.04

# LogoVistaから「G5」

『ジーニアス英和辞典 第5版』のデータ版が、書籍の発売(2014年12月)から1年以上経って、ようやく登場しました。

ご覧のとおり、LogoVista版です。

リンク:LogoVista

和英は第3版なので、これまでのデータ版と変わりません。

そのほかの特長などは、LogoVistaのサイトに詳しく載っています。学習英和辞典として、さっそくアップデートしておいて損はないタイトルでしょう。

ただし、

EPWINGブラウザにはまったく非対応

です。LogoVista純正ブラウザを使うしかありません。


EPWINGブラウザでひととおり試した結果は、以下のとおりです。


Jamming

[辞書の追加と削除]で登録でき、辞書ウィザードにも出てきます。ところが、登録後にJammingを起動しようとすると、

1602043_2

というアプリケーションエラーが出て、起動すらできなくなってしまいます。こんなエラー、初めて見ました。

試しちゃいけませんが、もしこうなってしまった場合は、

<Jammingのインストールディレクトリ>\初期設定\dicpath

というファイルをエディタで開き、該当する行を削除してください。ファイルの末尾にあると思いますが、具体的には、こんな2行です。

1602041


Logophile

LogophileDicManagerで登録しようとすると、その時点でエラーが出ます。Jammingの場合より、たちがいいとも言えます。


EBWin4

やはり、追加しようとした時点でエラーになります。


dessedで変換

それじゃ、とうことで、LogoVistaデータをEPWINGデータに変換する秘密兵器、dessed を使ってみました。

一見すると、変換は正常に終わります。各ブラウザで登録もできました。が、実際に検索してみると、まともに機能しません。Jammingでは見出しだけ、Logophileではなんだか空っぽ、EBWin4はアプリケーションが死にます。

こうなってくると、もう本格的にLogoVistaに対する運動を展開するしかありません。

以下、私が考えている要望です。

まず、いちばんいいパターン。

正規購入者だけEPWINGデータを使えるようにする

たとえば、EPWINGブラウザの開発者にも協力してもらって、IDXファイルを読み込むときにシリアル番号を要求するようにするとか。難しいかなぁ。

でなければ、LogoVistaさんのほうで、EPWING変換サービスを始めてもらう。これ、有料でもいいと思うので、そしたらそこそこ商売になって現実的な気がします。どうでしょう、LogoVistaさん。


それがダメであれば、

LogoVistaブラウザを、とにかく使いやすくしてもらう

改めてLogoVistaブラウザを使い込んでみて、ここがいかん、こうしてほしいという要望をまとめようと思っています。で、それをもってLogoVistaに乗りこみます。

もし、この方向で前進したら、その次に、

LogoVistaブラウザで、EPWINGデータも読み込めるようにしてもらう

そうなったら、現行のEPWINGブラウザが不利になりそうですが……。

01:59 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (1)

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2016.02.01

# JTF関西セミナー「翻訳の基礎スキルを見直そう」

こちらも、ようやく告知できるようになりました。

3月26日(土)のサン・フレアより前に、JTF関西セミナーに登壇します。昨年の8月(ほんま会)に続き、予想外に早く大阪行きということになりました。

リンク:JTF関西セミナー 第4回「翻訳の基礎スキルを見直そう」

3/18(金)14:00 ~ 17:00

です。

案内の詳細にもあるとおり、翻訳の基礎といっても、「原文の読解とか訳出の定石よりもっと手前の、翻訳者としての土台」の部分についてお話しする予定です。

・辞書のこと(残念ながら、今回は簡略版です)

・英語と日本語の文法の基礎

・スタイルガイドや一般的な表記のこと


おそらく、多くの翻訳者にとってはもう常識、という話かもしれません。でも、どのトピックも、私自身がこの数年でいろいろ実感してきたテーマでもあります。


たとえば、上のほうに「お話しする」と書きました。これ、「お話する」ではなく「お話しする」と書くのが本来は正しいと言われています。その理由を、適切な言葉できちんと説明できるでしょうか。

言ってみれば、そういう「翻訳者としての理論武装(ちょっと大げさかな)」に必要な基礎ということです。


今のところ、予定としては当日の午前中に大阪入り、翌日3/19(土)にちょっと遊んでから帰る、というところかなぁ。

03:43 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.01.29

# 続・読ませるシリーズ

2013年から2014年にかけて、全4講座、各講座2回ずつ開催し、ひとまずご好評のうちに終了した「読ませるシリーズ」。

その続編の開催が決まりました。

リンク:続・読ませる翻訳セミナー ~辞書引きの実践と、的確な日本語の選び方~ | サン・フレア アカデミー

3月26日(土)14:00~17:00です。


今回は、昨年から続いて個人的な研究テーマになっている辞書の話と、旧・読ませるシリーズを合体したような内容にする予定です。


どんな辞書をどうやって引けば、原文をちゃんと読み解き、読みやすい日本語にできるのかをいっしょに考えます。


辞書についての情報も、昨年12月以降の内容が反映されています。


また、タイトルからご想像いただけるように、分野はITに限定しません。もともと前のシリーズも、最初は「読ませるIT翻訳」と題しておきながら、IT分野以外の参加者も多くなったので、こちらも途中から分野を限定せずに出題するようになったという経緯があります。


今回、シリーズ化するかどうかは未定ですが(あれ、タイトルに「シリーズ」って付いてるのか……)、興味のある方はご参加ください。


なお、3月・4月にはほかにもセミナー等への登壇予定があるのですが、まだ告知が出ていないので、告知があり次第、あらためてお伝えしたいと思います。

11:22 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2016.01.28

# 『翻訳事典2017年度版』

アルクさんの翻訳事典、本日発売です。

今年度は、図々しく2か所に顔を出しています。

昨年10月15日、深井さんと私が辞書の話をしたJTF翻訳セミナーの取材記事が、pp.17-23

昨年9月に、新田さん、遠田さんと一緒に講師を務めた「翻訳パワーアップ合宿」の取材記事が、pp.65-68

にそれぞれ載っています。


アルクの佐藤さんは、もともとセミナー委員も務めていらっしゃるのですが、JTFセミナーの内容がこれほど詳しい記事になるのは初めてかもしれません(いつもは、JTFジャーナルのイベントレポートだけ)。

パワーアップ合宿のほうは、佐藤さんやライターさんが、丸2日間の日程のほとんどにつきっきりで取材してくださいました。


JTFセミナーのほうは、私が昨年1年ずーっと続けていた辞書の話と、基本的には同じです。

もちろん、そのときどきで自分の発見を次々と追加しているので、8月の話と10月、12月で、取り上げている情報は少しずつ違っています。

昨年の10月に出たこれ、

(こちらはイカロスさん)

も、セミナーと基本的に同じですが、ノウハウがもう少し詳しく書いてあります。

『翻訳事典2017年度版』、今年もなかなか充実しています。


巻頭特集「わたしの提言」には、井口耕二さん。


「ジャンル別 訳文吟味教室」の出版翻訳編は、あとでじっくり見てみたい。


「パソコン基本のツボ」(pp.73-79)には、しんハムさん登場! ほんま会でシリーズ展開した内容の圧縮活字版です。


「人 ヒト ひと」コーナー(p.91~)にも、知った顔がちらほら。おっ、最近プライベートも充実しまくっているという噂の、ほら、あの人も。


p.135からは、昨年「翻訳コンサルタント」というめずらしい仕事を始めた目次さん!


翻訳大賞の実務部門は、猫先生が講評。

10:17 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.12.29

# Merriam Webster - オンラインの有料版と無料版

昨日のエントリで、ランダムハウスの日本語版がほとんど入手不可と書きました。

現在、電子データ版をほとんど入手できないもうひとつの大物が、これ。

Webster's Third New International Dictionaryです。

Random House Websterについてのエントリでもちらっと書いたとおり、"Webster"というブランドは誰でも使えるようになっていますが、Third New International は、現在のMerriam-Websterにつらなる、いわば「正統派Webster」の最新版です。

最新版といっても発行は1961年。

つまり、私と同い年なわけで、とても「最新」とは言えない。第4版の編集が進んでいるという噂もありますが、いつ出るものやら定かではありません。

したがって、正統派をうたうMerriam-Websterとして情報がこれより新しいのは、

こちらのCollegiate版(11th)ということになります。


では、Merriam-Websterさんは最近お仕事してないのかというと、そんなことはなくて、やはり現在はオンライン版が充実しています。

しかも、無料版と有料サブスクリプション版があるので、その比較も含めてご紹介しておこうと思います。

無料版はこちら。

リンク:Dictionary and Thesaurus | Merriam-Webster

基本的な特徴は、英英の各種オンライン辞書について書いた以前のエントリに書きました。

Websterの伝統にのっとった、百科事典的に詳しい説明が特長です。また、メインの語義のほか、やさしく言い換えた語義が載っていたり、学習辞典へのリンクがあったりするのも親切。

一方、こちらが有料サブスクリプション版。

リンク:Merriam-Webster Unabridged

1512281

その名も Unabridged。

年間29.95ドルなので、KODの半分くらいですが、1冊だけでこれ、と考えると割高かもしれません。


では、無料版と有料版を比較するために、commodityという単語を引いてみます。

「ハードウェアがコモディティ化した」という使い方があります。コトバンクを見てみると、

コモディティとは一般化したため差別化が困難となった製品やサービスのことをいう。

と解説されていますが、この語義が載っている辞典はまだわずかです(手元で確認できたのは、Longman Advanced American Dictionary 2nd、American Heritage 5th、リーダーズ第3版くらいでした)。


まず、無料版から(クリックして拡大してみてください)。

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赤線で囲んだのが、最近の用法に当たる語義です。語釈はすこし違いますが、1 c と 4 がどちらも該当します。1はeconomic goodとしての下位分類、4はもっと広い使い方ということでしょうか。

いずれにしても、こういう新しい用法がちゃんと収録されていました。さすがです。

ちなみに、See commodity defined for English-language learners というリンクがあります。このリンク先にあるのは、Merriam Webster Advanced Learner's Dictionary の内容。LogoVistaさんが『メリアムウェブスター英英辞典』という曖昧な名前で売っているのと同じです。


では、次に有料版。

1512283

無料版の 1 c と同じ語義が、2 c として立項されています。が、無料版の4のような詳しい語義はありません。


有料版のほうが役に立たない……という単純な話ではありません。新しい用法の情報が少ない分、本来の歴史主義に即して、archaic というラベルの付いた語義が 1 として立項され、例文も載っています。


要するに、有料版のほうは、Third International で止まってはいるものの正統派Websterの伝統を守りつつ、新しい用法も慎重に採り入れている。いわば、学究的な内容だということ。

対する無料版のほうは、多くのユーザーの役に立つよう無料で提供し、新しい使い方もどんどん紹介していくという現実路線。

そういう違いなのでしょう。無料版と有料版の差別化としては、なかなか妥当だという気がします。

それにしても、無料でこれだけの充実度。感謝です。

12:03 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.12.27

# ランダムハウスの特色、日英も比較しつつ

Random House Webster(ランダムハウス英和大辞典の親本)を買ったというエントリで、

> ランダムハウスのほかにはあまり見ない語義が載ってたりすることもある。

と書きました。


ランダムハウスの最大の魅力は、

語義の分類が細かく丁寧な(場合が多い)こと

です。

その一例を挙げてみます。

引いてみたのは、party という単語。

日本語版である『小学館ランダムハウス英和大辞典』と、英語版である Random House Webster's Unabridged Dictionary の語義を並べて書いてみます。

日本語版が上の行、英語版が下の行(青字)です。語義以外の情報や例文、【11】以降の俗語などは、適宜割愛しています。


【1】社交的な集まり,会合,パーティー:
 a cocktail party カクテルパーティー
1. a social gathering, as of invited guests at a private home, for conversation, refreshments, entertainment, etc.: a cocktail party.

【2】
(1)(ある目的・任務などのために共に行動する)団体,グループ,一行[隊],(愛好者)仲間,連中;(動物の)一群
 a party of pilgrims [tourists] 巡礼者[旅行者]の一行
2. a group gathered for a special purpose or task: a fishing party; a search party.

(2)(通例,2人以上の)(レストランなどの)顧客,常連;(行事などへの)参列[参会]者,同席者,一行
11. a person or, usually, two or more persons together patronizing a restaurant, attending a social or cultural function, etc.: The headwaiter asked how many were in our party; a party of 12 French physicists touring the labs; a party of one at the small table.

(3)(特定の任務を帯びた)小部隊,分隊,分遣隊:
3. a detachment, squad, or detail of troops assigned to perform some particular mission or service.

(4)(論争・紛争・問題などでの)支持団体[グループ].
4. a group of persons with common purposes or opinions who support one side of a dispute, question, debate, etc.

【3】*しばしば P-*政党:
5. a group of persons with common political opinions and purposes organized for gaining political influence and governmental control and for directing government policy: the Republican party; the Democratic party.
6. the system of taking sides on public or political questions or the like.

【4】党派,派閥,結社;党派心,派閥的精神(partisanship):
7. attachment or devotion to one side or faction; partisanship: to put considerations of party first.

【5】*法律*
(1)訴訟当事者:原告または被告.
8. a. one of the litigants in a legal proceeding; a plaintiff or defendant in a suit.

(2)(証書・契約書などの)署名[記入]人*to**:
8. b. a signatory to a legal instrument.

(3)(犯罪の)加担者,共犯者*to, in**.
8. c. a person participating in or otherwise privy to a crime.

【6】(行動・計画などの)関係[関与]者*to, in**:
9. a person or group that participates in some action, affair, plan, etc.; participant: He was a party to the merger deal.

【7】*主に英話**おどけて*問題[話題]の人,特定の個人;人:
 an odd old party 変な老人.
10. the person under consideration; a specific individual: Look at the party in the green velvet shorts.

【8】電話の相手:
12. a person participating in a telephone conversation: I have your party on the line.

【9】(パーティーに似た)行為,大騒ぎ,…パーティー;…し合い[騒ぎ]
13. any occasion or activity likened to a social party, as specified; session: The couple in the next apartment are having their usual dish-throwing party.

【10】(しばらく続く)幸運な[都合のいい]時;楽しいこと:
14. an advantageous or pleasurable situation or combination of circumstances of some duration and often of questionable character; period of content, license, exemption, etc.: The police broke in and suddenly the party was over for the nation's most notorious gunman.


日英では、収録の順番が違っており、大項目と小項目の分類もすこしずつ違っています。このあたり、日本語版の編集でいろいろ工夫していることが感じられて、おもしろいところです。

ここで注目したいのは【10】(英語版の14)の語義です。具体的な「パーティー」ではなく、「お楽しみはこれからだ」みたいに使うときの語義です。


そのほかの辞書では、大辞典から学習辞典までいろいろ見てみましたが、この語義は立項されていません。

用例まで細かく見ていけば、同じような内容はあるのですが、だいたい「パーティー」の項に吸収されているようです。

The ~ is over. パーティーは終った;((略式))楽しいことはもうおしまい.【G大、1の項】

The party is over and I'm still basking in the afterglow of renewing old friendships.【うんのさん】

The party's over. ((口)) お楽しみはおしまい.【R3】

大切なのは、ランダムハウスではこれが独立したひとつの語義として立項されているということです。

以前、類語辞典についてのエントリで、類語かどうかのカテゴリー分けに意味があるという意味のことを書きました。

それと同様、ある辞書がどういう語義を立てているか(あるいは大項目、小項目などの分類も)という観点は、辞書の編集方針を反映し、辞書の特色となるポイントです。


ただし、細かく立項しているほうがいい、と言っているわけではありません。それぞれの辞書の特徴だという話です。当然ですが、各種の国語辞典を見ても、こういう違いはあります。


ちなみに、OED ではこうなっていました。

9. b. Phrases: the party is over: enjoyment must stop; the happy or easy times are at an end; to keep the party clean: to act responsibly; to conform to accepted patterns of behaviour.

ということは、ほとんどこの句でしか使われない語義を、ランダムハウスはわざわざ立項したとも考えられます。

そういえば、英和大辞典のうち、G大と研究社英和大は、LogoVistaなども利用すれば今でもそろえられますが、ランダムハウスだけは、辞書ブラウザに使えるデータがほぼ入手不可になっています。

201512271_2

あいかわらず電子辞書には収録されており、アプリもあるようですが、小学館さん、CD-ROMの再版を考えてくれないものでしょうか。


12:49 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.12.08

# Random House Websterを買ってみた

こんな辞書を買いました。

私が買ったのは米国内で出ていた中古版で、配送料も入れて3,400円くらいでしたが、今はもっと高くなっているようです。

10/21に注文して、船便ではるばる……12/7に到着。中古ですが、書籍自体もけっこうきれいで、CD-ROMもちゃんと付いてました(しかも、ビニールのスリーブが未開封だった!)。

タイトルは Random House Webster's Unabridged Dictionary

これはいったい、Random Houseなんでしょうか、Websterなんでしょうかw


ランダムハウスというと、日本では小学館から出ている『小学館ランダムハウス英和大辞典』をさすのが一般的です。

初版が1973年に出て(4巻本)、その後1979年に1巻本が出ました。余談ですが、1980年に大学に入ったとき、私の恩師(故人)が入学祝いにこの1巻本をくださいました。

そして、今も出ている第2版の出たのが1993年。以来、英和大辞典の定番中の定番として、CD-ROM版が出たり(現在は入手困難)、電子辞書にも必ず収録されるようになっています。アプリも出ています。

第2版の序文を見ようとしたのですが、電子版には入ってませんね(CD-ROM版も、DAYFILER収録版も)。

ジャパンナレッジに簡単な解説だけありました。

米国版第2版にはない見出し語3万語と語義5万を追加し、用例は米国版の6万5,000に11万を加えた17万5,000にのぼります。(中略)米国版に不足しているイギリス英語、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドはもとより、アフリカ・中南米など第三世界の英語まで幅広く収録しています。


そう、日本語版は、英語版にない編集が入ってるんですよね。それから、ランダムハウスのほかにはあまり見ない語義が載ってたりすることもある。


そんなわけで、小学館ランダムハウスのもとになった英語版がほしかったのですが、定本だった

Random House Dictionary of the English Language

は、望ましい形では手に入りそうにありません(試しにAmazonで検索してみてください)。実際、この名前で検索すると、Wikipediaも

Random House Webster's Unabridged Dictionary

にリダイレクトされます。

つまり、私が今回買ったのは、タイトルこそちょっと変わっていますが、中身は小学館ランダムハウスの定本と同じらしいのでした。

さてさて、そうなると、このタイトル Random House Webster's を不思議に思われる形もいらっしゃるかもしれません。

「Webster」の名を冠した辞書については、Wikipediaの解説をご覧ください。

リンク:ウェブスター辞典

(英語版はこっち


私が---たぶん、これをお読みの多くの人も---直接、見たり使ったりしたことがある、いわゆる「Webster の辞書」は、1961年に出た

Webster's Third New International Dictionary

でしょう。

ところが、"Webster"という名称が固有の登録商標としての権利を失ってしまい、あちこちの出版社がいわば「大辞典」の代名詞のように "Webster" の名を冠するようになったんだとか。日本で言えば、「言海」が一般名になっちゃって、「岩波大言海」とか「大修館言海」とか「角川・ザ・言海」とか「小学館 言海ナレッジ」とか「ベネッセ言海」みたいに乱立したようなもんか。


ちなみに、LogoVista版『メリアムウェブスター英英辞典』をお持ちの方は、[ヘルプ]→[凡例]を開いてみてください。

なお、『メリアムウェブスター英英辞典』というのも、これはこれで紛らわしい名前です。LogoVistaさんに再考を求めます。原題は、下のスクリーンショットにもあるとおり、

Merriam-Webster Advanced Learner's Dictionary

です。

1512083

「ウチ以外の "Webster" は信用できるとは限らないからね」と断言しています。ここんとこ、日本語版のWikipediaには書いてありませんが、英語版ではこう解説されています。

the only succeeding dictionaries that can trace their lineage to the one established by Noah Webster are those now published by Merriam-Webster.

つまり、Merriam の付く辞書だけが、ノア・ウェブスターさんからの直系である、と。

じゃあ、その直系の辞書は今どんなのがあるかというと、英日でメインになるのは、

Merriam-Webster Advanced Learner's Dictionary

Merriam-Webster Collegiate Dictinary

くらいです。1961年に出たInternational Thirdの電子版というのも、なかなか手に入りません。

さて、Random House のほうは、1966年に

The Random House Dictionary of the English Language: The Unabridged Edition

を出版。これが最初の『小学館ランダムハウス英和辞典』の底本ですね。で、1987年に第2版を出す。その時点では、まだ

The Random House Dictionary of the English Language, 2nd Edtion

だったわけです。別に "Webster" という名前を借りなくたってよかったと思うのですが、その後、Random House Webster's になって今日に至る、と。


なお、CD-ROMはXPまでしか正式に対応していないようでしたが、Windows 7 64bitでもちゃんとインストールでき、動いています。ただ、一部文字化けは起きています。

1512084


10:28 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.11.21

# 今年最後の辞書セミナー ~ ノウハウを中心に

こちらでの告知が遅くなりました。


私が今年の後半にあちこちでやってきた辞書セミナーについては、以前こちらにまとめました。

リンク:# 辞書について思うこと


そして、今年最後(来年あるかどうかは未定)の辞書セミナーを、東京ほんま会の主催でお届けします。

リンク:【開催予定】「辞書ブラウザを使いこなせ!」セミナー

日時 :12月13日(日)13:00~16:30
定員 :40名
受講料:3,500円

【11/29追記】
おかげさまで、満員御礼となりました。これ以降は、キャンセル待ち受付となります。ご了承ください。


時間は3時間以上あるので、8月に大阪のほんま会でやった内容に近くなりますが、東京開催では今まででもっとも時間をとって話をすることになります。

かつ、今回はタイトルにあるとおり、辞書ブラウザの使い方を徹底的に説明する予定です。


具体的には、以下のような内容になる予定。

・翻訳者の辞書環境

・これから揃える辞書環境

・Jamming/Logophile/EBWin4/LogoVista各辞書ブラウザの特徴

・各辞書ブラウザの具体的な使い方

WordNet 3.1の紹介と詳しい使い方

類語辞典(Oxford Learner's Thesaurus、他)の詳しい使い方

など。

※英和、和英、英英、国語のいずれも扱いますが、専門用語については触れません。


前にも書いたとおり、この半年くらい、辞書については私自身でもいろいろと発見の連続でした。だいぶ投資もしました^^

その発見を共有するためのセミナーでもあります。


これから辞書をどうしようかと迷っている方、手元の辞書を活用しきれていないと思っている方、ぜひご参加ください。
(お申し込みは、上記、東京ほんま会のページからお願いします)

09:43 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.11.19

# 『日本語大シソーラス』と「シソ改」の事例比較

以前、大修館の『日本語大シソーラス』と、そのデータを大久保克彦さんが加工してくださった『シソ改』の話をかきました(参照リンク:# 日本語の類語辞典 ― 『日本語大シソーラス』と「シソ改」)。


そのときも例は出したのですか、何が違うのかよくわからなかったかもしれません。
もう少しわかりやすい例があったので、改めて紹介しておこうと思います。


なお、大久保さんの解説サイトでは、「前方一致」または「条件検索」が使われていますが、語句によってはそれではヒットしないことがあります。やはり「自動検索」がいいのだろうと思います。


「かなり」を引いた例

こちらが本家『日本語大シソーラス』

1511191

こちらが『シソ改』

1511192

本家では、「然るべき・~に足る」から「随分」まで4つの概念分類が並び、その先に進むと詳しい画面が現れます。

『シソ改』では、「然(しか)るべき・~」と「随分[程度[質的・意力]]という2つの概念分類のあとに直接、類語が並んでいます。概念分類(青字)をクリックすれば、本家と同じように詳細画面に進みます。ただし、本家にあった「凡そ」と「一通り」という概念分類はなくなっています。

この例だと、どちらがいいと一概には言えない感じですが、シソ改のほうが一覧性に優れている、ひとまずざっと見たいときにはいい、というところでしょうか。


「そこそこ」を引いた例

こちらが『日本語大シソーラス』
(引いた直後ではなく、「そこそこ」)を選んだ状態

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こちらが『シソ改』

1511194

本家では、「縁が薄い・縁がない」から「温情主義」まで、概念分類の数がだいぶ多く、これをすべて見ていくのは、そこそこ大変そうです。

これが『シソ改』となると、概念分類ごとにすでに類語が並んでいるため、いろいろな類語が一目瞭然。さきほどの例よりずっと、一覧性が高いことのメリットが感じられます。

『日本語大シソーラス』のデータ変換は、慣れていればさほど難しくないのですが、もし不明な点などあれば、翻訳フォーラムのメーリングリストで質問するか、こちらにコメントをいただいてもOKです。

07:06 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.11.10

# 翻訳祭前夜祭 ~ セミナーと飲み会

(2013年には、昼間にしんハムさんのセミナーもあったけど、飲み会だけを「前夜祭」と呼んでいた模様です)

2013年、2014年に続いて、今年もJTF翻訳祭の前日に、Facebookの勉強会「十人十色」主催の前夜祭を開催します。


リンク:十人十色 2015年 翻訳前夜祭

リンク:十人十色 翻訳前夜祭 懇親会


※上のリンクは、Facebookのイベントページです。Facebookを使ってなくて、もしこのイベントに興味がある方は、ひとまず帽子屋までご連絡ください。
セミナーの開催詳細は、この後に書きます。
(メールアドレスをご存じない場合は、この記事のコメント欄でもけっこうです)


今年の前夜祭セミナーは、昨年、一昨年のように講師をひとりだけお呼びする形式ではありませんが、発表メンバーは超豪華です。

全体テーマは

「大公開! 私の翻訳ノウハウ」

です。



日時 :11月25日(水)13:00~17:00
場所 :日比谷図書館
参加費:2,000円

内容

遠田和子さん

「世界で最も……」を英訳しよう

概要:今回の発表は一点集中のテーマで、内容はタイトルどおりです。製品説明や企業紹介などでは、「世界で最も……」というフレーズが冒頭に登場することがよくあります。言葉の置き換えで訳すと、つっこみどころ満載の英文になってしまいます。英訳時には、文脈に応じた言葉の補いや訳語の工夫が必要です。短い例文を数個用意する予定です(参加型発表にしたいです)。


井口耕二さん

脳みその筋トレ、やってますか?

概要:こういう文はこう訳すといい、あるいは、こういう訳し方は避けるべきだ……そういう具体的な話はあちこちに出ています。翻訳学校に通った人なら、先生からそういう手法をいくつも習っているはずです。
 そういう基礎技能を身につけるための練習、していますか? たとえば「の」の連続、たとえば「は」と「が」の使い分け、たとえば「テン」の打ち方。習っただけ、知っただけでは役に立たない、役立てるには練習が必要だというのはスポーツにかぎりません。脳みそだって、筋トレで汗をかかなければ強くならないのです。


高橋さきのさん

訳し方の「原理原則」――具体例から考える

概要:いわゆる「タテヨコ」・「ヨコタテ」の翻訳ではまずいのはよいとして、ではどうすればよいの?
 「高校までの英語」ではほんとうにダメなの?
 今回は、そうしたことがらについて、基本頻出語彙(most他)をいくつかとりあげながら考えてみようと思います。
 「翻訳道」の道筋としては、毎回手探りで訳出を行い、その経験を蓄積していくという王道しかないわけです。そこで、今回も、《どうやって訳出時の発見事項を増やし、発見事項を蓄積するのか》について考えながら、上記のような疑問について検討してみたいと思います。


大光明宜孝さん

悩ましい表現をみんなで一緒に考える

概要:翻訳をやっていると、和訳でも英訳でも、ぴったりの表現がなかなか思いつかずに悩むことが多いのではないでしょうか。今回は実際の仕事や翻訳勉強会で出会った悩ましい表現を何点かピックアップして、どういう手順で読みやすい訳文に仕上げていくか、参考になる訳例を出してみなさんと一緒に考えてみたいと思います。分野は無線通信、航空、自動車、IT、その他全般です。


矢能千秋さん

ハチの本の原文と訳文比較~産業翻訳との二足の草鞋~

概要:昨年の11月にハチの本の共訳に携わりました。最終稿を見ながら原文と比較してみたいと思います。また時間があれば並行して進めた産業翻訳とのやりくりも振り返ります。日々の産業翻訳を効率化させることは、出版翻訳の時間を作ることにも繋がりました。身体はひとつ、1日は24時間。ハチの本の原文と最終稿を事前に配布するので、皆さんも読んでみてください。


募集は始めたばかりですが、たいてい満席になりますので、参加ご希望の方はお急ぎください。m(__)m

12:45 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2)

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2015.11.07

# 英語の類語辞典 ― Oxford Learner's Thesaurus

前エントリで、日本語の類語辞典を紹介しました。続いて、英語の類語辞典も紹介しておきます。

もともと、類語辞典(Thesaurus)は英語圏のほうが充実していますし、ふつうの英語辞典(英和、英英)にも、類語情報はかなり載っています。


が、今回のイチ押しは何といってもこれです。




英語世界で最初の類語辞典はRoget's Thesaurusということになっています。

その1911年版がオンラインで検索できるようになっています。

リンク:Roget's Thesaurus (1911) - The ARTFL Project

たとえば、このサイトでcriticalという語を引いてみました。

ただし、[Search headwords:]で検索してもヒットせず、[Search full text:]で検索するとヒットします。つまり、criticalは見出し語にはなっていないということです。

1511071

上のスクリーンショットでは一部しかわかりませんが、

134. Occasion.
480. Judgment. [Conclusion.]
642. Importance.
665. Danger.
704. Difficulty.
8. Circumstance.
932. Disapprobation.
934. Detraction.

と並んで、その中に類語が品詞別に並んでいます。つまり、この辞書は前エントリで紹介した『日本語大シソーラス』と同じように、概念カテゴリーでグループ化する「分類型」だということです。

これと同じデータが、EPWING版でも公開されています。

リンク:FPWBOOK

1511072

が、はっきり言ってこれ、私には使いこなせません。英語ネイティブでも……どうなんでしょうか。


そのほか、私の手元には、

Merriam Webste'r Collegiate Thesaurus(同 Dictionary 11thとセット)

『Oxford Thesaurus of English 3rd(DF-X10001)

などがあるほか、LDOCEでも類語情報はかなり充実しています。

1511073

この赤枠のなかに、ThesaurusとLongman Language Activatorというのがあって、機能は違いますが、いろいろな関連語を調べられるようになっています。


また、Oxford Learner's Thesaurusと同系列であるOALDでも、類語情報は豊富です。

1511074

このように、共通の語義(These word all describe... )を書いたうえで、各単語の詳しい説明や用例を載せ、さらには、特にまぎらわしい語には比較説明もあります(crucial or critical など)。


Oxford Learner's Thesaurus(OLT)も、実はこのOALDの類語情報と、基本的には同じです。が、類語という観点で調べたいときには、OLTのほうがだんぜん便利です。

1511075

criticalを引くと、まず

CRITICAL
ESSENTIAL
SERIOUS

のように語義の大分類があって、それぞれに類語情報が表示されます。ここでは、ESSENTIALの項を見ています。


最初に、類語の一覧と共通語義が示されます。これはOALDと同じ(ただし、OALDではいつも出てくるわけではない)。

essential • vital • crucial • critical • decisive • indispensable • imperative • pivotal • of the essence
These words all describe sb/sth that is extremely important and completely necessary because a particular situation or activity depends on them.

criticalを探すと、crucialとしか書いてありませんが、crucialを見ると、

extremely important because a particular situation or activity depends on it

と書いてあり、さらには

NOTE crucial or critical? There is no real difference in meaning between these words and they can be used with the same range of nouns and structures. However, there is sometimes a slight difference in context. Critical is often used in technical matters of business or science; crucial is often used to talk about matters that may cause anxiety or other emotions.

と、比較説明もあります。

載っている情報はおおむねOALDと同じですが、肝心なのは、この見やすさ。


まずポイントになるのが、最初に並ぶ類語の一覧です。これを見れば、いくつかの単語が

そもそも類語と見なされているのかどうか

がわかります。


たとえば、先日も授業でこんな英文を扱いました。

It is every traveler’s nightmare: weather hazards causing large numbers of unexpected flight cancellations and disrupting the plans of passengers, resulting in anguish and anxiety.

anguishとanxiety、OLTではどうなっているでしょうか。


例によって、この2つの単語の違いがよくわかっている人はいいんです。

でも、現にこれを「苦悩と不安」と訳してくる方はたくさんいて、じゃあ、その違いってなんなんでしょうと聞くと、実はよくわかっていない。英単語を日本語に置き換えただけで、anguishとanxietyの語義を本当にはとらえていないからです。


OLTでこのふたつを引くと、こう出てきます。

1511077

これが、anguishを含む親見出し、distressです。

distress • pain • suffering • anguish • torture • agony • hurt • misery

と並んでいますが、ここにanxietyはない。

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一方、anxietyの親見出しはconcernでした。

concern • worry • anxiety • apprehension • unease • angst • agitation

やはり、類語グループにanguishはありません。

この段階で、このふたつは類語と思われていないということがわかります。それぞれの共通語義を見てみると、

anguishのほうは「感情的な痛み、苦しみ」、anxietyのほうは「不安、心配」ということです。anguishのほうが実際に起きてしまったことによって受けている精神状態、anxietyのほうはこれからのことに対する不安、とも言えるかもしれません。


もちろん、このように違いがわかっても、さてそれをどう訳すのか……というのは別の問題です。が、少なくとも、それぞれの共通語義を見たら、「苦悩と不安」だけでは

原語の違いが伝わらないんじゃないか

と疑問を持つことはできるはずです。


上に挙げたスクリーンショットは、OLTの固有ブラウザですが、

LogophileはOLTに対応

しています。この点は、Logophileを使う大きいメリットと言っていいでしょう。

ただし、Logophileで読み込めるのは、冒頭に紹介したバージョンです。『オックスフォード英語類語活用辞典』という名前で、日本語解説付きのバージョンも出ていますが、こちらのデータを読み込めるのかどうか、Logophileのサイトでは保証していません(CD-ROMデータ自体は同じようにも思いますが、当然ながら未検証です)。


ちなみに、しばらく前から話題にしているWordNetでも、基本的にこれと同じような類語の調べ方ができます。

そして、このOLTの(完全ではないが)翻訳版も出ています。つまり、語義説明と類語に訳を当てたものです。もともとは書籍版で、CD-ROM版は出ていませんでしたが、つい最近iOSアプリが出ました。

リンク:小学館 オックスフォード英語類語辞典 | iPhone | 物書堂

これを単独で使うのは、あまり意味がないように思います。語義説明は、あくまでも上の例のように、まず英語で確認すべきです。

ただ、こちらのバージョンも併せて使うと、訳語を探すヒントになるかもしれません。

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この「類語訳」のところに並んだ訳です。

03:48 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.11.05

# 日本語の類語辞典 ― 『日本語大シソーラス』と「シソ改」

日本語の類語辞典もいろいろ出ていますが、大きく分けると分類型と非分類型があります(正式な用語じゃないかも)。

分類型というのは、概念を項目にして(場合によっては、大項目-小項目のようにレベルを設けて)、そこに分類される単語を示すタイプ。

大修館の『日本語大シソーラス』などが代表です。


非分類型というのは、単語を項目として、その類語を羅列するタイプ。

このタイプでは、『デジタル類語辞典』が手軽に使えます。

そのほか、『学研国語大辞典』(Super日本語大辞典版)にも類語の機能があります。




これが『デジタル類語辞典』の画面(単独アプリケーションです)。

1511051

非分類型ですが、「同義語」、「狭義語」、「関連語」などのカテゴリに分類されているので、とにかく見やすく手軽。訳語さがしには重宝します。


こちらが『学研国語辞典』の画面。
Super日本語大辞典版をEPWING化したデータです)

1511052

ずらっと並んでくれるのはいいのですが、ルビがちょっと邪魔です……。


そして、これが『日本語大シソーラス』の画面。
(LogoVistaデータをEBWin4で使っています)

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「賢い」を引いても類語がすぐに出てくるわけではなく、このように「0385 賢い」という親見出しの下に、「0385.01 知的」とか「0385.07 賢い」のように下位概念が並び、その先に進むと

1511054

このように類語が表示されます。この構造が分類型の特徴です。

注:EBWin4で『日本語大シソーラス』を使う場合は「自動検索」がいいようです。

この分類型も、用途によっては非常に便利です。たとえば私は、英英で概念をつかんだあとに、そのぼんやりした輪郭を抱えたままこの『日本語大シソーラス』に進んで言葉を探しはじめることがよくあります。

でも、とにかく類語を一覧したいというときには、こういう構造にしばられず、もっと自由に---ふつうの国語辞典のように---検索したいこともあります。

実は、そう感じた人がほかにもいました。EPWINGの救世主、大久保さんです(下のリンク先を読むとわかりますが、故・山岡洋一さんも同じようにお考えだったらしい)。

リンク:シソ改 ~~ 『日本語大シソーラス』の全語彙検索EPWING化 ~~

LogoVista版のデータを持っていれば、このページの説明に従って、分類型の構造にしばられないデータを作ることができます。

大久保さんのサイトであげられているのとは違う例を出しておきます。

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これが、ふつうの『日本語大シソーラス』を引いたところです(自動検索)。ここから概念分類に沿って、たとえば「0413.01 意義深い」に進んで言葉を探すことになります。

これを「シソ改」に切り替えてみるとこうなります。

1511056

ヒットするのは、ふつうの国語辞典と同じように五十音順の見出し(ここだけで、簡易なコロケーション辞典にもなります)。この中で「興味」を見れば、とりあえず類語を一覧することができ、「趣き」方向かなーと思ったら「趣き」をクリック、「おもしろい」系かなーと思ったら、そこにある「0413.01」のリンクをクリックすれば、最終的には元々の分類にたどり着きます。

リンクを行ったり来たりするので、これを使うなら断然、EBWin4が便利です。


もとは同じデータでありながら、分類型の類語辞典としても使え、シソ改に切り替えれば国語辞典的にも使えるので、もし類語辞典がピンとこない人は、シソ改から入ってみるといいかもしれません。

ところで、『日本語大シソーラス』はもともとLogoVista版なのですが、当のLogoVistaブラウザでは使い方に注意しないといけないようです。

上のEBWin4で「賢い」を引いたときは「自動検索」を使いましたが、LogoVistaブラウザにそういう機能はありません。

「前方一致」の検索結果はこれだけ。

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「0385.07 賢い」がヒットするだけで、親項目である「0385 賢い」が出ててきません。

「条件一致」にしてみました。これがいちばん多くヒットしそうだからです。ところが---

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これでも、0385.07、0385.15、0853.07という3つの分類しかヒットしません。正解は---

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「部分検索」でした。これでようやく、「0385」の親項目がヒットし、「0385.01 知的」~「0385.16 愚者も一得」までの観点が並びました。

LogoVistaブラウザは、もっとがんばってもらいたいものです。

【追記】

『日本語大シソーラス』は、電子辞書(DAYFILERやカシオ製品など)にも収録されているモデルがあります。私の手元のDF-X10001にも実は入っているのですが、なんとこれが、

PASORAMA非対応

なんですね。つまり、本体でしか使えない。なんでそんなことになってるのかよくわからないのですが---。

で、めったに使わない本体を開いて、ためしに「賢い」を引いてみました。

結果は、LogoVista版の「条件検索」と同じようです。ある程度の検索はできていますが、この辞書の本領は発揮できていません。カシオ製品とかだと、どうなのかなー。


【さらに追記】

カシオ製品、ちょっと古いモデルですが、手元にありました(XD-GW9600)。

15110510

やはり、LogoVistaブラウザの「条件検索」と同じ結果でした。

これでいいのか?

02:51 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.11.01

# 英英辞典ひかない、なんてありえない

イカロスさんから、こんなムックが出ました。

私も、辞書についての記事を1本書きましたが(pp.16-21)、英英辞典についてはちょっと補足しないといけないような気がしてきました。

英英辞典を引くということについて、「訳語」ではなく「語義」をつかむことが必要だと書いたうえで、

それが、遠回りのように見えて実は最も確実な道筋です。

と私は書いています(p.20)。


また、同じく辞書について書いておられる松田浩一さんは、こう書いていらっしゃいます。

適切な訳語が英和辞典に載ってない場合は原点に立ち返りましょう。(中略)英英辞典をうまく活用することが上達の早道だと思います。

ふたりとも、「何がなんでも英英を引け」という書き方ではなく、どちらかというと「できるだけ引こう」くらいにしか書いていません。でもやっぱり、

英英辞典引こう

ではなく、

英英辞典から引こう

だな、と思うわけです。


実例として、sidekick という語を考えてみます。

あ、もちろん、この語の使い方とか語感をよーく知っていて辞書なんか必要ない、という人はいいんですよ。この語に限らず、自分の語彙力が豊富であれば、原語を読んで理解するにしても、それを訳文として出力するにしても、自分の語彙を使いこなせばいい。

10/15のセミナーでもちらっと言いましたが、辞書の話をするときに実例を出すのって、「自分はこんなことも、調べないとわかりませんでしたー」というのを暴露する行為なわけですね。でも、別に隠すことでもないでしょう。

ということで、sidekick です。「人物Aが、あるプロジェクトで人物Bのsidekickだった」という文脈で使われていました。まず自分の頭から引き出せる情報は、こんな程度です---

「sidekickって、何かいっしょにやる人とか、助手みたいな意味だったよなあ……」

そうなると、人物AとBの関係も知る必要があります。調べてみると、AとBはほぼ同年齢なので、「助手」ということはないんじゃないか…… そう考えながら辞書を引いてみます。

ランダムハウス 2nd
1 ⦅俗⦆ 親友.
2 ⦅俗⦆ 共謀者,相棒(confederate);助手

研究社大英和 6th
⦅口語⦆ 仲間 (companion); 親友 (close friend); 相棒, 同類 (partner, confederate).

ジーニアス大英和
⦅米略式⦆ 1 親友;仲間;助手.
2 共謀者.

リーダーズ 3rd
《口》 親友,助手,相棒,共謀者

ロングマン英和
(映画の登場人物などの) 右腕(役),相棒,仲間


…… こういう英和を見て「仲間」とか「同僚」みたいにしていいものでしょうか。英英を確認してみましょう。

LDOCE 5th
n [C] informal
someone who spends time with or helps another person, especially when that other person is more important than they are

Collins COBUILD
noun (informal)
a person who helps another more important or more intelligent person:
◇Batman and his young sidekick Robin

OALD 8th
Someone’s sidekick is a person who accompanies them and helps them, and who you consider to be less intelligent or less important than the other person.[INFORMAL]

ODE 3rd
a person’s assistant or close associate, especially one who has less authority than that person.


赤字の部分に注目してください。どれを見ても、上下関係というか優劣というか、そういうことが書いてあります。COBUILDの例文でも一目瞭然。

バットマンから見て、ロビンがsidekick

なんですね。

ちなみに、英和でも学習辞典でこの補足が見つかりました。

オーレックス英和
((口))仲間, 同僚, (自分より役柄が下の)相棒、助手


やはり、年齢差はあまりなくても、人物Aは人物Bの助手的なはたらきだったようです。

英和を調べただけの段階で「仲間」としてしまったら、実際とズレた訳になってしまったかもしれません。

こういう例を考えると、やはり「英和を調べてぴったりする訳語がなかったら英英も調べる」ではダメだ---少なくとも、ダメな場合がある---ということになります。


だいいち、英和を調べて「ぴったり」だという自分の判断は、どれほど当てになるものでしょうか。


もちろん、「サイドキック」という言い方は(映画などの用語として)だいぶ見かけますし、Wikipediaにもこういうエントリーがあるわけで、

サイドキック (Sidekick) は物語やゲームに登場するキャラクターの役割の一つであり、主に、等身大ヒーローである主人公と行動をともにして、主人公の補佐を行う登場人物(脇役)のことである。相棒、親友といった意味合いに日本語訳されることもある[1]。

ちゃんと自分の語彙として知ってるならいいんですよ。

でも、なんでもかんでもよく知っているということがありえない凡人としては、やはり辞書を引く、しかもちゃんと引くということを何度も何度も繰り返さないといけないのでした。

04:14 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.10.21

# まだまだ調べ尽くせない辞書ブラウザの特性

前エントリで書いたように、この半年くらいずっと、自分の中でも辞書環境の再整備と研究がテーマになっていますが、辞書ブラウザの挙動については、いくら調べても調べ尽くせないと感じています。


cell tower

これが載っている辞書は、まだ多くありません。

私の手元では、ひとまず英辞郎に記載がありました。

携帯電話の基地局

v145にも載っていますが、v114にすでに収録されていました。英辞郎の更新履歴が調べられないので確かなことはわかりませんが、まだEPWING仕様でダウンロードできたころのデータで、たぶんもう5年くらい前だろうと思います。

ちなみに、Wikipedia(En)ではこうでした。

A cell site or cell tower is a cellular telephone site where antennae and electronic communications equipment are placed, usually on a radio mast, tower or other high place, to create a cell (or adjacent cells) in a cellular network.

これでわかるように、tower と site がほぼ同義に使われてるようなので、アンテナ塔だけでなく、まさしく「基地局」をさしているようです。

KODには収録されている、とご報告いただきました。


これに近いのが、唯一、うんのさんの辞書の用例にあったのですが……

there is an increasing demand for the construction of cell phone towers

移動電話塔の建設需要が増大[増加]している

この用例がいちばん簡単に見つかったのは、実はPASORAMA(DF-X10001)でした。


他の辞書ブラウザと比べると検索オプションがあまりにも貧弱なPASORAMAですが、実は[例文検索]のインデックスだけは優秀です。

cell towerで検索して、本文中の

cell phone towers

にヒットするのですから、JammingやLogophileで言えば、

全文検索 + 語尾補正

ができていることになります。


では、これと同じ検索が、他の辞書ブラウザでできるのかどうか調べてみました。


Jammingの一網打尽

1510211

いちばん右のボタンを[熟]にすると検索できません。[And]にしてください。

※今回は[条]、[複]、[ク]の3つはオフでも検索できました。が、これらのオプションは効果がなかなかわからないので、たいてい押しっぱなしにしています。

[熟]=熟語と、[And]との違いは、基本的に語順なのですが、tower/towers という語形の違いも影響しているようです。


Logophile

1510212

例文が2件ヒットしています。下のほうが、PASORAMAで見つかったのと同じ例文。

オプションは、[前]+[後]+[キ]+[全]+[And]+[字]です。

(実際には、[後]と[字]はオフでもいけました)

[And]オプションにしなければならないのは、Jammingと同じ理屈です。もうひとつ気を付けるのは、

[完]をオフにする

こと。Logophileのユーザーズガイドによれば、[完]オプションというのは、

オンの場合は入力された語と同じもののみを検索します

ということなの完全一致みたいなのですが、実は使ってみるとその効果がはっきりしません。試しに、[完]をオンにして検索してみたら、こうなりました。

1510213

例文1件だけになってしまいます。しかも、

The tower commands an excellent view

と、単語の一部に当たっています。ということで、[完]をオンにすると結果が絞られることは確かなのですが、違いが今ひとつわかりません。


ちなみに、Logophileだと「メリアム・ウェブスター英英辞典」もヒットしています。

1510215

この辺も、JammingとLogophileで挙動の違うところです。ただし、解説はありません(参照先になってるのは、ivory towerでまったく無関係)。


EBWin4

おっと、開発者のサイトを見にいったら、10/18付でアップデートされてました。素晴らしいペースです。

残念ながら、今回のお題だと、[自動検索]でも[全文検索]でもヒットしませんでした。

1510214

このように、[複合検索]で単語をひとつずつ指定しなければなりません。

最近はEBWin4をおすすめしているのですが、この辺はまだLogophileに一日の長があるようです。


DDWin

[総合]検索で全オプションをオンにして検索してみたのですが……

1510216

実はひとつも、上の例文にはヒットしていません。

[全文]検索にしてみました。

1510217

いくつかヒットしていますが、上のと同じ例文はいったいどこにあるのでしょうか……


答えは、increasing の中の例文、でした。この手の検索に関してはDDWinがいちばん分が悪いようです。

ところで今、DDWinのヒット結果でも、

there is an increasing demand for the construction of cell phone towers

移動電話塔の建設需要が増大[増加]している

という例文がどのエントリに含まれているのか、調べるのはけっこう骨でした。

実は、この点に関してはJammingもLogophileも似たようなもので、見つかった例文がいったい何のエントリに出てきた例文なのか、というのは簡単にわかりません。

その点も、PASORAMAは優秀でした。

1510218

このように、用例の頭にちゃんと、見出しが書いてあります。

つくづく、SIIの撤退はもったいないことだと思います(そういえば、"新サービス"はまだ始まらないんだろうか……)

というわけで、辞書ブラウザについては「どれがおすすめ」ということではなく、

「手に入るものはできるだけ手に入れ、同じ辞書データを入れて使い比べ」

てみたほうがいい、というのが目下のところ私の結論です。

01:15 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.10.16

# 辞書について思うこと

この半年、あちこちで辞書について話したり書いたりしてきました。

5/9(土)- 翻訳フォーラム
「学習辞書について」をメインに話すつもりでしたが、私用でやむなく欠席し、ご参加のみなさんにはご迷惑をおかけしました。m(__)m

7/5(日)- 十人十色
欠席した5/9の穴を少しでも埋めるべく、ただしEPWING辞書ブラウザの話をメインにして、学習辞書をちょこっと入れた内容でお話ししました。ただし枠が15分だったので、あちこち2倍速でプレゼン。

8/9(土)- 大阪ほんま会
十人十色に用意したのとほぼ同じ内容を、2時間枠で話しました。今までのところ、このときがいちばん時間枠に無理がなく、じっくり語れたと思います。

10/15(木)- JTF翻訳セミナー
これが昨日です。深井さんと二人だったので、こちらの持ち時間は50分。今回こそ学習辞書の内容をゆっくり話したかったので、EWPINGブラウザなどのノウハウについてはわりと駆け足になりました。

5年ぶりのJTF翻訳セミナー登壇で、130人くらいという久々に大きいオーディエンス。

ふだんのJTFより個人の参加が多かったように思うのですが、オンライン以外の辞書を利用している人が予想以上に少なかったという印象です。もしかしたら、辞書というものについての考え方が根本から変わってきているのかもしれません。

私(たち)としては、私たちが考える辞書の使い方を伝えていくしかないわけですが……




この半年、人前で話す準備も兼ねて、自分でも辞書環境をいろいろと整備し直したり、事例をためてきたりしました。その間の変化や、感じたことをまとめておきます。

1. 紙の辞書が増えた

辞書の種類を問わず、紙の辞書が一気に増えました。

学習英英のほとんど(LDOCE、COBUILD、OALD)は、紙の辞書にCD-ROM/DVD-ROMを付ける形で販売されており、データのみでは売っていません。OED、SODなどはむしろ例外的です。手元にある版が少し古かったり、あるいは元からあったデータがうまく読み込めなくなってたりして、何冊も買うことになりました(本棚に収まるはずもなく、足元に積んであります)。

国語関係が増えた最大の要因は、「ふつうの国語辞典ではカバーされていない、語句・表現の違いを説明する」ための資料を探したこと。『日本語 語感の辞典』、『日本語 誤用辞典』、『日本語類義表現使い分け辞典』などがそうです。


2. 辞書の個性があらためて見えてきた

いちばん自分で収穫だったのはこれです。

同じカテゴリーの辞書どうしの違い。今までも感覚的にはわかっていたつもりでしたが、資料を作るために同じ語句を引いて比べてみると、改めて辞書ごとのポリシーとか語釈のしかた、長所短所、個性が見えてきました。

ただし、辞書の個性をどうとらえるか、まして好き嫌いについては意見が分かれるところです。辞書のことを本気で考えてみたい人は、

自分で同じ語句を複数の辞書で引き比べてみる

(できれば、書き出してみる)

というのをおすすめします。辞書の個性がわかってくれば、どんなときどんな辞書に当たればいいのか、という感じもつかめてくるので、けっして時間の無駄にはなりません。


3. 辞書ブラウザの特徴を把握できた

Jamming、Logophile、DDWin、EBWin4、(LogoVista)。それぞれ長所も短所もあります。使ってみてどれかに絞るというのではなく、

使えるブラウザはぜんぶそろえておく

のが基本かもしれません。昨日も言いましたが、インデックスごとの挙動が辞書やブラウザによって違いますし、そもそもインデックスの作り方も違うからです。


4. これから辞書をそろえる方へ

残念ながら、以前のようにいずれかの辞書ブラウザにすべてを集約することは難しそうです。これから辞書環境をそろえようという人に、ひとつのモデルを提示しておきます。

  1. 現時点でそろうEPWINGデータを辞書ブラウザで使う

  2. WoreNet 3.1
    うんのさんの辞書
    ジーニアス大英和

  3. オンラインの辞書をひととおりブックマークする

  4. 必要に応じて、LogoVistaのタイトルをそろえていく

LogoVistaのタイトルは、昨日お話ししたとおり「セキュリティ上の理由から」フォーマットがたびたび変わります。『リーダーズ第3版』以前に出たタイトルはだいたい、EPWING辞書ブラウザで読み込めるようです。

01:16 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.09.17

# 第25回翻訳祭、プログラム決定

8月下旬の涼しい気候のまま9月に入り、今年もいつの間にかJTF翻訳祭の開催をお知らせする季節となりました。

11月26日(木)です。

リンク:翻訳祭 : 日本翻訳連盟


今年は25周年ということで、リンク先にもあるように、戸田奈津子氏などスペシャルゲストの登壇も予定されています。そのほか、全体のプログラムも決定しています。

リンク:翻訳祭 プログラム詳細 : 日本翻訳連盟

昨年までのように、ターゲットオーディエンスをトラックごとに分ける形式はやめたようです。そうすると、セッションの人気によってあふれてしまう部屋が出る、という配慮からでしょう。

かわりに、「訳」とか「経」の字を○で囲った記号がありますね。それでターゲットがわかるようになっています(ただし、その区分が必ずしも妥当なものとは限らない気もします)。


そんな記念すべき節目となる翻訳祭に、FB勉強会「十人十色」も昨年に続いてセッションを1つ持つことになりました。

トラック1のセッション2、「曲がり角を抜けて、ベテランへ」

このタイトルでわかるとおり、昨年の続編という位置付けです。


ただし、プログラムをご覧いただくとおわかりかと思いますが、十人十色のセッションはスペシャルゲスト戸田さんの裏番組です。


それだけでなく、2コマ目の時間帯は、個人翻訳者が聞きたくなるようなコンテンツが特に集中している気がします。

トラック1 …… 十人十色

トラック2 …… 戸田奈津子さん

トラック5 …… 児童/ヤングアダルト文学(英語)

トラック6 …… 特許翻訳

また、「訳」とは書いてありませんが、トラック5は、私自身が実はとても聞きたい内容です。なぜなら、

リンク:side A: # ジャック・ハルペンさんの日中韓辭典研究所

Weblioにわりと早くから収録されたこの辞書を編纂なさった方だからです。


そのほかは、24セッション中5つが機械翻訳やツール系、同じく5つが業界情報、医薬系が2つ、その他…… というラインアップです。


個人翻訳者のみなさんにとって、どのくらいアピールするのか、私にはいまひとつ判断できません。

少なくとも、個人向けの内容が明らかに集中してしまった2コマ目については、

もう少しなんとかなりませんか~

と交渉してみたのですが、力及ばずでした。


重なるセッションの選択に悩むというのは、こういうイベントにつきものでしょう。

が、もう少し個人翻訳者に対する配慮があってもよかったのでは……と思います。


先日もちらっと書きましたが、翻訳業界って何なんだろう……と、ちょっと最近いろいろ考えとしまいます。

09:47 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.09.12

# オンライン辞書のことも少し~ただし英英

続けて辞書の話ばかりしていますが、ここらでオンライン辞書のことも書いておきましょう。

といっても、私自身は実はあまり使っていないので、このブログをお読みの方のほうが詳しいんではないかと思います。オンラインを串刺しで検索するDicregateのこともまったく知りませんし……

別にオンライン辞書の実力を軽視しているからではなく、私の場合は単に「辞書を手元に集めるのが好き」という好みの問題です。

翻訳者ご用達で代表的なのは、やはり研究社のKODでしょうか。でも、私はここを有料利用していないので、今回は除外します。

そのほか、日本のサイトはちょっとおいといて、英英のサイトに絞ってみることにしました。以下6つのサイトをご紹介します。

WordNet Search - 3.1

Collins Dictionaries

Longman English Dictionary Online

Oxford Dictionaries

Merriam-Webster

American Heritage Dictionary

先日もエントリにしたWordNetと、学習英英ご三家、そしてネイティブ向けとして2つのサイトです。

このほかにも、Macmillan Dictionaryなどいくつかのサイトがありますし、

Dictionary.com

OneLook Dictionary Search

のような辞書ポータルサイトもありますが、今回は取り上げません。

いろいろな紹介のしかたがあるはずですが、今回は「新しい語彙を引いて、定義のしかたを比べてみる」ということをしてみようと思います。

WordNet Search - 3.1

もちろん、無料です。

こちらは、検索フィールドと表示オプションがあるだけで、先日紹介したEPWINGのような細かい使い方はできません。もっとも、オンライン辞書のほとんどはそういう細かい検索オプションはないのがふつうです(私が個人的にオンライン辞書をあまり使わない理由のひとつがこれです)。

carbon footprint

を引いてみましたがヒットしませんでした。語釈のしかたは、先日のエントリに書いたとおりです。carbonだけ引用してみましょうか。

1509121

an abundant nonmetallic tetravalent element occurring in three allotropic forms

専門語を遠慮なく使ってギューっと濃縮された感じの説明です。abundantというひと言が入っているのがおもしろいですね。


Collins Dictionaries

サイトの見出しに"ALWAYS FREE"と書いてあるとおり、完全無料です。すごいなぁ。

まず、このインターフェースにあるタブに注目してください。

1509122

[English]のほかに[English for Learners]とあります(なんと英語以外も引ける)。

"carbon footprint"を引いて、この2つの違いを並べてみましょう(1回検索してタブを切り替えるだけでOK)。

[English]タブ:

a measure of the amount of carbon dioxide released into the atmosphere by a single endeavour or by a company, household, or individual through day-to-day activities over a given period

[English for Learners]タブ:

Your carbon footprint is a measure of the amount of carbon dioxide released into the atmosphere by your activities over a particular period.

Your... というのがCOBUILDの特徴的な書き方ですが、そのほか下線部が大きい違いです。学習レベルの読者に対する配慮はさすが。


COBUILDについては、後でもう一度触れます。


Longman English Dictionary Online

やはり無料です。有料サブスクリプションはないようです。

同じように"carbon footprint"を引いてみると……あれ、ヒットしません。いつの辞書データなんでしょうか。LDOCE 5thには収録されてるんですが。

the amount of carbon dioxide that a person or organization produces by the things they do, used as a way of measuring the amount of harm they do to the environment

とてもわかりやすい。排出源が平易に書いてあるほか、なんでこんな指標があるのか、その用途が後半に書いてあります。オンライン版は、無料な分すこし古いってことでしょうか。


Oxford Dictionaries

無料ですが、広告表示がなくなるなどの有料サブスクリプションサービスもあります。また、同じOxfordに、

Oxford English Dictionary

を使える有料サイトもあります。ひとまず無料の範囲で"carbon footprint"を引いてみます。

1509123

The amount of carbon dioxide released into the atmosphere as a result of the activities of a particular individual, organization, or community.

COBUILDの[English]と[English for Learners]の中間くらい……という感じ。これはODEのコンテンツのようですね。デイファイラーなどに収録されているのと同じ定義です。

おもしろいのは、

See definition in Oxford Advanced Learner's Dictionary

と、OALDへのリンクがあるところです。そちらに飛んでみると---

a measure of the amount of carbon dioxide that is produced by the daily activities of a person or company

となります。COBUILDの[English for Learners]と難易度はほぼ同じです。

ここでおもしろいのは、例文の下に Collocations というある領域。「+」アイコンをクリックしてみると、Environmentに関するコロケーションがずらーっと出てきます。これは参考になりそうです。同じ機能は、デイファイラーに収録されているコンテンツにもあります。単独で売られているタイトルでも同じでしょう。

あ、そういえば、OALDは新版がもうすぐ出ますね。


Merriam-Webster

こちらは無料版です。

the amount of greenhouse gases and specifically carbon dioxide emitted by something (as a person's activities or a product's manufacture and transport) during a given period

他のサイトと大きく違うのは、二酸化炭素に限定せず「温室効果ガス」と言って、「なかでも特に(specifically)二酸化炭素」と詳しく書いているところです。

このあたりは、「百科事典的な要素をとりいれる」というWebsterの伝統をしっかり受け継いでいるのでしょう。初出年のデータも載っています。

もうひとつおもしろいのは、Oxfordのサイトと同じく易しいバージョンも紹介されているところ。すこし下にいくと、

CARBON FOOTPRINT Defined for Kids

として

the amount of greenhouse gases and especially carbon dioxide given off by something (as a person's activities) during a given period

と書かれています。こちらも、排出源の細かい説明を省いただけで、"greenhouse gases and especially carbon dioxide"という定義は譲っていません。

なお、Merriam Websterには有料サイトとして Unabridged も用意されています。こちらでも定義は同じでしたが、例文、語源などの情報が増えていました。


American Heritage Dictionary

1509125

The amount of carbon-containing greenhouse gases released into the environment by an activity, process, individual, or group, expressed usually as the equivalent in kilograms of carbon dioxide.

これも、百科事典的にかなり詳しい。「炭素を含む温室効果ガス」というところと、「二酸化炭素当量」になっているところがいいですね。

COBUILDについてちょっとだけ補足しておきます。

そもそもCOBUILDという名前は、"Collins Birmingham University International Language Database"の略で、WordNetと同じように膨大なコーパスをもとに作成されています。このコーパス、Bank of Englishと言って、もともと5億語のデータでできています。Collinsのサイト(http://www.collinsdictionary.com/wordbanks)によるによると "550 million" とあります。一方、PASORAMA辞書 FD-X10001に搭載されている COBUILD(第6版)の説明によると、新語を入れて "645 million" に増えているそうです。

そして、COBUILDというと学習用というイメージですが、実はこのコーパスを元にした大辞典も出ています。

ただし、書籍版とKindle版だけで、CD-ROM版は、少なくとも最近の版では出ていないらしい。iOSアプリは、物書堂さんから出ています。

リンク:コリンズ英語辞典+シソーラス | iPhone | 物書堂

(この、物書堂さんは、辞書アプリでなかなかいい仕事なさってます)

この大事典に当たるのが、オンラインでは[English]タブに当たると思われます。[English for Learners]が、定番のLearners版です。

こうして英英のオンライン辞書を見てみると、定義の違いがおもしろいというほかに、いくつかの特徴に気づきます。

無料版でも、かなり十分な情報を提供している

学習者向けに配慮されていることが多い

ということです。

これはやはり、世界語ならではというところなのかもしれません。日本語辞書のサイトに同じことを求めるのは酷かもしれません。

04:21 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.09.10

# Jamming/Logophileの検索方法の違いを具体的に

すでにあちこちで話したり書いたりしていますが、Jamming/Logophileは検索方法をちゃんと知らないと、

あるはずの情報を活かせない

ことになります。

Jammingの場合は[検索方法]メニューを使います。

1509101

いろいろありますが、基本的には

[前方検索] Ctrl+4

[一網打尽] Ctrl+1

のふたつを使い分ければ十分です(ショートカットが便利)。


一方、Logophileの場合は[検索]メニューもありますが、

1509102

検索フィールドの右にあるボタンを使うほうが簡単です。

1509103


検索方法によって結果が大きく変わるのは、とくに熟語のときです。ここでは、サンプルとして under the hood という慣用句をひいてみます。


Jammingの[前方検索]

1509104

Longmanの例文と、Jargon File、FOLDOCしかヒットしていません(あくまでも、私の持ってる辞書タイトルの範囲です)。Jargon FileとFOLDOCって、ITじゃない人はあんまり使ってないかもしれませんね。ギーク系の俗語がたくさん載ってる辞書です。


Jammingの[一網打尽]、前+後+条+複+ク+AND

1509105

[一網打尽]にすると、「研究社新和英」と「新編英和活用」もヒットしました。どちらも、例文がヒットしています。

「リーダーズ+プラス」とか「EDICT」は、順不同でヒットしていることによるゴミです。順不同ではなく、あくまでも "under the hood"という語順で検索したい場合は、ボタンの最後を

AND → 熟語

に変えればいいはずです。

Jammingの[一網打尽]、前+後+条+複+ク+熟語

1509106

ところが、「研究社新和英」と「新編英和活用」はヒットしなくなりました。なぜかというと、新和英の場合は

1509107

と、theとhoodの間に変な記号が入っているためと思われます(これは別の語もとれることを表します)。

「新編英和活用」の場合は、

under [underneath] the hood

と、これもやはり別の候補が入ったため "under the hood"とかつながっていないためでした。


[AND]と[熟語]の検索結果の違いでよくわからないのは、英辞郎(v.114)の動きです。[AND]ではヒットしていなかったのに、[熟語]にしたときだけヒットしています。

Logophileの場合、ボタンでオプションは増えますが、基本的にはJammingの一網打尽と同じ動きをします。

特に違うのは、

[語]= 語尾補正
[字]= 文字補正

のオプションです。普通は、オンにしておいたほうがいいようです。


Jamming/Logophileのいずれにしても、上に書いた英辞郎の場合のように、予想と違う動きをすることもあるので、手持ちの辞書タイトルでいろいろ試してみることをおすすめします。


04:33 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.09.07

# WordNetについて、あらためて

(アップしなおし)

大久保克彦さんがWordNetのデータを使いやすくしてくださって以来、あちこちで言ったり書いたりしてますが、よく見たら、このブログでまだちゃんと紹介したことがありませんでした。

ちょうどいいので、書いておこうと思います。

本家Princeton大学のWordNetのサイト:About WordNet - WordNet - About WordNet

大久保克彦さんによるEPWINGデータ:WordNet EPWING ~ 日本語・英語WordNet(シソーラス)のEPWING版 ~

最新バージョンは3.1です。


そもそもWordNetとは何かというと、説明するのがめんどくさいので、本家に書いてある About WordNet をお読みください。冒頭だけ引用します。

WordNet® is a large lexical database of English. Nouns, verbs, adjectives and adverbs are grouped into sets of cognitive synonyms (synsets), each expressing a distinct concept. Synsets are interlinked by means of conceptual-semantic and lexical relations. The resulting network of meaningfully related words and concepts can be navigated with the browser. WordNet is also freely and publicly available for download. WordNet's structure makes it a useful tool for computational linguistics and natural language processing.
WordNet superficially resembles a thesaurus, in that it groups words together based on their meanings. However, there are some important distinctions. First, WordNet interlinks not just word forms—strings of letters—but specific senses of words. As a result, words that are found in close proximity to one another in the network are semantically disambiguated. Second, WordNet labels the semantic relations among words, whereas the groupings of words in a thesaurus does not follow any explicit pattern other than meaning similarity.
(太字は引用者)

つまり、

・まず巨大な用例データベースがあって(Brown Corpus、1960年代に開発)、
・そこから品詞ごとに、類似した単語をグループ化し、
・そのグループに共通に簡単な語義を付け
・さらに単語間にリンクを貼った

ものです。要するに、

語義がわかる
類義語や反義語、上位語や下位語、関連語などもリンク先で見つかる
さらには、それぞれ元の用例までたどれる

という、ハイパーテキストの特性をフルに活かした辞書になっているわけです。

ただし、本家のブラウザ(WordNet Search - 3.1)で引くと、やはりシソーラス的な作りになっているため、翻訳者ご用達としては、やや不向きです。

1509071

語義にあたる部分は、このようにカッコの中に書かれています。


いくつかの形式でデータのダウンロードもできますが、すぐ利用できる形ではありません。そのデータを、なんとEPWING形式にしてくれたのが、大久保克彦さんというわけです。

最初のバージョンが公開されてから、翻訳フォーラムでのやりとりを経て、現在の形に至っています。

1509072

このように、ふつうの辞書のように見ることができます。

使うには多少の慣れが必要ですが、まずはラベルをひととおり覚えておくといいでしょう。

ラベルも含めた詳しいGlossaryが本家にありますが、

リンク:WNGLOSS(7WN) manual page

大久保さんのこのページにもいろいろと(ラベルの説明なども)まとめられていますので、これから使おうという方は、まずこのページを熟読なさるといいと思います。


上のスクリーンショットを例に、一部だけ説明しておきます。

syn = synset。類義語のセット。

hype = hypernym。上位語。

hyp = hyponym。下位語。

derv = derivationally related forms。派生語(共通の語幹や意味を持ち、別のカテゴリに分類されている語)。

sim = similar。類似の形容詞。

ant = antonym。反対の形容詞。

これらのラベルがわかれば、たとえば調べた語について、もっと広い概念(hype)や狭い概念(hypo)をとらえたり、関連語のカテゴリに飛んだり(synset)できます。

corpusのリンクをクリックすると、出典の原文を確認できます。


ただし、語義にあたる部分は各単語の語釈ではなく、synset ごとの「共通する語義」です。つまり、非常に精密にカテゴリ分けされたグループに付けられた説明なので、LongmanやCOBULDのような具体的な語釈ではなく、かなり抽象化された定義になっています。

が、その抽象化のレベルが絶妙なおかげで、英英として引いてみて、これほど

ストンと腑に落ちる

ものはありません。個人的には、CODに近いがもっと精密というイメージ。


大久保さんが作ってくれたデータはEWPING仕様なので、Jamming/Logophile、DDWin、EBWin4のどれでも使えますが、お薦めは、EBWin4かDDWinです。

なぜなら、

前進・後退

ができるからです。WordNetを使う場合、類義語や出典でリンク先に移動することが多い。ところが、Jamming/Logophileでは、前進・後退のナビゲーション機能がないため、戻るのがちょっと手間です。

ということで、私はEBWin4(無料。かつもっともアクティブに開発継続中)もよく使っています。

08:15 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.09.06

# 「日本翻訳ジャーナル」9/10月号

……というわけで、「日本翻訳ジャーナル」9/10月号(No.279号)

いつものように、右カラムにあるPDFの画像からリンク先にどうぞ。


私のコーナーでは、8月に私自身もお邪魔した、大阪の勉強会「ほんま会」に寄稿いただきました。

リンク:ほんまかい●糸目 慈樹、西垣内 寿枝 | JTFジャーナルWeb

設立者である糸目さんと、代表者である西垣内さんの、対照的な写真にご注目くださいw


そして、特集記事はなんといってもこれです。

リンク:「翻訳者の真実」~ もうひとつの翻訳白書 ~●齊藤貴昭 | JTFジャーナルWeb

テリー斉藤さんが個人翻訳者を対象に実施したアンケート結果に基づく、JTFの業界調査よりもっとリアルの「白書」です。

現在の翻訳 "業界" が抱えている問題点がいろいろと見えてきます。


実は、これにまとめられなかった話もたくさんあるそうで、それについては、テリーさんが「テリらじ」で

大々的にゴニョゴニョ~

っとやっちゃうそうです。

放送予告:テリラジ拡大版放送決定「翻訳者の真実」 | 翻訳横丁の裏路地

9/20、22:00からの予定です。

刮目して待て!

05:54 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.09.05

# そもそも、翻訳業界って存在するの?

昨日、宝町の事務局でJTFジャーナルの編集会議をやっていたとき、編集長からの発議に対して私がふと口にしたのが、タイトルの言葉でした。


日ごろから深く考えていたわけではなく、でもたぶん、ぼんやりと頭の片隅にあったのかもしれません。


翻訳業界なんて、存在しないんじゃないの?




当のJTF(日本翻訳連盟)は、"業界" 団体ということになってますし、2013年には、「翻訳業界調査」も実施しました。


でも、たとえば出版業界とかデザイン業界、写真業界のような "業界" と比べたら、あまりに規模が小さすぎて、全体としては "業界" の体を成していないんじゃないか、と思ったのです。


そのなかで、しいて言えば

ローカライズ(ローカリゼーション)業界

というのはありそうな気がする。

だから、Tradosっていうのは、翻訳業界のデファクトスタンダードなんかではなく、ローカライズ業界のスタンダードにすぎない、という言い方ならできる。


でも、「特許翻訳業界」なんてなくて、実は「特許業界」のなかに「翻訳課」があるだけなんではないだろうか。

ほかの分野のことはよくわからないけどね産業翻訳の各分野は、ほとんどどれもその程度が実態なんじゃないか。


ひるがえって、出版翻訳にしても、あれは「出版業界」のなかで「翻訳部門」がいろいろと苦労しているだけなのかもしれない。


---などと、漠然と考えました。


と言って、別にそれを悲観してるとか嘆いているということじゃありません。


「翻訳業界」という名前でくくってしまって、いろんなことをざっくり考えるのではなく、こんな風に、

他業界のなかの特殊な機能がスピンアウトして、緩やかに結びついた特別な業界

くらいに考えてもいいんじゃないかということ。


それを前提として、でも共通の部分はあるはずだから、そこを制度化するなりルール化するなりする。そのうえで、「翻訳業界」から、もとの他業界に対して、できるところから働きかけていく。


そうしないと、いつまで経っても、

ソースクライアント---翻訳会社---翻訳者

というトライアングルが全体としてハッピーになれないんじゃないか。


いつもながら、アバウトですが。

というわけで、そのJTFが開催する翻訳祭は、今年いよいよ25周年を迎えます。

リンク:翻訳祭 : 日本翻訳連盟

プログラムももうすぐ発表されるようです。

05:29 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4)

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2015.08.15

# 9月のほんま会~東京でもしんハムさんのPCセミナー!

予定どおり、8月9日(日)に大阪のほんま会にお邪魔し、しんハムさんとコラボする特別会に登壇してきました。昨年8月に続いて2度目のほんま会遠征でしたが、その報告はまた改めて書く予定です。

そのしんハムさんこと小林晋也さんが、入れ替わりというわけではありませんが、東京ほんま会に登壇してくださることになりました。こちらも昨年の10月に続いて2度目の相互交流。

リンク:翻訳者のためのパソコン超入門 東京でも基礎からわか~る ハードウェア・OS編セミナー

9月13日(日)13:00~16:30、場所はいつものとおり翻訳センターさんです。

翻訳にいつもPCを使ってはいるけれど---


基本がわかっていないことには自信がある

とか

パソコン音痴ということなら人後に落ちない

とか

トラブルのときは、とにかく詳しい人頼み

という人には、特におすすめです。

この企画をしんハムさんにお願いしたのは5/9、翻訳フォーラムのシンポジウムのときのこと。それに参加なさっていたしんハムさんに、東京ほんま会のメンバーが頼み込んだ形です。

なぜかというと、実は大阪のほんま会でしんハムさんは、今年に入ってから「翻訳者のためのパソコン超入門」という、実にうらやましいシリーズを担当なさっていて、それ東京でも聞きたい!(聞いてもらいたい)と思ったからなのでした。

4月が「ハードウェア編」
6月が「OS編」


東京では、時間の関係で同じ内容をすべて再現していただくことはできませんが、2回分のエッセンスをギューッとつめてお話しくださる予定です。


ハードウェアとOSの基礎をおさえられれば、今後のトラブルシューティングに役立つことは間違いありません。


しかも、しんハムさんのセミナーは

テキストも充実

しています。


お申し込みは、上の書いた東京ほんま会のサイトからどうぞ。もちろん、しんハムさんを囲んでの懇親会もあります。

10:27 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.07.27

# 最近の辞書環境について - セミナーの予告を兼ねて

すでにご存じのとおり、(世間一般ではなく)翻訳者にとっての辞書環境は、この数年でだいぶ先行きが見えない状況です。

  • EPWING仕様の辞書ブラウザは細々と開発が続いているが、辞書タイトルは絶滅危惧種(うんのさんご夫妻は、今後もEPWING仕様を継続するとおっしゃっていたそうです)
  • SIIの「デイファイラー」シリーズは2015年3月で終了
  • ほぼ唯一残ったといっていい統一規格のLogoVistaは、辞書ブラウザがまだまだ未熟

まず、これから辞書をそろえたいと考える人たちに、辞書のおすすめができなくなりつつあります。

そして、ある程度の辞書をすでにそろえている現役にとっても、「今の環境をいつまで維持できるのか」という不安はとても大きい(特にOSの移行を考えると)。


前のエントリで紹介した今後数か月間でのセミナーでは、そういう辞書環境の現状についても少し触れますが、それ以前の話、つまり

そもそも、今ある辞書をちゃんと使えていますか?

という話をするつもりです。

  1. 辞書の「凡例」について
  2. 主な辞書ブラウザ(Jamming、Logophile、EBWin4、DDWin、LogoVista)の機能
  3. 「串刺し」を超える使い方

特に 2 については、「前方一致」と「後方一致」まではわかるとして、それより詳しい検索機能をちゃんとわかっていないと、

せっかく載っている情報を活かせない

ことになります。Jammingと、その後継バージョンであるLogophileでも、検索機能は同じではありません。

というわけで、まずは今ある辞書リソースをちゃんと使えるようにする、そのことをお話しします。

私の持ち時間は、8/9(日)の「翻訳者のためのマクロ勉強会(ほんま会)」がいちばん長いので、このときがいちばん詳しくなるはずです。


9月19日(土)~20日(日)の「翻訳パワーアップ合宿」は、和訳の話がメインになりますが、辞書についても軽く触れる予定です。


10月15日(木)のJTF翻訳セミナー 「『辞書・コーパス・用語集』最新情報」では、私の持ち時間は1時間弱くらいになると思いますが、深井先生の話とあわせて、もっと広い視野の「調べ方」が見えてくるはずです。


準備を進めるなかで、私自身も各ブラウザについていろいろと発見しているところです。

その発見を、できるだけ多くのみなさんに共有しようと思います。

【追記】
EPWINGは全大文字が正しい表記のようです。失礼しました。m(__)m

10:11 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.07.14

# これから先のセミナーなど

公式な告知が出そろったようなので、8~10月に帽子屋が登壇するセミナーの予定をまとめておきます。

今年は、いろいろと活動を抑えたつもりなのですが……



8月9日(日)9:30~17:00

翻訳者のためのマクロ勉強会 大阪勉強会 特別会

リンク:大阪勉強会詳細 - 翻訳者のためのマクロ勉強会

昨年に続いて、今年もなぜかクソ暑い季節に大阪のほんま会にお邪魔することになりました。

しかも、昨年の東京に続いて、しんハムさん(小林晋也さん)とのコラボ企画です!

内容は以下のとおり(ほんま会サイトより転載):

午前の部:辞書の話 高橋
午後の部1:「テキスト」 小林晋也さん
午後の部2:「テキスト」に関連した翻訳(事前課題あり) 高橋

「辞書の話」については、別のエントリでちょっと詳しく書きます。

9月3日(木曜)開講・全8回 14:00~17:00 

サン・フレア アカデミー:Trados徹底活用講座<2015年度>

リンク:Trados徹底活用講座<2015年度> | サン・フレア アカデミー


2013年、2014年と続いて3期目の開講です。

今年は、サン・フレアさんのTradosのプロ・山田修司さんが最初の3回、残りの5回を高橋が担当するという構成です。最初の3回でTrados Studioの基本を覚え、残りでさらにそれを実践するという形式。

しかも、Tradosは最新版のStudio2015を使います。

9月19日(土)~20日(日) 1泊2日

NIT Academy主催「翻訳パワーアップ合宿」

リンク:Academya - NIT INC:合宿概要

実は、こんな企画が進行しておりました。翻訳クラスタでも前例がほとんどない、1泊2日ずーっと翻訳の勉強しちゃおうという合宿形式の勉強会です。

主催は、新田順也さんの会社「NIT」。府中にある素晴らしい研修施設を使います。

英日翻訳を主に帽子屋が担当し、日英翻訳を遠田和子先生が担当します。さらに、新田さんがツール周りをフォローします。

10月15日(木) 14:00~17:00

JTF翻訳セミナー 「『辞書・コーパス・用語集』最新情報」

リンク:JTF翻訳セミナー 第3回

辞書やコーパスを中心とした調べもののセミナー。こちらは、なんと深井裕美子先生とのコラボ!

直接的には、5/9に登壇できなかった翻訳フォーラムの埋め合わせという感じです ^^;

第1部「辞書の基本」(高橋)
第2部「翻訳のための辞書(深井先生)

という構成でお話ししします。


こうして並べてみたら、今年のこれから3か月間は、コラボ企画だらけになってしまいました。

それぞれ違う個性の方とのセッション。かなりドキドキワクワクです。

12:00 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.07.12

# 十人十色(7/5)の発表資料の補足 - PASORAMAの凡例

各辞書の凡例の見方を紹介したとき、PASORAMAについてはこう書きました。

 初期画面から[凡例]を選択


すいません、これだけじゃよくわかりませんでしたね。

白状すると、私はDAYFILERを買って以来ずーっと、PASORAMAにつないで使っているだけで、本体を操作したことはほとんどありません。発表資料に書いた上のひと言も、マニュアルからはしょって引用しただけです。

改めて補足・解説しておきます。

マニュアルには、以下のように書いてあります。

各辞書の初期画面のとき、補助メニュー(→P6)の「凡例」をタップすると、凡例の項目が表示されます。
(p.70)

で、この「補助メニュー」の出し方すら知りませんでした。p.6に飛んでみます。

■補助メニューの使いかた
画面最下部の中央「^」マークを指で上にスライドさせると、画面下部から補助メニューがポップアップ表示されます。 Ctrlキー+[↑]で同様に補助メニューがポップアップ表示されます。

1507121


それにしても、DAYFILER本体って、

タッチ操作がけっこうトロい

ですねぇ……

ベースになってるAndroidのバージョンはわかりませんが、これはイカンなぁ。

03:34 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2)

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2015.07.10

# フェロー・アカデミーのオンラインコンテンツ 2 件

ほぼ同じタイミングになりましたが、フェロー・アカデミーさんとアメリアさんで、オンラインの記事が2つ公開されました。


ひとつは、フェローさんが創立40周年を記念して本日オープンした特設ページ。

リンク:翻訳学校フェローアカデミー40周年記念~言葉のチカラ~

こちらの「言葉のチカラ」というコーナーに、拙文を寄稿しました。

リンク:実務翻訳者 高橋聡 | 言の葉に思いをはせる | 翻訳学校フェローアカデミー40周年記念~言葉のチカラ~

もうひとつは、アメリアのサイトで、しかも会員用コンテンツなので、ごめんなさい、会員しか読めません。

リンク:【Amelia】翻訳者と翻訳者を目指す方を応援するアメリア

昨年1年間、会報紙『アメリア』に連載したコラムを、オンラインで再掲したものです。昨年の連載は12か月で12回でしたが、オンライン版は2週間ごとに更新されるそうです。



特設サイトのほうは、ランダムなのか順番なのかわかりませんが、ページをリロードすると何回目かに帽子屋が出てきます。まともな写真になってて、ほっとしました。

リロードが面倒な場合は、「その他の言葉のプロたちを見る」というボタンをクリックすると、全員が並びます。







いやもう……並んでる顔ぶれを見てびっくりしました。

ばらしちゃいますが、こんなすごい方たちの中に並ぶとは思っていませんでした。とても居心地が悪い……

04:10 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.07.06

# 十人十色(7/5)の発表資料といくつかの補足

昨日7月5日は、Facebookグループの勉強会「十人十色」が、「東京編2015」と題して久しぶりの勉強会を開催しました。


午前の部

矢能千秋さん「産業翻訳者が出版翻訳の世界に踏み出すには:第四弾」


午後の部

ツール編
井口富美子さん「Evernote活用法」
中島拓哉さん「クラウド型工程管理ツール」
東尚子さん「Xbenchの活用方法」

翻訳編
高橋さきのさん「ライティングの基本」
大光明 宜孝さん「私の翻訳法」

辞書編
大久保克彦さん「青空WINGなど自作公開EPWING形式」
水谷健介さん「dicregate を中心に検索について」
内山卓則さん「自作のツール「かんざし」の紹介」
高橋聡「代表的な辞書ブラウザの使い方と学習辞典」


いつも以上に活発で刺激の多い会となりましたが、その最大の要因は、初めて登壇してくれた方がたくさんいらっしゃったことでしょう。

発表者のみなさん、ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。




私も最後に辞書ブラウザのことを話しましたが、そのときの資料をここにもアップしておきます。
(ファイルアップロードの制限の関係で3分割してあります)

高橋の発表資料その1

高橋の発表資料その2

高橋の発表資料その3

※クリックするとすぐ、pptxファイルがダウンロードされます。


なにしろ持ち時間が少なかったので、いくつか補足しておこうと思います。

1507061

私のスライドでJammingの画面を見て、左側のツリー表示がなんだか違う……と思われた方もいるかもしれません。

これは、私がリスト表示のオプションをこのように変えているからです。

1507062

([表示]→[検索結果のリスト]→[指定数を開く]


そのうえで、[オプション]→[環境設定]→[操作]タブで、このオプションも設定します。

1507063

こうしておくと、ヒットした項目が6個以上あっても、各辞書では最大5個までしか表示されません。辞書名の左にある[+]と[-]のアイコンをクリックすれば、

1507064

このように、本来あるはずの数が表示されます。

この[表示]→[検索結果のリスト]オプションを、[すべて開く]にすれば、数の制限なくすべてが表示されます。

また、[すべて閉じる]にすると、辞書名だけがリストされて、[+]アイコンをクリックして初めてリストが表示されます。

好みだと思いますが、個人的には[指定数を開く]が便利だと思っています。いろいろお試しください。

Logophileには、このような表示オプションも(今のところ)実装されていません。これも残念な点です。


表示関連で言うと、[表示]→[本文]→[単項目表示]/[連続表示]の違いにも注意してください。

1507065

辞書タイトルによっては、このオプションで表示がまったく違うことがあります。たとえば、『ジーニアス英和大辞典』では、[単項目表示]にすると、

1507066

これしか表示されません。[連続表示]にすると、すべての内容が見えます。

1507067

この動作は辞書タイトルによって違うみたいです。


02:41 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.07.03

# 「日本翻訳ジャーナル」7/8月号

「日本翻訳ジャーナル」7/8月号(No.278号)が発行されました。


いつものように、右カラムにあるPDFの画像からリンク先にどうぞ。


私のコラムは、前号から、各地の勉強会を特集しています。前号(5月上旬発行)は、忙しくて告知を忘れてしまったので、あわせて紹介します。

No.277号 フリースタイル、翻訳ライフ:「勉強会が教えてくれること」中澤甘菜さん

No.278号 フリースタイル、翻訳ライフ:「地方都市におけるネットワーキング」中島拓哉さん


どちらも、まだお邪魔したことはないのですが、勉強中の熱気と、その前後の楽しさがいろいろと伝わってきます。

ちなみに、この号ではほかにも、こんな特集があります。

JTFスタイルガイドセミナー報告「スタイルガイド入門」

4月に開催した、スタイルガイドセミナーの報告記事です。


そしてもうひとつ。5/9の翻訳フォーラムシンポジウム---私が登壇できなかったイベントです---の報告記事も載っています(第4部)。

翻訳フォーラム・シンポジウム2015 「翻訳の話をしよう」

こちらは、PDF版には載ってなくて、

Web版のみの収録

なので、ぜひWeb上でご覧ください。

09:58 午後 翻訳・英語・ことばJAT・JTF | | コメント (0)

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2015.07.02

# 『ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか』

今、こんな本も読んでます。

「本を」でないのは、たいていは、いくつも並行して読んでるせい。


筆者はランドール・ マンロー(Randall Munroe)


会員誌「アメリア」2014年8月号の定例トライアルを読んだ方なら、記憶の片隅のまた片隅くらいに残っている人名かもしれません。

このときの定例トライアル(実務・テクニカル)で出題した文章は、これでした。

リンク:Why You Should Stop Worrying About the Robot Apocalypse | Smart News | Smithsonian


この出典そのものはSmithsonian.comの記事ですが、引用元としてランドール・ マンローさんのサイトの記事が紹介されています。それがこちらでした。

リンク:Robot Apocalypse


ちょっと前に首相官邸襲撃未遂に落下して話題になった「ドローン」が、ここにも出てきます。

150702

元々の文章も楽しいですが、この棒人間イラストがなんとも言えない味わいです。


そして、このサイトに不定期に書かれた記事をまとめたのが、上で紹介している本というわけです。

ちなみに、上のサイトのいちばん下までスクロールして[ARCHIVE]をクリックすると、書籍に収録された過去記事が読めるようになっているので、邦訳の『ホワット・イフ』と併せて読むと一興かもしれません。

04:00 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.06.22

# EBWin4、地道にバージョンアップ継続中

Jammingの公開が完全になくなり、後継アプリケーションLogophileのバージョンアップもあまり進まない(最新版が2014/4)なか、EBWin4がコツコツとバージョンアップを続けています。

リンク:EBWin4

最新バージョンは、全文のインデックス化にも対応したようです(私自身は試していません)。

確認できた範囲で、ひとつ嬉しいのは、

LogoVista版タイトルの外字対応が、Jammingよりだいぶマシ

ということです(詳しくは後述)。



あらためて、翻訳者が使いたい辞書環境の現状を整理してみると、2015年6月の時点では以下のような感じです。

  1. EPWing規格は先細り。過去にあったEPWingタイトルも次々と絶版になり、新しいEPWingタイトルはまったく発売されなくなりました。
  2. 期待の星だったSIIが電子辞書事業から撤退。翻訳者にとって救世主的な存在だったPASORAMAも、今や現存機種が生きているうちしか使えない、という不安な状態です。
    ちなみに、Windows 10(プレビュー版)でもPASORAMAが動くことは、内山さんが確認してくださいました。

    リンク:Windows 10 プレビュー版でPASORAMAを動かしてみた: かたかむーす

  3. 同じフォーマットで今後もタイトル追加が期待できそうな、今や唯一のプラットフォームとなったのがLogoVistaです。ただし、
    ・ブラウザの使い勝手がまだまだ
    ・インストール回数に制限がある(解除は可能)
    ・タイトルによってフォーマットが次々と変わる
    など、ユーザーの間でも評判はいまひとつ。
  4. オンラインの、特に有料版が浸透しつつあります。研究社のオンライン辞書サイト「KOD」は、翻訳者の間でもだいぶユーザーが広がりつつあります。


ということで、これからはたとえば

オンライン辞書 + LogoVista

という使い方が定番のひとつになるのかもしれません。

そんな状況でも、EPWingブラウザとして少しずつ進化を続けているのがEBWin4です。

まだまだJammingほど完成度は高くなく、環境によってはエラーも少なくありません。

  • 辞書の追加、特にグループ設定が不自由。Jammingのように、一度追加した辞書を簡単にグループ化できるわけではなく、グループを設定したら、そこにまたいちいち辞書タイトルを追加しなくてはいけません。
  • 辞書ボタンが1列にしか並ばない。
  • 表示オプションもまだ多くない。
  • タイトルによっては異常終了する(私の環境では、Longmanが動きません)。


逆に、Jammingより良い点もあります。

  • 使用可能な検索方法をすべて試す「自動検索」がある。
  • 辞書内でリンクをたどったとき、履歴を「戻る/進む」ボタンがある。

そして何より、

タイトルごとに外字テーブルを指定

できるというのが、Jammingより強いところです。

つまり、LogoVistaタイトルでも、外字の文字化けがなくなる、もしくは軽減するということなのです。


Jammingでは、[オプション]→[環境設定]→[辞書別]タブを開くと外字を設定するオプションがありますが(タイトルによっては表示されない)、

1506221

ここから進んで、

1506222_2

1文字ずつ指定するようになっています(たしか、手動で外字テーブルを作って所定のフォルダに置くこともできたと思いますが……)。


一方、EBWin4では、[ファイル]→[辞書の編集]ダイアログを開くと、[外字マップ]というドロップダウンメニューがあって、そこでLogoVistaの外字ファイルを選択できます。

1506223

タイトルによって差はありますが、私の環境で、明鏡国語辞典についてはこうなりました。


1506224
これがJamming上。


1506225
こちらがEBWin4


ということで、今後、既存のEPWing仕様データとLogoVistaタイトルを併用するための辞書ブラウザとしては、EBWin4も十分に選択候補になりそうです。

少なくとも今いちばん、作者がユーザーの声を反映して

バージョンアップを続けてくれそう

であり、応援してみる価値のあるアプリケーションはこれではないかと。

05:03 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0)

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2015.06.12

# 東京ほんま会で、AHKセミナー開催

ほぼ2か月に1回以上のペースでセミナーを続けている東京ほんま会。
(5/17の分は、私に余裕がなくて詳細を予告しないまま過ぎてしまいましたが……)

いよいよ次回は、AutoHotkey(AHK)の入門セミナーです。

リンク:東京ほんま会 -- 「何でも自動化、AutoHotKey入門セミナー ~ AHKに受信料は要りません」


しかも、講師にはAHKのスペシャリスト、本間まさのりさん(aka なめこさん)を、大阪のほんま会からお呼びします。

日時:7月26日(日)13:00~16:30
会場:株式会社翻訳センター
定員:40名
受講料:3,500円(事前振込)

修了後は、もちろん懇親会もあります。


お申し込みは昨日から受付を開始しましたが、すでに半分くらいの席が埋まりました。興味のある方は、お急ぎください。


AHKのセミナーは、昨年の9月に勉強会・十人十色でも開催しました。

# 「翻訳者のためのAutoHotkey入門講座」、9/8開催

この頃から、AHKでいろいろ便利になったーというAHKファンは増えてきましたが、波に乗り損ねた人は、この機会にぜひどうぞ。

また、Wordマクロや秀丸マクロをある程度使えるという方にも、アプリケーションの枠を越えて使えるAHKのメリットをぜひ知っていただきたいと思っています。


しかも今回は、原則としてPC持参のうえ、インストールと最初の使い方から手ほどきしますので(ほんま会の恒例として、進行に遅れがちな方は、スタッフがサポートします)、今までにチャレンジしてみて挫折した方も、きっと大丈夫です。


06:45 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.04.23

# シーブレインさんのわかりやすいスタイルガイド記事

しばらく前にここで予告したとおり、先週13日に、JTFスタイルガイドセミナーの第1回を担当しました。

同じ日の午後には、株式会社シーブレインさんの伊藤さんと野崎さんが登壇。私が前半でやったスタイルガイドの入門に続いて、翻訳会社ではそれをどんな風に運用しているのか、わかりやすく説明してくださいました。


そのシーブレインさんが運営しているブログが、「つぼログ」

IT系の小ネタからツール情報、翻訳の話など、不定期におもしろい記事が登場しますが、こちらは同社で複数の担当者が持ち回りで記事を書いていらっしゃる。そして、伊東さんと野崎さんもそのメンバーなのでした。

さて、このブログの過去記事も、Twitterでときどき紹介されています。

今朝も

【過去記事リターンズ】IT 産業翻訳のための日本語テクニカル ライティング (4)

というのがあって、先週のセミナーに連動した投稿かもしれません。タイトルとは違って、スタイルガイドとも言えるような内容がまとまっている良記事です。が、過去記事なのですぐにはシリーズ全体が見つかりません。

もったいないので、探し出してリンクを貼っておくことにしました。


つぼログ。-IT翻訳の現場から-: IT 産業翻訳のための日本語テクニカル ライティング (1)

つぼログ。-IT翻訳の現場から-: IT 産業翻訳のための日本語テクニカル ライティング (2)

つぼログ。-IT翻訳の現場から-: IT 産業翻訳のための日本語テクニカル ライティング (3)

つぼログ。-IT翻訳の現場から-: IT 産業翻訳のための日本語テクニカル ライティング (4)

いわゆるスタイルガイドのように「ここをこうしなさい」という内容ではなく、スタイルガイドによく載るポイントが簡潔にまとめてあります。つまり、IT系で何か書くときは、こういう点に気を付けましょうということが整理されている。

これからIT翻訳業界のことを知りたい人

には、特におすすめです。

06:05 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (5)

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2015.04.10

# アメリアで初の試み--「定例トライアル連動講座」

しばらく前から、アメリアさんの会員向け雑誌『アメリア』で、定例トライアル(実務・テクニカル)を担当しています。

1年に3回の出題で、数か月後に成績発表と訳例、講評が、同誌に掲載されます。


この講評、だいたい4,000字前後なのですが、いつもちっとも紙数が足りません。毎回、それほど難しい出題のつもりはないのですが、いざ採点になってみると、予想外の訳語・訳文が出てきまて(論外、というような答案は別にしても)、解説したい、しなければならないこともた~くさん出てきます。


それで、以前ここでやったように補足したりもしました。
リンク:禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # セキュリティ警告画面(アメリア定例トライアル補足)


それで、ふと思いついて事務局と相談した結果、なんと、アメリアさんとしては初の試みになりますが、

定例トライアル連動講座

というのを開催することにしました。

定例トライアルの課題についての解説を、誌面に載る講評だけではなく、直接の講義でお話ししようというわけです。

お題は、2月号に載った課題「Analog computers」。

5月21日(木)の午後、フェロー・アカデミーで実施します。


……と、ここで書いてはいるものの、どなたにもご参加いただけるわけではありません。2月号定例トライアルを受け、かつB以上の成績をとった方のみが対象(希望者多数の場合は抽選)ということになっています。

ごめんなさい m(__)m


翻訳業界でも、いろんなトライアルや資格試験がありますが、試験と連動した講座って、もしかしたら初の試みかも……?……と思って、紹介だけしてみました。


03:57 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.04.07

# ブロガーと翻訳者のたいせつな違い

ブログを持っている翻訳者は多い。


「翻訳者です」とは特に書かずに個人的なことだけ書いているブログもあるんだろうけど、翻訳者と名乗って、翻訳のことも日常のことも書いているブログがやはり多い(このブログも同様)。

ブログを営業ツールの一環と位置付け、仕事の案内まで載せているところもけっこうある。


そういうブログのいくつかで、気になる記事を、たまたま続けて見かけた。以下、特定のブログに対する攻撃ではありませんと断ったうえで、結論から書いておこう。それは、


翻訳者はブロガーの真似をしてはいけない

ということだ。

ブロガー、特に「トップブロガー」と言われる方たちが、なぜブロガーたりえているのか。という論考は面倒なのでしない。上に書いたように、翻訳者との比較でだけ話を進める。


ブロガーは、ブロガーであることを仕事にしているし、ブロガーとして完結している。

リンク:今日で独立4周年! フリーで豊かに生き続けるための 7つの心構え | No Second Life

これは、私が直接知っている数少ないブロガーのひとり、立花岳志さんの最近のエントリーだ。ついでに、その少し後に書かれた、こちらもおすすめなので紹介しておこう。

リンク:ずっと上手くいくカップルは、皆お互い「○○しあっている」。たった一つの共通項 | No Second Life


ここで書かれていることに共感しようと疑問を感じようと怒りを抱こうと、それは人それぞれだけど、どう反応するにしても、それはすべて、

ブロガー立花岳志個人に向けられる。

この人いいこと言ってるなぁ、とか。何をバカ言ってやがる、とか。

そういうレスポンスが、ブログでの炎上につながることもあれば、引用されたTwitterやFacebook上でバズになることもあるだろう。だが、それを引き受けるのは、すべて立花岳志その人だけだ。


要するに、ブロガーというのは、企業とか業界とかいった所属先をまったく持たない、完全に独立した立場だ。だから、そこで生じるいろんなことにすべて個人の責任で対処できるし、対処しなければならない。


ひるがえって、翻訳者(ここではフリーランスの、と限定)のブログというのはどうだろうか。

誰がどんな個人名でやっていようと、どんなに小さいブログであろうと、「翻訳者」と名乗っている以上、それは「翻訳者のブログ」だ。そうすると、そこに書かれているエントリーは、

翻訳者の発信した情報

として読まれることになる。ということは、


翻訳について何かまちがったことを書けば、それを鵜呑みにする関係者や翻訳学習者が一人や二人や三人や四人はいるかもしれない。

翻訳以外の業界とかフリーランス以外の人について何かを書けば、それが翻訳業界あるいはフリーランスという人種からの激しい敵意と受け取られるかもしれない。

ブロガーとの違いはもう明らかだろう。ブロガーが背負っているのは個人名だけだが、翻訳者は、その後ろに

「翻訳業界」というものを背負っている

ということなのだ。


「個人ブログですから」

などという言い訳は通用しない。そんな言い訳をするくらいなら、いますぐ「翻訳者」という看板をすべて下ろして、あくまでも個人として発信してほしい。


「どうせウチのブログなんて、PVもたいしたことないし、影響力なんてないでしょう」

と考えているとしたら、ブログ草創期ならいざ知らず、今では甘いと言うしかない。まして、駆け出しの翻訳者や翻訳学習者はインターネットとの親和性が高い。知りたいと思うことがあればすぐにググる。もし自分のエントリーがヒットして、そこであらぬ誤解や誤情報を与える可能性を考慮していないとしたら、それは情報発信者としての責任放棄である。


最後にひとつ。

ブロガーの真似をしようと思うなら、トップブロガーをもっと研究したらいい。

上に引用した立花岳志さんのふたつのエントリー。そこに書かれているWHATだけでなく、HOWもしっかり読み取ってみてはどうだろうか。トップブロガーという人が、どれほどの神経をつかってエントリーを書いているか、わかるはずだ。

それがわからないようなら、やはりブロガーの真似などすべきではない。

09:26 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.04.04

# 記者ハンドブックにおける漢字の扱い(11版、12版)

4/13のスタイルガイドセミナーに向けて資料を作りながら、あらためて『記者ハンドブック』第11版と第12版における常用漢字表の扱い方を調べてみました。


ちなみに、まだ第12版は持っていなかったのですが、土曜の朝7:00にAmazonで注文したら、夕飯中に配達されました(プライム)。



『記者ハンドブック 第11版』

常用漢字表のうち使わない11字

謁 虞 箇 且 遵 但 脹 朕 附 又 濫

常用漢字表にないが使う45字
磯 牙 瓦 鶴 釜 玩 亀 臼 脇 錦 駒 詣 拳 鍵 舷 虎 虹 痕 挫 柿 餌 腫 袖 哨 尻 腎 須 腺 狙 曾 誰 酎 賭 瞳 頓 丼 謎 鍋 汎 斑 枕 闇 妖 嵐 呂

常用漢字表にない音訓を加えた12字
証(あかし) 癒(い-える、い-やす) 粋(いき) 個(か) 描(か-く) 要(かなめ) 応(こた-える) 旬(しゅん) 鶏(とり) 放(ほう-る) 館(やかた) 委(ゆだ-ねる)

『記者ハンドブック 第12版』

常用漢字表のうち使わない7字
虞 且 遵 但 朕 附 又

従来不使用だったが使用するようになった3字
謁 箇 濫

常用漢字表にないが使う6字
磯 炒 絆 哨 疹 胚

第11版で「常用漢字表にないが使う45字」に入っていて、常用漢字の改訂で追加された196字でカバーされた43字
牙 瓦 鶴 釜 玩 亀 臼 脇 錦 駒 詣 拳 鍵 舷 虎 虹 痕 挫 柿 餌 腫 袖 尻 腎 須 腺 狙 曾 誰 酎 賭 瞳 頓 丼 謎 鍋 汎 斑 枕 闇 妖 嵐 呂

同、今回もカバーされなかった2字
磯 哨

常用漢字表から削除された5字
勺 錘 銑 脹 匁

第11版で「常用漢字表にない音訓を加えた12字」に入っていて、新たに音訓が加わった28字でカバーされた9字
癒(い-える、い-やす) 粋(いき) 描(か-く) 要(かなめ) 応(こた-える) 旬(しゅん) 放(ほう-る) 館(やかた) 委(ゆだ-ねる)

こうしてみると、たしかに旧・常用漢字には、日常的にわりと使ってて、「あれ、これも入ってないの?」という字が多かったこと、そのほとんどが新・常用漢字で追加されたことがわかります(改訂の当時、だいぶそういう話が出てました)。

旧・常用漢字の「脹」ってなに? と思いましたが、「膨脹」の脹でした(今は「膨張」の字を当てる)。


そのほか、いろいろと発見もありました。

読みが追加された「放(ほう)る」ですが、これって、音読みなのに送りがなが付いてるんですよね? ちょっと不思議。

とか、

「磯」の字って、某国民的アニメの登場人物たちの苗字ですよね。それなのに、まだ認められてないんだ……

とか、

それから、これ、今ごろ何なんですが、第11版のp.18には、

☆印は常用漢字表外音訓だが、本社が使う十二字の音訓である。

とかいてあるんですが、本文見ると、実際に付いてるのは☆印じゃなく、□印なのね

とか。


09:52 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (5)

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2015.04.03

# 漢字-ひらがな-カタカナの比率をチェックするマクロ

分野や文章の種類、用途によってかなり違ってくるので一律には語れませんが、漢字の比率で、文章の硬さはかなり変わってきます。漢字が一定の比率を超えると、ぱっと見た感じで原稿が黒っぽい感じになる。

おおざっぱですが、20~30パーセントの範囲が「読みやすい」目安なんだそうです。

文字数と漢字使用率を同時にチェック|WEBライティング用ツール

このサイトには

新聞の社説(約50%)>マニュアル(約40%)>教科書(約30%)>雑誌(約30%)>WEB(約25%)です

と書いてあります。裏はとっていません。


MS Wordには、文章校正の一環として「読みやすさ」という項目があって、そこで漢字/ひらがな/カタカナの比率を表示できるようになっています。

設定が必要です。


[ファイル]→[オプション]→[文章校正]を開いて、[文章の読みやすさを評価する]をチェックしておきます。

1504031
(私の環境では他のオプションをオフにしてあるのでグレイアウトされていますが、これでも機能します)

チェックするファイルを開いたら、[校閲]リボンで[表記ゆれチェック]を実行すると、最後にこんなダイアログが表示されます([スペルチェックと文章校正]を実行しても最後には表示されるのかな、未確認です)。

1504032_2


ちなみに、冒頭にあげたリンク先には、文章をペーストすると同じような文字種バランスをチェックしてくれる機能もあるのですが、つい一昨日のエントリで、翻訳内容の漏洩事件を取りあげたばかりです。お仕事の内容をこういうところにむやみにペーストしちゃうのは考えものです(プライベートな文章ならかまわないと思います)。ペーストされた内容の保持などについて、何も解説がないので、念のため避けましょう。


Wordを使えば、上に書いたような機能が使える……はずなのですが、どういうわけか、私の環境ではなぜかこの機能が使えないファイルもあったりします。

そういうツールがあってもよさそうだな、と思ってちょっと調べてみましたが、案外ないもんですねー。

ということで、秀丸マクロを作ってみました。

秀丸マクロファイル
「CheckReadability.mac」をダウンロード
(右クリックで保存してください)


Windowsの再描画を一時的に停止するので、マクロを実行すると、秀丸のウィンドウが少し崩れることがありますが、問題ありません。

文字数の計算方法には、Wordと秀丸でそれぞれクセがあるので、完全には一致しないこともありますが、あくまでも「目安」なので、その目的くらいには使えると思います。


07:31 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば 翻訳者のPCスキル | | コメント (0)

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2015.04.01

# トンデモな発注で情報流出だって

先日、機械翻訳のトンデモ出力のことを書きました。そのときの要点をまとめます。

・機械翻訳には、もっともっと進化してもらいたい

・ソリューションを提供する側も使う側も、もっとちゃんと考えてほしい

・お役所仕事の典型なんだろうけど


それから1か月も経たないうちに、今度は、そんなお役所仕事のもっとお粗末な顛末が発覚しました。

リンク:原子力規制庁:内部資料が流出…ネット上に新人研修資料 - 毎日新聞

ニュース記事はすぐリンクが切れてしまうので、魚拓を貼っておきます。

魚拓:http://megalodon.jp/2015-0401-1020-55/mainichi.jp/select/news/20150331k0000m040165000c.html


ニュースでは「インターネットの掲示板で仕事を依頼するサイト」としか書かれていませんが、こちらのブログで、ランサーズという会社のサービスであることがわかります。

リンク:原子力規制委員会の内部文章がランサーズ経由で漏洩!? - Hagex-day info

その後の経緯についても、同ブログの後続記事で詳しく書かれています。

リンク:原子力規制委員会のデータはやっぱり流出してはダメな奴でした - Hagex-day info


そして、その翻訳案件の依頼記事も、まだ見られる状態。

リンク:至急 原子力パワーポイントスライドの翻訳 の依頼/外注 | 英語翻訳・英文翻訳の仕事 | ランサーズ

ただし、こちらはいつなくなるかわからないので、スクリーンショットも貼っておきます。

150401
(縦長の画像です。ブラウザの新規ウィンドウ/タブで開いて等倍にしてみてください)

機械翻訳とならんで最近、急成長しているのが、こういうオンラインの翻訳サービスです。形態は少しずつ違いますが、だいたい「クラウド翻訳サービス」と呼ばれています。

ネット上で翻訳依頼が発生し、登録している翻訳者が基本的には早い者勝ちでその案件をゲットして翻訳する、という流れ。

そういう需給が成り立つ場面では、なかなか有効なサービスだろうと思います。翻訳の品質を保証する仕組みもいろいろとあるみたいです。


が、機械翻訳と同じく、やはり使い方を間違えたらトンデモないことになるのは当たり前。そのうち何か起きるだろうとは思っていましたが、いきなりこれです。


依頼内容の秘密保持なんて、基本中の基本でしょう。

それが、こうやって平気で流出し、しかも依頼したほうはその事態の重要さにあまり気付いていない様子。


今回のケース、国の行政のあり方とか、原子力行政の呆れた実態とか、いろんな要素がからんでいるとは思います。翻訳業界の問題としてだけ考えます。


安直な機械翻訳でも、いいかげんなクラウド翻訳でも、ひとことで言うと

翻訳ということをナメすぎてる

と思うわけです。


発注する側も、ソリューションを提供する側も、

翻訳なんて、たいしたリソースをかけなくても、なんとかなるでしょ。

くらいの意識でしかない。


翻訳者のステータスがないがしろにされているとか、そういう話ではありません。よく言われることですが、欧米では、翻訳者名が作品に載らないことも多いそうで、日本のほうが翻訳者の名前は表に出てきている。そういうことではないのです。

欧米には、大学にも翻訳課程というのがあって、学位や資格もある。つまり、翻訳者個人ということではなく、翻訳という情報処理の重要さが社会的にきちんと認識・認知されているということです。


話が飛ぶようですが、先の大戦で、連合国側が暗号化と暗号の解読ということに、どれだけのリソースを使ったことか。先日公開された、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』とか、2002年の映画『ウインドトーカーズ』を見るとよくわかります。

つまり、連合国側は、情報ということの大切さを当たり前のようにちゃんと理解していた。そこの認識に雲泥の差があったから、ナチスドイツはエニグマの暗号化性能を過信したし、日本だって暗号を完全に解読されて山本五十六を死なせてしまった。


翻訳というプロセスを軽視することには、なんだか、そういう情報軽視の風潮と通じるものを感じます。

文化の定義はいろいろですが、文化を支えているのは情報です。情報を軽んじた文化は、衰退するんじゃないか、そこまで危惧してしまう、この1か月でした。

10:57 午前 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (0)

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2015.03.25

# これからのイベントなど - 2015年春編

今年も、春からはいろいろと翻訳関連のイベントが目白押し。

まだ募集中のも、定員に達して〆切りになってしまったのもありますが、まとめてご紹介します。

今年の、少なくとも前半はもう少し大人しくしてようかと思ったんだけどなぁ……。

4/13(月)・4/24(金)
JTFスタイルガイドセミナー

2日間4回連続のセミナーです。

このうち、第1回「スタイルガイド入門」を私が担当します。まだお席あります。

同日の第2回「翻訳会社としての品質向上への取り組み」も、まだ受付中です。

24日の第3回「プロが教える日本語文章の校正・リライトのテクニック」は、満員になりました。

同日の第4回「JTF日本語スタイルチェッカーと正規表現の基礎」~「スタイルガイドのカスタマイズ実習講座~ワイルドカードを徹底活用~」は、まだ受付中です。


JTFのセミナーは、直前の駆け込みで席が埋まるのが通例のパターンです。興味のある方は、お急ぎください。


4/19(日)
東京ほんま会:「いまさら聞けない秀丸エディタ入門」セミナー

4/29(水・祝)
ほんま会東京:「いまさら聞けない秀丸エディタ入門」セミナー 追加分

過去何年かで、正規表現とか秀丸マクロとかのセミナーはやってきましたが、よく考えたら、秀丸エディタのそもそもの基本をやってなかった... ということに遅まきながら気づきました。19日は、ご案内したらほぼ1日で満席になってしまいました。PC持参のセミナーになるため、席数も少なかったのですが。

ということで、急きょ、同内容の第2回目を29日に決定。こちらは本日の時点で数席ほど空いているようです。


5/9
翻訳フォーラム・シンポジウム&大オフ2015 「翻訳の話をしよう」

昨年のシンポジウム&大オフに続き、今年もやります。
しかも、会場を大きくして募集人員もかなり増やしました。

……にもかかわらず、こちらもご案内したら即日完売となってしまい、現在はキャンセル待ちの状態です。

第1部で、私も辞書の話をします。

第2部は、深井の辞書話。今まで、もし深井さんの話を聞いたことがなければ、とにかく必聴。

第3部は、ついに実現! 翻訳フォーラム主宰者であるBuckeye(井口耕二)さんとSakino(高橋さきの)さんの翻訳バトルトークです。金子修介監督の『ガメラ 大怪獣空中決戦』以上の迫力が予想され、場合によっては大オフで場外乱闘になるかもしれません。

第4部は、昨年もやった、「フォーラム式翻訳ワークショップ」の公開版です。


5/17(日)
東京ほんま会……詳細は追ってお知らせします。


7/26(日)
東京ほんま会……詳細は追ってお知らせしますが、ビッグゲストを予定しています。


8月
お、8月はもしかしたら、また……?!


それから、こちらは大阪のほんま会ですが、しんハムさん(小林晋也さん)による、なんともうらやましい連続セミナーが始まるようです。

翻訳者のためのパソコン超入門セミナー

第1回は、私が秀丸入門をやるのと同じ4/19かな。しんハムさんとは、こんなところでも気が合っちゃうのでした。

第2回以降の日程はこれから決まるみたいですが、各回のタイトルを見るだけでもうらやましい。

第2回 「OS・ソフトウェア編」
第3回 「ファイル&データ編」
第4回 「ネットワーク編」
第5回 「メンテナンス&トラブルシューティング編」

ぜんぶ聴きにいきたい~。

11:43 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.03.09

# 広がりつつあるトンデモ機械翻訳

これまでにも何度か、特に官公庁のサイトで機械翻訳ソリューションを使った結果、とんでもない出力が表示されたという話を書いてきましたが(右カラムの検索ウィンドウで「機械翻訳」を検索してみてください)、こんなブログがあるというのを知りました。

リンク:村岡花子の故郷・甲府市の公式ホームページに関するブログ

タイトルとは違い、甲府市には限らず機械翻訳のトンデモ事例が紹介されています。


以前、私がこの話を書いたとき目立ったのは、主にクロスランゲージのソリューションでしたが、こちらのブログで報告されているのは、高電社のソリューションです。


そこで、今回はそちらから見てみることにしましょう。


リンク:機械翻訳サービス|中国語・韓国語翻訳なら高電社


あ、最初に断っておきます。

私は、機械翻訳に対して別にラッダイトなわけではありません。最近、機械翻訳でもできそうな仕事というのはほとんど来なくなりましたが、そういう仕事はどんどん機械化してもらっていいと思ってますし、単に科学技術的な興味として、機械翻訳の進化というのは、けっこう楽しく見まもっています。


要するに、機械翻訳にからむ問題というのは、ソリューションやそれを提供する側ではなく、

お役所仕事批判

ということになるのかもしれません。


さて、高電社のページ。

官公庁が使っているソリューションは、これのようです。

Myサイト翻訳|株式会社高電社


ページのいちばん下に、「導入実績」とあって、見てみるとたしかにかなり多くの地方自治体の名前があがっています。上でご紹介したブログにあるように、甲府市や仙台市も。法人で年間36万円ですか? たしかに、地方自治体にとっては手頃な価格かも。


おっと、さいたま市もありますね。では、そちらを見てみることにします。

ページの右上にリンクがありました。

1503091

英文ページに進もうとすると---

1503092

なるほど。まずは、言い逃れ免責ダイアログを表示するわけですね。これも、ソリューションによる生成の模様。"Powered by J-Server Professional"っていうロゴがありますから。

だったら、せめて

免責条項くらいまともな英語で書けよ

と思うのですが……。


実際に英語ページに進んで、"Child Care/Parents" というページを見てみました。

"Child-raising trigger support book"とか、すぐにヘンな英語が目につきます。傾向は、ブログの方が紹介している数々の事例と似ています。

そのページに進んでみました。
リンク:Saitama City/Child-raising trigger support book

"Child-raising trigger support books" are events of all kinds' group supporting child-raising in the area, a sarong and the book which gathered club information. When looking for an idle place with a child, a place by friend making and a club, by all means, please utilize.

だそうです。さっそくほとんど意味不明。その下にある本の紹介も。

I'd like to find you child's friend.
My company who can chatter wants.
I'd like to meet the person who knows information on child-raising.
How I can play with a child, there is no Waka.
I'd like to consult about worries of child-raising....
At such time, wouldn't you like to go out resolutely?

同じページを下に読み進んでいっても、なんとか意味の通る部分は半分もない。


これで、「何もないよりマシ」と言えるのでしょうか。私が発注元だったら、こんなの

年間36万だってもったいない

と思うのですが。


ちなみに、元の日本語はこうでした。

「子育てきっかけ応援ブック」は、地域で子育てを応援している各種団体のイベントやサロン、サークル情報をまとめた冊子です。 お子さんとのあそびの場やお友だちづくりの場、サークルなどを探す際にぜひ、ご活用ください。

子どものお友だちを見つけてあげたい
おしゃべりできる仲間がほしい
子育ての情報を知っている人と知り合いたい
どうやって子どもと遊んでいいかわからない
子育ての悩みを相談したい・・・
そんなときには、思い切って出かけてみませんか?


ためにし、Google先生にも翻訳してもらってみました。

" Parenting opportunity cheer book " is a booklet that summarizes the events and salons , Circle information of various organizations that support the child-rearing in the region . Play places and friends making a place for your child , by all means when you look for , such as Circle , please take advantage

I want to give to find the friends of children
I want fellow that you can chat
I want to know the people who know the information of child-rearing
Do not know how I play with children doing
I want to consult the trouble of raising children ...
When such is , why not go out and take the plunge ?


ちょっとはマシか、いや、五十歩百歩かなぁ。


おそらく、官公庁にしたら予算がすべてなんでしょうから、残念ながらいくら声を張り上げても、こういうソリューションによる「ヘンテコ英語」の垂れ流しは、止まらないでしょう。

一方、機械翻訳は、着実に進化しています。最近、特に2020年オリンピックが決まってからは、いろんなところが、使い物になる機械翻訳ソリューションを開発しようとしていることが報じられました。

いっそのこと、機械翻訳は

一刻も早く、どんどん進化してください

と切実に願います。

翻訳業界の一部は侵食されるかもしれないけど、それでも、こんな呆れた「英語」が垂れ流されるよりマシ。

翻訳者は、進化した機械と競合しない仕事をめざせばいいだけのことです。



最後にひとこと。

免責メッセージを出せばヘンな翻訳が許される

ってもんでもないだろう(※)。

言葉っていうのは、文化を支える根本だ。

その言葉を、他言語使用者に向かって発信するというのは、異なる文化の橋渡しを担う大切なしごとだ。そういう文化の根幹をないがしろにしたらダメだろ。

逆に、その橋渡しをきちんと、ときには命がけでしてきた先人があって今の世界がある。

そういう重さを考えたら、あんなメッセージ1ページで済ませられるはずもない。

提供するほうも使うほうも、そういうことを、ちょっとは考えてほしい。


※Microsoftなどで、免責の一言を書いたうえで機械翻訳を使っているサイトは増えているが、そのへんはPEも併用しているのか、もっとずっとマトモな出力になっている。

12:00 午後 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (6)

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2015.03.05

# JTF日本語標準スタイルガイドのマスコットキャラクター

昨日に続いて、JTF(日本翻訳連盟)標準スタイルガイド検討委員会からのお知らせです。


Jtf_character


委員長の個人的な趣味でJTF標準スタイルガイドをみなさんに広く知っていただくために、こんなマスコットキャラクターができました。名前の公募期間には、いろいろなアイデアをいただきました。

そして現在、

リンク:JTF新キャラクター名の投票を受付中

です。

どなたでも簡単に投票できますので、ぜひご参加ください。投票期間は3月いっぱいです。

ちなみに、このキャラクターをデザインしたのは、帽子屋のウチのいちばん下の娘です。

09:44 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (6)

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2015.03.04

# JTFスタイルガイド、セミナー開催

ご存じのとおり、いや、ご存じない方もいらっしゃるかと思いますが、私はJTF(日本翻訳連盟)で、

標準スタイルガイド検討委員会

の委員も務めています。


そのスタイルガイド委員会が、4月にこんなセミナーを開催します。

リンク:JTFスタイルガイドセミナー|JTF 日本翻訳連盟

第1回が4/13(月)10:30~16:30

第2回が4/24(金)10:30~16:30

です。

このうち、第1回の前半「スタイルガイド入門」を、帽子屋が担当します。


入門ということで、基本的な内容からお話しする予定ですが、それだけでなく、以下のような方にもおすすめです。


●ふだんからスタイルガイド指定の案件が多く、いつもその確認に時間がとられていて、要するに

スタイルガイドに振り回されている

そんな現役フリーランスの方。スタイルガイドを確認するときのコツをお伝えします。


●ふだんあまりスタイルガイド指定はなくても、自分の納品するファイルの中ではやはり表記や表現の統一は絶対に必要です。

自分なりにスタイルを統一したい

というフリーランスの方。


●今はまだ翻訳学習中で、実務の世界に入ったらどんな指定があるのか、

今のうちに実務翻訳の世界を知っておきたい

と思っている翻訳学習中の方。

同じ日の後半、第2回は

「翻訳会社としての品質向上への取り組み ~スタイルガイドの活用事例を中心に~」

翻訳会社に勤務している方や、これから翻訳会社への勤務を考えている方に、ぜひおすすめします(株式会社シーブレインの伊藤良裕さんと野崎由美子さん)。


第3回(4/24)は、すこし広い視点から

「プロが教える日本語文章の校正・リライトのテクニック」

"日本語お助け人"こと、プロの校正者、磯崎博史さんにご登壇いただきます。スタイルガイドに縁がなくても、とにかく日本語文章力をアップしたい方は必見です。


第4回(4/24)は、一転して具体的な内容、

「JTF日本語スタイルチェッカーと正規表現の基礎」
「スタイルガイドのカスタマイズ実習講座~ワイルドカードを徹底活用~」

『アプリケーションをつくる英語』の著者、西野竜太郎さんと、Wordマクロでおなじみの新田順也さんが、ツールでスタイルガイド違反をチェックしようという実践的な内容をお届けします。


お申し込みは、JTFのいつものオンライン方式ではなく、Wordファイルに記入のうえメール添付ですので、上のリンク先からご確認ください。

受講料は、JTF会員/非会員とも、4回セットだとお得になります。


本日3/4時点で、だいぶ席が埋まってきているようです。ご興味のある方は、ちょっとだけお急ぎください。


【3/4追記】

なお、セミナー終了後の懇親会は、4/13、4/24のどちらもあります。こちらもふるってご参加ください ^^

11:30 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2015.02.19

# 東京理科大学近代科学資料館

記事にする暇がなかったのですが、昨年の暑い季節に、東京理科大学近代科学資料館というところに見学に行ってきました。

リンク:近代科学資料館

このとき買った、この本がなかなか役に立ってます。


昨年は企画展が目当てでしたが、常設展だけでもこういう展示物がたくさんあって、何度でも行きたくなるところです。


Img_1494


Img_1512

このときも、Facebookで参加者を募りました。また近いうちに企画しようかな。神楽坂の美味しい食べ物とセットで。

08:36 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2)

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2015.01.29

# 「日本翻訳ジャーナル」1/2月号

告知がだいぶ遅れました。

1/2月号(No.275)は、昨年の11/26に開催された第24回翻訳祭の特集です。よって、担当のコラムはお休み。

翻訳祭には、私も十人十色のパネルディスカッションに登場しましたが、そちらも記事になっています。Web版はこちらからどうぞ。限られた紙面ですが、雰囲気くらいは伝わると思います。

08:17 午前 翻訳・英語・ことばJAT・JTF | | コメント (0)

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2014.12.13

# 「日本翻訳ジャーナル」11/12月号

右カラムの写真は更新したものの、11月上旬の発行から1か月も経ってのご報告となってしまいました。11/12月号、絶賛配布中です。

翻訳祭のときにも印刷版が配布されたので、すでにご覧になっている方も多いかと思います。

私のコーナーでは、前回の特別回をはさんで引き続き「JTFほんやく検定」の合格者にご執筆いただきました。3人目は、三浦朋子さん

第57回、医学・薬学の日英翻訳で2級を取得し、第60回では同じく医学・薬学の日英翻訳で1級を取得したという、見事な努力と実績をお持ちの方です。

受験のときの具体的な様子が書かれていますので、これから受験する方にはきっと参考になると思います。

01:23 午前 翻訳・英語・ことばJAT・JTF | | コメント (0)

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2014.12.07

# 第24回翻訳祭、無事に終了

月がかわってしまいましたが、11月26日、JTF翻訳祭が無事に終了しました。

お伝えしていたとおり、私もパネルディスカッションのモデレーターとして久々に登壇しました。

リンク:セッション4 パネルディスカッションJ「新米の上り坂、中堅の曲がり角」


パネルの趣旨は上の案内にあるとおりです。

パネルディスカッションというのは本当に難しくて、まったくの無計画では収拾がつかなくなって何もまとまらずに終わってしまうし、かと言ってシナリオをあまりキッチリ組み立てすぎてもディスカッションのダイナミズムが失われてしまう。

お伝えしたかったことをどこまで伝えられたかわかりませんでしたが、送られてきたアンケート結果を見るかぎりは、おおむね好評だったようで、ほっとしました。




さて、このパネルで導入し、なかなか受けたツールがあります。


計画段階の終わりのほうで、ふと「業界調査のようなアンケートを、当日その場でできたらおもしろいのでは?」と思いつきました。テレビなどでよくある、会場の参加者がボタンなどを押すと、その結果が目の前で集計されて表示されるというやつですね、あれをやってみたいな、と。

ありました。

imakiku.com

基本的に無料で、とても簡単に使えます。

質問するほうは上のサイトで問題を作成するだけ。

1412071

こんな風に、質問と選択肢を作ります。

作り終わって、「スタート」ボタンを押すと

1412072

このようにURLとQRコード、そして参加者のためのパスコードが発行されます。
(今回のセッションでは、このページを参加者に配布しました)

参加者は、

・スマートフォンやタブレットのブラウザで、上の図にある sugukiku.com にアクセスする、または

・携帯電話でQRコードを読み取る

のいずれかでアクセスし、パスコードを入力するだけで参加することができます。アプリなどにインストールはまったく不要。


あとは、進行に従って質問ページを表示し、ボタンで選択肢を押してもらえば、

1412073

結果がこのようにグラフが表示され(グラフの種類は、問題を作るときに選べます)、その場でリアルタイムで変化していきます。

ちなみに、上の図はセッション当日に実際に使ったQ1の結果です。つまり、結果はこのように保存しておけるということ。


この小道具のおかげで、その場が盛り上がったことは間違いなかったようです。このシステム、これからのあちこちで使えそうです。

今回のパネルは、十人十色のメンバーで構成しました。パネリストの井口さん、松浦さん、庄野さんは中堅~ベテランと言っていい面々です。できるだけ具体的に、駆け出し・中堅それぞれにとっての「手掛かり」をお伝えできるよう構成したつもりですが、いかがだったでしょうか。

個人的には、こういう場でようやく庄野さん(あきーらさん)にお話ししてもらえたのも大きな収穫でした。

あきーらさんのブログは、私もフリーランスになるときいろいろ参考にしました。フリーランスとしての大先輩です。

今までにももちろん、オンライン/オフラインでお会いしたりお話ししたりする機会は何度もありましたが、今回は打ち合わせも含めて、かなりまとまって、あきーらさんのお仕事ぶりを伺うことができ、それが何よりうれしかった。

パネリストのみなさん、お疲れさまでした。

ちなみに、翻訳祭そのものも、参加者がまたしても昨年を上回ったそうで、たしかにどのセッションも盛況でした。

ただその分、「聞きたかったのに入れなかった」という声も多く、1,000人近い規模にあの会場はそろそろ限界だろうなとも思います。来年は25周年だし、どこか大きいところになるのかな。

08:46 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (2)

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2014.11.21

# 「通訳翻訳ジャーナル」冬号

イカロス出版の『通訳翻訳ジャーナル』、2014年冬号が発売されました。

特集は、「調べ物」と「健康維持法」。どちらも、通翻訳者にとって実に大きいテーマです。


翻訳フォーラムのリレー連載「翻訳者のための作戦会議室」も、いつの間にか今回で丸3年、12回目を迎えました。4人のメンバーが順不同で、1年ごとに大まかなテーマを決めて連載しているこのコーナー。1年目は2012年のシンポジウムと連動して「翻訳者の頭の中」をテーマに、2年目は「作業環境」を中心に、3年目は実際の「翻訳作業」に踏み込んで回を重ねてきました。次回からも、この翻訳作業編を続ける予定です。

冬号では、「読み取っていないものは訳せない」と題して拙文を掲載しています。この中で使われている例文、人によっては「見たことある~」というネタです^^;


特集も、実に充実しています。

「調べ物」特集には、杉山範雄さん、松田浩一さん、曽我邦裕さん、山本ゆうじさん、冨田淳二さんなどが登場。

「健康維持法」」特集では、藤田順弘さん(今年の8月もお世話になりました~)、杉本優さん、森口理恵さん(コーナーに一部に、ベンさんも)。具体的に参考になる話ばかりです。


それから、翻訳フォーラム連載の次のページでは、JATの連載コーナーも続いています。今号では、広島の内山由貴さんが特許翻訳の話を書いています。

そして、このコーナーの次回予告には、松浦悦子さんのお名前が... こちらもお楽しみに。

09:56 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2014.11.10

# 第24回JTF翻訳祭

毎年のことなのですが、ばたばたしていて、こちらでのお知らせがすっかり遅くなってしまいました。

リンク:翻訳祭 : 日本翻訳連盟

141110_bnr_575_10002

11/26(水)9:30~(開場は9:00)
アルカディア市ヶ谷(私学会館)


右カラムにバナーも貼りました。


不肖・帽子屋も、何年かぶりに、勉強会「十人十色」のセッションのモデレータとして登壇します。

リンク:セッション4 パネルディスカッションJ「新米の上り坂、中堅の曲がり角」

実はこのセッション、企画段階ではもっと過激な、というか

もっと笑えるタイトル

が付いていました。

当日ご参加いただければ、わかる予定です ^^;

01:32 午後 翻訳・英語・ことばJAT・JTF | | コメント (0)

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2014.10.24

# 「読ませるIT翻訳」、問1の答え

11/1(土)に予定されている「読ませるIT翻訳」最終回。

事前課題のうち、問1については、問題文にこう書いておきました。

英語のなぞなぞです。答えも考えたうえで、訳してみてください。どうしても答えがわからない場合は、10/20頃に講師のブログ(http://baldhatter.txt-nifty.com/misc/)に答えだけ書きます。

20日をだいぶ回ってしまいましたが、答えを、と言っても翻訳ではなく、なぞなぞの答えだけを、こちらで紹介しておきます。


Thursday before Tuesday;
Three before two;
Today before yesterday;
Me before you.
What am I?

ThursdayがTuesdayより前、
Threeがtwoより前、
Todayがyesterdayより前、
Meがyouより前

というわけなので、なぞなぞの答えは---











Dictionary

です。


これ、出典に使ったなぞなぞの本では紹介されてるんですが、ネットで検索してもヒットせず、特に有名ということではなさそうです。

それでも、英語のなぞなぞとして典型的なパターンのひとつ、

What am I?

で終わる形なので、問題---と言っても、まあ軽いウォーミングアップ---として取り上げてみました。

07:12 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2014.10.15

# 「読ませるIT翻訳」最終回、追加開催

ワンテンポ遅れましたが、11/1とセミナーと同じ内容で、11/29も追加開催が決まりました。

11月29日(土)14:00~17:00

リンク:追加開催!【シリーズ最終回】読ませるIT翻訳 PartⅣ~読点や助詞まできわめる ~ | サン・フレア アカデミー

翻訳祭(11/26)の直後ですね。ご都合のいいほうで、お待ちしております。


それから、11/1は、恒例ですがセミナー後の懇親会も予定されています。

11/1(土)17:30~

「ひつじや」四谷三丁目店

Facebookアカウントをお持ちの方はこちらの案内をどうぞ。

リンク:「読ませるIT」最終回記念飲み会

言うまでもなく、懇親会のみの参加も大歓迎です。なにしろ、

飲ませるIT翻訳

ですから^^


04:18 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2014.10.07

# 「読ませるIT翻訳」、シリーズ最終回です

告知が遅くなってしまいましたが、サン・フレア アカデミーさんの「読ませるIT翻訳」シリーズ、次回の開催が決まりました。

11月1日(土)14:00~17:00


リンク:【シリーズ最終回】読ませるIT翻訳 PartⅣ~読点や助詞まできわめる ~ | サン・フレア アカデミー


第4弾にして、最終回です。


おかげさまで、昨年から2年にわたり、これまで3回 --- しかも毎回2回ずつ --- 開催してきたこのシリーズですが、今回でひとまずの節目にしようと思います。


たぶん、「IT翻訳」というタイトルを変えて、また何か違う形で同じようなセミナーもあるんじゃないかと思いますが、これまでのご参加、ありがとうございました m(__)m


【10/8追記】

リンク先のセミナー情報を見ると、課題例がとんでもないかもしれません。「Nursery Rhymesの一節です」とか言って、こんなものを出題しています。

Multiplication is vexation,
Division is as bad;
The Rule of Three doth puzzle me,
And Practice drives me mad.

今まで参加くださった方はおわかりかと思いますが、実際の課題はもっとふつうの題材です。ご安心ください。

05:28 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2014.09.18

# Googleの言語オプション

今さらという気もしますが、AHKのネタも関連付けて、Googleの言語オプションについてまとめておきます。

「言語オプション」と言っても、

・インターフェースの表示に使う言語

・検索結果の表示を絞り込む言語

の違いがあるという話です。


……などとエラそうに書き始めましたが、私も設定がちゃんとしていなかったことに改めて気づいた、という話でもあります。


言うまでもなく、これはGoogleの設定なので、ChromeとかFirefoxの設定オプションではありません。

https://www.google.co.jp/ または
https://www.google.com

を開いてからお読みください。

※実際には、日本国内では(ロケールが日本に設定されていれば)google.comを指定してもgoogle.co.jpにリダイレクトされてしまうと思います。


ページ下部のバー、右端にこういうリンクがあります。

1409181

この中の[設定]をクリックするとメニューが開きますが、検索に関係するっぽい項目は2つあります。

1409182_2

まず、上のほうの[検索設定]を開き、左端に並んでいるメニューから[言語]を選ぶと、言語名がリストされ、現在の設定に●が付いています。

1409183

ここで、たとえば[英語]を選択して(あるいは、今[英語]の場合は[日本語]にして)[保存]を押してみるとわかりますが、こちらはインターフェースの表示に関する設定です。

ただし、このせいでますます話がややこしくなるのですが、この設定を変えただけでも、検索結果は違ってきます。言語切り替えなども、後述するオプションとは違ってきたりして、たぶんロケールと設定言語の組み合わせで勝手に判断されているようでもあります。


次に、(Googleの最初のページに戻ってから)[検索オプション]を開きます。

1409184

[検索結果の絞り込み][言語]を開いたとき、何になっていますか。どの言語の検索結果が表示されるかは、ここで決まります。ロケールが日本だと、デフォルトでは[日本語]になっているのかもしれません。そして、


実はここからが問題です。


このオプションが[日本語]に設定してあっても、検索結果が表示されたとき、言語を切り替えるオプションが上部のメニューにありますよね。[日本語のページを検索]というオプションがあり(もし表示されていなければ、右上の[検索ツール]を押せば表示されます)、下向き▼をクリックすると[すべての言語]が表示されます。

1409186

何か英語の語句を検索してから、この[すべての言語]に切り替えると、一見して英語の検索結果が(上位に)表示されるように見えます。が、これは文字どおり[すべての言語]が対象なので、実は

[英語のページを検索]した結果とは違う

のです。以下の3つの結果をご覧ください(画像クリックで大きくなります)。

最初は、[日本語のページを検索]
1409187


次は、[すべての言語]
1409188


最後が、[英語のページを検索]
1409189


これでわかるように、[すべての言語]にすると、日本語も含めたランキングで表示されるわけです。

ただ、実は私はここんところが疑問なのですが、しばらく前までは[すべての言語]に切り替えると、もっと英語ページのほうが上位に来ていた。こんな風に日本語ページが上に来ることはなかったように思います。検索語によっては、[すべての言語]にてしも日本語ばかり並ぶ場合もあります。Googleさんがまた何かロジックを変えたんでしょうか。


そういうわけで、翻訳者的なGoogleの使い方として、「日本語の検索結果と英語の検索結果を見たい」場合には、[日本語のページを検索]と[すべての言語]の切り替えだけでは用が足らないことになります。

しかたがないので、私は前述した[検索オプション]→[検索結果の絞り込み]で[言語]を[すべての言語]に設定し、日本語のページ、英語のページに限定したいときは

&lr=lang_en

&lr=lang_ja

の検索オプションをそれぞれ使うことにしています。


もちろん、検索するたびにこの文字列を入力するのは面倒なので、AHKのコマンドに組み込んでいます。

選択範囲の文字列をフレーズ検索する

Run,https://www.google.co.jp/search?q=\"%Clipboard%\"

の後に上のオプションを付けて

Run,https://www.google.co.jp/search?q=\"%Clipboard%\"&lr=lang_en

Run,https://www.google.co.jp/search?q=\"%Clipboard%\"&lr=lang_ja

とします。


ただし、言語を指定するとヒット数は表示されません。これはちょっと(けっこう)残念。

05:07 午前 翻訳・英語・ことば 翻訳者のPCスキル | | コメント (0)

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2014.09.14

# 「日本翻訳ジャーナル」9/10月号

JTFジャーナル、9/10月号が発行されました。

表紙の村岡恵理さんが目印です。

この表紙でもおわかりいただけるとおり、今号のJTFジャーナルでは、6月21-22日に開催されたIJET-25東京を大々的に特集しています。

大々的とは言ってももちろん誌面に制限があるので、開催概要と基調講演のほか、一般セッション5つのレポートを掲載。

そして、JTFとJAT(IJET-25の開催母体)との協力関係をご紹介するために、『JTF 日本語標準スタイルガイド』の英訳版を作ってくださったJATの方々もご紹介しています。


また、私の連載コーナーである「フリースタイル、翻訳ライフ」でも、IJET-25実行委員のひとり、井口富美子さんの体験談を掲載しました。

いつもどおり、会員・非会員にかかわらず無料でダウンロードできますので、ぜひお読みください。

05:16 午後 翻訳・英語・ことばJAT・JTF | | コメント (0)

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2014.08.28

# 最近の通翻関係メディア

IJET-25とかいろいろな記事とか、最近のやつをご紹介しておきます。


「ENGLISH JOURNAL」8月号

ジュリア・ロバーツの表紙が目印です。この号の綴じ込み付録

「あなたの英語を翻訳で輝かせる! 完全ガイド」
(タイトルは……まあ、ご愛敬)

が、フェロー・アカデミーとアルクさんの共同企画らしく、その実務翻訳編(pp.08-09)に、ちらっとニュース翻訳の話を書きました。

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「通訳翻訳ジャーナル」秋号

巻頭(pp.20-24)に、IJET-25特集記事が掲載されています。
取材にご協力くださった講演者のみなさん、ありがとうございました。m(__)m

なお、この号でも、翻訳フォーラムの連載記事「翻訳者のための作戦会議」が続いています。次回(冬号)が私の番です。


アルク「翻訳通訳のトビラ」

通訳翻訳のテーマパーク IJET-25 レポート

通訳翻訳ジャーナルとは違うセッションも紹介されています。こちらもぜひどうぞ。


「Amelia」9月号

すいません、こちらは会員限定ですが、連載コラムの第9回と、定例トライアルの講評が載っています。

06:31 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (2)

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2014.08.27

# 「翻訳者のためのプログラミング入門」、10/19開催

イベントや講座の案内ばっかりで恐縮ですが......

東京ほんま会の勉強会として、「翻訳者のためのプログラミング入門」というのを開催します。

リンク:東京勉強会詳細 - 翻訳者のためのマクロ勉強会

【9/14更新】東京ほんま会のサイトが新しくなったので、そちらへのリンクに変更しました。

Facebookアカウントをお持ちの方は、FBのイベントも告知されています。
https://www.facebook.com/events/543149019147533/?ref_dashboard_filter=upcoming

講師には、はるばる大阪から、しんハムさんこと小林晋也さんをお招きします。


ちなみに、この講座は東京ほんま会(大阪ほんま会の、東京の分家みたいなもんです^^)によるイベントです。9月にあるAutoHotKey講座は、十人十色のイベントです。メンバーもかなりオーバーラップしてるし、ちょっとややこしいですが――なにより、私自身がときどき混乱します――、通翻クラスタ周辺の活動がそれだけ盛んになってきたという証だろうと思います。


さて、「翻訳者のためのプログラミング入門」は、サイトの案内文にも書かれているとおり、単なるプログラミング入門ではありません。プログラミングの概要をある程度まで理解しつつ、それをIT系の翻訳に活かすというのが趣旨です。

そもそものきっかけは、6月に開催した東京ほんま会の秀丸マクロ勉強会のとき、どなたかが「IT翻訳してても、プログラミングの基本は勉強していないのでけっこう難しい」みたいな話をしていたことでした。

それで、「プログラミングの初歩を説明したうえで、同時にプログラミング関連の翻訳勉強会にもしてみたらどうだろう」と軽く言ったら、いつの間にかそれがイベントになったという経緯。

であれば、プログラミングについて私よりずっと詳しいしんハムさんをお呼びするしかない! そのしんハムさんが、ブログでこの勉強会の下準備になる連続記事をお書きになっています。ちょうど、「ブログでは過去記事を参照しにくい」ということで、固定の目次ページもできたところです。

リンク:翻訳者のためのプログラミング講座 基礎編 目次  | TRA Café

ぜひこちらもお読みください。


10/19当日は、基本的に

・特定のプログラミング言語には限定しない

・とは言っても、説明は特定のプログラミング言語に拠るかもしれないが、できる限り汎用的な説明にする

・プログラミングに関連する翻訳課題(英日)がある

という方向で進める予定です。


会場の都合で定員が多くはありませんので、ご注意ください。

ツールのハウツーでも、単なる翻訳勉強会でもない、通翻クラスタでも初めての試みです。乞うご期待!

01:03 午後 翻訳・英語・ことば 翻訳者のPCスキル | | コメント (0)

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2014.08.25

# サン・フレアでTrados講座はじまります

昨年の夏前に開催した、Trados活用講座、今年も開催が決まりました。

リンク:Trados徹底活用講座 | サン・フレア アカデミー

10/16(木)開講

です(受付は10/9まで)。


昨年は、Trados 2007を基本に後半でTrados Studioまで扱ったため3か月、全12回の講座でした。また「Trados 活用 IT 翻訳者養成講座」という名前で、ターゲットはIT翻訳に限定しましたが、今回は

・2か月全8回

・Trados Studio 2014を扱う
(仕組みの説明に2007も紹介はします)

・分野限定なし

という大枠で実施します。

ふつうのTrados講習会ではまず扱わない、

・Trados Studioのアーキテクチャ

・Trados Studioで扱うファイルの正体

・トラブルシューティング

・周辺ツールの応用

といったことまで解説するという点は、昨年と同じです。

また、単なるTrados講習ではなく「Tradosを活用した翻訳講座」という位置付けなので、

・Trados翻訳の向き不向き

・Trados上で翻訳するときの注意点

・Tradosの限界

などについても深く踏み込みます。これも昨年と同様です。

昨年と大きく変わるのは、初回にTradosの基本講習を実施しない点です。

昨年は、講座以前のTrados経験に応じて、まったくの初心者向けと経験者向けに(クラスを分けて)最小限の入門講座を実施しました。今年、まったくのTrados未経験の方には、

リンク:インターネット講座「SDL Trados 2014」|e翻訳スクエア

これを事前に受講していただく予定です。


また、翻訳の授業としては、ITだけでなく技術文書一般やニュース記事などまで含め、できるだけ分野を限定しない素材を扱います。

ですので、専門分野にかかわらずTrados Studioを完全マスターしたい人に、今年は昨年より広くおすすめできます。

04:35 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0)

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2014.08.14

# 「翻訳者のためのAutoHotkey入門講座」、9/8開催

そんなわけで、ここんところ翻訳クラスタ界隈では、AutoHotKey(AHK)に熱い視線が集まっています。


AHKについては、まずこちらなどの記事を参考にしてください。

リンク:TRA Café: AutoHotKeyについて

リンク:TRA Café: AutoHotKeyを正しく理解するために

リンク:AutoHotKey というツール | 翻訳横丁の裏路地


そして、翻訳勉強会「十人十色」のイベントとして来月、「翻訳者のためのAutoHotkey入門講座」を開催します。

だいぶ前から企画していましたが、そうこうしているうちにAHKがいちばんホットなネタになってきました。

日時:9月8日(月) 13:00~17:00
場所:きゅりあん(品川区立総合区民会館)中会議室
定員:40名
会費:2,500円

講師は、不肖、私めが務めます。私もまったくの我流で、しかも初歩の初歩程度しか知らなかったのですが、先日の大阪ほんま会で松本師匠からいろいろと直伝をいただきましたので、それを東京でも紹介しようというスタンスです。

基本的には、全員があらかじめPCにAHKをインストールしておき、その場で実際にスクリプトを作成して実行してみる、というハンズオン形式を考えています。

※ただし、会場の電源事情はあまりよくありません。正味は3時間くらいなので、それだけもつバッテリー、または延長コードをご用意ください。



さて、AHKについては、しんハムさんがこうお書きになっています。

まず、AHKはツールではありません。インストールしたからといって、それ自体では何もしてくれません。作成したスクリプト(プログラム)を実行するためのエンジンがAHKの本体です。

そんなAHKをいじって喜んでる人って、ひょっとしたら、だいたいが初期の頃のPC経験者なんじゃないか? というのが私の(5分前に思いついた)仮説です。

「自体では何もしてくれない」

これって、昔のPCの姿そのものです。


電源を入れる。

黒い画面にプロンプトが現れる。

そこに何か入力して初めてレスポンスがある。


AHKも、何か書いて実行しないと何もしてくれない。そのかわり、ちゃんと書けば相当なことまでできる。そういうところが、たぶん、昔のPCに感じていたワクワク感を思い出させてくれる。AHKの魅力って、もしかしたらそんな要素が大きいんじゃないかと思います。

07:10 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2)

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2014.08.13

# 大阪ほんま会にお邪魔しました

以前から予告していたように、6月の東京ほんま会に続いて、8/2(土)の大阪ほんま会に、講師として参加してきました。

リンク:大阪勉強会詳細 - 翻訳者のためのマクロ勉強会

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午前の部は、糸目さんと、松本明彦さんによる、AutoHotKey講座。

午後の部は、私が6月と同じ秀丸マクロ(とTradosの連携)の話を担当しました。


東京のほうも楽しく実りの多い会でしたが、ほんま会の本拠地たる大阪ということで、やはり雰囲気がけっこう違います。

松本さんのお名前は前から知っていましたが、お会いするのは初めて。そのお人柄もあって、AutoHotKey(AHK)のお話はとても楽しく、かつ有益でした。

AHKというのは、調べればいろいろなリソースも見つかるのですが、実は我流だけではなかなか前に進みません。そんな「迷えるAHK初心者」にとって、松本さんのお話とサンプルは、素晴らしい水先案内となるものでした。


いつもながら、関西通翻クラスタのみなさん、お世話になりました。




以下は、ほんま会前後の余談です。


前日の8/1、実は先に京都観光をするつもりでしたが、出発前に終わらせる仕事が終わらず、結局、大阪に直行してチェックインまではスタバで、チェックインしてからはホテルで夕方まで、ずっと仕事に追われる始末。

しかも、この日の朝納品したファイルに手違い!

Trados Studioの返却パッケージ(*.sdlrpx)を送ったつもりが、なんと支給時のパッケージ(*.sdlppx)を送ってしまっていたのでした。新幹線の中でメールを確認したものの、ふつうだったら手元ではどうにもならないのでアウト~です。が、この日は幸い、念のために終わった(はずの)仕事関係フォルダと継続中の仕事関係フォルダは、すべてポータブルHDDに入れて携帯していたので、今朝納品した(はずだった)案件のファイルはそこに入っています……

が、ここで迂闊なミスに気づきます。HDDに入れてきたのは、ふつうの仕事関係のフォルダだったのですが、Trados Studioのプロジェクトファイル一式は、別の場所にあるんでした(ふつうは、マイドキュメント以下です。私は別の場所に設定していますが)。これでは、終わったプロジェクトを開いて返却パッケージを作るという作業はできません。

でも、ここでふだんの作業プロセスが幸いしました。

Trados Studioにはだいぶ慣れましたが、何度も書いているように、横並びインターフェースはどうしても苦手。なので、Studio案件でもあいかわらず、メモリーをエクスポートしてTrados 2007環境で翻訳し、終わったらStudioにメモリーをインポートしてStudio上で訳を取得していく、というのがことをやっています。

ということで、その2007関係ファイルは手元のHDDにコピーされていたので、「StudioにメモリーをインポートしてStudio上で訳を取得していく」というプロセスだけ繰り返せば解決。危ない綱渡りでした。

ちなみに、今回は新幹線と宿の予約を1週間前までしてなかった---平日だし、そんなに混むとは思わず油断してました---せいで、手頃な値段のホテルがとれず、分不相応にウェスティンホテルなどという立派な宿に泊まることになりました。

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一人でツイン部屋という贅沢……。たまにはいいもんですねー。


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昨年の秋に止まった堂島ホテルもかなりお洒落でしたが、こちらも風格を感じます。

8/1の夜は、関西クラスタのみなさんが集まってくださり(たまたま、東京組もお一人^^)、おいしい沖縄料理。一昨年のIJET-23広島以来お久しぶりのSさんも駆けつけてくださいました。

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シメに沖縄そばも出たのですが、ここを出てからも実はラーメン屋さんへ。

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鶏侍さんが教えてくれた、「揚子江ラーメン」。実にあっさりしてて、飲んだ後には最高の一品でした。

10:39 午後 旅行・地域 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2014.07.27

# フェロー・アカデミー「双方向Web授業」

しばらく前にもお知らせしましたが、インターネットを利用して翻訳の授業を展開するオンライン授業、第2弾が始まります。

リンク:フェロー・アカデミー 【双方向Web授業】


前回(今年の2、3月)は、なかば実験的に実施した私のITニュース翻訳講座のみでしたが、今回は私のほかにミステリー翻訳コースも開催されます。

オンラインシステムを使う分、通学講座より割高ですが、最近の回線速度のおかげで、いわば一対多でありながら擬似的に

一対一

のコミュニケーションで授業を進められる、よく出来たシステムです。

しかも少人数制なので、ひとりひとりの答案について具体的に改善案を提示できるので、通学講座より高密度です。


東京近郊以外にお住まいの方、あるいはこのくそ暑いなか出かけていくのは勘弁~という方におすすめです。

08:55 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2014.07.21

# 「読ませるIT翻訳」の宿題~資料の信頼性ということ~

ちょっと時間が経ってしまいましたが、5/31と6/14にサン・フレア アカデミーで開催した標題のセミナーで、

high-level

という単語を"宿題"にしました。

おおむねはセミナーのときに説明しましたが、宿題の趣旨は以下のとおりです。

high-levelという語が、「高級」とか「ハイレベル」を表すのではなく、「概要、大枠」の意味で使われることが多いのは経験的にわかっています。が、これを明確に示した信頼性の高い資料が見つかっていません。何かないでしょうか。

これに対し、何人かの方から"答案"をいただきましたので、一部を紹介しつつ、私なりの"解説"をしておこうと思います。

ある方からは、

・シソーラスにおける上位語はおおまかな意味を持ち、下位語になるほど具体的になる

・以前から「トップダウン」という言葉があり、ここでも上位から下位になるほど具体化する

というご指摘をいただきました。そうですね。そういう事実は確かにあります。が、これも定着している慣例を示していただいただけで、「経験的な定義」の域を出ていません。


それから、いくつか個人ブログをご紹介くださった方もいます。

http://blog.livedoor.jp/projectfinance/archives/51890277.html

http://bistrogoody.blog56.fc2.com/blog-entry-112.html

http://homepage2.nifty.com/tnatori/trans/mistrans.html#041005a

最後のページは私も見たことがありました。これらも、傍証としてはなかなか有力です。が、私が欲しかった「信頼性の高い」情報とは異なります。

※セミナーのとき、「信頼性の高い資料を探してください」という言い方はしなかったと思いますが、趣旨は伝わっていたものと思います。


一方、プログラミングでよく出てくる high-level language の話を出してくださった方もいます。訳語としては「高水準言語、高級言語」と言われるやつですね。人間には判読できない機械語に対し、PascalとかJavaのように基本的には英語と似ていて人間が意味をつかみやすいプログラミング言語のことを high-level (programming) language と言います。

これは、確かに今回の話に近いと言えなくもありません。「高水準言語」についてはよく、

記述の抽象度が高いプログラミング言語

と言われることもあります 。これは日本語版Wikipediaからの引用ですが、英語版でも、

In computer science, a high-level programming language is a programming language with strong abstraction from the details of the computer.
(太字は引用者)

と書かれています。ただし、機械語と比べてC言語とかJavaの「抽象度が高い」というのは、感覚的にはちょっとわかりにくいかもしれません。詳しくは、上の英語版Wikipediaの記述で、abstractionにリンクが貼ってあります。そちらをどうぞ。

そしてこれも、こういう用法があるというだけで、最初の疑問に対する明解な答えになっているとは言い切れないようです。辞書を見ると、

a high-level computer language is similar to human language rather than machine language(LDOCE)

とか

〈プログラム言語が〉高水準の《自然言語に近いもの,たとえば BASIC, COBOL, FORTRAN などについていう》
(リーダーズV3)

と、すでに専門用語の語義として定着したものとして書かれているからです。

実際、「概要、大枠」の意味を挙げてある辞書というのは、私の手元でもオンラインでも、実はひとつもありません。オンライン辞書については、今日の時点で思いつく限りを当たってみましたが、これだという記述は、残念ながら見つかりませんでした。


私がすでに確認している資料は、ひとまずWikipediaの以下の項目くらいです。

High- and low-level - Wikipedia, the free encyclopedia

A high-level description is one that is more abstracted, describes overall goals and systemic features, and is typically more concerned with the system as a whole, or larger components of it.

これなら、まさに「概要」に当たりそうです。

私と同じく、このWikipediaの記述に目をつけた個人ブログはやはりありました。

リンク:high-level ですが、何か?―『明日は誰のものか』謝辞(その3) | 英日 誤訳どんぶり


が、Wikipediaのこの記述も「十分な出典、根拠」があるとは言いがたい。その証拠に、このエントリにはこういう注意書きがあります。

This article does not cite any references or sources. Please help improve this article by adding citations to reliable sources. Unsourced material may be challenged and removed. (December 2009)


英語版Wikipediaにすらこう書いてある以上、現時点では

一定以上の信頼性のある資料はない

と結論するしかなさそうです。

えー、宿題を出しといてそれが答えかよーっ、とお叱りを受けそうですね。少なくとも、英語圏の文章で言及している資料が欲しいところです。


リンク:meaning - What is a "high-level conversation"? - English Language & Usage Stack Exchange

ここでは、Q&Aの形で

A high-level conversation is one where you discuss generalities instead of focusing on details.

という回答が上がっています。


同じようなQ&Aサイトばかりですが、

リンク:Business Plans - Writing the Executive Summary

では、

The Executive Summary area that's included in formal business plans, is a high-level overview of the business plan document that includes a summary of information about:


いずれも、私が求めていた「信頼性の高い資料」には当たりません。が、少なくとも日本人の書いた個人ブログよりは、資料としてちょっとだけ拠り所になりそうです。

ということでセミナーの補足をしました。

「読ませるIT翻訳」、第4弾は秋ごろに……、たぶん……あるんじゃないでしょうか。


12:00 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2014.07.15

# 「日本翻訳ジャーナル」7/8月号

JTFジャーナル、7/8月号が発行されました。


今回、私のコーナーに登場するのは大久保雄介さんです。

昨年の翻訳祭で、交流パーティーまでご参加になった方はご記憶にあるかもしれませんが、「ほんやく検定」1級合格者を代表してスピーチした、あの好青年です。あのスピーチの中で語られた、

「半農半翻」

という言葉が実に印象的で、あのときから私のコーナーにお願いしようと決めていました。

ところが、私が執筆をお願いしてから、こんな記事も登場したのでびっくり。

リンク:【アメリア】Flavor of the Month 87 大久保 雄介さん

アメリア編集部の方も、あのスピーチで目をつけたに違いない!

でも、私のコーナーではちゃんと切り口を変えた内容で書いてくださいました。さすがです。

そのほか、

リンク:JTF定時社員総会基調講演 「日本の翻訳産業の実態~第4回翻訳業界調査結果報告~」 | JTFジャーナルWeb

この記事も見逃せません。

ところで、お気づきの方は多くないかもしれませんが、JTFジャーナルのデザインが前号から変わっています。

PDF版で奥付(p.26)を見るとわかりますが、今年度から、中村ヒロユキさんというデザイナーの方に誌面デザインをお願いしています。

リンク:グラフィックデザインオフィス | Charlie's HOUSE

このサイトでもわかるセンスの良さで、JTFジャーナルも今まで以上に「雑誌らしさ」が打ち出されています。今後は、翻訳セミナーなどのイベントで印刷版もお届けできるかもしれません。

なお、奥付と同じページにも予告してあるとおり、次回9/10月号ではIJET-25特集が組まれる予定です。お楽しみに!

03:17 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2014.06.27

# これからのイベントなど

IJET-25も終わりましたが、一息ついたところで、またいろいろとあるので、例によって公私混同でご紹介しておきます。


6/29(日)
ほんま会 in TOKYO

翻訳者のためのマクロ勉強会(通称"ほんま会")の東京編、今回は午後、私が担当することになりました。

……って、もう今週末です。すいません、定員に達したそうです。m(__)m


7/12(土)
TAC月例セミナー「翻訳における物質性」

川端康成、高橋源一郎、よしもとばなな、松浦理英子、川上弘美、古川日出男などの英訳を手がけているイケル・エメリック氏の講演です。ふだん以上に格調高いセミナーになりそうで、ちょっとドキドキしています。


7/20(日)
第9回関西通翻勉強会「SKIT」

SKITの活動、積極的に続いていますよねー。今回は、東京からテリー斉藤さん、井口耕二さんが参加して、それぞれコマを担当するようです。これは、こちらから出張ってでも行きたいところですけどねぇ......


8/2(土)
ほんまかい特別会

6月の東京版を受けて、なんと、ほんま会の本拠地にもお邪魔することになりました。京阪のみなさん、今年もお世話になります。

しかも、この日の午前中は、最近話題のAutoHotkeyの話です!


8/9(土)~全4回
~翻訳の専門校~フェロー・アカデミー 【双方向Web授業】

今年の2~3月に、フェローとして初めて開催したWeb上の授業。暑いさなかですが、また開催されます。


9/27(土)
サン・フレア アカデミー「オープンスクール」

詳細は未定ですが、久しぶりに私もお邪魔することになるらしいです。

12:36 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2014.05.25

# 原文-訳文の縦並びと横並びについての仮説

翻訳フォーラムが通年で実施する勉強会、「めだかの学校」が昨日から始まりました。

今まで、1~2年に1度実施されてきた「ほぼ丸一日、課題文についてえんえん議論する翻訳勉強会」、--- 去る3月のシンポジウムではこれを模擬公開形式で実施しました --- を、1年間全6回かけてやってみようという、フォーラム初の試みです。


その内容をここではご報告しませんが、課題文そのものの検討にとどまらず、翻訳についていろいろと熱い議論が飛び交うのは、いつものとおりでした。

そこで話題になったことのひとつが、「訳文は縦書きがいいのか横書きがいいのか」という、まあおなじみのテーマ。


その話が頭にあったせいか、帰宅してからぼんやりと、私が忌み嫌っている

原文-訳文の横並びインターフェース

の問題点について、ひとつの仮説が浮かんだので、書きとめておこうと思います。


今回扱ったのは、3月のシンポジウムに続いて『赤毛のアン』だったので、訳文は縦書きで提出したわけですが、比較のための表などは、どうしても横書きになります。

また、「最近は書籍の縦書きもだいぶ無理があるよねー」というBuckeyeさんの話もあって、たとえば縦書きのノンフィクションで、






と書かなきゃいけないのはかなり苦しいと、これはよくわかります。

一方、「横書きのほうが読むスピードは速い」と一般的には言われていますが、日本人が日本語を読むときは、はたしてそう言い切れるんだろうか(やっぱり縦書きのほうが速いんでは?)という話も出ました。

そういう話の流れで、「でも、文庫本を横書きにしたら、たぶん1行が短すぎて読みにくいかもね。今の文庫本は縦書き前提でしょう」という話になり --- これについてはいろんな意見もあると想定されます ---、私が「でも、iPhone上のKindleなんかだと、横書きの1行がかなり短いから、逆に斜め読み、速読に向いている気がする」と言ったら、

「それは"縦に読んでる"からでしょう」

と言われて、なるほど、と思いました。つまり、1行がかなり短い場合には、その1行をひとかたまりとして見て、そのまま縦に読んでいるイメージです。


そういう、横方向の読み方と、縦方向の読み方というイメージを抱えたまま帰宅し、ふと翻訳支援ツールのことを考えてみたわけです。

  • 横方向というのは、「ずんずん読み進んでいく」ことには向いている。
  • ずんずん読み進めるられるゆえに、横1行のまとまりは「1ユニットの情報」として頭にインプットされるのではないか。
  • となると、原文-訳文が横に並んでいると、やはり「1ユニットの情報」としてインプットされてしまうので、別々の情報単位として比較するには適していないのではないか。
  • 逆に、原文-訳文が縦に並んでいると、別々の情報単位としてとらえやすいのはないか。

  • もっと言うと、横書きの(1つまたは2つの)センテンスを「横に読む」ときの脳のはたらきと、横書きの2つのセンテンスを「見比べる」ときの脳のはたらきはけっして同じものではないはずなので、「横に読んで横どうしを比較する」より、「横に読んで縦どうしを比較する」ほうが、脳はきちんと機能するんじゃないか、そんなイメージ。


1405251


実に漠然とした勝手なイメージだけで、実際、「横並びのほうが断然いい」という方も多いようなので、まったくもっていいかげんな話ではあるのですが、個人的には、ちょっとだけ腑に落ちています。

diffツールの縦並び/横並びについては、並ぶ単位が違うので、話が別です。


02:25 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4)

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2014.05.11

# 「日本翻訳ジャーナル」5/6月号

(3/4月号は紹介しそびれていたみたいです……)

JTFジャーナルも、新年度が始まり、私たち編集委員体制も、いつしか3年目に入りました。


私のコーナーには、中村泰洋さんにご登場いただきました。

JTFほんやく検定1級合格者、2012年の翻訳祭にはセッションにご登壇、2013年の翻訳祭にはご自身のブランド「リンゴプロ」でブースに出展と、JTFとは切っても切れない関係にある翻訳者さんです。

そのほかにも、今号は注目の記事が満載。まずはこれ。

リンク:「第4回翻訳業界調査結果」のご報告

昨年、JTFサイトでアンケートを実施しました。その結果報告です。なお、報告の本体(白書)は、JTF会員であれば無料で閲覧できます。


リンク:JTFスタイルガイドとCCライセンスの素敵な関係

こちらも私が関係しているプロジェクトですが、JTFスタイルガイドの紹介記事です。PDFをダウンロードして、あるいはWeb版でお楽しみください!

09:26 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

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2014.04.16

# 『花子とアン』~翻訳家の原点が描かれた

以前に書いたとおり、テレビドラマというものを久しぶりに見ています。

NHK連続テレビ小説『花子とアン』


第3週になって、ようやく面白くなってきました。その第3週月曜日、吉高由里子に変わって早々の授業風景。英語教師の訳し方に異を唱えた主人公が、けっして強い調子ではなく、こう言います。

「私は、すこし違う訳をしました」


これって、程度や形の違いはあれ、人が翻訳者になろうと思う原点ではないかと思います。


もちろん、素晴らしい翻訳にめぐりあって翻訳の道をめざす人も多いには違いないのですが、世に出ている翻訳を読んでなんらかの違和感を覚え、「自分ならこう訳すな」と思ったことが、翻訳者であれば一度ならずあったのではないでしょうか。

そして、その違和感について、自分なりの答えを出そうとしてきた人だけが、やがて翻訳者になってゆく。


そういう、翻訳家・村岡花子の出発点が、この回では描かれていました。



いやねー、正直言って、第1週は見るの辛かったですよ。

ドラマ、特にNHKドラマで描かれる昔の日本って、なんでみんなこうなんでしょうねぇ。もう笑えるくらい「絵に描いたような貧乏」でさ、でもそんな境遇のなかで主人公はとてもいい子で……。いや、実際に貧乏だったんだろうし、その貧乏を私は知らないし、はなは本当にいい子だったのかもしれないしね。でもさ、描き方ってもんがあるでしょ。貧乏がリアルとかリアルじゃないとかそういう次元ではなく、とにかくどのドラマ見てもみーんな同じ。

……って言うほどドラマは見てないんでしょ。はい、すいません、私の認識不足かもしれません。とにかく、見てて恥ずかしいんですって。

子役は、いい仕事してると思いましたよ。なかなかのもの。でもね……以下略。

ちなみに、原案『アンのゆりかご』に、あれほどの貧乏の描写はありません。

そもそも、花子5歳のとき、すでに一家は品川に転居しているはずです(新潮文庫『アンのゆりかご』、p.34)。家族が今でも甲府に住んでいる、というのは、だからおそらくこのドラマ独自の脚色。それはいいんですよ別に。「原案」だしね。でもさ、だからって、どうして「これがNHKの描く明治の日本でござい~」みたいなテンプレート的描写にしなきゃいけないんだろ、毎度毎度さ。

で、原案つまり史実どおり、都内の尋常小学校に通っていたのであれば、給費生として東洋英和に入るというのもできそうだけど、甲府からいきなり汽車に乗ってというのは、どうなんでしょ。


第2週、東洋英和(ドラマでは別の名前)に入ってからはだいぶ救われたし、こっちもテレビドラマのコードにだいぶ慣れてきました。コンドン(近藤春菜)とか見てて面白いし、校長先生と英語教師もなかなかいい雰囲気。

でも、あの「お父」は、いつ出てきてもやっぱイタいよね。いや、当時のイタい人として設定されてるのはわかるんだけど、演技がそれに輪をかけてイタいでしょ。まあ、ガメラのときも、この人はちょっとイタかった気がするけど。


そして、第3週、冒頭に書いたようなシーンが出てくるようになって、ようやく楽しめるようになったわけです。

日曜学校に出てくる子どもたち、けっこう「今どきではなさそうな顔」を選んでるなあとか、子供のころ通った日曜学校って、あんな雰囲気だったなあとか(実際にはもっと広かったはずですが、木造のあのたたずまいがね)。

はなに接近する帝大生、若い頃の三ツ木清隆に似てるね、とか。

まあ、これからも恥ずかしい演出はたびたび出てくるんだろうけど、それでも、この主人公ならではの楽しみも、きっと増えてくるのでしょう。

05:37 午後 映画・テレビ 翻訳・英語・ことば | | コメント (6)

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2014.04.12

# 「読ませるIT翻訳」、シリーズ第3弾

前回から少し間が空きましたが、なんとシリーズ第3弾が決まりました。


リンク:読ませるIT翻訳 PartⅢ~ 訳語の選び方、言葉のつなげ方 ~ | サン・フレア アカデミー

前回と同様、2回開催です(そんなに集まるのかな...)

第1回:5/31(土)

第2回:6/14(土)


第2回は、IJET-25の前週ですね……


今回は、「訳語の決め方」をテーマにしてみました。


・何でもない単語なんだけど、目の前の文脈にぴったり来る訳語がなかなか決まらない

・新語とは限らないが、辞書にもWebにも情報が乏しい場合の対処

・英和、和英、英英の辞書の行き来

あたりのことを取り上げる予定です。


今回これをテーマにしてみたのは、アメリアの定例トライアルやふだんの授業などで、意外なくらい訳語の選び方が不適切だったり、全体にはいい出来なのに訳語の選択が惜しかったり、そういう答案を目にすることが多かったからです。


もちろん、自分の仕事でも毎日のように悩んでいるわけで、後から「こうすればよかった」と気づくことも多く、おそらく誰にとってもこれは永遠のテーマだろうな、という理由もあります。


シリーズではありますが、もちろん今回の単発でも大丈夫な内容をお届けする予定です。

07:14 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2014.03.19

# シンポジウム&大オフ開催報告

いやもー、予想どおり3月はイベント続きでブログの更新もなかなか手が回りませんでした。

開催報告その1です。

予告どおり、3/8(土)に翻訳フォーラムのシンポジウム&大オフを開催しました。


そのときの様子は、簡単ですがこちらにまとめられています。

リンク:翻訳フォーラム・シンポジウム2014


また、シンポジウムのPart 2「辞書とコーパス」だけは、ストリーミング画像がアーカイブされています。回線状態がかなりよかったので、内容がわかるくらいクリアに録れています。

リンク:翻訳フォーラム・シンポジウム2014, 2014/03/08
(5分20秒あたりから始まります)

Part 3「フォーラム式翻訳ワークショップ」について、今回はご存じなかった人が多いと思うので、少し補足しておきます。


というか、あの形式について当日もう少し説明が必要だったと、というのが幹事一同の反省でした。


あの勉強会は、ふだん産業翻訳をやってる私たちが、気まぐれに文芸翻訳をやってみた、というものではありません


文芸でも産業でも、翻訳の根っこは同じ


というのが、ふだんあの勉強会に集まるメンバーの認識で、つまりは自分のスキルを上げるための勉強です。伊達や酔狂で素材を選んでいるわけではありません。


実際、「視点」とか「視点の移動」というのは、翻訳にかぎらず読みやすい文章を書くうえで不可欠の要素です。当日なんども話題になった「切れ目感」とか「つながり」は、どんな翻訳でも意識して当然であり、特にTrados使いは常に気にとめていなければなりません。


そういうわけで、4月から予定している「めだかの学校(仮称)」では、当然ながら文芸以外の素材も扱います。

間もなく発表できるはずですので、興味のある方はフォーラムMLでの告知をお見逃しなく。

06:45 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2014.02.17

# 翻訳フォーラム・シンポジウム&大オフ2014

ご案内開始からちょっと時間が経ってしまいましたが……

一昨年2012年のシンポジウム&大オフに続き(昨年は小規模な勉強会のみでした)、今年も同様のイベントを開催します。

リンク:翻訳フォーラム・シンポジウム&懇親会(大オフ)2014

Part 1 デイファイラーに触って試そう! 開発者と話そう!

Part 2 辞書とコーパス

Part 3 フォーラム式翻訳ワークショップ

と、私が言ったら手前味噌になってしまいますが(幹事の末席を汚しております)、それを差し引いても充実の内容です。


ただし、今回からはそれなりの金額を設定したにもかかわらず、シンポジウムのほうは案内してからすぐ満席になってしまいました。

その後、幹事団が開催現地を見学し、定員増が可能であることが判明したため、明日から受付を再開します。詳細は上記の案内ページをご確認ください。


ちなみに、シンポジウムPart 3のワークショップは、これまでに翻訳互学会や翻訳フォーラムでやってきた形式です。つまり、有名作品の冒頭を各自が訳出して提出する。当日は、原文をほぼ一語一語のレベルで細かく検討し、(いちおう名前は伏せて)各訳文の是非を吟味したり、すでに世に出ている既訳を評価したりします。

そして今回は、このワークショップに見学席を設けます。今までは「訳文提出」という難関のために出席をためらっていた方も、いったいどんな雰囲気で展開されるのかを垣間見る絶好のチャンス。

また、今回のPart 3は、翻訳フォーラムで企画中の長期的な勉強会に向けた布石でもあります。詳しくは、3/8当日にご紹介できると思います。


一方の大オフですが、先日、会場の下見を兼ねて幹事団が食事に行ってきました。

神田ステーションホテルの一部として設置されているだけあって、とてもおしゃれで落ち着いた空間。そして、料理もワインも絶品でした。

大オフは立食で大皿形式ですが、期待していいと思います。


というわけで、2012年6月以来ほぼ2年ぶりのシンポジウム&大オフ、期待してお待ちください!

01:53 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2014.02.14

# IJET-25、申込みが始まっています

2月に入ってまったく更新できてなかったので、この告知も遅れてしまいました。


以前からお伝えしているIJET-25東京の申込みが始まっています。

リンク:第25回 英日・日英翻訳国際会議 東京大会

Ijet25banner


申込みページはこちら。

リンク:Registration | 第25回 英日・日英翻訳国際会議 東京大会

この案内にあるように、4/10(木)までが早割となっていて、たいへんお得です。


ちなみに、会員と非会員の差額は5,000円です。

一方、JAT会員の年会費は10,000円です。IJETに申し込む前にまずJAT会員になれば、IJETには会員料金で参加できます。その場合の差額は5,000円。

その5,000円で、会員は各種セミナーを録画したビデオを自由に見られるようになります。IJET-25当日も、各セッションを録画し、後日公開しますが、それも会員なら見放題です。

つまり、IJET-25に参加して、同時枠で見られなかったセッションも、会員なら後からゆっくり見られるというわけです。

……というわけで、今なら

JAT会員になってからIJET-25に申し込む

のがいちばんお得!

セッションの内容もほとんど決まっています。

リンク:Sessions | 第25回 英日・日英翻訳国際会議 東京大会

こちらの内容はこれからどんどん増えていきますので、お楽しみに!

01:16 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2014.01.27

# 「翻訳事典2015年度版」便乗~参考URL

「翻訳事典2015年度版」が発売されました(1/27刊)。

自分も一部に執筆しているからひいき目で言うわけではけっしてなく、有用な情報が詰まったお薦め本だと思います。翻訳者をめざす人だけでなく、現役翻訳者でも買って損のない一冊。


たとえば、昨年2014年度版の特別企画「翻訳といえば辞書」に続いて今回も深井裕美子さんが執筆なさっている特集記事

「調べ物」術&おすすめ専門辞書

これほど「調べ物」について、その本質から実践的なノウハウまでが簡潔にまとまった資料は、なかなかあるものではありません。

昨年の特集と併せて絶対お薦めの特別保存資料と言えます。


今回は特にURLがたくさん載っていますが、いかんせん、紙の上のURLというのは、見て入力しなければいけません。

そこで、便乗企画として、今回の特集記事に出てきたURLをぜんぶここに挙げちゃいます。

■以下、記事で紹介されている順のままです。


●「翻訳者の薦める辞書・資料」
http://nest.s194.xrea.com/lingua/


●WordNet EPWING
http://wordnetepwing.sourceforge.jp


●青空WING
http://aozorawing.sourceforge.jp


●かんざし
http://homepage1.nifty.com/uchiyama-takanori/kanzasi/


●Jamming and Day Filer (PASORAMA)
http://blog.livedoor.jp/jamming_and_df/


●Google
http://www.google.co.jp


●Bing動画
http://www.bing.com/video/


●Yahoo! リアルタイム
http://search.yahoo.co.jp/realtime


●Googleブックス
http://books.google.co.jp/


●Googleウェブ履歴を無効にする
http://support.google.com/accounts/answer/54057


●Googleで、できること
http://www.google.co.jp/dekiru/products/search.html


●Google Search Tips & Tricks
http://www.google.com/intl/en/insidesearch/tipstricks/all.html


●COCA
http://corpus.byu.edu/coca/


●BYU-BNC
http://corpus.byu.edu/bnc/


●COHA
http://corpus.byu.edu/coha/


●Ngram Viwer
https://books.google.com/ngrams


●国立国語研究所 KOTONOHA
http://www.ninjal.ac.jp/corpus_center/kotonoha.html


●少納言
http://www.kotonoha.gr.jp/shonagon/


●NLB
http://nlb.ninjal.ac.jp/


●レファレンス協同データベース
https://crd.ndl.go.jp/reference/


あ、深井さんご本人の了承とらずにやっちゃった。許してくだされ~。


12:51 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2014.01.25

# 「翻訳事典2015年度版」

2014年度版に続き、今年もアルクの『翻訳事典』に登場させていただきました。


【1/25夜、修正】

1/27発売で、Amazonでも予約が始まっていますが、一足早く、今日届きました。

・翻訳業界が注目! 翻訳者が育てるプロジェクト(IJET-25特集)

・翻訳業界スーパーガイド

の2か所にお邪魔しています。しかも ---


あろうことか、今回は表紙にまでしゃしゃり出てしまいました。

これ、IJET-25実行委員会に対するインタビューのときの写真です。


このほか、勉強会「十人十色」の取材記事も載ってますし、深井さんの辞書特集にも注目。

お役立ち情報満載です。

06:37 午前 翻訳・英語・ことばJAT・JTF | | コメント (1) | トラックバック (0)

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2014.01.11

# 「日本翻訳ジャーナル」1/2月号

今号は、昨年の11月27日に開催された翻訳祭の特集号です。

翻訳祭に参加できなかった方も、こちらのレポートで少しは当日の様子を知ることができると思います。


翻訳祭特集の関係で、私を含めた5人の編集委員が担当している連載コラムは今月お休みです。そのかわりといっては何ですが、

リンク:翻訳ジャーナル編集委員 座談会

というスペシャルがあります!

編集委員であるテリー齊藤さん、矢能千秋さん、遠田和子さん、矢野直子さん、私の5人が、ジャーナル編集に対する赤裸々な思いを熱く語っていますw

お読みくだされば幸いです。


次号からは、通常編成になります。

08:47 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.12.25

# セキュリティ警告画面(アメリア定例トライアル補足)

アメリア10月号の定例トライアル(テクニカル)は、不定冠詞と定冠詞、並列の訳し方など、「翻訳の基本を大切に」というテーマで選んだ課題文だったのですが、前回のcompatibilityに続いて、軽い落とし穴もありました。

実は、前回のcompatibilityは意図的に落とし穴を狙ったわけではなく、出題してから改めて調べて自分でも驚いたのですが、今回の落とし穴はなかば意図的に用意したものです。


講評(1月号、かな?)でも説明していますが、こちらでは、日本語版のスクリーンショットもまじえて補足しておきます。

今回の落とし穴には、2つの狙いがありました。

1. 定番の用語と思っても要注意

今回の課題文に出てくるclick throughという用語は、すでにご存じの方も多いと思いますが、今ではほとんど

「《バナー広告を》クリックして広告主のサイトを訪れること」
(研究社・英和コンピューター用語辞典)

という意味で使われています。そこから、関連語のclickthrough rateも「クリックスルー率」とか、単に「クリック率」という訳語ですっかり定着しています。ネット広告の業界では「CTR」なんて略語も使うようです。

「スルー」が落ちてしまったのは、throughという単語にほとんど意味を見出さなかったからかもしれせん。


ところが、この課題文で使われているclick throughをこの意味の用語として捉えてしまうと、どうしても無理があります。そして、ここでの使い方ではthroughの存在を無視すべきではありません。

内容から見ても広告業界用語ではありえないのですが、出典を見ればちゃんと

In this paper, we present the rates at which users click through (i.e., bypass) malware, phishing, and SSL warnings.

と定義されているのですね。つまり、ここではbypassと同じ意味、「回避する、迂回する、クリックして通過する、通り過ぎる」という意味であることがわかります。throughを無視できないというのは、そういうことです。


このことに気付いた方の答案を見ると、対応は2通りありました。意味の違いを踏まえたうえで原文どおり「クリックスルー」と訳す方法と、単に「迂回する」のように内容から訳す方法です。ただし、この後にclickthrough rateを説明しなければなりませんから、そのとき用語の対応に祖語が生じないように考慮する必要があります。


2. あいまいな表現の裏をとる

今回の落とし穴のもうひとつのポイントは、"A user leaves the warning when she navigates away and does not continue with her original task."という箇所のわかりにくさです。

警告を無視して先に進んでしまう、つまりここでいう「クリックスルー」してしまうのとは逆の操作であることは、ほとんどの人が読み取れていました。でも、

navigates away

のわかりにくさもあってか、

leaves the warning

を技術的に正確に処理できた人は少数でした。

navigate awayというのは、アメリアの講評にも書いたように、「(もともとの予定コースから離れるように)ナビゲートする」という意味で、つまり「危険なサイトにアクセスしない」ことと捉えられた人は多かったのですが、leaves the warningを「警告をそのままにする」と訳した方は、警告メッセージの動きをわかっていないことになります。「警告を離れる」としても、真意が伝わるかどうかは今ひとつです。


そこで、改めて出典を見てみると、問題の警告メッセージダイアログのスクリーンショットがあります。それだけでもいいのですが、日本語版のスクリーンショットを集めてみました。

最初はChromeのダイアログ。ちょっとわかりにくいかな。

Sample_chrome

次は、同じChromeのSSL警告ダイアログ。

Sample_chrome_ssl

クリックできるボタンは2つあって、[このまま続行]をクリックすると、課題文で言う「クリックスルーし」たことになります。そして、[セキュリティで保護されたページに戻る]をクリックする操作が、課題文で言う"leaves the warning"に当たるわけです。

次はFirefoxの不正サイト警告ダイアログ。

Sample_mozilla

こちらでは、[この警告を無視する]をクリックすれば「クリックスルー」に当たり、[スタートページに戻る]をクリックすると、どこにいくのかわかりませんけど、ともかく不正サイトには進まずにこのダイアログを閉じることになります。

最後は、同じFirefoxのSSL警告ダイアログ。

Sample_mozilla_ssl

ボタンは[スタートページに戻る]しかなくなりました。「クリックスルー」するには、[危険性を理解した上で接続するには]というリンクをクリックしなければならず、いわば危険な操作の敷居が高くなっています。SSL警告っていうのは、それだけ要注意の警告なんですね。


ということで、訳例では

警告を「了解して引き返し」

というように内容がわかるような訳し方にしてみました。鍵カッコを使っているのは、この部分が用語の定義になっているからです。


……という風に、英文だけで真意が分かりにくくても、実際の画面を確認すれば一目瞭然だったりします。

そもそも「警告をそのままにし」たらブラウザは使えません。 「警告を離れる」と訳した人のイメージとしては、もしかしたらこのダイアログ操作が念頭にあったのかもしれませんが、表現として不十分でしょう。

私の出題だけではないと思いますが、出典が書いてある課題文の場合は、出典を見たほうが理解しやすくなっているのが普通です。面倒くさがらずに、出典を、少なくとも課題文の該当箇所までは読むようにしましょう。

ちなみに、課題の該当箇所まで何十ページも読まなければならないような出題は、少なくとも私はしません。

02:26 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.11.25

# 「読ませるIT翻訳 Part II」のご報告と、第2回告知

先日ご案内していたとおり、サン・フレア アカデミーさんで「読ませるIT翻訳」の第2弾を、11/16(土)に開催しました。


おかげさまで、今回もほぼ満席。アンケート結果でもだいたいご満足いただけたようで、ほっとしました。

今回の課題文は、前回のようなワナもなかったですし、以前よりもっと「日本語としての完成度」に集中できたかと思います。


おなじ内容の第2回は12/7(土)に開催されますが、始まりが30分早く13:30となります。

リンク:読ませるIT翻訳 PartⅡ~ITの定番と読みやすさの追求~ | サン・フレア アカデミー

04:42 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.11.10

# 「日本翻訳ジャーナル」11/12月号

Web + PDF版への移行後の第2弾です。


前回と同様、右カラムの表紙写真をクリックするとジャーナルの専用サイトに進みますので、そちらからお読みください。


私のコーナーは、連載10回目記念ということで、ちょうどいいタイミングで開かれたIJET-25プレイベント名古屋の様子を、私自身でレポートさせていただきました。

リンク:特集:名古屋の翻訳ライフ●高橋聡 | JTFジャーナルWeb


そのほかのコーナーでも、安達俊一さんや上林香織さんの読み応えたっぷりの寄稿をお読みいただけますし、「WordSmyth Café」(遠田先生のコーナー)には、なんと柴田耕太郎先生がご登場になっています。


PCだけでなくスマートフォンでもお読みいただけます。

12:47 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.10.26

# 翻訳関連のイベント告知

最近、映画の話ばっかり書いてるみたいなので、これから年末までに予定されている翻訳関連のイベントを紹介しておきます。


TwitterやFacebookのアカウントをお持ちの方はこういう情報をフォローできていると思いますが、やはりSNSに出てきている翻訳者さんはまだまだごく一部。以下にご紹介するのは、現役の翻訳者さんだけではなく、学習中の方にも有益なものが多いので、ぜひ積極的にご参加ください。

11/9(土)14:00~17:00

思っているより簡単 - 青色申告と国の制度で節税と資産運用 | 日本翻訳者協会

JAT東京活動委員会(TAC)のセミナーです。十人十色の主催者の一人である井口富美子さんが、翻訳者にとっての「大切なお金なハナシ」をします。フリーランスになることを少しでも考えている人は必聴。


11/12(火)13:00〜17:00

十人十色/Wordワイルドカードセミナー
(Facebookイベントページのみです)

4月にやった正規表現セミナーのWord版という位置付けでもありますが、Wordのワイルドカードを活用しているみなさんがその技を披露します。

高橋さきのさん、新田順也さん、テリー斉藤さん、柳沢正臣さんがご登壇の予定です。


11/16(土)14:00~17:00

読ませるIT翻訳 PartⅡ~ITの定番と読みやすさの追求~ | サン・フレア アカデミー

10/22のエントリでご紹介したとおりです。お申し込みの方には、ぼちぼち事前課題も届く頃かと。


11/23(土)10:00~16:20

InterpretJAPAN

翻訳ではありませんが、JATの通訳グループによるイベントです。


11/26(火)13:30~16:30

十人十色 & SKIT共同勉強会 第1回「しんハムさんセミナー@東京」
(Facebookイベントページのみです)

翻訳祭の前日ですが、十人十色と、関西通翻クラスタの勉強会SKITとのコラボレーションイベントという位置づけで、しんハムさんこと小林晋也さんにご登壇いただけることになりました。

しんハムさんのセミナーだけでなく、時間を長めにとったQ&Aというかディスカッションも予定しています。

……とご案内しておいて申し訳ございませんが、実はこちらはほぼ定員に達しています。キャンセル待ちでお申し込みください。

このセミナーの後、前夜祭になだれ込みます。こちらだけの申し込みも可能ですが、近日ご案内を始めます。


11/27(水)13:30~16:30

第23回JTF翻訳祭

すでにご案内したとおりです。


11/30(土)14:00~17:00

IJET-25プレイベント大阪

先日の名古屋に続き、IJET-25のプレイベント第2弾です。「治験の国際化とCROの役割」ということで、分野は別としてもさすがに私は行けそうにありませんが、この後で「JAT/SWET関西主催の忘年会」も予定されています。セミナーもすでにかなりの申し込みがあるようで、相当の盛り上がりが予想されます。


12/1(日)14:00~17:00

年忘れ One Hundred Club 忘年会
(Facebookイベントページのみです)

※この日で確定したんだっけ?

翻訳者グループOne Hundred Clubの忘年会です。

詳細はこれから決まると思います。乞うご期待。


12/7(土)13:00~16:30

読ませるIT翻訳 PartⅡ~ITの定番と読みやすさの追求~ | サン・フレア アカデミー

11/16とおなじ内容の2回目です。


12/7(土)18:00~

2013年東京忘年会

TACが主催する忘年会。昨年と同じく、有楽町にある隠れた名店、アンディーの店「新日の基」で開催されます。料理もお酒もサイコー、のお店。

01:08 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.10.22

# 「読ませるIT翻訳」、シリーズ第2弾だそうで

6月、7月に2回開催した「読ませるIT翻訳」ですが、たいへんありがたいことにシリーズ第2弾の開催が決まりました。

しかも、前回の状況をふまえて、今回は最初から2回実施だそうです。


リンク:セミナー情報 | サン・フレア アカデミー


第1回が11/16(土)

第2回が12/7(土)

です。

なお、今回のセミナーはPartⅡという位置づけですが、内容的には前回ご受講なさっていなくともまったく問題ありません。今回初めてご参加の方には、前回のセミナー資料の抄本も差し上げます。

ということで、ただ今絶賛ネタの仕込み中です。

03:59 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2013.10.10

# 第23回JTF翻訳祭

もう、そんな季節なんですねー。

ということで、公式プログラムも発表されました。

通翻クラスタの皆さまおなじみ、JTF(日本翻訳連盟)の年次イベント「翻訳祭」の季節です。

リンク: 翻訳祭 : 日本翻訳連盟

Jtf_2013

また、参加費が無料になる(ただし、希望のセッションを聞けない可能性もある)ボランティアスタッフの募集も始まっています。

Bnr_volunteer_2013

参加を迷っていらっしゃる方や、初めての参加でどうすればいいかよくわからないという人こそ、ボランティア参加が向いているかもしれません。一般参加より、講師の方に近づきやすいですし、他のボランティアを通じてヒトのネットワークも作りやすくなるからです。


それから、ちょっと出費はかさみますが、いつも言っているように交流パーティーも絶対におすすめです。

交流パーティーは参加者もかなり多く、初めての参加だと気後れしそうですが、そんなときこそSNSで広がったつながりを利用しましょう。SNS上で知っている人が1人でもパーティー会場にいたら、その人のそばにいるだけで、挨拶したり名刺交換したりのきっかけをつかめるはずです。

プログラムについても少し触れておきましょう。すでに、何人かの方がブログでプログラムのことを書いていらっしゃいます。

リンク:11/27 JTF翻訳祭 【翻訳と通訳のあいだ】
(通訳・翻訳者、マイク関根さんのブログ)

技術者から翻訳者へのシルクロード:もしも「翻訳祭」に参加するのなら(仮想時間割を作ってみた)
(翻訳者、あきーらさんのブログ)


ということで、今年もみなさん、JTF翻訳祭でお会いしましょう。

01:25 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.09.17

# ミズトラの会でセミナー

先週、9月12日と13日は大阪へ行ってました。翻訳がらみでは5月の十人十色に次いで今年2度目、プライベートも含めると、なんと今年3度目の大阪です。


しかも今回は、地元グループにお呼ばれしてのセミナーでした。

お呼びくださったのは、関西を中心に女性翻訳者さんだけで結成されている「ミズトラの会」(Facebook上の非公開グループなので、リンクは貼りません)。

ミズトラの会を主催しているのは、こちらのブログ主であるmskyokoさん。こちらのブログはかなり前から拝読していましたが、ご本人にお会いするのは今回が初めてでした。

なんと言えばいいかなぁ、「颯爽としている」という形容がいちばんピッタリくる方。その印象にたがわず、今回のセミナーと懇親会を企画・運営した手腕は見事なものでした。

130913

会場は、両日とも大阪・梅田からすぐの「毎日インテシオ」。毎日新聞の一角でした。

12日(13:00~17:00)は、「対訳君」でおなじみのMCLさんから、なんと代表取締役の方がいらっしゃって直々に「対訳君」および「CheckAlign」について説明。

それに続いて私が「Trados入門」の話をしました。


13日(13:00~16:30)は、私の単独で「読ませる翻訳」セミナー。

名前から察せられるとおり、6月と7月にサン・フレア アカデミーで開いたセミナーの短縮版です。IT分野の方ばかりではないので、課題や例題を割愛し、代わりに5月の十人十色で紹介できなかった話、その他を混ぜてお話しさせていただきました。

追加したネタには、こんなのもあります。

1309132


ご参加くださった方々がすでにブログをまとめていらっしゃるので、こちらでご紹介しておきます。
【追記:9/18、ブログを1つ追加しました】
【追記:9/19、ブログを1つ追加しました】

リンク:新・翻訳者つれづれ日記 ミズトラ「秋のITセミナー」(I)セミナー編
(主催者様のブログ)

リンク:女は翻訳でよみがえる 対訳君 VS Trados
(おなじみ猫先生)

リンク:ミズトラ会のITセミナー | at home
(参加者の一人、tomokoさん)

リンク:ツールを使うのか、ツールに使われるのか: 翻訳者akoronの一期一会
(5月に広島でお世話になったakoronさん)

リンク:屋根裏通信 20130918|今更、対訳君とTradosの話・主にTrados
(参加者の一人、Sayoさん)

リンク:対訳君&読ませる翻訳セミナー(と台風ボランティア募集)
(参加者の一人、リスノさん)

12日は「ツールに使われないように」という方向でお話しし、翌日は翻訳の中身に進むという2日間の構成になったので、私が現時点で言いたいことはけっこう多面的に話すことができた気がします。

質疑も熱心で、この会のみなさんの熱いパワーをたっぷり分けてもらった2日間でした。


主催者であるmskyokoさん、このように刺激的な機会をありがとうございました。また、ご参加いただいたミズトラのみなさん、そして、実は私以外に唯一の男性としてオブザーバー参加くださったしんハムさんにも、心からお礼を申し上げます。

03:22 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2013.09.07

# 「日本翻訳ジャーナル」9/10月号~Web版もスタート

(ちょっと遅くなりましたが、エントリの日付はジャーナルの発行日にしています)

JTFの「日本翻訳ジャーナル」、9/10月号が発行されました。

今までどおり、右カラムにあるジャーナル画像からどうぞ......と言いたいところなのですが、実は今回からJTFジャーナルは独自のサイトで新装スタートしています。右カラムの表紙をクリックすると、そのサイトに移動します。

リンク:JTFジャーナルWeb

しかも、PCで見やすいように、

全ページがWebサイト対応

しました(携帯端末向けのサイトは現在作成中です)。


今までどおりのPDF版も、ページ数を限定して公開しています。つまり、PDFでお読みの場合、「続きはWebで」ということになります。

私のコーナーには、「猫先生」こと青山万里子さんが登場。ご本人をご存じの方には、あのお人柄そのままの文章で、きっと楽しんでいただけます。

その他の連載コーナーにも、通翻クラスタでおなじみの方が勢ぞろいしています。

サイトの構成を簡単に説明しておきます。

トップページに最新号の表紙があります。これをクリックするとPDF版をダウンロードできます。

左カラムに最新号の目次があります。左カラムを下へスクロールするとバックナンバーが並んでいます。バックナンバーは、順次HTML化の予定です。

ページ全体を下にスクロールすると、最新号各記事のサマリーがあります。


ページの表示やナビゲーションに不具合がある場合は、高橋までご報告いただければ幸いです。

02:27 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.09.04

# Translators Are a Waste of Space

タイトルで驚いた方も、とにかく最後までご覧ください。

全米が泣きます。

05:59 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2013.07.28

# 「読ませるIT翻訳」第2回のご報告、その他

先日お伝えしたとおり、6/22の 「 読ませるIT翻訳 ~マーケティング・販促資料の英文和訳~」がご好評だったので、昨日7/27にその第2回を開催し、どうにか無事に終了できました。

同じ内容で2回リピートというのは私も初めての経験。

2回目のほうがスムーズに進んだせいか、休憩までの進み具合が予想以上に早く、こりゃ時間が余るかな、とも思ったのですが、ご参加のみなさんからわりと積極的なご意見もいただいたおかげで、予定どおりに終了できました。


1回目のときには失念していて、

2回目でだけお伝えした情報

がひとつあります。日本語コーパスを検索できるサイトです。

KOTONOHA「現代日本語書き言葉均衡コーパス」 少納言

NINJAL-LWP for BCCWJ (NLB)

「自然な日本語」を書こうとするとき、強力な武器になるはずです。

さて、2回とも終わったのでもうネタばれしていいと思いますが、今回

billions of business users

の部分に、かなりの方が引っかかってしまったというのは、おもしろい結果でした。逆の立場だったら私もやられてしまった可能性は大です。

これ、実は昨年のアルク翻訳コンテストで出題した

6,912 languages

と同種のワナでした。


どちらも、最初から意図したわけではなかったのですが、こういうワナが入っているのは、私が課題文を出題するときの傾向かもしれません。

さて、おかげさまで2回を通じて50名超の方にご参加いただいた今回の「読ませるIT翻訳」。

同様のセミナーの第2弾(シリーズ化?)希望という声を少なからずいただいているようで、まだ何も決まっていませんが、どうやら実現の方向に動き出しそうです。決まったら、またこちらやFacebook上で告知させていただきます。


6/22、7/27にそれぞれご参加くださったみなさま、ありがとうございました。m(__)m

12:25 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.07.15

# forwad compatibilityとbackward compatibility

某所で出題した課題文に、forward compatibilityという用語が出てきます。

forward compatibility
backward compatibility

ついでに、

upward compatibility
downward compatibility

さらに、

upper compatibility
lower compatibility

まで含めると、用法がカオスになっています。英語だけ見ても使われ方は混乱してますし、訳語もばらばら。そして、あらためて調べてみたら、少なからぬ辞書で説明までいいかげんであることが分かりました。

手元にある辞書やオンラインの用語サイトなどから、

forward compatibility/backward compatibility

upward compatibility/downward compatibility

の訳語と語義を一覧にしてみました。

compatibility訳語・語義一覧
(ExcelファイルがDLされます)

upper compatibility/lower compatibility

を含めなかったのは、ざっとの感触でしかないのですが、この組み合わせが日本語サイトで多くヒットするわりに、英語サイトのはあまりヒットしない感じだからです。


英語としての用法についても、訳語まで含めた場合でも、「これが絶対に間違いない記述」と断定できる資料はありません。しかたがないので、以下の一例を基準にしました。

Word 2007以降で、docxだけでなくdocも開ける……A

Word 2003で、docxを開ける(プラグイン必要)……B

一般的に、Aの互換性のほうが簡単ですね。プレステ2でプレステのゲームも動くとか。逆に、Bのほうが難しいのは感覚的によくわかります。プレステではプレステ2のゲームはまず動きません。実現する場合でも、Wordのプラグインのような工夫が必要。「白黒テレビでもカラー放送を受信できた」のはBの例ですね。

私が作った表では、このうちAをクリーム色、Bを水色に塗り分けてみました。

これを見ると、有名どころの辞書でも、訳語にばらつきがあるだけでなく、説明までけっこう杜撰なことがわかります。


リーダーズには、4つのうち3つのエントリがありますが、よく見ると説明がどれも同じになっています。

英辞郎は、訳語のうえでは対がとれていますが、やはり説明が4つとも同じ

ランダムハウスや、日外アソシエーツの『コンピューター用語辞典』など、多くの人が頼っているはずの辞書でさえ、実は解説が

何を言ってるかよく分からない

(分かる人いたら教えてください)。

研究社の『英和コンピューター用語辞典』でも、対になっているはずの概念の説明がやっぱり同じでした。


ここまで混乱している概念/用語も、なかなか珍しいのではないでしょうか。


【追記】

OEDに、upper compatibilityだけ語義の記載があったので、Excelファイルを更新しました。

11:30 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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2013.07.06

# 「日本翻訳ジャーナル」7/8月号

JTFの「日本翻訳ジャーナル」、新年度2回目となる7/8月号が発行されました。

右カラムのリンクから、どなたでもダウンロードしてご覧いただけます。


今号の表紙は、会長と理事の面々です(左から、東会長、丸山理事、星田理事、井口理事、寺田理事)。

よくある構図ですが、たとえばこれにもよく似ています(『鳥人戦隊ジェットマン』OP)。

130706

私のコーナーに登場するのは、関西在住で俳句も読む翻訳者、国枝史朗さん。

4月に開いた十人十色の正規表現勉強会のとき、わざわざ東京にお越しくださったのですが、そのとき飲み会で伺ったお話がたいへんおもしろかったので、関西編の第2弾として執筆をお願いしました。

なお、国枝さんが折々に読む俳句は、TwitterやFacebookで見ることができます。


ぜひダウンロードして、お読みください。

08:56 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.07.05

# サン・フレアさん、セミナー報告と次回予告

しばらく前に告知したとおり、サン・フレア アカデミーで、シリーズ講座が始まり、単発セミナーも終了しました。

6/12 ~(毎水曜)「Trados活用IT翻訳者養成講座」がスタート。

6/22 「 読ませるIT翻訳 ~マーケティング・販促資料の英文和訳~」、終了。


6/22は、おかげさまで満員御礼となり、急きょ、おなじ内容の追加実施が決まりました。

リンク:【追加開催決定!】読ませるIT翻訳 ~マーケティング・販促資料の英文和訳~ | サン・フレア アカデミー

【追記】
7/27は、6/22とおなじ内容の予定です(課題文も同じです)。

ただ、性分としてまったく同じことをしゃべるのは難しいかもしれないので、何か違う話はするかもしれませんが、基本は変わりません。


6/22ご参加のみなさんには、事前課題の答案をご提出いただきました。

現役のみなさんから学習中の方まで、かなり幅が広かったのは事実です。現役プロの訳文は、ほとんどが、

私の話なんか聞かなくても、大丈夫でしょ?

と思われるものだったのですが、いろいろ話を伺っていると、やはりプロになってからは、

自分の訳文の善し悪しを知る機会が少ない

ということでみなさん悩んでいらっしゃいました。だから、こういう機会をみなさん必要としていらっしゃったらしい。

たしかに、よほどヒドい仕事をしたらフィードバックが来る会社もあるでしょうが、そうでない限り、自分の訳のどこが良かったのか、どこに問題があって修正されたのか、って産業翻訳だと知る機会が少ないですよね。


ということは、特に私が講師ということでなく、産業翻訳者どうし(特に同じ分野の)の勉強会を開いて、お互いの訳文を評価し合ったり、自分のノウハウを教え合ったりする、そんな場があったらいいのかも、と思いました。

ところで、この日の打ち上げでも、やはりこんな質問をされました。

「自分の翻訳ノウハウとか技術的なノウハウを、こんな風にどんどん公開しちゃっていいんですか?」

と。

(そもそも、私のノウハウなんてたかが知れてますが)この手の質問、いただくたびにいつも不思議に思って、逆に、

「なんで?」

て聞き返してしまうことが多い。どうやら、それって「私が将来的に損をする」という含みらしいのですが、損するのかな?

11:51 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2013.06.01

# IJET-25、始動します!

昨年のIJET-23 広島からちょうど1年が経ちました。

今年のIJET-24が、ハワイで間もなく始まるところです(6/1-2)。行きたかったんですけどねー。


そして、来年のIJET-25は、ついに

東京

で開催されます。

そのIJET-25の準備は、もう昨年から始まっていましたが、このタイミングで公式にも始動しました。

Ijet25_2

リンク:第25回英日・日英翻訳国際会議(東京)


Twitterアカウントもあります。

リンク:@IJET_25


これからどんどん情報が出てきますし、プレイベントも次々と登場します。


通翻のみなさん、ぜひTwitterアカウントとFacebookページをフォローしてください。

01:22 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.05.25

# 「十人十色」、広島編のネタばれと、大阪編で予定していた話

「十人十色」出張編、私の話した内容と、話せなかった内容について、簡単にご紹介しておきます。


広島編では、ツールとか作業環境のことではなく翻訳内容についてお話ししました。取り上げたのは、その日の朝納品したばかりの案件から拾った英文の訳し方。

ツールについては、omiso.dot のことをちらっと紹介しました。Trados翻訳が終わったバイリンガル状態のWord上でタグや数字の整合性をチェックできるマクロテンプレートですが、詳しくは過去記事をご覧ください。

リンク:side TRADOS: 翻訳後のチェック - Word の場合 - omiso.dot

リンク:side TRADOS: omiso.dot の Tips

広島編でなんで突然、omisoの話をしたかというと、新幹線のなかで後述のような経緯があったからでした。

一方、大阪編では時間の都合で何もお話しできませんでしたが、予定では広島編と別の話をするつもりでした。元ネタはこちらにあります。

リンク:アルク翻訳コンテスト2012:翻訳・通訳のトビラ


以下、omisoを紹介するに至った経緯です。


7:30発の博多行きのぞみ11号。

(どうでもいいけど、東京駅地下のグランスタ。営業時間8:00からって、使えねえぞぉ。期間限定で7:00からやってたりするみたいだけど)


私は、この日の朝発生した案件があったので、車中でさっそく翻訳にかかってていたのですが、ふと見ると隣に座っていたテリーさんが、自作のWordマクロを編集しています。「数字だけ検索してマーカーを付ける」ようなことをしていたので、なにげなく

「原文と訳文で数字を照合するマクロ、昔からあるよ」

と言ったところ、興味を示されたので、お見せすることにしました。それがomiso.dotです。


……が、このとき持っていたわが愛機、ASUS Ultrabookには、まだomisoテンプレートが入っていませんでした。DropboxとかUSBメモリー、その他心当たりのオンラインストレージも探してみましたが、どこにも置いてません。


諦めかけたところで急きょ思い立ったのが、以前の職場の同僚。同僚の多くも今はフリーランスとして独立していますが、omisoを導入したのは私が社内にいた頃なので、omisoを持っている可能性は大です。

さっそく数人にメールで打診したところ、30分もしないうちに、そのうちの一人から omiso.dot が送られてきました。


この間、PCの電源は車内からとっていたし、ネットは自分の docomo Xi がさすがの安定感で接続され続けていました。そんな環境で、Gmail を使って必要なファイルを人から送ってもらえる。なんと便利な時代になったものか。


そんな展開があまりの感動ものだったので、広島ではつい、omiso を紹介することにした次第です。

03:21 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.05.24

# 「十人十色」広島・大阪出張編のお礼

先日ご案内した「十人十色」広島・大阪出張編、天気にも恵まれ、盛大に全日程を終了することができました。

広島、大阪でそれぞれ現地スタッフとしてご協力くださったみなさん、本当にありがとうございました。

東京メンバーのYoshiさん、有給まで使っていただいたテリーさん、そして何より、今回のイベントを発案した井口さん、みなさんとご一緒できたおかげで、心に残る素晴らしい2日間になりました。

いずれ、テリーさんから録画が公開されると思いますが、ひとまず以下のツイートまとめをご覧ください。


リンク:2013年5月21日翻訳勉強会「十人十色」広島編 - Togetter

リンク:2013年5月22日翻訳勉強会「十人十色」大阪編 - Togetter


広島も大阪も、ほんとうにいい街です。

広島編は、17:00 までの予定を1時間延長し、14:30~18:00 の3時間半ほぼノンストップ。

広島側から4人が「十人十色」の趣旨に相応しい内容をプレゼンしてくださり、、関東組からも3人が話をさせていただきました。

みなさん、当初は「特に話す内容など...」とおっしゃっていたわりに、それぞれに内容の濃い、丁寧なプレゼンテーションでした。ツールや作業環境の話から、Macユーザーならではのノウハウ……今後の仕事にいろいろと役立つことと思います。

最後に少し長めの時間をとってGaryou_Tenseiさんが担当してくださった「ゲーム翻訳入門ワークショップ」は、ふだんあまり縁のない人にはそうとう刺激的だったのではないでしょうか。こういうワークショップ形式は、これまでの東京でも例がなく、今後も機会があればやってみたいと思う内容でした。


ちなみに、ランチも……

1305211

打ち上げも……

1305212

もちろんお好み焼きでした。

かたや大阪編は、13:30~17:00 の同じく3時間半。やはりほぼノンストップで、大阪側からなんと7人の方が、みなさん熱く語ってくださいました(時間の都合で関東組の話は割愛)。

「眼鏡翻訳者」なるレアな方のお話、翻訳者の健康、ニュース翻訳の裏側……と、こちらも想像以上にバラエティに富んだ内容で、関東組も圧倒されっぱなしでした。

最後には、秀丸マクロの糸目さんが登場。ようやくお会いできました(詳しいことは、また改めて)。


この日はランチも現地メンバーが設定してくださり……

1305213

やっぱりお好み焼きですwww(私は、スジ肉いりのネギ焼きにしましたが)。

そして、夜は当然……

1305214

串カツです。二次会、三次会まできっちり設定してくださったポールさん、心よりお礼申し上げます。

「十人十色」の言葉どおり、ほんとにみなさん、お仕事の内容も方法もいろいろですよね。

でも、「翻訳が好き」という気持ちだけはみなさん同じ。だからこそ、みなさん本業の合間を縫って時間をやりくりしてまで、こういうイベントを盛り上げてくださったのだと思います。

その情熱をしっかりたっぷり吸収できた2日間でした。

08:16 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.05.19

# 翻訳勉強会「十人十色」広島・大阪出張編

もう明後日に迫ってしまいましたが、参加申込みに特に〆切はないので、今さらながらこちらでも告知しておきます。

勉強会「十人十色」については、以前の記事でも紹介しました(# 勉強会「十人十色」のイベント告知

その十人十色を、広島と大阪でも開催しちゃおうという、大胆なイベントです。

5/21(火)は広島に、5/22(水)は大阪にお邪魔します。

翻訳勉強会「十人十色」・広島編

日時:5月21日(火)14:00~17:00
場所:アステールプラザ 工作演習室(広島市中区加古町4-17)
費用:(会場費の人数割り)


翻訳勉強会「十人十色」・大阪編

日時:5月22日(水)13:30~17:00
場所:ドーンセンター 中会議室(中央区大手前1-3-49)
費用:(会場費の人数割り)


こちらからは、井口富美子さん、大光明宜孝さん、テリー斉藤さん、私の4人が参加します。

広島・大阪とも、主にFacebook上でご参加を表明してくださった人がすでに大勢いらっしゃいます(プレゼンターとして、または見学のみで)。


当日はUstreamによる生放送もあり、録画もアーカイブされる予定です(ただし、ご本人の希望によりUSTや録画がない部分もあります)。


もちろん、広島、大阪とも、打ち上げ付きです。


セミナーの席は、まだ若干余裕があります。この記事を見て感心を持っていただいた方は、TwitterでもFacebookでもメールでも、ご連絡をお待ちしています。


なお、この勉強会については、以下の方のブログ記事もぜひご覧ください。

リンク:広島通訳 Talk! Talk! Talk!: 十人十色(翻訳)勉強会 広島編(広島の宮原美佳子さんのブログ)

リンク:「Win-Win」の関係と勉強会: 翻訳者akoronの一期一会(広島のakoron1さんのブログ)

リンク:翻訳勉強会「十人十色」 | WITHOUT STOPPING(大阪のポール牧野さんのブログ)

10:14 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2013.05.18

# 「日本翻訳ジャーナル」5/6月号

前回の3/4月号についてのエントリが、まだ「最近の記事」から消えてませんね。ってことは、この2カ月間でブログの更新がそれだけ少なかったということ。いけませんねぇ。


ジャーナルも、新年度がスタートしました。

連載コラムは、遠田和子さん、テリー斉藤さん、私の3人が継続。残りの2つは、新たに矢能千秋さんと矢野直子さんのコーナーが始まります。

・矢野直子 presents 「Lost in Translation Company」

・矢能千秋 presents 「人間翻訳者の仕事部屋」

お二人とも、強力で頼もしい存在であり、今までのコーナーになかった切り口をお読みいただけると思います。


私のコーナーには、京都在住の翻訳者、渡部優一さんが登場。昨年の春、通翻クラスタで一緒に高尾山に登った直後に、あまりにも軽々と京都に転居なさったので、その後どんな翻訳ライフを過ごしているのか、私自身が知りたくてお願いしました。

これを皮切りに、私の「フリースタイル、翻訳ライフ」は、しばらく

関西シリーズ

が続く予定です。

10:34 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.05.14

# サン・フレアさん、単発セミナーと通常講座

6月に、サン・フレア アカデミーさんでまた単発のセミナーが1つあります。それより一足早く、3か月の短期講座も始まることになりました。


リンク: 読ませるIT翻訳 ~マーケティング・販促資料の英文和訳~ | サン・フレア アカデミー

3月に、同じサン・フレアさんとJATで、IT翻訳業界の現状と、その中でどうやったら続けていけそうかということをお話ししました。今回のセミナーは、いわば、その実践編です。


そして、今まではこのような単発セミナーばかりでしたが(オープンスクールも含めて)、ついに通常講座も担当するとになりました。

リンク: Trados 活用 IT 翻訳者養成講座 | サン・フレア アカデミー

以下、サイトでは書き切れなかった点をここに書いておこうと思います。


今回の講座は、Tradosの習得(基礎~上級レベル)と、IT翻訳(リンク先にメニューがあります)の実践を同時にやっちゃおうという、ちょっと野心的な試みです。

こうしたスタイルの授業にどれくらいの需要があるかわかりませんが、IT翻訳現場での即戦力の養成をめざします。

「Tradosのスキル」と「実践的な翻訳技術」の両方を習得

講座紹介の抜粋ですが、「翻訳力」とは書いていないところにご注意ください。

一定以上の翻訳力があることを前提に、「IT翻訳の現場で求められる技術」を身につけることを目的としています。併せて、

- IT翻訳現場で実際に行われている習慣

- スタイルガイドや用語集の運用

- 辞書検索

- Trados以外のツールの活用(正規表現など)

などについても、時間の許す限り、この授業で取り上げていきたいと思います。その一方で

- IT翻訳固有のおかしな習慣についての疑問点

- 本当の意味での「翻訳力」を損なわない工夫

- Tradosの「裏ノウハウ」

なども盛り込んでいくつもりです。


09:54 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2013.04.22

# 正規表現入門セミナー(十人十色勉強会)

定員の関係でFacebook上でのみご案内していましたが、直前になって数名分の空きができたので、急な話ではありますが、こちらでも告知します。

3月にもご紹介したことがある、Facebook上の勉強会グループ「十人十色」の主催で、正規表現の勉強会があります。空きはわずかですが、以下、ご都合と興味しだいで、いかがでしょうか。


日時:
4月23日(火)……明日です
14:00〜17:00

場所:
国際文化会館セミナーD室(港区六本木)
http://www.i-house.or.jp/facilities/

参加費:
会場使用料として1人1500円程度
(参加人数で頭割りしますので、多少は上下します)


参加の前提
・各自ノートPC持参
・そのPCに「秀丸エディタ」をインストールしておく
・拙ブログでシリーズ連載している「翻訳者のための正規表現」を読んでおく
(この前提をクリアしておくほうが、当日の収穫はまちがいなく大きいはずですが、急な告知ですので、満たしていなくても興味のある方はご参加ください)


Facebookアカウントをお持ちの方は、Facebook経由でお申し込みください。Facebookアカウントをお持ちでない、またはあっても方法がわからない方は、baldhatterまで直接ご連絡ください。

11:15 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.03.17

# 勉強会「十人十色」のイベント告知

Facebook 上には、通訳者・翻訳者のグループがいくつかあります。

翻訳者の自主的な勉強会グループ「十人十色」もそのひとつです。

リンク: http://www.facebook.com/groups/339270169513730/

もともとは、「仕事のしかたは、まさに十人十色。その様子をお互いに見せあったら、けっこう参考になるのではないか」という趣旨で始まりましたが、その後は、いろいろとテーマを決めてさまざまな勉強会を実施しています。


その「十人十色」の、これから数か月のイベントを告知しておきます。

十人十色:座談会「仕事と子育ての両立」
 ・3/17(日)14:00~

今日の午後です。
http://www.facebook.com/events/127408050775239/?ref=3

タイトルどおりの座談会ですが、不肖私めが司会進行役を務めます。YouTube 生放送のみ、アーカイブなし。
放送のURLはこちら。

http://www.youtube.com/user/terrysaitojp


十人十色:Felixセミナー
 ・3/20(水・祝)

http://www.facebook.com/events/127380904101432/

翻訳支援ツール Felix の紹介とハンズオンです。以前、同じ十人十色で小規模に実施されたのですが、私が参加できなかったので2回目の開催を熱望し、規模を大きくして実施されることになりました。翻訳センターさんの1室をお借りするので、人数にはまだ余裕があります。


十人十色:正規表現入門セミナー
 ・4/23(火)

http://www.facebook.com/events/521359021250303/

以前から要望の多かった正規表現についてのセミナー。これもハンズオンを中心にする予定です。詳しくは、また別エントリでもご紹介する予定です。こちらは残席にあまり余裕がないかもしれません。

Facebookグループ「十人十色」には、承認制で、どなたでもご参加いただけます。

今まで横のつながりが難しかった翻訳者どうしが、SNSで簡単に知り合えるようになりましたが、十人十色は、そのなかでも具体的に自分のスキルアップにつながる場です。参加ご希望の方は、グループページ(http://www.facebook.com/groups/339270169513730/)からどうぞ。


ちなみに、5月中旬には、広島・大阪でも十人十色出張イベントを開催する予定です。詳報はFacebookで。

11:02 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.03.08

# 「日本翻訳ジャーナル」3/4月号

「日本翻訳ジャーナル」の3/4月号が発行されました。


リンク: JTF 日本翻訳ジャーナル 3/4月号

Ph_journal_new_34

巻頭特集は、十印さんの50周年。老舗だけあって、今の翻訳業界には、こちらの会社と何らかの縁のある人が少なくありません。「十印五十年史」は、昭和中期の記録も含めて貴重な資料になりそうです。

ちなみに、この「十印五十年史」を担当しているポパル明くん、なかなか楽しい好青年です。


私のコーナー「フリースタイル、翻訳ライフ」には、いつもハイテンションで走り抜けている松丸さとみさんが登場。執筆内容も元気に走っていらっしゃいます。

ジャーナルは、いつもどおり

全編無料でダウンロード

できますので、ぜひお読みください。

ちなみに、日本翻訳ジャーナルに、テリー斉藤さんや遠田和子さんらとともに私も編集委員として携わり、今のようなコラム担当制になってからちょうど1年が経過しました。その間に6号が刊行されたので、私のコーナーにも6人の翻訳者の方にご登場いただきました。

ご執筆いただいた歴代のみなさま、この場を借りて改めてお礼を申し上げます。m(__)m

次号から、コラムは一部構成を変えますが、私のコーナーはもうしばくこのまま続く予定です。このコーナーに

ご自分の翻訳者ライフ

を書いてみたい、という方がいらっしゃいましたら、いつでもお声をおかけください。

11:27 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.02.27

# アウトプットだけじゃなくインプットもないと枯れちゃうので

以前から宣伝しているように、3月は自分がしゃべるイベントが目白押し(# 3月はイベントいろいろ)。

その前半戦が早くも今週末に迫ってきましたが、アウトプットだけじゃなく、最近のインプットについても簡単に紹介しておきます。


2/15 片岡義男×鴻巣友季子「翻訳真剣勝負」

文芸翻訳についてのトークですが、もちろん大変おもしろかったし、何しろ "あの" 片岡義男の声を生で聞ける、という、多分にミーハーな興味もあったので、とても満足でした。


当日のトークは、公式のUstreamビデオが公開されていますので、ぜひどうぞ。

リンクその1: http://www.ustream.tv/new/search?q=左右社&type=all
リンクその2: http://www.ustream.tv/new/search?q=左右社&type=all


私自身、片岡義男の熱烈なファンというほどではないのですが、過去に2度エントリにしてました。

禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # 片岡義男の『ビートルズ詩集』

禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # 片岡義男の「きまぐれ飛行船」と One Dime Blues
(YouTubeのリンク先はなくなっちゃいました)


そんなわけで、開演前、私の頭の中で勝手に Etta Bakerおば(あ)ちゃんの "One Dime Blues" が鳴っていたのは言うまでもありません。

リンク: Etta Baker "One Dime Blues"
(ほかのバージョンもありますが、「気まぐれ飛行船」で使われていたのはこのバージョン)


『赤毛のアン』の原典は初めて読みましたし、Raymond Chandlerも久しぶり。最近こういう英語(タイプはぜんぜん違いますが)にまったく触れていなくて、ちょっとイカンと思います。

2/24 映像翻訳セミナー「映像の向こう側とこちら側」

映画監督のJohn Daschbach氏と、字幕翻訳者・仙野陽子さんによるセミナー。SSTも見ながらのワークショップ形式を交えた、とても楽しいセミナーでした。

当日の様子は、こちらのブログでどうぞ。

リンク: 映像翻訳セミナー「映像の向こう側とこちら側」に参加してきました : カンサンの医薬翻訳ノート new!!


仙野さん、講師としても実に優秀です。

Daschbach監督の映画は(セミナーの本筋とは離れてますが)、久しぶりに「ていねいに撮られた映像に向き合う」ということの愉しさを思い出させてくれました。


ふだんとはまったく違う脳味噌を使うので、かなり頭が疲れましたが、こういう刺激はやはり必要ですね(その疲れも、セミナー後の懇親会で某氏が披露した "華麗なる舞" を見て吹っ飛んでしまいましたが...)。

2/28 第6回翻訳百景ミニイベント

いよいよ明日です。

リンク: 第6回ミニイベントの概要: 翻訳百景

残席わずか。あと1時間ほど受け付けているそうです。


このミニイベントシリーズ、私は昨年から第1回、第3回、第5回と参加してきて、たいていはBuckeyeさんも参加なさっていましたが、第6回となる今回は、その井口耕二さんがゲストとして登壇。事前の打ち合わせは一切なしということで、どうなるかワクワクです。

このほかにも、小規模な勉強会がいくつかあるのですが、こちらはFacebook上のクローズドのイベントなどもあるので、ここには書きません。

気になる方は、Facebook上でbaldhatterまでどうぞw

10:52 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.02.16

# 宣伝 ~ 3月前半のセミナー2週間前

宣伝のお時間ですw


サン・フレア アカデミーオープンスクール

まだ申込み受付け中ですが、現時点でキャンセル待ちの講座も出てきました。

私の講座は、まだ絶賛受付け中。

「今、あえて、IT翻訳に挑戦してみる」
3/2 15:30~17:30

テーマは、たかがIT翻訳、されどIT翻訳、ってところかな。

フェロー・アカデミー オープンセサミ

こちらも受付け中です。

「ITニュース翻訳 最前線」
3/3 10:30~12:10

こちらはもっと具体的、かつ実践的な内容になる予定です。


それぞれ、お待ちしてます。

04:22 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.02.12

# アルク翻訳コンテスト(翻訳通訳のトビラ)、結果発表

アルクさんのサイトに、「翻訳通訳のトビラ」というコーナーがあります。

JTFで私と同じくスタイルガイド検討委員を務めていらっしゃる東さん、音声入力の達人Richard Walkerさん、Wordマクロの新田さんなども登場しています。


昨年の秋、このコーナーで開催された

「アルク翻訳コンテスト2012」

で、実務翻訳部門の出題を担当させていただきました。その答案(けっこうな数でした、はい)を年末から年明けにかけて採点しましたが、最終結果と講評、訳例が同ページで公開されました。

リンク: アルク翻訳コンテスト2012:翻訳・通訳のトビラ


こーゆーお仕事、楽しくてけっこう好きです。

講評で書ききれなかった点など、これからしばらく、機会があればこの課題について書いてみる予定です。

03:34 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2013.02.03

# 3月はイベントいろいろ

来月3月、またあちこちで、人前でお話しさせていただきます。

それぞれ、告知ページが公開されたので、こちらでもご案内しておきます。


第1弾 3/2(土)
サン・フレア オープンスクール 2013春
「今、あえて、IT翻訳に挑戦してみる」


第2弾 3/3(日)
フェロー・アカデミー オープンセサミ
「ITニュース翻訳 最前線」


第3弾 3/23(土)
JAT東京ミーティング「IT翻訳のIとT、スタイルガイドのインとアウト」



3/2のサン・フレアでは、事前課題の解説も交えながら、「IT翻訳って最近はどうなっているのか、これから参入できるものなのか、今後はどうなるのか」といったことをお伝えする予定です。どちらかというと、学習中のみなさんや、これから参入を検討中の方に向けた内容になると思います。


3/3のフェローでも事前課題はありますが、こちらはもう少しspecificで、「IT系のニュース翻訳」に焦点を当てます。こちらも、基本的には学習中の方が中心になりそうですが、「IT翻訳者だが、分野を広げたい」という方にもお役に立てるようにしたいと考えています。


3/23のJAT(日本翻訳者協会)東京ミーティングは、どんな方がいらっしゃるのか今のところ想定できないのですが、いちばん切実な切り口になるはずです。現実問題として、「IT翻訳で食えるのか食えないのか、これからはどうなのか」ということを話します。後半は、スタイルガイドとの付き合い方を紹介します。

いろいろな成りゆきで、IT翻訳について3回も話をすることになりました。そのような看板を掲げている以上、別に不思議なことはないのですが、

IT翻訳者

という立場であることに、私自身は最近けっこうアンビバレントな気持ちです。ITから別分野への転向を考えている、あるいは実際に転向した翻訳者もいます。

もしかしたら、同じように気持ちが揺れている同業者も少なくないかもしれません。そもそも、IT翻訳業界じたいが、そういう微妙な時期にさしかかっているわけで、でもそう言われ始めてからずいぶん時間が経つ気もします。


そういう難しい立場、微妙な方向性を同業のみなさんと共有できれば、それぞれのイベントはおおむね成功と言えるんじゃないかと思っています。

02:47 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2013.02.01

# Logophileその後~解決編

先日のエントリ「# 『英和翻訳基本辞典』をJammingに」で、

Logophileでは熟語の検索がしにくい/できない

というコメントをいただき、私もその後いろいろと調べていたのですが、翻訳フォーラムであっさり解決したので、こちらでもご報告しておきます。


やはり、ポイントはLogophileの検索オプションでした。私もぜんぶ試してみたはずなのですが...

複数語を入力したとき、間のスペースや記号に関係なくヒットさせるには:

[検索]→[文字補正]

のオプションをオンにすればいいのでした。


入力フィールドの右にあるボタンでは「字」というやつです。

1302011

「Logophileユーザーガイド」にもちゃんと説明されていました。

カタカナ、欧州諸語の記号付文字、単語内の記号(ハイフン・アポストロフィー)、成句内のスペースなどに対し、辞書によってはこれらをそのまま検索できるインデックスを持つものと変換(ひらがな化や記号・スペース等の削除)したインデックスしか持たないものがあります。前者のインデックスは絞り込みには便利ですが、カタカナの語や記号付きの単語をペーストして検索した場合に後者のインデックスの辞書の項目がヒットしなくなってしまう欠点があります。文字補正は入力された語がカタカナや記号付きであった場合にそれらを自動的に変換し前者と後者の両方のインデックスの辞書の項目を検索するオプションです。
(太字は引用者)

説明書はよく読め、って話ではあるし、Jammingからずっとお世話になっていてこんなことを書くのは何なんですけど、メジャーアップデート --- JammingとLogophileは別製品ですが、事実上は同じアプリケーションのメジャーアップデートでしょう --- したとき、アプリケーションの根幹にかかわる機能にこれほど大きい変化があるのなら、その旨をはっきり書いておいてほしいと思います。


というわけで、日常的な検索では、上の図のように、

「前」と「字」の2つのボタンをオン

にしておくのが、いちばん使いやすいようです。

[成句のオプションは、[複数の後は成句として検索]です。

05:08 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2013.01.24

# 『英和翻訳基本辞典』をJammingに

宮脇孝雄氏の『英和翻訳基本辞典』、私も紙版を買って、たびたびうなずきながら読んでますが、

なんと、越前敏弥さんがその全項目を、Jammingで使えるテキストデータとして公開してくださいました。

リンク: 『英和翻訳基本辞典』インデックス: 翻訳百景

このブログ記事に掲載されているリンクからテキストファイルをダウンロードすれば、ユーザー辞書としてJammingに登録する手順は簡単......なはずでしたが、私はちょっとトラブって、その後解決したので、以下にメモしておきます。

越前先生、そしてデータの公開を快諾くださった宮脇様、研究社様、ありがとうございます。


念のために、テキストファイルをダウンロードするところから書いておきます。


1. ファイルのダウンロード

越前先生のブログの上記エントリで

「EJBTD_jamming.txt」をダウンロード

と書いてあるリンクを右クリックし、EJBTD_jamming.txt というファイルを保存します。
(左クリックするとテキストの内容がブラウザで表示されます。そこから右クリックで保存しても同じです)


2. Jammingユーザー辞書として登録

Jammingのマニュアルページに書いてありますが、以下にまとめます。

2-1. 任意の名前でフォルダを作る。この名前がJammingの表示に使われるので、私は素直に「英和翻訳基本辞典」としました。

2-2. そのフォルダの中に DATA という名前のフォルダを作る(半角で)。

2-3. DATA フォルダの中に EJBTD_jamming.txt を入れる。


3. Jammingに辞書として登録

[オプション]→[辞書の追加と削除]を選択し、[ユーザー辞書]のボタンを押して、上の手順で作った DATA フォルダを指定します。辞書セットを作ってある人は。さらに[辞書ウィザード]などの設定もします。


…… と、ここまでの手順で読み込めるはずなのですが、これは環境によるのかなぁ。私のところでは辞書名は出てくるのに、中身を読み込めませんでした。同じようにトラブった人は、さらに以下の手順をお試しください。


4. ファイルの文字コードを変更

EJBTD_jamming.txt は、文字コードが「UTF-8」になっているので、これを「Shift-JIS」に変換します。

方法はいくつかあります。ファイルの文字コードを変換できるツールもありますし、秀丸エディタなどのエディタなら、別名で保存するときに文字コードを変えることができます。

いかがでしょうか?


10:05 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (10) | トラックバック (0)

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2013.01.23

# 「翻訳事典2014年度版」

アルクさんから毎年刊行されている翻訳ムック、最新版が 1/21 に発売されました。


通翻クラスタではすでにいろいろと話題になっていますが、なんといっても今回は、「翻訳者はひとりじゃない」という表紙のキャッチコピーからも想像できるように、

見たことのある顔がたくさん登場

するというところが、(内輪にとっては)見どころのひとつです。

かく言う私も、テリー齋藤さん、マット松田さんと一緒に誌面を汚しています。


特集では、深井裕美子さんが執筆なさった辞書の特集がおすすめ。学校でもすすめています。ただし、誌面の情報量は限られますから、興味をお持ちになった方は、深井さんのサイトも必見です。

リンク: 翻訳者の薦める辞書・資料

編集長の佐藤直樹さんに別件でメールしていたら、こんな風にお書きでした。

「編集者もひとりじゃない!」

たしかに!

11:54 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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2013.01.16

# 翻訳の背景にある文化、または"I, Borg"

(たまにはマジメに翻訳の話も書くんだよ)

先週、有志の勉強会で、(ふだん私がよくやる)ツールとかマクロとかの話ではなく、もっと翻訳の本筋にかかわるテーマで少し話をしました。ネタにしたのは、こちらのページで私が出題した課題文。

リンク: アルク翻訳コンテスト2012:翻訳・通訳のトビラ

(募集期間が過ぎてしまったので肝心な課題文は載っていませんが、2/12を過ぎたらまた載ると思います)


昨日も、定番IT系ニュースサイトのひとつ TechCrunch で、こんな記事を見かけたのですが、

リンク: iOS版Googleマップ、公開後48時間で1000万ダウンロード突破。Googleが異例の発表

この最後の1文、

どうやら 「ボーグ」 は、デザインの心を見つけたようだ。

かなりの確率で日本の読者には伝わらないんじゃないか、と気になりました。

カギカッコが付いてるので、何か特別な言葉なんだろうとは想像がつきますが、みなさんはご存じですか? ボーグ?


IT系ニュースサイトの多くはそうですが、TechCrunchでも原文へのリンクが貼られています。これはとてもいいことですよね。

その原文はこうでした。

It looks like the “borg” has found its design heart.

もともと引用符が付いていたようで、翻訳のときに気を利かせたわけではないようです。

でも、おそらくアメリカでは、この the “borg” が読者に通じる確率は、日本でよりはるかに高いはずです。なぜなら、これは「スタートレック」ネタだからです。正確には、

Star Trek: The Next Generation
(邦題、「新スタートレック)

と言い(略称、TNG)、カーク船長とかミスター・スポックが登場するいちばん有名なシリーズに続く第2作。かつ、シリーズでいちばん長く続いた(7シーズン)有名なTVドラマです。


TechCrunchの記事に使われた the “borg” というのは、このTNGで初登場し、続く Voyager や映画版にも出てきた異色なエイリアンのことです。

リンク: ボーグ - Wikipedia

英語 Wikipedia の説明のほうが端的だな。

The Borg are a collection of species that have been turned into cybernetic organisms functioning as drones of the collective or the hive

ということは、TechCrunchの原文ではGoogleをこの「ボーグ」にたとえた、つまり

「心を持たず、趣味とかデザインといった要素にも関心をもたない無味乾燥な集団だったGoogleが、"design heart"をもつようになった」

と言いたかったのでしょう。


巨大な企業の比喩としては、IBM = Big Brother が有名ですが、Borgについては、こんな記事もあります。

リンク: Google Borg or Google Brain?

少し前まで、Borgと揶揄されるのはMicrosoftだったようで、そういえば一時はこんな画像もよく見かけましたね。

1301161


というような背景を知らずに翻訳記事でカギカッコ付きの「ボーグ」を見ても、何のことかわかりません。かといって訳注では野暮ですし。こーゆーのは難しいですね。私だったら、訳注にせず文に少し説明を足したかなぁ......

つい先日も、翻訳学校で背景文化の重要性を説明したばかり。

聖書
シェイクスピア

あたりは定番として、そのほかは人によっていろいろと意見がわかれるでしょうが、現代英語を扱うのであれば、

Star Wars
Star Trek

は必要。と、そのまんま板書したところでした。


1301162

先日も、知人の結婚式でこんな余興があったくらい、日本でも Star Wars シリーズはだいぶ定着してきましたが、それに比べると、Star Trekの知名度はいまひとつのようです。

今回のTechCrunch記事も、それだけによけい難しいところでしょう。


12:25 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (7) | トラックバック (0)

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2013.01.11

# 「日本翻訳ジャーナル」1/2月号

「日本翻訳ジャーナル」の1/2月号が発行されました。


リンク: JTF 日本翻訳ジャーナル 1/2月号

Ph_journal_new_12

今号は、昨年11月に開催された「第22回JTF翻訳祭」特集。全セッションのレポートが載っています。翻訳祭に参加できなかった方、参加したけど聴けなかったセッションの内容を知りたい方、必見です。

私のコーナー「フリースタイル、翻訳ライフ」には、マーナー摩美子さんをお呼びしました。翻訳分野は一般ビジネスと心理学ですが、私も知らなかった経歴が明らかになっています。読んでいて楽しくなります。


ジャーナルは、いつもどおり

全編無料でダウンロード

できますので、ぜひお読みください。


【付記】
翻訳業界のトップUstreamer(今年はYouTuberをめざすらしい)、テリー齊藤さんが、ジャーナルを携帯端末などで手軽に見る方法を紹介なさっています。

リンク: 翻訳ジャーナルを便利に読もう | 翻訳横丁の裏路地

12:48 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.12.02

# 第22回JTF翻訳祭、無事終了

かねてからの告知どおり、11/28(水)、第22回JTF翻訳祭が開催されました。

事前登録と当日申込みを含めて参加者は800人を超えたということで、過去最大の規模になりました。交流パーティーも、名簿上で300人を超えており、昨年までと同じ会場だったので、たしかに「密度高くなった~」という印象でした。


個人的には、昨年一昨年と違って講演する側ではなく、ボランティアとして2つのセッションで司会を務めただけなので、参加した気分がずいぶん違いました。

司会を務めたのは、トラック5(初級レベルの翻訳者向け)の

セッション1
「フリーランス翻訳者のための営業戦略と節税・資産管理術」

セッション2
「映像翻訳ライブレッスン~吹替・字幕のセリフ作り、すべて観せます~」

でした。

セッション1前半の中村泰洋さんは、昨年の同じ翻訳祭でほんやく検定の合格者として代表のスピーチをなさったとき、ずいぶん人前でしゃべり慣れてるなぁという印象がありました。今回ご挨拶して、長いこと講師もなさっていると聞いて納得しました。

そうそう、人に教えるというスキルは、いろんなところで役に立つんですよね。

セッション2後半の井口富美子さん。こちらは通訳翻訳クラスタの勉強会仲間なのですが、まさか話が節税にとどまらず投資にまで及ぶとは思いませんでした。私の知らない世界。頭が下がります。

このセッションのとき、最前列の司会席で、iPadにNHK時計を表示して講演者に向けておきました。これが案外好評でした。

セッション2は映像翻訳入門。こちらも、講演者のチオキ真理さんとは面識がありましたので、大過なく終わりました。「知ってる方が司会で助かった」とおっしゃっていただけたので、事務局による配置の成功例でもあったようです。


午後は、ほとんど展示ブースで過ごした感じです。なぜかというと、

121202

前日に刷り上がったばかりのこれを配置したり、展示している企業に配ったりしていたからです。

B6サイズ(Kindle PWとほぼ同じ)という"かわいらしい"作りで、パラパラっとめくれば大きめの活字がすぐ目に飛び込んできます。

配布したその場でも、「これはいいですね」という声をあちこちからいただきました。

「参加した気分が違った」と最初に書きましたが、一言で言うと、今年は特に「つなぐ側」の役目を果たせたかな、というところでしょうか。

翻訳祭の開催告知と同時にボランティア(司会、書記、会場アシスタント)の募集が始まりましたが、FacebookやTwitterで声をかけたら、あまり苦労せずに通翻クラスタのみなさんが次々と名乗りをあげてくれました。

最近の通翻クラスタの雰囲気であれば、特に私が声をかけなくても集まっていただけた気もしますが、気心の知れたみなさんがこぞってボランティア参加してくださったのが、今年は特に嬉しかった気がします。

交流パーティーでも、自分が初めてお会いする人にご挨拶するかたわら、はるばる参加者どうしを引き合わせたりする場面が増えていることに気づきました。

10:21 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.11.21

# 『翻訳で失敗しないために』、公開されました

翻訳をめぐる数々の不幸は、そのほとんどが

発注クライアントの認識不足

に端を発しているといっても過言ではありません。そのことが最も分かりやすい形で現れたのが、先日の機械翻訳騒動でした。

# 機械翻訳のせいじゃない
# 今度はテレビ東京のサイト - 機械翻訳システムの害はかなり広いのかも

そんなクライアントに対する啓蒙のために、ITI(英国翻訳通訳協会)とATA(全米翻訳者協会)は、だいぶ前から

Translation: Getting It Right – A guide to buying translations

という冊子を公開しています。

その日本語版が完成し、JAT、JTF両団体の協賛を経て、正式に公開の運びとなりました。現在、JTFのトップページからダウンロードできるようになっています。

リンク: 「翻訳で失敗しないために」翻訳発注の手引き

※直接PDFが開きます。


翻訳を担当し、日本語版作成のプロジェクトを進めてきたのは、オランダ在住の杉本優さんです。「翻訳で失敗しないために」についても、彼女のブログに詳しいエントリがあがっています。ぜひ、併せてご覧ください。

リンク: 「翻訳で失敗しないために〜翻訳発注の手引き」完成! | ハーグ通信

自分で印刷する場合には、PDF版をダウンロードしたら、

・用紙の向き = 「横」(Landscape)

・用紙1枚あたりに2ページを印刷

という設定にすると、A5サイズの手頃な冊子ができあがります。


11/28(もう来週じゃん...)の翻訳祭には、きれいな印刷版を配布する予定です。

121121_2

発注の段階がもう少し合理的になれば、翻訳会社も、そして翻訳者も、今よりもう少しハッピーになれると思います。

クライアント企業の方はもちろん、翻訳会社の方、直取引のある翻訳者さんは、これを持って帰って、ぜひ「お客様の教育」に役立ててください。


08:26 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2012.11.18

# ラウンチ、ローンチ...ロンチ?

定訳がない外国語をカタカナ表記するとき、その原語の発音が日本人にとってなじみのないものだと、カタカナ表記にある程度の揺れが生じるのはしかたがありません。

スタイルガイドについて話し合うときに必ず話題になる interface はその最たるもの。最初の in に第1アクセントがありますが、face にも第2アクセントがあるので曖昧にはならず、

発音のサンプル: Interface | Define Interface at Dictionary.com

という発音になります。ところが、これをカタカナで表記すると、

インタフェース、インターフェース、インタフェイス、インターフェイス

の4通りが出てきて(さすがに、終わりが「フェス」というのはほとんど見かけません)、IT系翻訳者を悩ませるわけです。

それでも、

launch、launcher

のカタカナ表記に比べればだいぶマシという気がします。


launchのほうは、製品とかサービス、サイトなどを新しくスタートする意味の動詞として最近よく使われますが、IT系だと、launcherという用語のほうが先に出てきたかもしれません。

システム上のあちこちにあるアプリケーションを1か所から起動できるように、そのショートカットを登録しておくソフトウェアをlauncherと言いますが、これのカタカナ表記は、かなり以前から

ランチャ
ランチャー
ローンチャ
ローンチャー
ロンチャー

などとばらけていました。原語の発音は

発音のサンプル: Launcher | Define Launcher at Dictionary.com

なので、「ローンチャー」がいちばん近そうですが、「ランチャー」でも意味は通じます。これより以前に「ミサイルランチャー」という言葉もありましたから。でも、

ラウンチャー

という表記を初めて見かけたときは、正直、絶句しました。どう考えても、発音をまったく知らずにローマ字読みしたとしか思えない、恥ずかしい表記という気がします。


こうなると、その動詞であるlaunchのほうもいろいろなカタカナ表記が出てくることは想像に難くないわけですが、

ロンチ

というのはずいぶん無理がある気がします。

リンク: Wii U北米ロンチまで18時間!みんなが作った「U」を紹介 | インサイド (任天堂、Wii Uのニュース)


そもそも、なんでこの動詞をカタカナで書かなきゃいけないのか、それが不明です。

10:41 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.11.14

# 辞書検索ツール「かんざし」

先日参加した勉強会で、このツールを紹介してくださった方がいて、もちろん私もこのツールのことは知っているのですが、改めて使い始めました。

リンク: 複数辞書ソフトの一括検索ツール「かんざし」

Jammingなどの辞書ブラウザで複数の辞書を一気にひくことを、俗に「串刺し検索」と言いますが、ひとつの辞書ブラウザだけでなく、いくつもの辞書検索ツール(ときにはブラウザまで含めて)を一気にひくのも、「串刺し検索」と言います。

「かんざし」はそれを簡単に実現できるアプリケーションです。

インストールはダウンロードした knzs012.zip を解凍するだけ。

メインのインターフェースは、こんな入力ウィンドウだけ。見かけは実にシンプルです。

1211141


初めて起動したとき(またはオプションから選択すると)、こういうダイアログが開きます。

1211142

このダイアログの左上にある「★」を、検索したい辞書検索ツール(Jammingなど)の入力ウィンドウにドロップします。すると、その下のフィールドに辞書のウィンドウ名が取得されるので、[送信先に登録]をクリックして、その下にリストに追加します。これで辞書の登録は終わり。

後は、上にあげた本体の小さいインターフェースに検索語を入力すれば、すべての辞書検索ツールが検索されます。

要するに、各辞書検索ツールのウィンドウハンドルを取得して、そこに検索語を渡しているのですが、相手のアプリケーションによってはうまく機能しない場合があります。語句が渡されなかったり、渡されてもEnterキーに当たる操作が実行されなかったりする場合があります。私の手も環境では、

Jamming …… ○
Pasorama …… ○
LogoVista …… ○
Merriam Webster's Collegiate ……△(Search ボタンを押す必要がある)
COD …… ○
SOD …… ×
OED …… ×

でした。

メインのインターフェースがあまりにあっさりしているので、設定機能(たとえば辞書を後から追加する)はどこにあるのかわかりませんが、右クリックすれば出てきます。

さて、このアプリケーション、開発が始まったのは2000年より前のこと。そして2001年には開発が停止しています。

昨夜、翻訳フォーラムのメンバーと「かんざし」の話になって改めて気づいたのですが、このアプリケーションの開発が進んでいた2000年前後というのは、EPWing規格の辞書を何でもかんでもJammingに載せる、ということができなかった時代でした。

つまり、リーダーズでもランダムハウスでも、それぞれ別個のウィンドウがあって、いちいち検索語を入力(またはペースト)する必要があった。そんな不便を解消するために、この一気検索ツールが生まれたわけです。

でも、その後EPWing規格がかなり普及したり、Jammingもランダムハウスのデータを直接読み込めるようになったりしたので、「かんざし」の出番は少なくなりました。

ところが、ここ最近また状況が少し変わってきました。

まず、EPWing規格の旗色がちょっとよくありません。EPWing版が出ない辞書も増えているようです。

次に、LogoVistaデータはJammingで読み込めたのですが、最近のLogoVistaデータは後継のLogophileでないときれいに読み込めないようになっています。

電子辞書のPC用ブラウザ、PANORAMAのような独自規格も出てきました。

Oxford系辞書は、それぞれすべてスタンドアロンです。

こんな風に、どうしてもJammingだけでは済まない状況になりつつあり、そこで私も「かんざし」の素晴らしさを再発見したという次第です。


作者の内山さーん、見てますか~ :)

04:08 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (14) | トラックバック (0)

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2012.11.09

# 「日本翻訳ジャーナル」11/12月号

「日本翻訳ジャーナル」の11/12月号が発行されました。


リンク: JTF 日本翻訳ジャーナル 11/12月号


Ph_journal_new_1112

今号は、TC シンポジウム(8月)、第1回JTF 翻訳支援ツール説明会(9月)、TAUS and Localization World Seattle 2012(10月)など、翻訳業界のイベントレポートがてんこ盛り。

今月下旬に開催される「第22回JTF翻訳祭」の詳しい告知もあります。


私のコーナーには、映像・字幕翻訳者の仙野陽子さんをお呼びしました。元気の出る1本です。


全編無料でダウンロードできますので、ぜひお読みください。


【11/11追記】
翻訳業界のトップUstreamer、テリー齊藤さんが、ジャーナルを携帯端末などで手軽に見る方法を紹介なさっています。

リンク: 翻訳ジャーナルを便利に読もう | 翻訳横丁の裏路地

04:51 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.11.04

# お大事にしてください

撮りためてあったランチを見ながら「孤独のグルメ」を食べていたら、いや、あせるんじゃない。

遅く起きてブランチを食べながら、撮りためてあった「孤独のグルメ」の第2話を見ていたら、ゴローちゃんが水天宮で腹帯を買って、最後に巫女さんが

「お大事になさってください」

と言うシーンがありました。


ああ、さすがに言葉遣いはちゃんとしてるな、と思って(テレビ東京のスタッフがちゃんとしてたんでしょうね。実際の巫女さんならまちがってたかもしれない)、ついでだから前々から気になっていたことを書いておきます。


病院なんかでも、会計済ませると最後にかならず、同じ趣旨のことばが返ってきますが、最近はたぶん8割以上が、

お大事にしてください

じゃありませんか?


あれ、敬語として間違ってます。

Twitterの挨拶でもわりとよく見かけます。ご注意を。

人形町の水天宮は、ウチもお世話になりました。町並みも好きです。

12:57 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2012.10.25

# 【告知】第22回JTF翻訳祭

今月のはじめにもすでにご案内しましたが、JTFの翻訳祭が11月28日(水)に開催されます。

翻訳祭 : 日本翻訳連盟

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プログラムと交流会へのご参加はもちろんですが、当日の運営にご協力いただけるボランティアスタッフも、絶賛募集中です(11/8まで)。

Bnr_volunteer_on


自分が聞けるセッションがやや制限されてしまうのですが、かわりにセッションへの参加費(一般6,500円、会員5,000円)が無料になります(交流会は自腹)。


そのほか、「中の人の気分を味わえる」という無形の特典も用意されています。というのは半ば冗談ですが、お祭りというのは、参加するのも楽しいですが、運営側に足を突っ込むのもまた楽しいものです。


通翻クラスタの何人かのみなさんからも、すでにボランティアとしての参加をご表明いただきました。ありがとうございます。m(__)m

10:29 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.10.23

# 『翻訳語成立事情』より

ちょっと前に、『翻訳語成立事情』(柳父章、岩波新書)を再読しました。

黄色版で初版が1982年だから、大学の頃にまちがいなく読んでいるはずで、たぶん倉庫に眠ってると思うのですが、つい買い直してしまいました。


訳語ごとの考察ももちろん興味深いのですが、かつて読んだときと違って翻訳を職業としている今の自分が読んでみて印象的だった点が多々あります。以下、それを引用してみます。

「社会」という翻訳語がいったん生まれると、society と機械的に置き換えることが可能なことばとして、使用者はその意味について責任免除されて使うことができるようになる。(p.8)

 このころつくられた翻訳語には、こういうおもに漢字二字でできた新造語が多い。(中略)外来の新しい意味のことばに対して、こちらの側の伝来のことばをあてず、意味のずれを避けようとする意識があったのであろう。だが、このことから必然的に、意味の乏しいことばをつくり出してしまったのである。
 そして、ことばは、いったんつくり出されると、意味の乏しいことばとしては扱われない。意味は、当然そこにあるはずであるかのごとく扱われる。使っている当人はよく分らなくても、ことばじたいが深遠な意味を本来持っているかのごとくみなされる。(p.22)

 この思考の行き詰まりのところで、「独一個人」という翻訳語が登場した。それは、あたかも思考の困難を解決するかのごとく現れている。この未知のことばに、それから先は預ける。前述の「カセット効果」に期待するのである。ことばは正しい、誤っているのは現実の方だ、というところで、一見、問題は解決したかのごとき形をとる。それは、以後今日に至るまで、私たちの国の知識人たちの思考方法を支配してきた翻訳的演繹理論の思考であった。(p.40)

 人がことばを、憎んだり、あこがれたりしているとき、人はそのことばを機能として使いこなしてはいない。逆に、そのことばによって、人は支配され、人がことばに使われている。価値づけとして見ている分だけ、人はことばに引きまわされている。(pp.46-47)

つまり、翻訳に適した漢字中心の表現は、他方、学問・思想などの分野で、翻訳に適さないやまとことば伝来の日常語表現を置き去りにし、切り捨ててきた、ということである。そのために、たとえば日本の哲学は、私たちの日常に生きている意味を置き去りにし、切り捨ててきた。日常ふつうに生きている意味から、哲学などの学問を組み立ててこなかった、ということである。(p.124)


 かつて福沢諭吉は、libertyの翻訳語として、「自由」ということばはよくない、と言いながら、結局この訳語を用いた。おそらく「自由」が、民衆の日常語だったからであろう。それで、自分の書いたものを読む人は、この訳語に気をつけてくれ、というのが福沢の願いであった。しかし、ことばというものは、いったん広く人々の間に流通させられると、それ自身の働きや運命を持つようになる。始めの使用者、造語した人の意のままにはならないのである。(p.185)



「社会」、「近代」、「権利」、「自由」……どれも、今の世の中のことをいろいろと考えさせられる話です。

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2012.10.03

# 第22回JTF翻訳祭

今年は、11月28日(水)に開催されます。

翻訳祭 : 日本翻訳連盟

Img_01

- クライアント向け
- 翻訳会社(経営者)向け
- 翻訳会社(実務者)向け
- 日英翻訳者向け
- 初級レベル翻訳者向け
- 中級レベル翻訳者向け

という6トラックで構成されます。

アルカディア市ヶ谷でお会いしましょう!

08:33 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2012.10.01

# さらについでに、元の日本語を推敲

前エントリの最後に、「もっと重要な点に気づいた」と書きました。

それは、かりにもマスコミを名乗る企業のサイトであるにもかかわらず、あらためて見たら、翻訳させようとした

もとの日本語がダメっぽい

ということです。


スケートの話は、「注目選手達」までの修飾句がやたらと長くなっています。料理人のほうは、「治療に専念したい」主語が曖昧なうえ、「所属事務所から~連絡がありました」のあいだが長すぎます。

これでは、機械翻訳にまっとうな出力を期待できるわけがありません。


そこで今度は、元の機械翻訳と、日本語を最小限だけ修正して翻訳させてみた結果を並べてみました。

【原文・元】
[1-元]フィギュアスケートの人気・実力が高い日本、欧州、北米の注目選手達がさいたまに集結!
[2-元]所属事務所から療養が長期に渡り治療に専念したいことから、番組を降板したいとの連絡がありました。


【原文・改】
[1-改]フィギュアスケートの人気・実力が高い日本、欧州、北米から、注目選手達がさいたまに集結!
[2-改]療養が長期に渡り、治療に専念したいことから、番組を降板したいとの連絡が所属事務所からありました。


【原文・元】
[1-元]フィギュアスケートの人気・実力が高い日本、欧州、北米の注目選手達がさいたまに集結!
[2-元]所属事務所から療養が長期に渡り治療に専念したいことから、番組を降板したいとの連絡がありました。


【原文・改】
[1-改]フィギュアスケートの人気・実力が高い日本、欧州、北米から、注目選手達がさいたまに集結!
[2-改]療養が長期に渡り、治療に専念したいことから、番組を降板したいとの連絡が所属事務所からありました。


1つ目は、「注目選手達」にかかる修飾句が長くならないように、「~日本、欧州、北米から、」としただけです。

2つ目は、「所属事務所から」の位置を変え、「渡り」の後に読点を入れました。さらに、「専念したい」の主語はあえて補足しませんでした。


結果は以下のとおりです。番号と、「元」、「改」の組み合わせが、上の原文に対応しています。青字の文が、推敲した日本語に対する翻訳です。


【Google翻訳】
[1-元]Featured athletes in Japan, Europe, the high popularity of figure skating skills, and North America gather in Saitama!
[1-改]Japan, Europe, the high popularity of figure skating skills, from North America, we gather in Saitama Players to Watch!

[2-元]Since you want to focus on long-term treatment is medical treatment from the agency, there was contact with the program you want to step down.
[2-改]From the fact that medical treatment is long-term, I want to focus on treatment, there is a report from the agency would like to step down program.


【OCN翻訳(KODENSHA)】
[1-元]Attention players in Japan where popularity of figure skating and a force are high, Europe and North America gather at Saitama!
[1-改]Attention players gather at Saitama from Japan where popularity of figure skating and a force are high, Europe and North America!

[2-元]Because recuperation would like to concentrate on passage treatment long from a belonging office, a program, it was in the touch that I'd like to be replaced.
[2-改]Because recuperation would like to cross and concentrate on treatment long, a program, it was in the touch that I'd like to be replaced with a belonging office.


【Excite翻訳(BizLingo)】
[1-元]The attention players of Japan where the popularity and ability of figure skating are high, Europe, and North America concentrate to Saitama!
[1-改]Attention players concentrate to Saitama from Japan where the popularity and ability of figure skating are high, Europe, and North America!

[2-元]Since medical treatment wanted to concentrate on medical treatment over a long period of time from an affiliation office, there was connection that he would like to leave the post of a program.
[2-改]Since medical treatment wanted to concentrate on medical treatment over a long period of time, there was connection that he would like to leave the post of a program from an affiliation office.


【bing翻訳(Microsoft Translator)】
[1-元]Featured players skill, figure skating's popularity is high Japan, Europe and North America to gather once in a while!
[1-改]From the high skill and popularity of figure skating Japan, Europe and North America, featured athletes consider together once in a while!

[2-元]Dropping and you want to and out shows from recuperation to and concentrate extending treatment to long-term from Office, of there.
[2-改]Dropping and you want to and out shows care over the long term, I want to concentrate on treatment of there from the Department Office.


【Infoseek(クロスランゲージ)】
[1-元]Japan which is high in popularity, ability of the figure skating, Europe, North American attention players are the concentration in Saitama!
[1-改]From Japan which is high in popularity, ability of the figure skating, Europe, the North America, attention players gather it in Saitama!

[2-元]Because medical treatment wanted to devote itself to treatment from the position office for a long term, there was communication that I wanted to leave a program.
[2-改]Because medical treatment wanted to devote itself to treatment for a long term, there was communication that I wanted to leave a program from the position office.

どうでしょう。

もちろん「改」のほうも、完全にはほど遠い結果です。でも、少なくとも文法的にはだいぶマシになっている気がしますし、並び方が変だとしても、その理由がわかりやすくなっているはずです。


実は、今回の問題について、Facebookでこんなコメントをいただきました。

中央のマスメディア(これにはTV局や大手新聞社などを含みます)の凋落の一端にすぎない

はからずも、このコメントが裏づけられたようです。

ちなみに、わが家は(1年前にうっかり契約してしまったせいもあって)今までずっと紙の新聞を購読していたのですが、9/30をもって、長年のその習慣を終わらせました。

04:16 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (10) | トラックバック (0)

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# ついでなので、機械翻訳の現状を比較

前エントリで私は、「ほら見ろ、機械翻訳なんてダメじゃん。人間にやらせなさい」と言ったのではありません。機械翻訳はこれからもっと発展するでしょうし、それが有用な場面も増えてくるはずです。

また、テレビ東京さんが使ったシステム自体をけなしているわけでもありません。

問題はシステムの使い方であり、このような不確実な情報を掲載している、その姿勢です。


そこで、参考までに、はたして現状の機械翻訳の実力はどうなっているのか、代表的な翻訳エンジン(オンラインで使えるもの)を試してみることにしました。

比較に使う原文は、今回の2つのサイトで使われていた元の日本語です。

【原文】
[1]フィギュアスケートの人気・実力が高い日本、欧州、北米の注目選手達がさいたまに集結!
[2]所属事務所から療養が長期に渡り治療に専念したいことから、番組を降板したいとの連絡がありました。


これをオンラインの翻訳エンジンにかけてみた出力は、以下のようになりました。【 】内が出典サイトで、そのなかの( )はエンジン名です。


【Google翻訳】
[1]Featured athletes in Japan, Europe, the high popularity of figure skating skills, and North America gather in Saitama!
[2]Since you want to focus on long-term treatment is medical treatment from the agency, there was contact with the program you want to step down.


【OCN翻訳(KODENSHA)】
[1]Attention players in Japan where popularity of figure skating and a force are high, Europe and North America gather at Saitama!
[2]Because recuperation would like to concentrate on passage treatment long from a belonging office, a program, it was in the touch that I'd like to be replaced.


【Excite翻訳(BizLingo)】
[1]The attention players of Japan where the popularity and ability of figure skating are high, Europe, and North America concentrate to Saitama!
[2]Since medical treatment wanted to concentrate on medical treatment over a long period of time from an affiliation office, there was connection that he would like to leave the post of a program.


【bing翻訳(Microsoft Translator)】
[1]Featured players skill, figure skating's popularity is high Japan, Europe and North America to gather once in a while!
[2]Dropping and you want to and out shows from recuperation to and concentrate extending treatment to long-term from Office, of there.


【Infoseek(クロスランゲージ)】
[1]Japan which is high in popularity, ability of the figure skating, Europe, North American attention players are the concentration in Saitama!
[2]Because medical treatment wanted to devote itself to treatment from the position office for a long term, there was communication that I wanted to leave a program.


それぞれの精度がどうか、という検討と論評は、ここではしません。

実は、翻訳エンジンの精度を問うより、もっと重要な点に気づいたからです。長くなったので、次エントリに続きます。

03:48 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.09.30

# 今度はテレビ東京のサイト - 機械翻訳システムの害はかなり広いのかも

この春、東北観光博の公式サイトや奈良県のホームページで、機械翻訳の出力がそのまま公開されていてトンデモないことになったことは、すでにみなさんもご存じのことと思います。

関連リンク: 東北観光博機械翻訳騒動~翻訳者の視点 - Togetter

拙ブログの過去記事: # またも機械翻訳騒動。だけどそれだけのことではないかもしれず

そして今日また、テレビ東京の外国語サイトがトンデモないことになっていることがわかりました。
リンク: テレビ東京HPが自動機械翻訳でめちゃくちゃな英語になっている。 - Togetter


しかも、今日9/30は International Translation Day じゃないですか。そんな日に、こんな情けない事態を目にしなきゃいけないとは……

たとえば、こちらをご覧ください(削除されてしまったら、魚拓リンクに切り替えます)。

リンク: Kioroshi group cup figure skating Japan opening 2012 (Japan Open 2012): TV TOKYO

リンク: KITCHEN TALK: TV TOKYO

前者はフィギュアスケートの大会、後者はテレ東の料理番組のページです。

前者は協賛者である「木下グループ」の表記が「Kioroshi group」になっているなど、そもそも失礼極まりない内容です。英語の本文も、たとえば、

【元の日本語】
フィギュアスケートの人気・実力が高い日本、欧州、北米の注目選手達がさいたまに集結!
(引用元: http://www.tv-tokyo.co.jp/japanopen2012/info.html#outline

【機械翻訳】
Japan which is high in popularity, ability of figure skating, Europe, North American attention players are the concentration in Saitama!

と、まったく意味不明な語の並びだらけです。


2つ目は「ケンタロウさんの降板に関しまして」と題する内容の翻訳ですが、

【元の日本語】
所属事務所から療養が長期に渡り治療に専念したいことから、番組を降板したいとの連絡がありました。
(引用元: http://www.tv-tokyo.co.jp/danshigohan/

【機械翻訳】
Because medical treatment wants to devote itself to treatment from position office for long term,
There was communication that we wanted to leave program.

私の英語力では、どうやっても解釈できませんw

実は、東北観光博もテレビ東京も、機械翻訳には同じシステムが使われています。そのシステム導入に関するニュースリリースがこちらのようです(ただしサードパーティの引用)。

リンク: テレビ東京公式ホームページ 英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語に自動翻訳 4月2日から本格導入|株式会社テレビ東京ホールディングスのプレスリリース

この中に、システムの提供元がはっきり書いてあります。

東北観光博のとき、この提供元は「システムとして提供しているだけ」と言っていたようです。また、東北観光博については「用語集の提供がなかった」という弁明もありました。

が、上に書いたような英語の出力を見れば、出力の精度は単に用語集があるかどうかという問題でもないと言えるでしょう。


「機械翻訳だからしかたないでしょう」


世の中的には、おおむねこれで済んでしまう話なのでしょうか。

実際、機械翻訳を表示するサイトにはたいてい免責条項が書いてありますよね。テレビ東京にも、こんなページがありました。

リンク: 翻訳 (英語 English・中国語 Chinese・韓国語 Korean):テレビ東京

民間の自動翻訳サービスによって、テレビ東京ホームページを英語・中国語・韓国語に翻訳します。 これは、自動翻訳システムによる機械的な翻訳なので、必ずしも正確な翻訳であるとは限りません。 翻訳後、日本語ページの本来の意味から外れたものになってしまうことがありますのでご注意ください。

尚、テレビ東京は翻訳された内容にいかなる責任も負いません。


提供元は「システムを提供しているだけ」と言い、そのシステムを使うほうも「責任を負いません」と言い逃れている。


そんな情報、発信する意味があるのですか?


これでは、匿名で言いたいことを言い放つ巨大掲示板や、何の裏取りもせずRTされるツイートと一緒じゃありませんか。

しかも、いやしくもマスコミの一角を担っているテレビ局が、情報発信のためのサイトで、やっていいこととは思えないのですが。

すでにTwitterでは、翻訳クラスタを中心としていろいろと「何とかならないか?」という話が出ています。

とりあえず私は、実名で、テレビ東京さんの問い合わせフォームに書き込みしてみました。ただし400字という制限があったのでぎりぎりの内容です。以下、その全文を引用します。

----------------------------------------
御社サイトにて、以下のようなページを拝見しました。

http://www.tv-tokyo.co.jp.e.ck.hp.transer.com/japanopen2012/info.html#outline

機械翻訳の出力であることは明らかですが、発信すべき情報としてあまりにひどくはありませんでしょうか。「木下グループ」すら不正確にKioroshi groupと書かれています。

御社の外国語サイト生成については、
http://www.tv-tokyo.co.jp/translate/
ここに書かれている内容が前提になっていると拝察しますが、

「尚、テレビ東京は翻訳された内容にいかなる責任も負いません」

というのは、正確な情報発信を責務とするはずのマスコミ企業としては、その責任を放棄するものと言えませんでしょうか。

「外国語サイトがないよりマシ」という発想でこのような外国語翻訳サイトを運用しているのかもしれませんが、これでは「ないほうがマシ」でしょう。

当該のサイトならびにシステムにつき、ご再考をいただくよう切望いたします。
----------------------------------------

本当はこの2倍くらいの長さでした。書こうとした内容は、今ここで書いているようなことです。

06:19 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (1)

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2012.09.26

# SimplyTermsとTrados

side Tradosに、BuckeyeさんのSimplyTermsを使ったPowerPointファイル翻訳のフローのことを書きました。

私が取り上げている以上、ここではTrados作業もからんでいるのですが、もちろんSimplyTerms自体とTradosが直接関係するわけではありません。Tradosの部分を除いて読んでいただくこともできます。

04:58 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.09.20

# 翻訳単価データについて

前エントリに書いたように、翻訳単価の推移について、私の手元にあるデータを紹介してみます。

まずお断りしておかなければなりませんが、私自身が慣れていて感覚的にわかりやすいという理由で、データは

・英日翻訳
・原文ワード単価

のみを扱っています。あしからずご了承ください。


次に、各種の雑誌やムックを手元にすべて揃えてあるわけではないので、あくまでも私のわかっている範囲の話だという点もご承知おきください。

そしてもうひとつ。データは産業翻訳全体のものと、IT・ローカライズ業界のものが混在しています。データごとに明記しました。

【あきーらさんに指摘されて追記】
データは、各誌が「翻訳会社へのアンケート」結果として掲載していたものなので、直接取引の分は含まれていません。そちらはそちらで、またいろいろと違ったデータが出そうです。

1999年頃のデータ
(IT・ローカライズのみ)

私のわかるいちばん古いデータとして、かつて河野弘毅さんがブログに書いていた内容を、すいません、無断引用します(これ以前についてもいろいろとデータをお持ちの方はいらっしゃることと思います)。

私の見聞した範囲では英文原稿 1 ワードあたり最低で 5 円、最高で 35 円という仕事を聞いたことがあり、一般的には 7~25 円の範囲内かと思います。(中略)平均的なワード単価がどのくらいになるのか私には分かりませんが、私の印象ではワード 15 円の仕事を請ける翻訳者はかなりいるように思います。

あくまでもざっくりですが、平均で15円/ワード、ということのようです。


2004年頃のデータ
(IT・ローカライズのみ)

「コンピュータ翻訳&ローカライズ 完全ガイド」というムック(イカロス出版)より。ITバブルはもうとっくにはじけています。

200406_lcalize

最多が10円。並び方が他のグラフとは違いますが、最安~最高のレンジは8~25円

単純平均を計算すると、11.7円/ワード、になります。


2007年頃のデータ
(産業翻訳全般)

「通訳翻訳ジャーナル」2007年10月号のデータです。

200710_tsuhon

最多はやはり10円。最安~最高のレンジは5円~24円

単純平均は、14.6円/ワード
やはりIT系はかなり低めということでしょう。


2010年5月頃のデータ
(産業翻訳全般)

『産業翻訳パーフェクトガイド』(2010年版)のデータです。


201005_perfect

最多は9、10円。最安~最高のレンジは5円未満~21円以上

単純平均は、9.9円/ワード
前項と比べても、極端に下がっているように見えます。前項からここまでの間にリーマンショックが入っています。


2012年9月頃のデータ
(産業翻訳全般)

『新版 産業翻訳パーフェクトガイド』、最新のデータです。

最多は9、10円、最安~最高のレンジは5円未満~15、16円

単純平均は、9.0円/ワードになりました。

産業翻訳全般としても、2007年~2010年~2012年の3回のデータで、平均が

14.6円 → 9.9円 → 9.0円

と下がっています。この傾向を実感できるかどうかは、各自が置かれている状況によって、おそらく翻訳者さんごとに違うでしょうね。

私としては(自分の単価ということではなく、見聞きする範囲を総合して)、おおよそこんなものなのかな、という気がするのですが、みなさんどうでしょうか。

最新のデータで気になるのは、上限がいきなり15、16円で止っちゃっているところです。20日朝のTwitterで疑問が投げかけられたのも、おそらくこの点でしょう。

イカロスさんの編集部が、これより上にあったデータを特異値として意図的にカットしたということはないでしょうから、たまたま集まったデータの中にこれより上がなかったのかもしれません。

でも、これより上の単価というのは間違いなく存在してますし、二極化している上のほうが今回のデータには表れてきていないんですね。

04:58 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# 産業翻訳パーフェクトガイド

「通訳翻訳ジャーナル」と同じイカロス出版から、翻訳関連のムックが出ました。

『新版 産業翻訳パーフェクトガイド』

同じイカロスさんから出ている「通訳者・翻訳者になる本」や、アルクさんの「翻訳事典」のように毎年定期的に出るものではなく、たぶん2010年に出たのが最初で、今回はその「新版」という位置付けのようです。

2年前のパーフェクトガイドは2010年の5月に出ていて、私が同年のJTFセミナーで話をするとき、翻訳単価の推移についてのネタとして使いました。


さて、今回のパーフェクトガイドにも翻訳単価のデータが出ているわけですが、今朝(9/20)のTwitterでさっそく、「単価データが少し低すぎないか?」という疑問の声を見かけました。

そこで、翻訳単価の推移を、次のエントリでまとめてみることにします。ネタの大半は、前述したJTFセミナーで使った資料です。

03:18 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.09.07

# 「日本翻訳ジャーナル」9/10月号

「日本翻訳ジャーナル」の9/10月号が発行されました。


リンク: JTF 日本翻訳連盟│日本翻訳ジャーナル

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先日(6/15)の翻訳フォーラムシンポジウムについてのレポートが載っているほか、どのコーナーも売れっ子通訳、名物翻訳者などが勢揃いしています。


松田委員のコーナー「匠の世界」には、通訳の小熊弥生さんが登場。

私のコーナー「フリースタイル、翻訳ライフ」は、翻訳フォーラムでおなじみのあきーらさんに執筆をお願いしました。

そして、遠田委員のコーナー「Word Smyth Café」には、翻訳クラスタのフィクサーとも言うべき、あの大物がつに降臨www


いつものとおり、無料でダウンロードできますので、ぜひお読みください。

07:51 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.09.04

# 「通訳翻訳ジャーナル」秋号

発売からちょっと日が経ってしまいましたが(8/21発行)、拙文の掲載されている秋号が出ています。

リンク: 通訳・翻訳のことなら通訳翻訳WEB


イカロスさんのページの案内では、まず小熊弥生さんがドーンという感じで登場していて、拙文の案内はずーーっと下のほうですが......


この春から始まった翻訳フォーラムの連載「翻訳者のための作戦会議室」の第3弾です。

11:23 午前 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2012.09.03

# 「無生物主語」をめぐる珍訳、その2

前項からの続きです。


前回見たように、「無生物主語」の構文には一定の特徴があります。

・この構文によく用いられる動詞がある。

・いわゆる SVOO や SVOC の形をとることが多い。

・<主語> + <動詞> のセットが目的語(特に「ヒト」)に対して独自のはたらきを持つ。

・訳すときには、能動態/受動態も併せて考慮することが多い。


では、私の手元にある何社かのスタイルガイドで、「無生物主語」構文に関するルールがどう書いてあるのか、みてみましょう(大手のスタイルガイドではこのルールが書かれていることも多いようですが、全体で言うとルールを明記しているほうが少数派です)。



まずA社のスタイルガイド。

Your printer manual indicates what size of paper can be used.

これは、ロイヤル英文法の分類で言うと<F>型です。

次に、B社のスタイルガイド。これは版によって違いがあるのですが、詳しいほうだけ取り上げます。

一般に、製品、プログラム、機器などの無生物を動作の主体として文頭に置くことは避けます。英語の表現にひきずられるような無生物主語の使い方にならないように注意します。無生物主語の原文を訳すときは、通常、主語を省略して受動態にします。

英語の例文はありませんが、

○ ~が表示されます。
× Windows は~を表示します。

と書いてあって、これはロイヤル英文法の<F>型に近いでしょう。面白いのは、以下のような場合が例外として挙げられていることです。

○ ~ 関数は、戻り値 yyy を返します。
   ※「動作を伴わない記述」と説明されています。動詞はreturnでしょう。

○ Excel は表計算アプリケーションの一種です。
   ※「動作を伴わない記述」と説明されています。

○数式は自動的に計算されます。
   ※「受動態を使う場合」と説明されています。

○選択したセルが強調表示になります。
   ※「状態の変化を示す場合」と説明されています。

例外も何も、こういうのはどれも、前エントリで見たような本来の「無生物主語」の構文でも何でもないですよね。親切と言えば親切ですが、もともとの「無生物主語」の説明が十分でない証拠です。

C社のスタイルガイドも似たような内容です。

○ ...が表示されます。
× システムが、...を表示します。

という例文を示したうえで、

動作の主体でないかぎりは、文の主語として使用できます。

その例として、

○情報が検索されます。
○表は、データを格納するオブジェクトです。

が挙げられています。B社とほとんど同じ。

それでは、改めて「無生物主語の構文で変な訳になった例」を見てみましょう。

The client nodes get the data from your data sources and send it to the server.

During every synchronization session, the Sync Server receives client transactions in the Mobile client database and places them in the In-queues.

どちらの文も、使われているのはロイヤル英文法の分類に該当する動詞ではありません。

get……「取得する」、「読み取る」という、この主語本来の動作を表す(<D>型ではない)

receive……「受信する」、「受け取る」という、この主語本来の動作を表す

そして、無生物主語に固有の動詞の作用を受ける目的語、もありません。

ということは、この2つのような文なら、別に「無生物主語を訳文の主語にしない」というルールに無理矢理あてはめる必要はないはずです。

・クライアントノードは~データを取得する

・Sync Serverは~トランザクションを受け取る

と訳して何の不都合もありません。

以下は勝手な推測です。

クライアントノードでは~」みたいな珍訳は、もちろんスタイルガイドを発行したソークラの意図した訳文ではないでしょう。スタイルガイドでの指定が不十分だったという責任はありますが、

スタイルガイドを過剰適用

してしまった翻訳者や翻訳会社の責任も大きいのではないでしょうか。

いや、クライアントレビューのときにそれをOKとしてしまったのは、ソークラの責任か......。

責任の所在はともかく、こういう

変な日本語を変と言える

環境を作っていかないと、「IT翻訳」はこれからも馬鹿にされ続けることになりそうです。

08:11 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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# 「無生物主語」をめぐる珍訳、その1

The client nodes get the data from your data sources and send it to the server.

という何でもない原文が、こんな意味不明な訳文になっていることが、悲しいかなIT翻訳の世界では少なくありません。

クライアントノードでは、データソースからデータを取得して、それをサーバーに送ります。

どうして、ごく素直に「クライアントノードはデータソースからデータを取得し~」としないで、「クライアントノードでは~」などという訳になるのでしょうか。


その原因は、「無生物主語をそのまま主語として訳さない」というルールが、各社のスタイルガイドに中途半端な形で載っているからです。以前からこの話をまとめたいと思っていました。

以下、かなーり長くなります。

まず、ネット上でいくつか情報を拾ってみました。

おなじみのこのサイトがヒットしました。
リンク: 翻訳の泉 - 第2回 受身の話

例文がいくつか挙げられています。英文だけ載せ、使われている動詞に注目してみます。

This procedure enables the values of capacitors 18 and 20 always to be changed in the correct direction in the determination of the trajectory.--[1]

This method of using a non-ITO pixel electrode simplifies the process of fabricating a Si active matrix array.--[2]

If the proposed corporate action creates dissenters' rights,the notice must state that shareholders and beneficial shareholders are entitled to assert dissenters' rights.--[3]

This invention relates to semiconductor processing.--[4]


次に、DHCさんの通信講座ページがヒットしました。例文はこうです。

This method will enable you to access your e-mail from anywhere in the world.--[5]


Smack Translationsのページも見つかりましたw
リンク: 第三回 沖縄翻訳セミナー 【英日】翻訳入門ワークショップ まとめ

A few hours' talk should enable them to reach an agreement.--[6]


そして、JATではなくJTA(=日本翻訳協会)にもこんなページがあり、
リンク: 模擬試験対応  - (社)日本翻訳協会 新・翻訳検定 JTA公認翻訳専門職資格試験

例文が5つ挙げられています。

His father’s death compelled him to give up school.--[7]
A year in America will cost you much money.--[8]
Quick treatment would save his life.--[9]
The noise in the street kept him awake all night.--[10]
A little care would have prevented him from injuring himself.--[11]


さらに、今度はJATの、過去記事アーカイブのようですが、富井篤さんの記事が見つかりました。

そもそも無生物主語構文は、「因果関係」を表す時に使われる構文で、日本語のように、「原因」と「結果」をそれぞれ節や文で書くのではなく、「原因」を主語に、「結果」を述部に据え、一つの文章で「因果関係」を表してしまう構文です。代表的な三つのパターンに入る前に、それぞれのパターンに共通した和訳手法を紹介します。

Higher operating temperatures shorten the lubricant life.--[12]
The rotation of the drum causes the water to flow out of the outlet opening.--[13]
The use of pressure-tight solenoids allows a low-cost valve design.--[14]


どうでしょうか。

こうやって例文を並べてくると、いわゆる「無生物主語の構文」に使われる動詞には一定の傾向があることがわかります。

そこで、『ロイヤル英文法』の登場です。

例文は省きますが、

原因や理由,方法や手段,条件となるものなど(無生物)を主語にして,それが人間を「~させる,する」という形で表すものが無生物主語の構文である。無生物が主語になる場合と,疑問詞が主語になる場合とにわける。

と説明したうえで、この構文に使う動詞が、次のように分類されています。

<A>「~させる」型-cause,make; compel,force,oblige; allow permit,enable,その他使役の意味の動詞
<B>「~するのを妨げる」型-keep,prevent,stop
<C>「~を連れていく/くる」型-bring,carry,take,lead
<D>「~(の状態に)する」型-get,put,set; drive
<E>「~(の状態に)しておく」型-keep,leave
<F>「~を示す」型-prove,reveal,show,suggest,teach,tell
<G>「~(の犠牲を)払わせる」型-cost,deprive,require
<H>「~(の手間)を省かせる」型-save,spare
<I>「~を思い出させる」型-remind
<J>その他-give,obtain,findなど

さすがです。これでだいぶこの構文の動詞群を整理できた気がします。

翻訳の泉の例文[1]は<A>型、例文[2]は敢えて言うと<D>型でしょうか。例文[3]と[4]は、どちらも<F>型です。

DHCとスマックの例文は、ともに<A>型。

JTAの例文は、[7]が<A>型、[8]が<G>型、[9]が<H>型、[10]が<E>型、[11]が<B>型ということになります。


富井篤さんの例文は、[12]が<D>型、[13]が<A>型、[14]も<A>型です。


こういう文型のとき、英文の主語をそのまま訳文の主語にはせず、それぞれ訳し方を考えてね、という話なら問題ありません。


では、特にIT系に多いと思われるスタイルガイドの指定には、どんな問題があるのでしょうか。項を改めます。

07:29 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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2012.08.02

# アルク、「翻訳・通訳のトビラ」

SPACE ALCの一角にある「翻訳・通訳のトビラ」の最新コンテンツが公開されました。

リンク: 翻訳・通訳のトビラ:スペースアルク


いろいろな経緯で、今回のコンテンツは私に関わりの深いものが盛りだくさんになっています。

まず、巻頭インタビューに登場する東尚子さんは、私と同じくJTFの標準スタイルガイド検討委員です。

昨年の秋以来お会いすることが多いWordマクロの新田順也さんのマクロ講座も連載が始まっています。

去る6月に私も参加したIJET-23については、2つのセッションをメインに詳しいレポートが載っています(「その他のセッション」のトップに私も出てきます)。

右カラムのスクール紹介、フェロー・アカデミーのページには豊田憲子先生のお姿。


そして実は、今年度の「アルク翻訳コンテスト」実務翻訳部門では、私が出題(今後の審査も)を担当しました。


厳選された情報量を考えれば、有料の雑誌誌面にも劣らない充実したオンラインコンテンツだと思います。ぜひご覧ください。

04:12 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.07.10

# 「日本翻訳ジャーナル」7/8月号

「日本翻訳ジャーナル」は、日本翻訳連盟(JTF)が隔月で発行している雑誌で、今年度から私もその編集委員を務めています。

※イカロス出版さんの「通訳翻訳ジャーナル」と似てますが別物です。


その7/8月号が公開されました。

リンク: JTF 日本翻訳連盟│日本翻訳ジャーナル

Ph_journal_new_2

6月7日に開かれた総会の基調講演にご登壇なさった鳥飼玖美子さんが表紙です。同じ表紙に、見覚えのあるアイコンもたくさん並んでいますw

帽子屋が担当するコラムコーナーには、Yoshi さんが登場。

先日のIJET-23のレポートもありますし、そのほか、かなり充実した内容になっていると思います。


会員でなくとも、全編をダウンロードできます。ぜひご覧ください。

10:44 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.06.17

# 翻訳フォーラム大オフとシンポジウムのお礼

先日来予告していた、翻訳フォーラムのシンポジウムと大オフが、おかげさまで大盛況のうちに終了しました。

私の担当セッションについてはともかく、全体としてはほとんどの方にご満足いただけたようで、ホッとしています。たくさんの方にご協力いただき、実況ツイートとUSTREAM中継も、一部に不備はありながら実現できました。


当日の実況ツイートについては、テリー齋藤さんがさっそくTogetterしてくださっています。

リンク:翻訳フォーラムシンポジウム 実況ツイート集 - Togetter

USTREAM中継、録画はしてあります。公開するかどうかは検討中です。今しばらくお待ちください。


フォーラム関係者の皆さま、ご参加の皆さま、そして素晴らしい会場をご提供くださったGMO様、心よりお礼を申し上げます。

以下、反省点:

私を筆頭に、当日使う資料の準備が遅くなり、幹事のみなさん、特にバックステージさんにはご迷惑をおかけしました。何よりその点をお詫びいたします。


諸事をこなすスタッフをもう少し多くしておいたほうがよかったかもしれません。シンポジウム終了後、参加者の皆さまに会場撤収のお手伝いをさせることになりました。


GMO様のおかげで素晴らしい会場を使わせていただきました。2面のディスプレイも、ふつうのプロジェクター + スクリーンより見やすかったようです。ただし、会場のいちぱん後ろの人まで見えるようにするには、画面に映すスライドの作りを考える必要があります。


今回は70名もの方にお越しいただいたので、机まで用意できませんでした。PC持参の方も多かったですし、やはり机はあったほうがいいですよね。


会場で最大のネックは通信回線です。USTREAM用として、私がLTE版のWi-Fi端末を用意してあり、事前の下見でもそこそこの速度は出ていたのですが、当日はいきなり使い物にならなくなりました。別の関係者がWiMax端末を持っていたので中継できましたが、今後もあの会場を使う場合には、もう少し確実で安定した回線を確保できないか、検討課題です。

12:26 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2012.06.15

# 本日6/15、午後1時より「翻訳フォーラム シンポジウム」を中継

先日来あちこちで告知されているとおり、本日6/15、翻訳フォーラム(FHONYAKU)の大オフに合わせて、午後1時からシンポジウムが開催されます。


リンク: 翻訳フォーラム大オフ2012に関するお知らせ

いつになく大勢の参加が予定されていますが、そのほか、USTREAM中継とTwitter実況も実施します。


翻訳フォーラム シンポジウム
「翻訳者の頭ん中 翻訳中の思考プロセス」

日時:6/15 13:00-18:00(JST)

Twitterアカウント:@FHONYAKU
実況ハッシュタグ:#FHON2012

USTREAMライブ: http://www.ustream.tv/channel/honyakuforum


翻訳フォーラム初の試みとなるUSTREAM中継には、今や通訳翻訳クラスタ随一のUSTREAMerである@terrysaitoさんの全面協力をお願いしています。

また実況中継は、私が担当するほか、フォーラムのベテランmikoさんと@hinischaniさんにもご協力いただきます。


技術的なトラブルがないことを祈りつつ、みなさんのご視聴とツイートをお待ちしております。

m(__)m

04:39 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.06.09

# 翻訳業界というところ

片足で10年以上、両足で15年近く翻訳業界に身を置いている。

この業界が、私はとても好きだ。

でも、当たり前だけど同じ業界にはいろんな人がいるし、いろんな"会社"があったりもするんだよね。


昨日目撃した、あるやりとり。

翻訳歴ん十年のベテランで、ある団体の正会員でいらっしゃる方(個人的に面識はない)。

その団体に所属していない人が、その団体の講演などに出てくることが気に入らないらしく、ましてその団体の定期刊行誌が無料公開されるなど、会費を払っている会員としてとうてい納得できないらしい。

損得の感情(勘定?)とか、帰属意識とか、まあ個人によって考え方はいろいろだろうけどね。とりあえず、お近づきにはなりたくないな。

ついでだから書いちゃうけど。私もその同じ団体の会員で、安くはない年会費も払っている。

「会員になっていると、何かメリットある?」

ときどきそう聞かれるので、たいていは「まあ、それなりに」と答えていて、実際、有形無形にメリットはあると思っている。

でも、本当のところを言っちゃうと、直接的なメリットを求めているわけでは、必ずしもないんだよね。

「会員であること」

それ自体に意味がある。自分にとっても、たぶん対外的にも。そして、ちょっと格好つけて言うと、

その団体が自分に何をしてくれるか

じゃなく、

その団体に対して自分は何をできるか

を考えている気がするし、さらには

その団体を通じて自分は業界内で何をできるか

と考えているんだと思う。

「メンバーシップ」

って、本来そういうものじゃないだろうか。

12:14 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (6) | トラックバック (0)

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2012.06.06

# IJET-23 in Hiroshima、その3

2日目は朝からセッション、ひたすらセッション。

なお、セッションの細かい内容については、@Garyou_Tensei さんが、ご自身の素晴らしい実況ツイートと、その他を編集してTogetterにまとめてくださっています。これを読めば、内容も雰囲気もかなりつかんでいただけると思います。

#IJET23 第23回 日英・英日翻訳国際会議 - Togetter

素晴らしいまとめです。@Garyou_Tensei さん、本当にありがとうございます。

英日翻訳ワークショップ:コミュニケーションのための翻訳 - 翻訳文の「ながれ」について考える
(佐藤綾子さん)

英日翻訳の、少なくとも一定以上の経験者であれば、意識的かどうかの違いはあっても考えている(だろう|はずの)ことを、こういう風に整理して見せることは大切だと思います。私自身は、自分の翻訳のためというより、授業のネタにいろいろと使えるかなあと思いました。


Evernoteのローカライズに関わったらIJET-23広島にたどり着いた
(中村征一郎さん)

もともとは通訳とも翻訳ともまったく無縁の、なんと歯科医師という中村さん。この人なかりせば、Evernoteの日本語版展開はどうなっていたことでしょう。ネット上では珍しくないことですが、プロとアマの境界が曖昧になっている、それがいい形で表れた例です。

歯科医師とは言いながら、やはりコンピューター周辺とか、ノマドワークとか、そういう通訳者・翻訳者にとってもなじみの多いキーワードが次々と飛び出すあたり、だいたい同じ世代ですねー。と思って講演後にご挨拶したら、私がつい先日セミナーに参加した

立花岳志さん

のこともご存じでした。こうやって、つながりがつながりを生んでいくものなんですよね。


Developing a Style Guide for Technical Manuals
(松尾譲治さん)

「スタイルガイド」というキーワードで参加しました。文章上のスタイルというより、ドキュメント上の構成要素(ヘッダー、見出し、本文、表などなど)をどう処理するか(日→英)という話が中心でしたが、これからJTFスタイルガイドの英訳版を作ろうとしていることもあり、勉強になりました。

英日のスタイルガイドも、うっかりすると項目がふくらんでしまうと思ってましたが、英語がターゲットのほうが、何倍も大変そうです。


「説明するけぇよぉ聞きんさい」
(北臺如法さん)

昨晩のディナークルーズでお会いした北臺如法さんのセッション。

P1030725

今回のIJET23で、実は私がいちばん聞きたかったのがこれ。なんでかって? これをご覧いただければわかっていただけるでしょう。

iPadの日本登場とほぼ同時に話題になったこのビデオ。これを作ったのが、ほかならぬ北臺如法さんです。

リンク: ワタタツのウィッ記 - iPad Video Dubbing

どんな経緯で作ることになったか、どんな風に翻訳したか、そういう裏話を事細かに、そしてApple製品への愛情たっぷりに語ってくれました。

翻訳の視点でとてもおもしろかったのが、

Youという代名詞を、日本語では訳さないことが多い。でも、広島弁だと「あんた」とかよく入るので、あえてyouを訳出した部分もある

という話。


そして、その北臺さんの最新作がこれなんですが、

このセッションの最後には、これの

生吹き替え

を実演してくださいました。もう、本気で泣けました。2日目の最後のコマということで、実は参加者もだいぶ少なくなってきていたのですが、最後の最後にこれを聞けたのが、本当に嬉しかった。


セッション終了後は、JATの総会があってから閉会。

P1030735

国際会議場の外に出ると、実行委員のみなさんを労うような14日月が浮かんでいました。

P1030737

夕暮れどきの元安川を眺めながら、打ち上げのビアガーデン会場へ。

IJET-23実行委員のみなさん、本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

今回新しく知り合えたみなさん、またどこかでお会いしましょう。

09:33 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# IJET-23 in Hiroshima、その2

IJET-23の会場は、

P1030673

平和記念公園の中にある国際会議場です。

開催期間中は、地元の大学生が何人もボランティアとして参加。初日の朝も、 公園内のポイントごとに会議場の案内札を持って立っていてくれました。上の写真でも、慰霊碑の前に立っているスーツ姿の子がそうです。


なお、セッション中の写真はほとんど撮ってません。

どのセッションも録画してあり、間もなくJATのサイトで公開されるはずですので、会員であればぜんぶ見ることができます。

基調講演「感性のマツダロードスター」

自分たちのセッションの準備もあって、途中からしか聞けませんでした。特にコメントはないんですがwww、そもそもなんで Roadster なんて名前を付けたのか、説明してほしかったかな。


初日のランチはお好み焼き(大昌)。いちおうランチリーダーというお役目を仰せつかりましたが、会場まではボランティアの大学生が連れていってくれ、私は最後に会計しただけでした。

Img_0262

そば入りがだいたいデフォなんですねー。なんべん食べても、美味でございます。大阪からの参加組も、「お好み焼きは広島の勝ちやな~」と感想をもらしてました。

パネルセッション:SNSで翻訳者はどう変わるか?

関根マイクさんがモデレーターとなり、清水憲二さん、仙野陽子さん、そして私が登壇したセッションです。

成功したのかどうか、私自身は何とも言えませんが、聴いてくださった何人かの方からはいい評価をいただいたので、まあ良しとしましょう。マイク親分はどう思ったのかな。まだ聞いてません。

SNSって、すでに活用している人と、ほとんど近寄らない人との間で"SNSデバイド"がけっこう大きくなっていて、何をどう語ってもその溝はなかなか埋まらないのかもな、と思わないでもありませんが、別にSNSじゃなくてもかまわない、人と人とのネットワーキングのきっかけになってくれれば、それで十分だと思います。


ところで、翌日6/2の中国新聞で今回のIJETが記事になりました。

翻訳のプロ、広島で情報交換 - 中国新聞

この記事で取り上げられていたのが、たまたまこのセッションでした。

Tn20120603000501

演壇で写っているのは、清水さん 。

自分たちのこのセッションが終わったら、この日はだいぶ腑抜けになっちゃいました。


パネルセッション:Pecha Kucha 法人化!
(Cathy Eberstさん、石川正志さん、Marian Kinoshitaさん、Brian Hymanさん)

キャシーさん、お疲れ様でした~。法人化のいい面と悪い面、どちらも紹介されていて、これから法人化を考えている人には、けっこう参考になったのではないでしょうか。


音声入力ソフト活用における2つの盲点
(福光潤さん)

英語の音声入力はかなりイケることは知っていましたが、日本語入力も少しずつ進んでいるようです。ただ、予想されることですが、ユーザー数が絶対的に少ないために、日本語対応のアプリケーションはどれも開発が途中で止まってしまっているそうです。

デモを見ていても、認識と変換効率はまだまだですね。

それなのに、なんでそんなに苦労しながら使うんでしょう、と最後に思わず質問しちゃいましたが、福光さん自身の趣味の部分もけっこうあるとか、何しろもともとDTMとかお好きだという、そのひと言ですべて納得しちゃいました。

初日の夕方は、待望のカジュアルディナークルーズです。

P1030685

クルーズ中の写真は、参加メンバーが写っているプライベートな写真ばっかりです。Facebook で(範囲限定で)公開しています。

ただし、この1枚だけ載せちゃいます。

P1030694

明日の最終セッションに登壇予定の北臺如法さんとのツーショット。

北臺如法さんがどんな方が知らない人は、

iPad 広島弁

でググってみてください。

クルーズが終わってから、この日もやっぱり日付が変わるまで、飲んで更けていく広島の夜なのでした。

08:27 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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# IJET-23 in Hiroshima、その1

先日も予告していたとおり、6月2日と3日(および前夜祭の1日)、広島で開催された

第23回日英・英日翻訳国際会議(IJET-23)

に参加してきました。

IJETは毎年、日本と海外で1年おきに開催されていますが、JAT歴の浅い私は初参加です。規模としては、言うまでもなく一昨年の Project Tokyo より大きく、総勢200人近くの通訳者・翻訳者が集まりました。

JTFのイベントとも、もちろん翻訳フォーラムなどの勉強会とも違う、お祭りムードたっぷりのカンファレンスで、私個人のフリーランス史の中でも記憶に大きく残るイベントになりました。


開催地は広島でしたが、関東からも京阪神からも顔見知りがたくさん参加し、かと言ってみんなでツアーを組んだわけでもないので、ときには単独行動、ときには集団行動という快適な4日間でした(翌日の4日は観光してました)。

広島を訪れたのは(単なる移動通過を除けば)、なんと30年以上ぶりです。

P1030626

1月に行った大阪もそうですが、広島も「川の町」なんですね。やはり都市には水辺が必要です。近代化とともに次々と川をアスファルトの下に閉じ込め、埋め立て造成で海もどんどん遠のいてしまった東京が「砂漠」と称されるのはもっともです。

いきなり話がそれました。


P1030629

ドームを訪れるのも久しぶり。心なしか、周囲の環境が昔より整っているようでした(もっとも、前回は8/6で、そこいらじゅう人だらけでしたけど)。


昼過ぎの新幹線で現地入りし、早い時間にチェックインさせてくれたホテルでちょっとゆっくりしてから、関東組のひとりとさっそくお好み焼き。前夜祭の開始までまだしばらく時間がありましたが、なんとなく元安川のそばにあるカフェに三々五々メンバーが集まりました。

P1030636


前夜祭は、JATの飲み会ではたいていそうなのですが、パブを貸し切って、それでも満員御礼感たっぷりのパーティー形式。

P1030646

生演奏あり、(一部有志によるw)踊りありで、前夜から早くも熱気いっぱいでした。

明日からが本番だというのに、この後も二次会、三次会と流れ、

Img_0259

最後は、深夜だというのにお好み焼きまで食べる始末。

06:30 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.05.27

# またも機械翻訳騒動。だけどそれだけのことではないかもしれず

東北観光博のサイトで、機械翻訳のトンデモない誤訳・珍訳が続出した騒動はまだ記憶に新しいところですが、今度は奈良市観光協会のサイトだそうです。

リンク: 奈良観光、誤訳だらけ…外国語HP一時閉鎖 : ニュース : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

ニュース記事はしばらく経つと消えてしまうので、以下に引用しておきます。

自動翻訳システム、確認怠り 東大寺の大仏はミスター・オサラギ?――。奈良市観光協会が今春更新した外国語版のホームページ(HP)に、多くの誤訳があるとの指摘を受け、協会がHPを一時閉鎖していたことがわかった。経費を抑えようと自動翻訳システムを使ったためで、「国際観光都市として恥ずかしい限り」と担当者は平謝り。HPの再開のめどは立っていない。
 寺社や伝統工芸などを紹介するHPは3月に模様替え。従来の英語、韓国語、中国語、フランス語のページに、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、イタリア語のページを追加した。
 この際、1言語で150万円だった翻訳の外部委託をやめて、全部で35万円のインターネットを利用した自動翻訳システムに変え、固有名詞の読み方もあらかじめ登録していなかったことからミスが続出。確認作業も怠っていたという。
 例えば英語では、東大寺の大仏を、姓の「おさらぎ」と認識して「Mr.Osaragi」と翻訳。「仏の慈悲」は「仏」を略語と解釈して「French mercy(フランスの慈悲)」とした。「平城京へ都が遷された」との部分は、訳せなかった「遷」の字が英文に混じっていた。
 こうした誤訳は「数え切れないほど」あり、観光ガイドらから「とても外国人に見せられない」との苦情を数十件受けた協会は23日にHPを閉鎖。現在、更新前のHPを公開中だが、担当者は「自動翻訳で内容を更新するには、単語登録しなければならない言葉が多過ぎる」と頭を抱えている。 (2012年5月26日 読売新聞)

この記事では言及されていませんが、請け負ったのは、東北のときと同じ会社だそうです。


東北博の騒動のあと、機械翻訳を導入しているところはどこも自サイトを点検したのかと思ってました。実際そうしたお役所などもあったようですが、奈良市ではそういう意識がまったくはたらいていなかった模様です。

機械翻訳の功罪とか、そういう話をするつもりは今回ありません。


私が気になっているのは、今のこの国の社会システムの問題です。

原発事故の後、もう追いかけるのもイヤになるくらい技術的にも組織的にも杜撰さが次々と明らかになる東電と原発ムラ(その他もろもろ)。

経済原則に追い立てられて安全性を軽視し、ついには多くの人命を犠牲にする交通機関。

(そのほかにも例を挙げようとしたけど、キリがない......)

なんかこうね、

社会システム全体が弱体化している

という気がするわけですよ。


そういうとき必ず思い出すのが、『銀河英雄伝説』の後半、ヤンたちがちょっとした道路の渋滞にはまっちゃうだけの場面です。ちょうど今の日本と同じように、ヤンは「社会システム全体があちこちで機能不全を起こしている」と感じる。その後たいした時間をおかずに、自由惑星同盟は銀河帝国に完全に屈服することになる。

そういう危うさ。

個人レベルにしちゃうと、「みんなもっと、自分のやるべきことをきっちりやろうよ」という話になるのですが、そんな自覚とか責任感がいつの間にか溶け出してしまうような、変な社会になってきている。


ふだんの生活レベルは、私の世代でさえ子ども時代からは想像できないほど便利に快適になったこの国。その私がまだ生きているうちに、この国の存在基盤が根こそぎひっくり返ってしまう日がとつぜん訪れないとも限らない。


その前に立ち直ってくれるのかなぁ。

11:02 午前 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2012.05.22

# 『通訳翻訳ジャーナル』の連載記事

告知が少し遅れましたが、『通訳翻訳ジャーナル』の春号から、翻訳フォーラムのメンバーによる連載が始まっています。

題して、「翻訳者のための作戦会議室」。

内容は、同誌の記事によくある翻訳志望者向けではなく、むしろ現役のプロ向けです。翻訳業界が大きな曲がり角にさしかかっている今、あらためて「翻訳というものに向き合ってみよう」ということをテーマに、フォーラムのメンバーがオムニバス形式で記事を書いています。


春号の連載第1回が、Buckeyeさんこと井口耕二さん


そして、発売されたばかりの夏号、第2回が、Sakinoさんこと高橋さきのさんです。


先日書いた翻訳フォーラムのシンポジウムとも連動しています。夏号はもちろん、春号の在庫もあるようなので、ぜひご覧になってみてください。

ちなみに、夏号は同誌の20周年記念ということで、ほかにも内容は盛りだくさんです。


あ、言い忘れました。「翻訳者のための作戦会議室」の第3回は、私の記事予定です(予定)w

06:14 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2012.05.15

# 6月、7月のイベント予定

翻訳関連の主なイベントをまとめておきます。

6月2日~3日
IJET-23 in Hiroshima

日本翻訳者協会(JAT)の年次イベントです。翻訳祭と同じようにマルチセッション形式ですが、2日間という日程もあり、また初日の夜には豪華なパーティもあって、翻訳祭に劣らない、むしろ内容の豊富さという意味ではそれ以上の盛り上がりが予想されています。

プレゼンテーション一覧

「SNSで翻訳者はどう変わるか?」というパネルディスカッションに、私も登壇予定です。

申し込みはまだ間に合います。

6月15日
翻訳フォーラムシンポジウム/大オフ2012

先日こちらのブログでも紹介したとおりです。ただし、10日に公式告知したばかりですが、すでにほぼ定員に達しています。

こちらでも、「翻訳者の頭ん中 翻訳中の思考プロセス」と題したシンポジウムの1コマを担当します。

「翻訳メモリの功罪」

ということで、翻訳メモリーを日常的に使っている翻訳者の一人として、「道具に使われないように」するにはどうすればいいか、という方向性を提示したいと思っています。


7月21日
「オープンスクール」 -翻訳学校のサン・フレア アカデミー

毎年数回(春、夏、秋だったかな?)開催されている、単発セミナーです。

私は昨年の秋と今年も春にも講座を持たせていただきましたが、今回も

【B-3】「翻訳トライアル突破の心得!」

を担当します。

ちなみに、同じ日には清水憲二さん(SNS)、新田 順也さん(Wordマクロ)の講座も開かれます。各講座ともわりと締め切りが早そうですし、抽選があるそうです。


ここでは、私自身がしゃべるイベントのみご紹介しましたが、このほかにも5月後半~7月にはセミナー等のイベントが目白押しです。詳しくは、こちらのサイトをどうぞ。

リンク: 技術者から翻訳者へのシルクロード:翻訳関係のセミナー類日程(5月、6月)

会場でお会いすることがあれば、よろしくお願いいたします。m(__)m

03:39 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.05.10

# 翻訳フォーラム大オフ 2012

今年も、翻訳フォーラムの大オフが開催されます。

例年は、通称「勉強会」と大オフが別々に開催されるのですが、今年は昼間からシンポジウム形式の勉強会を開き、夕方からそのまま打ち上げになだれ込むという形になりました。

日程:6/15(金)
シンポジウム:午後1:00より
打ち上げ:午後6:30より

公式の告知ページはこちら。
リンク: 翻訳フォーラム大オフ2012に関するお知らせ


参加ご希望の方、興味のある方は、まず告知ページをご覧ください。

今回は、翻訳フォーラムのメンバーでなくても、告知ページから申し込んでいただければ参加できます。

(ただし会場の関係で先着順です。ご了承ください)


シンポジウムのテーマは、「翻訳者の頭ん中 翻訳中の思考プロセス」


そして、今回のシンポジウムは、この春号から始まった『通訳翻訳ジャーナル』の連載「翻訳者のための作戦会議室」と連動しています。


平日ではありますが、ご都合のつく方はぜひご参加ください。

04:42 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.04.13

# 機械翻訳のせいじゃない

機械翻訳の出力がほぼそのまま、こともあろうに書籍という形で世に出てしまった「アインシュタイン事件」はまだ記憶に新しいところです。

リンク: 悲惨すぎる翻訳-『アインシュタイン その生涯と宇宙』: Buckeye the Translator

翻訳業界的にはミートホープ事件並の激震だと思います。
これを機に機械翻訳の利用について業界関係者がいろいろと改めて考えてみるなら、それはそれで悪くないかとも。

ところが残念なことに、同じような事件がまたも起こってしまいました。今度は、「東北観光博覧会」という半お役所的な組織の公式ホームページに、機械翻訳のトンデモ出力が載ってしまったのでした。

啄木忌は喪キツツキ? 秋田は飽きた? 東日本大震災の復興支援を目的に開かれている東北観光博覧会の公式ホームページ(HP)で、多数の翻訳ミスが見つかっている。自動翻訳機が打ち出した原文を業者もHP作成を丸投げした実行委も確認せず、ウェブ上に載せたためだ。膨大な訂正作業が終わるめどは立っておらず、各地の観光担当者は困惑している。
実行委事務局の観光庁によると、東北博の運営全般は民間の2業者に委託しているほか、HPの管理運営業務は別業者に孫請けされている。
翻訳の担当は在京のIT関連企業。「復興支援に一役買いたい」と本来数百万円かかる各言語の自動翻訳を無償で引き受けたという。


アインシュタイン事件の真相は今もって不明ですが、アマゾンに今も残ってるレビューを見ると、本来の翻訳者を確保できず、

科学系某翻訳グループに依頼
   ↓
その訳がひどかったので修正
   ↓
間に合わない分は未修正で出版(編集長の判断)

という経緯だったそうです。ということは、機械翻訳を使ったのはその「科学系某翻訳グループ」だったのでしょうか。その責任はもちろん重大ですが、それを知っていて出版に踏み切った編集サイドも信じられない(その後、この事件の責任者は何かペナルティを負ったのでしょうか?)。


でも、今回の「東北観光博覧会事件」は、ある意味もっと信じられない経緯だったようです。

第一に、

「IT関連企業が、無償で引き受けた」

にもかかわらず

「機械翻訳の出力をそのまま納品した」

というのが絶句ものです。いったいどの段階で機械翻訳が入って、どんな担当者がそれをスルーしたんでしょうか。 トンデモ出力と知っていて納品したのだとしたら職業倫理が疑われますし、これでいいと思って納品したとしたら能力に疑問符が付きます。

次に、例として挙げられているのは、どれも固有名詞だということ。

-------------------------------------------------------
■誤訳の主な例
【岩手】
●元の日本語)盛岡舟っこ流し
 HPの誤訳)We wash down Morioka ship kid(我々は盛岡の舟の子どもを洗う)
●元)啄木忌
 誤)Woodpecker mourning(喪キツツキ)
●元)せんまや夜市
 誤)Maya night market not to hold(まや夜市を持たない)
●元)生保内関所跡
 誤)Barrier trace in life insurance(生命保険における関所跡)
【青森】
●元)安潟みなとまつり
 誤)All the cheap liman and Festival(すべての安い潟と祭り)
●元)雲谷かがり
 誤)We sew Moya(私たちは雲谷を縫う)
●元)ヤッテマレ軽トラ市
 誤)yattemare light tiger city(ヤッテマレ軽い虎市)
●元)亀ケ岡さくらまつり
 誤)Tortoise ka oka cherry tree Festival(亀か岡桜まつり)
【宮城】
●元)旧伊達邸鍾景閣
誤)kyuitatsutei keikaku(きゅういたつてい けいかく)
-------------------------------------------------------

固有名詞なんて、機械翻訳の出力でまっ先に疑うべき内容でしょう。そのチェックが、いったいなぜ、どのプロセスでも入らなかったんでしょう。


アインシュタイン事件とか今回の事件を見て、「だから機械翻訳なんて当てにならない」という人もときどきいますが、悪いのは機械翻訳そのものではありません。

悪いのは、はなっから向いていない内容に機械翻訳という手段を選んでしまったその判断であり、それをスルーしてしまったプロセスと、そのプロセスに関わったヒトです。

同庁の担当者は「訂正作業はまだ時間がかかる。気づいたところはスタッフが直したが、あまりに多くて追いつかない。今後はしらみつぶしに直していく」と平謝りだ。

これも思いっきり変な話です。請け負った「IT関連企業」が、改めて

ぜんぶやり直して再納品

する、ってのが当然かと思うんですけど。

02:11 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2012.04.12

# IJET-23 広島

JAT(日本翻訳者協会)の年次会議である最大のイベント、IJET(日英・英日翻訳国際会議)が、今年は6/2-3の2日間、広島で開催されます。

リンク: 日本翻訳者協会

私も以前から参加するつもりでしたが、それだけでなくパネルディスカッションのひとつに登壇することになりました。
IJET-23 Presentations

言うまでもなく、そのほかにも興味をそそられるプレゼンテーションが目白押し。また、初日の夜に開かれるネットワーキングパーティーが、夜の瀬戸内海に繰り出すディナークルーズというのも注目です。

早期割引の申し込みは4/20まで。

開催地が広島なので、たとえば関東から参加するには参加費用のほかに往復の交通費と宿泊代がかかるわけで、よほどの大名旅行でもないかぎり、その費用はなるべく抑えたいなぁ、と考えますよね。

日程をできるだけ短くしたければ、6/2朝早くに飛行機で移動、6/3のセッションが終わったら飛行機で帰着というのも可能そうですが、さすがにせわしない。6/1には前夜祭もあることだし、やはり6/1に広島入り、終わった翌日の6/4に帰るというのが、だいたいのパターンかなと思います。

IJET運営委員会が用意してある準公式のホテルとかパッケージツアーもありますが、4/10時点で、交通機関(飛行機、新幹線)も、付近のホテルもまだ十分に余裕があるようなので、自分で調べてプランニングする手もあります。

宿泊は、いろいろ調べればシングルで1泊5,000円を切るところがけっこうあります。早期割引があったり、ネット予約だと格段に安かったり。こちらのページの下のほうにも、ホテルのリストがあります(このリスト以外にもあります)。

IJET-23 Hotels | Japan Association of Translators

あ、そうそう。IJET-23の会場となる広島国際会議場は、平和記念公園の中にあって、つまり広島駅からは少し離れているので、宿泊先は平和記念公園の近辺が便利です。

往復は、飛行機でも新幹線でも、「往復交通費 + ホテル1泊分」というビジネス用パックを使うとけっこうお得です。飛行機のほうが早いのは確かですが、新幹線だと往復でも仕事できます。体力的にOKなら、夜行長距離バスという手もあります。東京を21:00とか22:00くらいに出て、広島までだいたい12時間くらい。


ちなみに私は、往復を新幹線にして6/1-4の3泊の予定です。上に書いたビジネスパックを使い、1泊だけは広島駅近くに投宿。残り2泊を会場近くに確保しました。

なにしろ、この前 --- と言っても30年以上前の話ですが --- 広島に行ったときは野宿だったので、2度目の今回はとても楽しみ~。

03:50 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.03.06

# 雨ニモマケズ

今日の夕方、ちょっとしたきっかけで作ってみました。

値下ゲ攻勢ニモマケズ
粗悪ナ原文ニモマケズ
老眼にも腱鞘炎ニモマケヌ
丈夫ナ心身ヲモチ
欲ハ少シアリ
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニ訳シテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ト少シノ肉ト少シノ茶菓ト沢山ノ珈琲ト少シノ酒ヲ摂リ
アラユルコトバヲ
ジブンノカンジョウニヨラズ訳シ
ヨクミキキシワカリ
ソシテ〆切ヲワスレズ
街中ノ茶店ノ席ノ蔭ノ
小サナ電子文具ニ向カイテ
東ニ悪文ノ業者アレバ
行ッテ指摘シテヤリ
西ニツカレタ編集者アレバ
行ッテソノ原稿ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ訳者アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニ未払イヤ値切リガアレバ
ホンヤクシャヲナメルナトイヒ
トライアルノトキハナミダヲナガシ
シメキリマヘハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

10:26 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.01.21

# 「JTF 翻訳セミナー in Osaka」に行ってきた~その3

落ち穂拾い、続けてセッション 3 と 4 のお話です。

そもそも私が今回この関西セミナーに行こうと思ったのは、昨年の翻訳祭で、にわか作りの告知チラシを佐藤晶子さんからいただいたのがきっかけでした。改めてありがとうございます。

セッション3、ジョージ・ブルダニオティスさんと牧野一成さんの話。

実は、こういうイベントなどの場に出てくる人は多かれ少なかれ、今回のテーマである「ネットワーキング」の重要性を肌で感じているのだろうと思います。なにしろ、当のお二人、ジョージさんと牧野さんが口をそろえて、「今日この場でこうして話しているのもネットワーキングの成果」とおっしゃっていたくらいです。

私自身も今までにたびたび似たようなことは書いていますが、私が牧野さんやジョージさんと知り合ったのも、一昨年 2010 年の JAT Project Tokyo がきっかけでした。

私が「ネットワーキング」を意識し、実際に行動するようになったのはフリーランスになった翌年の 2008 年からで、その最初の足がかりになったのは翻訳フォーラム、次が日本翻訳連盟でした。今でもこの 2 つは、私にとって重要なフィールドです。でも、Project Tokyo で JAT 関係の方々や Twitter 翻訳クラスタの翻訳者・通訳者さんたちとお会いできたのは、私個人のネットワーキング史の大きな変換点になっています。

パネルディスカッションという形式は、下手にやるととても退屈で、展開も内容もありきたりになってしまうものですが、このパネルはどちらかというと、

ジョージとポールの翻訳漫談

みたいなノリで、それを大阪で聞けたというのは、けっして偶然ではなかったのかもしれませんね(そーいえば、テリー&ポールの翻訳漫談、ってのもあったなw ついでに宣伝しとこ)。

リンク: 【告知】2012年第一弾UST放送:JTF大阪セミナーどうだった? | 翻訳横丁の裏路地

ところで、ジョージさんがたびたび挙げていた「名刺交換会」。そう呼べるような集まりがあるんですね。実は私、初耳でした。今でもときどき、フリーランスの方で名刺を持っていない方がいらっしゃいますが、むしろ所属組織を持たないフリーランスこそ、名刺は大切な営業ツールですよね。

セッション4 の梶木正紀さん、マサさんに初めてお会いしたのも、2010 年の Project Tokyo のときです。

実はこの Project Tokyo のとき、私はマサさんがランチリーダーを務めるグループに申し込んでいたのですが、そのシステムと会場に不慣れだったせいもあって、ランチの集合場所に私は遅れちゃったんですよね。そしたら、グループに取り残されちゃって、後から場所を聞いて慌てて追いついたという、今だから書けるファーストコンタクトではありましたw

このセッションのポイントとして、「一極集中を避ける」という話がありました。具体的には、クラウドなどのテクノロジーを活かして、データの一極集中とそれに伴うリスクを回避すべし、と。個人でもクラウドは活用できる時代になっていますし、これからますますその傾向は強くなりそうです。梶木さんの先見性、見習いたいと思いました。

その一方、Small Business であれば翻訳の分野は 1 つに特化したほうがいいとおっしゃっています(梶木さんの事務所の場合は特許・知財)。これには会場からも質問が上がりましたが、私も部分的に肯定しつつ、ただそれだけではいけないかも、と感じました。個人翻訳者が、自分の分野をどう考えるか。ある分野に特化してそれを突き詰めるのか、それとも需要の変化に備えて幅を広げることも考えるべきなのか。その辺のことは、今後何かの機会にテーマとして取り上げてみるべきですね。

【追記】
梶木さんが以前からちょっと話題にし、今回のセッションでも言及していた「クラウド型の翻訳支援ツール」は、こちらだそうです(Facebook でご紹介なさっていてい、今回こちらで紹介してもいいとご了承いただきました)。

セッション 3 は、自分もふだんから考えていることを再確認できる内容でしたが、セッション 4 は逆に、私があまり考えていない部分を刺激してくれる内容でした。私の "会社" は梶木さんの事務所ほどの規模になっていませんが、これからも梶木さんの仕事ぶりには注目していきたい。

そんなこともあって、次は必ず事務所にお邪魔しまーす。

11:58 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# 「JTF 翻訳セミナー in Osaka」に行ってきた~その2

「その1」では書かなかった補足的、落ち穂拾い的な話を書いておこうと思います。

会場となった

Kansemi7

は、

Kansemi8

こんな機能的な風情のビルです。前のエントリの最後に載せたように、夜になるときれいにライトアップされる玉江橋のすぐそばでした。

井口耕二さんのセッションで注目されたのは、大きく言って次の 2 点だろうと思います。

1. この案件を井口さんが訳すに至った経緯
2. どのくらいハードなスケジュールだったか

2. については、こんなスライドがありました。

Kansemi3

ちょっと見えにくいかもしれませんが、縦軸がワード数(万単位)、横軸が時間スケールです。6/10 すぎ辺りから伸びている水色のラインが当初予定、緑のラインが実際の経緯です。

1. については、まず 4/18 の井口さんご自身のブログをご覧ください。

リンク: iSteve: Buckeye the Translator

ボツになったタイトルが出回ったこの時点で、訳者はもちろんのこと、日本でどの出版社が翻訳版権をとるかも決まっていませんでした。もし日経BPさんが版権をとったら、プレゼン本とイノベーション本の実績から言って、井口さんに話がくるのは間違いなかったでしょう。でも、日経BPさんは版権をとれませんでした。その筋からの話によると、

「桁が違っていた」

んだそうです。よほど売れる本になると、原著の版元はこの時点で想定していたわけですね。

で、どの出版社がその「桁違いの」版権をゲットしたか井口さんにもわからなかったのですが、(ゴニョゴニョゴニョ)な経緯があって、それが講談社さんだと判明。

※「ゴニョゴニョゴニョ」のところ、別に特大マル秘情報ってわけじゃありません。どう書けばいいか私が困っただけです。ほんとほんとw

講談社は、井口さん自身もブルーバックス 1 冊しか仕事の経験がありませんでした。これです。けっこう楽しい本ですよ。

そして、出版社というのは基本的に、

取引実績のない人とはなかなか仕事をしたがらない

のだそうで、まして今回はタイトなスケジュールになるかもしれない。そうなると、今まで付き合いがなくて、何かあったときの反応が予測できない人は敬遠する、のだと。

でも、やはりジョブズ本の実績は講談社の担当さんもご存じだったので、しばらくしてコンタクトがありました。その時点で、候補は井口さんを含めた 2 人だったそうです。

なんでも、版権の価格から言って、講談社としてはこの伝記を少なくとも 30 万部は売りたかった。その点、井口さんの場合はプレゼン本とイノベーション本でそれに近い実績があったから、というのが候補として絞り込まれた重要な要因だったようです。担当者との面談の結果、最終的には井口さんに決定するわけですが、そのときもうひとつ決め手になった要素があったと井口さんはおっしゃっています。それは、

「9月末までに15万ワード」

という、それでさえ普通にはかなりキツいスケジュールを、その場で「できます」と答えられた点だったろう、と。

Buckeye さんの翻訳スタイルとスピードをご存じの方なら納得できる話かもしれませんが、こう答えられた自信と実力、そして何より

「とりたい仕事に向かったときのプロとしての意識」

こそが、今回のこの伝説的な翻訳仕事につながった最大の勝因と言えるのではないかと、そう感じました。

11:48 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# 「JTF 翻訳セミナー in Osaka」に行ってきた~その1

以前書いた「家庭の事情」が許してくれたので、標題のイベントに参加してきました。

イベントは 1/20(金)で、やろうと思えば日帰りとか夜行バス往復の強行軍も可能ですが、せっかくなので、2 泊 3日の日程を立て、1/19(木)の午後に大阪入りしました。

パーソナルな時間のことは別エントリにして、ひとまず関西セミナーのご報告です。

リンク: JTF 関西セミナー

ちなみに、今回は自分が登壇するセッションがあったわけではなく、まったくの自費参加でしたが、直前になって事務局のほうから「セッションの書記、手伝ってくれません?」と依頼されたので、そういうタスクもあるにはありました。

私が参加したセッションは以下のとおり。

セッション1(基調講演)「Steve Jobs 翻訳の裏側」:井口耕二氏

セッション3「関西で活かすネットワーキング」:ジョージ・ブルダニオティス氏、牧野一成氏、モデレータ=佐藤晶子氏

セッション4「資本金30万円の小規模特許翻訳会社のグローバル戦略」:梶木正紀氏

井口耕二さんの基調講演は実況ツイートしたのですが、ジョージさん・牧野さんのセッションと梶木さんのセッションは、書記をしていたのでツイートできませんでした。そのうち前 2 つについては、@Garyou_Tensei さん(今回初めてお会いできました)が togetter にまとめてくださいました。こちらのほうが詳しいですし、臨場感もあります。

リンク: 新参者視点のJTF翻訳セミナーinOsaka(2012年1月20日) - Togetter

井口耕二さんの基調講演は、タイトルのとおり「今だから言える舞台裏」という話が満載。なんたって、これですからね。

1_1_inokuchi_2
(JTFの告知ページから無断借用です、お許しください)

翻訳者というのはたいてい黒子なわけですが、今回のこの話については、一級の翻訳者の仕事ぶりを伝える伝説的エピソードとして、こうして世に出てよかったと思います。

Kansemi1

かねてからの約束どおり、ブルージーンズに黒のタートルで登場(ただしジーンズの色がちょっと濃かったのですが)。

Kansemi2_2

これが、オリジナル紙原稿の束。約 15万ワードの予定だったのが、最終的には 22 万ワード。

しかも、そんな過密スケジュールでこの本を進めていた間にも、産業翻訳のほうでは、クライアント直の案件については基本的に断らずに続けていたと。これはかなりインパクトありました。

そして、最後のスライドは、ジョブズ本人がダメだししたという、当初の表紙案。

Kansemi4

まあ、ボツになったのはわかりますw

ランチ時間が 60 分しかないのは辛かった(みなさん共通の感想)。2010 年まで 60 分だった翻訳祭のほうは、昨年 90 分になってだいぶ余裕があったので、関西セミナーも今後は 90 分にしてほしいですね。

ジョージ・ブルダニオティスさんと牧野一成さんのセッションは、モデレータの佐藤晶子さんが「おもしろ愉しいセッションにしたい」と冒頭でおっしゃったとおり、またお二人の人柄もあって、終始笑いがたえませんでした。

しかも、「人と人とがつながること = ネットワークの大切さ」という心構えから、「仕事でなくても名刺は常に持っていこう」という具体的なアドバイスまで有意義なセッションでした。

今回の参加者のなかでも、このセッションで勇気づけられた方は多かったと思いますが、本当はまだ一度もこのような場に出てきていない個人翻訳者さんにこそ聞いてもらいたい話、だったかもしれません。

タイミングを逸してしまい、このセッションの写真はあまり撮れませんでした。開始前のこの 1 枚だけ。

Kansemi5

あ、それからブルダニオティスさん、私やっばり以前ちゃんと名刺いただいてました。失礼しましたm(__)m

最後は、梶木正紀さん。

Kansemi6

この写真について、「まだスーツ持ってないのw」というツッコミもありましたが、私はけっこうカッコイイと思いました。

このセッションで梶木さんが使った「ゲリラマーケティング」という言葉。正式にそんな用語があるとは思ってもいませんでした(ココだけの話、実はマサさんの造語だと私は思ってましたw)。

梶木さんとは、会社の形態も分野もいろいろと違う点が多いのですが、昨年の 3/11 や世界情勢の変動まで視野に入れて経営上の問題意識を常に持ち続けている、そして「今ここ」にとどまっていないその姿勢に、大きくうなずくところがありました。

大阪での開催ということで、今までオンラインでしか交流がなく、なかなかお会いできなかったたくさんの方(大阪、京都、神戸、岡山、広島など)にリアルでお会いすることができました。関東ではだいぶリアルな面識も広がりつつあるところですが、今回はようやく関西方面にネットワークの足がかりができた感じです。

パーソナルな話は別エントリ、と書きましたが、最後に大阪の夜景を 1 枚だけ。

P1030273

会場が「大阪大学 中之島センター」ということで、当然ながら川のそばというロケーションだったわけですが、交流パーティーの後で翻訳フォーラム関西方面オフに流れて、そこからホテルまで徒歩で帰ったおかげで、こんなきれいな夜景を見ることができました。

11:28 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2011.12.03

# バックステージさんによる「講演での質問の心がけ」

翻訳フォーラムでは、いつも「舞台裏」の世話役に徹しておられる翻訳者のバックステージさん。

リンク: On the Backstage

オフ会や勉強会のときには、名幹事としてそのお人柄と有能さをいかんなく発揮してくださいますが、実は、講演会などにおける

名質問者

でもあります。

先日の翻訳祭でも、バックステージさんの質問が的確だったと何人もの人から聞きました(特に、井口耕二さんのセッションで)。

その名質問者バックステージさんが、Facebook でその心がけを披露してくださったので、ご本人の了承を得て以下に引用させていただきます。

------------------------------------------------------------
・講演者の経歴を踏まえておく。
・質問する前提で講演を聴く
・質問の最初に「2点お伺いします」など、質問の数を言う。
・講演の内容を踏まえた上で質問する。
・講演の内容と無関係な質問を極力避ける。
・自分の意見を主張することを極力避ける(参加者にとって質疑応答は質問するための場であると思っているため)。
------------------------------------------------------------

ほとんどありとあらゆる講演で、「何が言いたいんだかまったく不明」としか言いようのない "質問" を投げてくる人が、必ずと言っていいほどいますよね(特に最後の項目ねw)。

この心がけは、前半 3 つが特にバックステージさんらしい配慮だと思いますが、そうでなくとも講演でわざわざ "質問" をして時間をとる以上、少なくとも後半の 3 つは守ってほしいものです。そうすれば、質疑応答の時間はもっともっと有意義になるはずですなのですが......

そういえば、翻訳祭当日の Twitter タイムラインで、「講演会や学会で、もっと質疑応答の時間を長くとったほうがいいんじゃないの?」というご意見を見かけました。でも、実際に見かけるあの程度の質問ばかりでは、時間を長くとっても無駄が増えるだけでしょう。

バックステージさんのこの「心がけ」、私も肝に銘じておこうと思います。

01:27 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2011.12.01

# 「JTF 翻訳セミナー in Osaka」の詳細

JTF のサイトではまだ情報が出ませんが、JTF 理事である佐藤晶子さんのブログに、パンフレットの写真も含めて詳しい情報が載っていました。

リンク: JTF 翻訳セミナー in Osaka 2012年1月20日(金) Come True/ウェブリブログ

私も、家庭の事情が許せば参加した~い。

【12/14追記】
JTF サイトにも詳細記事と、申し込み要項が掲載されました。

リンク: 日本翻訳連盟 JTF 関西セミナー 大阪 【翻訳セミナー】

01:44 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2011.11.30

# 第21回翻訳祭 - 無事に終了~いろいろな出会い

昨日 11/29、日本翻訳連盟が主催する第 21 回翻訳祭が無事に終了しました。

自分のセッションは朝イチであっという間に終わってしまいましたが、全体的には来場者数も 700 名を超え、大盛況のうちに終わりました。セッションについては、盛りだくさんのラインアップが効を奏したようで、お会いしたいろいろな方から「有意義だった」という声を聞きました。

今年は特に、翻訳プラザを会場ビルの下の階ではなく 3 階に設置したことが、全体の盛り上がりにつながったように思います。いろいろな事情で今年はプラザにいた時間が長かったのですが、どのブースも賑わっていました。

個人的には、仕事上のおつきあいのある方とはもちろん、それ以外でも各方面に交友関係が広がりました。

特にうれしかったのは、スタイルガイド検討委員会の委員として登壇した 1 コマ目のセッションが終わったあと、さるクライアント企業の担当者様からお声をかけていただき、デイリーのお仕事について過分なお言葉をいただいたこと。個人的にも気に入っている継続案件であり --- 昨日の分はもちろんお引き受けできなかったわけですが m(__)m ---、とても励みになりました。

ランチ時間には、遠方から来た翻訳者さんとも、短時間ながらお話しすることができました。

自分で参加できたセッションは多くなかったのですが、キヤノン技術情報サービス株式会社の齊藤貴昭さんのセッション

「品質に満足ですか~良い翻訳品質を腕組みせずに考える~」

は、昨年の牧野 一成さんの翻訳セミナーと同様、講演者の立場やテーマからすると私のような個人翻訳者の仕事に直結する内容ではさそうですが、翻訳の「品質」についての考え方など、共感する点、勉強になる点が多々ありました。

特に、締めに使われたこの絵は印象的だったので、斉藤さんご本人の承諾を得たうえで、こちらにご紹介します。

111130

お客さんと良好な関係を構築するうえで「信頼性」が重要というのはよく聞かれる言葉ですが、それをこういう絵で視覚化したところが、たいへんユニークでした。

交流会では、ある翻訳会社の方から「本ブログのファンです」とおっしゃっていただき、たいへん面はゆい限りでした。

そして、例年のことながら、交流会ではまた何人もの方の異動を知ることになりました。意外な動きもあれば、さもありなんという流れもあって、この交流会に出るとこの業界にも 1 年という月日が流れたのだなぁ、と実感します。

そして、まだ日本翻訳連盟のサイトにも載っていない最新情報を告知します。

来年の 1/20、大阪で「JTF 翻訳セミナー in Osaka」が開催されます。基調講演は、なんと

「Steve Jobs 翻訳の裏側」

です。翻訳者の井口耕二さんが、(雑誌などのインタビューを除き)公式の場ではじめて、ジョブズ自伝の翻訳に関する秘話をご披露なさるそうです。ついに、あの秘蔵写真も公開されました!!

リンク: コラージュ(追記): Buckeye the Translator

詳細は、まもなく JTF のサイトで公開されることと思います。乞うご期待!!

09:06 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2011.11.22

# おじいさんは山へ「しばかり」に行きました

日本人なら子供でも知っている『桃太郎』の冒頭。

はい、漢字で書いてみましょう。






正解は

柴刈り

ですね。まちがっても

芝刈り

じゃありません。

Lawnmower

こんなんなっちゃいますからねw

今まで考えたこともなかったのですが、末っ子と、買い物帰りの会話で気づきました。

娘 「白い柴犬ってかわいいよねー」(注:彼女は犬好きである)
私 「でも、柴犬って、茶色のイメージだなぁ、やっぱ。なにしろ『しば』だし」
娘 「え、しばって緑でしょ」
私 「え、しばは茶色いのも...あ、その『芝』じゃないよ。おじいさんが山へ...ほら」
娘 「え、おじいさん、『芝刈り』にいくんじゃないの?」
私 「え、だって昔の日本だよ。庭師じゃないんだから」
娘 「だから、ほら、芝刈りのアルバイトとかwww」

ちなみに、

しば【柴】
山野に生える小さい雑木。また、それを折って薪や垣にするもの。

ですね。

12:27 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (10) | トラックバック (0)

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2011.10.27

# 翻訳祭のバナーを貼りました

昨年のこの時期と同様、11/29 に開催される翻訳祭のバナーを右カラムに貼りました。

トラック 1……クライアント向け
トラック 2……翻訳会社経営者向け
トラック 3……翻訳会社コーディネータ向け
トラック 4……翻訳会社チェッカー/QA向け
トラック 5……初級の翻訳者向け
トラック 6……中級以上の翻訳者向け

という充実した内容なので、特にフリーランスにとっては、昨年までより有益な情報収集、交流、営業の場になると思います。このほか、プレゼン・製品説明コーナーでも 2 つの会場で 12 のセッションがあり、こちらは入場無料、事前登録も不要です。


職種や立場によって、トラックを固定されるということではありません。どなたも、どのトラックでもご参加いただけます(先日そういう質問があったので、念のため)。

これらのセッションのほか、交流パーティーも有意義に活用できますし、90 分に拡張されたランチ時間も今回はポイントだと個人的には思っています。

JAT のイベントだと、あらかじめ「ランチリーダー」という人がいて、何グループかに分かれて決まった飲食店を使うという手配があるのですが、翻訳祭の場合はおそらく、自然発生的にいくつかのグループが近場のお店に行くことになるのではないかと思います。せっかくなので、そんなグループに参加しちゃうと、きっとお得です。

06:19 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2011.10.09

# 第21回翻訳祭 - プログラム発表

今年の翻訳祭(第21回)は、11月29日(火)に開催されます。

111009_jtf_img_01

その公式プログラムが完成しました。

リンク: 【 JTF 翻訳祭 】 (社)日本翻訳連盟が主催する、年に1度の翻訳業界最大のイベント_翻訳祭プログラム詳細

タイムテーブルからさらに下に進んで各プログラムの詳細記事に入ると、いきなり 3 番目にお見苦しい顔が出現しますが、これは単にプログラムの順番の関係です(トラック 1 のセッション 1 )。それをすっ飛ばしてズズーっと進んでいただければ、実にそうそうたる顔ぶれが並んでいるのがおわかりいただけるかと思います。

今年の翻訳祭は、トラックごとに対象者を明確に分けた点が特徴です。クライアント向けが 1 トラック、翻訳会社向けが 3 トラック、(個人)翻訳者向けが 2 トラックとなっており、翻訳に携わるあらゆる方面の方にとって充実した内容になっていると思います。

しかも、昨年はアンケート等で「セッションが短くて物足りなかった」という意見が多数寄せられたことをふまえ、今年は各セッションが 90 分ずつと、昨年の 1.5 倍になっているので、聴き応えも十二分。

あ、ランチタイムも 1.5 倍ですね。これは大切。

というわけで、またたくさんの方とお会いできることを楽しみにしています。

(バナー勝手に貼っちゃいましたが、かまいませんよね ---> 事務局の方)

【10/21編集】
「いきなりお見苦しい顔」と書いてあったの読んだ家人から、「上に並んでいるお二人の女性に失礼じゃないの!!」ときつく叱られてしまいましたので、さっそく文面を修正しました。当のお二人にも、心よりお詫び申し上げます
m(__)m

10:27 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2011.09.09

# 告知 - フェロー・アカデミーでしゃべります

直前になってしまいましたが、フェロー・アカデミーさんで、9/11 のこんなイベントに出講します。

リンク: 翻訳の専門校 フェロー・アカデミー オープンセサミ2011秋

題して「これからの IT 翻訳入門」。

しかもサブタイトルは「不況&機械翻訳化を生きぬくための術」www

昨年 6 月に JTF で担当した翻訳環境研究会もそうでしたけど、いまや「IT 翻訳」はどこにいっても

斜陽産業

扱いですよね。まあ、JTF のテーマは自分で決めたわけですけど、それから 1 年以上が経ち、業界関係者の斜陽感はますます強くなっているということでしょうね。

ちなみに、フェローさんでは 10 月から講座も担当させていただく予定です。

11:18 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2011.08.11

# △ん△ん……、または (.ん){2,}

マスナガさんちで、猛烈にトラックバック意欲をそそられるエントリがありました。

リンク: 「○ん○ん○ん○ん○ん○ん」 - 頭ん中

と思ったけど、いつの間にか「トラックバック」がなくなってる?

「頭ん中」に限らず、最近「いいね」ボタンのように他の SNS と連携する機能は増えてきたけど、もしかしたら「トラックバック」ってあんまり使われなくなってるのかな?

それはさておき、「○ん○ん……」と繰り返す言葉。さっそく考えてみました。

(ちなみに、タイトルの後半はこのパターンを表す正規表現です)

まず、2 回パターン、つまり「○ん○ん」だけのことば。これなら、いくらでもあります。

安心、混沌、三振、恬淡、ノンタン……

そのむかし、NHK の「連想ゲーム」に「わんわんことばコーナー」ってのがありましたね。それから、この「○ん○ん」ことばだけを使ったしりとり --- 厳密には 2 文字とり --- も、けっこう続けることができます。

あんぜんぜんしん、しんげん、げんたん、たんしん……


お次は 3 回パターン。正規表現では (.ん){3} となります。

安全弁、観念論、親近感、天安門……

熟語以外に、「あんぽんたん」とかもあります。この手のことば、Jamming であれば[検索方法]→[部分一致]を選択して「?ん?ん?ん」と指定すれば検索できますが、そこまでしなくても、これくらいまでは頭だけでかなり思いつきます。


これが 4 回パターンとなると、一気に難易度が上がります。広辞苑でも 13 件しかヒットしませんでしたが、2 回 + 2 回の組み合わせを考えればもう少し数が増えそうです。

安全点検、人権宣言、半官半民、ちんぷんかんぷん……


5 回以上になると、かなり特殊、もしくは無理矢理になってくるので、たしかに「担々麺専門店」はかなり上級です(6 回)。ただし、カナ書きしてみると、

たんたんめんせんもんてん

と、最初のところで同じ文字(た)を 2 回使っちゃっているところが残念かもしれません。であれば、

雲呑麺専門店(わんたんめんせんもんてん)

これでいいですね。

山陰本線安全運転。

これなら 8 回パターン。これ以上は、何か思いついたら追記する、ということにしないと仕事に戻れなくなります。

02:51 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2011.07.09

# 「イノベーション」を調べてみた

前々エントリーで書いたように、『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』はいろいろと刺激的な一冊で、私などよりよほどまとまった記事が次々とアップされています。

リンク: 「大切なのは情熱とビジョン」---『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』著者が来日:ITpro

リンク: 「スティーブ・ジョブス 驚異のイノベーション」刊行記念イベントに行ってきました | Lifehacking.jp

などなど......。

そこで、ブロガーではなく翻訳屋である私としては、あらためて innovation という単語に翻訳屋としてアプローチしてみることにしました。

まず、国語辞典で「イノベーション」をひいてみました。

広辞苑(第 5 版)

1. 刷新。新機軸。
2. 生産技術の革新だけでなく、新商品の導入、新市場・新資源の開拓、新しい経営組織の実施などを含む概念。シュンペーターが用いた。日本では技術革新という狭い意味に用いることが多い。

大辞林

1. 技術革新。新機軸。
2. 経済学者シュンペーターの用語で、(経済上の)革新。経済成長の原動力となる生産技術の革新、資源の開発、消費財の導入、特定産業の構造の再組織などきわめて広義な概念を示す。

どちらも、狭義と広義の両方がわりと詳しく説明されています。

次に、innovation という名詞でもいいのですが、innovate という動詞を英英辞典でひいてみます。

LDOCE

to start to use new ideas, methods, or inventions

COBUILD

To innovate means to introduce changes and new ideas in the way something is done or made.

COD

change something established by introducing new methods, ideas, or products.

Webster 1913

To introduce novelties or changes

もともとが国産ではなかった概念なので、やはりこうして英語の語義を見てみたほうがずっと広がりがある。

『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』の中でも、「イノベーションは発明とは違う」と述べられていますが、このように多くの辞書で、「新しい何か」を「作り出す」のではなく 「introduce/導入すること」と定義されているところがカギなんですね。

「今までと違う何かを、新しいやり方を、(自分の活動するフィールドに)持ち込むこと」

と言えばいいでしょうか。ここまででも十分、innovation の正体が見えてきたような気がします。でも、もっと面白い定義も見つけました。

Webster's Collegiate

to introduce as or as if new

introduce する点は同じですが、as new だけでなく as if new なんだそうです。つまり、本当に新しい何かに限らず、「新しっぽい」というか「コンテキストが違えば新しく見える何か」というか、そんなところでしょうか。

as new から as if new までの間に、何か大きな可能性が広がっているように感じました。

08:11 午前 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2011.07.03

# 翻訳って何業なんだろ

「Chikirinの日記」のこの記事(市場規模一覧(多分、永遠に未完成))を見ていて、以前から疑問だったことを調べてみようと思い立ちました。それは、

翻訳って何業に分類されるのか?

ということ。もっと具体的に言うと、アンケートとかユーザー登録の画面などには、よく「業種/職種」を選ぶ欄がありますよね。あれ、みなさんはどう選んでますか? という話です。もしかしたら、翻訳者のみなさんには常識なのかもしれませんが、あちらこちらで社会常識を欠いている私は、実はそんなことさえ知らなかったのでした。

少し調べたらすぐわかったのですが、この手の情報を扱っているのは総務省統計局で、そこに公式な分類があるんですね。

リンク: 統計局ホームページ/分類に関する統計基準等

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ここを見れば、「業種」は「産業分類」に、「職種」は「職業分類」に載っているはずです。

業種については、「翻訳」は以下のように分類されていることが簡単にわかりました。

日本標準産業分類(平成19年[2007年]11月改定) > 学術研究,専門・技術サービス業 > 専門サービス業(他に分類されないもの) > その他の専門サービス業 > 7292 翻訳業(著述家業を除く)

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通訳さんもこれに該当します。それはいいんですけど、同じカテゴリーでほかに並んでいるのは......「不動産鑑定士」に「興信所」...... ふーん、そうなんだ。

ということで「業種」はわかりました。サービス業だろうとは思っていましたが、分類すると最終的にはやっぱり「その他」なんですね。おおむね予想どおりです。

次は「職種」なんですが、こちらが実は総務省の分類ではよくわかりません。「職業分類」の下で検索してみると、いちおう「翻訳業」は次のどちらかの分類に該当するそうです。

日本標準職業分類(平成21[2009]年12月統計基準設定) > 専門的・技術的職業従事者 > 著述家,記者,編集者


詩歌・戯曲・小説などの文芸作品の創作の仕事に従事するもの、文学・学術などに関する著作・翻訳の仕事に従事するもの、新聞・雑誌などの記事の取材の仕事に従事するもの及び新聞・書籍・雑誌などを刊行するための資料を一定の目的の下に収集し、配列・整理するなどの仕事に従事するものをいう。


日本標準職業分類(平成21[2009]年12月統計基準設定) > 専門的・技術的職業従事者 > 著述家,記者,編集者 > 著述家

詩歌・戯曲・小説などの文芸作品の創作の仕事に従事するもの及び文学・学術などに関する著作・翻訳の仕事に従事するものをいう。
事例:小説家;シナリオ作家;ラジオドラマ作家;劇作家;脚本家;動画脚本家;作詩家;映画演劇評論家;文芸評論家;音楽評論家;時事評論家;医事評論家;政治評論家;経済評論家;美術評論家;スポーツ評論家;著述家;翻訳家;俳人;歌人;エッセイスト;ゲームライター;コピーライター


産業翻訳の場合だと微妙にずれちゃうような気がします。

とは言っても、実際に「業種/職種」の選択欄を見てみると書き方は千差万別で、総務省の分類どおりではありません。たとえば、外資系の某 IT 大手だと、こういう選択肢です。

1107031_2
業種は、たぶん「プロフェッショナルサービス」でいいんですが、

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職種としては、どうしても「その他」しかなさそうです。

もうひとつ、こちらは ITmedia のユーザー登録ページですが、

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これだと「専門・技術サービス業」になると思われますが、

1107034
職種はやはり「その他専門職」しかないんでしょうか。

ちなみに、冒頭に挙げた「市場規模」ですが、翻訳業界の市場規模についてググってみたら、WIP さんのこんなページがヒットしました。

リンク: 翻訳研究:翻訳業界って?/翻訳会社WIP翻訳研究所 - 高品質な翻訳サービスを提供する翻訳会社の翻訳研究機関


産業翻訳(マニュアル、契約書など各種商業文書):1000億~2000億
出版翻訳(小説などの出版物):100億程度
映画字幕翻訳(映画):10億以下


10:36 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (8) | トラックバック (0)

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2011.06.14

# OED がさっそく役に立った話

先日のエントリに書いた Oxford English Dictionary。

私の日頃の仕事で直接役に立つことは特に期待していなかったのですが、新語を 7,000 単語収録しているというのはダテじゃなかったようで、手元のほかの辞書には(FOLDOC などまで含めても)まったく載っていない単語が OED には収録されていた、というケースにさっそく遭遇しました。もちろん訳語が載っているわけではありませんが、語義が見つかるという安心感はやはり大きいものですね。

その単語については「私家版英語辞典」のほうに書きました。
私家版英語辞典@帽子屋: hacktivism

面白かったのは、この単語のページに、

110614_hacktivism_2_2


ちゃんと "Draft entry" と書かれていたこと。なるほど、という感じでした。

110614_anonymous

こちら、ソニーの人が見たら腹が立つかもしれない、アノニマスのみなさん。

05:49 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2011.06.06

# Oxford の親分

Concise Oxford Dictionary (11th)
Shorter Oxford Dictionary (6th)

を愛用していますが、彼らの親分格である Oxford English Dictionary の CD-ROM 版は、最初に出てからずいぶん長いあいだ、動作が不安定(検索ソフトがすぐに落ちる)という話だったのでずっと見合わせていました。少し前に Version 4.0 が出て安定したということ話なので、ようやく導入です。

CD-ROM 2 枚組のパッケージを開いたところ。

Oed01

右上にいる見事な山羊ひげのおじいさんが、初代編集者である言語学者の James Murray。

データはすべて HD にインストールできますが、インストール後の最初の起動時だけは、インストールディスクを入れておく必要があります。この辺は COD、SOD も同じ仕掛け。それをうっかり忘れて起動しようとしたときのメッセージ画面がこれ(日本語化してあるのは驚き)。

Oed03

「オリジナル」というのがちょっと気になりますね :P

起動してみたインターフェースがこちら。

Oed06

そこはかとない高級感が、ある? 少なくとも、フォントはいちばん読みやすい感じです。

せっかくなので、三役そろいぶみのショットを撮ってみました。

Oed05

【6/14追記】
知り合いの翻訳者さんから、これと同じ OED Ver4.0 を、Vista マシンにだけインストールできなかったという報告がありました。Vista の場合には注意が必要かもしれません。

04:11 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2011.06.04

# 英語なら音声入力もかなり簡単

去る 6 月 2 日、日本翻訳連盟(JTF)の通常総会に続いて開催された基調講演で、音声入力の現状を見てきました。講師は日英翻訳者のリチャード・ウォーカーさん。

「日英翻訳:音声認識が翻訳の生産性を変える」

昨年 9 月の JAT Project Tokyo でも同じ講演があったのですが、そのときは別の話を聞いていたので、今回はちょうどいい機会でした。

しばらく前からわかっていたことではありますが、やはり英語だと音声認識もかなり進んでいるんですよね。講師がほぼナチュラルスピードで話す英語が、目の前のスクリーンでどんどん文字として出力されていく様子は、なかなかインパクトがありました。テキスト入力だけでなく PC の制御もいろいろと可能なので、音声でコンピュータを操作するという、なかなか未来的な図でした。

デモに使われた音声認識ソフトは、Dragon Naturally Speaking という製品(Nuance 社)。

これって日本語だとどのくらいの精度なのかしら、と思って Twitter でつぶやいたら、さっそく Sakino さんからレスが来て、現在の開発・販売状況を教えてくださいました。講演を聴きながら開発元のサイトを確認したら ---

リンク: Dragon NaturallySpeaking (ドラゴンスピーチ)FAQ | 音声認識, 音声入力 | ニュアンス (Nuance)

たしかに、「ドラゴンスピーチ2005」というバージョンで開発が止まっていて、対応 OS もなんと Windows XP SP2 までという困った状況。しかも、英語版を日本語 OS 環境にインストールしようとしてもトラブるとか(Sakino さん情報)。

きっと、日本語対応まで考えると、それだけでいきなり難易度が上がっちゃうんでしょうねー。この恩恵にあずかれるのは、まだしばらく先なのかなぁ。

さて、この製品、実は iPhone/iPad 版も公開されていて(しかも無料)、ちゃんと日本語対応と謳われています。私の iPhone/iPad にもインストールだけはしてありました。

リンク: iTunes App Store で見つかる iPhone、iPod touch、iPad 対応 Dragon Dictation

で、さっそく日本語の音声入力を試してみたたころ、出力の精度は予想していたよりはるかに優秀でした。「選択したスキームが……」と読み上げたら「洗濯したスキームが~」になったりと、やはり同音異義語には困っているみたいですが、ちょっと意識して丁寧に喋りさえすれば、実用レベルになると言えそうです。

Appsstore_110604_2

このサンプルくらいの入力ならほぼ問題なく出力されます。

ただし、iPhone/iPad 版の場合は Dragon アプリケーション自身の画面にテキストが出力されるだけで、他のアプリケーションにテキストを渡してくれるわけではない。コピーして貼り付けるなり、メールとして送信するしかないので、実際に活用できる場面はまだ限られるようです。

それでも、現状のエンジンでも日本語がこれくらいの精度で認識されるというのは、なかなか嬉しく楽しい発見でした。しばらく注目していたいと思います。

【追記】
同じ講演会にいらっしゃっていたテリーさんもレポートなさってました。

リンク: 音声認識を翻訳ツールにする...JTF基調講演に出席して|翻訳横丁の裏路地

テリーさんには後から Twitter で声をかけられましたが、当日はいらっしゃることに気づかず、ご挨拶できませんでした。m(__)m

02:57 午後 翻訳・英語・ことばiPhone/iPad | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2011.05.27

# 「班長」って英語に入ってるんだ

今日のデイリー翻訳をしていたら、

honcho

ってのが出てきて、スペイン語由来? と思いながら辞書をひいたら、これがなんと、日本語の

班長

とか。びっくりしました。これを書きながらググッたところ、それなりに有名らしいのですが、私はちっとも知りませんでした。

Webster's Collegiate の定義と語源:

boss, big shot; also : hotshot
Japanese hanchō squad leader, from han squad + chō head, chief
First Known Use: 1955

COD の定義と語源:

honcho informal
noun (plural honchos) a leader.
verb (honchoes, honchoing, honchoed) be in charge of
[ORIGIN]
1940s: from Japanese hancho 'group leader'.

おもしろいと思うのは、初出年がずいぶん違うということ(SOD では M20 = 20世紀半ばとしか書かれていないのでダメですが、OED ではどう書いてるんでしょうか)。

語源と初出年をもう少し調べてみました。

ランダムハウス大辞典

[1953.<日本語「班長」;朝鮮戦争時,米国陸軍で使われた]

研究社英和大辞典

≪1947≫ Jpn. 班長

Oxford Dictionary of Modern Slang(オンライン版):

1: A leader or manager, the person in charge, the boss. (1947 —) .
2: To be in charge of, oversee. (1964 —)

ランダムハウスに書かれているように、朝鮮戦争(1950-53)の頃からというのはありそうな話です。Webster's Collegiate の「1955 年」というのもたぶん同じことでしょう。であるとすれば、米軍基地で日本人が口にする単語を米兵が聞きかじったということでしょうか。ちなみに、こちらのサイトではもっと具体的な話が書かれています。

Honcho. 朝鮮戦争時、非常に技量の高いMiG-15のパイロットを国連軍が呼称した通称。

ところが、研究社大英和や Oxford 系にははっきり「1947 年」と書かれていて、そうなると朝鮮戦争より前の、おそらく GHQ 駐留時代ということになります。

現実的な話としては、GHQ 時代から、集団としての日本人がいつも「ハンチョー」を中心に機能的に動いているのを見て、戯言的にそれを真似するようになり、朝鮮戦争の頃にはかなり広まったといったあたりでしょうか。

ひょっとしたら、終戦より前の時点ですでに、捕虜になった日本人集団の中で「ハンチョー」という言葉が聞かれていたのではないか、とも想像してみるのですが、1945 年より前というデータはなかなか見つかりません(こんな記事はありましたが)。

日本人集団の統率者を表す言葉として伝わったのが「班長」だった --- というその事実が、なんだか日本人というものの性質を如実に表しているという気がしないでもありません。日本人が集団として実務能力を発揮できる最大の単位が、実は「班長」に率いられた「班」までであって、それ以上に大きい組織はもううまく機能しない。

そんなことを考えていて、ふと思い出した映画があります。

ロン・ハワード監督の初期作のひとつ。アメリカに進出する日本企業を描いた、私はなかなかの傑作だと思うのですが、日本では劇場公開されなかったんですね。

08:24 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (6) | トラックバック (0)

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2011.05.20

# なんでも「マイ」「マイ」

「マイミク」って言い方が好きじゃないなぁ、とこのブログに書いたのはもうずいぶん前のことになりますが、SDL で登録ユーザーがログインしたページは、なんだかもっとヒドいことになってました。

110517_my

「マイ注文」くらいならともかく、「マイ詳細情報」ってかなりおかしいし、「マイ認定およびトレーニング」となったら、何が何だかもう......。

原文が My... だからって、何でもかんでもこんな風に処理しちゃうのは、一種の

翻訳放棄

でしょう。

05:44 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2011.05.18

# 日本語と機械翻訳

いろいろな形で機械翻訳との関わりは避けて通れないようですし、純粋にテクニカルな話としては個人的に興味もある分野なのですが、今朝ふと、日本語がそもそも機械翻訳には向いていないのかもなぁと思いました。

それは、

漢字
ひらがな
カタカナ

と 3 つも文字の種類があって、、それらが並んでできあがる文とか文章では、「見た目」という要素が意味に劣らず重要だからです。

漢字、ひらがな、カタカナの分量のバランスしだいで、読みやすさや文体(文章の硬度とかまで含めればなおのこと)はかなり変わってきますし、文字の並び方だけでもずいぶん様子は違ってきます。

これは別に文芸翻訳に限ったことではなく、産業翻訳だって当たり前の話です。

たとえば、

「実際にはもちろんそうではなく...」

と書くのと、

「もちろん実際にはそうではなく...」

と書くのでは、語順の問題を別にしても、「ひらがなの続き方のバランス」が違います。この前後での文字種の並び方によって、どちらが適切かは変わるかもしれません。

一方、機械翻訳というのは、あくまでも「意味を等価に保ちつつ他言語に置き換える」処理にすぎません。アルファベットしかない言語世界ではそれでもいいかもしれませんが、文字種の選び方や並び方が大きな要素となる日本語をターゲット言語にする場合、かりに意味を等価に保てても --- それすらもまだまだ前途多難ですが ---、いろんなものが切り捨てられてしまう可能性があります。

……なんてことは、機械翻訳の現場の人はとっくに承知なのかもしれません。切り捨てられる部分があっても、意味の置き換えが成立すればいいという分野や文種はたしかに存在します。だから、機械翻訳がもっともっと進歩して、そういう分野に浸透しきっちゃうほうが、実は翻訳者にとっては幸せなのかもしれません。

03:10 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2011.02.11

# 第9回翻訳環境研究会 - 牧野一成さん

2/8 に開かれた、JTF の第 9 回翻訳環境研究会に行ってきました。

講演者の牧野一成さん(以下、ポールさん)は、昨年の 9 月に JAT Project Tokyo の前夜に初めてお会いしたばかりなのですが、Twitter 翻訳クラスタの常連なので、実際よりずっと身近に感じていた方です。でも、そのときは Twitter 名刺しかいただかなかったので、ポールさんがヤン坊マー坊の中の人だったとはちっとも存じませんでした。

講演の概要: 「ヤンマーのマニュアル翻訳者が語る、翻訳の実情と翻訳者の役割」

当日は、やはりオンラインでだけ以前から知っていた他の翻訳者さんともお会いすることができました。ポールさんの講演の詳しい内容は、そのなかの一人、"テリー"斉藤さんがかなり詳しくブログに書いてくださったので、ぜひそちらをご覧ください。

リンク: JTF主催:第9回翻訳環境研究会に出席して|翻訳横丁の裏路地

それから、当日の実況ツイートもこちらにまとめられています。

リンク: Togetter - 「2010年度第九回翻訳環境研究会」

いわゆる産業翻訳者を、分野ではなく仕事の形態から大きく分けると、

- フリーランス(在宅翻訳者)
- 社内翻訳者

という 2 種類になることはわりと知られています。私のように、この両方を経験している人も少なくはないでしょう。ただし、ここで言う「社内翻訳者」は「翻訳会社の社内翻訳者」を指すことが多く、ポールさんのように「企業の社内翻訳者」という立場の翻訳者さんがいることは、意外と知られていないかもしれません(翻訳関係の雑誌やムックでもあまり紹介されていないようです)。

翻訳業務の流れとしても、「ソースクライアント → 翻訳会社 → 翻訳者」という流れが一般的で、ヤンマーのような大企業は、この流れの中で言えば「ソースクライアント」に位置することになり、その中にある翻訳部門というのは、思いのほか実態が見えてこないものです。

ポールさんが所属する YTSK(ヤンマーテクニカルサービス)というのは、ヤンマーという巨大なグループ企業のドキュメント部門なわけで、そういう "組織内組織" で働くというのはきっと、私のようなお気楽フリーランスには想像もつかない縛りとかしがらみがあるのだと思います。

翻訳メモリーの使い方にしても、私たちのように「発注元からメモリーが来て、それを前提に作業する」のではなく、各言語ばらばらに存在している過去の資産をいかに効率的に利用するか、という発想で「運用」しなければならないのは、けっこうしんどいことでしょう。

それでも、単に「請け負い仕事」としてではなく翻訳やドキュメンテーションという業務に携わっているという自負が、ポールさんご自身からも、プレゼンテーション内容からも感じられました。

「ただのブローカーでしかない翻訳会社もある」、「いろんな翻訳会社が営業に来るが、売り込み内容にほとんど違いを感じない」などとかなり手厳しい指摘ができるのも、それだけ社内の態勢がしっかりしていることの証だと私はとらえました。

ヤンマーほどの大企業ならではと少し羨ましかったのは、入社後の研修時代、工場に行って実際に組み立て作業などを経験できたというお話。ネジを扱う動詞ひとつにしても、remove と pull out(だったかな?)はどう違うか、感覚的に理解できたとか。

最後の質疑もけっこう盛んだったので、私自身が聞きたかったことは聞きそびれてしまいました。STE(Simplified Technical English)の導入がこれだけ進んできたら、ゆくゆくは機械翻訳にもかなり対応できそうに思ったのですが、機械翻訳に(全部ではないにしても)移行するという予定はあるのでしょうか?

私自身、フリーランスとしてちょうど丸 4 年が経ち、翻訳というものにこれからどう関わっていくのか、いろんな意味で考え直さねばならない時期にきていると感じているところです。その意味でも、今回の環境研究会は実にいい刺激になりました。

以下、おまけです。

リンク: ヤン坊マー坊 ヒストリー | ヤンマー株式会社

08:24 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2011.01.19

# ローカリゼーションと翻訳の乖離

side Trados で昨年末に書いたように、昨年 12 月 13 日の翻訳祭には、ローカリゼーションソリューションに関するパネルの一員として参加しましたし、ふだんから side Trados のようなブログも書いているので、どちらかと言うと「ローカリゼーションソリューション推奨派」みたいな位置にいるようにも思われているかもしれませんが、もちろんそれほど単純な話ではありません。

「ローカリゼーションって何?」というそもそも論もなくはありませんが、大雑把に言うと「翻訳はローカリゼーションの一部」ということになっています。そして、誤解を承知のうえであえて言っちゃいますが、最終的に

ローカリゼーション業界は翻訳ゼロを志向している

のだろうと思います(翻訳者が不要というのとは完全にイコールではないでしょうが)。そう感じるきっかけとなった事例を、side Trados に書いてみました。

side TRADOS: Idiom に見るローカリゼーションツールの実例

Idiom(Desktop Workbench)って、ほんっと嫌いなんですよ。

ちなみに、「翻訳者」としての自分のスタンスを、私は今こんな風に考えています。

(なかば趣味として)翻訳支援テクノロジーやローカリゼーションソリューションにはおおいに興味があり、(実際の稼業としても)そうした技術を主に利用する立場にいるが、(本質的なところでは)翻訳という営みの根幹に触れていたい。

02:08 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.12.26

# 増殖しているのか、May you your happiness ?!

年賀状を書く季節になったからだろうと思いますが、拙ブログへのアクセスログを見ていたら、例の

"May you your happiness of this year"

を検索した方がいらっしゃいました。以前取り上げたのは、私が退職してフリーランスになろうとしているときのエントリでした(# こんな賀状はいやだ)。

何度でも言いますが、これ

英語になってません

から、こんなキテレツな文字の並びを人に送るのは今すぐやめましょう。

ほぼ 4 年前になる前エントリでは、

ググってみると、なんとこれが 100 件以上もヒット。もちろん全部、日本人のサイト

と書きましたが、Google 先生によると、今では「約 17,600 件」になっているそうです。Google のシステムが変わっている可能性が高いので一概には言えませんが、珍妙 Engrish が増殖している気配です。

なかには、「英語になっていない」と指摘しているものもありますが(Yahoo! 知恵袋)、それはほぼ例外的。同じ知恵袋には「今年もあなたに幸福あれって意味です」という回答もあがっていますし、個人ブログになると惨憺たるもの。

特にひどいのは、例文紹介サイトやテンプレートサイトなどがこの害毒を広げていること。たとえばこちら。

「May You Your Happiness of this Year 2011」 | 年賀状2011:クラフト&シック | 無料ダウンロード | マイミーオ・オープンテラス | ブラザー

ブラザーさん、

恥ずかしいですから、今すぐ引っ込めましょう。

もし、この英語が実は正しいんだ、という情報をお持ちの方がいらしっゃいましたら、どうごお知らせください。私もこのエントリを書くに当たって手元の辞書をひととおり確認しましたが、このような例文は確認できていません。

12:41 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2010.12.25

# まじめな翻訳の話 - 前置詞(承前)

1 か月以上も間があいてしまいましたが、前回のエントリ(# まじめな翻訳の話 - 前置詞)で、前置詞 for の話を書きました。

今回は前回取り上げた例より粗悪な、しかし実際にはかなりよく見かけるパターンを紹介します。

You can select the system name from the drop-down list for future tests.

前エントリは、なんでもかんでも「~ために」ではつまらないという話でしたが、実はそれよりたちの悪いのが、やたらと「~用」と訳すパターン。

以降のテスト用にドロップダウン・リストからシステム名を選択することができます。

これはどういうことかと言うと、要するに for 以下がどこに掛かっているか、ちっとも考えていないわけですね。"from the drop-down list" という句が割り込んでますが、それをどけて、"the system name for future tests" と理解すれば、「今後のテストのためのシステム名」→「今後のテストに使うシステムの名前」となるはず。

もちろん、この既訳例は機械翻訳ではなく人間翻訳による出力結果です。

最近何度も書いているように、機械翻訳は今後数年のうちに急速に浸透する(少なくとも特定の分野では)と思われますが、このレベルの人間翻訳がまずまっさきに取ってかわられるでしょう。ただし、「~用」で済ませる程度の翻訳品質をクライアントが許容するのかしないのか、という次元の問題はちょっと別だろうと思います。

01:58 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.12.16

# side Trados 更新情報(12/16) - 翻訳祭関連

JTF 翻訳祭についての報告を、続けて 3 エントリ、アップしました。

リンク: 禿頭帽子屋の独語妄言 side TRADOS: 20周年記念 JTF 翻訳祭 - ご報告
リンク: 禿頭帽子屋の独語妄言 side TRADOS: 20周年記念 JTF 翻訳祭 - 公式ツイートの試み
リンク: 禿頭帽子屋の独語妄言 side TRADOS: 20周年記念 JTF 翻訳祭 - C3&4セッション

当日は、面識のある参加者の方もたくさんいて、それぞれお話ししたいことがたくさんあるのにそれが適わない、というのが残念でした。

ところで、今回の翻訳祭、全体としては大盛況でしたし、

翻訳で切り拓く日本の未来~需要開拓と新技術~

という全体テーマに沿って、どのセッションも成功だったと思うのですが、イベントとしてはいろいろとご指摘があるようです。たとえば、これとか。

リンク: ママは社長・社長は外国人 ~ Musings of a Working Mother:JTF翻訳祭~イベントとしての感想

JAT と JTF は組織としての性格がかなり違うので、単純な比較はもちろんできませんが、「参加者を歓待する」というスタンスをもう少し持ってもいいように思いました。

03:54 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.12.01

# IT翻訳者必見 - 河野弘毅さんのブログ

私なんぞより、はるかに IT 翻訳業界に詳しい --- 表から裏まで精通している --- 河野弘毅さん。産業翻訳業界の有名人です。

その河野さんが、ご自身のブログで過去に発表なさった資料を一気に公開してくださいました。IT 翻訳業界にすでに携わっている人も、これからこの業界に入ろうかと考えている人も必見です。

リンク: smallmedia.jp 言語技術を考える

特に「IT翻訳入門1999」のセクションはお奨め。10 年以上が経過しているので一部には現状に合わない点があるかもしれませんが、ほとんどは今でも変わっていない話ばかり(のはず)です。私も未読の話がたくさんあるので、これからじっくり読ませていただこうと思います。

河野さん、12 月に入っていよいよご多忙なはずなのに......

04:14 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.11.14

# まじめな翻訳の話 - 前置詞

たまにはまじめな翻訳の話もするのでした。

私は翻訳学校というものに通ったことがないし、教えたこともないので、具体的な翻訳テクニックとしてどんなことが教えられているのか知らないのですが、前置詞の扱いはもちろん重視されているのだと思います。

なんでこんなことを書いているかというと、たまたま前置詞の訳し方が問われそうな、しかも判りやすい例にちょうど遭遇したからです。

The key difference between them is that AAA was designed for ease of use, while BBB was designed for high performance.

こんなとき、2 つある前置詞 for をどちらも「~ために」と訳して済ませている訳文も少なくありません。というか、マニュアルやヘルプにはそんな訳文があふれています。

大きな違いは、AAA が使いやすさのために設計されたのに対して、BBB は高パフォーマンスのために設計されたという点です。

for の後ろが名詞句なら、「~用」なんて訳も定番です。上の例なら、「高パフォーマンス用」とか。

こういうときの前置詞は、その辞書的な意味を訳出するだけでもだいぶ違ってきます。この場合の for は、意図・目的のはずですから、「使いやすさを目的として~」とか「パフォーマンスの向上を意図して~」とか、そんな風に

前置詞の語義をフレーズとして訳出する

わけです。

もう一歩進めて「使いやすさを前提に設計された~、高パフォーマンスを優先して設計された~」などとしてもいいでしょう。

こんなこと、現役の翻訳者さんならほとんど無意識にやっていそうなのですが、実際の(機械翻訳ではない)マニュアルやヘルプでこの手の訳文が珍しくないところを見ると、そうでもないのでしょうか。それとも、マニュアル/ヘルプだと、翻訳メモリー上の統一という制約があって、なんでもかんでも「~のために」、「~用に」としているのでしょうか。

最近たびたび言ったり書いたりしてますが、「~のために」とか「~用に」ばっかりで済ませてオーケーの世界は、そう近くない将来、機械翻訳にとって代わられます。統計ベースなら、ここで「工夫」としている訳し方でさえ、機械でこなせるようになるかもしれません。

ここしばらく、「機械翻訳に代用され得ない翻訳とは何か?」というテーマが頭を離れません。ついまじめな話を書いてしまったのは、たぶんそのせいでしょう。

02:33 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (10) | トラックバック (0)

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2010.11.08

# 見れる、見られる

ら抜き言葉、をマジメに論考するわけではもちろんなく、面白いところで見つけたよという話です。

講談社漫画文庫から、少年マガジン連載版の『ゲゲゲの鬼太郎』(全5巻)が出ています。

連載当時の紙面がそのまま収録されているので、扉ページや最終ページの枠外の文字や、当時の広告までそのまんま掲載されています。

これが、記念すべき連載第1回「手」の見開き巻頭ページの右半分。

101108_gegege_1

枠外右に、「ほかでは、ぜったい、見られない怪奇まんがの決定版!」と書かれています。これが、「吸血木」という回から、扉絵の上に定着します。

101108_gegege_2

「ほかではぜったい見られない、怪奇まんがの決定版!」(読点の打ち方も変わる)

ちなみにここに出てきている妖怪は「のびあがり」。目玉おやじのご先祖でも、西洋妖怪の親玉バックベアードでもありません。

これが、吸血鬼エリート編の第2回で、こうなってしまいました。

101108_gegege_3

「ほかではぜったい見れない怪奇と幻想の異色まんが!」

テンプレートで毎回使い回しかと思ったら、編集さんがちょっとずつ書き換えていたらしく、このときは偶々ら抜き言葉が入ってしまったようです。そして、これをやらかしてしまった若手編集者にお叱りが飛んだのかどうか、次の会でまた直っています。

101108_gegege_4

「ほかではぜったい見られない怪奇と幻想の異色まんが!」

まあ、どうでもいいような話なんですけど、昭和40年代というけっこう古い時代の資料としてあげておきました。

水木しげると言えば、ドラマ『ゲゲゲの女房』は翻訳者さんの間でもだいぶ評判がよかったそうで、私は未見ですが、映画版の予告編はかなりそそられます。

04:51 午後 翻訳・英語・ことばアニメ・コミック・サブカル | | コメント (6) | トラックバック (0)

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2010.11.06

# side Trados 更新情報(11/6) - SDLサイトの不思議な翻訳

side Trados に書いたとおり、SDL さんが Trados Studio の SDK を公開するプログラムを始めました(ベータ)。

禿頭帽子屋の独語妄言 side TRADOS: SDL OpenExchange Beta - なるほど、そう来たか

戦略としては間違っていないと思いますが、あいかわらずサイトの翻訳は不思議な状態です。

SDL さんのサイトって、ヘンテコな翻訳は多いのですが、だからと言って機械翻訳ということではないようです。ちょっと試してみました。

英語ページ: Start developing applications for SDL Trados Studio 2009

101106_sdl_1_2


この部分を Google 翻訳した結果。
101106_sdl_2_2


実際の日本語ページ: Start developing applications for SDL Trados Studio 2009

101106_sdl_3_2

Google 翻訳では、application が全部

「アプリケーション」

になっちゃっています。驚いたことに、これをやっちゃう人間の翻訳者さんも実際いたりするのですが、SDL さんサイトの不思議なところは、"Partner Application Form" が「パートナー登録フォーム」とちゃんと訳されているのに、その後の 2 か所ができていないこと。

When your application is successful we will be in touch directly to provide everything you need to begin creating your applications.

アプリケーションの評価が高い場合、SDLは直接そのアプリケーションにアクセスし、アプリケーションの開発に必要なリソースを提供します。

しかも、余分な「アプリケーション」まで追加されていて、何が言いたいのかまったく通じません。

09:09 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.11.02

# 河野一郎先生 - 30年ぶりの授業

「ほんやく互学会」という、翻訳者の勉強会があります。私も一昨年から参加しており、今年が 3 年目になるのですが、今年はメンバーの一人の発案で、翻訳家の河野一郎先生をお呼びして授業していただく、という趣向でした。

ほぼ 30 年ぶりにお会いした河野先生。最初はさすがに老けたという印象で、正直に言うとちょっと不安を感じてしまったのですが、いざお話を始められると、今年 80 歳というご高齢をまったく感じさせないほどの闊達、洒脱ぶり。記憶にあったお姿、話しぶりと少しも変わりませんでした。

テキストに選ばれた文章も、私としては不思議なご縁を感じる作品でした。

お話の最後には、先生が 17 歳のときにゴールズワージーを翻訳したという原稿用紙の束を特別公開してくださいました。数え切れないほどの推敲の跡を残したその原稿が、当代随一と断言していい翻訳家・河野一郎の原点だったのでしょうか。

その翻訳が日の目を見たのはごく最近のことです、と語り、「文芸翻訳、まして私がやっているような純文学はもう売れませんけどねぇ」と言いながら紹介なさったのが、この本です。


さて、この日の教材になったのは、Agatha Christie の "Philomel Cottage" と John Braine の "The Crying Game"。"Philomel Cottage" のほうは、Christie 作品としてはそれほど有名ではない(と思う)短編ですが、それでさえ、河野先生ご自身の訳も含めて、和訳は片手で足りないくらいの種類が出ています。

かたや、John Braine のほうは、おそらく日本ではほとんど知られていない --- 日本語版 Wikipedia にも載っていない --- 作家で、かく言う私も、これから述べる経緯がなければまず知ることはなかったと思います。

今回この 2 作品が教材として取り上げられたことに、私は英語指導における不思議な系譜を感じざるをえませんでした。

私には英語の恩師がいたと以前書きました(♭恩師の英語指導)。その恩師も、授業では Christie を使いましたし、何より、この先生のもとで初めて読んだ現代英文学が、John Braine の処女作 "Room at the Top" だったのです。

当時高校生だった私が、それをまったく面白いと思えなかったことは言うまでもありません。もったいないことをしました。

その頃、私の恩師も河野先生の授業を受けた後だったはずで、この日先生にお尋ねしたら、 "Room at the Top" を授業の教材にしたことが確かにあったそうです。

そう考えると、恩師はきっと、当時大学で受けたばかりの英語指導をそのまま --- ただし自分なりのノウハウを加味して --- 私に伝えようとしていたに違いありません(その証拠に、生成文法の専門書とかまで教材になっていました)。時を経るごとに、恩師の偉大さを実感するばかりです。

そんなわけで、これほど素晴らしい二人の英語人の指導を受けていながら、それをきちんと活かすことのできなかった我が身の無能を、改めて実感した日でもあったわけでした。

09:41 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.10.27

# side Trados 更新情報(10/27) - Google翻訳の脅威/驚異

前回の記事では Google 翻訳をネタにしてしまいましたが、実際には Google 翻訳の実力が驚くべき水準に達しているということが、SDL Trados Studio 2009 の機械翻訳機能を試してみて実感できました。

禿頭帽子屋の独語妄言 side TRADOS: Studio 2009 - 自動翻訳の実力

ほんの数年前までの機械翻訳の水準から考えれば驚異的と言えるレベルであり、IT 翻訳者にとって、そして IT 翻訳業界にとっても、まちがいなく脅威となる存在になったと断言できます。

マニュアルやヘルプの翻訳だけを漫然とこなしていたら、下手をするとあっという間に仕事がなくなる、もはやそういう危機的な状況と言っていいと思います。

03:03 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2010.10.24

# あいかわらずトンチンカンの多いGoogle翻訳

技術的に志向している方向はおもしろいのに、まだまだ現状が伴っていないGoogleさんの翻訳。その例をまたひとつ。

101024_google_2

これ、Crowdsourcing を検索した結果から表示された英語版 Wikipedia の自動翻訳ページで、左カラムに表示される他言語ページへのリンクなんですけど、「簡体中文日本」とか「検索高度」とか、わけわかりません。特に、

ディスカウントホテルの概要

ってのがまったく意味不明です。原語に戻してみると、

101024_google_1_2

この並びを見ると(翻訳ページのマウスオーバーで原語を表示しても判りますが)、

Español → 簡体中文日本
Nederlands → ディスカウントホテルの概要

なんですが、どっかに、Nederlands っていうディスカウントホテルがあるのかしら。いや、そもそもそディスカウントホテルって何?

11:34 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.10.19

# 翻訳(者)川柳だぁ

Twitter で、翻訳クラスタのみなさんが、はじけてしまいました。

リンク: (2) Twitter / Search - #trans_senryu

みんな、ふだんからよほど(......以下自粛)

11:14 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2010.10.17

# わしらは「自由な槍」

ご本人の人柄といい、ブログの文体といい、最近私が敬愛してやまない同業者の一人、sagtran さん。昨日 10/16 のエントリーにかなり感動しちゃったので、ご紹介します。

リンク: 七転八倒バナナ: フリーランス翻訳者について

フリーランスの語源は、傭兵団にも入らずひとりで戦う兵士。

こんな素晴らしい話を、迂闊なことに今まで知りませんでした(自分であまり "フリーランス" と名乗っていないせいかも)。

"free lance" ですよ。実にカッコイイ響きです。

101017_lance1_2

ちょっと違いました m(__)m

101017_lance2

こんなイメージですね。

ちなみに、英語版 Wikipedia では、Freelance の語源がこう説明されています。

The term was first used by Sir Walter Scott (1771–1832) in Ivanhoe to describe a "medieval mercenary warrior" or "free-lance" (indicating that the lance is not sworn to any lord's services, not that the lance is available free of charge). It changed to a figurative noun around the 1860s and was recognized as a verb in 1903 by authorities in etymology such as the Oxford English Dictionary. Only in modern times has the term morphed from a noun (a freelance) into an adjective (a freelance journalist), a verb (a journalist who freelances) and an adverb (she worked freelance), as well as into the noun "freelancer."
(太字は引用者)

ただ働きする意味の "free" じゃないんだからね、と。


10:51 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2010.09.30

# SDL MultiTerm 2009 ヘルプの誤訳

side TRADOS で 、今までほとんど取り上げてこなかった MultiTerm に関するエントリを書こうとしていろいろと操作しましたが、途中でまたトンチンカンな翻訳に遭遇しました。

何度も言いますが、SDL さんは 翻訳会社でもある わけで、そういう会社が出している製品として、この水準の翻訳ってどうなんだろうと思ってしまいます。

いろいろなファイル形式から、MultiTerm にインポートできる xml ファイルを生成するウィザードの途中です。

Mtermconvert5_3

ここで[ヘルプ]を参照すると、こんな説明が出てきました。

[使用可能なカラム ヘッダー フィールド]のリストから、指定するフィールド タイプを持つフィールドを指定します。

どうにも要領を得ないので、いつものように英語版ヘルプを見てみると、こう書かれています。

From the list under Available column header fields, select the field whose field type you want to specify.

まあねぇ...... 所有格関係代名詞の使われている節で、「~を持つ」という訳し方を使える場合も、そりゃありますけどね。これはかなりヒドいでしょう。

左側のリストからフィールドを選択して、それに対して右側でタイプを選択するんだから、「フィールド タイプを持つ」じゃ、まるで意味不明です。

この「インデックス フィールド」についてヘルプを調べていると、たとえばこんなの訳文も出てきます。

SDL MultiTerm では、選択した原文言語の用語がインデックスとして使用され、用語ベースのデータの並べ替えと検索が行われます。

原文はこう。

MultiTerm uses the specified source language terms as an index to sort and search the termbase contents.

index の直後の to 不定詞の訳し方を完全に間違えているせいで、インデックスというもののはたらきがよく判らない訳文になっています。

07:15 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.09.13

# JAT Project Tokyo 2010 と前夜(前日)祭

先週末の 9/11、JAT(日本翻訳者協会)が主催する Project Tokyo に初めて参加しました。

リンク: PROJECT Tokyo 2010

最近私が出没している JTF(日本翻訳連盟、社団法人)が、どちらかというと翻訳会社などの法人会員中心であるのに対して、JAT はその名のとおり個人翻訳者がメインで、しかもその多くが非日本人。団体の性格がこのように大きく違うので、イベントの様子も、その後の交流会の雰囲気もまったく違い、実に新鮮でした。

おまけに、その前日の 9/10 には、Project Tokyo に参加する各地の翻訳者さん(主に Twitter の住人たち)が集まるというので、昼間は横浜中華街で飲み食い、夜は渋谷でパーティと、ほぼ丸二日もたくさんの翻訳者さんたちと出会うことができました。

マルチセッション形式で私が参加したのは、

1. 煙のないところに火を起す "Pulling Jobs out of Thin Air"
 (松尾譲治さん)

2. What to Look for in Translation Memory Software
 (Charles Aschmann さん)

3. Felix Computer Assisted Translation (CAT) System
 Ryan Ginstrom さん

4. 翻訳者のためのオフィス環境アセスメントと健康アドバイス
 Yuno Dinnie さん

詳しい内容はまた改めて書くと思いますが、それぞれ有益な情報を得ることができました。セッションと言っても堅い感じがなく、非常にブロークンというか、日本で見られる典型的なセミナーと違って「参加者を楽しませよう」という空気が強く感じられました。ランチ時間には、ランチリーダーという役割の人が 10 数人ずつのグループを率いて飲食店に案内するというシステムも、その性格を反映しているようです。

昼間のセッションの合間でも、夜の交流会でも、英語と日本語の両方が当たり前のように交錯するという場に居合わせたのも、かなり久しぶりで、そのこと自体が最近の私には非常に楽しい経験でした。

昨今あまり明るい話題のない翻訳業界ですが、Project Tokyo ではずいぶん元気をもらったような気がします。

10 日昼間の中華街オフ(参加者は 10 数人)は、私がどちらかというと闖入者だったかもしれないと後から気づいたのですが、かなり図々しくお邪魔して楽しく過ごさせていただきました。みなさん、ありがとうございます。

10:44 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.09.05

# 「うんのさんの辞書」V5 発刊記念パーティー

7/20 のエントリでお知らせしていた、『ビジネス技術実用英語大辞典V5』発売記念オフ に行ってきました。

総勢 30 人ほどの立食パーティーは、海野さんご夫妻と、主催者 Nest さん(Nest Co. Ltd.)のお人柄、そしていつものことですが、集まった翻訳者さんたちの "おしゃべり好き" のおかげで、時間の経過も忘れるほど盛況のうちに過ぎていきました。

当日はその場で新版の即売もあったので、もちろん私もその場で購入し、しっかりご夫妻のサインをいただきました。

いずれ Amazon などでも購入可能になるそうですが、現在はこちらのサイトから。
Project-Pothos.com

海野さんご夫妻にお会いするのはもちろん初めてでしたが、ご夫君の文男さんが終始にこにこ顔でいらっしゃったのが特に印象的でした。夫婦が揃って登場するとき、男性のほうが曇りのない笑顔でいられるというのは、両者が良い関係にあるに違いないと思うからです。

もっとも、そういう関係でなければ、これほどの辞書を作り上げるという共同作業ができるはずはないんですが。

私が直接ご挨拶した際には、7 月に書いた私のエントリをご覧になったとおっしゃっていただき、面はゆい限りでした。

ご夫妻のお話によると、今回の版を「第 5 版」ではなく「V 5」と称したのは、ひとつには今までのように日外アソシエーツからではなく、ご夫妻の会社から販売するようになったその節目の意味。もうひとつは、今後マイナーバージョンアップとして V5.1 などを提供できるかもという布石、なのだそうです。

「うんのさんの辞書」が生まれるまでの経緯については、ぜひ初版の序文(ビジネス技術実用英和/和英大辞典 序文、初版の序文はいちばん下にあります)をご覧いただきたいのですが、今回の改訂でも、お二人は 2 年間、本来のお仕事を投げ出して作業に当たったのだそうです。

ご夫妻の尋常ならざる情熱と多大なるご労苦が生み出した成果を、これほど手軽に使わせていただける、そのことに改めてお礼を言いたいと思います。

末筆ながら、このようなオフ会を企画・開催してくださった Nest さんにも心よりお礼を申し上げます。

02:41 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (2)

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2010.08.31

# 電子ドキュメントに「索引」は必要か

side Trados の 4/14 付と 5/4 付のエントリで、冗談みたいにたくさん索引マーカーが並んでいるショットをご紹介しまた。

Traimk2

こんなのです。

念のために解説しておくと、索引マーカーというのは、FrameMaker ドキュメントなどのファイルで、索引のジャンプ先つまり本文の該当箇所を示す印です。これに対応する索引エントリを翻訳しておけば、索引が一括生成され、そこからマーカーの位置にリンクする索引が出来上がります。

さて、「目次」と「索引」って、紙のドキュメントには当たり前のように存在するものですが、電子ドキュメントでその存在意義ってどうなんでしょうね。

目次のほうは、ドキュメントの内容や構成を把握するために、あるいは必要な情報(のありそうなところ)にたどり着くために、まだ意味がありそうに思います。でも、索引というのは、キーワードを決めてその出現箇所を見つけるという機能ですから、検索機能があれば足りますよね。

FrameMaker などの DTP ソフトは、もともと紙ドキュメントの出力を前提にしたアプリケーションなので、索引という遺産をなんとなく引きずってるだけだと思います。

何が言いたいかというと、翻訳しているとき、文中にどんどん割り込む、ヒドいときには単語さえ分断してしまう

索引マーカーが邪魔

なんだよー。


01:41 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.08.21

# 固有名詞のカタカナ表記はいつもたいへん

少し前になりますが、Buckeye さんが、ご自身の最新の翻訳書についてエントリをお書きになっています。

リンク: 『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』-誤訳の指摘: Buckeye the Translator

誤訳として指摘された点のひとつが、"Unleashes Leopard" という表現。

unleash という比喩的な表現が厄介なのはもちろんですが、Leopard という固有名詞(Mac OS の通称)のカタカナ表記も焦点になっています。Buckeye さんは訳文の中で「レオパード」としましたが、アップル社のサイトでは「レパード」と表記されているそうです。

で、慰めにも反証にもならないのですが、先日発売された『電脳なをさん Ver.1.0』を見ると、少なくとも Mac ユーザーの間では表記がゆれていたこともあるようなので、一応ご紹介しておきます。

唐沢なをきは、自他共に認める Mac ファン、というか Apple フリークなので、この例を Mac ユーザーの代表とすることは、それほど無理がないでしょう。

以下、画像は無断引用です。

Leopard1

こちら、週刊アスキー 2007 年 6 月 19 日号掲載の Vol.550 では、「豹」という漢字に「レオパード」というルビが振ってあります。

ところが、2007 年 11 月 20 日(Vol.571)になるとこうなります。

Leopard2

「レパード」ですね。この頃アップル社がこのカタカナ書きに決めたのでしょうか。これ以降は「レパード」になっています。

01:50 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2010.08.07

# Undo/Redo の訳語

今さらのようですが、ふと気づいたのでさっそくエントリにしてみました。

たいていの アプリケーションの[Edit](編集)メニューには、[Undo][Redo]のコマンドがありますね。

直前の操作をなかったことにするのが Undo、直前の操作をもう一度繰り返すのが Redo。英語ではごく単純なのですが、これの日本語訳は、今でもあまり固定されていないようです。

おそらくいちばん多いのが、Windows OS でおよそ標準になっているらしい組み合わせ。

Undo = 元に戻す
Redo = やり直し

OS によって違いはあるかもしれませんが、Word や Excel もこのパターンです。Trados TagEditor も、おそらく Windows に合わせたのだと思いますが、同じ組み合わせです。そのほか、手元にあるいくつかのフリーウェア、シェアウェアもみな同じです。

ふと気になったというのは、実はこの組み合わせなんですよ。英語ではどちらも動詞でそろっているのですが、日本語では

品詞が対応してない

じゃないですか。「元に戻す」を名詞にはできないから、きちんと対にするなら、

元に戻す
やり直す

にしたいでしょう。いったん気づいちゃうと、どうにも落ち着かない。

Mozilla Firefox はちょっと変わっていて、

Undo = 元に戻す
Redo = 繰り返し

ですが、これもやっぱり対になっていない。どうして「繰り返す」じゃないんでしょう?

ちょっとおもしろかったのは秀丸エディタのインターフェース。

やり直し
やり直しのやり直し

こちらは国産アプリケーションですから、訳語ではなく作者が最初から考えた用語ということになりますが、判るような判らないような......。「やり直し」ってどっちなんだか。

Windows とは違う土壌で生まれた iTunes の Windows 版では、

取り消し
やり直し

となってますが、これは英語版を確認していないので何とも言えませんが、少なくとも品詞がそろっていてスッキリします。

【追記】
このエントリを Twitter でも通知したら、さっそくマスナガさんからご報告がありました。

Twitter で連携アプリ(HootSuite みたいなアプリのこと)を使っている場合、連携アプリが Twitter にアクセスしていることになるので、その連携 = アクセスを解除するコマンドがあります([設定]→[連携アプリ])。

Revoke Access = 許可を取り消す

これを一度押すと、

Undo Revoke Access

というコマンドに変わりますが、その訳語はこんなでした。

Twitter_100807

たしかに、Undo の訳は難しいんですけどね。

05:15 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2010.07.28

# お粗末なローカライズ - IBM の事例

「IT 翻訳者の疑問」で指摘されているように、IBM の一部のページがヒドいことになっています。

リンク: [変な日本語]IBMの日本語Webページがまともにローカライズされていない件 - IT翻訳者の疑問

一応日本語にはなっていますが、句読点がどうみても中国語のものだし、漢字の書体も変です。ページのソースを見たら、lang="zh-TW"になってました。これで日本語にローカライズしたといえるのかなあ。なぜ日本人がこんな書体の日本語を読まないといけないのか。何だか馬鹿にされているような気分にすらなります。

こういう状況を放置しておくと、「ローカライズ(翻訳を含む)なんて、コストをかけずに適当にやっとけばいいんだもんね」的な風潮が助長されることになるので、おかしなサイトを見かけたら、どんどん不備を指摘すべきですね。

そう考えて、さっそくこのページの「フィードバック」からコメントを送信しようとしたのですが、さらに呆れる結果となりました。

こちらが問題のページです。
IBM Publications

こんな風に手短なコメントを書いて投稿しようとしたら......

100728_ibm_1_2

なんと、こんなエラーメッセージが出て拒否されてしまったのでした。

100728_ibm_2_2

「特殊文字」が含まれているとは考えにくい。そもそも「検索キーワード」って何やねん。しかたがないので文面を変えてみました。

100728_ibm_3

...... 結果はもちろん同じでした。

ついでに言うと、ページ下部に並んでいるリンクの 2 つ目も、「プライバシーについて」だと思うのですが、正しく表示されていません(Firefox、Chrome 、IE7、IE8 すべて)。

あれ、確認のためにいろんなブラウザで表示してみたら、Chrome だけはまともな字体で表示されるみたい。

100728_ibm_4

Chrome って、lang= 指定にかなり鷹揚なのかしら。

01:38 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (9) | トラックバック (1)

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2010.07.20

# 「うんのさんの辞書」第5版、出版記念オフ会!

翻訳者のあいだで、新版の刊行がこれほどまでに待ち望まれていた辞書はかつてなかった、と断言していいでしょう。そんな、待望の辞書の新版が出ます。

正式名称は『ビジネス技術実用英語大辞典』ですが、特に翻訳業界では、編者である海野さんご夫妻のお名前から、もっぱら「うんのさんの辞書」と通称されています。

その第 5 版の出版を祝して、出版記念オフ会が開かれます。

- 日時: 2010年9/4(土) 18時~(予定)
- 場所: 新宿(予定。お申し込みの方には後日メールでお知らせします)
- 費用: 一人4,000-4,500円前後(予定) 当日徴収

詳しくは、このオフ会の世話人を務めてくださっている Nest さんのサイトをご覧ください。
リンク: It's a Celebration! 『ビジネス技術実用英語大辞典V5』発売記念オフ 2010/9/4

私ももちろん海野さんご夫妻とは面識がありませんが、例によって図々しく参加する予定です。

08:15 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2) | トラックバック (0)

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# SINAPS Forum - いよいよ具体論に

5 月 20 日のオープン以来、これまではスタイルガイドの総論的な方向でいろいろと意見が交わされてきましたが、7 月からはナビゲーターも交替し、そろそろ具体的な問題点や改善案を挙げていくフェーズに入ってきました。

Sinaps_100720

接続詞 and の訳し方(に関するルール)については、1 週間ほど前に Twitter でも翻訳者さんたちの間で話題になったばかりです。

こちらをご覧のみなさんも、ぜひご意見をお寄せください。

06:47 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.07.05

# optional と omit

たまには、真面目に翻訳の話をするのです :)

関数とかコマンドの引数やオプションには、必ず指定するものと、任意で指定するものがあります。このうちの後者について説明する英文には、たいてい optional という単語が登場します。たとえばこんな感じ。

Optional comma-delimited list of values.

この Optional については、何通りかの訳し方を見かけます。

オプションのカンマ区切りの値リスト。← いちばん大雑把
オプションで指定するカンマ区切りの値リスト。← やや説明的
カンマ区切りの値リスト(オプション)。← カッコで補うのもわりと定番
(省略可能)カンマ区切りの値リスト。← 同じくカッコ書きで、「オプション」を避ける

このようなとき「オプション」という単語を使っていいのか、というのもよく議論のネタになりますが、私が今回見た既訳では、この後に続く omit という語の訳のほうが気になりました。

先ほどの文の後に、こんな風に続いていて、こんな訳がついていました。

Optional comma-delimited list of values. If omitted, the default value will be used.
「カンマで区切られた値のリスト(オプション)。省略した場合は、デフォルト値が使用されます。」

「省略する」=「省く」というのは、「元々あるものを取り除く」こと。一方、optional ってのは「指定しても、指定しなくてもいい」ということなのだから、「元々ある」とは限らない。あるかどうか判らないものを「省略する」って、なんだか変な感じがします。

指定しない場合は、デフォルト値が使用されます。」

としたほうがスムーズにつながるでしょう。

ただし、上記 2 番目の訳し方をするのであれば、「省略した場合」でもそれほど不自然ではなくなります。

「(省略可能)カンマ区切りの値リスト。省略した場合は、デフォルト値が使用されます。」

--------------------
この「omit = 省略」くらいの違和感が、たいへん残念なことに、今の IT 翻訳では許容範囲になってしまっているのかもしれません。少なくとも、機械翻訳 + ポストエディットというフローであれば、完全に OK の水準でしょう。

最近よく言われる翻訳単価下落の傾向より、こういう要求水準の引き下げのほうが、長期的に見てよほど深刻なんではないかと思います。

マニュアルやヘルプを受注する機会が最近はあまり多くないのですが、機会が少ないだけに、引き受けた案件の既訳ではこのレベルの訳文を見かけることが多くなっていて、クライアントもユーザーもそれでいいのかぁ、というところなのですが。

12:18 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2010.06.09

# iPad - アプリ『元素図鑑』 - 翻訳がときどき変

完成度の高さと美しいグラフィックが話題になっている iPad アプリがあります。

リンク: iTunes App Store で扱っている iPhone、iPod touch、iPad の元素図鑑: The Elements in Japanese

Ipadelement

オリジナルは英語版(The Elements: A Visual Exploration)で、上のリンクはその日本語版なのですが、どうも翻訳がときどきダメみたいです。

ざっと見たところ、本編に致命的な誤訳があるわけではありませんが(不自然な言い回しは多い)、「はしがき」にいきなりこんな文が。

どのサンプルも高精度ターンテーブルに載せてあらゆる方向から楽々と写真に収めることができました。

英語版の原文はこうです。

Every sample was painstakingly photographed from all sides on a precision turntable.

なんか、painstakingly が正反対の意味になってるんですけど。

04:00 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことばiPad | | コメント (9) | トラックバック (0)

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# Make Sure, again.

2年ほど前に紹介した、「世界で一番笑えるジョーク」(# Make sure...)、動画バージョンがちゃんとありました。

ほかにもありますが、これがいちばん秀逸。オペレーターさんの反応がいい感じ。

03:22 午後 翻訳・英語・ことば動画・画像 | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2010.05.26

# DEWKs と DINKs

Buckeye さんのブログで久しぶりに DEWKs という語を見かけたので(DEWKs誘致: 山と鉄馬とDIYと)、ちょっと調べてみました。

DEWKs と DINKs (日本だと最後の s は付かないことも多い)、ちょうど自分が結婚した前後、1980 年代末くらいから見るようになったのですが、私個人としては、まず DEWKs が登場して、でもすぐそれが姿を消して DINKs が出てきた、そんな記憶がありました。

もちろん、意味としては

DEWKs = 夫婦どちらも収入があって子供もいる
DINKs = 夫婦どちらも収入があって子供がいない

なのですが、D のところは Dual、Dually、Double、Doubly と複数の説があります。しかも、おもしろいことに、いくつかの辞典に当たってみたところ、

DINKs は載っているが DEWKs は載っていない

場合が多いようなんでした。

かと言って、DEWKs が和製英語だということではないようです。ランダムハウス第 2 版には、

米俗*2職の子供持ち族. [d(ual-)e(mployed) w(ith) k(id)s]

というエントリがあって、まさか和製英語を(そう断りもせずに)立項するはずはありません。

でも、手元の英英(Webster's Collegiate 11th、Shorter Oxford)ではどれにも載っていませんし、ネット検索しても意外なほどヒットは少なく、辞書系サイトでも Investopedia に次の記述があるくらいです。

DEWKS families are marketing targets for toys, children's clothes and other goods and services that pertain to children. Contrast this with "DINKS"

Wikipedia にも Wiktionary にも、Ask Oxford にも項目はありません。

一方、DINKs は RHD、研究社台英和、広辞苑などにはもちろん載っていて、Collegiate にも SOD にも載っています。Collegiate によれば、初出は 1986 年だそうです。■


そんなわけで、英語圏での事情はわかりませんけど、少なくともこの国で DINKs が生き残って DEWKs が消滅していったのは当然と言えば当然という気がします。

かつての日本では、「共働き」と言ったら子持ちがふつうだったわけで、「夫婦どちらも働いていて子供がいない」というのはかなり少数派だったはず。だからこそ DINKs という、いわば「新しい選択肢」が注目された。しかも、1980 年代末の日本といえばバブルの絶頂期ですからね。有楽町西武が思い切り元気だったあの当時の日本に、DINKs という生き方は実によくフィットしたんだと思います。■

09:30 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (6) | トラックバック (0)

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2010.05.21

# 広報 - SINAPS Forum オープン

昨日(5/20)、SINAPS Forum がオープンしました。JTF の個人会員として私も関係しているので、こちらでも広報することにしました。

以下、同フォーラムのトップページより抜粋です。


SINAPS(Standardization Initiative for New and Practical Style Guide)Forumは、翻訳の際に使用される日本語表記スタイルガイドについてディスカッションするための Web フォーラムです。2010年5月より約1年間の予定で日本翻訳連盟が運営します。
(中略)
SINAPS Forumでは、外国語から日本語に翻訳する際の「表記スタイル」と「翻訳ガイドライン」について話し合います。既存の翻訳用の「日本語スタイルガイド」についても、その使い方を考え、検討します。

検討の対象とする文章の種類を「実用文」とし、文芸作品などは対象としません。このフォーラムで検討した結果を、将来、日本翻訳連盟が独自の「日本語標準スタイルガイド(翻訳用)」を編纂する際に役立てたいと考えます。

日本翻訳連盟の会員以外でもディスカッションを閲覧し、意見を投稿できます。

産業翻訳に携わっているみなさん、日頃からスタイルガイドについて思うところ、語りたいことのある方は、ぜひご参加ください。

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2010.04.21

# 相関と因果

あきーらさんが、昨日のエントリでこのニュースを取り上げていました。

リンク: 技術者から翻訳者へのシルクロード:叩かれた回数の多い子どもは暴力的に育つ、米研究

このエントリに対する Buckeye さんのコメントを一部引用します。

でもそれはあくまで相関であり、因果ではないと思います。 つまり、「育てるときたたいたら暴力的に育つ」ではないと。

相関と因果。このふたつが区別されていないケースって、実はかなり多いのだろうと思います。

そもそも、「原因と結果」という考え方自体が定着していない節すらあって、英語の Cause and Effect なんてとてもわかりやすいと思うのですが、もしかしたら「原因と結果」を

「因果」という仏教用語と一緒

にしてしまったことに一因があるのかもしれない、とふと思いました。

細かい考察を書いている時間が今はないのですが、たとえば因果は「巡る」ものだから円環であるのに対して、 Cause and Effect というのはあくまでも直線というイメージがあります。

あまり深く考えずに(しかも、たいていは科学的な裏付けのないまま)、「こうしたら、ああなった」という図式に飛びつく人が多いのも、「原因と結果」がよくわかっていないことが一因でしょう。

「納豆を食べたら痩せた」くらいの話であれば、業者さんたちが一時的に困ることはあっても、時が過ぎれば笑い話ですむのですが、教育の現場にこういう曖昧な因果論を持ち込むのは、実に有害です。

以下、いろいろ続けようと思いましたが、「原因と結果」だけではなく「十分条件と必要条件」の混同とか問題がいろいろあって、それこそ原因と結果のいいかげんな話になりそうなので、ここでやめておくことにします。

01:20 午後 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (6) | トラックバック (0)

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2010.03.21

# ゲリラとか爆弾とか

最近よく耳にする気象用語って、なんだか物騒なのが多いですね。

リンク: 「爆弾低気圧」が原因か、列島襲撃・春の嵐 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

爆弾低気圧とは、

中心気圧が24時間で、(sinφ/sin60°)×24ヘクトパスカル(hPa)以上低下する温帯低気圧のこと(φは緯度)

なんだとか。

11:34 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (6) | トラックバック (0)

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2010.03.11

# 私家版英語辞典に用語を追加

based off / based off of

という、ちょっとナゾの連語を「私家版英語辞典」に追加しました。

私家版英語辞典@帽子屋: based off / based off of

一昨日、知り合いの翻訳者さんにも聞いてみましたが、「見たことないなぁ」とおっしゃってました。

本筋の話は英語辞典のほうに書きましたが、調べていたときに遭遇した余話をこちらに書きとめておきたいと思います。

"based off" をググると、日本語でもいくつかのページがヒットします。ひとつは、おなじみ Yahoo! 知恵袋の、ちょうど 1 年くらい前の質問。

リンク: この会話について3つお尋ねしたいのですが - Yahoo!知恵袋

based offはあまり使われませんがbased onと同じ意味です。

こう回答している方がいらっしゃいます。どんな根拠があったのか、ぜひ知りたいところです。■

さらに古い記事(2006 年)も見つかりました。このメルマガ、最近はもう出てないみたいですね。

リンク: 英語でOracle!: 11g Performance & Scalability Features

Allows you to partition an order_items table based off of the order_date column in an orders table.

こんな文例を引いたうえで、やはり

※based onと基本的に同じ意味です。off ofには~からという意味があります。

と解説していますので、こちらの方もやはり根拠をお持ちだったのでしょうか。■

そして、なんと昨日付のブログエントリも見つけました。通訳・翻訳関係の方らしいので、トラックバックさせていただきました。

リンク: ため息のゆくえ: 日々勉強

しかも、わずか数日をおいて同じ神楽坂でお食事をなさっているとか。キーワードがここまで重なるというのは、なかなか奇縁と申せましょう。

11:04 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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2010.03.06

# goo 辞書からの検索結果 --- その他の例も

"Transfer of Information" を検索すると --->
「transfer of information from the Internet to one's computer」の言葉「で始まる」辞書すべての検索結果

検索語以外の言葉、いったいどこからもってくるんだろ?


"functional overview" を検索すると --->
「functional overview」の言葉「で始まる」辞書すべての検索結果
ファンクショナリズム [functionalism] とファンクショナルフード 【functional food】

ぜんっぜん"functional overview"で始まってないじゃん......

こんな感じばっかりです。あ、-goo って追加したら消えた。ひとまずこれで凌ぐか......

以下、さらに加筆あり。

【5 分後に加筆】

ちょっと面白いことになっているようです。

さっきの "Transfer of Information" を手元の Jamming に入れてみたら、英辞郎(v114)のエントリに

transfer of information from the Internet to one's computer

ってのがありましたよ。あれれ、goo 辞書って、もしかしたら英辞郎使ってるわけ? と思ったら、こんなのを発見。こけが 2008年12月10日の発表でした。

「goo辞書」のデータ拡充について - プレスリリース - gooヘルプ

ところが、その後 1 年も経っていない 2009年10月29日にはこう発表されてました。

goo辞書「英和・和英辞書」での「英辞郎」提供終了について - goo ヘルプ

この間にいったいどんな経緯があったのか知りませんけど、でも、上にあげたヒットのしかたを見ると、もしかすると、goo が使っていた英辞郎データの

インデックスだけが Google 上に残ってる

とか、そんなところなんではないでしょうか。これ、 中発見?

09:21 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# goo辞書って、どーなってんの?

わりと最近のことだと思いますが、Google で用語を検索すると、

まったく見当違いの good 辞書のページ

がヒットしますが、あれっていったいどーなってんでしょう。

たとえば、non-infringement という単語を引いてみると --- 私の仕事ではめったに出てこない種類の用語ですね。手元の辞書には載ってません ---、検索結果の 1 ページ目にこんなのが見つかります。

Goo

んで、リンク先に飛んでみると、

Goo2

もともと検索語に含まれていない Code が勝手に追加されて、その Code が含まれているエントリが表示されるだけで、本来の non-infringement に関する情報はまったくありません。以前はこんなことなかった気がします。

NTT がなんかやってんのかなぁ。

08:53 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.03.04

# 英辞郎の収録語数

英辞郎の収録語数については、公式サイトやアルクのサイトで探しても、あまりきちっとした説明が見つかりませんが、そういうデータを電子辞書の売り物にしちゃうというのはいかがなものかと。

リンク: キヤノン、英辞郎を収録した電子辞書「wordtank V330」など6機種を発表:ニュース - CNET Japan

キヤノンマーケティングジャパンは1月15日、電子辞書「wordtank(ワードタンク)」シリーズにおいて、170万項目の英和データベース「英辞郎」を収録した「wordtank V330」1機種と、コンパクト&シンプルモデルの「IDP-700G」など5機種を発表した。1月20日から順次発売する。

私の手元にあるのは、v114(2008年11月)の EPWING 版で、収録語数は 168万項目ということになっていますが、たとえば lightning-fast という語を(ハイフンやスペースを無視して)検索すると、

lightning fast
―adj. <→lightning-fast>

lightning-fast
―adj. 電光石火の

lightningfast
―adj. <→lightning-fast>

となっていて、3 項目のうち 2 つは空見出しなわけですね。もちろん、どんな辞書でも公称の項目数には空見出しが含まれていると思いますが、英辞郎の空見出し率は、たぶん普通の辞書よりはるかに高いはずです。その辺は、どこかできちんと説明しておくべきかと思いますけど、どうなんでしょう。

02:04 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.03.02

# Translating "the Book"

リンク: 聖書:新たに翻訳始める 16年出版予定 - 毎日jp(毎日新聞)

日本聖書協会(東京都中央区)は2日、新たに聖書の翻訳を始めると発表した。2016年に「標準訳聖書」(仮称)として出版する予定だ。
同協会は1887年に「文語訳聖書」、1955年に「口語訳聖書」を発行。87年にはカトリック、プロテスタントの両教派が協力して「聖書 新共同訳」を出した。だが、平明さを追求した結果、「日本語の美しさやリズム感に欠ける」との指摘もあったという。
今回も両教派の共同訳。聖書学の進展を踏まえ、原典に忠実な翻訳を目指しつつ、日本語としての表現にも配慮する。

「翻訳」界の出来事として注目しましょう。たしかに、「共同訳」は美しくなかった記憶があります。

ちなみに、ウチは品川区にある聖公会系の教会で結婚式を挙げたのですが、司祭に続いて唱える聖書の一節を、事前に頼んでわざわざ文語にしてもらいました。当時の司祭様も、最初はちょっと驚いたご様子でしたが、「そうですね、文語のほうが味わいがありますからね」みたいなことをおっしゃっていました。

今度の口語は、はたしてどうなるのかな。

08:40 午後 文化・芸術 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2010.02.27

# 字幕の女王による「超」吹替~ w

最近はすっかり "ヒット" のなくなった字幕の女王、戸田氏。ついに吹替の世界に乗り出した模様です。

リンク: 戸田奈津子が吹替版監修に初挑戦、4月9日から映画「シャッターアイランド」超日本語吹替版の公開が決定 - GIGAZINE

公式サイトの特報ページはこちら。
リンク: 謎解き映画を楽しむための「超日本語吹替版」登場! : 映画『シャッター アイランド』

なかなか判ってますね、「超」日本語吹替版、だそうですから。

かつて「超訳」ってシリーズがありましたよね、アカデミー出版の(最近あまり聞かなくなりましたが、どーなったんでしょう)。

つまり、翻訳業界において「超」という接頭辞は「究極の意訳」の意味らしいですから、戸田氏のお仕事もまちがいなく「超」字幕。その御大が吹替版をやろうというのですから、なるほど、これは「超」吹替にちがいありません。

上記の公式ページ、「超」日本語吹替版ではどんな試みを、という問いに対して戸田氏のこんな答えが載っていました。

例えば、レオナルド・ディカプリオの演じるテディが、病院で働いていたという女性に向かって「Were you a nurse?」と聞くシーンがあります。自然な日本語に置き換えるなら「看護師?」の一言で十分。でも、英語では「Were you a nurse?」と3回も唇が動いているので、その唇の動きにあわせて「看護師だったのか?」と言葉を付け足すんです。決められたルールのなかで、より自然な日本語に近づけるように手を加えていく。そうすることで違和感のない吹替になると思います。

(太字は引用者)

この時点で早くも、戸田節(懐かしぃなぁ)全開です。

"Were you a nurse?" という過去形の問いに対して、「看護師?」の一言ですか。それって、自然な日本語というより、

いつもの戸田流字幕

でしょ。

現物を見ていないので断定はできませんが、「以前は看護師をやっていたのか?」という質問なんでしょうから、それを尋ねたいとき、目の前にいる看護師に向かって「看護師?」って聞きますか?

「~だったのか」と過去形で問うのは「付け足し」でも、まして新しい試みでも何でもなくて、むしろ当たり前のことだと思うんですけど。

もしかしたら、ふだんどおりのお仕事をして吹替を当ててみたら、口パクのほうが余っちゃって大変だった、とか? いくらなんでも、それだったら声優さんが不自然に感じるだろうから、それはないか......。

いずれにしても、これは見にいかねば。謎解きどころではないかもしれませんが。

11:41 午前 映画・テレビ 翻訳・英語・ことば | | コメント (7) | トラックバック (0)

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2010.02.23

# 阿呆なスタイルガイドを斬る、その4

今回は「斬って」ないんですが、昨日の特異な日付と時刻の話で思い出したことがあります。

スタイルガイドに載っていてもよさそうなのに、実はあんまり載っていないこと、です。

その1 時刻の表記

原典に "PM 12:00" って書いてあったら、みなさんどうしますか?

ちなみに、私の手元には少なくない数のスタイルガイドが揃っていますが、この点に言及しているスタイルガイドは 1 つもありません。

参考ページ: 午前12時? 午後0時?

個人的な感覚としては、やはり「午後 12:00」と書くのは違和感があって、「正午」がベスト、どうしてもどちらかを付けるなら「午前 12:00」とします。


その2 単位系

メートル法(SI 単位系)ではない単位を換算するのか併記するのか、意外なことに、この点に触れているスタイルガイドも多くありません。そもそも原典で単位系が不統一、ってのもありますけど。

05:06 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.02.21

# 阿呆なスタイルガイドを斬る、その3

だいぶ間が空いてしまいましたが、シリーズの第 3 回目。

あまり細かく書かなくてもこのバカバカしさは伝わると思うので、手短に。

<A> of <B> という原文を、「<B>の<A>」と訳す

と指示しているスタイルガイドが存在します。

...... もちろん無視。

12:50 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2010.02.18

# 愛します、愛しません

ドイツ語翻訳者さんのブログにおもしろいエントリがあったので、こちらでもご紹介します。

リンク: 「私はあなたを愛します。」 翻訳した人出てきなさい。私はあなたを怒ります。|Das Blog - ドイツ語翻訳&日独生活

元になったニュース記事はこちら。
リンク: 世界一ロマンチックでない「I love you」は日本語=調査 | 世界のこぼれ話 | Reuters

一方、ロマンチックではない響きがする「I love you」の言い方では、SFシリーズ「スタートレック」で使われるクリンゴン語だという「qaparha」などを抑え、日本語の「私はあなたを愛します」が1位となった。

なるほど、呆れた調査です。

次ポケなさい。



※「次ポケなさい」というのは、たぶん知ってる人は知ってる、筒井康隆の「日本地球ことば教える学部」という傑作に出てくるフレーズです。あの世界を思い出します。

あるいは、清水義範の『永遠のジャック&ベティ』というところでしょうか。

この調査自体、あまりに意味がないというか、言語というものの性質をあまりに理解していないと思いますけど。実施したのが翻訳会社さんですか。そうですか。

04:30 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (16) | トラックバック (0)

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# 訃報 - 浅倉久志氏

リンク: 浅倉久志氏死去 翻訳家 - 47NEWS(よんななニュース)

私はそれほど熱烈 SF マニアではないのですが、ディック=浅倉久志、ヴォネガット=浅倉久志でした。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

 

......というエントリを書いているところに、もうひとつ大きい訃報が。

12:50 午後 文化・芸術 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.02.09

# name の訳し方 - 別の話

「IT翻訳者の疑問」の jacquelinet さんが named に関わるトンデモ訳を紹介なさっています。

元ネタ: [Linguistic Reviewerの疑問]動詞「name」の訳の統一は可能

jacquelinet さんが問題にしている named の珍訳も困ったもんですが、ついでなので、name の訳し方について思い出したことがあるので、こっちで展開します。

Right-click the name of the file you wish to edit...

みたいな原文に対して「編集するファイル名をクリックし~」という訳をときどき見かけます。こーゆの、私は必ず「編集するファイルの名前を~」と修正しています。

だって。

編集するのはファイルの内容であって、そのファイルを名前で選ぶだけですから。実際、ファイルの中身ではなく「ファイル名」自体を編集(変更)するときだってあるわけですから、「編集するファイル」と「編集するファイル名」は区別しなきゃいけないと考えています。

ほかにも、「~格納するファイル名」とか、かなり変です。

もちろん、「~の名前」ではなく「~名」と処理したほうがすっきりいく場合もあるのですが、なんでもかんでも「~名」にしろという指示をクライアントから受けた経験もありました。そういう変なレビュー指示があったら、翻訳会社さんはちゃんと反論しなきゃいけません。

12:02 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.02.07

# 前置詞句の順番 - 回答編

金曜~土曜は、仕事が詰まってたり人に会ってたり、子どもと一緒に楽器屋に行ったりしてたせいで回答編が遅くなりました。

【課題文】
The file itself resides on the Oracle BI Server box in the \OracleBI\server\Repository file directory.

「前置詞句の順番が違っているのか?」という質問をいただきましたが、原文が間違っているということでは特にありません。

そのほかの前提として、この文に出てくる box は「コンピュータ」、「マシン」の意味なので、"Oracle BI Server box" というのは「Oracle BI Serverがインストールされているマシン」のことです。

であるとすれば、

The file itself resides on the Oracle BI Server box in the \OracleBI\server\Repository file directory.

この下線部 on~の句と、太字部 in~の句は、次のような順番になるのが普通ではないかと思います(前置詞句の順序の原則 = 狭 → 広)。

The file itself resides in the \OracleBI\server\Repository file directory on the Oracle BI Server box.

ところが、実際の原文ではこの例のように「広い」ほうが先に書いてあることもめずらしくありません。つまり、ここでは「Oracle BI Serverマシンの、\OracleBI\server\Repositoryディレクトリにある」という意味になっています。

この例のように判断できる場合は間違えずにすみますが、ときにはユーザーインターフェースの記述などでも「狭い」と「広い」の順序が無視されていることがあります。たとえば、

Spiecify a unique name in the Property box in the Attribute Name field.

こんなふうに書いてあって、実際のインターフェースがどうなってるのか、スクリーンショットがないと判断が難しい場合があったりします。

機械翻訳だったら、この例文はかなり苦しいですよね。

03:07 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2010.02.04

# 前置詞句の順番

ひとまず今日は「問題編」ということで。

The file itself resides on the Oracle BI Server box in the \OracleBI\server\Repository file directory.

11:47 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2010.01.31

# どうり、どおり、どほり

リンク: 太宰治に井伏鱒二、徳富蘇峰も…御坂峠遠望「まるで注文どうり」の富士山 (1/2ページ) - MSN産経ニュース

「注文どうり」なんて表記はアリですか、とさっそく突っ込もうと思ったら、引用部分でした。

太宰治はこの絶景を「まるで風呂屋のペンキ画だ。どうにも注文どうりの景色で」と「富嶽百景」に書き残した。

太宰大先生がそう書いたのか......と思って念のために青空文庫を見てみたら、オリジナルは

まるで、風呂屋のペンキ画だ。芝居の書割だ。どうにも註文どほりの景色で、私は、恥づかしくてならなかつた。

なんだそうで、それならやっぱり引用として「どうり」と書いちゃマズかったんではないか、と。

もちろん、青空文庫の引用が間違っている可能性もないではないので、それなりの出典を調べないとわかりませんが。

05:00 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2010.01.08

# 手抜きのマニュアル

現在、最近の私としてはめずらしく純粋にローカライズのお仕事中。

機能一覧で、説明が "Self-explanatory." の一言だけってのがあります。実に手抜き。なんて訳せばいいんだよ。

03:36 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (7) | トラックバック (0)

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2009.12.24

# 稼げる、稼げない、稼げるとき...

あ、そっかぁ。

『稼げる実務翻訳ガイド』(アルク出版)が出なくなったのは、「稼げる」って言えなくなってきてる、ということだったのか。今さらながら納得。

03:34 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (7) | トラックバック (0)

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2009.12.14

# カニバらない、カニバります、カニバるとき

cannibalization という経営用語があるのは知ってましたが、業界さんはこんな風なカタカナ書きで使うんですねー。



でも、「カニバリゼーション」って「自社の製品どうしが食い合う」ことのはずですよね(でなければ cannibalize などという物騒な単語を使う意味がない)。

参照: カニバリゼーション - J-marketing.net produced by JMR生活総合研究所

"Amebaなう" のモバイル版と PC 版がユーザーを奪い合うんだったら「カニバリゼーション」かもしれないけど、Twitter と張り合うんなら、ただの「競合」なんでは? それとも、よくあるパターンで語義・用法が拡大されてるんでしょうか。




Shiomaneking_4


カニバれ。

09:45 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.12.13

# ブログの運営を変更してみます

side Trados を新設するときも、こちら side A では今までどおり趣味系の話と翻訳・英語関係の話の両方を続けていこうと考え、2 か月ほどはその方針で運営を続けてきました。

が、最近はオフラインでいろいろな場所に出没する機会が増えたので、少しは表向きの体裁を取り繕ったほうがいいかと世間並みの考えをおこし、side B の運営形態を変えることにしました。今までの

翻訳・英語・ことば

カテゴリに該当する話題は side B に移行します。

side A、side B ともども、引き続きご贔屓のほどを m(__)m

08:10 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.12.12

# 英和辞書の語義ではうまくいかない英文の例

先日、IT 系のごく標準的なマニュアルで見かけた英文の例を挙げます(細部は変えてある)。

Select a job (for example, Create Index, Update Index). To omit a specific job, select All.

なんのことはない、いたって平易な英文です(カッコ内の頭大文字の語は UI だと思ってください)。が、もしかしたらこんな簡単な英文がどう訳されるのか、ひょっとしたら IT 翻訳の品質の指標になるんではないかと思いました。

問題なのは 2 文目です。

特定のジョブを省略するには、[All]を選択します。

たとえばこんな訳が、巷で見かける IT 翻訳では平均的だったりしませんか?

ここで言ってるのは、「ジョブを選んでね。特に指定しないなら[All]を選んでね」というだけのことで、「省略する」ではまず意味が通じないと思うのですが、この程度の訳が案外平気で許容されちゃっている気がします。それとも、もしかしたら、私が知ってるサンプルのレベルが低すぎるんでしょうか?

ちなみにここで使われている omit の訳は、英和辞典でいろいろ見ても、たぶんどれもうまく当てはまりません。

省略する、割愛する、削除する,省く;抜かす、言い落とす、書き落とす 控える、なおざりにする、怠る、忘れる 除く、除外する

だいたいこんなところです。一方、たとえば LDOCE には、いともあっさり

not include someone or something

と書かれています。ごく簡単に、「含めない」ということ、つまりここでは「指定しない」ことだと判って、

ジョブを特に指定しない場合は、[All]を選択します。

くらいの訳文にたどり着くでしょう。

ここで挙げた原文は、よく言われる「IT 翻訳の中でもあまり手間のかからない手順説明」の部類なわけですが、そんなレベルでさえ、もしかしたらまともな訳になっていないのでは、と考えさせられた一例です。

10:03 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2009.12.09

# Marketing, PR, Advertising and Branding

マーケティング関係の翻訳で調べ物をしていたら、こんな絵を見つけました。

Adexpert

判るような、判らんような......
出典はこちら。
リンク: The difference between Marketing, PR, Advertising and Branding | Ads of the World

09:04 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2009.11.30

# 翻訳者は関連資料をどのくらい見なければいけないか

翻訳のとき、的確な訳語を決定したり、用語や概念を正しく理解したりするために「関連資料」を調べることはもちろん翻訳仕事の一部です。ここで言う関連資料とは、その類ではなく、翻訳時にクライアントやベンダーから指定される、
・作業指示書
・スタイルガイド
・用語集など
・過去の翻訳物など、翻訳対象に関する参考資料
のことを指しています。

分野やクライアントの性質によっては、この手の資料がほとんどない場合もあるでしょうが、IT 翻訳ではある程度の分量が支給されることが少なくないようです。

でも、その量があまりにも多いと、「これ、ぜーんぶ読めってーの?」と言いたくなります。

私自身が翻訳会社に勤務していたときは、翻訳者さんにその辺のところがあまり負担にならないよう、できるだけ配慮していたつもりなのですが、それでも多かったかもしれないなぁと、自分が受注する側になってからよく思いました。


整理されていない指示書
ある程度大きい翻訳プロジェクトの場合、進行に従ってルールの変更や追加、ソースクライアントからのフィードバックなどがあることは珍しくありません。翻訳会社は、そういった経緯を吸収して整理し直した指示書を出すべきなのですが、いかにもツギハギ的な指示書をよく見かけます。それを読み取って理解するほうの負担を考えてください。


複数のスタイルガイド指定
たとえば、クライアント独自のスタイルガイドのほかに、「記載内容以外はマクロソフトの仕様に従ってください」なんて指示があったり、それとは別に翻訳会社独自の細かい指示や仕様が追加されていたり。私の場合、今ではもうスタイルごとにけっこう細かくスクリプトを用意してあるのでさほど困りませんけど、そういう準備がない翻訳者さんだと、これだけでかなり負担になっているんだろうなぁと思います。


ばらばら複数の用語集
用語集が1つのファイルにまとまっていないケースもよくあります。たとえば「基本用語 + 特定カテゴリの用語 + 製品コンポーネントのリスト + 関連マニュアルのリスト」みたいな感じで。まあ、ぜんぶテキストにして grep するから実害はあまりないんですけど(そんなわけで MultiTerm の出番はあまりない)、なんというか担当者の頭ん中が disorganized なんだなぁ、と思ってしまいます。


ソースクライアントから受け取って丸投げされた資料
「製品の概念についてはこちらを読んでください」なんてあっさり言われて、開いてみたら 100ページ以上もある英文ドキュメントだったり......orz 自分は読んだかい~?!


翻訳会社さん(の特定の担当者)としては、成果物のレベルを確保するつもりでいろいろと送りつけているんでしょうが、かなりの場合、逆効果なんじゃないでしょうか。上流工程でいろんな処理を済ませたい、という気持ちは判るんですけど。

どうしても指示が多くなるのなら、少なくともその内容をきちんと整理して、翻訳者の負担を軽くするように考えたほうが、トータルな労力は減るはずです。

もちろん翻訳者のほうも、そういうときは言いたいことを言ったほうがいいし、言える関係をふだんから築いておくべきなんでしょうね。

12:14 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2009.11.29

# 34,501ワードを10時間で……?

先日の Trados に関するエントリについて、あきーらさんが楽しい計算をしてくれましたので、ちょっと続けてみました。

元ネタ: # TRADOS さん、必死だなぁ


「34,501 ワードのプロジェクトを 10 時間で終了させることができました」という TRADOS さんの謳い文句について、あきーらさんからいただいたのがこんなコメントでした。

レート10円/wordだと、10時間×290日働けば1億円プレーヤーか!

先日の JFT 翻訳祭で Buckeye さんが挙げた「駆け出しのレート(= 5円)」だったとしても 5,000万円。Trados ってスゴイんですねー www

この広告を見て真面目にそんな皮算用をしちゃう人は、まずいないと思いますが......

真面目な話、この 34,501 ワードというのが全部 "No Match" レンジつまり通常の翻訳を必要とするワード数だったということは、常識的に考えてありえません(私の知ってる範囲でもかなり超人的な処理量の人はいますが、当然その上限を超えています)。

考えられるとすれば 34,501 ワードのほとんど、あるいは全部が 95-99% レンジだったという場合です。"95-99%" というのは、Trados の解析で 100%(完全一致 = 原則的に作業が不要)の次にくるレンジですが、実際にはタグの差異や原文のわずかな変更しかないことも多く、実質的な作業はたとえば、

セグメントの開閉を繰り返しながら確認し、ときどきタグを追加/削除する

だけということもありえます。そうであれば、もしかしたらこの処理量も可能かもしれません(それでも実際にはかなり困難だと思うのですが、あまり細かい検証ではないので)。

ですが、95-99% レンジの料金であれば 10円(あきーらさんの使った数字のまま)ということはなく、その10%~30%というところでしょう(翻訳メモリーを使うときはそういう計算をします)。かりに 10% = 1円もらえるとして、上記と同じ労働時間なら

34,501 x 1円 x 290日

--- それでも 1,000 万円は超えることになりますねー。

1日10時間ひたすらセグメントの開閉とタグの処理だけを繰り返して 1,000 万円。これを幸福な図式と呼ぶのかどうか。人それぞれ...ですよね、たぶん。

ちなみに、この 10分の1 に当たる 3,450 ワードを通常どおり翻訳したとしたら、

3,450 x 10円 x 290日

--- こちらでも(当然ながら)1,000 万円は超える計算です。

10:40 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.11.26

# させていただく Microsoft - その2

前エントリ、本当はあんなコント CM のことを書こうとしたんではなく、「させていただく」が気になるよなぁ、という話が本旨でした。

そもそも、自分から見るはずのないこんな CM を見ることになったのは、フィードリーダーに広告を流すサイトがあるからです。

Admicrosoft

こーゆー、頭に "AD:" って書いてあるやつ。ここで開いているのは 毎日.jp さんですが、5 個の記事ごとに広告を流すようにしてあるようです。

※あ、私のフィーダーの中身は細かく見ないように!!


で、この「マイクロソフト オフィス 2007の誤解をとかせてください」という言い方がなんとなーく目障りなわけです。このフィード自体は、「させて + いただく」ではありませんが、サイトに行くとしっかり

「誤解をとかせていただきました」

と書いてあります。

もちろん、「~させていただく」という言い方については以前からいろいろと指摘されているわけですが、今回はひとまず、こんなのを見つけました。

リンク: Yahoo!辞書 - させていただく

最近の若者に目立つことばづかい。もともとは、自分の行為を相手に許可してもらい、それによって相手に対してへりくだった気持ちを表すことばだが、最近では「私は○○高校を卒業させていただきました」とか「先生のご著書を読ませていただきました」といった言い方が増えている。高校を卒業したのは自分の実力であって、教師の恩恵によって卒業できたのではない。作家の著書を購入して読むのも自分の意思であって、作家から贈呈されて読んだのでなければ、本来の用法からすると誤りである。実際には受けていない許可や恩恵を受けているかのように見立てて、相手を敬っていることを示す丁寧表現のつもりで使っているようだ。 [ 新語探検 著者:亀井肇 / 提供:JapanKnowledge ]

ソースは JapanKnowledge ですが、亀井肇さんというのは現代用語の中の人だった方ですね(←この言い方も変ですけど)。

この説明の冒頭、「最近の若者に目立つ」というのはどうなんでしょう。企業なんかで、私より上の世代でもずいぶん使ってると思いますけど。

それはともかく、この説明を見れば、Microsoft さんの広告(に限らず広告全般ですが)でこの言い方がなぜ目障りか判ると思います。

前エントリに書いたように内容もえらくお粗末でしたが、広告の打ち方も含めて Microsoft さんもっと頭を使ってね、とご忠告させていただきたい。

11:55 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (6) | トラックバック (0)

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2009.11.25

# TRADOS さん、必死だなぁ

(Trados ネタですが、本筋ではないので side Trados ではなくこちらに書いてます)

昨日から今日にかけて、SDL TRADOS から立て続けにメールが届いています。

リンク: 34,501 ワード。10 時間。翻訳者 1 名。こんなこと、可能でしょうか?

「34,501 ワード。10 時間」という数字だけじゃ、何の意味もありませんってば。

リンク: SDL Trados Studio 2009 製品セミナー(東京) <<緊急追加開催決定>>

こちらのセミナー(12/7)は、12/3 のセミナーが満席になったための緊急追加ということなので、ユーザーの関心は高いものの様子見の状態が続いていて、売上にはあまり結びついていないという状態なのかもしれません。

12:43 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2009.11.21

# 三流ホテルの余分なサービス

side Trados の 11/20付エントリで Buckeye さんからいただいたコメントに、「三流のホテル」云々という話が出てきます。

念のため、この話について補足しておこうと思います。

「三流のホテル」というのは、しばらく前にネット上に実在した珍訳のことです。今年の翻訳祭に講師として登壇なさった Buckeye さんが、話のまくらとして引用し、大爆笑を誘っていました(ちなみに、今年の翻訳祭は 2 つの講演とパネルディスカッションの内容がうまくリンクしていて、うまく進んだと思います)。

さて、この実在のサイト、ネット上でけっこう話題になったあげく、さすがに誰かから通報がいったらしく日本語ページがなくなってしまったのですが、画像保存してあるページを見つけたので、ご紹介します。

Turner_hotel

この画像を見ると判りますが、「三流ホテル」というのは "three-star" のことらしく、「余分サービス」というのは明らかに "additional service" のことです。「ローマのセンタに建ててやりました」も素敵です。

ところで、Buckeye さんがまくら話としてお使いになったもうひとつのネタが、やはり有名なこれ。

ネタ元: パンダでたそがれ! それってどうなの!?世にも奇妙なDVD(fujiaire)

「ダィスク」
「オーポン」

といった笑える単語のオンパレード。この DVD プレイヤーに限らず、秋葉原に行ってちょっと探せば、この手のキテレツ爆笑日本語の付いた製品はいくらでも見つかります。

かなりいいかげんな世界で日本語化の作業が行われていると想像できるわけですが、でも日本だってこういう誤字はぜんぜん笑えない。

Spellloadshow

先日公開された映画『スペル』の公式サイトに行けば、こんな単語を見ることができます。これなど、まさに「オーポン」のレベルでしょう。

07:19 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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# side Trados 更新情報(11/21)

side Trados にエントリを追加しました。

Trados 翻訳後のチェック用ツール omiso.dot については、すでに何人かの方から問い合わせをいただきましたので、どのくらいの人がお使いになっているのかわかりませんけど、「便利かもしれない使い方」の Tips です。

★開発者のサイトがなくなってしまい、連絡先もわかりません。もし、開発なさった方がこちらや翻訳フォーラムをご覧になることがあったら、ぜひご連絡いただければと思っています。

--------------------
昨日 20 日は、日本翻訳連盟の翻訳祭に参加し、懐かしい人とか、以前に一度しか会ったことのない人にお会いすることができました。

12:25 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.11.17

# unfriend

リンク: 「ともだちから外す」を意味する"unfriend"が09年の言葉に - 米大手辞書 | ネット | マイコミジャーナル

意味は「FacebookのようなSNSで誰かを"Friend"から外す」行為のことを指す。SNS全盛の時代を象徴するかのような単語だが、 unfriendはこのたびNew Oxford American Dictionaryによって「2009 Word of the Year」に選ばれることとなった。

「ともだち」から除外する --- 今日まで通っていた歯医者さんに揃えてあった『20世紀少年』を再読したばっかりだったので、まっさきに連想しちゃいました。「絶交」。

06:50 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2009.11.15

# ググるなとまでは言わないけれど

翻訳者さんの一人が、tweet で教えてくれたページ。

リンク: プログラマで、生きている: ググるな危険

ググるな、とまでは言いませんけど、最近の Google 検索には気をつけなきゃいけないなぁ、と私もよく思っていたところです。

ひとつは、Wikipedia の記述を孫引きするサイトが増えてきたこと(Weblio とか goo などがそうです)。かなり流通していて万の単位でヒットする用語ならともかく、固定訳や熟した訳例が少ないような用語は特に注意が必要なようです。

もうひとつは、機械翻訳の結果を自動出力しているらしきサイト。変な訳文が目につくのですぐ回避はできますが、ヒットカウントに含まれてしまうのは考えものでしょう。「翻訳結果を除外する」って検索オプション、ありましたっけ? 少なくとも私は見つけていないんですが。

最近この両方に遭遇したのが、"US Minor Outlying Islands" という用語。このまま検索すると英語 Wikipedia のページがヒットし、そこに日本語 Wiki へのリンクがあって、そこには「合衆国領有小離島」と書かれています。ところが、この日本語を検索してみると(もちろん引用符囲み)、ほとんどのページが Wikipedia の引用か、よくわからない SNS 系サイトのようでした。

辞書でもサイト検索でも、最終的な拠り所は自分の判断という点は変わらないわけで(参考記事: # 最後の拠りどころは自分の経験だけ、たぶん)、その原則さえ守っていれば大丈夫なんですけど。

02:58 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.10.31

# 翻訳者の労働時間 - 私の個人的なケース

トラックバックはしていませんが、Buckeye さんの記事がきっかけになって、

リンク: 祝日: Buckeye the Translator

自分の職歴と労働時間について振り返ってみました。

何度か書いているように、翻訳会社に勤務する前の十数年間、私は小・中学生相手の進学塾で教師をしていました。その頃の勤務は
14:00 ~22:00
というヤクザな時間帯で、休日は日曜日。しばらくして交代制で週休 1 日がプラスされて週休二日になりました。

景気のよかった頃はほぼこれが維持されていましたが、1990 年代前半には少子化と不況のあおりで塾業界全体が冷え込み、日曜や祝日のたびに公開テストなどの集客イベントを打つようになったので、1 か月以上休みなし、みたいなペースが常態化していました。管理職になった最後の数年間は、労働時間が平均 12 時間超、休日は年間 10 ~ 20 日という感じだったと思います。

それだけに、翻訳会社に転職して(1998 年)労働時間も人並みになり、「土曜・日曜・祝日は必ず休める」という状態になると、しばらくは自分も家族も新鮮な感動を味わったものでした。この会社でも、労働時間はだんだん長くなる傾向はありましたが、それでも「カレンダーで赤い日は休める」という点は最後まで確保されていました。

で、フリーになった今はどうかというと、

> 月平均25.9日、1日平均9.3時間

この状況はよく判るなぁ、というところでしょう。私の典型的な 1 日のパターンは、

- 午前中はメールの確認やネットの巡回から始めて少しずつ仕事に手をつける(1~3 時間)
- 昼食後はおおむね夕方まで翻訳(2~3 時間)
- 夕食後も日付の変わるくらいまで翻訳(2 ~ 4 時間)

といった感じなので、通常の労働時間は 1 日 5 ~ 11 時間くらい。← ムラがありすぎ?

土曜と日曜もウィークデイの半分くらいは稼働していることが多いので、労働日数は多いほうかもしれません。

結局、トータルな労働時間は会社勤務時代より増えたのか減ったのか、自分ではよく判らないんですけどね。実感としては通勤時代より楽をしている気がします。最大の理由は、1 日何時間だろうと週に何日間だろうと、

労働時間が自分の管理下にある

ということに尽きるようです(管理できているかどうか、は別ですけど)。休日も自分で設定できるからこそ、平日に温泉に行ったりもできるわけですし。

11:44 午前 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (14) | トラックバック (0)

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# いろいろな翻訳単価

(2008/10/04 side B より転載)
side B には A よりパーソナルなことを書き綴っていたつもりなのですが、もうこのエントリもこっちに出していいような気がしていたので転載します。文体も B 面のままですが、コメントは再録していません。

最近、翻訳フォーラムで単価計算の話題が出たこともたぶん関係しています。


side A でワードカウントのことを書きながら、これまでの翻訳経験の中でもいろいろな翻訳「単価」があったことを思い出したので、自分の翻訳遍歴を振り返りながら、ちょっと書き出してみることにした。


AppleII のゲームマニュアル - 20.000円/1タイトル

私が初めて翻訳でお金をもらうようになったのが、実はこれ。キヤノンが正規代理店になったり、日本法人が出来たりするより前の時代で、輸入版ゲームに添付するマニュアルの翻訳だった。ボリュームに関係なく 1 タイトル当たり 20,000 円というアバウトな単価設定にも、仕事の性質と当時の雰囲気がよく表れているように思う。

ちなみに、この頃の翻訳原稿はまだ紙だった。


エンタテインメント系文芸出版 - 1タイトルごとの買い取り

「買い取り」というのは、つまり印税方式ではなかったということ。これもボリュームに関係なくタイトル当たりの単価で、実際の金額は書けないが、当時もけっして高くないと噂されていた某 SF 系大手出版社の翻訳料より高く設定していただいた記憶がある。この頃並行してやっていたコンピュータのマニュアルなども、だいたい 1 冊いくらという計算だった。

ちなみに、この頃はリコーの業務用ワープロがメインツールだった。あの機械は実によく働いてくれた。


環境関係の産業翻訳 - 1,500~2,000 円/400 字

単価を書いたのは、翻訳雑誌などに出てくる相場とだいたい同じだからというだけ。この頃は、仕上がり訳文の原稿用紙枚数でカウントしていたわけだが、最初に驚いたのが「原稿用紙 1 枚」というのが名目的な 1 枚、つまり改行とかスペースがあっても 1 枚は 1 枚と数えるのではなく、正味の 1 枚、つまりあくまでも「400 字 = 1 枚」と計算されたことだった。

この頃、業務用ワープロから Mac に移行。初期の頃はたぶんクラリスワークス、途中から Word だった。


IT 系翻訳 - ワード単価

現在進行形なので具体的な単価はちょっと控えておくとして、この方式に慣れてしまった今となっては、やはり仕上がり枚数よりワード単価計算のほうが落ち着く気がする。

ただ最近ちょっと思うのは、比較的ルーチン化している翻訳と、もっと手間のかかる翻訳とで同じ単価というのはちょっと寂しいな、ということ。だが、翻訳する立場としての「難易度」みたいなものは、単価に反映させにくいだろうとも思う。

10:57 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.10.23

# 思いがけず似ていた

光学系アプリケーションの翻訳をしているとき、画面に並んだ文字からなぜか微妙な印象を受けるなぁと思っていたら ---

光源

1 文字違いなんだね。


王朝の貴公子と。

光源氏

09:01 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.10.07

# Kwic の簡単起動

9/30 の翻訳フォーラム勉強会で、強力な検索ツールである Kwic がクローズアップされました。

私も Kwic は使っていますが、「ディレクトリツリーを開いていって検索対象のフォルダを選択する」という操作に、以前からちょっと不便を感じていました。そこで、

Kwic をエクスプローラ上の右クリックから開く

ことができるような設定を用意してみました。もちろん、開いたディレクトリがそのまま Kwic 上のツリーでも開く、というところがミソです。設定方法と、必要なバッチファイルは、ここからダウンロードできます。

【おまけ】
今回やったように、

- exe ファイルの実行コマンドを書いたバッチファイルを作成する
- レジストリを操作してそのバッチファイルを右クリックで開けるようにする

というテクニックは、いろんなアプリケーションに利用できます。

09:05 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2009.10.06

# Flexible Renamer

ある操作が必要になって、マクロかスクリプトかバッチを作ってみようかと思ったけど、ちょっと考えてみたら手元のツールで当たり前に簡単にできることが判った、というよくあるお話のひとつ。

私は、スクリプトでチェックをかけるために複数のファイルを 1 つのディレクトリにまとめて置くことがよくあるわけですが、作業対象に同名ファイル --- index.html とか --- があると、このコピー作業がすんなりいきません。

そこで「ファイル名の前にディレクトリ名を追加すればいいか」と思って、まず秀丸マクロを書きかけたのですが、手元にあるファイル名変更ツールにちゃんと、「フォルダ名を追加」という機能があるのでした。

リンク: Flexible Renamer
※ただし、このページの「ダウンロード」リンクからはダウンロードできなくなっています。Vector 内のダウンロードページ(Vector:Flexible Renamer (WindowsNT/2000/XP/Vista / ユーティリティ) - ソフトの詳細)からどうぞ。

単にファイル名変更といっても、実は場面によってかなり多様な機能が必要なことがあります。Flexible Renamer には、その名に負けない豊富な機能があります。いつもながら、作者様に感謝感謝。

03:28 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.10.03

# 翻訳フォーラム勉強会、終了

退院して初めての遠出でもありました。

9/30 に、翻訳フォーラムでツール(主に Trados と SimplyTerms)の話を中心とした勉強会があり、Trados の担当ということで、エラそうに講師など務めさせていただききました(私のほかは、Sakino さんのツール概論と、Buckeye によるご自身開発の SimplyTerms の解説)。

私の話が適切だったかどうかよくわかりませんが、「ツールに使われない」という今回のメインテーマには少しでも沿うことができたかな、と。

その後は、恐れ多いことながら、わざわざ私の快気祝いを兼ねた打ち上げ。まだアルコールの度を過ごすことはできないので 2 次会までは参加できませんでしたが、「しゃばに戻った」実感をたっぷり味わうことができました。

フォーラムのみなさん、ほんとうにありがとうございました。

08:19 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.09.29

# 英語を学べる環境は今やこんなに充実している

ラジオか、せいぜいテープ教材までしかなかった私たちの学生時代から比べたら、なんと羨ましいことか。

百式さんの紹介で、またいいサイトを見つけました。
英単語ひとつひとつの意味を丁寧に動画で紹介!『WordAhead』 - 100SHIKI ~ 世界のアイデアを日替わりで

リンク: Vocabulary Videos and Flash Cards for SAT, ACT and GRE - WordAhead.com > Home

あいにくボキャブラリーは初学者向けではありませんが、読み上げ速度は高校生くらいのヒアリング練習にもちょうどいいのでは。

09:07 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.09.24

# こんなカタカナ語あり?(9/24)

以前、「アーリーアダプター」というカタカナ語が奇異だという話をしました(# アダプト/アドプト、うーん)。

この仕事をしてると、こういう珍妙なカタカナ表記に遭遇することも別に珍しいことではありません。せっかくですので(何が)、ときどきここで取り上げてみることにしました。本日はその第 1 回。

タックスノミ

原語はなんだか判ります? 正解は「続きを読む」でどうぞ。

原語: taxonomy

参照: taxonomy - Definition from the Merriam-Webster Online Dictionary

いったい、どうやったらこんな表記ができるんだか。アクセントのある母音を完璧に無視しちゃったところがスゴイですよ。

02:19 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.09.03

# 理系な人に質問です --- 幾何学的/幾何級数的

どなたか、知ってたら教えてほしいんですけど ---

「ものすごい勢いで増える」ことを、「幾何級数的に増える」と表現するのは判るんですが(広辞苑にも載っている)、

幾何学的に増える

ってのはアリなんでしょうか?

原語は geometrically らしいんですけど。

10:07 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (7) | トラックバック (0)

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2009.08.31

# 地名の調査が楽に......なるかなぁ

翻訳するとき、外国の地名は訳出することも英語ママのこともあるわけですが、複数の辞書で表記に揺れがあったり、小さい地名だと普通の辞書には載っていなかったりして苦労させられます。そんな状況の救いになるかも、という Google マップの新機能。

リンク: Googleマップの世界地図、海外地名がカタカナ表記に - ITmedia News

「世界大地図帳」を出版する平凡社地図出版とパートナーシップを組み、同社の地図データベースにある3万数千の地名情報を地名をGoogleマップに反映した。/Wikipediaなどネット上のデータも利用。スペルの読み方を学習させた同社独自の片仮名化エンジンを利用したり、手動でも入力した。

Google 依存度が高くなるのは必ずしも喜べませんが、「平凡社地図出版に依拠しました」みたいに、どこでもいいから 1か所、準拠するところがあると助かります。

01:35 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.08.29

# ポピュレート......

1 年以上ぶりに、「私家版英語辞典@帽子屋」にエントリを追加しました。

リンク: 私家版英語辞典@帽子屋: populate

カタカナで普及しちゃうと、私らはそりゃ楽になりますけど。

09:29 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.08.25

# TRADOS - TagEditor と Word の違い、訂正

昨日のエントリにさっそく、めぐりさんからコメントをいただきました。

2006 → 2007 のバージョンアップではほとんど変わりがない、とタカをくくってちゃんと確認しなかった私の怠慢でした。いつも正確な記述をモットーにしているのに、お恥ずかしい限り。

念のために手元の 2007 で確認しましたが、「2. 検索機能の違い」についてはめぐりさんのご指摘どおり。それ以外は 2007 でも変わっていませんでした。

2. 検索機能の違い - 訂正版

TagEditor の名誉のために、2007 バージョンの検索ウィンドウはこれ。

Tageditor2007search

[訳文のみを検索する]オプションが増えたほか、[ワイルドカードを使用する]というオプションも追加されています。使えるのは ? (任意の1文字)と * (任意の複数文字)だけですが、ないよりマシでしょう。[訳文のみを検索する]はもちろん置換機能にもあるので、訳文だけの置換も可能になっています。

そしてもうひとつ。[タグの内容を検索する]も追加されたことに注目。やっぱり、この機能の要望はあったようなのでした。

10:18 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.08.24

# TRADOS - TagEditor と Word の違い、その2

続きです。

TagEditor と Word の違いといってもいろいろあるはずなのですが、ここでは私が不便に感じていることばかり書いています。

3. 訳語検索するときの挙動

訳語検索(コンコーダンス)、つまりメモリ内検索を実行すると、Word では検索語がクリップボードに格納されますが(つまりマクロの 1 ステップとして文字列をコピーしてるんですね)、TagEditor ではコピーされません。

訳語検索でヒットしなかったら別の用語集ファイルを検索したい --- こういう場面はよくあることだと思うのですが、Word だとクリップボードに検索語があるので、次の検索行動にすぐ移ることができます(秀丸エディタ上であれば、クリップボードの内容を即検索/grep できるマクロも組んであるので)。

しかし TagEditor では検索語がコピーされていないので、別の検索を行うには改めて TagEditor 上で Ctrl + C しなればならず、腱鞘炎持ちには辛いことになるわけでした。


4. コピー&ペーストの挙動

これも、単語を検索したいときにつきまとう問題。文字列をコピーしたときの挙動は、どちらにもそれぞれ困った問題があります。

Word では、段落に箇条書きが設定されていると、コピーした内容をそのまま辞書などで検索できない、という問題があります。

Wordcopy

こんなとき、文頭の単語(Flexibility とか「パラメータ」)をコピーして貼り付けると、こうなって ---

Wordcopy2

当然すんなりと検索はできません。

TagEditor でも似たような、ただし Word のときよりなかなか気づきにくい現象に遭遇します。たとえば次のようにセグメントを開いた状態で、

Tageditorcopy

この Designation をコピーし、たとえば Jamming の検索ウィンドウに貼り付けても、なぜか検索結果がゼロの場合があります。これも実は見かけだけでは判らない症状。今コピーしたばかりの内容を、そのまま Word 上に貼り付けてみると、実はこんな風になっているのでした。

Tageditorcopy2

なんと、Designation の前に {0> という邪魔な文字列が入っています。これ、Word 上で Trados を使っている方なら見慣れていると思いますが、セグメントの単位を区切る隠し文字なんですね。TagEditor 上ではまったく目に見えませんが、実はセグメントを開いたときには Word のときと同じ隠し文字が存在しているらしいのでした。

--------------------
その 1、その 2 と続けましたが、私が困っているのはだいたい検索に関係してくる機能や動作が多いわけでした。こういった不便さが、はたして Studio 2009 ではぜんぶ解消するのでしょうか。

11:16 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# TRADOS - TagEditor と Word の違い、その1

Studio 2009 のレポートはちょっとお休み。世間の需要はまだまだ 2007 までが主流でしょうということで、実際の Trados 翻訳作業で、TagEditor を使うときと MS Word を使うときにどんな違いがあるか --- つまりは、その違いのせいで困ることが多いということですけど --- ということを書きとめておきます。

まず説明が必要かもしれませんが、TagEditor を使うか Word を使うかという選択は、翻訳者が決めるということは稀で、クライアントや翻訳会社から送られてくる作業ファイルがどんなファイル形式かで一方的に決められてしまうほうが多いようです。

つまり、FrameMaker ベースの場合は、Trados のツールで変換した rtf ファイルを Word 上で作業することになるし、HTML/XML ベースの場合は TagEditor を使うことになります(HTML/XML を直接開くこともあれば、バイリンガル形式の中間ファイルである ttx が支給されることもある)。

1. タグデータの違い

Trados 翻訳につきものと言えるのがタグ。Word 上では、タグは特殊なスタイルが設定されているだけの通常の文字列です。たとえば、

Wordtag

このように文中に出現する赤いタグ(内部タグ、などと呼ぶ)の場合は tw4winInternal というスタイル設定で、文字色は赤。Word をお使いなら想像できると思いますが、このタグの直後に訳を入力しようとすると、直前のスタイルを受け継いでしまうので、入力した文字列は訳文ではなくタグの一部としてメモリに登録されてしまい、よろしくありません。ここんところは、たぶん Trados を使い始めて最初の頃に注意するよう指示されると思います。

通常の文字列なので、削除もできてしまうという危険性があります。

これに対して、TagEditor のほうは Trados 専用ツールだけあって、タグが特殊処理されていて、書式を引きずってしまうことも、削除してしまうこともありません。

Tageditortag

そんなわけで、タグ付き文書を扱うには TagEditor のほうが便利なのですが、逆に TagEditor では文字列でないためにタグ自体を検索することができない、という欠点があります(イタリック指定のタグだけ検索したいとか、そういうことがあるのです)。


2. 検索機能の違い

TagEditor の検索/置換機能がいかに使いものにならないかということは、以前すでに書きました。
リンク: # TRADOS - TagEditor の検索/置換機能

今回はもっと笑える話。

たとえば、原文では "KB" という単位が使ってあり、訳文ではこれを「KB」ではなく「キロバイト」と表記しなければならない規則になっている。そこで、訳文に「KB」が使われていないことを検索したい、とします。

こんなとき、Word 上では原文が隠し文字、訳文は通常文字になっているので、検索ウィンドウで書式オプションを指定すれば、訳文の中に「KB」がないかどうか、すぐに確認できます。ところが TagEditor ではそんな区別ができないので、検索しようとするといちいち原文中の「KB」も引っかかってしまう。

さて、TagEditor のウィンドウ下部にはこんなタブがあって、実は「原文のみ表示」と「訳文のみ表示」を切り替えることができます。それなら、「訳文のみ表示」した状態で「KB」を検索すればいい、と普通は考えるわけですが、これを実行するとどうなるか。なんと、

表示は訳文だけになっていても、見えない状態で存在しているらしい原文の該当箇所にヒットする

のです。判りにくいですが、上の例で言えば、訳文の中に「KB」が使われていなくても検索で該当なしとならず、見えない原文にヒットすることになり、この場合の目的には使えないわけです。Trados をお持ちの方はお試しください。

その 1 はここまで。

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2009.08.22

# Xbox 360 についての素晴らしい言い分

リンク: Xbox 360の故障発生率は54.2%、米ゲーム雑誌がアンケート調査 - Technobahn

参考の数値として、「PS3の故障発生率は10.6%、Wiiは6.8%」なのだそうで、さらには、

また、一度修理に出して再度、故障が発生した経験のある人は、Xbox 360で41.2%、PS3で14.7%、Wiiで11%と、Xbox 360の場合は一度修理に出しても再度、故障が起きる可能性が非常に高いことが判ったと述べている。

とか。問題は、この調査結果に対する Microsoft さんの言い分。

「マイクロソフトでは、Xbox 360は業界最良の保証を持つ最高のゲーム機であると考えております。マイクロソフトでは常に、ゲーム機本体のデザイン、製造工程、パフォーマンスの見直しを続け、潜在的にあらゆる問題が起こらないように厳密なテストを繰り返しています。その結果、Xbox 360は『もっとも遊ばれてるゲーム機』のタイトルを維持することができ、多数のゲーマーの方から圧倒的な支持を集めています。もし、Xbox 360に問題が起きた場合は、マイクロソフトにご連絡いただくか、www.xbox.com/supportのウエブサイトで問題の対処方法を参照することができます」

ほとんど、あるいはまったく根拠のない自画自賛を並べるのは、こういうときの常套手段ではありますが、それにしてもこの短い文章の中に、

「業界最良」
「最高のゲーム機」
「あらゆる問題が起こらないように」
「もっとも遊ばれてるゲーム機」
「圧倒的な支持」

と並べられては、別にアンチでなくとも白けてしまうでしょう。

ちなみに、その Microsoft さんによる翻訳スタイルガイドでは、

永久、永遠
完全、完璧
最高、最大級
世界一、第一位、トップをゆく

という "誇大表現" は避けるように指示されています。

そういえば、少し前に、「IT翻訳者の疑問」さんも、こんなエントリを書いていらっしゃいました。
リンク: 2009-08-11 - [Linguistic Reviewerの疑問]大げさな形容詞もきっちり訳出すべき?


11:55 午前 翻訳・英語・ことばアニメ・コミック・サブカル | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.08.19

# 言葉の順番 - さらにややこしく

また、マスナガさんのエントリに便乗です。
ネタ元: 言葉の順番がいかに重要かを示すひとつの例 - 頭ん中

順番を変えるとだいぶ印象が違う。
  * 今大事なのは仕事 いつも大事なのはお前
  * いつも大事なのはお前 今大事なのは仕事


文の前半と後半を入れ替えただけでこんなに差が出るということで、元は実に味わいの深い、いい話なのですが、私はこれを読んでとっさに、

「今/いつも」「仕事/お前」

の組み合わせを間違えたらどうなるだろう、と思ってしまいました。つまり、この名言をいいかげんに記憶していて、うっかり言い間違えたら、きっと大変なことになるだろうな、と考えたわけです。

  * 今大事なのはお前 いつも大事なのは仕事
  * いつも大事なのは仕事 今大事なのはお前

ほら。前者だと、ちょっとしたカタストロフが予想されますよね。元ネタの 2 番目より、たぶんマズイ展開になる。

ところが意外なことに、後者はシチュエーションによってはアリかもしれないのでした。

「いつも大事なのは仕事 今大事なのはお前」

これなら、<プロフェッショナルな職業意識> と、<"お前"に対する率直な気持ち> が微妙なバランスで伝わるような気がしません?

もちろん、時と場合によりけりですが。

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2009.08.18

# アダプト/アドプト、ふたたび

元ネタ: 禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # アダプト/アドプト、うーん

こんなことを書いてから数か月、とうとうお仕事の英文に出てきちゃいました、"early adopter"

キャッチーなカタカナ語が好まれそうな文章だから、やっぱり「アーリーアダプター」って書かなきゃいけないかなぁ。

11:57 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.08.15

# 原文ライターも、すこしは考えて書いてほしい

<主語> enables <人など> to ...

みたいな文型をいかにうまく処理するか。

ってのは、おそらく翻訳のかなり初歩のうちに習得するテクニックのひとつだろうと思うのですが、ときには、「付き合ってらんねー!」と言いたくなるような原文だって、ないわけじゃありません。

つい先ほど見かけた英文でも、1 パラグラフにこんなセンテンスが 4 つも続いていました(製品名はすべて同じ)。

<製品名> enables...
<製品名> allows...
With <製品名> , you can...
<製品名> allows...

芸のないこと甚だしいと思うのですが、英文としては、こんな風に書いてもあまり抵抗ないんでしょうか。

02:18 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2009.08.14

# 全体にかかわる

昨日書いた「国民的」。

「全体にかかわるさま」がどうにも気になるので、いただいたコメントも受けつつ、もう 1 回続けてみました。

> はじめてきいたのは、国民的美少女コンテストでしょうか。1987年だそうです。

私も、あの言い方以前にはあまり耳にした記憶がありません。正確には「全日本国民的美少女コンテスト」というんだそうですが、歴代の優勝者の名前を見ても、少なくとも私にはまったく「かかわっ」てなどいません。

これを企画した芸能事務所あたりが、「国民全体にかかわる」ようキャンペーンを展開した、そのための標語が「国民的」だったというにおいがします(もしかしたら、戦争中の国威発揚周辺でも使われていたのかもしれませんけど、そこまでは調べてません)。

そんな大衆芸能的な押し付けが、そのまま国語辞典の語義になったんでしょうか(ちなみに、「全体にかかわる」という定義は『大辞林』でも『国語大辞典』でもおおかた同じです)。

広辞苑(ただし第 5 版)に、「~的」で終わる語は 380 あります。「的」の意味がそもそも茫漠としていますが、それでも「国民的」と同じように「全体にかかわる」という意味を持つ語はほかにもありそうです。ところが、それに近い語としても、

国際的 = 諸国家に関係を有するさま
社会的 = 社会に関するさま

などがあるだけで、全文検索しても「全体にかかわる」と定義されているのは「国民的」だけのようでした。

語義として正確を期すなら、せいぜい「広く国民に関心を持たれている」くらいじゃないかなぁ。

11:10 午前 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2009.08.07

# PDF ファイルについての愚痴

むかしっから、PDF というやつが大嫌い です。

フォーマットもリーダーも。

プラットフォームフリーとかレイアウトの忠実な再現性とか、まあ長所はそれなりにあるんでしょうけど、どちらかというとそれは、「ドキュメントを作成する人たち、見せたい側」にとってのメリットであって、ユーザーには不便さばかりが強いられている、そんな気がします。

まして、そのファイルの情報をいろいろに使いたいこの稼業にしてみれば、腹の立つことだらけです。

とにかくどうにかしてほしいのが、Acrobat Reader の検索機能の使いにくさ。検索履歴は残らないし、複数ファイルを検索する場所指定のダイアログはお粗末だし。無料ツールなんだから、という言い訳は通用しません。これが公式のリーダーとしてまかり通っているのですから。

翻訳作業でとかく支障になるのが「セキュリティ」の設定。テキスト抽出不可とか、コピー不可とか、ひどいときには印刷さえ不可に設定されていることがあります。著作権保護したいって意図はわかりますが、翻訳会社(あるいは翻訳者)に渡すときくらい、ちょっとは考えてください。

それよりさらにヒドい場合には、文字情報がない、つまり各ページがただのグラフィックとして PDF 化されているファイルなんてのがあったりします。文字情報がないから、検索すらできないわけで、そんなものは電子ファイルでもなんでもなく、ただの紙と同じです。

「過去の資料です」といって、そんな利用価値のまったくない PDF ファイルを送ってくる、そんな翻訳コーディネータさんがいるのも考えものです。

12:38 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.07.27

# 抜鉤

手術後 2 週間も過ぎたので、傷口は完全にくっついていますが、、最近は糸ではなくホチキスのような針状金具でとめるので、「抜糸」とは言わず「抜鉤 = ばっこう」と言うのだそうです。

以上、入院マメ知識でした。

07:52 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (9) | トラックバック (0)

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2009.06.30

# Studio 2009 レポート - エディタ上の検索機能

TRADOS 社が満を持して、というか相当の覚悟をもってアーキテクチャを刷新しただけあって、実際に操作してみると、今までのインターフェースで不満だった点が随所で改善されていることが判ってきました。

ただし、今はまだファーストインプレッションの段階であり、それが実際に使いものになるかどうかは、もう少し様子を見る必要があります。

まず気づいたのは、エディタ上の「検索/置換」機能です。

機能改善 - 検索/置換

Editorsearch

このショットの[検索と置換]ダイアログを見れば一目瞭然ですが、TagEditor 上より数段向上しています(つーか、今まではショボすぎたわけですが)。Word の検索機能と同レベルとは言いませんが、[使用]というオプションをオンにすると、[ワイルドカード]と[正規表現]が両方使えるということになっています。正規表現では、具体的にどんなパターン表現が使えるのか、ヘルプ(英文)を見てもよく判らないのですが、基本的なパターンは使えました。

ところで、このダイアログで誤訳発見です。

[ファイルの場所]と書いてあるので、てっきりgrepが可能なのかと思ったのですが、ヘルプを見てみると原語は "Look in" らしく、つまりは「検索範囲」のことなんですね。ここで[選択]を選ぶと選択範囲のみから検索できるというオプションです。

ヒットした箇所のハイライト表示もかなり見やすい。

11:53 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (2) | トラックバック (0)

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# Studio 2009 レポート - てはじめに

詳細レポートの第 2 弾、実質的なファーストステップです。

アーキテクチャもインターフェースも一新となった今回のバージョンアップ。いちばん気になるのは、「今までとどう違うのか、従来のプロセスをどう変える必要があるのか」という点だろうと思います。そこでまず、私の手元にある、今までと同じジョブのセットを Studio 2009 で「プロジェクト」としてスタートする手順を示してみました。

セット内容は、メモリー 2 つと、作業対象の rtf です。用語集は含まれていません。

プロジェクトの新規作成

「プロジェクト」という考え方は今回が最初ではなく、2007 Suite から始まっています。要は、ターゲットファイル + メモリー + 用語集という複数のファイルを 1 つのセットにまとめ、その設定情報を XML 形式で保存しておく、ついでにプロジェクトの進捗(既訳と未訳の量)なども管理してしまう、という発想です。

従来のように、ファイルとメモリーを別々に開いて作業することも可能かもしれませんが、まずは「プロジェクト」を新規作成してみました。

[ファイル]→[新規作成]→[プロジェクト]

を選択して、ウィザードに沿って進みます。1)プロジェクト名やパスの設定、2)ソース/ターゲットの言語設定、3)ターゲットファイルの選択(ファイル単位/フォルダ単位)、あたりまでは特に問題なく進められます。その次がメモリーの設定になりますが、既存のジョブを 2009 環境に移行する場合は、ここが最初のポイントになります。

Projmem

Studio 2009 からはメモリーが、*.sdltm というファイル形式に変わりますが、このステップで[追加]ボタンを押せば、従来形式(*.tmw またはエクスポートした *.tmx)のメモリーを変換して追加することができます。ただし、私の環境では直接 *.mtw を選択するとエラーになってしまい、*.tmx しか受け付けてくれませんでした。

メモリーを旧形式から変換するときは細かいオプション設定も可能ですが、ひとまずデフォルト設定で問題なく変換されました(tmx ファイルは、あらかじめ 2007 上でエクスポートしておきました。形式は「tmx 1.4」を選択したので、それ以外の形式が正常に変換されるかどうかは未検証です)。

新機能 - 1 つのプロジェクトで複数のメモリーを指定可能

上記の過程で、メモリーは複数指定することができるようになりました。今回は 2 つ指定したので、こんな風になります。
Projmem2

このショットのチェックボックスでも判るように、各メモリーを検索対象にするかしないかを指定できるほか、メモリーごとにペナルティも設定できるので、複数メモリーの優先度をここで調整できることになります。

新機能 - 事前プロセスの一括処理

プロジェクトの設定が終わると、指定したメモリーとターゲットファイルを使って、事前処理が始まります。以前は個別に行っていた、解析→翻訳(既訳の埋め込み)という一連の作業を一括で処理できます。
Pre

このプロセス周りについても、けっこう細かい設定が可能になりました。
たとえば、このステップでは、
Pre04_2

些細な追加ですが、解析結果を示す数値範囲を変更できるようになっています。

プロジェクトの完成

これまでの手順でプロジェクトの設定が終わると、メインの画面にこんな風に表示されます。
Project

インターフェースの好みは人それぞれですが、「未翻訳」と「翻訳済み」のバー表示とか、見やすさに工夫があることは一定度評価できるかと。

このメイン画面で、ファイルを選択して実際に翻訳する場合は左ペインの[ファイル]ボタンをクリックし、開いているファイルの編集に戻る場合は[エディタ]をクリックします。で、メモリーを操作する場合は[翻訳メモリ]をクリック、というように機能ごとに画面を切り替える、まあ、ありがちな統合インターフェースではあります。

ファイルリストはこんな感じですが、
Filelist

このような概要表示だけでなく、解析結果とか進捗ステータスとか、いろいろと「プロジェクト管理」的な発想で表示を切り替えられるようになっています(翻訳者として使える機能かどうかは別)。

ファイルをエディタ上で実際に開いたところは......えーと。今回は、私の実際のジョブファイルをプロジェクトにしてみたので、ちょっとエディタ画面はお見せできないんでした。アハハ。

「てはじめ」としては、ひとまずここまで。

10:17 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2009.06.24

# Jamming の検索語入力ウィンドウ

辞書検索ソフトである Jamming は使い勝手がよく、私もしばらく前に DDWin から乗り換えたのですが、現時点でひとつだけ、いただけない点があります。

それは、検索語を入力するウィンドウが

「コピーした文字列の書式を維持するらしい」

ということ(Rich Text Format 対応してるという、感じかな)。

つまり、Word とか PDF のように文字が書式情報を持っている場合、それをコピーして Jamming の検索語入力ウィンドウに貼り付けると、フォントのサイズやカラーがそのまま反映されてしまう。これ、ときによっては非常に煩わしいわけです。

もうひとつ、Trados の TagEditor を使っている場合にコピペがうまくいかない、という問題もあるのですが、これは話が specific すぎるので省きます。

12:49 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.06.23

# IT翻訳者をピクっとさせる10の発言

ちょっと真似してみました。

オリジナルは WIRED VISION に載ったこんな記事。
リンク: オタクをピクっとさせる10の発言 | WIRED VISION
原文: Top 10 Ways to Provoke a Geek Argument | GeekDad | Wired.com

「はぐれプログラマ清純派」の MW さんによるバージョンがこちら。
リンク: はぐれプログラマ清純派: プログラマをピクッとさせる10の発言

以下、順序はあまり意味がない模様。

10. 辞書は何を揃えれば大丈夫ですか?

どんなに揃えても "大丈夫" にはなりませんけど、それでも色々あるに越したことはありません。


9. Trados って自動翻訳ソフトですよね

「半自動」ですらありません。


8. grep って何ですか?

私が IT(ローカライズ)業界に入ろうとした頃、「まず UNIX のことはひととおり抑えておけ」というアドバイスを見かけたことがありました。今でも有効だと思います。


7. エディタよりワープロソフト

ワープロ専用機で翻訳していた時期はしばらくありました。20 年以上前のことですが、今の Word よりよほどキビキビ動いてた気がします。


6. Word のオートコレクト、便利です

Office をインストールしたら、「オートコレクト」のオプションは基本的にすべてオフにします。


5. PDF ってきれいで見やすいですね

リーダーの検索機能がいっこうに使いやすくならないのは、どうしたものかのぉ。


4. ショートカットって覚えられなくて

マウスで[編集]→[コピー]を選択してる人がね、ローカライズの現場にもいるようないないような。


3. マニュアルの訳って定型ばっかりでしょ

たしかに定型は多いですけどね。


2. interface をカタカナで書くと?

「インタフェース、インターフェース、インターフェイス……」
類題: 「丸カッコは全角ですか半角ですか?」


1. え、かな入力!?

完全に個人的な話ですけど :)


一部については、「IT に限らない」という声も聞こえてきそうです。

ちなみに、「ピクっとさせる」の原語は Provoke ですが、ここでは感情は別として、「とにかく語りまくるきっかけを与えてしまう」ということですね。

When we get well and properly provoked, though, watch out! We won’t stop talking until every last point that we can think of has been made at least twice.

翻訳者にはおしゃべりが多い

ですから。

02:18 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.06.20

# Studio 2009 レポート - システム要件

詳細レポートの第 1 弾です。

まず、自分がひっかかった点を含めて、システム要件を挙げておきます。

この情報って、本当は購入/アップグレードする前に簡単に確認できるようになっているべきなのですが、例によって TRADOS さんのサイトでは見つかりません。

ハードウェア要件
- プロセッサ: Pentium4 1GHz 以上、RAM: 1GB 以上(最小)
- プロセッサ: デュアルコア以上、RAM: 2GB 以上(推奨)
- グラフィック: 1280 x 1024 以上

===>
快適に動かすには、それなりの環境が必要です。ちなみに、私が今回インストールした環境は、
Core2 Duo(1.66GHz)
RAM 2GB
というサブマシンですが、それでも起動や PDF ファイルのオープンは遅いと感じます。


オペレーティングシステム
- Windows XP SP2 以上
- Windows Vista SP1 以上

===>
間もなくリリースされるはずの Windows 7 がリストされていないのですが、ディスク領域の要件を書いてある別の箇所には Windows 7 も挙がっているので、たぶん大丈夫なんでしょう。


ソフトウェア要件
- Microsoft Word 2003 以上(2007 推奨)
- Microsoft Excel 2000、2003、2007

===>
私が今回ひっかかってしまったのがここでした。
今回インストールを試したマシン、実はまだ Office が XP (2002)のままでした。その状態だと、Word ファイルは開けるのですが、PDF を Studio 2009 上で開くことができませんでした。あわてて Office 2003 をインストールしたら PDF も開けました。

ちなみに PDF ファイルの場合、「コピー不可」などのセキュリティがかかっていると開けません(詳細はいずれ)。また、PDF から書式情報を維持して Word に落としたファイルは、フォント変更情報などが多すぎて実用に耐えないようでした。


その他
システム要件が書かれているヘルプのページには、「以前のバージョンの SDL Trados を削除する必要はない」と書いてありましたが、これはおそらく、「それぞれ正規ライセンスを所有している場合」の話と推定されます。

前エントリで書いたように、アップグレードライセンスの場合、旧バージョンがある状態で 2009 をインストールしようとするとエラーが出ます。

11:04 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (2) | トラックバック (0)

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# SDL Trados Studio 2009 - ライセンス更新とインストール

ライセンスのアップデートについて TRADOS から回答があったので、さっそくインストールしてみました。まだ Studio 2009 の実用には至っていないので、今回はひとまず、ライセンス更新とインストールについてのレポートです。

私は現在、
- SDL Trados 2007 のライセンスを所有
- SDL Trados 2006 をメインに使用
という状態なので、「Studio 2009 にアップデートするとき 2007 のライセンスを返却したら、2006 も使えなくなるのか?」という点が最大の疑問でした(2006 と 2007 移行では、ライセンスの認証方法が異なる)。

TRADOS さんからは、次のような回答がありました。

Trados2007のライセンスを返却すると、Trados2009Studio(新)とTrados2007(再)のライセンスが発行されます。 この手続きはTrados2006のライセンスに影響いたしません。

SDL Trados 2006 は引き続き使えるようなので、ライセンス返却に踏み切りました。以下の Flash ページが参考になりますが、おおまかな手順はこんな感じです。
リンク: Accessing and upgrading your new license

1. SDL Trados 2007 の License Manager を起動してライセンスを返却
この手順を実行するまで、Studio 2009 のライセンスは表示されません。

2. SDL TRADOS サイトにログインし、「マイライセンス」ページで新しいライセンスを表示
返却すると「マイライセンス」ページが更新され、Studio 2009 のライセンスを表示できるようになります。

3. SDL Trados 2006、2007 をアンインストール
実は当初、2007 だけアンインストールし 2006 は残した状態で Studio 2009 をインストールしようとしたのですが、「古いバージョンがインストールされているよ」というメッセージが出てエラーになりました。つまり、「2006 のライセンスは残るが、Studio 2009 と同じマシン上で共存はできない」ということになります。言い換えれば「2006 は別のマシンで使ってね」と。ここんとこ、注意が必要です。

4. SDL Trados 2007 Suite をインストールし、ライセンスをアクティベート

5. SDL Trados Studio 2009 をインストールし、ライセンスをアクティベート
2009 をインストールする際、.Net 3.5 SP1 がインストールされていない場合は自動的にインストールが始まります。ただ、今日は Microsoft のサイトへのつながりが悪かったのか、ちっともインストールプロセスが進みませんでした。 しかたがないので、先に .Net 3.5 SP1 を手動でインストールしました(このときも、デフォルトのインストーラではなくフルパッケージをインストールしたほうが速く終わるようです)。

両方のライセンスをアクティベートすると、「マイライセンス」ページはこんな風になりました。2006 のライセンス(ソフトキー)が残っています。
Sdllicense

License Manager ではこのように表示されます。
Sdllicensemanager_2

ちなみに、Studio 2009 の起動時間はけっこう長い模様。

12:20 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.06.19

# Perl スクリプトを作ったり

退院後は、様子を見ながらぼちぼち仕事に復帰している状態なので、今はまだ時間に少し余裕があります。リハビリを兼ねて、以前からの懸案だったスクリプトをひとまず完成させてみました。




Trados ユーザーの中でもほとんど知られていないようなのですが、Trados 翻訳したバイリンガル状態の Word ファイル上で何通りかの訳文チェックができる補助ツールが、かつて公開されていました。

Omiso.dot という Word テンプレートの形式で、これを組み込むとこんなツールバーが用意されます。
Omiso

- 訳抜けチェック
- 英日比較(タグ、数値の整合)
- ルールチェック(違反用語など)
- 用語チェック(英日の用語対応)

といった機能があって、Word ファイル上で Trados を使うときはそれなりに重宝します。が、バージョン 2.05 を最後に更新も公開もされなくなり、作者さんのページも不明になってしまいました。

このツールの「用語チェック」は、たとえば filer 「ファイラ」と filter 「フィルタ」を読み間違え/打ち間違えている箇所の検証に使えるので、私のような粗忽者翻訳者にはありがたい機能です(単語レベルでの訳抜け確認にもなる)。ところが、残念なことに検索のロジックがアバウトであり、大小文字の区別がない、単語単位を識別しない(tab と table が区別されない)、正規表現が使えない(単複や動詞語尾に対応できない)など、実用性がまだまだでした。

しかたがないので、同じ機能を Perl スクリプトで再現してみました。生半可 Perl ユーザーによるナンチャッテ・スクリプトではありますが、上記の欠点はひとまずすべてカバーできたと勝手に満足しています。

09:46 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2009.06.16

# SDL Trados Studio 2009 へのアップグレード

入院する直前に SDL Trados Studio 2009 のセミナーがあって、入院中に製品版とアップグレード版のダウンロードが始まっていました。

退院してさっそくダウンロードしてみましたが、新規購入ではないアップグレード・ライセンスの場合、ちょっと注意が必要のようです。

SDL TRADOS のサイトに、次のような注意書きがあります(> ホームページ > ショップ > デスクトップ製品)。

SDL Trados Studio 2009にアップグレードされる方には、SDL Trados 2007 Suiteの永久ライセンスも提供されます。 両製品は同時にインストールすることができます。 新しいライセンスを受け取る前に、以前のソフトウェアライセンスを停止する必要がありますので、ご注意ください。 SDL Trados 2007 Suite以前のバージョンを使用し続けたい場合は、新しくフルライセンスのご購入を検討されることをお勧めします。

つまり、私のように SDL Trados 2007 からアップグレードしただけの場合、

●SDL Trados Studio 2009 と SDL Trados 2007 Suite 両方のライセンスを受けられる(共存インストールが可能)
●ただし、そのためには以前のライセンスを返却する必要がある

ということのようです。これだけの寡占企業にしては、なんだかケチくさい、しみったれた話ですよねぇ。

2007 のライセンスを返してしまうと、SDL Trados 2006 も使えなくなるのかどうか、今ちょっと問い合わせ中です。

ちなみに、
 - SDL Trados 2006
 - SDL Trados 2007
 - SDL Trados 2007 Suite
という 3 つの製品、前から書いているようにコアの翻訳メモリ周りはほとんど変化していません。

・SDL Trados 2006 に SDL Trados Synergy というプロジェクト管理の統合環境を追加したのが SDL Trados 2007。
・SDL Trados 2007 に Passolo(ローカライズツール)を追加したのが SDL Trados 2007 Suite。

というだけです。SDL Trados 2007 Suite の本体部分は、SDL Trados 2007 SP3 であると、リリースノートに書いてありました。

いずれにしても、今回は製品のアーキテクチャ自体が大きく変わるだけでなく、このようにライセンスポリシーまで変わるということで、ユーザーはあちこちで混乱しているに違いありません。Trados の ML では、インストール途中の不具合も報告されているようですし。

そんなわけで、Studio 2009 の実用レポートはまだ少し先になる予定。

02:33 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.05.27

# SDL Trados Studio 2009 紹介セミナー、その2

今回の紹介で判った範囲で、細かい機能について触れておきます。

まず、前回のエントリで勝手に予想した機能から ---

AutoSuggest
Idiom の Suggestion 機能(訳文の一部を勝手に置き換える)と同じかと危惧しましたが、違ってました。Google ツールバーとか ATOK でおなじみの「入力内容の推測機能」のことです。独自に用意した辞書やメモリの内容から、入力内容を推測して提示するそうです。ドキュメントの性質によっては便利かも。

Context Match
これは前回の予想どおり、Idiom の ICE マッチを踏襲した機能です。

リアルタイムプレビュー
XML ファイルにどのくらい対応できるのか、聞きそびれました。

PDFファイルのサポート
ファイルを開くとき以外は、思ったほど重くない感じで動いていました。ただし、当たり前ですがセキュリティ設定でコピーとかテキスト抽出が不可になっているファイルには対応しません。

複数メモリへの対応
リスト上の順番で優先順位を指定できるほか、画面を見たところ、メモリごとにペナルティを設定するとか、それなりに細かい設定項目がありました。


つづいて、今回わかった内容 ---

自動翻訳
はなっから、たいして期待はかけていない機能ですが、なんでも自動翻訳用のサーバーにアクセスして訳文を構成させるんだそうで。まず使いものにならないでしょう。

Auto Propagation
複数回出現している原文に訳文を反映させる機能。今までの Trados ではファイルをいちど閉じて[翻訳]コマンドを実行する必要がありました。Idiom から踏襲された機能ですが、Idiom より動作がまともそうでした。

メモリ内の訳語検索
今までできなかったのが信じられない、というところですが、訳文に対しても訳語を検索できるようになります。検索精度がどのくらい変わるのか、あまり突っ込んで聞き出せなかったのですが、「大小文字の区別」と「ワイルドカード指定」のオプションはさすがに追加されてました。

メモリのメンテナンス
メンテナンス用の画面はだいぶ使いやすくなるようです。メモリの内容がスプレッドシート形式で表示され、かなり簡単に編集できる模様。

キーボードショートカットのカスタマイズ
こんなもん、今さら謳い文句になるほうがどうかしてますが、信じられないことに今までは TagEditor でも Workbench でもカスタマイズはまったく不可でした。

その他
XLIFF 形式に対応(バイリンガル形式の XML ファイル)
バッチ処理(解析、翻訳など)の機能を改善
バイリンガル状態で HTML として出力可能

--------------------
インターフェースが大きく変わるので、今まで Trados も Idiom も使っていた人なら比較的スムーズに移行できそうですが、Trados オンリーだった方がいきなりこの環境に移るのは難しい気がします。

もうひとつ、今までスタンダードだった MS Word 形式のバイリンガルファイルが使われなくなるということで、たとえば今までその形のファイルでレビューを行っていたクライアントなども、簡単に移行はしないでしょう。SDL TRADOS さんとしては、「ソースクライアントも Studio 2009 を用意する」ことを想定して、その路線で営業をかけるものと想像されますが、どーなんでしょうね。

翻訳者の側にしても、基本的には翻訳ベンダーやクライアントに指定されたバージョンの Trados を使うはずで、独自に Studio 2009 の導入に踏み切るというケースは多くないでしょう。

10:08 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (8) | トラックバック (0)

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# SDL Trados Studio 2009 紹介セミナー、その1

4/25 のエントリで書いたように、SDL Trados で大幅なバージョンアップが予定されており、その紹介セミナーに行ってきました。

5/26 の午前中が個人ユーザー向けで、たぶん午後が企業ユーザー向けだったようです。

予定されていた定員数からすると参加者は少なかったようでした。

インターフェースが大きく変わって、Idiom クライアント(Desktop Workbench)に似た統合環境になるというのは 4/25 に書いたとおりです。

- 原文-訳文が横並び表示される
- その間のカラムにマッチ率やステータスなどが表示される
- Context Match 機能がある

などなど、インターフェース的にも機能的にも Idiom がベースになっている部分が多いのですが、

- Idiom 用のパッケージを開ける

という説明がありましたので、一般的なファイル形式に対応するだけでなく、Idiom 翻訳プラットフォームについてもこの統合環境で対応するという意図のようです。

※質問したところ、従来の Idiom Desktop Workbench はすでにメンテナンスモードに入っており、バージョンアップはないとのことでした。

インターフェース画面を見たときから、Idiom クライアントの欠点がそのまま引き継がれているのでは、ということが心配でしたが、デモで見る限りそれはないようでした。さすがに、これだけのメジャーチェンジということで従来製品の "いいとこどり" に仕上がっていると期待できるかもしれません。

ただし、マッチ率の計算ロジックとか、メモリ内検索の機能性とか、肝心な翻訳エンジンの部分がどの程度改善されているかは、今回の紹介ではわかりませんでした。

実際のリリースは 6 月ということなので、使えるようになったら使用レポートをアップする予定です。

10:07 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.05.13

# Internet Explorer 自動更新に注意

しばらく前から、Internet Explorer 8 への自動更新が始まっています。

Windows Update をフルオート(更新があったら勝手にダウンロードしてインストール)に設定していると、もしかして自動で更新されてしまうのでしょうか。

Trados のメーリングリストに山本ゆうじさんが投稿した情報によると、I.E.8 にアップデートすると Trados の用語管理ツールである MultiTerm 7 で、機能の一部に不具合が生じるそうです。

これに限らず、Internet Explorer のエンジンを内部利用しているツールは 8 に対応していないことが考えられるので、自動更新は注意が必要です。

翻訳関係ですと、Idiom WorldServer Desktop Workbench も、プレビュー機能に Internet Explorer エンジンを使っているので、影響があるかもしれません。ご注意ください。

01:10 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2009.04.25

# SDL Trados 2009 - ついにメジャーチェンジか?

SDL Trados から、SDL Trados 2009 の紹介ウェビナーやセミナーの案内メールが届きました。

リンク: SDL Trados Studio 2009: 革新的技術を提供
(こちらはフリーランス版のページです)

スクリーンショットを見てみると......

Sdltrados2009

なんだか Idiom ライクですよ......

SDL、Idiom と大きなプラットフォームを吸収しておきながら、今まで Trados 本体に大きな変化はありませんでしたが、ここに来てついにインターフェースごと大きく変わることになったようです。翻訳インターフェースとして Word や TagEditor を使うのではなく、翻訳画面、メモリ、用語集をすべて統合した独自環境になるようです。

2007 からのアップデート料金はわりと手頃なので、今回はちょっと手を出してみようかと思います。5/26 のセミナーにも出席する予定ですので、詳しくはその後またレポートしたいと思いますが、現時点でこのサイトの内容を勝手に解説してみます。

AutoSuggest
入力時に翻訳メモリ内の語句を提示し、セグメント一致をしのぐ機能を提供します。
これ、もし Idiom と同じ Suggest 機能だとしたら、かなりいただけないことになります。Suggestion と称して、訳文の一部を勝手にメモリ内の訳語と入れ替える機能ですが、日本語でこの機能がまともに役立った記憶はほとんどありません。
コンテキスト一致
ロケーションとコンテキストを認識することで「100%超」の一致を実現し、最適な翻訳を実現します。
これはきっと、Idiom プラットフォームで実装されている、「100% 一致のうち、前後のセンテンスも見比べた位置関係で確定する」という機能です。それなりに有効ではあります。
リアルタイムプレビュー
完成したドキュメントを確認しながら翻訳できるため、DTPの作業時間が短縮し、翻訳の調整がしやすくなります。
なかなか便利そうに聞こえますが、ターゲットが XML ベースの場合、正しいスタイルシートを指定しないかぎりプレビューはできないでしょう。もし、汎用的なスタイルシートを用意して擬似的なプレビューが可能だとしたらほめてあげたいところです。
リアルタイムのQAとスペルチェック
翻訳時の間違いやスペルミスを瞬時に修正し、一貫性と正確性を確保します。
Trados の現状の QA 機能だってまだまだ使えないレベルですけどね......
PDFファイルをサポート
PDF用の新しいフィルタが欲しいというご要望に応えました。 オリジナルのソースファイルを入手できない場合でもPDF文書のプロジェクトを受注できます。
重そうだよなぁ。
優先順位を指定できる翻訳メモリ
複数の翻訳メモリに同時にアクセスし、翻訳メモリの使用方法を柔軟に制御できます。
複数メモリへの対応は大きな進歩ですが、問題はメモリをエクスポートして手軽に扱うことができるかどうか、ですね。TMX(翻訳メモリの標準形式)はサポートしているみたいですが。

ここまで大きく変わると、翻訳会社でも作業フローをいろいろ変更しなきゃならなくなりますから、翻訳案件が「2009 指定」となることは当分ないでしょうね。よほど劇的にプロジェクト管理が簡単になるとか、コスト削減につながるとか、目に見えるメリットがないかぎり。

07:10 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2009.04.22

# いろいろと文句ばっかり言ってるけれど

ふだん Trados にも Idiom にも文句ばっかり言ってますが、世の中には、もっとヒドい翻訳環境があるということを知りました。

とあるシステム上で動作しているキャラクタベースの画面で翻訳しなければならない案件があり、別にキャラクタベース自体は嫌いじゃないのですが、Windows 上で動いているというのに、キー操作が一般的な Windows 環境とあまりに違うので、もう発狂しそうでした。

何より、キャラクタベースなのにコピーやペーストにはマウスを使わされるという、いったい何を考えてるのか判らない設計でした。

10:42 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.04.14

# supercalifragilisticexpialidocious みたいな話

4 月上旬は何かと忙しかったので、元ネタがちょっと古くなってしまいましたが、

リンク: 日本語の人と英語の人でIDやURLの付け方がちょっと違う - 頭ん中

どうも英語の人はアンダーバーで区切らずに "austinpowers" とつなげて書くことが多い気がする。

これに限らず、あちらの方の書く英語表記って相当いいかげんです、というお話。

関連エントリ: 禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # Server か「サーバー」か

IT 系の文章では、「続けて書いてある語句や全大文字の文字列は、変数やクラス名、関数名などを表す」という暗黙の了解があります。

EventListner
getValue
TEMP
windir

こんな感じのやつですね。

ふつうのヘルプやマニュアルなら文脈があるので、原文の表記がいいかげんでも、おおむね判断に困ることはないのですが、文脈のない UI 翻訳で原文が雑だと、かなり困らされます。

hostname
host name
Host Name
HOSTNAME

こんな風に混在していると、どの表記で何を言いたいのか、まったく意図を理解できません。

なんでこうイイカゲンなのか、と日本人としては不思議に思いますが、考えてみれば英語として見ているかぎり、どう表記されていても差はないんでしょうね。

hostname
ホスト名
[ホスト名]
HOSTNAME

日本語で訳し分けようとするから、どれにしようかと悩まされる。そーゆー言語上の壁があるので、おそらくこの辺の事情をいくら説明しても、原典ライターやプログラマーさんたちには、どう説明しても通じにくいんだろうなぁと想像します。

それにしてもあまりに長いのをつなげて書いたら 人の目で識別しにくくなるだろうにと思ったんだけど

つなげて長~く書かれてもうひとつ困るのは、ファイル名ですね。

administrationheledittemplatedefinitiondetail

とか(といって、スペースは入れないでほしいんですけどね)。

04:41 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.03.30

# curiouser and curiouser

少し前のエントリ。、
# 翻訳者にとっては特に "キラー" ではなく

に、curiouser さんからコメントをいただきました。curiouser さんは、私が間違っていなければClear&Concise というブログを運営なさっている翻訳者さんです(ご本人のプロフィールによれば、職業は「翻訳 etc」ですが)。

このハンドルネーム、わかる人にはすぐピンとくると思います。

私のハンドルが以前は Madhatter だったということは以前書きましたが、curiouser というお名前も、--- ご本人の意向は別として --- 直接の出典は同じ "Alice's Adventures in Wonderland" です。

3 音節もある形容詞 curious の比較級が -er 形でないということは中学生でも知っていることですが、あの強烈な物語の中でも、冒頭すぐに登場するこのフレーズは非常に印象的でした。

"Curiouser and curiouser!" cried Alice (she was so much surprised that for the moment she quite forgot how to speak good English).

antipodes なんていう、ふだんまず使わない単語と、「対蹠点」という訳語を覚えちゃったのもこれを読んだときですね。

恩師のおかけで、原文の Alice にはかなり早い頃に触れたと記憶しています(ぼろぼろになった Puffin Book 版が今でもどこかにあるはず)。原書を読みながら、故・岩崎民平の訳本も鑑賞するという、今思っても素晴らしい授業だったと思います。

12:59 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (13) | トラックバック (0)

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2009.03.24

# アダプト/アドプト、うーん

最初の書籍化の頃から愛読しているブログのひとつ、「それほど間違ってないプログラマ用語辞典」さんで拾ったネタより。

こういうタイミングでIE8を入れるような層のユーザをなんて呼ぶんでしたっけ。マーケティング関連の記事でたまに見かけた記憶があるのですが、ベータ版を使うような人柱的なポジションじゃなくて、流行り始める初期段階で先取りして試す人たち。うーん、思い出せない。。。

それに対するコメント。

アーリーアダプター? http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/earlyadapter.html

私もおぼろげながら見た/聞いた記憶がありますが、見るからに "怪しいカタカナ" 語です。

リンク先の @IT 用語集にはこう書いてあります。

アーリーアダプター(early adopter/アーリーアドプター/初期採用者/初期少数採用者)
新しい商品やサービス、技術や知識、ライフスタイルなどが登場したとき、早い段階でそれを購入・採用・受容する人々(層)のこと。

カッコして「アドプター」と書いてありますが、つまり adapter じゃなく adopter なんですね。

ためしに "early adapter" をググってみると、なんかいろいろ出てくるみたいです :P
(生物学周辺でなら使いそうかな、と思ったんですけど)

ちなみに、社会学者が提唱した分類概念なんだそうですが、

- イノベーター(革新的採用者) innovator
- アーリーアダプター(初期採用者) early adopter
- アーリーマジョリティ(初期多数採用者) early majority
- レイトマジョリティ(後期多数採用者) late majority
- ラガード(採用遅滞者) laggard

原語ならそれなりに決まるんでしょうけど、それにしても、こういう学術用語の訳語って(もう少し何とかならんのか|決めるの大変だよね|関わりたくないなあ)。

06:21 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (1)

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2009.03.12

# うっかりミス

今日は、日本翻訳連盟が開催している「翻訳環境研究会」で、「翻訳品質定量評価への長い道のり」という講義を聴いてきました。

タイトルから想像されるとおり、翻訳品質の評価を定量的に、つまりある程度数値として管理するという試みに関するお話で、これは翻訳会社にいた頃から私も関心のあるテーマだったからです。

翻訳業界のことを知っている人ならおおかた予測できるとおり、万能万全のシステムでできているわけではもちろんありませんが、部分的になかなか興味深いお話を聴くことができました。

個人的におもしろかったのは --- 講師さんのオリジナルではなく伝聞知識だということでしたが ---、「うっかりミス」を防ぐ心得という、最後に出てきた余談。

「うっかりミス」などと雑駁にひとくくりにしているかぎりミスをなくすことはできない。「繰り上がりミス」とか「写しミス」のようにきちんと分類して、それに向き合うことが大切なんだということ(元々は子供の勉強の話だった)。

翻訳の場合にも、ミクロな見直しとマクロな見直しを有機的に組み合わせることができればいい --- 講師の方はそのようにまとめていました。

11:14 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2009.03.11

# こちら、そちら

買い物の途中で見かけた、とある駐車場の注意書き。

そちらの側から進入することはできません

なんか矢印も書いてあるみたいでしたが、「そちらの側」と言われても、どのあたりなんだか......

08:56 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2009.03.03

# 冗長な訳文ができあがってしまった原因

冗長な文章を書かないようにするにはどうすればいいか、という記事の訳文が皮肉なことに冗長な文章の見本みたいなものになってしまった(←こんな風に)という、笑えるような笑えないような翻訳話。

ネタ元は「IT 翻訳者の疑問」さん、それを元に Buckeye さんが原因を分析しています。

リンク: 2009-02-27 - IT翻訳者の疑問

リンク: Buckeye the Translator: 長い訳文・短い訳文

Buckeye さんによれば、訳文が長くなったのは

キーワードの選定とキーワードをつなぐ「トッピング」の選定がまずかったから

とのことですが、私はもうちょっと具体的にツッコミを入れてみます。

なぜそういう気になったかというと、この手の翻訳って、

  ★経験がそれなりにある IT 系の翻訳者にありがちな訳文

だよなぁ、と同業者として感じたからなのでした。

Buckeye さんとは逆に、元訳文と Buckeye さんの訳文の違うところを強調してみると、この訳文の特徴がよく判ります。

文章を簡素化することで、伝えたい内容をより明確かつ説得力のあるものにすることができる。本記事では、回りくどい表現を避けることで、文章をすっきりとさせ、読み手により強く訴えかけられるようにする方法を、実例を交えて紹介する。
あなたの書く文章は冗長なものとなってはいないだろうか?もしそうであれば、あなたは自らの時間と、読み手の時間を無駄にしてしまっていることになる。また、自らの文章を説得力に欠けた、印象の薄いものにしてしまっていることにもなる。以下に、冗長な文章と、その改善を挙げているので、参考にしてほしい。

まず目につくのが 1 行目だけで 2 回も出てくる「~ことで」という言い方。これがいちばん "IT 翻訳クサい" のです,。~ ing の主語とか、特によくあるのが by ~ing の形で、そういう動名詞表現をそのまんま訳すと、「~ことで」あるいは「~ことによって」ばっかりになります。

しかも、この原文で実際に動名詞になっているのは 2 番目のほう "eliminating..." だけで、1 番目はふつうの節 "When you streamline..." なんだから、わざわざ「~ことで」などとせず素直に「文章を簡素化すると~」でもよかったわけです。この辺が、「翻訳経験はそれなりにある」という推測の根拠。「~ことで」という訳し方が習い性になっているからつい出てきちゃったと。

次に目立つのは、「もの」という形式名詞が全体で 3 回も使われていること。いや、形式名詞というまとめ方をするなら、前項の「ことで」も含めて、「もの」と「こと」が合計 8 回も出現しています(Buckeye さんの訳文では「こと」が 1 回だけ)。

形式名詞を濫用するのは、IT 系に限らずマズい翻訳だろうと思いますが、"Perform the following:" みたいなパターンを「次のもの」と訳すマニュアル系でおなじみの習慣が一因なのではないかと想像できます。

そして、Buckeye さんがまずかったと指摘しているキーワードの選び方にしても、これは翻訳経験があるがゆえの固定観念が徒になった節があります。その典型が「冗長」という一言。IT 翻訳では redundant/redundancy という単語がポピュラーなので、「情報に不要な繰り返しや無駄があること」ですぐにこの単語が連想されたのでしょうか。

以上のほかにも、「より明確」や「より強く」のような比較級の稚拙な処理、「してしまっていることになる」、「してしまっていることにもなる」という "冗長な" 表現の至近距離での反復とか、その辺りは IT ということでなく翻訳としてかなりダメダメです。


以上、分野や用途の違う文章を翻訳するときの、自戒の意味も込めて。

09:32 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (9) | トラックバック (1)

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2009.02.15

# 濁るか、濁らないか

家内がこの記事を面白がっていて(記事そのものはちょっと古いです。リンク先がちゃんと残っているところが日本の大手新聞サイトよりよほどエラい)、

リンク: What Kosaku Shima, Japan’s most popular salaryman, says about Japanese businessr | The Economist

その中で作者が "Kenshi Hirokane " と表記してあるのが目にとまりました。

Wikipedia を見ても、英語版のエントリは "Hirokane Kenshi" です。一方、日本語版のエントリでは、読みとして「ひろがね けん」と書かれています。

名前だけでなく名字のほうも、Hirokane に対して「ひろね」と濁音の有無が違っているのですが、今回ネタにするは名前だけです。

「~史/司」で終わる男性名は、読みが「~し」の場合も「~じ」の場合もあってときどき困らされます。その代表としては、新選組のひらめ顔結核男、沖田総司が有名。

最近ではすっかり「おきたそうし」という濁らない読みが一般的のようですが、本来は濁点ありの「おきたそうじ」が正しい読みだった。ところが、脚本家・結束信二が見出した不世出の沖田総司役者、島田順司の名前が濁点なしの「じゅんし」であったことから、沖田の名前まで「そうし」で定着してしまった ---

そんな説があるそうな。

01:27 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (10) | トラックバック (0)

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2009.02.08

# 自称

つい先日も、「職業不詳」というニュース用語を取り上げましたが、職業とか肩書きの書き方って、いろいろあるもんですね。

リンク: バックしてきたパワーショベルカーにひかれ男性作業員死亡 朝霞 - MSN産経ニュース

7日午後4時25分ごろ、埼玉県朝霞市根岸台の宅地造成地で、自称・さいたま市浦和区大原の作業員、高橋伸治さん(56)がバックしてきたパワーショベルカーにひかれ、全身を強く打ち死亡した。

自称トレーダーとか、自称私立探偵とか、自称著述業とか、どこか怪しさのある職業なら「自称」が付くのも判るんですけど、作業員さんがなんで「自称」なんでしょう。

パワーショベルカーを運転していた、さいたま市の男性作業員(55)は「バックするとき高橋さんに気付かなかった」と話しており、朝霞署は男性の後方確認不足とみて、業務上過失致死の疑いで調べている。

同じ記事中で、事故を起こした人のほうは「自称」じゃなく「作業員」になってますよね。単に事実確認がとれてない、だけかもしれませんが、これじゃまるで「ほんとは違うけど、作業員を自称してその場に紛れていた」みたいです。

と、自称翻訳者の私は思うのでした。

06:44 午後 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2009.01.21

# 職業不詳

あまり見かけない気がするのですが、ニュース用語には「無職」ではなく「職業不詳」という言い方もあるんですね。

リンク: タクシー料金払わず包丁振り回す 強盗容疑で逮捕、大阪市 - 47NEWS(よんななニュース)

東住吉署によると、男は住所、職業不詳林田直人容疑者(20)。「料金を踏み倒すつもりで包丁を持っていた」と供述している。

たとえば私が何かの事件に巻き込まれて、家族も知人もつかまらず近所の人にだけ聞き込みしたとすると、「何の仕事をしてるかわからないが、昼間から家にいるみたいだ」ということになる。しかも、家族を養っているのだから無職ということではなさそうだ。そーなると、

職業不詳

と書かれるのかもしれません。

そんなことがないように、もちろん近所の人には「翻訳をしています」と伝えてあるわけでした。

07:57 午後 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (6) | トラックバック (0)

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2009.01.16

# decade? decayed?

公式ページで制作発表のビデオ見たら、私の好きな石橋蓮司が出てきてて笑っちゃいましたが。

リンク: 歴代の平成ライダーが集結する『仮面ライダーディケイド』の全貌!! - エンタ - 日経トレンディネット

10 周年記念ってことで decade なのはわかってるんですけどね。個人的には "カッド" もしくは "ケイド" と、いずれにしてもアクセントが第 1 音節にある印象がどーしても強いので(実際には "ディケイド" という発音もある)、カタカナで「ディケイド」と書かれてしまうと、どうしても decayed のように聞こえてしまいます。

内容が decayed にならないことを祈ってますよ、と。

11:34 午後 映画・テレビ 翻訳・英語・ことば | | コメント (6) | トラックバック (0)

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2009.01.14

# 故きを温ねてみた

昨日のエントリ「# インタビューは危険なもの」で取り上げた山田太一氏の言葉をつらつら考えていて、ふと浮かんだ漢字の一文字。

「人の夢ははかないもの」と、先人はすでに喝破しているわけでした。

「はかない」という訓読みはもちろん日本人がつけたものですが、音読みは「ボウ」で、もともと「暗いこと、迷い」を表す文字なんだそうです。「夢」というものの、少なくとも一面を物語っていると言えますが、そもそも「夢」という文字自体が「夜の闇におおわれて、物が見えないこと」なんでした。

であれば、「夢」を語ることはすなわち「闇」というものの両義性を考えることにも通じます。

02:17 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.12.25

# Server か「サーバー」か

IT 翻訳では(他の分野でも同じようなことはあると思います)、「固有名は英語表記するが一般名はカタカナ表記する」というルールがありますが、その区別が往々にして難しかったりします。

リンク: SQLサーバーに深刻な脆弱性、マイクロソフトがワークアラウンドを公開 - Technobahn

この記事も、Microsoft SQL Server(製品名)に存在する脆弱性なわけですから、タイトルの「SQLサーバー」という表記は正しくありません。

整理してみると、この問題が発生しやすいのは、「Server/サーバー」とか「Agent/エージェント」のように、

- 機能名がそのまま固有の製品名に使われている
- 製品をインストールするとその機能が実行される

ということになります。

たとえば Oracle Application Server というアプリケーションがあって(固有名)、これをインストールしたマシンは「アプリケーションサーバー」として機能する(一般名)わけですね。

ところが、英語では "Oracle" とかの有無が曖昧だったり、冠詞の有無もいいかげんだったり、大文字小文字の区別など無きに等しかったりするので、うっかりすると上記の Technobahn 記事のタイトルみたいなことになります。

02:33 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.12.09

# 自分の英語力に満足していますか?

リンク: 東大生の3人に2人は自身の英語力に「満足していない」--英語学習調査 | ライフ | マイコミジャーナル

このニュース、どうやら「学歴の高い人ほど(~でさえ)自分の英語力に不安を感じている」と言いたいらしいのですが ---

最高学府とされる東大の学生の約3人に2人である63.1%が、自身の英語力に「満足していない」と回答したという驚きの結果が出た。

3 人に 1 人は(それなりに)満足している(データでは 28.6%)、という数字のほうがよほど驚きです。

11:20 午前 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (7) | トラックバック (0)

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2008.12.04

# 日本の辞書文化

リンク: 源氏本の版木を初発見 江戸期のロングセラー - 47NEWS(よんななニュース)

源氏物語の注釈本「源語梯」の版木が見つかり、奈良大(奈良市)が4日、発表した。江戸時代には源氏物語にまつわる書籍が約80種発行されたが、版木が確認されたのは初めてという。(中略)版木を使う商業出版は江戸時代が最初で、それ以前の文学作品は写本でしか伝わっていなかった。源語梯は大阪で初版が発行され、現在の文庫本とほぼ同じサイズ。

総合辞書ではなく特定の文学作品を読むための辞書ですが、日本における辞書文化という流れのうえでは興味深い文献だと思います。

そう言えば、大学の頃は Shakespeare を読むための辞書とか使ってました。

「源語梯」 --- 「はしご」という命名がいいですね。

08:04 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.12.02

# collateral - 訳語選択の実例として

マーケティング資料の翻訳で最近ときどきお目にかかるのが collateral という単語。ただし名詞です。

ふつうに辞書をひくと、いくつか名詞の語義が並んでいる(担保とか、傍系親族とか、付帯事実とか...)はずですが、私が遭遇するのは、たとえば

print collateral

という使われ方です。

print につながるような語義は、手元にひととおり揃えてある辞書にも、オンラインの各種辞書にも載っていません。唯一、英辞郎(v.102)にだけ、以下の記述があります。

collateral
営業促進用の品[カタログ]

英辞郎にしか載っていない訳語をそのまま使う翻訳者はいないと思いますが、今回は少なくとも「どうやらマーケティング関連の用語?」という手掛かりにはなりました。これを手掛かりにしてオンライン検索すると、Wikipedia の記述にたどり着きます。

Marketing collateral, in marketing and sales, is the collection of media used to support the sales of a product or service.

この後もいくつか日本語と英語の用例を検索し、その内容を自分なりに納得して今回は一応「販促物」としました。

この例などは、現時点で何らの権威による裏付けもありませんが、私としては得られた情報の範囲でこのように判断するしかないわけです。ほんとうは、元々の語義がどんな経緯でこのような使われ方をするようになったのか、そこまで追跡できればもっと確信を持てるのですが、まだそこまでは調べきれていません。

--------------------
ちなみに、同じようなマーケティング資料では offering という単語もけっこう厄介です。

10:15 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (12) | トラックバック (0)

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# 最後の拠りどころは自分の経験だけ、たぶん

訳語を選ぶとき何を根拠にするのか。

もちろんいろいろなファクターがありますが、結論から先に言うと、「使える資料はいろいろ調べるけど、最終的には自分の経験に基づく総合的な判断が拠りどころ」と言うしかないんじゃないでしょうか。

2008-11-26 - IT翻訳者の疑問 - 簡単な言葉を的確に訳すにはCommentsAdd Star

オーディオ用語としての「解像度」が確立しているのであれば、この言葉を定義している辞典や用語集があると思うのですが、ご存じありませんか?(中略)なぜ採用したかをクライアントに説明できるようにしておかなければなりませんが、Googleで「サウンド 解像度 オーディオ」を検索したらたくさんヒットしたのでみんな使っていると判断した、というわけにもいきませんので

Google の検索結果だけでは根拠にならず、辞書に載っていれば OK という単純な話でもないですよね。

Google の検索結果がクライアントへの説明に使えないとしたら、「辞書に載っていました」だって根拠になるとは限らないわけです。

辞書の間にも権威の差というのがあって、しかもどの辞書に権威を認めるかすら世間一般と専門分野によって大きく違っていたりします。たとえば、海野さんの辞書(『ビジネス技術 実用英語大辞典』)だけに載っている情報は、その辞書の存在すら知らないクライアントへの説明には使えないかもしれません。でも、同じクライアントが「『広辞苑』に載ってました」と言えばあっさり納得したり(だからこそ、読者を適切に想定して訳すことが大切という話になるわけですが、その想定とクライアントの判断が一致しないこともあるから話がさらにややこしくなります、でも、これは別の話)。

「Google の検索結果をどう使うか」というのも、基本的にはこうした辞書間の違いと同列の話でしょう。同列が言いすぎなら、少なくとも同じ話の延長上くらいにはあると言えるでしょう。ネット上にだって使える情報と使えない情報がある、それと同じように辞書の情報を使えるかどうかも結局はコンテクスト次第です。

最終的に訳語を選ぶのは、コンテクストを判断する翻訳者自身であり、ネットも辞書もその補助手段というだけのこと。もしクライアントに説明する必要に迫られたら、参考にした出典を示しながらも「自分の判断でこう訳した」と言うしかありません。

山登りするときステッキがあると楽ですが、下り坂でステッキに全体重をかけることはできないのに似ています。

現実問題として、私が接している仕事の範囲では「既存の辞書(ただし手持ちの範囲)にまったく載っていないが、ネットでは用例が見つかる」という単語にはたびたび遭遇します。

最近では collateral という語がいい例で、これについては次エントリで紹介したいと思います。

08:26 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (28) | トラックバック (0)

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2008.11.27

# RTF stands for...what?

Trados のツールのひとつに、別々のファイルとして存在している原文と訳文からペアを作ってメモリを作成するというツールがあります。

このツールを使うと、対象ファイルが doc の場合は勝手に *.rtf ファイルが生成されるのですが、元の doc と rtf とでは、サイズがあまりに違います。今日この作業をしていたときなど、元ファイルが約 1.8 MB なのに、rtf は 107 MB、およそ 100 倍になってました。そういうわけで、rtf という拡張子はきっと、

Rich, Tubby, Fat

の略に違いないと思いついたという、ただそれだけの話でした。

--------------------
それだけでは何なので、もうひとつ。

RTF を調べていたら、チック・コリアの名盤 Return To Forever の略でもありました。

03:13 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.11.25

# コンピュータのジェンダー

なかなかの面白ネタ発見。

ネタ元: らばQ:パソコンって男なの?女なの?

全般に、「女性がパソコンを男性と考えている理由」のほうが笑える気がします。

元ネタの英語版はこちらです。Bits & Pieces » Blog Archive » Computers - Male or female?

ただし、少しずつ異なるバージョンがあるようで、こちらは 5 項目ずつになっています。
Are Computers Male or Female?

男子のグループは「パソコン」は女性であるとしました。 その理由は、 1. 中身のロジックがどうなっているか、作った人以外の誰にもわからない

これ、Bits & Pieces ではこうなっています。

1. No one but their creator understands their internal logic;

ところが、別バージョンでは

No one but the Creator understands their internal logic.

となっていて、Creator が大文字、つまりはっきりと「神様」も含意するようになっていて、だいぶ趣が変わってきます(もっとも、彼らは日本人ほど大文字小文字に拘らないみたいなので、小文字でもちゃんと同じニュアンスになるんでしょうけど)。

ところで、実際にフランス語やスペイン語で「コンピュータ」や「パソコン」はどっちに分類されているんでしょうか。

--------------------
おまけ(ちょっと古いネタですが)

03:09 午後 翻訳・英語・ことばあげ足とり・笑い | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2008.11.24

# 重ね言葉 - goo 対 Just Right!3

goo ランキングにこんなんが載ってました。

つい使ってしまう重複表現ランキング - goo ランキング

20 位以降は「ないない~」みたいなのもたくさん入ってますが、さっそくこの一覧を Just Right!3 でチェックしてみました。

全 30 項目中、Just System 的にイカンと言われた「重ね言葉」は以下のとおり。

一番最初/一番最後
被害を被る
不快感を感じる
思いがけないハプニング
挙式を挙げる
あらかじめ予定する
捺印を押す
はっきりと断言する
最もベスト
各(毎)○○ごとに
秘密裏のうちに
馬から落馬する
加工を加える
行動を行う

「元旦の朝」は有名どころですから、これがチェックから漏れてしまったのは残念。

11:41 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (9) | トラックバック (1)

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2008.10.31

# 頭の頭痛が痛い英文

こーゆー、「アチャー」な英文に遭遇することも、実はそれほど珍しいことではありません。相当大きい会社から出ているドキュメントでも。

the level of complexity......becomes increasingly more complex

12:10 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (6) | トラックバック (0)

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2008.10.29

# 麻生総理が大好きなアニメ製作者

タイトルは、今朝の新聞で見かけた週刊新潮の記事です。正確には、

「麻生総理が大好きなアニメ製作者の残酷物語」

わが国の現職総理大臣は、「アニメ製作者」または「残酷物語」が好きなんですね、わかります。

IT 系の文章でもときどき、

格納するファイル名を指定します。

みたいな文を見かけますが、名前を格納するのか、とツッコミたくなります。もしかすると、原文もちょっといい加減に "Specify the file name to be stored." とかなんとか書いてあったのかもしれませんが、「許容される曖昧さ」も言語によって違うはず。

10:27 午前 翻訳・英語・ことばあげ足とり・笑い | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2008.10.28

# TRADOS - SDL Trados 2007 をインストールしてみた、その3

SDL Trados 2007 の不満ばかり書きましたが、1 つだけ(今のところ)メリットを見つけました。

今までもメインマシンとサブマシンの両方に SDL Trados 2006 をインストールしてありましたが、同時に起動することはできません。ネットワーク上で別のインスタンスが起動していることを検出したというメッセージが表示され、Workbench が閉じてしまいます。これは、「同じユーザーが複数のマシンにインストールしてもいいけど、同時に 2 つ使うことはできないかんね」という本来の仕様です。

今回は、まだ試験的な導入のつもりだったので、サブマシンの方にだけ 2007 をインストールしてみましたが、両方を同時に起動できるようになりました。おそらく、ライセンス認証が変わって

- メインマシン上の SDL Trados 2006 はローカルのライセンスファイル
- サブマシン上の SDL Trados 2007 はオンラインのアクティベーションコード

となったためかと思われます。

もっとも、Trados を 2 台で同時に使いたい場面なんて、そうあるものではないですけどね。

10:49 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.10.27

# TRADOS - SDL Trados 2007 をインストールしてみた、その2

まず、このツールを紹介しておきます。

参考リンク: ApSIC Localization Solutions - Products - Xbench

これは、Trados Workbench の「訳語検索」(通称、コンコーダンス検索)機能を補うフリーのツールなのですが、つまりはそれだけ Trados 本来の機能に不満を持つユーザーが多いという証でもあります。

翻訳で使うメインのインターフェースである Workbench と TagEditor がなかなか進歩しない、ということは今までもここで書いてきましたが、2007 になってもその辺はまったく変わっていませんでした。

Workbench の訳語検索はまったく進歩なし。マッチ率設定が 30%~100% まで、最大ヒット数が 99 件までという意味不明なオプションもそのままであり、検索ロジックもどうやら変わっていない模様です。

TagEditor で IME がすぐ日本語オフになってしまう(参考記事: 禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # Dさんの日本語じゃなきゃイヤン)という問題点、少なくともこれだけは改善されていると思ったのですが、まったく変わっていません。

本来の翻訳作業にとって重要性が高い問題点をここまで無視されてしまうと、Trados がいかに発注側 --- と、せいぜいが翻訳ベンダーまで --- にとっての効率化しか念頭に置いていないかということがますます露骨になってきたと言わざるをえません。

まあ、翻訳支援ツールというものの発想の出発点がそもそもそこにあるわけですし、SDL + Trados + Idiom という拡大からして、そういう指向性は見え見えだったのですが、今回はちょっと「翻訳者としての失望感」が大きすぎます。

今持っているライセンスで使えるのはこの 2007 までなので、次期バージョンになったらまた出費がかさみます(アップグレードで済むのか、新規購入になるのか不明)。それでもメインのツールに進歩がないとしたら、翻訳者の立場ではもうバージョンアップはしたくなくなりますね。

--------------------
ちなみに、冒頭で紹介したフリーツールですが、ソースとターゲットのどちらからでもコンコーダンス検索ができるという点はスグレモノですが、本来のコンコーダンス検索のように "曖昧" 検索はできず、正規表現にすら対応していません。それであれば結局、エクスポートテキストをエディタ上で検索したほうがいい。今後の発展に期待というところです。

03:31 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (2) | トラックバック (1)

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# TRADOS - SDL Trados 2007 をインストールしてみた、その1

先日催された SDL Trados のイベントには出そびれたのですが、tratool のメーリングリストでいくつかの情報を拾うことができました。その情報を確認していた流れで、長らく放置していた SDL Trados 2007 をインストールしてみることになったので、ちょこっとメモしておきます。

参考リンク: Feature enhancements 2.pdf

※PDF が開きますのでご注意ください。

SDL Trados 2006 をすでに使用している環境に SDL Trados 2007 をインストール

私の場合、購入した時期の関係で、SDL Trados 2006 から 2007 へのアップグレード権がライセンスに含まれていました。しかし実際の翻訳ジョブでは Trados の最新版を要求される機会はむしろ少ないのでアップグレードは放置していたのですが、上記のリンク先にあるバージョン比較表を見ていて思うところがあり、Workbench と TagEditor の状況を確認してみたかったわけです。

■ライセンス(アクティベーションコードについて)
SDL Trados 2006 でのライセンス認証では、license.lic というライセンスファイルを指定していましたが、2007 では方式が少し変わっています。ライセンスファイルを指定するオプションもありますが、試したところなぜか認識されませんでした(ダイアログではOKになるが、デモモードでしか動かない)。ファイルを指定するのではなく、"アクティベーションコード" を入力しなければならないようです。このコードは、Trados のサイトでライセンス確認用ページにアクセスすれば確認できました。

■SP1 と SP2 について
リリースから時間が経っているので、すでに SP1 と SP2 Patch がリリースされています。SP1 はフルセットのインストーラなので、元々の 2007 をインストールしていなくても実行できます(インストールしていれば上書き)。SP 2 はパッチなので、SP1 をインストールしていないと実行できません。

全体に、インストールすべきアプリケーションが 2006 までと比べて増えています。

■SDL Trados Synergy について
2007 の最大の目玉が、新しいアプリケーションである Synergy であるようです。画面はこんな感じ。

Synergy

実力のほどは、もちろん使ってみなければ判りませんが、なんとなく「使ってみたくないなぁ」という印象のインターフェースです。翻訳プロジェクトをトータルに扱いやすくする、というコンセプトなのだろうと推測されますが、どちらかというと "大きなお世話" 的な存在にしか思えません。

プログラマのみなさんが最初に IDE 環境を目にしたときって、こんな印象だったのではないか。ふとそんなことを考えました。

そんな小手先のことより、メインの翻訳インターフェースである Workbench と TagEditor はどうなってるのか。私としては、それが知りたいわけでした。この稿、続きます。

02:56 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2008.10.20

# 阿呆なスタイルガイドを斬る、その2

敬体と常体

このシリーズの趣旨から言うと、どちらかというと番外編的な話になるのですが、マスナガさんがちょうどこんな話を書いていたので。
ネタ元: 「です・ます」調と「である」調について思うこと - 頭ん中

IT 系翻訳のほとんどは敬体です。が、マテリアルによって、あるいは他の分野だと常体を指定されることがときどきあります。

英文にはもちろん敬体(です・ます調)と常体(だ・である調)なんて存在しませんが、日本語への翻訳を想定したときどちらに相応しい文体か、という違いは感じられることもあります。

いきなり余談で恐縮ですが、The Lord of the Rings の翻訳は、前作 The Hobbit と違って常体のほうがよかったのではないかなと前から思っています(もちろん瀬田貞二訳を否定するものではありません)。

だから、そういう文章の種類を無視して敬体/常体のスタイルを指定されると、かなり辛い作業になります。敬体/常体の差というのは、なにも語尾の表現だけにあるのではなく、それ以外の単語や言い回しの選び方にまで関係してくるわけですから、途中から敬体/常体をスイッチしろなんていうのは論外です。

常体で翻訳する機会は少ないのですが、常体を指定されたときは、原文を読み込むときからそれを想定しているとスムーズにいくみたいです。

敬体と常体については、箇条書きとか表組の中とか、実は細かい指定があることも多く、そこにはまたいろいろと問題点があるのですが、その話はまた別の機会に回します。

--------------------
冒頭で紹介したマスナガさんが書いているように、ブログの場合は書きたい内容や気分で文体なんていろいろ変わるでしょうね。その使い分けの一環として、私の場合は Side B を用意しています。

それでも、ときどきは昨日(10/19)のエントリみたいに Side A で常体を使うこともあるわけでした。

12:00 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# 阿呆なスタイルガイドを斬る、その1.5

(タイトルが「その2」とならず「1.5」なのは、前回の話の続きだからです)

「および」 --- 動詞をむすぶ場合

最近、「日本語って並列表現が難しい」 と思うことが多いのですが、その話は別の機会にします。今回もそんな話なのですが、

「~を表示および編集します」

こういう言い方、許容度・通用度はどんなものなんでしょうね。

「表示および編集する」

のように、サ変動詞の語幹だけを「および」でむすんで「~する」を付ける、こんな言い方って日常的にはまず絶対見かけないと思います。ところが、少なくとも IT 翻訳業界ではわりと平気で通用しているんですね。

つい先日、日本語の並列表現について調べていたら、こんなページを見つけました。

リンク: Mozilla L10N :: ~を表示および管理する(とか)

Mozilla 関連プロジェクトの日本語化に関する有志グループの掲示板らしいのですが、ここでも「表示および管理する」という言い方が OK なのかどうかということが論じられていました。

「不味いですね。外国人や機械による日本語じゃあるまいし」という意見もあれば、国語学者に確認して「特に修正の必要ない自然な表現だ」とお墨付きをもらったという話も出てきます。間違いかどうかは判らないが、「一読して分かり易い」という声もあるようです。

国語として正確かどうか私は判定できませんし、「気持ち悪い」感じは残ります。が、たしかに誤読の可能性は少ないでしょうし、使っていいのなら楽ではあります。

「表示し、編集します」 ---> 連続操作と区別がつかないですね。
「表示したり、編集したりします」 ---> 全体の文体によっては「たり」も使いにくい。
「表示および編集をします」」 ---> 個人的にはこのほうが抵抗あるなぁ。
「表示と編集を行います」 ---> 無難であり、実際によく見る言い方です。
「表示・編集します」 ---> 中黒そのものが禁じ手というスタイルもあったり。

ちなみに、3 つ以上並んでる場合には、「動作 A、動作 B、動作 C を行います」等々でかえってすっきりするのですが、A、B、C のフレーズがそれぞれ長かったりすると、この形でもたぶん読みにくくなります。

10:46 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (7) | トラックバック (0)

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2008.10.18

# EPWING 以外の辞書のインターフェース、その2(COD)

シリーズ第 2 回は、いろいろ考えたのですが、Concise Oxford English Dictionary 11th Edition を取り上げます。

この辞書のことは、買ったときのエントリで書きました

英語版の辞書ソフトは、基本的に EPWing 仕様ではありません(EPWing 自体が日本の規格なので当然ですけど)。Longman とか Cobuild あたりは EPWing 変換のツールやスクリプトも充実していますが、それ以外の辞書は まったく EPWing 対応しておらず、やむをえず独自インターフェースを使うことになります。

本文内を検索できないという欠点は、前回のランダムハウスと同様ですが、その点は "Advanced search" という機能で不完全ながら補われています。

Cod_advanced

たとえば "find fault" と入力すれば、fault の項の本文で "find fault" がハイライト表示されますし、pick という単語もヒットしていて、"pick holes in" という熟語が同じ意味であることがわかります。

ちなみに、前回のランダムハウスには「成句・用例」という検索機能があるのですが、COD の Advanced search と同じ使い方はできません。"find fault" を見つけたい場合でも "find fault" で検索することはできず、fault を入力して数あるヒット結果から目的の熟語を見つけなければなりません。中途半端です。

前回のエントリで、「語義説明の中をクリックするとその単語にジャンプする」と書きましたが、これは意図しない場合にも動作してしまうので、必ずしも便利とは限りません。

インターフェース上で面白いのは、アナグラムとかスクラブルみたいな、単語遊びのゲームが付いているところでしょうか。

設定できるオプションもほとんどなく、インターフェースとしての完成度ということはほとんど考えられていない印象です。道具としての機能は必要にして最小限、後は中身で勝負...と、そんなところでしょうか。

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ところで、ここで取り上げたのは第 11 版で、書籍版も現行バージョンは同じようですが、私が現役大学生だった頃の COD は第 6 版でした(1976年刊行。次の第 7 版が 1982 年)。

当時はよく、「COD の語義定義が面白かったのは第 5 版まで。6 版でつまらなくなった」というのがもっぱらの評判でした。実際、あの頃神田の古本屋をめぐっても第 5 版は品薄でした。

07:52 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.10.08

# TRADOS - TagEditor の検索/置換機能

何度か書いているように、Trados には Workbench と組み合わせて使う標準エディタとして TagEditor というツールがあります。

Edition 3 の頃にはまだまだ使いものにならない、「ちょっと作ってみましたけど」程度のアプリケーションでしたが、最近はようやくまともに動くようになりました。それでも、まだまだ商用アプリとしてどーなの、というような不備が多々あります。以前に書いた、入力モードがすぐ英数字になってしまう(日本語 IME がオフになる)こともそのひとつですが、検索/置換という、もっと実用的な部分にも「使えねー」的な不備があります。


まず検索。

検索ダイアログを閉じた状態で順次検索ができない --- この話はいずれまたします --- という Internet Explorer 的な不便さは当たり前のように踏襲されていますが、それだけでなく [単語単位で探す] や [大文字と小文字を区別する] のオプションが、ダイアログを閉じるたびにオフになります。これはかなり頭わるい部類でしょう。

次に置換。これはもっと頭わるい。

まず、[文書を保護] オプションが有効な状態では置換が機能しません(調べてみましたが、このことはヘルプやマニュアルに記述が見当たりません)。次に、置換は原文と訳文を区別せずに機能します。

つまり、

原文と訳文に同じ文字列があって、訳文のほうだけ一括置換することはできない

とゆーことになるのです。そんなケースがあるのかいと思われるかもしれませんが、少なくとも IT 翻訳では、たとえば という変数表記を、訳文でだけ <テーブル名> にしたい場合だってあるわけです。

同じような不便は Word 上でもありうるのですが、Trados + Word を使用する場合は、原文と訳文に異なる書式が設定されるので、それを指定すれば訳文のみでの置換は可能なんでした。

--------------------
TagEditor がこんなにお馬鹿なので、実際には ttx ファイルをテキストエディタで直接開いて編集するほうが置換処理などは楽です。

ただし、上記のように原文と訳文で同じ文字列の場合は、普通に置換したのではやはりどちらも変更されてしまいます。その場合、たとえば秀丸エディタであれば、正規表現で「前方一致」を使い、そこに を指定するという方法が考えられます。

というのは、ttx 上で訳文文字列の開始を識別するタグです。ただし、その後にフォント指定のタグがあったりして、一筋縄ではいかないのですが。

11:52 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.10.07

# 秀丸エディタの「デスクトップ保存」-複数対応

1か月ほど前の 9/3 に、秀丸エディタの「デスクトップ保存」という機能のことを書きました

しかし、秀丸の標準ではこの機能で 1 種類のデスクトップしか保存/復元できません。マクロで何とかなりそうかな、と思っていたら、同じことを考えた方がすでにいらっしゃたようです。

リンク: 秀まるおのホームページ(サイトー企画)-複数デスクトップ保存マクロ hmpro Ver.1.1.0

前回書いたようなテキストファイル群を複数セットで保存/復元できるので、複数のジョブが並行したときなどは、これを使うとさらに便利です。

09:39 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.10.04

# TRADOS - TagEditor が落ちるとき

これもただのメモですが......

TagEditor は、Ctrl-Z(つまり操作の Undo)を使うと落ちることがあります。たぶん Windows API との間でコマンドの受け渡しがうまくいっていないからではないかと想像するのですが、常にではありません。

TagEditor を使っているということは同時に Workbench も起動していて、たいていは落ちる前までの訳文がメモリに登録されているので、リカバリが手間ではないところがせめてもの救い。ただし、TagEditor が落ちるときはその少し前から Workbench の動作もおかしくなっている可能性があり、いくつかの文はメモリに登録されていない場合もあるので注意が必要です。

それにしても、Google 検索で自分のブログくらいしかヒットしないときは、ちょっと悲しい。この現象も、ほかに報告例はないみたいです。同じ現象に遭遇したことのある方がもしいらっしゃれば、ぜひご一報ください。

03:45 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.10.03

# TRADOS - 解析 - Word と比較して

今回もまた、Buckeye さんのエントリに便乗。

リンク: Buckeye the Translator: ワード数のカウント

Buckeye さんは Word のワードカウント機能を調べていらっしゃるので、私としてはやはり Trados における同機能(「解析」)について報告しておねばならないでしょう :)

・Electrical/Electronic architecture → 2ワード(3ワードにならない)
・partnering (who/when/how) to design → 4ワード(6ワードにならない)
・The XXX includes a battery-backed time-of-day module → 7ワード(10ワードにならない)
・With microcomputer-controlled kilowatt-hour meters → 4ワード(6ワードにならない)
・a you-can't-get-fired-for-saying-no attitude might prevail → 5ワード(11ワードにならない)

要するに Word 上では、単語とは「スペースで区切られた文字の連続」としか判定されていないということです。

ついでに言うと、カンマやピリオド、疑問符のような punctuation でさえ単語の区切りとして認識されません。

 This is a sentence, is it?

という文は 6 ワードとカウントされますが、これはカンマの後に "たまたま" スペースが空いているからそこで区切られたにすぎません。したがって、

 This is a sentence,is it?

のようにカンマの後にスペースがなければ、このセンテンスは 5 ワードとカウントされます(カンマやピリオドの後にスペースが落ちている原文って、けっこうよく遭遇しますよね)。

さて、上記の 5 つのセンテンスを Trados の「解析」にかけてみたところ、すべてカッコ内のようにカウントされました。つまり、ハイフンやスラッシュも単語の区切りとして機能しています。

さらに確認しましたが、脚注やテキストボックス内の文字も正しくカウントされました。

まあ、Word のおまけ機能と違って、Trados の場合は正確な解析もウリのひとつなわけですから、このくらいはできてもらわないと困るわけですけどね。

【10/5 追記】
アンダースコアで結ばれた単語(INDEX_TABLE のような形)のカウントは、さすがに 1 ワードでした。

--------------------
ところで、翻訳作業量の算定方法としては、

- 原文のワード単価
- 訳文の原稿用紙(400字)単価

の 2 つがあるのですが、私はもっぱら前者でしか仕事をしていないので、自分のスループットを原稿用紙に換算するのが苦手です。聞いたことのある範囲でも、換算式としては

120ワード = 400 字
148ワード = 400 字

などなどけっこうな幅があるようです。

11:44 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (4) | トラックバック (1)

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2008.09.24

# 専門用語と一般語、そして新語

Buckeye さんのエントリに立て続けにトラックバックしてしまいます。

リンク: Buckeye the Translator: 専門用語と一般的な単語の訳

何やら挑発されているような気がするくらい、お題がタイムリーなんですよね、これが。

専門用語のほうが始末がよくて、一般語のほうが翻訳の苦労が多い、というのは Buckeye さんのおっしゃるとおり。

意味は一つではなく、多様というと点がたくさんあるイメージになるが、実際には面で表されるようなイメージであり、その境界が人によって微妙に異なるというのが現実だろう。/これは翻訳の原語側においてもそうだし、ターゲット言語側においてもそうだ。

この不定形のイメージ枠を、まず原語側で捉えるために欠かせないツールが英英辞典。ターゲット言語側で絞り込むためのツールが(私の場合は日本語の)類語辞典です。

でも、専門用語でも「新語」となると、またこれとは違う次元の苦労があります。

英語の用例を調べてもほとんどヒットしないような用語なら、それはさすがにクライアントに報告すれば済みますが、いちばん困るのは英語ではいくつも用例が見つかり、その語義もちゃんと判るのに、日本語の訳出例がまったくない、あるいは信頼性の低いソースしかない、という場合です。つまり、業界でしばらく前から使われ始めているが、まだ定訳が生まれるには至っていないという段階。

その典型的な例が、私家版英語辞典で最初にエントリした breadcrumb という単語でした。今ではどうやら、そのまんまの訳で「パンくずリスト」という訳語がだいぶ定着しているようですが、当時は処理にかなり苦労しました。

同じく私家版英語辞典にエントリしている out-of-the-box などは、英語のまま使われている例もあり未だに決定的な定訳がありません。これなどは、どうも英文中での用法がずいぶんアバウトになってきている気配もあり、固定的な訳語では対応できない例だろうと思っています。

でも、こういう新しい用語や表現に出会うのも、実は翻訳をしている楽しみのひとつだったりします。

09:22 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (8) | トラックバック (0)

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2008.09.23

# EPWING 以外の辞書のインターフェース、その1(ランダムハウス)

Buckeye さんが、主に EPWING 規格の電子辞書の話をエントリなさっていたので、こちらでは、非 EPWING 規格の辞書の、内容ではなく主としてインターフェースに関する話をシリーズ化してみます。

リンク: Buckeye the Translator: 電子辞書の選び方・使い方

基本的には、「非 EPWING 規格の辞書で採用されている独自インターフェースがいかに使いにくいか」という話です。

第 1 回は、翻訳者さんの中でも利用率が高いと思われる『ランダムハウス英語辞典 第 2 版』

Rhd1

このインターフェースの最大の欠点は、本文内を検索できないということに尽きます。EPWING 規格で定番の DDWin や Jamming では当たり前に実装されている機能なのですが、これではせっかく電子化しても活用性が半減します。

RHD の独自インターフェースは、実は第 1 版の頃からあまり進歩していません。アプリケーション開発のスタッフって、ふつうは類似アプリケーションを研究したりするものだと思うのですが、どうも小学館さんって、その辺の感覚は鈍いようです。

本文セクションの上に並んでいるツールバーボタンにポップアップヒントがない(カーソルを置いても機能が表示されない)のもいただけません。設定機能が貧弱なのは言うまでもなく。

ただし、他にはないちょっと便利な機能がありました。それは、検索された見出し語(上のショットでは bread)を右クリックすると、

Rhd2

こんな風に本文のセクションが表示されること。もちろん本文検索にはとうてい及びませんが。

ということで、ランダムハウスは、EPWING データに変換するか(そのための方法やスクリプトも公開されています)、Jamming で使うのがお勧めです。
※Jamming では、RHD のオリジナルデータをそのまま読み込めます。「対訳君」でのバンドル版である Jamming Light ではオリジナルのままでは読み込めません。EPWING 化が必要です。

10:30 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (8) | トラックバック (1)

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2008.09.21

# 阿呆なスタイルガイドを斬る、その1

「と」と「および」

A 社のスタイルガイド - and は「および」と訳す
B 社のスタイルガイド - and は「と」と訳す。「および」は使わない

「と」と「および」は使い方がいろいろと違う単語のはずで --- 詳しいことはここでは省きます ---、それをこの両社のように決めつけて運用した日には、クライアントも翻訳者も不幸になるだけです。

産業翻訳の文章で不自然な日本語がなくならないことの一因が、「スタイルガイド」にあるというのは、多くの翻訳者さんが指摘しています。私も Side B でややまとまったことを書き(禿頭帽子屋の独語妄言 side B: ♭翻訳スタイルガイドについて)、皆様からいろいろとコメントをいただきました。

そんな折、ちょうどマスナガさんがこんなことを書いていて、
リンク: 言葉の順番をちょっと変えるだけでわかりやすい表現になる場合 - 頭ん中

ほぼ同時に jacquelinet さんもこんな疑問を提示していたので、
リンク: [Linguistic Reviewerの疑問](a + b)c = ac + bc?

私の知っている範囲で困ったスタイルガイドの実例を挙げてみようと思って、まず取り上げたのが上記の話です。

-------------------------
スタイルガイドの不幸な運用は、おそらくほぼパターンが決まっています。

1. クライアントのルールが、誤った認識に基づいている、合理性を欠く、または説明不足である。
2. 翻訳者(および翻訳ベンダー)がこのルールに過剰に追従する。

たとえば、and の訳を「および」と指定しているあるクライアントの場合は、jacquelinet さんの言う (a + b) c という形のフレーズを想定していた節があります。つまり、そのクライアントの発想では、

「追加」ボタンと「削除」ボタン……△(冗長だと勝手に思ったのか?)
「追加」および「削除」ボタン ……○
「追加」と「削除」ボタン ……×(並列関係が曖昧)

ということだったのでしょう。であるにもかかわらず、補足説明も例文もなく上記のルールだけポンと出してくる。

だからといってそれを鵜呑みにするのは翻訳者の怠慢です。明らかにおかしな表現ルールは、翻訳者の責任として堂々と無視していいと思います(もちろん、ちゃんとした日本語になっていることが当然の前提で)。

08:05 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (5) | トラックバック (1)

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2008.09.19

# Microsoft の新しいスタイルガイド

Microsoft 新スタイルガイド準拠の仕事、キターッ

関連エントリ:
# これは大変なことになるかも

# マイクロソフト ランゲージ ポータル

火の粉の飛んでくるのが、予想以上に早かったわけでした。

12:32 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.09.03

# 秀丸エディタの「デスクトップ保存」

今までその機能があるのは知っていたけど使っていなかった、というのはよくあることですが。

今回は、定番中の定番である秀丸エディタの「デスクトップ保存」がそれ([ウィンドウ]メニューにあります)。地味な機能ですが、どうしてなかなか便利なのでした。

翻訳作業にエディタはもちろん欠かせませんが、私の場合、翻訳自体には他のアプリケーションを使っていることが多いので、秀丸のウィンドウはもっぱら検索を目的として常時開いているというのが普通です。

- スタイルガイドの要点をまとめたファイル
- 用語集
- TM のエクスポートテキスト
- 原典 HTML ファイルのうちの 1 ファイル

たとえばこんな感じで複数のウィンドウ(タブ)を開いておき、検索または grep を行います。「デスクトップ保存」の機能を使うと、この状態を記憶してくれるので、PC を終了または再起動した後で作業を再開するとき便利です。

さらに、複数ウィンドウ(タブ)でなく 1 ファイルしか開いていない場合でも役に立つことに気づきました。

私はときどきやってしまうのですが、1つのファイルを開いて grep する → 確認した grep 結果ウィンドウを閉じる → 勢い余って元のファイルも閉じてしまう → 次に grep するにはまたファイルを開かねばならない、ということがあるのですね。これも、1ファイルだけ開いた状態で「デスクトップ保存」しておけば解決です。

11:28 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.08.17

# TRADOS - TagEditor における見かけの書式

ここしばらく TagEtitor + Workbench を使うプロジェクトが続いていて、以前から不思議だったことをちょこっとメモしておきます。

それは、TagEditor 上の「見かけの書式」が意外とキタナくなるということです。いろいろと検索してもあまりヒットしないところを見ると、普通はあまり気にならないのかもしれませんが......

TagEditor は、その名のとおり HTML とか XML とか、タグ構造を持つファイルを扱うのがもっぱらのお仕事です(その他のファイルも扱えますが)が、WYSIWYG 表示というのがウリのひとつらしく、タグで指定されている書式がそのままエディタウィンドウ上に反映されることになっています。

つまり、<b>~</b> で囲まれている部分は画面で実際にボールド表示されるというわけです。

ところが、この機能の実装に何らかのバグがあるらしく(SDL Trados 2006)、書式属性を持つタグペアが閉じた後の文字列にも前の部分の書式が適用されしまう、いわゆる「書式を引きずる」という現象がたびたび発生します。たとえば、

  詳細については、<リンクタグ>XXXXX</リンクタグ>を参照してください。

こうなるべき箇所が、

  詳細については、<リンクタグ>XXXXX</リンクタグ>を参照してください。

こんな風になってしまうわけです。

これは TagEditor 上の見かけの問題だけなので、最終的に生成されるターゲットファイルには何の影響もないのですが、それでも一応の翻訳成果物の見栄えとしては気に入らない。何とかならないものかと以前から思っていました。

そして、この動作を回避することはできないまでも、最終的に正常化する方法は見つかりました。手間は増えますが、

一度閉じたセグメントをもう一度開いて、100% で登録されている訳文を再取得

すればいいのです。つまり、見かけは変でもメモリに格納された書式情報は正常だということなんですね。

これ、新しいバージョン(2007)ではどうなってるんでしょう。

03:15 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.08.04

# TRADOS - 書かれていないこと

『稼げる実務翻訳ガイド』という定番ムックで「×文節、○分節」という誤字があるという話を先日のエントリで書きましたが、ほかにも気になる記述がありました。

Wordをそのままま使えるということは、多機能な検索や、技術に強い方であればVBA(マクロ)も自由に動かすことができるということを意味しています。

Trados 紹介の記事では、Word をフロントエンドとして使用することがこのようにメリットとして書かれることも少なくありませんが、そこに落とし穴もあるということはなかなか語られないようです。

Trados + Word という環境については、このムックに限らず今までの多くの紹介記事でもほとんど触れられていない重要な点があります。それは、

Word 上の Trados 機能はマクロで組まれている

ということです。Trados をインストールした Word で[ツール]→[マクロ]を見てみると、"tw4win" という文字列で始まるマクロがたくさんあります。Word 上の Trados 機能は、実はこのマクロ群で実現されているに過ぎません("TRADOS7.dot" 等の名前のテンプレートが追加されている)。

Word 上で訳文を処理するときは、これらのマクロが 1 ステップずつ実行されています。何らかのセグメント操作後に[編集]メニューで UNDO 履歴を見てみれば、「ブックマークの編集」とか見たことのない VBA とかが並んでいるはずです。ファイルを破棄してもかまわなければ、Ctrl + Z を何回も繰り返してみると、画面上で面白い動作を見ることもできます。

で、これの何が問題かというと、マクロを構成する複数ステップの途中で処理が止まってしまうと、セグメントの処理がおかしくなって進退きわまることさえあるということなのです。「複数ステップの途中で処理が止まる」などということは普通なさそうなのですが、訳文の処理中にたとえば Ctrl + Z を使うことはあるわけで、不用意にそうした操作をすると、「セグメントが壊れた状態になる」ことが実はしばしばあります。

Trados もそのことは判っているらしく、メニューには[文書の修正]という機能があるのですが、これで修正できないこともたびたびあります。

Trados を使い始めた人がこのトラブルに陥ることはけっこうありそうに思うのですが、この点は一向に大きく扱われていないようです(ヘルプやマニュアルにも見当たりません)。

私自身が人に Trados の使い方を教えるときは、もちろん早々にこの点を伝えるようにしていました。

02:18 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.08.01

# 100万文字

翻訳後の品質維持のための補助ツールとして、Just System さんの校正支援ツール Just Right!3 を使っています。まだまだ much to be desired ながら、たしかに役に立つ場面もあります。

支給されたメモリーの品質があまりよろしくないときなどは、作業を開始する前に一度これをかけてみると(エクスポートしたテキストファイルに対して)、表記の不統一などがぽろぽろ見つかったりします。

ところが最近、これに思わぬ処理制限があることに気づきました。表記の揺れチェックは、
1,000,000 文字
までしか対象にならないのです。100 万文字。ふつうの文書作成なら十分な文字数かもしれませんが、ちょっと大きいメモリー(テキストで 1.5 MB くらい)になると、これでは不足します。

ちなみに、100 万文字ということは原稿用紙 2,500 枚です。おっと、これでは京極夏彦氏でも足りなくなりそうです(最近もう読んでないけど)。

そーゆーわけで、ジャストシステムさん、次のバージョンではこの制限を大~幅に増やしてくださいね。

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2008.07.31

# TRADOS - 分節

日本語文法で扱う単位「文節」ではありません。

Trados が処理する単位(センテンス、パラグラフ、その他)を、英語版では segment と言いますが、その訳語が「分節」です。文字どおりの直訳。

ところが、あまり一般的な用語ではないため、Trados を扱った文章でも誤って「文節」と書かれていることが少なくありません。

『稼げる実務翻訳ガイド』

という毎年刊行されているムックの 2008 年度版で Trados の特集が組まれていますが、その中の入門記事でさえ「文節」となっていました(p.96)。

12:25 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.07.30

♭翻訳スタイルガイドについて

IT 系のマニュアルやヘルプで、スタイルガイドあるいは翻訳仕様と称される翻訳ガイドラインが当然のように利用されるようになったのはいつ頃からなのか、私はもちろん知らない。

ソフトウェアの肥大化に比例して関連ドキュメントもどんどん膨大になり、必然的に翻訳の必要なリソースも大量に発生するようになる。職人芸のような個人翻訳ではなく多数の翻訳者による共同作業が必要になって、当然なんらかの統一規則が欠かせなくなった。そういう事情はたしかにあったのだろう。

だが、マニュアルやヘルプ類で読みにくい訳文(あるいは完全な誤訳)が後を絶たないのは、実は相当の部分このスタイルガイドが原因なのではないかと思うことが多々ある。

スタイルガイドの内容はふつう大きく 2 つに分けられる。ひとつは「コンピュータ/コンピューター」、「たとえば/例えば」といった機械的な表記上の規則だが、これは新聞社や出版社などでも当たり前に行われている慣行であって、多少の不合理は見られてもおおむねそういう決まりだからと納得できるものが多い。そしてもうひとつは訳文の文体、つまり受動態や命令文の訳し方を定めている規則なのだが、この規則がそもそも合理性を欠いていたり、ベンダーや翻訳者がその運用を誤ったり --- その多くは過剰反応だと思うが --- した結果が、世に出ている誤訳・悪訳の一因になっているのではないか。

もともとは "大枠" のはずだったのに、それを律儀に守りすぎたせいで、あるいはそれを守ってさえいればいいという思考停止のためにおかしな結果が生じる --- 世の中にありがちなパターンの、これもひとつなんだろう。そのあげくに生まれたのが、次のような珍訳たちだ。

「レジスタおよびCPUの間で」
いったいどこの間なんだか判らない。and の訳し方を指定しているスタイルガイドは少なくないが、その真意は伝わっていないことの方がむしろ多いらしい。

「パスワードを使用せずに解凍できません」
妙にぎこちない日本語。きっと、「~することはできません」は冗長な表現だと仕様に書いてあるんだろう。

この手のおかしなスタイルガイド(の解釈)やマニュアル文体を鋭く指摘しているブログがあるので紹介しておく。

IT翻訳者の疑問

ところで、これは私の勝手な想像なのだが、文体に関するルールで最初に決められたのは、次の 2 項だったのではないだろうか。

・操作を表す命令文は「~してください」ではなく「~します」と訳す。
・無生物主語をそのまま訳出しない。

ひとつ目は日本語の特性(語尾の種類が多くない)から生まれた苦肉の策に違いない。

- Open the New Profile.window.
- Hogehoge.
- Run the specified script.

のように並んでいる操作手順を命令文としてふつうに訳してみたら「~してください」という文ばかり続いてしまって、なんだか煩わしかったから、「~します」という無個性な文末にしてみた、というあたりか。ただしこの文体は最近あまりに当たり前になっていて、許容範囲になりかけている気がしないでもない。

それより罪が重いと私が踏んでいるのはふたつ目だ。

The windows displays the query result.

こういう文を「ウィンドウがクエリー結果を表示します」みたいに訳したヤツがいて、それを読んだドキュメンテーション担当者が「日本語では無生物を主語にしちゃいかん!」と決めた。だからこういう訳文まで現れるようになる。

Specify the directory where the AAA Tool should place inventory files, then click OK.
「AAAツールでインベントリファイルを配置するディレクトリを指定し、[OK]をクリックします」

「~が」のかわりに「~で」とか「~では」を使うという手法は、うまくいく場合もなくはないが、基本的にはかなり不思議な日本語(ときに誤訳)を生み出してしまう。助詞ひとつだけでこんな意味不明の訳文になってしまうくらいなら、そのまんま
「AAAツールがインベントリファイルを配置するディレクトリ~」
と直訳しておいた方が、少なくとも意味は通じる。

こんなことを書くと、他の分野の翻訳者からは呆れられてしまうかもしれないが、これが IT 系翻訳の現実の一面であることは間違いない。

IT 系以外では、スタイルガイドってどうなっているのだろう。

12:44 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.07.29

♭翻訳スタイルガイドについて

IT 系のマニュアルやヘルプで、スタイルガイドあるいは翻訳仕様と称される翻訳ガイドラインが当然のように利用されるようになったのはいつ頃からなのか、私はもちろん知らない。

ソフトウェアの肥大化に比例して関連ドキュメントもどんどん膨大になり、必然的に翻訳の必要なリソースも大量に発生するようになる。職人芸のような個人翻訳ではなく多数の翻訳者による共同作業が必要になって、当然なんらかの統一規則が欠かせなくなった。そういう事情はたしかにあったのだろう。

だが、マニュアルやヘルプ類で読みにくい訳文(あるいは完全な誤訳)が後を絶たないのは、実は相当の部分このスタイルガイドが原因なのではないかと思うことが多々ある。

スタイルガイドの内容はふつう大きく 2 つに分けられる。ひとつは「コンピュータ/コンピューター」、「たとえば/例えば」といった機械的な表記上の規則だが、これは新聞社や出版社などでも当たり前に行われている慣行であって、多少の不合理は見られてもおおむねそういう決まりだからと納得できるものが多い。そしてもうひとつは訳文の文体、つまり受動態や命令文の訳し方を定めている規則なのだが、この規則がそもそも合理性を欠いていたり、ベンダーや翻訳者がその運用を誤ったり --- その多くは過剰反応だと思うが --- した結果が、世に出ている誤訳・悪訳の一因になっているのではないか。

もともとは "大枠" のはずだったのに、それを律儀に守りすぎたせいで、あるいはそれを守ってさえいればいいという思考停止のためにおかしな結果が生じる --- 世の中にありがちなパターンの、これもひとつなんだろう。そのあげくに生まれたのが、次のような珍訳たちだ。

「レジスタおよびCPUの間で」
いったいどこの間なんだか判らない。and の訳し方を指定しているスタイルガイドは少なくないが、その真意は伝わっていないことの方がむしろ多いらしい。

「パスワードを使用せずに解凍できません」
妙にぎこちない日本語。きっと、「~することはできません」は冗長な表現だと仕様に書いてあるんだろう。

この手のおかしなスタイルガイド(の解釈)やマニュアル文体を鋭く指摘しているブログがあるので紹介しておく。

IT翻訳者の疑問

ところで、これは私の勝手な想像なのだが、文体に関するルールで最初に決められたのは、次の 2 項だったのではないだろうか。

・操作を表す命令文は「~してください」ではなく「~します」と訳す。
・無生物主語をそのまま訳出しない。

ひとつ目は日本語の特性(語尾の種類が多くない)から生まれた苦肉の策に違いない。

- Open the New Profile.window.
- Hogehoge.
- Run the specified script.

のように並んでいる操作手順を命令文としてふつうに訳してみたら「~してください」という文ばかり続いてしまって、なんだか煩わしかったから、「~します」という無個性な文末にしてみた、というあたりか。ただしこの文体は最近あまりに当たり前になっていて、許容範囲になりかけている気がしないでもない。

それより罪が重いと私が踏んでいるのはふたつ目だ。

The windows displays the query result.

こういう文を「ウィンドウがクエリー結果を表示します」みたいに訳したヤツがいて、それを読んだドキュメンテーション担当者が「日本語では無生物を主語にしちゃいかん!」と決めた。だからこういう訳文まで現れるようになる。

Specify the directory where the AAA Tool should place inventory files, then click OK.
「AAAツールでインベントリファイルを配置するディレクトリを指定し、[OK]をクリックします」

「~が」のかわりに「~で」とか「~では」を使うという手法は、うまくいく場合もなくはないが、基本的にはかなり不思議な日本語(ときに誤訳)を生み出してしまう。助詞ひとつだけでこんな意味不明の訳文になってしまうくらいなら、そのまんま
「AAAツールがインベントリファイルを配置するディレクトリ~」
と直訳しておいた方が、少なくとも意味は通じる。

こんなことを書くと、他の分野の翻訳者からは呆れられてしまうかもしれないが、これが IT 系翻訳の現実の一面であることは間違いない。

IT 系以外では、スタイルガイドってどうなっているのだろう。

09:31 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# ひさびさに B 面

翻訳スタイルガイド(翻訳仕様)と、その間違った解釈についてはふだんから思うところが多いので、これから不定期にそのことを書いていこうかと思いつきました。

その話の前振りとして、久しぶりに常体の文章を B 面に書いてみました。

禿頭帽子屋の独語妄言 side B: ♭翻訳スタイルガイドについて

09:08 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.07.25

# これは大変なことになるかも

私らに、もしかしたらかなり影響がありそうなニュース。

リンク: マイクロソフトが外来語表記ルールを変更,カタカナ用語末尾の長音(ー)を表記:ITpro

マイクロソフトは2008年7月25日,外来語カタカナ用語の表記ルールを変更し,末尾が「-er,-or,-ar」などで終わる英単語のカタカナ表記における末尾の長音(ー)を表記すると発表した。今後出荷する製品やドキュメントで新表記ルールを適用する。
(中略)今後は,国語審議会(当時)の報告を受けて告示された「1991年6月28日の内閣告示第二号」に基づいて,「英語由来のカタカナ用語において,言語の末尾が-er,-or,-arなどで終わる場合に長音表記を付けることを推奨する」というルールを採用する。前述のComputerの場合,「コンピューター」となる。(中略)
2005年には,技術マニュアルなどの表記を検討する民間団体で,専門家や研究者,メーカーなどによって組織される「テクニカルコミュニケーター協会(TC協会)」が,内閣告示に基づく表記ルールのガイドライン(原則として長音を表記する)を公開。国内メーカーでも既に,富士ゼロックスやリコーなどが,長音符号を表記するルールを採用している。マイクロソフトでも2003年から表記ルールの統一を検討しており,今回,一般に採用されている長音を表記するルールに改めた。

TC 協会の方針は知っていましたが、私の関わっているお仕事の範囲ではこれまで、まだこの影響はありませんでした。が、Microsoft が方針転換したとなると、追随するところが増えてきそうです。

もちろん、こんな規則をぜんぶ覚えているわけにいかないので、今だって細かいところはスクリプトまかせ。実害は少ないと思うのですが、OS だけでなく

言葉の世界まで Microsoft を中心に回るのか

と思うと、なんだかなぁという気がします。

07:29 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.07.19

# TRADOS - タグをめぐる話

Trados を使うと少なくとも処理が簡単になる点として、タグの処理を挙げることができます。HTML や XML などのいわゆるマークアップ言語系ファイルをネイティブに扱う場合には、たとえばテキストファイルのまま扱うより、タグを壊してしまう危険性がはるかに少なくなります。

もっとも、この恩恵を受けるのも結局はローカライズや IT 翻訳が中心になるわけで、それ以外の分野には特にありがたみのない機能だとも言えます(IT 以外の分野でも FrameMaker マニュアルは人気があるようで、それをコンバートした STF(RTF)ファイルというのも Trados が得意とするファイル形式のはずなのですが、これについてはまたいろいろと問題点があるので、その話はまたいずれ)。

ここで書きたいのは、そのタグ処理機能のことではなく、ある翻訳者さんとのマークアップ言語ファイルをめぐるやりとりについてです。

初めにお断りです。ときには意外と狭い業界だったりもするので、もし以下の話にお心当たりのある方がいらっしゃいましたら、もう時効ということでご容赦いただきたいと思います。

私が翻訳会社に勤務していた頃の話です。あるとき非常に優秀な翻訳者さんの応募があり、もちろん即採用となってさっそくジョブを打診したのですが、初回からいきなり断られてしまいました。

依頼内容は HTML 形式ヘルプの翻訳だったのですが、「タグ処理その他、翻訳に直接関係のない "作業" が多すぎる。私は翻訳者なので、純粋に文章の翻訳なら引き受けるが、それ以外は引き受けられない」というのが、受注不可の趣旨でした。

私も社内の PM もこの反応に最初は驚いたのですが、よく考えてみれば、翻訳の腕に自負があってそれなりの実績も残している人なら、こういう方針を貫くのも当然といえば当然なのでした(と同時に、ローカライズ業務というものの認知度の低さを感じる出来事でもありましたが)。

★HTML や XML のタグを理解したうえで、その処理も翻訳者が行う★

のかどうか、実はローカライズベンダーの中でもその方針は分かれているようです。翻訳者にはタグをすべて削除したファイルを渡して翻訳だけしてもらい、戻ってきた内容を社内でマークアップファイルに戻すというベンダーもあれば、タグ処理を原則的にすべて翻訳者に委ねるというベンダーもあります。比率としてどちらが多いのか、私は知りません。

私が在籍していた会社はたまたま後者だったので、タグ処理(や関連の検証作業)を翻訳者が行うのは当たり前と思っていましたし、私はそういった作業が嫌いではなかったのですが、ローカライズ以外の翻訳者さんから見れば、「そんなのは翻訳者の仕事じゃない」というのも、しごく当然の意見だろうと思います。

ローカライズというのがそれくらい特殊な世界であって、Trados が現在もっとも真価を発揮しているのがその特殊な業界である、ということは承知しておくべきでしょう。

10:14 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (6) | トラックバック (1)

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2008.07.17

# TRADOS - 普及の背景

前エントリの最後に、誤った Trados 導入のことを書きましたが、そういったことも起きかねない、今の業界の悪しき風習というものがあります。

Trados は本来、ローカライズのような特殊な分野を限定的にターゲットとして開発されてきたツールのはずです(さすがにローカライズや IT だけではありませんが)。それが、まるで産業翻訳全般で必須のツールであるかのような扱いをされている。そんな状況になってしまった要因は主に 2 つあると思っています。

1. メーカー側が巧みな営業を展開してきた
2. ドキュメンテーションコスト削減のニーズに合致していた

私が 1. のように考えるひとつの理由は、「対応フォーマットこそ拡張を続けているものの、基本機能(特に構文解析エンジン)は初期バージョンからほとんど進歩していない、それにもかかわらずこれだけ普及してきた」という点です。これほど進歩しないアプリケーションも珍しいのではないかと、個人的には感じています。

2. については、Trados が普及してきたこの 10 年ほどというのが、ちょうど景気の悪くなっていく時期に当たり、IT 系に限らずどの企業でもドキュメンテーション部門のコスト削減は大歓迎という風潮があったという状況があります。「翻訳資産の再利用」という謳い文句が、それにうまく一致したわけです。実際にも、ドキュメンテーションコストを削減できた事例は少なくなかったでしょう。

ところが、そういう営業や成功事例に動かされたと思しき会社が、その業種や業態、ドキュメンテーション practice の差異などを無視して「Trados を導入したい」と相談してくる例を、私も勤務時代にたくさん見てきました。そういう会社を見ていると、実は今でも、導入の成果をあまり考えずとにかく Trados を導入してしまったというところがありそうです。

と、そんなことを書きつつ Buckeye さんのブログを覗いたら、最大の問題点はもうご指摘済みでした(今朝ですね)。

翻訳メモリとか機械翻訳ソフトとかの現状について私が問題視するのは、「功罪半ばするソフトだ」という情報がない点です。「こんなにいいソフトだ」「これからは、こういうソフトが使えないとダメ」という話ばかりで、訳文を作るという翻訳者にとって一番コアな部分にどういう悪影響があるのかというデメリットの話は誰も言いません。せいぜいが「操作がややこしくて覚えるのが大変」くらいで。

もうひとつの問題点として私は「ヨーロッパ言語中心の発想ばかりである」点も挙げたいと思いますが、その話はまた別の機会に。

05:12 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (1)

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# TRADOS - つづきの話

Trados に関する先日のエントリ、
禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # TRADOS - ではどうやって使おうか
に対して Sakino さんからいただいたコメントを受けて、もう少し Trados の話をします。

以下、"Trados" と書くときはおおむね「翻訳支援ツール」と同義です。

翻訳作業のどの部分をどう機械サイドに預けながら機械と一緒に作業していくか(私の言い方としてなら、《どのようなサイボーグとなることを主体的に選択するのか》ということになりますが)というところから、やりなおした方がいいような気がします。

「サイボーグとなることを主体的に選択する」、この比喩は面白い。サイボーグ化として捉えると、そこには生理的な好悪まで含まれてきますから、かなり面白い話になりそうです。ただ、この辺の議論は私などより Buckeye さんたちを交えて展開した方がずっと有意義なものになりそうですので、私としては、自分が判る範囲として

でも、そうすると、ローカライズという、かなり特殊な(そして、それはそれで大切な?)分野を切り落とした議論になっちゃうという批判が来そうだし……うぅぅん。

こちらの方向だけをまず考えてみたいと思います。

まず、ローカライズというのは以前に私も書いたようにもともと翻訳業界の中では特殊な部類ですので、ノウハウを論じるとき「切り落とす」というか別枠になるのは当然だと思います。ローカライズの人はその辺の事情を判っているでしょうから、批判は来ません、たぶん :)

ローカライズやその周辺業界(またはその出身)の人が Trados 擁護的(一概にではないにせよ)になるのは、おそらく長所も短所も知り尽くしているからです。業務上やむをえず使う場合でも、長所だけをうまく使って他の分野にまで応用する場合でも、その短所に振り回されることがない。もちろん「道具に使われる」こともない。Jack さんのエントリ(Party in My Library: TRADOSを使う理由)も、私はそういうことだと理解しています。

実際、個人翻訳者で Trados を使っているのは、クライアントからの要請なりで業務上必要だったから導入したというケースがほとんどでしょう。そういう人たちの中でも、必要とされる最低限だけ使っている場合もあれば、必要とされない場面にも積極的に活用している場合もある。しかしそういった必要もないのに最初から自ら進んで Trados を導入し、活用しているという人はほとんどいないと思われます。

つまり、「はじめに Trados ありき」かそうでないかで意見はずいぶん分かれる。ツールの話というのは、そもそもからして「相性」とか「慣れ」とか感覚的な部分に偏りがちなので、Trados に関する議論が噛み合わない理由の一部はもそんなところにありそうです。

ちなみに、翻訳を仕事にしようと志す人がいきなり Trados を使ったりするのは(産業翻訳業界の傾向を誤って捉えてしまったら、そういうこともないとは限らない)、百害あって一利なしだと思います。もし「初心者歓迎。Trados 購入必須」みたいな翻訳ベンダーがあったら、かなり怪しいと言えるでしょう。

05:10 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2008.07.14

# 訃報 - 大野晋

リンク: 訃報:大野晋さん88歳=国語学者、学習院大名誉教授 - 毎日jp(毎日新聞)

日本語の起源をはじめ、言葉を通して日本とは何かを探求した国語学者で学習院大名誉教授の大野晋(おおの・すすむ)さんが14日午前4時、心不全のため、東京都内の病院で死去した。88歳。(中略)タミル語を日本語の起源の一つとする説は、週刊誌などで一般に広がったが、学界では「タミル語の音韻法則を無視している」などと批判を呼んだ。しかし、晩年も「100年くらい後に正しさが理解される」と、自信を持っていた。

私も授業を受けたことがある、とある言語学の先生(その方ももう鬼籍には入られました)なども、大野晋氏の学説についてはかなり辛辣な意見を述べていましたが、そうした点を除いても、大野氏の数々の功績は賞賛に値するでしょう。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

01:47 午後 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (6) | トラックバック (0)

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2008.07.13

# 「俺々詐欺」が読めないじゃないか

国語審議会ってあいかわらずアホなのねと書こうとしたのですが、「国語審議会」という組織はいつの間にかなくなってわけでした。今は、「文化審議会漢字小委員会」。

リンク: 常用漢字改訂、「俺」で大モメ:社会:スポーツ報知

文化審議会漢字小委員会の常用漢字表改定作業が、来年2月の最終案作成に向け大詰めに入る。現在の1945字からどれだけ増やすかが焦点。第2次追加案に残った188字の中では意見の隔たりが大きい漢字もあり、絞り込みには、まだ曲折がありそうだ。特にもめているのが「俺」という漢字。普段の生活ではごく普通に使われているこの字も「子どもに教えるべきものか」などとの意見もあり、結論は先送りされている。

常用漢字(それ以前は当用漢字でした)などというワケノワカラン枠で漢字教育を制限しようという試み、これも間違いなく戦後愚民化政策の一環なわけですが、そもそもその枠を決めているみなさんが、すでに愚民らしい。

今回増やす字数として、いったいどこから「188字」という字数が出てきたんでしょう。1945 + 188 = 2133。特に意味はなさそうですが。

それで唐突に思い出しました。

今の「常用漢字」が制定されたのは、ちょうど私が大学生の頃だったのですが、そのときある友人が「1945 字という数字が意味ありげでいやだなぁ」と言ってました。

09:23 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (14) | トラックバック (0)

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2008.07.04

# がいしゅつ :P

Slashdot で、ちょっと翻訳の関係する話題。

リンク: スラッシュドット・ジャパン | 「redundant」は「既出」になりました

/.Jのモデレーションにおける「redundant」の訳語を、従来の「余計なもの」から「既出」に改めました。本日20時から有効になります。

もちろん普通の辞書には載っていませんが、なかなか良い訳語だと思います。以下は "redundant" に関する余談。

余談その1
ATOK2008 に、はてなキーワード辞書を組み込んであると、「がいしゅつ」と入力してもちゃんと「既出」と変換されました。

余談その2
「冗長」というのは、日常的な文脈では「余分、くどい」というネガティブイメージばかりが強い言葉ですが、IT 用語としては「システム障害に備える機能」というポジティブな言葉です。つまり、二重三重に複製しておけば、どれかがタウンしても別ので代用できる、そーゆー発想ですね。

redundant や redundancy を直訳してしまったせいで「冗長」とか「冗長性」が定着していますが、ちょっといただけない専門用語のひとつだと思います。特に、

冗長性構成

という用語はかなり変です。

09:30 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.07.02

# TRADOS - ではどうやって使おうか

(前エントリの続き)

Buckeye さんのそもそもの TM に関する言及ですが、

さらに余談ながら、だから私は翻訳メモリを使いたくないし、力をつけたいなら使わないほうがいいとアドバイスをしている。

これは「翻訳全般」の話として読んだときに首肯できるのであって、ローカライズという世界はちょっと例外です。だから翻訳者を志望するなら、(需要は常に多いけれど)いきなりローカライズの世界に飛び込んだりはしない方がいい。翻訳とローカライズはかなりの部分別物、この辺を翻訳雑誌さんなどももう少し強調してくれた方がいいと思います。

TM を使うとき、

既訳(過去に訳した原文―訳文のペア)の再利用を必須の義務と考えるのではなく、訳文考案の補助手段と割り切る

という方向性が、"本来の" 翻訳にもメモリというツールをある程度有効活用できるカギになるだろうと最近ときどき考えています。というか、そういう使い方を個人的にしています。

自分が過去にこういう訳をした。それと似ている原文が目の前にある。この言い回しとこの訳語は使い回せる。この訳語は言い換えなければならない。センテンスの構造は今回はこうしなければならない。

そういう風に考えて訳文を組み立ててゆく使い方もありではないかと。もちろんこれは、単純ローカライズの翻訳案件では使えません。

と、この辺まで書きかけて仕事をしていたら、Buckeye さんのところでさらにコメントが。

なんといっても大きいのは「なぜ翻訳メモリを使うのか」です。これが「訳文の再利用ではない」なら、つまり、翻訳メモリ最大の機能を捨てるのであれば、問題はないと思います。

つまりそういうことです。「最大の機能を捨てる」とまで言わなくとも、いいとこ取りだけすればいい。

ツールはツール。♪敵~に渡すな大事なリモコン。
(すいません、ツールの運用論ということになると、どうしてもこのフレーズが浮かんでしまう世代です)。

05:55 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (9) | トラックバック (1)

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# TRADOS - 翻訳メモリの是非

Buckeye さんのところで翻訳メモリ(以下、"TM")についてコメントが続いています。

こういう流れになるのなら、Buckeye さんのブログではなく、それこそ翻訳フォーラムで展開した方がいいと思うのですが、とりあえず私個人の見解はこちらに書いておこうと思います。

まずツールを論じるときの大前提(当たり前のことだけですが)。
- 機能と運用は切り分けて考える
- 用語を常に整理する

翻訳メモリを使うからといって、「どの文脈にでもそれなりにはまる訳文にする」ことはありませんし、そう要求されたこともありません。(コメント欄より)

これはクライアントや翻訳ベンダーによって(場合によってはそれぞれの担当者レベルによってさえ)かなり事情が変わってくる、運用面の話です。

「どの文脈にでもそれなりにはまる訳文にするよう」要求されたことが今までないというのは、ある意味でラッキーだったと言えるでしょう。私が接したことのある事例だけでも、「日本語の自然さを多少犠牲にしても利用率と最終的なコスト削減が優先」と考えるクライアントもあれば、「読みやすさを考慮してください」という方向性を堅持しているクライアントもあります。多くの場合その差は各社の台所事情からくるようですが、会社によって翻訳やローカライズに関する文化はこんなに違うのかと痛感しました。

ローカライズの場合、一番の問題点は、その肝心の「文脈」が翻訳者に見えにくい、という点(コメント欄より)

これは、ローカライズ作業の代表である UI (ユーザーインターフェース)などの翻訳のみを指しているように思われます。たしかにあれは、文脈など皆無の世界であり、それゆえの誤訳・珍訳はいろいろと例に挙がってきました。UI 翻訳は、「翻訳」の中でもかなり特殊部門であって、一般の翻訳論はほとんど通用しないと考えています。

一方、マニュアルやヘルプであれば文脈は間違いなく存在していますし、それは単純な操作系の説明であってさえそうです(だからこそ、前エントリの to 構文のような話にもなる)。

要は、あらゆるツールがそうであるように Trados だって「使い方しだい」ではあるのですが、この話は項を改めます。

--------------------
さて、Trados と Wordfast の訳語検索の話。
Wordfast は、かなり前に講習を受けたことしかなく、今回は製品をダウンロードしてちょっと確認してみただけなのですが、たしかに検索の機能は Trados より優れているようです。というより、むしろ Trados の検索機能がショボすぎるのですね(参照: 禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # TRADOS - 「訳語検索」の Tips)。だからこそ、テキストにエクスポートして grep という原始的な手段に頼らざるをえない。訳語検索のエンジンに、せめて Google 検索なみの解析機能があればと思います。

しかも、訳語検索のお粗末さはごく初期のバージョンからいっこうに変わっていませんから --- ただし最新バージョンは未確認 --- 、これからも機能向上はあまり期待できないのでは、と思っています(SDL とか Idiom の機能を取り込んでいくのかもしれませんが)。

11:45 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.07.01

# TRADOS - 弊害の実例

(前エントリの続き)

Buckeye さんはこのようにまとめています。

一つめの断層は、文と文のつながりというか、ある文がその段落内でどのような働きをしているのか、ある段落がそのセクションや章の中でどのような働きをしているのか、そういった部分に多少なりとも注意している人とそうでない人との間にあると思う。

「二つめの断層」もあるのですが、今回はこの「一つめ」に話を絞ります。

この Buckey さんのご指摘を、レベルは低くなりますが卑近な例で考えてみます。

ローカライズの日常的な翻訳では、「○○を選択して、△△をクリックします」のような定型が多いと書きましたが、そんな単純な構文の訳し方にさえ、Buckeye さんの言う断層があったりします。

翻訳入門的な内容でよく取り上げられることの多い to 不定詞の訳し方もその代表です。

Click Cancel to leave the window without saving the settings.

[キャンセル] をクリックし、設定を保存せずにウィンドウを閉じます。
設定を保存せずにウィンドウを閉じるには [キャンセル] をクリックします。
設定を保存せずにウィンドウを閉じる場合は [キャンセル] をクリックします。
設定を保存せずにウィンドウを閉じるために [キャンセル] をクリックします。

ちょっと単純化しすぎていますが、文脈によってこうした複数の訳し方は当然ありえる、それを無視して効率を上げようとしているのが TM の基本姿勢です。つまり、本来なら考慮すべき文脈の違いを無視して許容範囲を思いきり広げているとも言えます。

こうした傾向と MT の普及はニワトリタマゴの関係ですが、こと IT 業界に関しては、ドキュメンテーション部門、特に翻訳に要するコストを削減したいという要望がグローバルに強くなってきたことが大きな要因になっているようです。

その流れにあるのが、Trados などの TM のさらに先にある機械翻訳の試みと、Idiom(旧称 Deju Vu)などのプロジェクト管理ツールで、そこまでいくと文脈などはもっと軽視されているのが現状です。これらのツール開発がヨーロッパ言語を基準にしているというのも大きな問題ですが、その話はまた別の機会に。

Trados などには、もちろん同一の英文に複数の訳語を登録する機能があったりはするのですが、それはこの問題の本質ではありません。Buckeye さんのブログを見たら、私のトラックバックより一足早く「段落単位で翻訳できる」というコメントがありましたが、これも同じように本質的な解決にはなりません。

03:40 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (2) | トラックバック (0)

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# TRADOS - ローカライズ業界の話

翻訳メモリ(以下、"TM")に関する Buckeye さんのご指摘は、TM をある程度以上使っている人なら深く肯けるものだと思います。

リンク: Buckeye the Translator: 文脈に合わせて訳文を組みたてる

余談ながら、全体の流れを切り捨てることで訳文リサイクルによるコスト効率アップを実現するのが翻訳メモリという考え方だ、と私は考えている。
さらに余談ながら、だから私は翻訳メモリを使いたくないし、力をつけたいなら使わないほうがいいとアドバイスをしている。

この流れで言えば、TM の活用頻度がもっとも高いと思われるローカライズ業界における「翻訳」などは「翻訳」のうちに入らないんだろうなと私も考えます。実際、ローカライズの現場で見られる日常的な作業のかなりの部分は「翻訳」と直接関係のないファイル操作です。

だから、「翻訳(者|家) になりたい」という志望と、ローカライズ業界というのは実はかなり縁が遠いとも言えます。

幸い私の場合は、純粋な翻訳だけでない諸々の作業も性に合っていたので、ローカライズというのは結果的に良い選択だったと思っています。

ローカライズ分野で典型的な、「○○を選択して、△△をクリックします」みたいな定型ばっかりだったら、おそらくかなりの部分を機械翻訳でカバーできるでしょう(実際にその方向を試みているクライアントも多い)。

ところが、たいていのマニュアルはそんな定型句ばかりでなく機能や概念の説明もあるし、さらにはローカライズの枠を越えて IT 系全般ということになれば、Web ページやホワイトペーパー、マーケティング用マテリアルと範囲が広がってきて、そのような素材を同じ翻訳者が訳すと、たちまちボロが出てしまうというケースも実は少なくありません。application が文脈をどんなときにも「アプリケーション」と訳されていたりするのはそんなときです。

この項、続きます。

03:07 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (8) | トラックバック (0)

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2008.06.27

# 愛のある熟語

愛○

という言葉、けっこう読み方に悩まされることがありますね。

愛犬、愛馬、愛人。この辺はふつうに読めます。

愛猫。
これは最初に見たとき悩みましたが、「あいびょう」。辞書にもあります。ペットにはだいたいこの言い方があるんだろうと思うのですが、愛魚とか愛鼠とか愛豚というのは聞いたことがありません。

愛娘。
これはちょっと意表をついて訓読みですね。「まなむすめ」

愛鳩。
これは辞書にもありませんが、こんな雑誌もあるそうで、たしかに好きな人はいます。

リンク: [スポーツ] 鳩レースのすごさを専門誌『愛鳩の友』に聞いた | RxR | R25.jp

「鳩舎」というのがあるから、たぶんこれは「あいきゅう」と読むんですね。

07:49 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (7) | トラックバック (0)

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2008.06.23

# オフ会のご報告

そーゆーわけで、翻訳フォーラムのオフ会のことをもう少し書いておきます。

実はもうしばらく前に、翻訳フォーラムとはまったく別のところで翻訳者の集まる機会があって参加したことがあったのですが、そちら方面はどーもその後、ちょっとおかしな様子になっていて --- 以前このブログでちらっと触れました。リンクは貼りませんけど ---、もちろん今回はそーゆー心配とは無縁であることが最初からわかっていて、安心して出かけたわけなのでした。

場所は新宿。総勢 30 数名というのは、この手のオフとしては私の知る限りでもかなり大所帯でした。

翻訳者といっても、どちらかというと文芸ではなく産業翻訳者が中心なのですが、その中でも IT 翻訳者というのは案外少数派で、医療翻訳とか特許翻訳の方が多かったようです。もちろんこれが業界全体の比率ではありませんが、翻訳の需要をなにがしか反映しているのかもしれません。

男女比率は、やはり女性のほうが多くて、6:4 か 7:3 くらい。これは業界全体もきっとそうなんでしょうね。

年齢構成は --- 実際に年齢がわかったのはごく一部ですが --- 全体では私が平均よりいくらか上、男性に限れば平均よりたぶんやや下くらいになる、という感じでした。

この手の会は、たとえ二次会まで残っていてもあっという間に時間が過ぎてしまうものですが、まして私は初参加でしたので、少しでも多くの方と顔見知りになるのが精一杯でした。

「翻訳会社って、なんで慢性的に翻訳者不足なんでしょうね?」
「でも、"翻訳者" って案外たくさんいるんですよ」
「翻訳者志望の人も大勢いますよね」

こんな会話をしたり、私と同じくらい古くから Trados とつき合いのある方もいたりして。でも翻訳とは関係のない趣味的な話もずいぶん多かったり。求人活動の一環? のような流れもあったかな。

私が関心のある分野の大先生もいらっしゃったのですが、少しその意向をもらしたら、「いやぁ、やめたほうがいいよ」だって :) まあ、それは判らなくもないのでしたが......

--------------------
ただでさえ人と会う機会が激減している今の生活で、これだけの数の同業者に会える場はそうそうありません。そんな得がたい場を提供してくださった翻訳フォーラムのみなさん(特に幹事の方々)には、この場でもお礼を申し上げます。

09:44 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2008.06.21

# 翻訳フォーラムのオフ会に行ってきた

パソコン通信の Nifty 時代から続いている翻訳フォーラムというのがありまして、昨日(6/20)はそのオフ会に行ってきました。

今ちょっと締め切り直前なので細かいことは書けないのですが、ひとつだけ。

翻訳者さんって、基本的にみんな、おしゃべりです :)

11:41 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2008.06.10

# 狭き門という業界ではないと思うのだが

諸事情により競争も激しくなってますから、この業界でもいろいろな商売が出てくるのは当然かもしれません。

リンク: ライブドアなど、「livedoor 翻訳」で依頼者と翻訳家を仲介する「スピード翻訳サービス」を提供開始

株式会社ライブドアは、GMOインターネットグループのGMOホスティング&セキュリティ株式会社の連結子会社、Global Web株式会社と、このほど業務提携し、ライブドアが運営する自動翻訳サービス「livedoor 翻訳」のサイト内においてGlobal Webの翻訳依頼者と翻訳家を24時間365日ウェブサイト上で仲介する「スピード翻訳サービス」を6月9日(月)より提供開始いたします。

スピード翻訳を称するサービスは以前からありましたが、ライブドアと組んだ点がちょっと新しいかもしれません。一定の需要はありそうに思いますが、どーなんでしょうね。

英語以外も対応可ならいいのに。

365日24時間サービスを提供、最短90分/3,150円から納品可能 見積り、翻訳依頼、納品までをウェブ上にて自動的に処理するため、365日24時間サービスをご利用いただけます。一般的な翻訳会社と異なり、人の手を介さずに、お客様から見積り・翻訳依頼を受けることによって、低価格かつ最短納期で最速90分というスピーディなサービス提供を実現いたしております。

翻訳を担当するという会社の案内ページはこれ。
英語翻訳ならグローバルウェブ。自動翻訳ではなく、翻訳家がリアルタイムに対応。

まず、翻訳料金。
もしこれが本当なら、翻訳者さんはかなり安く使われているんではないかなぁ、と推察します。最大でも英日のワード単価で 20 円ということは、ライブドアと翻訳会社の取り分を考えれば......ゴニョゴニョ。
急ぎの度合いによって、8 時間 → 5 日以内と単価が安くなるのは判りますが、
最短 90 分の場合が 3,150円÷200=@15円
になっちゃうのも不思議です。

次に疑問なのが、翻訳者さんのラインアップ(リストはこちらのページ)。
「翻訳回数」のみならず「受注金額」などとナマなデータまで公開しているところがすごいですが、3 ページ目までいくと翻訳回数 0 という方が出てくるわけですね。さて、このシステムを利用しようとするお客さんが、実績のない方に発注しようとするでしょうか。

そして何より、

実績も実力もある翻訳者さんなら、飛び込みの仕事を受けられるほどの待機状態にはないのでは?

ということが、最大にして素朴な疑問であるわけなのでした。

--------------------
【追記、その1】
翻訳者さんのリストを見てみると、たとえば常時稼働はできないが依頼があるとき単発的になら受注可能という方々が多いのかも。

【追記、その2】
リストの名前からリンクしている詳細なプロフィールには、自己 PR というのが載ってますが、これは翻訳者さんがこの会社に登録したときの文面のようです。それを翻訳顧客向けに公開しているというのは、よろしくなかろうと思います。

09:12 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (1)

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2008.06.09

# 「オタク」の英語

「オタク」に近い英単語としては、"nerd" がすっかり有名になりましたが --- 実際にはかなりかけはなれていると思いますが ---、"wonk" という単語もあるようでした。

だからと言って、技術系の Web 向け文書で「オタク」と訳すのも、なんだかなぁ。

詳しくは「私家版英語辞典@帽子屋」の新しいエントリをどうぞ。

01:23 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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# まあ、それが mixi クォリティかと

とある翻訳者さんが嘆いていらっしゃるが、

リンク: Studio RAIN's diary: mixi コミュのレベル低下がひどい

もともと、mixi のコミュ(これは、コミュニティの略だよね)なんてそんな程度のものだと思ってました。

せっかくだから、私もこれに便乗して mixi で前から気になっていたことをひとつここに書いておきます。

翻訳者関連の自己紹介用トピックというものがあるわけですが、その最初に

 翻訳関係の仕事に立ち触っています。

と書いてあるのですね。

おそらく「携わって」と書きたかったのではないかと推察しているのですが --- 「立ち触る」という言葉はあるが、「干渉する、立ち入る」の意味 ---、翻訳者としてトピックを立てる方の日本語がこの程度で、しかもそれが指摘も訂正もされていないところが、まあ mixi のスタンダードなんだろうと思っている次第です。

11:34 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2008.06.08

# 「誤訳」の話題

リンク: スタンダール『赤と黒』 新訳めぐり対立 「誤訳博覧会」「些末な論争」 (1/2ページ) - MSN産経ニュース

原典が英語ではないので自分では検証できないところが、なんとも隔靴掻痒なわけですが。

「まるで誤訳博覧会」-。光文社古典新訳文庫から昨年刊行されたスタンダールの『赤と黒』について、誤訳が数百カ所にのぼり、全面的な改訳が必要だと批判する書評が、スタンダールを研究する専門家でつくる日本スタンダール研究会の会報に掲載された。
 新訳文庫の訳者は東京大学大学院准教授の野崎歓氏で、これを手厳しく批判したのは立命館大学教授の下川茂氏。
 「『赤と黒』の新訳について」と題した下川氏の書評は「前代未聞の欠陥翻訳で、日本におけるスタンダール受容史・研究史に載せることも憚(はばか)られる駄本」と同書を断じ、「訳し忘れ、改行の無視、原文にない改行、簡単な名詞の誤りといった、不注意による単純なミスから、単語・成句の意味の誤解、時制の理解不足によるものまで誤訳の種類も多種多様であり、まるで誤訳博覧会」と書いた上で、「生まれてこのかた」という成句になっている「Delavie」を「人生上の問題について」とするなどの具体例も列挙している。

「訳し忘れ」は、もしかしたら読みやすさを優先するための意図的な省略かもしれません。「改行の無視、原文にない改行」というのは、光文社編集長の言うところの "瑞々しい新訳" を目指すための工夫とも考えられます。慣用句の訳については、文脈がないと何とも言えません。

また、今年3月15日付で発行された同書の第3刷で19カ所が訂正されたことについて、「2月末に誤訳個所のリストの一部が(訳者に)伝わっている。そこで指摘された箇所だけを訂正したものと思われる」と指摘。改版とせずに、初版第3刷として訂正したことを「隠蔽(いんぺい)」だと非難している。
(中略)
一方、光文社文芸編集部の駒井稔編集長は「『赤と黒』につきましては、読者からの反応はほとんどすべてが好意的ですし、読みやすく瑞々しい新訳でスタンダールの魅力がわかったという喜びの声だけが届いております。当編集部としましては些末な誤訳論争に与(くみ)する気はまったくありません。もし野崎先生の訳に異論がおありなら、ご自分で新訳をなさったらいかがかというのが、正直な気持ちです」と文書でコメントした。

本当に些末なのかどうか、その具体的な指摘の適否はわかりませんが、専門家からこれだけの指摘があった以上、出版社の態度としてはなはだ疑問です。

少なくとも、編集長氏がコメントするだけでなく、当事者である翻訳者が出てくるべきでしょう。

07:36 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2008.06.04

# 空しいバズワード

ちょっと古くなった --- と言ってもたかだか 2 年ほど前の --- 技術文書を翻訳していて、

「今注目の Web 2.0」

みたいな表現が出てくると、ちょっと悲しいよね......

12:10 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2008.06.03

# 辞書データ集 Ver.2

タイトルは簡潔にしましたが、これは「# 役に立たない EPWing 集」ではなく、「# 役に立つかもしれない辞書データ集」のアップデート版です、念のため。

ただし、掲載順は以前と変わっています。

黒字の辞書は以前から変化なし(ただしコメントは変わっているのもあり)。青字の辞書は新規、または改訂版です。

リーダーズ+プラス V2( (EPWING)
    ちっともバージョンアップしないと思っていたが、今年の 2 月に、新語を追加した『リーダーズ+プラス GOLD』というのが出ているらしい。でも要らないかな。

ランダムハウス英語辞典 第 2 版 (固有形式、EPWING)
    第 2 版になっても固有ブラウザの使いにくいさはあいかわらず。本文内を検索できないなんて、設計者はよほどマヌケに違いない。幸い EPWING 化できたので、そちらばかり使っている。

英辞郎 Ver.102 (対訳君形式)
    今のところ最新版は Ver.111。でもまだしばらく要らない。最近 EPWING 版も公式に出たらしいが、価格設定が高すぎという声も多い。

CD-180万語対訳大辞典 英和・和英 (EPWING)

Concise Oxford English Dictionary (固有形式)
    以前のエントリで紹介済み。紙の時代から含めて、やはりいちばん相性がいい辞書のひとつ。

Shorter Oxford English Dictionary (固有形式)
    OED に不具合が多いらしいというので、ひとまずこちらを導入。COD より詳しい情報が欲しいときに使うが、固有ブラウザの起動が少し遅い。

Merriam Webster's Collegiate Dictionary 11th (固有形式)
    先日のエントリで紹介済み。固有ブラウザは、使いやすくはない。EPWING 化したい。

Longman Dictionary of Contemporary English (EPWING)
    そろそろ新しいバージョンを買いたい。

Collins COBUILD Advanced Learner's English Dictionary (EPWING)
    同上。

広辞苑 第 5 版 (EPWING)
    第 6 版はまだ買っていない。たぶん当分買わない。

大辞林(1992年版) (EPWING)

Webster's Revised Unabridged Dictionary (1913) (EPWING)

Roget's Thesaurus (EPWING)

デジタル類語辞典 第 6 版 (固有形式)
    最新版にアップグレード。

角川類語新辞典 (ATOK 組込み版)
    ATOK のアドインなので、漢字を変換するときに類語をざっとブラウズできる。これは意外と便利で、訳語のイメージがふらふらしているときなどに使える。

小学館・国語大辞典 Bookshelf 版 (固有形式)
    個人的には広辞苑よりしっくり来ることが多い。

01:10 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.06.01

# Webster について補足

ちょっと前に「# Websterのオンライン辞書がすごい」というエントリを書きましたが、このサイトは Merriam Webster の辞書とは無関係、ということを補足しておきます。

そもそもこのサイト、単語の語義が WordNet のものなんですね(WordNet はプリンストン大学の認知科学研究所で運営されている概念辞書)。しかもバージョンがちょっと古くて、1.7.1 です(最新版は 2.1)。

じゃあ、なんで "Webster's" という名前が付いているかというと、アメリカでは "Webster's" というのが今では「英語辞典」の代名詞みたいなものになっていて、本家本元の Merriam Webster 社でなくともけっこういい加減にこの名前を冠しているわけでした。たとえば、Random House からも "Random House Webster" という名前の辞書が出ています。

Webster という名前の本当の元祖は、言語学者の Noah Webster さん(1748-1843)で、彼が編纂した辞書 An American Dictionary of the English Language から連綿と続いているのが、Merriam Webster 社から発行されている一連の辞書群です。

詳しくは、英語学者さんたちの研究がいろいろあるみたいですのでそれらをご覧ください。

--------------------
本家 Merriam Wester のシリーズでいちばん有名なのが、おそらく "Webster's Third New International Dictionary" です。OED と違って 1 冊本なので、重さが 6 kg もありました(私の恩師のところにありました)。

で、これの簡易版として版を重ねているのが、"Merriam-Webster's Collegiate Dictionary"。日本人がふだん使う分には、親本よりたぶんこっちの方がハンディです。最新が 11 版で、Thesauraus も付いた CD-ROM 版が実に手頃なお値段です。

この CD-ROM 版でユニークなのは、他の辞書にはない変わった検索条件があることです。

「検索語と韻を踏む語」
「同音異義語」
「検索語を語源に含む単語」
「検索した人物からの引用句」

などなど。実際にはどれだけ有益かわかりませんが、電子版ということで、いろいろなインデックス付けが可能だという試みのひとつとして評価できます。

12:21 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.05.28

# 見えるか、見えないか

リンク: インターネット上の脅威は「見えない化」が進む~IPA調査:Enterprise:RBB TODAY (ブロードバンド情報サイト) 2008/05/27

そもそも誰なんだ。

「見える化」

なんて変な日本語を使いはじめたヤツは。

でもまあ、わかりやすいからいいか。

02:05 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2008.05.25

# 英作文は宝の山でした

マスナガさんの「お宝解答」という企画を見て、私もいくつかトンデモな解答を思い出しましたよ、と。

ネタ元: お宝解答「時制の一致」 - 頭ん中

高校編の和文英訳:
I don't feel like going out. Strawmat, I would like to stay home.

中学編の和文英訳:
Sawayama's books are on the desk.

中学生のほうはね、まあ問題文を漢字で書いてしまった私も悪かったと思います。

でも、高校生の解答のほうは、しばらく気づきませんでしたね。「和英辞典を引いたら必ず例文も見なさい」と。




高校編:
私は外出したくない。むしろ、家にいたい。

中学編:
机の上に沢山の本がある。

想定範囲を軽く超える珍答奇答を披露してくれる生徒は、教師にとって憩いの存在です。

10:29 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2008.05.23

# ビール vs 宗教

らばQさんで紹介されていたので、さっそく元の英語を探してみました。いくつかのバージョンがあるみたいです。

その1: Why Beer is better than religion

その2: Beer Versus Religion
こちらには、「ビールのほうが宗教よりマシな理由」だけでなく、公平に「宗教のほうがビールよりマシな理由」も挙げられています。

ヒマがあったら拙訳を載せてみます。

03:06 午後 翻訳・英語・ことばあげ足とり・笑い | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.05.18

# ボルトとナット

「時代遅れのボルトアンドナットガイよ……」

という名せりふ --- by 榊 清太郎(警視庁警備部特科車両二課整備班長) --- をつい思い出してしまうような成句がありました。

私家版英語辞典@帽子屋: nuts and bolts

02:33 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.05.17

# よそ様だけではない、もっと身近な買収話

もっと身近な翻訳業界で、またまた大型の買収劇がありました。 今年 2 月のことのようですが、過去記事にコメントをいただいて初めて知りました。

SDL のテクノロジー部門が Idiom を買収~市場における No. 1 グローバリゼーション ソリューションの地位を確立~

すでに Trados を吸収して、翻訳支援ツールのベンダーとしてかなり寡占的な立場を獲得しつつある SDL ですが、まだまだ食欲は旺盛のようです。

Idiom WorldServer は、世界市場でビジネスを展開する多くの欧米企業に支持されている多言語ドキュメント管理システム。Oracle、Adobe、Symantec などの IT 企業にとどまらず、Baxter、Medtronic、amazon.com、GM など、多様な業種で既に導入が進んでいる、きわめて汎用性の高いソリューションです。

(Idiom WorldServer 日本総代理店のサイトより)

ちなみに、ここで言っている「多言語ドキュメント管理システム」というのは、

「複数言語へのローカライズにおいて、翻訳の品質よりも効率と管理性を優先する MLV 指向のシステム」

のことです。少なくとも、日本語へのローカライズに関する限りの現状では、そう言えると思います。

しかも、このときの「効率」とはローカライズプロセス全体の効率であり、それは翻訳者にとっての効率とイコールではけっしてありません。「管理性」というのも、もちろんクライアントにとっての管理しやすさのことです。

01:48 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.05.14

# Websterのオンライン辞書がすごい

オンラインでもスタンドアロンでも、飽くなき辞書リソースの探求は今日も続きます :)

Webster's Online Dictionary - with Multilingual Thesaurus Translation

もちろん実用的ですが、それとは別にちょっと時間のあるときにゆっくり参考にしたいような辞書です。

単語を引くと、これでもかというくらいに盛りだくさんの情報が出てきます。

一般語義
特殊語義
商標
固有名詞などの百科項目(Wikipedia より引用)
同義語
反義語
クロスワードパズル用のデータ
画像
著名な引用
文学作品での用例
ノンフィクションでの用例
聖書での用例
インターネット上の関連キーワード
各国語での翻訳
押韻する単語
アナグラム



などなど、単語によって異なりますが、とにかく関連する情報は何でもあり、という感じです。

10:27 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2) | トラックバック (1)

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2008.05.07

# ...he is dead.

(前エントリのつづき)

"Make sure..." というフレーズには、「~を確認する」という、いわば事後対応的な意味と、「間違いなく~ようにする」という事前処置的な意味があるんですね。

make sure he's dead.

つまり、この部分の両義性がこのジョークのミソということになります。

「死んでるかどうか確かめろ」→「間違いなく死んでいることにしろ」→ズドン!

IT 系のメッセージにも、この Make sure は頻出します。

HOGE.ini file not found. Make sure the Hoge.ini file is located in the correct directory.

みたいな感じで。これを

「HOGE.ini ファイルがみつかりません。HOGE.ini ファイルが適切なディレクトリにあることを確認してください」

とか訳すと「みつからない、と言われてるものを確認できるかい」とゆーことになります(ただし、この場合は本当にファイルが存在しないのではなく、ディレクトリ違いだという点も示唆しているので、100% 間違いとは限りませんが)。

私たちが見て曖昧だなぁと思う単語は、ネイティブの間でもやはりジョークのネタになることがある、とまあ、そーゆーことを深く納得させてくれる話なのでした。

ところで、このギャグ、ちゃんと笑いのツボが判るように訳すにはどうすればいいのか、いっこうに名案が浮かびません。柳瀬尚紀氏にぜひ伺ってみたいところです。

12:23 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# Make sure...

コピペスレなどでときどき見かける、こんなジョークがありまして。

深夜、レスキューに緊急電話が入った。
「助けてくれ! 相棒のジョーを撃っちまった!」
「落ち着いてください。状況を教えて? えっとお名前は?」
「俺はマイクだ! ジョーとハンティングに来ていたんだが、獲物と間違えてライフルで……ああ! 神様!!」
「落ち着いてマイク。ジョーは本当に死んでるの? しっかり確かめましょう。おーけー?」
「ああ、それもそうだな……うん、あんたの言うとおりだ。ちょっと待ってくれ、ジョーの様子を見てくる」
30秒後、オペレーターの耳に電話の向こうから銃声が1発聞こえた。
「ああ、やっぱり死んでる!! ピクリとも動かない!! 神様!!!」

これ、日本語だとかなり理解しにくいだろうと推察します。

オリジナルは、これです。

Two hunters are out in the woods when one of them collapses. He doesn't seem to be breathing and his eyes are glazed.
The other guy whips out his phone and calls the emergency services. He gasps, "My friend is dead! What can I do?".
The operator says "Calm down. I can help. First, let's make sure he's dead."
There is a silence, then a shot is heard. Back on the phone, the guy says "OK, now what?"

なんでもこれは、LaughLab というサイトが 2002 年に発表した、「世界でいちばん笑えるジョーク」なんだそうで、日本語版 Wikipedia にも収録されていました(世界で一番笑えるジョーク - Wikipedia)。

ポイントは、"make sure" というフレーズなんですね。

長くなるので次のエントリにつづきます。

11:10 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.05.02

# 嗚呼、Engrish

"Engrish" とは、この国の巷にあふれかえっている「英語もどき」を指す言葉ですが、その中でも「担当者がちょっと辞典を引けばすんだのに」という、信じがたいような初歩的スペルミスですら後を絶ちません。

パチものばかり作ってるような弱小メーカーならまだしも、流通業界堂々の大手たるセブン&アイですら、この始末ですからね。

Tea_brend_2

しばらく前からネタにしようと思っていたのですが、今日買ったパッケージは、どれもスペルが直ってました。さすがに、どこかの消費者からタレコミがあったか、社内の誰かが気づいたのでしょう。

Tea_blend_2


03:52 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2008.04.27

# Dさんの日本語じゃなきゃイヤン

いきなり変なタイトルで恐縮ですが、これがソフトウェアの名前なので、しかたがないのです。

リンク: Dさんシリーズ。

何をするソフトかというと、IME(日本語入力システム。ATOK や、Windows 標準の MS-IME のこと)のオン/オフを任意に制御するためのユーティリティです。

数年前に見つけたのですが、その後しばらく開発者さんのサイトがなくなっており、昨年あたりから復活していたようです。

そもそもの発端は、Trados TagEditor の不具合です。

日本語で入力していても、ちょっと別のアプリケーションを使って戻ってくるとなぜか英語直接入力の状態、つまり IME がオフになってしまう。以前確認したところでは、これは既知のバグとのことでした(ただし、SDL Trados 2006 およびそれ以前のバージョン。最新の SDL Trados 2007 以降については未確認)。

IME のオン/オフ切り替えはキー操作ひとつだけですが、頻繁にこれが起きると実際にはかなりストレスフルなものです。

こんなとき「Dさんの日本語じゃなきゃイヤン」を使うと、IME を強制的にオンにすることができるので、こうしたストレスから解放されます。

さらに便利なのは、IME のオン/オフをアプリケーションごとに、あるいは同じアプリケーション内でもウィンドウごとに設定できること。たとえば、

TagEditor 上では常にオン、辞書検索ソフト上では常にオフ

ということもできるのでした。

11:37 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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# 辞書は多い方がいい

bandwidth というお馴染みの単語が、どう見ても比喩的に使われている文脈がありました。

が、英和・英英のどの辞書を見ても、いわゆる「帯域幅」に当たる訳語しか載っていません。英辞郎には

〔コンピュータ機器・人の〕処理能力

という書き方で、人の能力にも使うと書かれていますが、英辞郎の訳語はもちろん裏を取る必要があります。

ようやく比喩的な定義が見つかったのは、電子辞書(XD-GW9600)に収録されている『The New Oxford American Dictionary』だけでした。

《figurative》 the breadth of a person's interests or mental capacity.

こーゆーことがあるとまた色々と辞書を物色したくなり、密林を見てみたら、なんと OED の CD-ROM 版が 30,000 円ちょっとという格安なお値段(ただし ver3.1。最新版は 3.1.1 らしい)。

さっそくポチッとしそうになりましたが、レビューを見てみると、どうも検索用アプリケーション --- EPWing のような標準規格ではない --- に不具合が頻発するらしく、さらにはインストールさえできないケースもあるということなので、ひとまず見送りました。

10:56 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.04.13

# 確定申告、合格

前に書いたとおり、ぎりぎりの 3/17 になって昨年分の確定申告を済ませましたが、今日、無事「還付金振込通知書」が届きました。還付額の計算も合っていたよーでした。

今年度分からが青色になるので、「記帳開始説明会」なるもののお知らせも届きました。まっとうな納税者には親切だとゆーことでしょう。

02:25 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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2008.04.06

# マイクロソフト ランゲージ ポータル

Microsoft さんが、こんなサイトを公開しましたよ、っと。

リンク: マイクロソフト ランゲージ ポータル ホーム

なんと、単なる用語集ではなく、Microsoft 製品の "Software Strings" つまり、いわゆるユーザーインターフェース(UI)の英日対応まで調べられるサイトです(もちろん日本語以外の言語にも対応)。

検索語と言語を指定して実行すると --- ちょっとレスポンス遅いですが --- 結果が Terminology と Software Strings に分かれて表示されます。たとえば、"Run" を検索すれば、

[ファイル名を指定して実行]

というおなじみの訳語も見つかります。

Microsoft さんがこーゆー、従来は内部資料扱いだった情報を公開するようになった経緯は、まあ容易に想像できるわけですが、今回は触れないでおくことにしましょう :P

--------------------
ところで、このポータルからはローカライズの際のスタイルガイドもダウンロードできるようになっています。

ただしこれは、一般公開用の簡易版であって、実際の翻訳の指定はもっと細かいはずです。

11:58 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2008.04.02

# 書きまつがい

たしかに、仕事で接する英文でもよく見かけるヤツがあります。

リンク: 恥ずかしい英語の間違い10選 - builder by ZDNet Japan

IT 系のマニュアルやヘルプでも、ここ 10 年くらいの間に英文ライティングのレベルがけっこう落ちてきているように思います。

原文ページもあるので載せておきます。

リンク: 10 flagrant grammar mistakes that make you look stupid | 10 Things | TechRepublic.com

#1:Loose と lose
#3:they're と their と there
#8:lay と lie
#10:could of と could have、そしてwould of と would have
これらには、--- 幸い --- まだ遭遇したことありません。

#2:it's と its
#6:you're と your
これらはたしかに、ときどき見かけますね。

#4:i.e. と e.g.
これは多い。実に多い。
ちなみに、 i.e. は "id est"、e.g. は "exempli gratia"、どちらもラテン語ですね。後者の exempli だけでも覚えておけば、example に似てるわけだから間違えないはず。

#5:effect と affect
これは見たことありませんが、effective と efficient の使い方がアバウトなことはけっこうあります。

#7:different than と different from
"different than" は多いですよ。ほとんどもうスタンダード。まあ、辞書にも載ってますからね。

#9:then と than
これも多いですね。たいていは、than であるべきところが then になっている。逆はあまりありません。

--------------------
ところで、ZDNet(CNet)さんの翻訳記事は、あいかわらずいただけませんね。
誤訳云々ではなく訳文全体がぎこちなさすぎる(原文もあまり上手いとは思えないんですけど)ということもありますが、今回は翻訳以外に補足されている説明文があって、それが×。

(effectは形容詞としては「効果的な」、名詞としては「効果」、動詞としては「達成する」という意味であり

それこそ effective と間違えています。effect に形容詞なんてありません(皆無ではないが、相当例外的であってここで取り上げるのは不適切)。下手な説明なら付けない方がいいのに。

これはあまりにも非論利的であるため、悩まされてしまうのである。

「非論利的」、ぷぷっ。英語の書き間違えを伝える記事の日本語にこーゆー誤字があるというのは、これは愛嬌なのかな。

--------------------
もうひとつ。原文タイトルは

"10 flagrant grammar mistakes that make you look stupid"

となっていますが、flagrant なんて、これもまたいかにも fragrant と間違えそうな単語を使っている、これは明らかに意図的ですね。

10:52 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2008.04.01

# 日常的なラテン語

タマゴを割ると白身の中に浮遊している白い紐状のヤツ、ありますね。人によってはあの感じが苦手で必ず取り除くという、アレです。あれのこと、

からざ

って言いますよね? 日常的にもわりとよく使いますよね? 愚妻はあまり使わないだろうと言ってますが。

あれ、何語か知ってました?

私は何となく、「殻座」とか、そんな感じの日本語だろうと思ってたんですが、実はラテン語なんだということを知って、かなり吃驚しました。

カラザ[ラテンchalaza] 鳥類の卵の卵白の中にある紐状のもの。卵黄膜につないで卵黄の回転を防ぎ、胚盤が常に上になるように保っている。(三省堂『大辞林』)

ポルトガル語とかイタリア語経由ではなく、直接ラテン語から日常的な語彙になっている外来語って、珍しいですよね。

上記の定義から言えば、私が推測していた「殻座」もまんざらではないと思うんですけどね。

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2008.03.31

# 汎グリッシュ

なるほどね。これは十分ありうることだと思います。

リンク: 英語は今後100年の間に「English」から「Panglish」へ変わる - GIGAZINE

"Panglish" という単語は、もちろんまだ辞書にありません。

GIGAZINE の翻訳引用には判りにくい部分があるので、以下、原文ニュースを引用しておきます。

English as it is spoken today will have disappeared in 100 years and could be replaced by a global language called Panglish, researchers claim.
New words will form and meanings will change with the most dramatic changes being made by people learning English as a second language, says Dr Edwin Duncan, a historian of English at Towson University in Maryland, in the US.
According to the New Scientist, the global form of English is already becoming a loose grouping of local dialects and English-based common languages used by non-native speakers to communicate.
By 2020 there may be two billion people speaking English, of whom only 300 million will be native speakers. At that point English, Spanish, Hindi, Urdu and Arabic will have an equal number of native speakers.

今の英語やドイツ語だって、もともとはゲルマン語の方言なわけですから、その中で使用人口も分布域も最大となった英語が、こんどはいろいろな方言として分化していくとゆーのはアリな話です。

そーなると、私らもいろいろと崩れた英語を相手にしなくてはならなくなるのかな。

10:51 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.03.28

# 天使と悪魔のビジネス用語辞典

もともと辞典/事典や用語集の類は好きで、今も仕事がら、特にオンラインの辞書・用語集はこまめにチェックしていますが、今回はこんなのを見つけました。

リンク: 【天使と悪魔のビジネス用語辞典】ウェブ版

「かんばん方式」の "悪魔" サイドなんて、かなり強烈。

以前も、「私家版英語辞典」の方で leverage という単語を取り上げ、その中で、Web Economy Bullshit Generator というサイトを紹介したことがありますが、英語でも日本語でも、

ビジネス用語の空疎さ

を感じている人は多いようですね。「ロジスティクス」とか「CRM」の定義がお奨めです。

書籍版もおもしろそう。

08:17 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.03.24

# どのくらい秘密なのか

英語のこのフレーズ、

"the best-kept secret"

秘密なんだか秘密じゃないんだか、ちっとも判りません。

たとえば、"The best kept secret for quickly creating new content for your blog and web site" という見出しのサイトがありますが、それには creating... のハウツーが書いてあるわけで、つまりちっとも秘密じゃないんですよね。

日本語でも「秘中の秘」みたいな言い方があって、でもそれを大公開したりする、そんな感じなのかな。

02:35 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (1)

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2008.03.20

# 色、いろいろ

なるほど。遊び方は無限です。

リンク: どこまでが青でどこからが赤なのか - 頭ん中

使われた回数順に色名を並べたこちらのリスト。
green が764回、blue が742回使われているのに対して
red は192回しか出てこない。

これを読んで反射的に思ったのは、

"red" が少ないのは、Communism の連想が未だに根強いせいではないか

ということでした。

11:48 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2008.03.19

# 来年は e-Tax

なんとか 16 日まで皆勤したのに、17、18 の両日は何も書けませんでした :(

はい。
17 日は締め切りまでの合間を縫って駆け込みで確定申告書を作成し、18 日はその余波で死んでました。

確定申告、今回が初めてなのにギリギリになってしまう辺り、やはり救いがたい性格のようです。

最初から青色申告する気はあったのに、去年、開業届を出すのが遅れたせいで、今回つまり平成 19 年度分の申告は白色。もし青色だったら、きっちり帳簿のつじつまを合わせて最終的な書類を揃える時間はとてもなかっただろうから、結果的には白色で幸いだったことになりますが、要するに「白ならギリギリでも何とかなるだろう」という油断でこんなにギリギリになったというだけのこと。

「手続きアレルギー」が昨年の 1 年間でだいぶ治ったおかげか、作成手順そのものはそんなに煩雑ではない。申告の仕組みはだいたい自力で解明できる。

が、いかんせん困ったのは、PC 依存度が高くなったせいで、すっかり 字を書くのが苦手 になっていること。

なんべんやっても数字を書き間違える。

そこで、来年つまり平成 20 年分はきっちり「やよい」で管理して、申告もぜーんぶオンラインで済まそうと固く決意して、17 日は書類を出したその足で住基カードを発行してもらいにいきました。

役所の窓口の女の子が、対応はとても丁寧だったんですけどね、まるで高校生みたいに見えたのは、私が歳をとったからでしょうか。

10:35 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2008.03.05

# 「にんべん」の付く字

末っ子が、ニュースで見かけた画面を見てポツリと口にしたひとこと。

「信じる」って、「人の言葉」なんだよね……

07:15 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.03.03

# 仕事のはかどる音楽

引き続き音楽話(なんで音楽話が続くかというと、引越しのときに古い "レコード" を見つけて、いくつか CD で買い直したりしているからなのでした)。

以前、翻訳者仲間でも話題になったことがありますが、「仕事がはかどる音楽」というのは人によってかなり違うみたいですね。

私の場合、基本がロックなのでロックはおおむねどれでも OK。特にプログレッシブ系が仕事に向いているほか、テクノポップも結構いい感じです。

クラシックは基本的に×。気分がくつろぎモードになるらしい。

純粋なジャズは、やはりモードが仕事にならないので不可ですが、クロスオーバー系 --- "フュージョン" なんて呼ばないのだ --- は、案外ノリが仕事に合っています。

CD のほか、最近では YouTube で見つけたミュージックビデオも重宝しています。最近では、これが個人的なヒット。CD もちょっと欲しくなっています。

11:54 午前 音楽 翻訳・英語・ことば | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2008.02.03

# とても変な言葉

いろいろと奇妙珍妙な言葉が流行るわけですが、これは意味不明度が特大です。

気づき

"気づきを得る"
"朝一番の気づき"
"ゴルフの気づき"
"コンピテンシー開発(コーチング・多面評価による「気づき」が成果を決める)"



いくつか見てみましたが、さっぱり判りません。

03:54 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2008.01.20

# UI 翻訳の難しさ

当然のことですが、国産以外のソフトウェアを日本語版にローカライズする際には、ユーザーインタフェースの翻訳が必要になります。そうしたインタフェースにときどきヘンテコな訳がある、ということもだいぶ知られるようになりました。

明らかな誤解と誤訳もありますが、翻訳の現場からすれば、「無理もないですねぇ」と納得せざるをえないケースも少なくありません。

最近になって日本語版も登場したフリーのアンチウイルスソフト「AVG」でも、その一例を見かけました。

たとえばコンピュータのスキャンを実行すると、進捗を示すウィンドウにはこんなチェックボックスが表示されます。

 □テスト終了後にコンピュータの電源を切って下さい。

「~下さい」と言われても、誰が誰にものを頼んでるんだかよく判りません。「スキャン終了後に自動的に電源を切る」というオプションなわけですから、正しくは

 □テスト終了後にコンピュータの電源を切る

としなければなりません。英語インタフェースを確認すると、

 □Power off computer after finishing text.

です。つまり命令文だから、「~して下さい」と訳してしまったわけです。

実は、UI を翻訳するときというのは、その出現文脈が判らないまま訳していることがほとんどです。翻訳対象のファイルは、プログラムのソースそのままではなく --- ソース上なら、前後のプログラムから出現文脈を類推できる ---、UI 文字列やメッセージだけを抜き出したようなリソースファイル形式で提供されるからです。

もちろん、翻訳されたリソースをプログラムに組み込んで実機を動かしてみれば、実際の表示を確認できるわけなので、実際あらゆる画面を細かくチェックしているベンダーもあるのですが、おそらくそこまで細かくはチェックしていないベンダーの方が多いと思います。

なぜかというと、そこまで細かくチェックする時間とコストが惜しいわけですね。ローカライズ作業における翻訳コストというのは案外ばかにならなくて、手間をかけようと思えばいくらでもコストがふくらみます。だから最終的には、「ちょっとくらい不自然でも操作に支障のない範囲ならオケー」と判断されます。

ついでながら細かいことを言いますと、上記の例では英語版のインタフェースで最後にピリオドを付けているのがイカンと思います。ピリオドがなければ、おそらく適切な訳になっていたはずです(翻訳者さんがまともなら)。

01:45 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (13) | トラックバック (0)

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2008.01.15

# 翻訳くらべ遊び

インターネット上の翻訳機能が面白いという話は、以前も書きました。

禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # こんな賀状はいやだ
翻訳サイト(自動翻訳/機械翻訳)の実力は・・・。|「翻訳会社、やってます!」奮闘記 Part2

ネット上の翻訳エンジンをからかって遊ぶのはいろいろと面白いわけですが、こんなサイトまで出現しました。

リンク: 10の翻訳エンジンから一括翻訳 翻訳くらべ

例の「かぐや姫」あたりを試してみると、各エンジンの特徴が見えてきます。

04:58 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2008.01.12

# 似て非なる

見た目は似てるけど中身はぜんぜん違う言葉シリーズ。

十日戎

十戒

01:51 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (14) | トラックバック (1)

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2008.01.06

# You Are What

近年まれに見る不快なコピーを見かけましたよ。

You Are What You Buy

バブル到来以前の脳天気な時代ならともかく、全地球規模の有限性が見えてきている今、よくまあこれほど低能で破廉恥なコピーがまかりとおるもの。

丸井系列のクレジットカードの売り文句らしいが、気になってググってみたら、このコピーに関するプラス評価が意外なほど多いことに重ねて驚愕。

以下、自粛。

12:38 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2007.12.20

# TRADOS - メニューバー

わりとよく見かけますが、Trados の翻訳インタフェースとして MS Word を使っていると、メニューバーやツールバーにトラブルが起きることがあります。

Wordbar

これは正常なマシンの方で開いた Word のツールバーですが、もうひとつのマシンで、メニューバーにあるはずの [Trados] メニューがとつぜん消えてしまいました。

調べてみるといくつか解決方法があがっているのですが、どうも症状が違うようです。

Word を起動して画面を見ていると、[Trados] メニューが一瞬だけ現れて、その上に [MultiTerm] メニューが上書きされてしまうのでした。

テンプレート(*.dot ファイル)の置き換えとか、Workbench の再インストールとか、いくつか試してみても改善されず、最終的には、

- MultiTerm をいちど完全削除
- MultiTerm を再インストール。ただしそのとき、Word との連動機能をオンにしないようにする

こうすれば、Word のメニューバーには [MultiTerm] メニューが表示されなくなります。結果的に、[Trados] メニューが無事に残りました。根本的な解決策ではありませんが、今はこれで十分です。

04:10 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.12.19

# すばしこい茶色のキツネ

タイトルだけで何のことか判った人もいらっしゃることでしょう。前エントリの "Firefox"からの連想ですが、こいつのことです。

The quick brown fox jumps over the lazy dog

このセンテンス、全体では 35 文字ですが、アルファベットの 26 文字種をすべて含んでいます(pangram と言う)。その性質から、フォント見本としてよく使われています。

Windows の場合、C:\\WINDOWS\Fonts ディレクトリで欧文フォントのファイルをダブルクリックするとこんな画面を見ることができます。

Quickbrown

このセンテンス、なんとも意味不明なところがマザーグース(Nursery Rhyme)の系譜だと思います。

Hey diddle diddle,
The cat and the fiddle,
The cow jumped over the moon
The little dog laughed to see such a sight
And the dish ran away with spoon.

ところで、上記の Windows ディレクトリで和文フォントをクリックするとどうなるか知ってますか?

Winfont

オリジナルに比べて、なんと悪趣味なことか...

09:20 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (7) | トラックバック (1)

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2007.12.11

# 閉じ込む?

ネタ元: 極寒のトイレに閉じ込められていた男性、100時間ぶりに救出 | 世界のこぼれ話 | Reuters

男性は、トイレのドアが開かなくなり、取っ手も外側から落ちてしまったため、食べ物も携帯電話もない状態で閉じ込まれた。

(太字は引用者)

天下のロイターが、「閉じ込まれる」なんてヘンテコ日本語を使ってちゃいけませんねぇ。
ふだんほとんど意識されることはありませんが、動詞の活用と助動詞の問題です。

同じ記事の見出しでは、「閉じ込められ」という正しい使い方をしているのに、肝心の本文で間違っています。理屈はこうです。

「閉じ込められる」 = 下一段活用の動詞「閉じ込め」 + 受身の助動詞「られる」であり、これが正しい活用と接続。

「閉じ込まれる」 = 「閉じ込ま」 + 受身の助動詞「れる」と分解できますが、「閉じ込ま」と活用する---細かく言うと未然形---ためには、その基本形が「閉じ込む」という動詞---五段活用の動詞---であるということになります。しかし、少なくとも国語辞典を見る限り、そんな動詞は存在しません。

いわゆる「ラ抜き言葉」の問題もそうですが、五段活用/下一段活用の動詞と、助動詞「れる・られる」の接続、そしてさらには可能動詞の問題が絡んでくると、誤用はいたるところに見られます。

中学高校の現代国語文法も、こーゆー身近な誤用をネタにして教えれば、もう少し身に付くのではないかと、元国語教師は思うのでした。

03:00 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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2007.12.06

# その名は Fireman

リンク: 元消防団隊長を放火で逮捕 さらに7件関与ほのめかす - MSN産経ニュース

Fireman が、火を消すのではなく火をつける側だったという、まるで『華氏451度』の皮肉(※)を地でいくような話です。

※注
"fireman" という、よく考えると属性不明になりかねない単語の皮肉な用法が有名です。この作品では、単に「火をつける人」ではなく本を燃やす係、「焚書官」という役職ですが。

01:52 午後 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.11.28

# 音と意味

昨日、漢字かな混じりのことを書いた矢先の実話です。

深夜近くになって、私の買っておいた菓子パンを見つけた家人が声をかけてきました。

「ねー、お茶入れたけど、いもむしパン食べる?」

・・・?・・・いもむし・・・パン・・・?

私が買っておいたのは、これでした。

Imomushi


03:16 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2007.11.27

# おかしな漢字かな混じりをやめよ

以下、いずれも 26~27 日の新聞記事より。

「宮中晩さん会:ベトナム国家主席夫妻招き」

---> 宮中晩...って誰?

「農林水産省は26日、韓国で弱毒タイプの鳥インフルエンザ(H7型)の発生が確認されたとして、鶏肉など家きん肉の輸入を一時停止した」

---> 筋肉 ??

なんかね。パッと見たとき、えっ? と思うわけですね。それから、「ああ」と気づかされる。せっかく表意文字を持っていながら何やってるのと言いたくなります。

01:13 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2007.10.22

# アバウトな話

例によって、人のふんどしは自分ちで広げることにしました。

リンク: 「約1名」という表現について - 頭ん中

> 世界で最初に誰かが言ったときは面白かったのかもしれない。

この表現のことを、連れ合いに聞いてみました。
「いつ頃からあったのかな、この言い方?」

連れ合いの返事はずばり、こうでした。
「1971 年頃、河あきらの漫画で見かけたのが最初」

初出の出典については異論もあると思われますが、時期としては確かにその頃かもしれません。頻繁に(聞く|使う)ようになったのは、そのもう少し後のことでした。したがって、少なくとも msng さんの言う、

> 特にオバある程度人生の経験を積んだ女性が使うことが多い気がする。
(取消線は原文ママ)

というのは当たっているようです。

msng さんちのコメントでは私もわざとらしい珍説をあげてみましたが、実際に使われていた文脈を思い出すと、他の方のコメントにある、

> 約1名って、「1人前に満たないやつが一人いる」ってこと

これも、かなり的を射ている気がします。変な形の謙遜表現。

「XXの人、いる?」
「はい、ここに約 1 名」 → 「つまらない存在ですが、いちおう 1 人に数えてくださいね」

以上、もちろんアバウトな話です。

01:50 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.09.24

# コスプレ、エスプレ、エスプリ

世界の片隅でときどきおもしろいことを呟いていらっしゃる tomyankun さんからいただいたネタ。

> ”エスプレ”と”コスプレ”
> コーヒー豆専門店のチラシを見た時、なんじゃこりゃ???と目が点になった

たしかに、読み違イストを自認する小生もこれに遭遇したら同じ反応をしていたと思いますが、そもそもエスプレッソを「エスプレ」と省略するというのが。あとたったの 1 音節じゃん。

とゆーわけで、ふと気になってこれらカタカナ語の語源を確認してみた次第です。

「エスプリ」
もちろん語源はフランス語の esprit で、元はラテン語の spiritus、つまり英語の spirit ですね。これは特に問題がありません。

「エスプレ=エスプレッソ」
これは、今回の新発見その 1 でした。
今までてっきり、express のイタリア語で「はやい」の意味だろうとばかり思っていたのですが、どうやら諸説があるようでした。リーダーズや COD では、"pressed out" の意のイタリア語だと書いてあります。

「コスプレ」
これが、今回の新発見その 2 です。
元のカタカナ語は言うまでもなく、costume play からの造語ですが、もしやと思って調べてみたら、otaku や manga と同様、すでに国際語になっているようでした。cosplay と綴ります。

tomyankun さんのおかげで、思わぬ拾いものをしました。ありがとうございます。

01:32 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.09.04

# TRADOS - のお節介

Trados Workbench には、数字や単位、日付だけが異なる場合にはその部分を自動置換するという機能があります。

つまり、たとえば "512MB RAM" というセグメントを「512MB の RAM」と訳せば、その次に "1GB RAM" が出てきたときには「1GB の RAM」という訳に置き換えて 100% 一致と見なしてくれるわけです。便利そうでしょ。

ところが、実はこれが要らぬお節介であって邪魔になるだけというケースもあるので注意が必要です。

数字や単位の変換は、[ファイル]→[設定]→[置換]タブで設定します。

Trados_0709042_2

このように、置換する対象にチェックを入れておきます。ところが、この置換が中途半端な場合があります。

Trados_0709041

つまり、2007/9/4 のような単純形式を「2007 年 9 月 4 日」と訳したのであれば別の日付も正しく置換してくれるのですが、この例のような dd, yyyy 形式には上記の置換設定では対応できないわけです(別のオプションを組み合わせればこの形式に対応できるはず)。

しかも、それでいて 100% 一致してしまうので、この誤置換は見逃してしまう危険性があります。翻訳会社によってはこの機能をオフにするよう指定してくるところもあるくらいです。

07:10 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.08.27

# 翻訳雑誌 - 字幕屋本のその後

今年の 4 月に、『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』という本に関する記事を書きました。

この本の記述内容については、「字幕改善連絡室」などが訂正を要求していましたが、このたびようやく、著者である太田直子氏による訂正文が公開されました。実は 6 月にも一度不完全ながら訂正があり、今回が最終的な決着となりました。

今回の訂正に関する詳細は、「字幕改善連絡室」や、以下のブログをご参照ください。

夕陽の窓 | LotR字幕問題のつづき:太田直子氏の訂正記事
世界の片隅でひとり、呟く | 素直に謝る勇気

(と、自分では詳しく書かない不精者)

ここでは、その訂正文が発表された雑誌「通訳翻訳ジャーナル」のことを書きます。一般にはあまり知られていない雑誌らしいので。

『通訳翻訳ジャーナル』は、現役翻訳(者|家)と、翻訳(者|家)になりたい人たちを対象に(実際の読者はたぶん後者が圧倒的に多い)、イカロス出版というところが刊行している隔月刊雑誌です。この手の雑誌には珍しく、右開きの縦書きという体裁。同じイカロスでもムックものは左開きの横書きにしているところを見ると、この体裁はやっぱり不自然なんだと思われます。

ちなみに、表紙のロゴは「通訳翻訳ジャーナル」、奥付けの記載は「通訳・翻訳ジャーナル」と、中黒の有無にブレがあります。

通訳翻訳ビジネス、 特に志望者を対象にしたビジネスは、アルクやこのイカロスなどの各社のほか、教育養成部門を持つ翻訳会社なども参入して相当数の企業が展開していますが、1 年に一度刊行されるムック(稼げる○○、みたいな)を別とすると、定期刊行されている雑誌というのはあまり多くありません。

そんな中で、「通訳翻訳ジャーナル」は現在がんばっている方の雑誌です。ただ、その体裁に如実に表われているように、全体的にちぐはぐで記事の内容も "浅い" というか "ツメが甘い" という印象がなくもありません。

アルクは、Web 版の「英辞郎」を公開するなど通訳翻訳に限らず英語教育ビジネス全般の老舗ですが、イカロス出版の方はどちらかというと後発です。そのせいか、「通訳翻訳ジャーナル」にも、どちらかと言うと各種の通訳翻訳ビジネスの宣伝媒体という雰囲気が強いように思います。

まあ、そーゆー感じのマイナー雑誌ですので、今回の訂正記事が一般読者の目に触れる機会は非常に少ない、その懸念はまったくそのとおりです。が、この手の「本当の事実の伝わりにくさ」、「一度広まった御認識の訂正のしにくさ」というものはマスメディアではごく当たり前の話。ちょっとずつブレークスルーを作っていくしかないようです。

10:56 午後 映画・テレビ 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (1)

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2007.08.25

# "感染" するのはどっちか

「~に感染する」という日本語の使い方が思いのほか難しいらしいことを発見しました。

国語辞典の定義でははっきりしませんが、実際の用例を見ていくどうやら、

 1. <病気に> かかること
 2. <病気が> うつること

と 2 つの用法があるようです。

 - 子供が、インフルエンザに感染しました。(=かかりました)
 - 馬インフルエンザは、人間に感染しますか?(=うつりますか)

なんでこれに気付いたかというと、"infect the network" という英語を訳そうとしていたからなのでした。
上記の例と同じく、コンピュータやネットワークの場合にも

 - ネットワークがウイルスに感染した。
 - ウイルスがネットワークに感染した

と両方の用例が見つかります。ただしこちらの場合、「かかる」/「うつる」で説明するとちょっと不自然なようで、前者は「侵入された」、後者は「侵入した」と言い換えた方がピンときます。

09:58 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.08.19

# 「地球温暖化」の初出はいつ?

「地球温暖化」という言葉がいつ頃から使われるようになったのか判りませんが、『空の大怪獣ラドン』をかけていたら、最初の方でいきなりこの言葉が出てきてびっくりしました。

念のため、この映画の公開は 1956 年です。

04:48 午後 映画・テレビ 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2007.08.14

# TRADOS - 原文と訳文の入れ替え

どーゆー場面で必要になるのか、実はいまひとつよく判らないんですが、TRADOS コミュニティでときどき見かけるのがこの質問。つまり、たとえば
 原文=英語
 訳文=日本語
というメモリ資産があって、その原文と訳文の言語を入れ替えたいというリクエストですね。

Trados (Workbench)固有の機能だけでこれを行うことは、たぶんできません。

☆新しく、TRADOS というカテゴリーを設けました。

【8/20 訂正: ちょっと勘違いがありました】

小生がすぐ思いつくのは、
1)メモリテキストのエクスポート/インポートを使う
2)言語設定を逆にして WinAlign で整合する
3)Excel を使う
といったあたりでしょうか。

1 番目の方法はこんな手順。
- テキスト形式(つまり TMX ではない)でメモリをエクスポート。
- 新規メモリを作成(言語設定を逆にして)して、上のテキストをインポート。

2 番目の方法は、原文と訳文がきれいに対応していればいちばん簡単でしょう。

3 番目の方法は、原文と訳文が改行まで含めてきれいに対応している必要があります。もしそんな理想的な状態なら、
- Excel の A 列と B 列に原文と訳文を貼り付けて、C 列に以下の関数を入力。
 =CONCATENATE("{0>",A1,"<}100{>",B1,"<0}")
- 当然、ファイルの最後までこれを下方コピー。
- C 列を選んで Word に貼り付ける。
 ※形式選択してペースト、または一度テキストファイルを介してからペーストするが吉。
- この Word を訳文生成して TM を作成。

個人的には最初の方法がいちばん好みです。

【8/20 訂正】
実は、1 番目の方法をとるとき、最初は「テキストを開いて、原文と訳文を逆にする」つまり、

 原文
 訳文

という 2 行の順序を逆にして

 訳文
 原文

のようにする作業が必要かと思いこんでいました。

でも、これらのラベルに原文/訳文の区別はなく、順序も関係ないということが判りました。したがって、ただエクスポートして、言語設定を逆にした TM を作成してインポートすれば済むんですね。ちょっとした発見。

ただ、以上のような行の入れ替えが必要なときの参考に書いておくと、秀丸エディタの場合の置換パターンはこうなります。

 検索文字列 : \f.*\f\n\f\f.*
 置換文字列 : \3\4\2\0\1

08:34 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.08.11

# TRADOS - バージョンのまとめ

半分は自分用のメモですが、判っている範囲で Trados のバージョンを整理しておきます。

ただし、コーポレート版、フリーランス版、サーバ版などのバージョン構成はほぼ毎回のリリースごとに変化していてトレースもできないので区別していません。

Trados 2.x
事実上、最初の商用バージョン(だったと思います。もうだいぶ以前のことなので。補完情報のある方はぜひお知らせください)。

Trados 3.x
2.x は不具合が多く、わりとすぐ 3.x が登場しました。一応は実用レベルですが、自前のバイリンガルファイル・エディタである TagEditor はまだまだ使い物にならないダメっ子ツールでした。この後の 4.x というバージョンは市場に出ていません。

Trados 5.x
TagEditor がおおむね実用に耐えるようになったバージョンです。バイリンガルファイルの形式が変更されて互換性がなくなりました。

Trados 6.x
MultiTerm(用語管理ソフト)のファイル形式が大きく変わり、これ以前と以降では互換性がまったくなくなりました。ソフトウェア・ライセンスの登場もここからだったと思います。6.5.x が、買収される前の Trados としては最後のバージョンとなりました。

SDL Trados 2006(Trados 7.5.x)
SDL 社に買収されたてからはこんな名前になりました。正式な製品名としては "SDL" を冠して最後に西暦が付くようになり、バージョン番号は内部的にのみ存続しています。ユーザ間で話をするとき、ちょっと厄介です。使用頻度の高い機能のショートカットなど、細かい修正があります。

SDL Trados 2007(Trados 8.x)
アップグレードしていないので、まだ実機を見たことがありません。

--------------------
Trados って、IT 系翻訳、特にローカライズ業界ではデファクトスタンダードとまで言われていますが、そのわりに情報はあまり出回っていませんよね。「Trados バージョン 歴史」でググったら、自分の書いたエントリがヒットしちゃったくらいです。いくらシェアが高いと言っても、所詮は限られた世界でのことなわけですね。

メモリや用語ファイル、バイリンガルファイルなどの上位/下位互換性については、バージョンごとにかなり状況がややこしいことになっています。

02:15 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.08.08

# 使うか遣うか

ネタ元: GyaO、アニメ「魔法遣いに大切なこと」や映画情報番組を配信

えっと、このアニメのことはどーでもいいのですが、「魔法遣い」という表記は初めて見たなぁ、と。

「魔法使いサリー」の昔から、魔法は「使う」ものだと思っていました。

「使う」と「遣う」は、もともと境界線が曖昧だったりします。

ATOK で表示される使い分け説明には「魔法使い」という用例がありますが、広辞苑によれば、

広く一般には「使」を用いる。心をあれこれ働かせる、技や術を巧みに操る意のとき「遣」も用いるが、動詞形では、「気遣う」以外は「使」がふつうになっている。

のだそうで(下線は引用者)、魔法も「技や術」だから「遣う」になるわけですね。

「仮名遣い」なんかは微妙ですが、ATOK でも広辞苑でもこの表記です。

09:43 午前 翻訳・英語・ことばアニメ・コミック・サブカル | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2007.07.28

# ここいらでまた辞書の話、その2

次は、Concise Oxford English Dictionary の CD-ROM 版。

ようやく手にしれました。
以前書いたように、オックスフォード系の辞書はなぜか電子辞書にはよく収録されているのに、単体の辞書データとしてはなかなかお目にかかりません。

AskOxford.com のオンラインショップには一通り並んでいますが、Amazon.co.jp には書籍本体と CD-ROM のセットしかないみたいだし、日外さんには OED と SOD しかありません。丸善の日本橋店で見つけました。

インタフェースが英国風? にお洒落です。

Cod

このインタフェースでさりげなくスゴイのは、特にリンク設定がなくても、語義説明の中をクリックするとその単語にジャンプするところ。その他の機能も必要にして最小限(アイコンの意味はわかりにくいです)で、なんだかインタフェースまで concise なつくりです。

きれいな発音が聞けるところもうれしい機能ですが、男声と女声が混じっているのが不思議。今のところ規則性が見つかっていません。

04:20 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# ここいらでまた辞書の話、その1

以前、少しは翻訳屋の blog らしく辞書の話をまとめて取り上げました。

# 役に立たない EPWing 集
# 役に立つかもしれない辞書データ集
# XD-GW9600

その後またちょっとだけ変化があったので、また辞書の話をしてみます。

通信用語の基礎知識

以前ご紹介したのは「2004 年後期版」で、これは私の手元にある EPWing データとしては最新版なのですが、本家サイトのデータから見ればいささか古くなってしまいました(現在は 2007 年後期版)。最新版データを使うには、データを本家からダウンロードしたうえで、
- 専用の検索ツールを使う
- 公開されているスクリプトで EPWing 化する
のどちらかが必要です。

もちろん、本家サイトのフォームでそのまま検索してもいいんですけどね、手元にデータとして揃えたいと、どーしても思うわけです。

検索ツールは以前から代表的なのがありましたが、残念ながら使い勝手が(小生には)もう一つでした。最近ようやく、Prester というのが登場して、これがなかなか良い感じです。Java アプリケーションなので、ランタイムなどの面倒があったり、マシンによっては重かったりするかもしれませんが、インタフェースとか、けっこう使いやすくできています。

一方、EPWing 化のためのスクリプトはこちら我楽多置場で公開されています。ただし、Ruby の環境と EBStudio が必要です。

<長くなるので、次の辞書の話はエントリを改めます>

03:10 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.07.26

# 以外

(そーうえば、「以外」と「意外」って、ワープロ出現以来もっともよく見かける同音誤字のひとつです)

日本映画専門チャンネルで、8 月に放映される『日本以外全部沈没』の予告スポットが流れ始めたのですが、そこで使われているフレーズで、「以外」の用法が変なんでした。

「日本人以外の全ての外国人に捧ぐ」

...おかしいですよね?

04:38 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.07.18

# I'm NOT "プラスチック製のバッグ"

次も、翻訳のお話。

リンク: 京の百貨店 エコバッグに徹夜の行列

あまりバカバカしすぎてスルーしてた話なんですが、こちら京都新聞さん。

生成色の地に、緑色で「I’mNotAPlasticBag(私はプラスチック製のバッグではない)」と英文が記されている。販売される国や地域によって文字の色を変えている。2100円(税込み)。

この場合の "plastic bag" は「ビニール袋」あるいは「スーパーの袋」と訳した方がピンときますね。

ちなみにこのバッグ、ヤフオクではとっとくに 10 倍を超えています。

07:20 午後 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (4) | トラックバック (1)

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# 翻訳の不始末

リンク: Game*Spark - : 原因はたった一つの単語?『マリオパーティ8』がイギリスでリコールの対象に by riot_兄

「歴史を変えた誤訳」(鳥飼玖美子)というほど大袈裟な話ではありませんが、翻訳におけるちょっとした誤差がそれなりに大きな影響をもたらしたという点で興味深いニュースです。

先週末、任天堂ヨーロッパの発表により、海外で先行発売されたニンテンドーWiiのマリオパーティ8が、イギリスで初期出荷分すべてがリコールの対象になり、DestructoidやHaHa UKなど複数サイトが伝えるところによると、回収になってしまった原因として、ゲーム中のテキストで不適切な単語が使われていたことが指摘されているようです。
(このサイトの日本語も問題ありだ)
海外サイトの情報によると、今回のリコールの原因になったのは、ゲーム中にミニゲームのルールを説明するカメックから発せられる“Spastic”というたった一つの単語……。この単語が、イギリスでは差別的、あるいは中傷的な用語としてセンサーに引っかかってしまったようです。

この単語、spasm「痙攣」の派生語だと思いますが、そこから広がって「とろい」とか「鈍くさい」とか「いかれた」とか、そういった負の語義が付随しているのですね。今の日本語でも「ビョーキ」とか、もっとヒドい単語で似たような用法がありそう。

問題の単語は、ミニゲームのルール解説中でこんな風に使われたのだとか。
Turn the train spastic!
Make the ticket tragic!

何だろ、「列車を揺らせ」とか言いたかったのかな。あんまり表現に凝らなければよかったのに。

この手の単語は、辞書でひくと「侮蔑的」などのラベル --- 辞書の解説ではスピーチレベルなどと言う --- が付いています。英英辞典では "Offensive" ですから、かなり失礼な部類。使用は避けておくのが無難でしょう。

英語へのローカライズでは当然ネイティブチェックもあったはずですが、そのネイティブが米語圏の人だったのでしょうか。


01:01 午前 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2007.07.14

# 星巴克

リンク: asahi.com:北京の故宮からスタバが撤退 ブログでの問題提起が発端 - 国際

タイトルの「星巴克」がスターバックスの中国語です。「星」は表意、「巴克」は表音のようですね。

世界文化遺産・北京の故宮(紫禁城)内で営業している米スターバックス・コーヒーのチェーン店が13日、営業を停止した。14日付中国紙、北京青年報などが伝えた。故宮側が「敷地内での営業は故宮ブランドを使用すること」との通達を出したため、スターバックスの看板を掲げられなくなり、撤退に踏み切った。
今年1月、中国中央テレビのアナウンサーがブログで問題提起したのを発端に、「中国の伝統文化を踏みにじっている」と撤去を求める声が強まっていた。

08:16 午後 経済・政治・国際 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (0)

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2007.07.13

# なんでも enable

長く翻訳をしていると、出来があまりよろしくない原文に遭遇することも珍しくありません。

中には、ライターが英語ネイティブではないという場合もあります。だいぶ前のことですが、ドイツ語の分離動詞と同じ構造を使っている、かなり手強い英文を見かけたこともありました。が、それより始末が悪い --- 翻訳の段階で苦労する --- のは、英語ネイティブでありながら、あまりライティングのレベルが高くない文章、つまり文法的に間違っているわけではないが文章力の低い、「下手な」文章です。

製品の特徴を表すときは enable の一点張り、などというやつがその典型と言えます。

IT 系翻訳の場合だと、ヘルプやマニュアルの文章はむしろ定型化されているので、文章レベルの差はある程度の範囲に収まっています。けっこう差が出てくる --- ライターの程度が知れる --- のは、プレスリリースとかホワイトペーパー、ブローシャなどの、いわゆる Web マテリアルの場合です。

この手の文章には本来、訴求力、読者をひきつける文章技術が不可欠。にもかかわらず、こうした文章で頻繁に感じるのが、語彙力・表現力の乏しさだったりするわけです。

文章の目的上、製品をアピールしたい気持ちは判るんですが、

<製品名> enables you to...

というのを何のためらいもなく繰り返していたりすると、つい「アタマ悪~っ」と毒づきたくなります。もっとヒドイのになると、

<製品名> enables ......, enabling you to...

などと、分詞表現にまで enable を続けて繰り返すという芸のなさ。

語彙や表現が貧弱な英文は、深く考えずに翻訳してしまうと、その貧弱さを訳文でもそのまま再現してしまうことがあります。もちろんそれも、ある意味では忠実な翻訳ということになるのですが --- そして、この辺が翻訳流儀の大きな分かれ目だったりもするのですが ---、少なくとも小生が関わっている範囲では、そういう忠実さは必要とされていません。僭越ながら原文の下手さを訳文でカバーさせていただく、ということになります。

02:40 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (7) | トラックバック (0)

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2007.06.26

# 「などする」ニュース

最近のニュース、「~など」が急に増えている、というのは気のせいでしょうか。
特に「~などして」、「~などした」というあの使い方が妙に気になるんですが。

スポニチ Sponichi Annex ニュース: 「のろい殺す!」千葉にも騒音おばさん

千葉県船橋市で、隣家の前で毎日のように「のろい殺すぞ」と叫ぶなどしたとして、千葉県警船橋東署は25日、県迷惑防止条例違反の疑いで同市芝山の職業不詳市川晴江容疑者(63)を逮捕した。同容疑者は、このほかにもラジオを大音響で流すなどさまざまな迷惑行為を行っており、警察が動機を追及している。

(下線は引用者)

引用部分には「など」が 2 回出現していて、どちらも辞書どおりの「例示」用法には違いありません。

2 つ目の用例はあまり気にならず、小生としては最初の方がひっかかっているわけですが、だからと言って「~などして」つまり「など」+サ変という使い方が間違っているわけではないようです。

最近そういうニュースが増えたのか、自分がそれを耳にする機会が増えたのか、まあオチはその辺りでしょう。よもや、マスコミ全体のコードとして

「など」を使って報道内容を曖昧にぼかす

というおかしな慣例が定着しつつある、などということは、あったりなどしないですよね。

--------------------
P.S.
ニュースの日本語という点では、「~叫ぶなどしたとして」という、あの「~として」もチャームポイントですね。

09:34 午前 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.06.23

# 審査せにゃ

リンク: 「字幕in」を活用した日本語字幕コンクール、戸田奈津子氏が審査:ニュース - CNET Japan

スゴ...「字幕in」に最も似つかわしくない審査員ではないかと。

審査委員長は字幕翻訳家の戸田奈津子氏が務める。同氏らの監修により、字幕の文字数制限、タイムラインに同期させた原文/日本語の同時表示といったシステムがカスタマイズされている。

字数制限だけではなく、「文末を特定の形にしなきゃだめかもだ」ルールも採用されているとか、いないとか。

03:57 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.06.12

# The Boy and The Girl

「この国にも "渇きの相" が出ている」と一部では表現されているように、今年はラ・ニャーニャという現象により、日本では少雨と猛暑が予想されているとのこと。

「ラ・ニャーニャ」というのはあまり聞き覚えのない単語ですが、「エル・ニーニョ」の反対と言われれば、少なくとも名前については、なるほどと肯けるわけです。今回のエントリタイトルも、ラテン系の言語を少しでも知っている方なら納得していただけるのではないかと。

どちらも原語はスペイン語で、有名な方の「エル・ニーニョ」は El Niño と綴ります。
英語に直訳すれば "The boy"。

かたや「ラ・ニャーニャ」は、la Niña で、直訳すれば "The girl" となります。

ところが、これらを単に「男の子」と「女の子」などと、一般庶民の子供を語るように考えてはいけません。ヨーロッパ言語における定冠詞の存在を甘く見てはいけないのでした。

「エル・ニーニョ」とは、特定の海域で海水温度が上昇する現象なわけですが、これが発生するのがちょうど新年前後つまりクリスマスの時期。クリスマスに「男の子」とくれば、そう、それは神の子 Jesus Christ その人なんですね。

英語で "The Book" が聖書を指すように、スペイン語の "El Niño (The Boy)" は、神の子を表すのでした~。

じゃあ、la Niña (The Girl) って誰よ?

日本人ならそう思うのが人情というもの。イエス様の対になる女性なんて設定はないよね。マグダラのマリアさんは、まだちょっと無理っぽいし。そう、ちょっと調べてみても、女の子の方はただ単に "the girl" らしく、特定のお嬢さんを指すという用法はないみたいなのでした。

最初は「アンチ・エルニーニョ」とか呼ばれていたが、「アンチキリスト」っぽく聞こえるということで男女が対の名前になったという話もあるのですが、それはかなり後付け理由くさいです。

男女の名詞がこういう形で不均衡なのは、ヨーロッパ言語なら不思議でも何でもないですからね。

02:05 午前 翻訳・英語・ことばサイエンス | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.06.08

# 広島方面に浮遊していたギリシャ文字

最初は、ラーメンか何かの話だと思いましたよ、てっちり、じゃない、てっきり。

ネタ元: イナゲ:具材

実はそうではなくて、こいつ

ξ

の話でした。

もちろん、おもしろさの大半は、なん吉氏の毎度ながらに絶妙な語り口にあるわけですが、ネタ自体もけっこうオツです。

ちなみに ATOK では、「くさい」、「ぐざい」、「くしー」で変換できるほか、「ぎりしゃ」としてもギリシャ文字が候補にずらーっと並びます。

ξ は小文字で、大文字は Ξ

ギリシャ文字なので、「ぷしー」/「ぷさい」→ Ψ(ψ) みたいに変な読みは多いわけですが、この手なら、ふつうの日本語入力とはかぶりません。

「ぐざい」は、かなり不意打ちでしょう。

「河童」または「合羽」と打とうとして、Κ(κ) に遭遇することはあるかも。

09:32 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (3) | トラックバック (1)

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2007.06.06

# 掲題の件

以前、「首記の件」というエントリを書きました。そして、この単語が拙ブログでは常に上位にいる検索ワードだという話も書きました。

最近、それよりさらに珍しいオトナ語に遭遇しました。それが「掲題」。
意味や用法は「首記」とまったく同じで、やはり手元のどの国語辞典にも載っていません(広辞苑、大辞林、日本国語大辞典、大辞泉、明鏡)。

ATOK はさすがで、「首記」も「掲題」もちゃんと変換します。

02:46 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.05.29

# 慚愧、慚愧、慚愧。

本当にいたらスゴイなー、"仮面ライダー慚愧"。

ネタ元: finalventの日記 - 仮面ライダー慙愧

引用されている読売の記事はこれ。
リンク: 首相コメント「慚愧に堪えず」、「残念だ」の間違いか : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

安倍首相が松岡農相の自殺について、「慚愧(ざんき)に堪えない」と述べたことについて、「『残念だ』という意味で使ったのであれば、間違っている」という指摘が出ている。
 「慚愧」は「恥じ入ること」(広辞苑)という意味だからだ。首相周辺は「最近は反省の意味でも使われており、問題はない」としている。

ひょっとすると、阿倍クンは辞書どおりの意味で使った(使っちゃった)のかもしれないよね。

小生も、昨日ニュースを見ていて、すぐ辞書をひきましたよ。

ざんき【慙愧・慚愧】
恥じ入ること。「―に堪えない」(広辞苑)

ざんき【慚愧・慙愧】
元来は仏教語で、「慚」は自己に対して恥じること、「愧」は外部に対してその気持ちを示すことと解釈された。「慚」「慙」は同字〕自分の言動を反省して恥ずかしく思うこと。(大辞林)

ざんき【慙愧・慚愧】
自分の見苦しさや過ちを反省して、心に深く恥じること。(大字泉)

なるほど、「反省」という字も見えますね。
ということは、"首相周辺" の弁明どおりだったとしても、農相の自殺について阿倍クンは「自分の見苦しさや過ち」を認めていて、「自ら反省するところがある」わけですね。

その辺のところを、ちゃんと説明してもらいたいものです。

12:36 午後 経済・政治・国際 翻訳・英語・ことば | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2007.05.18

# XD-GW9600 の続き

XD-GW9600、けっこう売れてますね。価格.com でも上位にいるし、数日前にはヨドバシ・アキバの売り場でも 1 位になってました。

翻訳・通訳関係の方にもちょっと注目されているみたいなので、使用レポの第 2 弾を書いてみました。ただし、他の電子辞書は使ったことがないので、GW9600 が他の製品に比べて良いかどうかは判りません。あくまでもこの製品の使用感レポートということで。

参考リンク: “Living” is the key word - カスタマイズできたらいいな、電子辞書
参考リンク: 通訳という名の迷宮: 電子辞書 カシオ XD-GW9600

テキストファイルの読み込み機能
通訳では必要ないかもしれませんが、翻訳の場合はソースの文章(データがあれば)を取り込んでおいて GW9600 上で読むということが可能です。読みながら辞書も引けます。ただ、小生の場合は通勤とか移動がほとんどなくなったので、便利さを実感するには至っていませんが...。---> ろーんうるふさん

コンテンツ追加と容量も、気になるところです。
追加コンテンツはそれなりに充実していますが、コウビルド系の辞書が 1 冊もありません。コンテンツの傾向は、各メーカーの契約上の問題なんだろうと思いますが、もう少し柔軟に対応していてほしいですね。
本体容量は 50MB までなので、たとえばブリタニカなんかは収まりません。ただし、SD カードに対応しているので、2GB を 1 枚挿しておけば、だいたい何でも入りそうです。
実際にはコンテンツを追加できるだけなので、「カスタマイズ」というほど自由度は高くありませんよね --- > imoさん

翻訳・通訳関係者の間では、「英辞郎」を追加できるという点が高ポイントなのかもしれません。小生の場合、電子辞書はあくまでもデスクトップ PC の補助で、英辞郎はそっちに入っているので追加コンテンツとしては必要ないのですが。

小生が追加コンテンツで不満なのは、他の辞書製品に収録されているコンテンツが、追加コンテンツとしてすべて用意されていないということです。たとえば、高校生用として人気が高い XD-SW4800 には、山川の日本史/世界史小辞典が入っていますが、これは追加コンテンツとしては売られていません(XD-SW4800 の収録内容も、実はなかなか魅力的なのですよ)。辞書製品間でコンテンツの交換ができたらすごいんですが、それは商売上ちょっと無理なお願いでしょうね。

ハードウェア面についても一言。
キーボードはあまり気になっていません。どのみち PC と同じような打ち方ができる大きさではないので、小生は「両手で持って両親指打ち」のスタイルです。
手書き入力の認識はけっこう優秀ですが、英語発音は、音質面などまだまだ改良の余地あり。液晶画面も、バックライトないだと暗すぎ。

--------------------
テキストを読み込めるんだから、もう一歩進めてテキストエディタを装備してほしいですね。こういう要望はけっこうあるようなので、そろそろ実現してもいい。少なくとも、ワンセグとか付けている場合ではないと思います。

エディタもそうですが、全体にもう少し PC との親和性が高くなるといいんですね。コンテンツの追加にしても、たとえば EPWING に対応すれば相当便利じゃないですか。

でも、あれだな。そういう方向に行くと、どうしてもハンドヘルド/パームトップ PC との境界線が曖昧になっちゃうんでしょうね。

11:41 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.05.07

# 栄えある最上級

ネタ元: 世界中で売れなかったゲーム機ワースト10 - GIGAZINE

さっそくいろんな異論も出ているわけですが、ワースト 1 の座は見事「ピピンアットマーク」。

さて、この「ワースト」という単語、日本語の文脈では使い方が苦しい場合がありますね。

引用元記事のオリジナルは、"The 10 Worst-Selling Consoles of All Time"(Game.pro の記事)です。

つまり英語では、"best selling"(もっともよく売れた)に対して "worst selling"(もっとも悪く売れた)という言い方があって、どちらも最上級。best と worst で方向が逆になるだけで、selling という修飾語は同じですね。

worst=マイナスに最大 --- ← よく売れる(selling) → +++ プラスに最大=best

こんなイメージでしょうか。

ところが、これが日本語になると、「よく売れたベスト10」とは言っても「よく売れたワースト10」とは言えず、どうしたって「売れなかった~ワースト10」となります。worst の本来の使い方から見ると、この日本語が不自然にも思えるわけでした。

高校生が比較に悩まされるのはいろんなレベルで無理もないのですが、なかでも "less" が難しいのは、たぶんこの辺りに理由がありそうです。

03:25 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.04.24

# 一身上の不?都合

「一身上の~」と言えば、退職届に書く定型文ですね。実際の理由を書かずに済む便利なオトナ語です。

  「一身上の都合により~退職いたしたく…」

都合といえば、『不都合な真実』というのも一瞬だけ流行しました。

  「一身上の不都合により~退職いたしたく…」

本当の意味でこう書いた方がいいんじゃないのと言いたいケースもありそうですが、しばらく見ていると、反対語のようでいながら意外と互換という気もしてくる、ちょっと不思議な言葉です。


※念のためタイトル解説~正規表現メモ:
不?都合
という書き方は、「不」を疑問に思ったわけではなくて、Perl スクリプトや秀丸マクロで使える正規表現という書き方です。こういう検索をすると、「不」があってもなくても一致するので、「一身上の都合」も「一身上の不都合」も両方ヒットします。
翻訳者は、正規表現を使えると格段に仕事が楽になるので、機会があればこれからもご紹介してみようと思います。

03:17 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (1)

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# XD-GW9600

というわけで、躊躇していた電子辞書の購入に踏み切りました。カシオでこの 2 月に出たばかりの XD-GW9600。実際に使ってみると、なかなかどうして便利なのでした。

今まで入手していなかった辞書のラインアップが一気に増えたのは、もちろん嬉しい。
- 大辞泉
- 明鏡国語辞典
- 漢字源
- 日本語大シソーラス
- ジーニアス大英和
- Oxford 系辞書

が、意外にいちばん重宝するのが、んなもん要らんと思っていた「手書き機能」の手軽さでした。何が便利って、

手書きで漢和辞典がひける

これは想像以上に楽なわけです。しかも認識精度がなかなかよいし。ただし、『漢字源』の記述そのものは、ちょっと物足りない気がしました。

タッチペンと言えば、ウチの子らが DS で遊んでいるところを連想するくらいでしたが、実はまだまだ応用の可能性は高いのかもしれません。

12:44 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (2)

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2007.04.23

# 翻訳に使う辞書

前エントリで羅列した辞書データについて、少しばかり補足です。

小生の辞書リストには、専門であるはずのコンピュータ関連の辞書がほとんど入っていません。あるとすれば、FOLDOC とか Jargon のような特殊な辞書だけ。IT 関連の翻訳をしていると、実はコンピュータ用語の辞書というのはほとんど役に立たないからです。今や、基本的な用語なら(必要になったとしても)オンラインの方が詳しく載っていますし、新しい用語ならやはりオンラインでないと見つかりません。

オンラインでほとんどの調べものが可能になった現在、産業翻訳で頻繁に使う辞書は---小生の場合---、
  (1) ごく専門的な用語辞典
  (2) 基本的な語義を訳出するときのイメージの助けになる英英辞典
という両極端になってきたように思います。

それでもいろいろと辞書を揃えたくなってしまうのは、なかば趣味みたいなものなんですが。

で、前にも書いたように Oxford 系の辞書だけはなかなか使えるものがなく、悩んだ結果、カシオの XD-GW9600 を買ったわけなのでした。

03:58 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# 役に立つかもしれない辞書データ集

先日、非実用の辞書データを紹介しました。そのエントリが大反響だったという話はまったく聞きませんが、実用データの方も挙げておかないことには、片手が不自由な人(注1)になってしまうので、「実用 辞書データ集」もやってみることにしました。

(注1: 正しい言い換えは「気配りを欠く、不公平」なんだそーだ。へぇ)

今回のデータは市販のものが多いので、ほとんどは
TranRadar電子辞書SHOP
などを調べれば詳細が載っています。EPWING データかそれ以外のデータ形式かも示しました。

CD-180万語対訳大辞典 英和・和英 (EPWING)
    高いっす。でも、いろんな方面で助かります。用語をググるヒントにもなります。

Collins COBUILD Advanced Learner's English Dictionary (EPWING)
    市販の書籍付属版の CD-ROM から、EBStudio でデータ変換したもの。オリジナルのブラウザは使いにくい。

大辞林(1992年版) (EPWING)
    国語辞典はいくらあっても多すぎません。

英辞郎 Ver.102 (対訳君形式)
    「対訳君」とセットのデータ。この他、EPWING データの Ver.64。

広辞苑 第5版 (EPWING)

Longman Dictionary of Contemporary English (EPWING)
    市販の書籍付属版の CD-ROM から、EBStudio でデータ変換したもの(バージョン情報が出てこない……)。COD を除いて、小生が最強だと思っている英英辞書。訳語を考えるときのイメージ化には不可欠であり、翻訳には必須。

Webster's Revised Unabridged Dictionary (1913) (EPWING)
    電子辞書オープンラボより。データは Project Gutenberg 版。

Merriam Webster's Collegiate Dictionary (固有形式)
    書籍付属版。語義がわりと小生の好み。

ランダムハウス英語辞典 (固有形式だが DDWin や Jamming で対応可)
    オリジナルのブラウザはかなり使いにくい。

Roget's Thesaurus (EPWING)
    電子辞書オープンラボより。でも詳しすぎてほとんど使わない。

デジタル類語辞典 第3版
    オンライン版で多用していたが、あるときから使用制限が付くようになったので慌てて製品版を購入。今は第 4 版が出ています。

リーダーズ+プラス V2( (EPWING)
    これを持っていない翻訳者/翻訳家はいないと思われるほどのデファクト的辞書。だから、そろそろバージョンアップしてください。

小学館・国語大辞典 Bookshelf 版 (固有形式)
    個人的には広辞苑よりしっくり来ることが多い。

03:33 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# ゾウは鼻が長い

(タイトルは、日本語の主語を考えるときよく出てくる例文、ただそれだけ)

ネタ元: 医学都市伝説: 気象病

「本日の日本(4/20)」で、「気象病」という耳慣れない言葉のことを書きましたが、専門家はさすがに目の付けどころが違うんでした。

同支社気象情報課は「急に環境が変化すると、象は体がついていけなくなる。フェーン現象の時、敏感な象はいらいらしがちになる」と説明している。(中略)「気象」の象ってゾウさんの象なんだという事実に今さらのように気付き、ある種の感激を覚えてしまったというわけ。

前半はなんちゃって bogus なわけですが、言われてみれば「象」でした。

漢和辞典をちょっと調べれば判りますが、という字は

ぞうの姿を描いたもの。ぞうは、最も目だった大きいかたちをしていることろから、かたちという意味になった。
(漢字源)

ということになっていて、「外にあらわれたすがた、かたち」という意味を持ちます。んで、「気象」というのは「大気のすがた、かたち」なわけですね。

そもそも、もっとも原始的な漢字の成り立ちである「象形文字」というその言葉からして、すでに「ゾウの形」ですね。古代中国人にとって、ゾウさんというのはそれだけインパクトのある生き物だったつーことでしょうか。

01:59 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.04.20

# 対策に対する対策

ネタ元: 「○○対策」の変な使い方 - 頭ん中

「○○に対する策」という言葉の○○を次のように分類してみます。

1. ○○が、良くない(と一般に考えられている)事物の場合……OK
2. ○○自体には、良否の区別がない場合        ……×(まれに△)
3. ○○そのものが、対策(に準じる)行為である場合   ……×

これを前提にして、キーワード「対策」をググってみますと---

ハイテク対策

のような変な用例(2 の分類に当たり×)もありましたが、その他はそれほど珍国語と言える例はありませんでした。おもしろかったのは、次の用例でしょうか。

「北方対策」
「北方」自体は良くも悪くもないので 2 に当たりますが、この文脈では「北方領土」を指しています。しかし「北方領土」自体が悪いわけでもないので、「北方領土対策」と読み換えてみてもやはり適切とは思えません。「北方領土をめぐる好ましくない状況」対策くらいなのかなと思っていたら、「北方領土問題対策」という表現もありました。○○に入る語句にどのくらいの省略があるか、もポイントのようです。

それにしても、「対策」だけで検索しても「SEO対策」のヒット数は多く、SEO の意味を考えるとこれほど奇異な用例は類を見ないようなのでした。

--------------------
この話で思い出したのが、「△△問題」という言い方。△△に使われる言葉の曖昧さは、たぶん「○○対策」以上でしょう。

「公害問題」なら「公害=問題」ですが、「障害者問題」となると「障害者=問題」ではありません。

大学のとき、日本在住のインディアン女性をキャンパスに招聘してディスカッションを開いたことがありました。そのとき誰かが「インディアン問題」という言い方をしたら、彼女がすかさず---日本語です---「インディアンは問題じゃないよ」と笑いながら指摘していました。

使い方がここまで曖昧だと、「△△問題」という言葉を問題視して対策を講じようという声はあがらないみたいです。

05:27 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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2007.04.19

# TRADOS - 「訳語検索」の Tips

(翻訳支援ツール Trados のネタなので、お使いでない方はスルーが吉)

Trados Workbehch には、メモリ内で原文を検索する「訳文検索」という機能があります。ギョーカイの人は、英語メニューのまま「コンコーダンス一致」なんて言ったりします。

知ってる人は知ってるかもしれませんが、その使い方のヒントです。

検索対象として複数の単語を入力した場合の動作は、AND 検索です。だから熟語などはそのまま入力して検索したくなりますが、実はここに、気付きにくい落とし穴があります。この機能で複数単語を指定した場合、

品詞による重み付けはない

ということです。どういうことかというと、たとえば "...each role that participates in..." という英文に遭遇した場合、人間なら、that や in を辞書でひいたりせず、role または participate という意味上の重要度の高い単語から調べていきますね。その重要度の判断を「重み付け」と、ここでは言っています。

ところが Workbench で "role" や "participate in" の既訳を確認したい場合、そのまま "each role that participates in" と入力してしまうと、その中の 5 単語がまったく平等に検索されることになります。運よくそのままの用例があれば求める訳文にたどり着くのですが、そうでないと、これらの単語が無関係な文脈に、しかも順不同で出現している訳文しか返ってこないことになります。

この例では結局、"participate" だけで検索したら、求める既訳が見つかりました。

--------------------
Trados Workbench の検索ロジックが今一つおバカなのは「訳語検索」に限ったことではありません。ふつうにセグメントを翻訳しているときの検索動作も実は意外と頼りにならないことを、Trados ユーザならたぶん知っていると思います。少なくとも、複数の候補がヒットしたときは、一致率の低い候補も確認してみることをお勧めします。

06:53 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# 役に立たない EPWing 集

翻訳者のはしくれとして、小生もいろいろな辞書 --- 実用と趣味の両方で --- を集めています。基本的にはやはり EPWING が望ましく、固有形式の辞書(つまり検索に専用ツールが必要)はできる限りデータ変換して使っています。

市販/有償の辞書データも当然いくつも購入して使っていますが、最近は、無償の EPWING データもネット上にいろいろ公開されていて、そういうサイトを定期巡回して最新版のデータを探し出してくるのもなかなか楽しいわけでした。

ネタ元: 技術者から翻訳者へのシルクロード:翻訳にとても役立つCD-ROMソフトのリスト(内容見直し070419)

こちらのように、翻訳関係のサイトやブログでは「翻訳に役立つ」辞書の紹介はよく見かけますが、ここでは、小生が今まで集めてきた「役に立つかもしれない、立たないかもしれない」EPWING 辞書を紹介してみようと思います。

※4/22 追記: 別エントリを追加した関係でエントリタイトルを変えました。
(役に立つかもしれない EPWing 集 → 役に立たない EPWing 集)

データ入手先の大半は、「電子辞書オープンラボ」の FPWING データ集です。それ以外の URL 等はめんどうなので載せていません。

以下のような役立ち度を記しました。
☆……ただの趣味
☆☆……ときどき役に立つ
☆☆☆……思いがけず実用的

The Devil's Dictionary
    電子辞書オープンラボより。データは『惡魔の辭典』Project Gutenberg 版。

Easton's 1897 Bible Dictionary
    電子辞書オープンラボより。データソースは Bible Foundation。

Free On-line Dictionary of Computing (FOLDOC) ☆☆☆
    FOLDOC の本家サイトより。
    電子辞書オープンラボにもありますが、本家の方でデータが更新されています。

Holy Bible ☆☆
    ソースは忘れましたが、データを入手して EBStudio 変換したもの。
    Web 版(現代英語)と King James Version を同時収録しているうえ、上記 Easton's Bible Dictionary や、その他にも聖書関係の資料を収録しているというスグレモノです。

JARGON FILE ☆☆☆
    Jargon File の本家サイトより。
    電子辞書オープンラボにもありますが、本家の方でデータが更新されています。
    趣味にも実用にも、IT 翻訳者必携でしょう ww

PDD 百科辞書と PDD 人名辞典 ☆☆
    私立 PDD 図書館のサイトより。

Star Trek
    ソースは忘れました。歴代シリーズのエピソード名や人物名を検索できます。

Virtual Entity of Relevant Acronyms
    電子辞書オープンラボより。
    略語集。

Word Net ☆☆☆
    Word Net 本家サイトより。
    電子辞書オープンラボにあるデータは ver1.6。本家では 2.0 データをダウンロードできます。

WHO WAS WHO
    電子辞書オープンラボより。
    物故者辞典。記述が面白い。

銀河声優辞典
    ファンサイトより。ただし現在はデータの入手は困難かもしれません。

通信用語の基礎知識 (2004 年後期版) ☆☆☆
    電子辞書オープンラボより。
    本家サイトにはもっと新しいデータがあるのですが、全部ダウンロードして EPWING 変換するのが大変そう(専用の検索ツールも公開されています)。
    オタク的辞書ですが、しっかり実用的です。

不明解略語辞典 ☆☆
    電子辞書オープンラボより。データソースは同名のオリジナルサイト。

歴史DB
    歴史データベースのサイト。

10:06 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.04.18

# チンする

(こちらはコメントを受け付けていないので、TB しました)
リンク: Studio RAIN's diary: 伸長、展開、復元、解凍…

安定していない IT 訳語は他にもいろいろありますが、確かにこれは、使用頻度が高いわりにいつまでもバラバラですね。5-6 年前には、「"解凍" は俗語だからペケ」とおっしゃるお客さんもいました。

08:48 午後 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.04.16

♭恩師の英語指導

はじめにお断りしておきます。
 
英語の恩師のことを書こうとしています。もしその内容が identification の手がかりになってしまった場合は、関係各位にご寛恕を請うばかりです。なお、恩師は数年前に

はじめにお断りしておきます。
 
英語の恩師のことを書こうとしています。もしその内容が identification の手がかりになってしまった場合は、関係各位にご寛恕を請うばかりです。なお、恩師は数年前に鬼籍に入っています。


私が恩師の英語指導を受け始めたのは、小学校5年の終わりくらいでした。近所の農家の、たぶん末っ子だった方で、その当時は上智の外国語学部(ロシア語)を卒業し、2年間ほどの留学を経てさらに東京外国語大学の英米語学科に入学し直してまた学生をやっていた頃でした。
 
週2回、各2時間というスケジュールで通い始めましたが、私のほかは恩師の親戚の子たち――私より数年年長――だけでした。いっときは、私ひとりだけだった時期もあったので、今思えば何ともぜいたくな準個人指導だったわけです。1回あたりの授業時間も、しばらくすると恩師の気分でいくらでも延びるようになり、何年か後には毎回4、5時間くらいは当たり前という風になっていました。

今でもPCに座っていくらでも英文に向かっていられるのは、もしかしたら、このとき身についた体力かもしれません^^
 
余談ですけど、それだけ長時間になってくると、家の方がおやつや夜食を出してくれるようになって、「フレンチトースト」なるものを初めて食べたのも、たぶんそのときです。アイスクリーム添えでした。
 
各回の予習として、本文を読んだうえで新出単語をすべて調べておくというのが課題でした。最初から研究社の『新英和中辞典』を与えられたので、最初のうちは調べるのとても時間がかかったのを今でも覚えています。このときの英和中は、表紙がとれて補修するくらいまで使い込んで、今もどこかに保管してあります。「単語を引いたら、引くたびに赤鉛筆でチェックを付けておいて」と言われたので、基本単語などは、それこそ何十個もチェックマークが付いています。
 
授業は、「あと追い読み」とその訳出を中心に進み(生徒が複数のときは輪読方式)、その合間に単語や文法の解説、発音指導が入るという形式でしたが、文法解説にはいきなり高校並みの文法用語を使い、発音指導にも最初から発音記号を導入するという「容赦のなさ」が恩師のスタイルでした(もしかすると、当時は、相手に合わせて加減するということを知らなかっただけかもしれませんが)。
 
中学生用の標準教科書の1学年分を2か月ほどで消化するというペースだったので、半年くらいで中学3年までの範囲が終わります。そうすると、次は別の出版社の教科書3学年分を終わらせます。そんなコースを3~4社分繰り返し、その間にもL.A Hillなどの教材を副読本にして、とにかく「英語をたくさん読ま」せてくれました。
 
中学生の課程が終わると、次は高校用の教科書を同じように数社分総ナメします(CROWNをはじめ、めぼしい高校用教科書は、このとき全部こなしたことになります)。それがおおよそ終わったのが、中学2年の頃。
 
そのタイミングで英検2級を受け、合格。今では、2 級なんて小学生でも受けてますが、あの頃はまだけっこう珍しかったかもしれません。2次試験の面接官が私の顔を見るなり、けっこう驚いてました^^;
 
それ以降のテキストは、「英語の素材ならなんでも」という感じで、
 
・PenguinやPuffinのペーパーバック
・英字新聞/雑誌の切り抜き
・Progressシリーズ(私立中高で採用されることが多い有名な教科書)
・大学入試向け参考書・問題集
・大学入試問題
 
などを手当たり次第に「大量に」こなしました。この頃、ポロボロになった英和中の次の辞書として指定されたのが
 
『研究社 現代英和辞典』
 
でした。今のリーダーズの前身です。
 
英語だけではなく、英語圏の文化についても教えようとしてくれたので、
 
・イソップ童話
・シェイクスピア
・聖書
・Nursery Rhmes(Mother Goose)
・Alice in Wonderland
・The Wizard of Oz
 
なども教材になりました。Alice in Wonderlandを読んだときなどは、岩崎民平の訳本も併せて鑑賞しました。文化といえば、映画に連れていってくれたこともあって、チャップリンの『独裁者時代』でした。その後で、たしか、当時オープンしたばかりのマクドナルド1号店に連れていってくれました。ビッグマックを食べるのにえらく苦労したのを覚えいます。
 
東京外語に受かったときには、入学祝いとして、当時まだ初版だったランダムハウスをいただきました。
 
こんな勉強方法を6年以上も続ければ、いやでもそれなり以上の英語力を身につけられるでしょう。恩師が私につぎ込んでくれた指導の質と量を考えれば、今の自分の英語力には未だ恥じ入るばかりなのですが、機会があれば、どこかの中学生にこれと同じ指導をしてみたいと、教師をやめた今でも実はひそかに思っています。

12:38 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# Read after me

マスナガさんちの記事: 英語が聴き取れないというのはこういうことかもしれない - 頭ん中

「外国語が聴き取れない」というのは
「聴けていない」のではなくて
それを「要る情報」として扱えてないだけかもしれない。

これは本当にそのとおりで、それが articulation ということでしょうという、たまには真面目なお話。

小生の英語の恩師が徹底的に繰り返したのが、「あと追い読み」でした。正式名称は知りませんが、教師が英文を読み、その後について読むという、あのスタイルです(『ドラゴン桜』にもたしか、同様の指導方法が紹介されていました)。

小生の受けた方法が一般的なものかどうか自分では判らないのですが、たとえば次のような英文なら、以下のようなスラッシュ位置で区切って「あと追い読み」していました。

Then/ I walked/ up and down the aisles,/ reading,/ showing pictures,/ correcting pronunciation/ as I asked students/ to read after me.

ふつうに見かける「あと追い読み」より区切り方が短いかもしれませんが、これが恩師のメソッドで、入門当初からずーっとこのスタイルでした。もちろん、初歩の頃はこれと並行して発音指導が入ります。上記のスラッシュ位置を見れば判ると思いますが、この読み方を繰り返すと、

・教師の発音をそのまま真似ることができる
・英文のリズムと抑揚を真似ることができる
・英文の構造が体感的に身に付く
・熟語などもブロック単位で覚えられる

等々のメリットがあります。また、センテンスは区切られていますが、各パーツはナチュラルなスピードなので、

・意味のあるまとまりで捉える

というヒアリングの練習にもなっていました。「教師が発声する → 自分の耳に届く → 自分が発声する → 自分の耳に届く」というフィードバックループも、たぶん生理的に一定の効果を持っていたようです。

数年間こういう訓練を受けておくと、海外留学の経験などなくても、実はおおよそのヒアリング能力は身につきます。

--------------------
ここに書いたのは、小生が恩師に受けた英語学習のほんの一端。何かの参考になるかもしれないので、そのほかの話も B 面に書いておきます。

10:54 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2007.04.11

# 正式名は実用英語技能検定

とあるソースで、こういう本のことを知ったんですけどね...

産業翻訳に英検はいらない

今からでも、そのタイトル変えた方がよくないですか?

産業翻訳の現場で、TOEIC ならまだしも英検の存在意義なんて、今さら問うまでもなくとっくになくなってると思いますよ。少なくとも、最近の求人広告では採用条件に英検というのは、ほとんど見た記憶がありません。

09:38 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.04.10

# もう少し叫ぶ(承前)

問題の箇所を再引用:

配給会社の制作部長は映画フィルムを丸々一本捨てる覚悟で、「原作ファンが求める字幕」を打ち込んでみせたそうだ

「そうだ」という伝聞の助動詞を使えば裏を取らず何を書いてもよいということはないはずなのですが、この伝聞内容は、改善運動の辺縁あたりにいた小生でも知ることのできた事実経過と明らかに異なっています。

さらに本文を引用:

字幕が三行四行にもなって画面を侵食し、しかも全然読み切れなかったのではあるまいか。そんな掟破りの字幕を敢えてフィルムに打ち込んでみせ、その制作部長は原作ファンを説得したそうだ。「ほらね、あなたがたが求めるような字幕にすると、こんなになっちゃうんですよ。これじゃ読めないでしょ」と。(中略)部長の毅然たる決意がなければ、こんな破格の「説得プロジェクト」は実現しなかったはずだ。この一件は、われわれ字幕屋の間で燦然と輝く伝説になっている。

(太字は引用者)
同じ過程を別の報告者から直接聞いて知っている立場からすれば、噴飯ものとしかいいようのないくだりです。それにしても、

「……あるまいか。……説得したそうだ。……実現しなかったはずだ。……伝説になっている」

というのは見事でした。伝説というものの本質を、このパラグラフは如実に物語っているわけです。ここまで推量と伝聞ばかり続けて、あげくが「燦然と輝く伝説」ですからね。

伝説なんて本来そんなもんなわけですが、やや大袈裟に言えば、その成立に何かの意図が介在したとすれば幾分の警戒が必要でしょう。あるいは、もしこんなエピソードが本当に "伝説" となり、それを関係者が無邪気に信じているのだとすれば、それは別の意味で救いようがなく哀れな状況と言えるかもしれません。

さて、字幕改善を求めたのが本当に原作小説ファン(だけ)だったなら、こういう形で製作サイドを持ち上げ、ファンを悪者扱いしたくなる気持ちも判らないではありません。しかし、何度でも繰り返しますが、

字幕改善運動は原作ファンによる非難ではない

のです。

しかるに、この "伝説" を支えているのは、<字幕クレーマー = 原作ファン>という誤った前提と、その上に立った<製作部長 = 英雄>という構図です。そんな業界伝説を成立せしめるために、字幕改善に奔走した関係者がこのような形で貶められるいわれはないということを、少なくともこの本を読んだ人/読もうとしている人には知ってもらいたいと思います。

もっとも、ここで言われている「原作ファン」というのが、小生の知る運動関係者と異なるとすれば話は別なんですけどね。連絡室や英語工房の中の人が意見を提出した、そのとき見たのとはさらに別の「原作準拠バージョン」が存在したというのなら……。しかし、字幕をフィルムに焼き込む手間とコストを考えれば、この段階で2つもバージョンがあったというのは考えにくいでしょう。

03:06 午前 映画・テレビ 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# 翻訳屋はネットの片隅で字幕屋本が変だと叫ぶ

しばらく休眠していた「字幕改善連絡室」が再稼働しています。原因は、"字幕屋さん" が書いたこの1冊。

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ

全体的には良質な本です。しかしながら、映画『ロード・オブ・ザ・リング』の字幕をめぐる記述には、

大きな誤謬もしくは誤解

があるので、ちょっと一言書いておきます。

本質的にはどんな情報伝達にも完璧は望めず、誤解や誤記は避けがたいものなのですが、少なくとも自分の専門分野については、
・不正確な情報把握
・誤った認識
・伝聞のみによる記述
は避けるべきでありましょう。

しかし、この本の筆者は映画『ロード・オブ・ザ・リング』の字幕をめぐる記述でその原則を忘れてしまった模様です(この本の他の箇所に類似の誤謬があるのかどうか、それは判断不可能。この筆者の轍を踏まないよう、小生も自分が責任をもって書ける範囲だけを指摘しています)。

大ヒット映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの字幕が原作小説ファンによって激しい非難の嵐にさらされたとき、その配給会社の制作部長は映画フィルムを丸々一本捨てる覚悟で、「原作ファンが求める字幕」を打ち込んでみせたそうだ。

これが、字幕改善運動に関する不正確な情報把握を露呈している最大の問題箇所。
当時は言うに及ばず、今でさえネットをちょっと調べれば、あの運動が

「原作小説ファンによる非難」などではなかった

ことはすぐに判ります。原作本の存在しない作品についても同趣旨の字幕改善運動が展開され、『キングダム・オブ・ヘブン』のときには約4,000名もの署名が集まったという事実も、ネットにその証跡が多々残されています。

すべての "字幕屋さん" が字幕改善の経緯や趣旨を理解していて当然などとゴーマンかますつもりはありませんけどね。少なくともあの流れが洋画配給業界にとって小さくはない出来事だった---このエピソードが後段で「伝説」と表現されていることこそ、その何よりの証左---、その「事の大きさ」は認識していてしかるべきでしょう。そして、それを認識していれば、今回の執筆に当たってその真相を改めて正しく把握しようという努力を惜しむべきではなかったはずです。

それとも、映画業界には今でも、あの一連の経緯を「原作小説ファンによる非難」だったと定義付けておかねばならない何かがあるのでしょうか。業界のことをここまで書いた太田氏でさえタブーとしなければならない何かが。

上記引用箇所には、もう一つ「伝聞のみによる記述」というエラーがあるわけですが、長くなったので稿を改めます。

03:02 午前 映画・テレビ 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.04.04

# キオスクとキヨスク

リンク: 「キオスク」と呼んで!ただし東日本だけ : 経済ニュース : 経済・マネー : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

編集さんとかか翻訳屋ならともかく、ふつうの人は「ヨ」か「オ」かなんて気にしたことないと思うな。それにしても、「キヨスク」が「清スク」だとは知らなかった。

JR東日本の駅などの売店を運営する「東日本キヨスク」が、7月から社名を「JR東日本リテールネット」に変更することになった。(中略)
同社によると、「あずま屋」を意味するトルコ語の言葉などを由来とする「KIOSK」が駅売店に名付けられたのは1973年8月。当時は財団法人「鉄道弘済会」の運営だったが、87年の国鉄民営化を機に新会社が発足。「気安く」「清く」というイメージから、社名を「東日本キヨスク」と付けた。同社では、この造語を売店の呼び方として使用するようになり、社内の書類にも「キヨスク」と表記していた。
(太字は引用者)

そんなダブルミーニングがあるんなら「キヨ~」のままでいいじゃん。

ただ、全国的にはJR東海の子会社「東海キヨスク」、JR北海道の「北海道キヨスク」、JR四国の「四国キヨスク」には「キヨスク」の名前が残る。

いっそのこと、「清い」を全面的に打ち出した名前にすればいいのに。

・「東海キヨスケ」 = 清介
・「北海道キヨシカ」 = 清か?
・「四国キヨシコ」 = 清…意味不明

なんてのはどう。

09:34 午後 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (4) | トラックバック (0)

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# ストライクとストライキ

よく知られているように、英単語 strike は、日本語に入ってくるときに「ストライク」と「ストライキ」に分化してしまいました。その「ストライキ」の方のお話。

首都圏では、しばらく前まで春闘といえば私鉄のストというのが定番でした。だから小生などは、「スト」と聞けばすぐ「電車が止まる」と連想するわけですが、最近は事情が変わってきて、鉄道各社のストというのはすっかり聞かなくなりました。

案の定、息子と「ストライキ」の話をしたところ、彼がまっさきに想起したのはプロ野球のスト(2004 年だったっけ?)なんだそうだ。

ところで、「ストライク/ストライキ」で今でも思い出す光景があります。

たぶん、ところは池袋西武のたばこセンターでした。
パナマ帽、もしくはつば広のソフトウェア帽みたいな帽子をかぶり、やや派手目な背広を着た中年のおっさんが、なんだかものすごい勢いでカウンターに駆け寄ってきて、これもなぜだか思いっ切り威勢よく注文したのでした。

ラッキー・ストライキ!

(注: 正しい銘柄は「ラッキーストライク」です)

風体といい、そのC調な(懐かしい表現でしょ)発声といい、そのときは一瞬ご本人ではないかと目を疑ったほど、故・植木等に似ているおじさんでした。

きっと、この無責任風おじさんの中では、「ストライク」と「ストライキ」は正しく同一の単語だったんだな、と今になって思います。

08:30 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.03.29

# ニュースに気をつけてみる

こちら方面のニュースは基本的にネタにしない方針なのですが、某国農業省次官が口にしたというこの一言。

現在100万トン程度の食糧が不足している。海外から食糧支援を受ける意志がある
(ボールドは小生、以下同)

これはなかなかインパクトがありました。

日本語だとずいぶんトンデモな発言に聞こえますが、翻訳上の問題はないんでしょうか。

まずは、聯合ニュース(Yonhap News)、日本語版。
リンク: 「100万トンが不足」北朝鮮当局が食糧難認める

【ソウル28日聯合】北朝鮮当局が食糧難の事実を初めて認めた。米政府系ラジオ局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が世界食糧計画(WFP)関係者の言葉として報じたもの。
 放送によると、22日から北朝鮮を訪問していたWFP関係者との会談の席で北朝鮮農業省次官が、「現在100万トン程度の食糧が不足している。海外から食糧支援を受ける意志がある」と伝えたという。WFPバンコク事務所は、北朝鮮当局が食料不足を公式に認めたのはこれが初めてだとし、北朝鮮がWFPから相当量の食糧支援を望んでいると述べたことを明らかにした。

続いて、同じく聯合ニュース、中国語版から該当発言のみ(文字化けしたらゴメン)。

“目前大约缺少100万吨粮食。我们希望得到海外的粮食援助。”

Excite 翻訳によれば、「現在大体100万トンの食糧に不足します。私達は海外の食糧の援助を得ることを望みます」という意味。日本語記事とはちょっとニュアンスが違うようです。この中国語の語感は判らないのですが。

次も聯合ニュース、今度は英語版。

In a meeting with visiting officials from the U.N. World Food Programme (WFP), an unidentified North Korean vice agriculture minister expressed his country's willingness to receive food aid from the outside world, the Voice of America (VOA) said.

「海外からの食料を進んで受け入れる」という感じですね。日本語記事の書き方から受ける印象ほどは悪くないように思うのですが、どうでしょう。
日本語で「~する意志がある」と書いてしまうと、上からものを言っているような尊大なイメージがあるのかもしれませんが、"willing to" はもう少しニュートラルです。少なくとも上下関係はありません。

聯合ニュースは、肝心の韓国語版も調べたかったのですが、いかんせん、小生はハングルがまったく読めないので、当該記事がどれかすら判らないのでした。しかたがないので、他の英語ソースに当たってみました。

最初は United Press International: North Korea steps up food-aid plea

"Pyongyang asked for more aid from overseas, a rare plea from Kim Jong-Il's regime for more international assistance."

「~海外からの支援を求めている。これは金正日政権としては珍しい嘆願である」--- "plea" というのは、かなり「下手に出ている」という感じになって、日本語とはずいぶん違ってきます。

Wallstreet Journal: U.N. Agency Warns Of Food Shortages In North Korea - Preview

said officials there told him they faced a food gap of one million tons and asked the agency to expand its assistance -- a rare admission and plea for help from the secretive regime.

BBC: BBC NEWS | Asia-Pacific | North Korea admits food shortages

Pyongyang has asked the World Food Programme to expand its assistance to meet the gap

Wallstreet と BBC はどちらも "ask ... to expand" と書いており、「要求、要請」はしていますが、それほど居丈高という感じではありません。

北朝のその次官が口にした原語のニュアンスを知りたいところですが、「○○が~と語った」という類のニュースは、言葉遣いだけで印象がまるで違ってくるわけですね。注意しましょう。

それとも、ひょっとして聯合ニュースの日本語訳が意図的だったりする?

03:26 午前 経済・政治・国際 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.03.28

# M/A 後の遺物

大規模なケースも含めて M/A が日常茶飯事となっている IT 業界ですが、インストール後のファイル群 --- 余談ながら、こういうのを英語では "installation" と表現できます --- を見ていると、M/A 以前の各社の痕跡を看て取ることができて面白いことがあります。

たとえば、SDL TRADOS。

メインのプログラム群(Workbench や TagEditor)のインストール先(デフォルト)は、
    C:\Program Files\SDL International
となっており、このパスには SDL と TRADOS が合併したことが反映されています。

ところが、MultiTerm(辞書検索アプリ)のインストール先は、
    C:\Program Files\TRADOS\MultiTerm
となっていて、TRADOS の名称がしっかりパスに残っています。

この辺りに TRADOS 社と SDL 社の微妙な力関係、あるいは旧 Trados の技術関係者の意地のようななものが見え隠れしていて面白いわけです。「メインのプログラム群はもう完全に SDL の財産になっちゃったけど、MultiTerm はまだワシらのもんだかんね」みたいな。

ぜんぜん事実とは違うかもしれませんが、お仕事中にちょっと思いついたので。

03:20 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.03.25

# 新しい Trados にちょっと感動

仕事がら、Trados とのつき合いもずいぶん長くなりました。

Trados というのは、いわゆる翻訳支援ソフトウェアのひとつですが、だいぶ前のエントリ(2005/6/21)で書いたように別メーカーに吸収され、今は SDL Trados という名前が正式です。

その Trados、バージョン 2.0 から、6.5 LSP(いわゆるコーポレート版)まで色々なバージョンを使ってきましたが、最近、ゆえあって SDL Trados 2006 という新しいバージョンも使い始めました。このバージョンでは、長らく放置されていた大きな欠点のいくつかが改善されていて、ちょっと驚いています。

(以下は、実際に Trados を使っていない人には意味不明です、あしからず)

どこを見ても詳しい更新履歴が見つからないので厳密にはどのバージョンから改善されたのか不明なのですが、私の記憶する限りでは、かなり新しいはずです。

その1: 「取得」コマンドのショートカット
Word 上、もしくは TagEditor 上で「取得」コマンドの使用頻度は高いはずですが、これまでショートカットが標準で用意されていませんでした。Word なら任意のショートカットを追加できますが、TagEditor ではそれもできないので、これまでけっこう不自由でした。そのショートカットがようやく追加されています。

その2: Word 上のコピーと貼り付け
信じられないことですが、Word と Trados Workbench を連動しているとき、Word 上ではコピペすら自由にできませんでした。なんでそんなことになっているかと言うと、Word 上での Trados 機能は複数ステップから成るマクロとして実装されており、マクロの過程でクリップボードが使われています(見えないところでコピーと貼り付けが行われている)。そのため、ユーザが文字列をコピーしても、その後で分節を開いたり閉じたりするだけでクリップボードが書き換えられてしまうのでした。
今のバージョンでは、それが改善されて普通にコピペもできるようになりました。

いずれも当たり前すぎる機能であり、対応が遅すぎるくらいですが、"Better late than never." というところで、今回少し見直しました。

02:11 午前 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.03.19

# Wikipedia VS OED

リンク: ITmedia News:「wiki」がOxford英語大辞典に収録

早いですね、OED。

ところで、1 か月くらい前に電子辞書を物色していて、最終的にはカシオの XD-GW9600 に絞ってはみたのですが、電子辞書というデバイス自体、小生はどーしてもなじめないようでした。携帯メールほどではありませんが、あの小さいキーで綴りを入力するのが...慣れれば使えるんかな?

02:45 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (1)

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# 検察官は電気一角獣の夢を見たりして

(ベタなタイトルでごめんよぉぉーっ)
Prosecutor says 'unicorn defense' was a mixup - MSN-Mainichi Daily News

俗語のからんだ珍事件。それにしても「一角獣」というのは唐突です。

今月の初めに米モンタナ州でトラックが電柱に衝突する事故が発生。
その事件を扱った同州検察官の一人が、「トラックを運転していたのは一角獣だったと運転手が証言した」と報告、しかしその翌日に「それは間違い、運転していたのは氏名不詳の女性だった」と訂正したのだそうな。

で、なんでそんな間違いが起きたかというと、この検察官の同僚がメールの中で "unicorn defense" という言葉を使ったらしく、それを問題の検察官が、そのまんま運転手の証言だと勘違いしたのだそうです。

この "unicorn defense"、さすがにどの辞書にも載っていませんが、

被告がその犯行の理由を架空の人物などに転嫁したときに検察官が使う俗語(a slang term used by prosecutors when a defendant uses a far fetched explanation or person to explain their crime.)

こちらのサイトに、なかなか味わいのあるイラスト付きで説明がありました。
(おまけ: このページに出てくる Wisdumb というのも面白いな)

********************
蛇足ながら、タイトルについて説明をば。

この話を見てまっさきに思い出したのが、『ブレードランナー』に後から追加された、例のユニコーンの場面だったという、それだけです。

12:08 午前 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.02.25

# 無題

2 つ前のエントリで言及した「スパムではないが、いかがわしい広告」のことを書きます。ちょっとした事情もあって、書こうかどうか悩んだのですが...

ちょっとした事情というのは、そのメールの送信者が小生にとって未知の人ではないということ。それどころか、以前からその方の運営するサイトも見ていたし、昨年はその方が主催する翻訳関係のイベントに参加したことさえあったわけです。

ボットに利用された等の可能性も疑ってみたのですが、メールヘッダを見ても、リンク先 URL のドメインからしても、どうやら騙りではないらしいので、そうなると「なぜこの人がこんなメールを送ってくるのか?」ということが非常に疑問。

そのメールの内容はというと、「翻訳者育成講座の案内」なんですよ。曰く、

 - 翻訳者デビューの初年度で 1,000 万円を稼いだ
 - ほとんどゼロからのスタートだったが口コミで仕事が増えた
 - 特許翻訳の分野ではそれが可能
 - しかも特許翻訳では常に人材不足

この辺りまでは、翻訳業界の常識から言えばそれほど突飛な話ではありません。メールはさらに続きます。

 - 少人数限定で翻訳者を育成したい
 - 1日 8,000 ワードの翻訳スピードを達成できるようになる

確かに、「1日 8,000 ワード」というのは驚異的ですが不可能な数字ではないのです、内容と文章によっては。ところが、この後くらいから何やら雲行きが怪しくなってきます。

 - 翻訳や英語や技術の勉強をしなくても稼げる翻訳者になれる
 - 本講座でも翻訳そのものはあまり教えない
 - それより大事なのは人間力を高めること、眠っている潜在意識のパワーを開放すること

ん? ...「潜在意識」..ですか...?
そしてまもなく、決定的な文言が出現するのです。

 - 全体の 97% は潜在意識であり、そのパワーを上手に利用できれば人生が変わる
 - そのために、レイキ(霊気)によるヒーリングを取り入れたワークショップを行う

なんと、「レイキ」なんですよ! しかもカタカナ書き!!
レイキを高めると 1 日 8,000ワードの翻訳が出来ちゃう?!

ここまでくればもう多くを語る必要はないと思いますが、メールはこの後もしばらく続き、その中で受講料がほぼ 100 万円に近いことが判明します。当然ながら、「その金額がいかに高くないか」という説明もあり、また「効果がなければ返金します」という但し書きまであるわけですが、そこが逆にいかがわしさ感を演出しちゃっています。

最後にひとこと・・・ あなたの想像を超える内容に戸惑っているかもしれませんね。

はい、思いっきり戸惑っています。

10:20 午後 日記・コラム・つぶやき 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# これはうまい商売

どことはあえて申しませんが、「翻訳在宅インターン」というシステムを運用している翻訳会社があります。なかなかうまいシステムを考えたもんだと思います。

オンサイトの翻訳者やチェッカーにやらせていてはペイしないような、単純なデータ入力やデータベース作成の作業を在宅翻訳者見習いさんに頼むわけですね。実際、見習いさんの方が条件に納得できるのであれば、双方にとっていいシステムかもしれません。最後まで謳い文句どおりに進むのかどうかは判りませんが、少なくともこれは、いかがわしい在宅ワーク勧誘とは違います。

実は最近、とあるところで明らかにこれよりもいかがわしそうな、翻訳者志望の人を対象にした広告を見かけたんですね。しかもその出どころははっきりしていて(つまりスパムではない)、かなり首をかしげているところです。

12:33 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.02.23

# あぶらげ & ひたたれ

「あぶらげ」、はもちろん「あぶらあげ = 油揚げ」のことですが、考えてみたら、この言葉ちょっと不思議です。

「揚げる」というのは、そもそも「熱した油で調理すること」を言うわけですから、わざわざ「油~」なんて付ける必要はありません。きっと、同じ疑問を思った人が、「あげ」と短くしたんでしょうね(違うか)。

タイトルのもう一方は、Bshi で再放送している大河ドラマ『新選組!』の第 23 回、「政変、八月十八日」を見ていて思ったことです。

この回、会津藩の松平容保公が、ときの帝(孝明天皇)に拝謁するという回想シーンがあって、そこで帝が「直垂」という語を口にします。ところが、そのとき音声でははっきりと

したたれ

と聞こえるんですね。かりにも当時の天皇が、江戸っ子みたいに「ひ」と「し」を言い違えるはずはないんですが、これは孝明天皇を演じた 9 代目中村福助が東京出身だったからでしょうか。

ところが、さっきググってみたら、直垂に「したたれ」と読みを付けているサイトもいくつかあるようで、またまたびっくりしました。

02:22 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2007.02.20

# ←この記号は何という? その2

もうずいぶん前に、「# ←この記号は何という?」というエントリを書きました。

英語では pound sign と言うのですが、「日本語では何と言うのが普通か」ということが職場で話題になって、「電話の音声案内なんかだと、『〜終わりましたら、シャープを押してください』というし、やっぱ『シャープ』が一般的では?」という意見が出ました。

このときも実は「シャープ」と pound sign を混同していたんだな、ということをマスナガさんの記事で知りました。

頭ん中: # ←はシャープじゃない

参照先の Wikipedia の記事、とても勉強になります。

■まず、小生がエントリの頭に付けている記号は「シャープ」ではなく「番号記号、井桁」です。以前のエントリで書いたことを訂正します。

・シャープ --- ♯(Unicode は 0x266F)
・番号記号、井桁 --- #(Unicode は 0x0023)
※日本語環境では、番号記号の全角#(Unicode は 0xFF03)もあってちょっと煩雑。

シャープの方は横線が斜めになってますが、これは五線譜の上に書くとき見やすいようにしたためとか。

■■次に、この番号記号ですが、これの呼び名が面倒くさいんですね。その辺は Wikipedia に詳しいのですが、今では number sign と呼ぶのが最も一般的。pound sign もよく使われ(英語の音声ガイドではよく聞きます)、その他に hash、crosshatch、hex など実に様々。 comment sign と呼ぶ向きもあるそうですが、これはちょっと特殊すぎかも。

08:12 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.02.18

# FOLDOC 最新状況

FOLDOC をご存知でしょうか。

Foldoc_1

Free OnLine Dictionary of Computer というフルネームが示すとおり、ごく普通のコンピュータ用語から Jargon Files と重複する内容まで色々と収録されています。常に重宝するという辞書ではありませんが、ときどき役に立つので、EPWing 化して手元に置いています。

今回も、Account Rep(resentative) という用語の定義が役に立ちました。

FOLDOC は、1993 年という早い時期から始まっていながら今でもきっちり更新されている息の長い辞書で、オンライン版ですがテキスト・データも公開されているという親切設計です。

第○版という表記はありまんが、"Recent Changes" を見ると更新記録が載っていて、現在は 2007/2/13 のエントリが最新。テキスト・ファイルも、オンラインと同じステータスのデータが用意されています。これは本当にただのテキストで、そのままではテキストとして見ることしかできませんが、
1. F2EPW (FOLDOC to EPWING) というツールでコンバート
2. EBStudio で変換
というステップで EPWing 化することができます。

というわけで、今回見つけた Account Rep(resentative) については私家版英語辞典をご覧ください。

02:04 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.02.16

# はげしく同意

もちろんまったく面識はありませんが、しばらく前から定期巡回している翻訳者さんのブログがあって、

SOHO翻訳者の仕事部屋 - 楽天ブログ(Blog)

この方の翻訳に対する真摯な姿勢と良識には多大なる敬意を表しているのですが、特に最近は、翻訳について大きく同意したいエントリが続きました。

知識よりもまず原文に食いつこう(Blog)
粗訳(Blog)

で、翻訳する際に知識があるとこに頼っている方は、 原文の構造をまず完全に把握するまで粘るという力がつきにくいように思います。 ---「知識よりもまず原文に食いつこう」より

翻訳をチェックしているとしばしば遭遇します。こういうタイプの翻訳は、英文の難易度が一定レベルを超えたとたんにアラが目立つようになります。構文が複雑になるとまったく読解できなくなったり、原文につられて急に直訳調が目立ったり。

だって、原文を読んで意味が理解できた時点で、 頭のなかに「絵」が浮かんでくるから、 その「絵」を日本語で表現すればいいだけじゃん。 ---「粗訳」より

これって、なにやら "翻訳の奥義" めいて聞こえるかもしれませんが、本当は翻訳の "最低限の基礎" だと小生も思います(だから、やむをえず不得手な分野を引き受けてしまうと、この「絵」が浮かばずに非常にイヤな思いをすることになります)。

11:28 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.02.14

# You can leverage anything.

leverage という単語、以前から落ち着きどころが悪くて、ことあるごとに調べていたのですが、こんな嬉しいサイトを見つけました。

dack.com > web > web economy bullshit generator

"make bullshit" を押してみてください。IT 系あるいは Web 系の翻訳者なら確かに見たことありそうなフレーズが次々と出現します。

Bullshitgenerator_1

この generator、その直後にリストアップされている動詞、形容詞、名詞をランダムに組み合わせているだけなのですが、英語圏人でもこんなものを作るくらい、今の Web には buzzword や bullshit があふれているというわけでした。

リストの後には、「critics からのコメント」が紹介されていますが、これは一般ユーザのコメントですかね。

05:40 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.02.12

# 最近の英辞郎くん

1/27 に英辞郎くんのことを書きました。小生の手元にあるデータは Ver.64 とずいぶん古くなってきたので、前回に続いて最近の動向をちょっと確認してみました。

2/11 時点で最新公開バージョンは Ver.101。ダウンロード版、CD-ROM 版とも 1,980 円です(前者はパスワード料金、後者はメディア代も送料も込み)。

英辞郎くん、もともとはデータが無料で Nifty にアップされていましたが、何年か前からダウンロード版も有料になり、それと同時に書籍販売も始まりました(書籍版の方がバージョンはどうしても若干古くなる)。

小生も便利に利用していますし、英辞郎の功績はもちろん評価しているのですが、どうも最近は不思議というか、納得しかねることが多くなっています。その最たるものがこれ。

英辞郎 EPWING版

これがなぜか税込み 5,000 円という価格設定です。PDic 形式または TEXT 形式のデータさえあれば、後は EBStudio などのツールで EPWing データに変換できます。付属のビューアにも特に差はないのに、いったいなんでオリジナルの 1,980 円が、一気に 5,000 円? 需要が少ないからでしょうか。

ところで、英辞郎の解説ページにはこんなことが書かれています。

ただし、未完成である点にご注意ください。(現在の開発体制では完成予定は2100年です)

完成予定 2100 年って、楽しいです。ケムール人も英辞郎を使うかも(奴は 2020 年からやってきた)。

02:29 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.02.11

# 音節の省略

404 Blog Not Found さんの最近のエントリ、

404 Blog Not Found:学校では教えてくれないグッドラッパー英語#1 - I know.

に付いていたコメントにまじレスしてみました。コメントへのレスも考えましたが、TB にしました。

> Y'knowはどう発音するんですか(あえてひらがなで書いたとすると)?

こたえ: ひらがなでは書きようがない

アポストロフィで語句の一部を省略するのは、基本的に「音節数を減らす」ことが目的です。たとえば、
never → ne'er
この場合、2 音節語が 1 音節になります。英語の歌詞でよく見かけます。
rock and roll → rock'n'roll:
この場合、3 音節が 2 音節になります(あいまい母音が残ることもある)。したがって、

You Know. [ju: nou] = 2 音節

であれば、「ゆーのう」というひらがな表記も不可ではありませんが、

Y'know.[ynou] = 1 音節

となると、「のう」より前の音節はなくなってしまったことになり、日本語では表記が難しくなります。y の音が残るので「ゆのう」としたいところですが、もちろん日本語の「ゆ」は yu つまり母音を含む 1 音節ですから正確ではありません。

11:54 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.02.07

# フリーランスとして成功するかもしれない方法

Geekなページさんのエントリ、「フリーランスとして成功する方法」がちょっと興味深かったので借用。フリーの翻訳者にももちろん当てはまります。

列挙されているのは次の 7 項目。それぞれにコメントを付けてみました。

1. 仕事を愛す
===> ただし、ほどほどに。「2 番目に好きなことを職業にしろ」というのは、けだし名言。だから、仕事としてやるなら出版翻訳より産業翻訳の方がよほどよいわけです。

2. 学び続ける
===> ただし、深入りしない。たとえば IT 系翻訳なら、プログラムコードを見てその意味がおおよそ判ればいいので、プログラマになる必要はないわけです。Perl は使えると便利だけど。

3. 特化する
===> 周辺分野でも対応するのが望ましい。現実には、かなり分野違いの依頼でも、それなりにかっこをつけなければならない。

4. 代表的な制作実績を作る
===> 自分がそう思っているだけでは危険。翻訳者を募集する側にいた頃、応募者の過去の翻訳サンプルを見て印象を悪くした経験が小生にもあります。

5. 人脈を作りまくる
===> あくまでもビジネスライクに。あまり "濃い" 関係になると、依頼を断りにくくなるので。

6. 時間を管理する

家にいるからという理由で、皿洗いや、片付けなどを延々とさせられないようにしましょう。

===> ときどきは家事も手伝わないと、嫁さんの機嫌が悪くならないですか? :P

7. 良い評判を構築する
===> プラスがあるより、マイナスが少ない方が、翻訳会社での受けはいいように思います。

09:15 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (1)

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2007.02.06

# Oxford の話(承前)

前エントリから続いて Oxford 辞書の話。

PC 用 CD-ROM が売られていないと書いたのは、Oxford Dictionary of English、つまり "ODE" ですが、Oxford で有名な辞書といえば、もちろん "OED" の方です。今ではその OED も、CD-ROM なら約 60,000 円。書籍版を全巻揃える費用とスペースを考えれば、かなり便利になったと思います。

OED については、Oxford University Press のサイトにもカタログが載っているのですが、

ハードディスクへフルインストールした場合、90日ごとに認証が要求されます。その際は、データディスクをCDドライブに挿入して下さい。

この注意書きが気に入らないですね。不正コピー防止なんでしょうが、やり方がセコイと言いたくなります。

ついでにコメントさせていただくと、同じページの「ご注意」欄で使われている

ティピカルインストール

という訳語も、訳した方の力量が疑われます。typical install(ation) は、「簡易インストール」等と訳すのが一般的です。それとも、OED のインストーラでは「ティピカルインストール」と訳されているのでしょうか? それならそれで、ローカライズの段階で問題があったということになります。

03:28 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# OED か ODE か?

今回もまじめなエントリ :) --- 英語辞書のお話です。

某翻訳コミュニティの雑誌を見ていて、いわゆる電子辞書が 1 つあってもいいかな、と思ったのがきっかけで、久しぶりに Oxford 辞書のラインアップを調べてみました。

実務系翻訳者の例にもれず、小生の作業環境でも紙ベースの辞書はすっかり存在意義を失い、辞書は PC 上のデータか、オンラインでまかなうようになっています。PC 上では、可能な限り EPWing データを揃え、1 つの検索ソフトで済むようにしていますが、Oxford 系の辞書だけは、オンラインのコンテンツが充実しているせいもあって、これまで未整備でした。

電子辞書の中には、その Oxford 系の辞書を収録しているもの --- 「英語の専門家用」と称しているラインアップが多い --- があるのですが、ほとんどで採用されているのが、


Oxford Dictionary of English

というやつなのですね。

となると、小生としてはこいつの PC 用 CD-ROM が欲しいということになるのですが、どーもそういう製品は用意されていないようです。つまり、書籍版と電子辞書版しかなくて、中間(?)の PC 用が存在していない。現在 CD-ROM コンテンツとして入手できるのは、以下の各辞書くらいです(専門/特殊辞書は除く)。

Oxford English Dictionary (OED)
Concise Oxford English Dictionary (COD)
Shorter Oxford English Dictionary(SOD)

書籍版でない Oxford Dictionary of English を使うには、電子辞書を買うしかないのでしょうかねー。
(この話、つづく)

02:56 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.02.02

# Deja vu

唐突ですが、たまには本業に関係のあることを書きます。ふだん以上に「判らない人には判らない」話で恐縮です。

Idiom WorldServer という翻訳支援ツールがあります(厳密には、包括的なドキュメント管理プラットフォームであって、"翻訳支援ツール" という言い方は正しくないんですが)。Idiom 社のサイトはこちら。こんなニュース記事もあります。

リンク: サン・フレア、Idiom WorldServerの国内独占販売契約を締結 - TECHSCORE

さて、このプラットフォームにおけるデスクトップクライアント、つまり翻訳する人間が実際に使うアプリケーションは "WorldServer Desktop Workbench" という名前なのですが、これ、前進は "Deja vu" という名前のソフトウェアだったんでした。

翻訳支援ソフトというのは、過去の翻訳資産を「原文-訳文」ペアのデータとして蓄積しておき、現在の翻訳対象をそのデータと比較するというのが基本動作なわけですので、このソフトの命名はつまり、「この文は前に見たことがあるぞよ」という「既視感」をテーマにしていると察せられるわけです。

でも、現実のデジャブがほとんどの場合そうであるように、もし翻訳しているときのこの感じがただの錯覚だとしたら何の役にも立たないわけですね。そーゆー意味で、あんまり良いネーミングではなかったのだなと思います。

以上、CSN&Yの名盤 "Deja vu" をかけようとしてふと思った翻訳話でした。

10:25 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (0)

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2007.01.27

# 英辞郎様、お召しかえー

リンク: J-CAST ニュース : 通信教育のアルクがVista対応英語辞典を発売へ

お世話になっていないこともないアルクさんの悪口を言うつもりではなく、「Vista対応英語辞典」という表現が、ニュース報道としての正確さを欠いているでしょう、という話。

「Vista対応英語辞典を発売」などと言うから何か新しい辞書が出るのかなと思いきや、何のことはない

「英辞郎」の新バージョン

というだけなんでした(データは Ver.98)。しかも、アルクさんの製品紹介ページを見ると、ちゃんと

本商品は製品版前の最終ベータ版Release Candidate 2(RC2)バージョンで確認されたものであり、製品版での動作を保証するものではありません。

と注意書きがあって、アルク自身はこの書籍版第三版で Vista 対応を売りにしているわけではありません。

そもそも、英辞郎が Vista で動くかどうかはビューア(検索用ソフト)の対応しだいなわけで、単なるデータである英辞郎が「Vista に対応」というのは --- Vista 対応するとデータ形式に大幅な変更があるという可能性もありますが ---、明らかに誤解を招く表現です。

英辞郎そのものが「内容に誤りのないことを保証していない」辞書だからといって、それを取り上げるニュースまで不正確でいいということはありません、よね。

04:08 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.01.20

# 不立文字

「不都合」→「不祥事」と、「不」の付く言葉が続きました(このブログのエントリは、下より上の方が新しい)。

この 2 つはなにやら関係がありそうですが、「不二家」との類似はたぶん偶然です :P また、このエントリの見出しにも深い意味はまったくありません。あしからず。

01:18 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# 不祥事

昨日アップした TDL に関するエントリに TB が付いてます。その中にも「不祥事」という言葉が出てくるわけですが、ちょっとこの言葉を辞書でひいてみましょう。

不祥事
関係者にとって不名誉で好ましくない事柄・事件。

これはまあいいのですが、では「不祥」とは何かと言えば ---

不祥
1. 縁起の悪いこと。不吉なこと。2. 災難。不運。

ということなんですね。

不祥事とはすなわち不吉とか災難であり、外から突然ふりかかってくるものである。なんと、自己責任のかけらもない表現なわけです。企業で発覚したエラーはすべからくいかなるものも「不祥事」である --- エラーがあったのは不運だったし、それがバレてしまったのも災難である ---。

もちろん、当事者たちが露骨にそう自覚しているということではない(と思いたい)のでしょうが、この手の慣用表現というのは意外と深層心理を突いているという気もするわけでした。

01:13 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (5) | トラックバック (0)

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# 不都合な真実

「不都合な真実」といえば、今の日本ならさしずめ、次々と明るみに出る某食品会社の話というところですが、本家である映画『不都合な真実』の方が今日(1/20)から公開ですね。

さてこの映画、原題は An Inconvenient Truth なんですね。"inconvenient" とは、なかなか含みの多い単語ですが、その意味では、邦題の「不都合」もいい線いってる --- 最近の映画会社には珍しく --- と思います。

inconvenient の語義は、たとえば LDOCE などでは、

causing problems or difficulty, often in a way that is annoying

という感じで、単に convenient じゃないということになりますが、American Heritage ではこう定義されています。

Not suited to one's comfort, purpose, or needs
(ある者の快適さ、目的、必要にそぐわないこと)

今回の映画の原題はまさにこれなんでしょう。"人類全員の comfort, purpose, or needs" にとって好ましくない真実であり、おそらくは "特定の国、企業、団体、人物等々の comfort, purpose, or needs" にとって望ましくない真実である、ということで。

12:59 午後 映画・テレビ 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (1)

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2007.01.18

# 韓流ファン必見

リンク: @nifty:デイリーポータルZ: 韓国ドラマの字幕が変

某女子のヘンテコ字幕なんか目じゃない、という字幕の登場です。つーか、これはヘンテコ取説と同じノリですね。

11:17 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (2)

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2007.01.14

# イクラではないらしい

唐突ですが、3 文字のカタカナ・ひらがなって、うっかりするとすぐ読み間違えちゃいませんか?

「おこと教室」

とか、

「ウコン色」

とか小生はいつ見ても必ず読み返しています。

こんなニュース見出しも同じです。

イクラの子に愛を分けて バレンタイン「チョコ絵本」募金


わざと書き違えました :P

松本市に事務局を置き、白血病やがんのイラクの子どもたちを支援している「日本イラク医療支援ネットワーク」は2月のバレンタインデーに合わせ、「限りなき義理の愛作戦」と題した募金キャンペーンを行う。イラクの子どもたちが描いた絵に、音楽評論家の湯川れい子さんらが解説や物語を付けたカードを作製。これにチョコレートを添え「チョコ絵本」として販売、薬代に充てる。
(中略)「義理を含めた愛の一部をイラクの子どもたちに分けてほしい」と呼び掛けている。ホワイトデー用のセットも準備中。

いや、この運動がどうこう言ってるのではありませんよ、別に...。ただ、思わず

「義理」を辞書で調べ

たくなっただけです。

1. 物事の正しい筋道。道理。
2. わけ。意味。
3.(儒教で説く)人のふみ行うべき正しい道。
4. 特に江戸時代以後、人が他に対し、交際上のいろいろな関係から、いやでも務めなければならない行為やものごと。体面。面目。情誼。
(広辞苑より)

本来こういう意味を持つ言葉を、「限りなき義理の愛作戦」とか、「義理を含めた愛の一部」とかいう風に使える思考経路が、小生にはちょっと判らないだけです、はい。

06:41 午後 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | | コメント (0)

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2007.01.12

# 日本語テストにもの申す

リンク: ATOK & 一太郎 presents 第二回全国一斉!日本語テスト

前回ずいぶん好評だったようで、第 2 回が始まっています。

小生、残念ながら満点は逃してしまいましたが、そのうちの 1 つは、出題にちょっと難癖をつけてみたく思います。

以下、テストに関するネタバレがありますので、受けてみようと思う方はご注意ください。

こんな問題があります。

第 10 問  「口を荒らげて詰め寄る」などと使う「荒らげる」、標準的な読みは、どっち? (1)あらげる (2)あららげる

これを、小生はつい(1)と答えてしまったのですが、正解は(2)となっています。ところが、いくつか調べてみた国語辞典での扱いは以下のようになっています。

広辞苑(第 5 版):
「あらげる」(荒げる)も「あららげる」(荒らげる)も項立てあり

小学館国語大辞典:
「あらげる」(荒げる)が空見出し、「あららげる」(荒らげる)が本見出し

大辞林(第二版):
「あらげる」の項で、"本来は「あららげる」"と注記

国語大辞典や大辞林での扱いを見れば、歴史的にはなるほど「あららげる」が正しいことが判ります。しかし、広辞苑でも特に差が付けられていないように、このどちらかを「標準的」として選択問題にするのは、いかがなものかと思います。

もっとも、よく見れば「荒げて~」ではなく「荒らげて~」と「ら」入りで表記してあるんで、ここはひっかかってはいけないところだったのかもしれません。

が、実はこの問題が不適切なのは、そんな些細な点ではありません。慣用句としてそもそも、

「口を荒(ら)げる」と言うのか?

ということなんでした。

どの辞書を見ても、「声を~」という用例が普通。ググッてみると「口を~」も 30 件ほど当たりますが、やはり少数派。日本語テストとして出題する文としては明らかに適切さを欠いています。

個人的に ATOK は好きですが、満点を逃した恨みで、ちょっと突っ込んでみました。

10:08 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.01.09

# Curiosity killed the cat.

前エントリの続きです。

先ほどの見出し、元ネタはもちろん「好奇心が猫を殺す」という英語の諺なわけですが、小生、この諺をずっと "Curiosity kills the cat." だと思い込んでいました。俚諺なんだから動詞は現在形でしょう、ということで。

ところが実際は、今回の見出しに書いたとおり、"killed" と過去形なんでした。

類似の表現、"Care killed the cat." の方も同じく過去形です。どちらも、辞書にはもちろん "killed" で載っているし、"Curiosity kills the cat" とググろうとすると、ちゃんと「もしかして: "curiosity killed the cat"」と suggest されます。

出典については英語版 Wiki に詳しく載っています。いろいろなバリエーションが紹介されていますが、"curiosity killed the cat" という形で直接使われたのは、1916 年 3 月の The Washington Post の用例が最初なんだとか。

おもしろかったのはこれ。

"Curiosity" Killed the cat — but Satisfaction brought it back. Let your curiosity get the best of you, find out what you want to know.

ある雑誌に載った獅子座の運勢だそうです。

04:04 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2007.01.07

# こんな賀状はいやだ

知り合いが「こんな英文の年賀状をもらった」と言って、年初から頭を(または、腹を)抱えていました。

May You Your Happiness of this Year!

こいつは、なかなか大物の Engrish です。

さっそくググってみると、なんとこれが 100 件以上もヒット。もちろん全部、日本人のサイトでした。単に年始の挨拶として使っているケースが多いのですが、中には「あいさつ文例」、「年賀状の書き方」と称してこの英文を掲載しているサイトもある始末。たとえばこんなサイトがあって、そこには堂々と、

May You Your Happiness of this Year :今年もあなたに幸福あれ

と書かれています。どこが震源地かは不明ながら、この手の文例サイトから広まったように思えます(ついでながら、"Happiness of this Year" だけでも、もちろん正しい英文の文例はヒットしません)。

生半可な知識で英語を書くなという典型的な見本であるわけですが、こともあろうにハウツーを謳うサイトが堂々とそれを記載するという無見識。その誤った英文をあちこちのサイトが模倣するという無反省。インターネットで情報を拾うときは本当に要注意なのでした。

01:18 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (4) | トラックバック (1)

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2006.12.21

# ローカライズのお話

たまには翻訳のネタを取り上げねば...と思っているところに、こんな記事がありました。

コンピュータ用語とその翻訳のお話

小生が 20 年以上前に翻訳していた Apple II 用ゲームの説明書でも、磁気ディスクを指す用語は専ら diskette でした。もっとも、指小辞の付いたこの単語が指しているのは、当時まだ 5.25 インチディスクだったわけですが。

ところで、MS さんの珍訳といえば、

"read" になることはできません

という傑作を忘れるわけにはいきません。明らかに珍妙な日本語ながら、ローカライズ業界の関係者なら、けっして笑えない訳文です。

このような訳文が成立した経緯は、こちらのサイトに詳しく検証されています。

英語の判る人なら、この訳を見れば原文が "could not be read" なんだろうと推測はできるわけですが、いくらなんでも、そんな単純な英文が「~ になることができない」などと訳されるはずはありません(read には引用符が付いているし)。

簡単に言ってしまえば、英語版のソースには

The memory could not be ""%s"".

という文字列と

read(または written)

という単語が別々に存在しています。そして、前者の %s の部分には "read"(あるいは "written")が動的に(つまりエラー発生時の状況に応じて)代入されます。
つまり、このインタフェースのローカライズを担当した翻訳者が、The memory could not be "read" という確定形を訳したわけではなかったのでした。いわば、システムが生成する半自動翻訳と言っていいかもしれません。

このように、インタフェースのローカライズでは、原語と日本語の構造的な違いを翻訳で吸収しきれないケースが少なくないという、今日はめずらしく本業に即したエントリでした。

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2006.12.16

# 今年の漢字どころではない

今年(2006年)の漢字は「命」なんだそうですが、漢字の話ならこっちの方がだんぜん面白い。マスナガさんちで紹介されていたサイトです。

凄い漢字

1 つずつコメントと併せて読めばもちろんおもしろいのですが、漢字だけ一覧で表示すると、これはもう、ほとんどアートの世界。

やはり、「中国には何でもある」(注)のだ。

----------
(注)
中国のことを考えると、行き着く結論はたいていこうなります。

俗に、中国人は「飛ぶものは飛行機以外なんでも、四つ足のものは机以外なんでも食べる」と言われます。それほどまでに彼らは食文化を追求する民族だというわけですが、小生の周りでは「いやいや、飛行機はともかく、机は食べるかもしれない。中でも黒檀なんぞが最高級品とされているらしい」とも言われています。

この伝で敷衍すれば、中国に関しては「何が存在しても不思議ではない、何が起きても驚かない」ということになるわけなのでした。

07:47 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2006.12.09

# ゲームひじ

リンク: Word Spy - Wii elbow

発売日前も発売日以降も、かなり話題性の高い Wii リモコンですが、ここで取り上げるのに相応しいネタといえばこれでしょう。

Wii elbow n. Elbow pain or numbness caused by excessive use of the Wii gaming console's remote control.

Wii リモコンの使いすぎで肘を痛めること -- つまり「テニスひじ」などの同類ですね。何というか...

01:53 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.09.14

# 「みんな」は明らかな誤訳

リンク: 案外正しいのは「みんなの意見」なのか - この人の頭ん中

ご自身の "頭の中"を日々公開しているマスナガさんのエントリです。ここで指定されているように、

【原題】the wisdom of crowds
【邦題】みんなの意見

は、まちがいなく出版翻訳史上に残る誤訳と言えるでしょう。

日本語の「みんな」は 群衆の叡智が働くための条件 ・多様性 ・独立性 ・分散性 とは正反対の属性を持つ集団を表すことが多い

まさにそのとおりであることは、「みんな」の例文を考えてみればすぐに判るわけです。

「みんなで渡ればこわくない」
「お母さん、みんな持ってるよ~、たま●っち」
「さあ、みなさんご一緒に」

ここに表れているのは、
・画一性
・依存性
・集中性
という、Web 2.0 の一端を担う「群衆の叡知」とはことごとく対極にある性質なのでした。

みんな!、この点を間違えないようにねー。

12:40 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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2006.09.12

# まだ続いてる

リンク: ふのっぴーディスクで起動できた頃 - シリアルイノベーション [ITmedia オルタナティブ・ブログ]

しまった、ここにも「隠れのっぴき」エントリがあったか...
どうも、オルタナティブ・ブロガーのみなさんにはめられたような気がしてきました :)

02:41 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# のっぴきならないブロガーの方々

昼休み、RSS リーダーをチェックしたら、ITmedia オルタナティブ・ブロガーのみなさんが、そろって「のっぴきならない」事態に陥っていらっしゃる様子でした(笑)。

発端はどうやら

のっぴきならないとは...

この発言らしく、ここを読むと「のっぴきならない」の語源が「退き引きならない」であると判ります。

で、その発言を受けて書かれたのがたぶんこれ。

のっぴきならない用事を知りたい

さらに話は広がって、

のっぴきならない
のっぴきならない事態に対処する

と続いています。

さて、このうちの 3 つ目のエントリによれば、「のっぴきならない」とはもともと軍事用語なんだそうですが、そうだとしたら何とも緊迫感に欠ける用語だと思うのですが、どうでしょうか。おそらく、この単語に「な行」と「ぱ行」が入っているせいだと思うのですが、

「閣下、第 29 師団は、目下のっぴきならない状態にあります!」

なんだか、いしいひさいち的なシーンが浮かんじゃいます。

もう一つ。2 つ目のエントリなのですが、

Googleで「のっぴきなる」検索してみると、皆さん同じようなことを考えておられるようで、なんと5,250件もヒットしました。

この方、もしかしたら Google の引用符検索をご存知ないのでは?

「のっぴきなる」というキーワードで検索すると確かに 7000 件以上ヒットしますが、これは---検索結果をよく見てみれば判ります---「のっぴき」+「なる」に分解されています。一方、これを二重引用符で囲んで "のっぴきなる" としてあげれば、ヒット数はわずかに 36 件なんですが。

ところで、「のっぴきならない用事で~」とか「野暮用で~」とか、いろいろ便利な言葉がありますが、こういう慣用句が出たときは、何も聞かないであげるのが日本的な対人関係というものなんでしょうね。

12:51 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (1)

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2006.09.06

# そつなく...

今朝(9/5)の朝日新聞、「折々のうた」より

朝顔や人の顔にはそつがある(小林一茶)

よくあることですが、「そつなく、そつがない」という慣用句は知っていても、さてこの「そつ」とは何ぞや、ということは考えたことがありませんでした。

そつ: てぬかり、手落ち

おお、なるほど!!
さすが一茶。

朝顔 --- 秋の季語ですよ、念のため --- と対して見たとき、人の顔というものの、なんと手落ちだらけであることか。

一点の濁りもない自然物としての「朝顔」。対する人間の顔の不完全さ、不自然さ。初秋の涼やかな点景に、切実な皮肉を配してなお温かみを感じさせる絶妙のユーモアとバランス感覚。広辞苑には引用されていますが、もっと知られていていい秀句ですねー。

01:00 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.09.04

# 「した」は静的、「する」は動的

リンク: ITmedia News:2ちゃんねるもYouTubeもCGM (1/2)

これ自体はもう 2 か月ほど前の記事になりますが、こちらの記事---なぜ起こる? 「炎上」の力学---を読んだついでにちょっと覗いてみました。

気になったのは、記事内容そのものではなく、CGM(Consumer Generated Media)を説明したこの 1 文。

簡単に訳すと「消費者が生成したメディア」とでも言うべきもの

翻訳者でもときどきこれをやる人がいるのですが、

"-ed" の付いた過去分詞を見ると、深く考えずに「~した」と訳してしまう

クセが、日本人にはときとしてあるようですね。過去形と同じ形をしているからなんでしょうか。

でも、「消費者が生成した」と訳してしまうと、(過去のある時点で)「生成されてそれっきり」、つまり生成があくまでも静的(static)なものであるかのように読めてしまいませんか?

「たえず生成される」という動的(dynamic)な意味合いにするなら、細かいようですが「消費者が生成するメディア」と訳すべきですね。

言うまでもなく、「過去分詞」というのは、たまたま過去形と同じ形を流用しているだけであって、それ自体に時制はない、のです。

まあ、この例だと記事の中で軽く読み飛ばされてしまって、それほど違和感はないのかもしれませんが、ほかの例を考えてみればこれはすぐに判ります。

たとえば CAD = Computer Aided Design ですが、これを「コンピュータが支援したデザイン」と訳したら変でしょう(今時もう訳したりしませんけどね)。

11:53 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (1)

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2006.08.24

# 屠り?

ほふりとは、株の売買に伴う受け渡しや名義書換などの手続きを簡素化する仕組みである。 替制度の愛称が「ほふり」。実質株主制度ともいう。(All About Japan より。太字は小生)

「保」プラス「振」で「ほふり」ですか...

日本人はここまで日本語を知らなくなってしまったのでした。TV コマーシャルではじめて見たとき、ギョッとしましたよ、小生は...

03:16 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.08.02

# 私家版英語辞典 - sticky

sticky という単語を追加しました。

ふつうの辞書に載っていない単語をこつこつ書き溜めている、私家版英語辞典の久しぶりの新エントリです。

01:02 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.07.25

# Weblio 新着辞書

すっかり Weblio 応援サイトと化してますが :)
今日追加された中に、こんな辞書が ---

「経穴辞典」

見たことのない言葉ばかり並んでいます。

11:17 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.07.14

# Weblio のこと・続

今日も職場で、ふとしたことから Weblio をひいたのですが、そこで偶々、かなり目立つミススペルを発見しました。

問合せ先メールアドレスが示してあるのでさっそく連絡したところ、なんとわずか 2 時間ほどで返信があり、「該当箇所を修正しました。かつ、辞書のトップページには、『誤字・脱字があればご一報ください』という趣旨の文言を追加しました」とのこと。

素早く、かつ丁重な対応に感心しました。

今後の発展を、ますます応援。

12:16 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.06.26

# Weblio のご紹介

職業柄、辞書や事典、特に新しい語彙が反映されやすい(しかも多くの場合無料)オンラインの辞書/事典には常に注目しているわけですが、最近始まったこちらは、ちょっと違った方向のオモシロさがあります。

Weblio -beta-

独自の辞書/事典を構築しているのではなく、他のサイトを登録しておいて、そこから一気に用語を検索するわけですが、その登録辞書がかなりのベースで増えています。新しく登録された辞書は、トップページにも一部が表示されるので、定期巡回していると、ちょっと想像もしなかったような辞書や用語集があるわけです。

実用的な用途だけでなく、「どんな辞書や用語集がオンラインに存在するのか?」ということをウォッチングできる---小生は、もっぱらそんな楽しみをしています。

6/26 現在もトップに出ている、そんな用語集の 1 つが

「ウミガメ用語集」

です。ウミガメ...

書店の雑誌コーナーでその昔、

「月刊・住職」

という雑誌を見つけたときと似たインパクトがあります。

12:48 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2006.06.21

# モーッ :)

リンク: 国民性ジョーク(その2): 牛が二匹いて... - MM21 [ITmedia オルタナティブ・ブログ]

小生これは初見でした。
実におもしろいので、多少の脚色を交えつつ、翻訳してみました。
(検索したら、いくつか訳は見つかりましたが、今回の 17 編全部はまだ出ていない模様です)

民主党員
自分が牛を 2 頭飼っていて、お隣が 1 頭も飼っていないと、
罪悪感を感じてしまう。
バーバラ・ストライザンドは歌を歌ってくれるけど。

共和党員
自分が牛を 2 頭飼っていて、お隣が 1 頭も飼っていないとしても、こう言う。
「だからどうした?」

社会主義者
牛を 2 頭飼っていると、
政府が 1 頭を召し上げて隣人に与える。
さっそく協同組合を結成し、隣人に牛の飼い方を教える。

共産主義者
牛を 2 頭飼っていたが、
政府がどちらも取り上げて、くれるのはミルクばかり。
おまけにそのミルクは、高い上に酸っぱい。

米国流資本主義者
牝牛を 2 頭飼っているなら、
1 頭を売って、牡牛を 1 頭買う。そうすればどんどん数は増える。

米国型官僚
牝牛を 2 頭飼っていたところ、
政府出資の新たな農事プログラムのもと、次のように命令される。
1 頭は射殺して、残る 1 頭から搾乳すること、と。
そしてミルクはどぶに捨てられる。

米国企業
牛が 2 頭いるなら、
1 頭は売却したうえ借用し、残る 1 頭は株式公開する。
この 2 頭で 4 頭分のミルクを生産させていたら、1 頭があえなく過労死。
アナリストには、1 アールまでダウンサイジングして経費を削減したと発表しておけば、
株価は上がる。

フランス企業
牛が 2 頭では少ない、
3 頭よこせと主張してストに入り、ランチでワインを飲む。
素晴らしき哉、人生。

日本企業
牛は 2 頭しかいないが、
品種改良でサイズを 10 分の 1 にし、しかも牛乳の生産量は 20 倍を確保する。
この牛たちは満員電車にもよく耐え、
学校の成績はもちろんトップクラス。

ドイツ企業
牛が 2 頭。
金毛を生やし、ビールをがんがん飲んで良質な牛乳を出し、
しかも時速 100 マイルで走れるように品種改良する。
年間 13 週間の休暇を要求するのが玉に瑕。

イタリア企業
牝牛が 2 頭いたけれど、はてさてどこへ行ったやら。
ふらふら散歩していたら、現れ出でし美女ひとり。
ふたりでランチと決め込んで、
オー、ビバ、人生!

ロシア企業
牛が 2 頭いる。
ウォッカを少々あおってから数えてみたら、5 頭になっている。
さらにウォッカをいただいてから、
もう一度数えてみたら、今度は 42 頭だ。
そこへマフィアが現れて、何頭だか知らないが全部かっさらっていった。

タリバン企業
アフガニスタン全土の牛を独占している。2 頭だ。
獣の恥部に触ることは禁忌なので、牛乳を搾ることはしない。
牛乳生産の代替策を講じるため合衆国政府から 4,000 万ドルの資金援助を受けるが、
その資金でしっかり武器を購入する。

イラク企業
2 頭いた牝牛は
某所に潜伏。
鳴き声入りの録音テープだけが届く。

ポーランド企業
牝牛が 2 頭いる。
搾乳しようとした社員は、定期的に負傷もしくは殺害されている。

フロリダの企業
黒牛と茶牛がいて、
みんなルックスのいい方に投票しようとする。
ところが、茶牛に投票しようと思ってうっかり黒牛に投票する者、
両方に投票する者、
どちらにも投票しない者が後を絶たない。
なかには投票の仕方を知らない者もいる始末。
結局、州外から人が押し寄せて、どれがいちばん格好いいかを教えてくれる。

カリフォルニア州の企業
何百万頭も牛がいて、
本物のカリフォルニア・チーズを作れるが、
英語を話せるのは 5 頭だけで、不法滞在牛がほとんど。
ところで、アーノルドくんは、巨乳の牛が大好きだ。

------------------------------
結論。
やっぱり英語で読んだ方が、何倍もおもしろいです。

12:06 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.06.14

# 擦り合わせてみたけれど

リンク: 英語で説明しにくい「擦り合わせ」 - シリアルイノベーション [ITmedia オルタナティブ・ブログ]

そもそも「擦り合わせ」がなんで "integral" になったんでしょうね。
検索してみると、確かにこのような用例は見つかるのですが...

integral は、英英で語義を見ると、まっさきに

Essential or necessary for completeness; constituent(AHD) forming a necessary part of something(LDOCE)

と定義されていて、"integral part of ナントカ"という使い方が普通です。

つまり、integral というのは個々の構成要素の属性にあたる形容詞であって、「擦り合わせた」結果としての総体を指したり、その方法を語ったりするのはやや苦しいようです。全体を指す用法はないわけではないのですが、

> 擦り合わせ型のアーキテクチャ

のように、アーキテクチャという「あり方」を修飾する言い方としては、英語圏の人がピンとこないのも無理からぬことという気がします。

しいて同根の単語を使うなら、過去分詞にして "integrated"ですが、これは IT 文脈などでは「統合」という意味ですでに使われていますね。

--------------------
以上、まったくの門外漢が、ただこの英単語について思いついたことを書いてみました。この手の経営用語? は専門外なので、コメントはせず TB にとどめましたが、この世界って、不思議に和語が多いんですね。

12:31 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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2006.06.09

# この記事書いたのは受験生か

リンク: asahi.com:「事故は主に管理や使い方に起因」 シンドラーが声明�-�社会

本当は今回の事件について「シンドラーのリスト」というネタを書く予定だったのですが...、今日のこの記事の日本語の方にまず反応してしまいました。

東京都港区の公共住宅で起きたエレベーター事故で、日本法人がこのエレベーターを製造したシンドラーホールディング(本部・スイス)は8日、「エレベーター産業での事故は主に不適切な管理か利用者の危険な乗り方に起因していることが多い」とする声明を出した。
(太字は小生)

「日本法人がこのエレベーターを製造したシンドラーホールディングは~」

この日本語 --- 主語がつかみにくい --- って、まるで、所有格の関係代名詞 whose を使った英文の直訳でしょう。

I have a friend whose father lost his life in the World Trade Center.
「私には、お父さんが WTC で亡くなった友人がいる」

...Schindler Holding AG group whose Japanese arm manufactured the elevator... こんな感じのニュースを訳したからこうなった、みたいな。

と思っていたら、その Asahi の英文サイトには、ちゃんとこう書いてあったし。

Schindler Holding AG group, of which Schindler Elevator KK is the Japanese arm, entered the Chinese market in 1980 and set up its main office in Shanghai.

誰かの blog にも書いてあったけど、この時期って、どの新聞社も新入社員が記事書いたりしてるんでしょうかね(朝日さんでおかしな日本語を見かけるのは、この時期に限ってないけど、もちろん朝日に限ったことでもない)。

12:46 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.06.01

# タテとヨコ

リンク: CNET Japan Blog - 中島聡・ネット時代のデジタルライフスタイル:「縦の進化」と「横の進化」

「タテとヨコ」のメタファーを使うと、けっこう色々な世の中の事象を語れるものです。「縦社会」と「横社会」とか、身体が「縦に伸びる」と「横に伸びる」^^ とか。「通時性」と「共時性」というのも、概念としてはかけ離れていますが、イメージとしては共通しています。

でも、中島氏の 1 つ前のエントリにもあるように、ソフトウェアの「肥大化」という言葉もあることを考えると、この場合「縦」と「横」という対比がしっくり来ない気もします。もちろん、深い意味は全然なくて単に言葉遊びのレベルですけどね。

ソフトウェアの肥大化は、中島氏の言う「縦の進化」に属するわけですが、「肥大」というと、少なくとも小生などは横方向にイメージしてしまいます。これは上に挙げた「横に伸びる」という戯言のせい。つまり日常語彙レベルでは、「太る」=「肥大」=「横方向への成長」なわけで、あまりタテのイメージではないのですね。

そこで、「タテ」と「ヨコ」ではなく、「垂直進化」と「水平進化」なんてどうだろうかと考えてみます。

英語には「タテ」に当たる言葉がなくて、たいていは vertical と表現されます。「ヨコ」と horizontal も同様。でも日本語だと「縦/横」と「垂直/水平」には用法にだいぶ違いがあって、少なくとも「水平進化」なら「太る」イメージとはたぶん重ならないと思うわけですが、いかがでしょうね。

12:58 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.05.31

# モノとコト

リンク: 「Web 2.0」が米国で商標登録 - 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 [ITmedia オルタナティブ・ブログ]

ヨーロッパ言語文化圏の彼らにとって、言葉はしょせん「モノ」でしかない。どう頑張っても、「コト」を理解できないままでいるから、こういう愚行がまかり通るんだろうなぁ。

10:54 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.05.29

# 裏声で歌うのだろうか

リンク: Sankei Web 社会 「君が代」替え歌流布 ネット上「慰安婦」主題?(05/29 02:11)

 卒業式、入学式での国歌斉唱が浸透するなか、「君が代」の替え歌がインターネット上などで流布されている。「従軍慰安婦」や「戦後補償裁判」などをモチーフにした内容だが、本来の歌詞とそっくり同じ発音に聞こえる英語の歌詞になっているのが特徴で、はた目には正しく歌っているかどうか見分けがつきにくい。既に国旗掲揚や国歌斉唱に反対するグループの間で、新手のサボタージュの手段として広がっているようだ。  替え歌の題名は「KISS ME(私にキスして)」。国旗国歌法の制定以降に一部で流れ始め、いくつかの“改訂版"ができたが、今年2月の卒業シーズンごろには一般のブログや掲示板にも転載されて、広く流布するようになった。

例によって無責任な妄言だけ吐かせていただくと、この替え歌、なかなか良く出来ています。

Kiss me, girl, your old one. Till you're near, it is years till you're near. Sounds of the dead will she know ? She wants all told, now retained, for, cold caves know the moon's seeing the mad and dead.

楽曲に乗った英詞では、語末の子音の印象がきわめて薄い、という特性を実に巧みに利用しています。特に、

「千~代~に~ぃ~ぃ~八~千~代~に」

という風に各音節の母音を伸ばしまくる節の処理がすごい。
(Till you're near, it is years till you're near)

「替え歌」というものが出現すること自体は、ごく健全なことだと、小生は思うのですがね。

タイトルの「KISS ME」というのも当然、KISS の最後の子音を思い切り落としてやれば「KI' ME」=「き、み」=「君」となるということでしょうね。

12:45 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.05.18

# 鍵を明け渡す

リンク: JavaOne開幕--Javaはどこまでオープンソース化されるのか - CNET Japan

本国では、もう JavaOne の季節なわけですが、こちらはどうにも翻訳がよろしくないですね。

Sun Microsystemsは同社のソフトウェアをますますオープンソースの世界に明け渡しつつある。しかし少なくとも当面は、Java言語そのものへの鍵を明け渡すことは思いとどまるであろう。

「ますます」の用法も引っかかりますが、「鍵を明け渡す」というのは変でしょう、というのが小生の職場でも一致した見解でした。

01:29 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.05.10

# ローカライズ2.0 :)

リンク: xx1.0 vs xx2.0 - 「走れ!プロジェクトマネージャー!」 [ITmedia オルタナティブ・ブログ]

さっそくやってみました。2.0 Generator
当然ながら、ウチの職場で誰もが入力し、いちばん受けたのは「ローカライズ2.0」。

ランダムですが、結果は---

Generator くん曰く、

[ローカライズ1.0] 2004年、初めてネットだけで成立するローカライズが誕生する

[ローカライズ2.0] 2014年、すべてのローカライズはネットでのみ存在する

[ローカライズ1.0] ときには、ビジョンを持たないローカライズをしてしまう

[ローカライズ2.0] 自分のビジョンに合わないローカライズはあり得ない

[ローカライズ1.0] 同時にできるローカライズは1つだけだ

[ローカライズ2.0] 同時に2つ以上こなしてこそローカライズだ

それなりに信憑性の高いものがあったりするから面白い。

10:24 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.04.14

# お役所の国語力

国語のみだれ、つーのはお役所が率先して広めているのか、それとも国語力の低下した世代がお役所の中心になっているのか(たぶん後者だろうけど)。

何の話かというと、我が家の台所の一隅に「家庭ごみの分け方・出し方」という市役所発行の広報が貼ってあって、それがふと目に留まったわけです。それがもう、ヘンな日本語満載なのでした。

たとえば、「お願い」と書かれた箇条書きはこんな具合

・粗大ごみの申込は、収集希望日の概ね2週間前までに、電話で予約してください。
・可燃ごみの収集は(週2回)、収集日(裏面をご覧下さい)・集積所については、近所等でお聞きください。
ごみ出しは、朝8時までに当日 集積所に出してください
・ごみ収集日は、地域によって違いますので、よく確認してから出してください。

「ごみ出しは~出してください」という重複表現(馬から落馬式)や、「ごみ収集日は~出してください」という主語-述語のねじれ---「収集日は~違います」でいちおう係り受けているが、それでも「出してください」の目的語がなくなり不安定---は論外。「申込は~予約してください」という対応も不自然だし、「ください」と「下さい」の不統一は、まあ普通の人は気にしないだろうけど、(週2回)とそこにいきなりカッコが付いているのがナゾだし、よくまあ、たった4行でここまでめちゃくちゃな日本語を書けるものです。

この箇条書き以外にも、常体と敬体の混在はあるし、「生ごみ処理機」の補助制度を説明している裏面のこれなんかスゴイですねぇ。どこがどこに掛かるんだか、まったく意味不明。

電気式で微生物による分解消滅方式又は温風乾燥方式等により堆肥化及び減量化する機能を有する物で、購入金額の2分の1

かと思えば、「紙資源の分け方」では、

「混ぜてはいけない紙」(禁忌品)

禁忌品って何だ、禁忌品って?!

11:39 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2006.03.20

# "ディザー"って何?

リンク: 第70回 「Origami」が成功するかは機能や価格じゃない! ? @IT

この記事はどーでもいいのですが、冒頭にある「ディザー」って??
カッコ内の定義からすると......これって、"teaser (advertisement)"ですよね。
カタカナ書きするなら、「ティーザー」。

「ディザー」でググると、264 件も。これほどズレちゃった外来語も珍しいなぁ。

10:02 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.03.02

# 首記の件

社会人としては迂闊にも、ということになるのでしょうが、「首記」という言葉、今日はじめて知りました。

現代的な文脈では、メールの Subject 欄を指して使ったりするようですが、この言葉、『広辞苑』には載っていなくて、オンラインで使える『大辞林』とか『大辞泉』にも載っていなくて、MS IME2000 の変換辞書にはあって、『新明解』にはちゃんと載っていました。

字が語義をよく表していて判りやすい熟語だとは思いますが、きっとこれ、かなり新しいビジネス世界的造語なんではないかと推測します。

03:40 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.01.27

# いかんぞ、CNET !

リンク: 銀河系に「地球似」の新惑星を発見--研究者らがネイチャー誌で発表 - CNET Japan

なんだか最近、誤訳が目につきです、CNET さん。

今回の "キーポイント" は、「親星は低温であり軌道から遠いため」というところ。「親星が軌道から遠い」って、変でしょ。

(原文)

Because the parent star is cool and within a large orbit

「親星が大きい軌道の中にある」と書いてあるのですね。つまり「この惑星の軌道は親星から大きく離れている」とすべきところ(あるいは、そう解釈したけど日本語が変になっちゃったのかもね)。

その他にも---

「凍った海の下には岩だらけの地表が眠っている」
-> 確かに surface だけど、海の下でも「地表」って言うのかな?

「地球や金星のような岩で出来ていて軌道が比較的内側にある太陽系惑星」
(原文)
the rocky inner solar planets like Earth and Venus
->これは専門用語の勉強不足。rocky は、いわゆる「地球型惑星」のことを言ってる言葉だし、inner planet は「内惑星」。

----------
えーっと。翻訳者さんには、もちろん分野による得手不得手があります。小生も不慣れな分野だと、どんな誤訳・珍訳をやらかしてしまうかと、実はいつも内心ビクビクしています。

なので、今回の天文用語とか、以前のギター用語のように「専門用語に誤訳が目立つケース」は、翻訳者個人よりむしろ編集部の責任の方が大きいと言えるでしょう。

10:37 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.01.26

# Paint It Black, Not

リンク: 「黒く塗りつぶすのはダメ」:米国家安全保障局、電子文書の安全な公開方法を指南 - CNET Japan

電子文書を "塗りつぶす" とはこれいかに? と思って読み始めたのですが、今回もまた CNET さんの誤訳指摘になってしまいました。

「自信を持って編集する」---この一言が決定的な "誤訳警報" でしたが、第 2 パラグラフは全体に怪しい雰囲気です。

翻訳業界では、

明らかに怪しい日本語を 1 つ見かけたら、その数倍は誤訳がある

というのが定説です (w

以下、書かずもがなの解説---

NSAは、公開用文書の編集に関する指導書の中でそのように指摘しており、知らぬ間にコンピュータドキュメント内に機密データが含まれていたために、機密情報が漏えいした、いくつかの厄介な事件を発表した

(原文)

The agency makes the point in a guidance paper on editing documents for release, published last month following several embarrassing incidents in which sensitive data was unintentionally included in computer documents and exposed.

どうやら、"published" の解釈が致命傷になった模様です。
「following 以下を受けて」、「先月 publish された guidance paper」という修飾関係になるはずでした(もちろんそのまま訳すのは無理がある)。そもそも、makes と published がこのように並ぶとしたら英語として不自然。

さて、問題の「自信を持って〜」です。

13ページに及ぶこの文書のタイトルは、「自信を持って編集する:不適切な部分を削除し、WordからPDFに変換された報告書を安全に発表する方法」(PDFファイル)である。

(原文)

The 13-page paper (click here for PDF) is called: "Redacting with confidence: How to safely publish sanitized reports converted from Word to PDF."

やはり原文は "with confidence" でしたね。英和辞典で調べると、確かに「自信を持って」とか書いてありますが、confidence は要注意単語の一つ。基本の語義は "absolute certainty, a firm belief" なわけで、それをいつでも日本語で「自信」として済むはずはないのでした。"certainty"、"belief" を自分に対して持てば「自信、確信」、他人に対して持てば「信頼」になるのでしょうね。念のために、引用されている NSA の PDF も開いてみました(このエントリとは関係ありませんが、これ、NSA の文書にしては、貼り付けてある Word 画面にヘルプのマスコットが出現してたりして、ちょっと笑えます)。

...how to do it with confidence that inappropriate material will not be released

While time-consuming, these steps give the highest confidence that sensitive information is not hidden in the released document.

なるほどなるほど...ちょっと訳者泣かせではありますね。前者は「まずい情報が漏れないという確信をもって」という意味、後者は give に続いているせいもあって、ちょっと「信頼」に寄った意味になるかな(似たような that 節が続いているのにも注意)。タイトルであれば、思い切り意訳するか、直訳にこだわるなら「間違いのない編集」くらいでしょうか...。

01:02 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (1)

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2006.01.22

# 詐欺と翻訳

リンク: Computerworld.jp - Hot Topics - 日本のユーザーを狙う「フィッシング詐欺」の狡猾な手口

だいぶ前の記事ですが、ちょっとした理由があって「翻訳 詐欺」というキーワードを検索したらひっかかりました。

「VISAの偽メールの文面は、明らかに英語版のフィッシング・メールをそのまま日本語に翻訳した直訳調であることから、詐欺犯グループが、だれか日本人に依頼してメールを翻訳させたのではないか」

...これには失笑しちゃいました。なぜかと言えば---

かつてウチの会社には(にも?)、

いわゆる "ナイジェリア詐欺"(の変種)の翻訳依頼が来たことがある

からなのでした。

英語の文面がまったく読めない(かつセキュリティ意識の低い)クライアントが、自分のところに届いたメールの翻訳をウチに依頼してきたらしい。で、担当の営業も同じくらいの英語力と PC スキルしかなかったもんで、それがウチの部署に回ってきたという経緯。

小生がその文面を見てすぐ、「これ、詐欺メールです !」と言ってつき返したので、このときは事無きを得たわけですが---。確かに、あの手のメールは書き出しが営業メールに似ていなくもないことを考えると、この記事になったケースも、案外どこぞの翻訳者が訳していたりして...。

02:41 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.01.18

# もっと重大な誤訳

先日、CNET の誤訳の話を書きました。ギターの話くらいなら笑ってられますが、国際問題を引き起こしかねない、もっと危ない誤訳もあるわけでした。

イラン、米CNNの取材を禁止 誤訳を理由に

イランの文化イスラム指導省は16日、14日のアフマディネジャド大統領の記者会見で米CNNの同時通訳が誤訳を繰り返したとして、当面の間、CNNの記者やローカルスタッフがイラン国内で取材することを認めない決定をした。イラン学生通信が報じた。
(中略)
CNNはその後、放送を通じて謝罪するなどしたが、イラン側は「故意に大統領発言をゆがめた」としている。

通訳さんが故意に誤訳したとは考えにくいのですが、ひょっとすると、個人的に大のイラン嫌いで、つい無意識に悪者扱いしちゃった、という可能性はありそうなのでした。

11:22 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2006.01.12

# open, unfretted

リンク: 超有名ギタリスト御用達--脚光を浴びる自動チューニング技術 - CNET Japan

CNET ではちょっと珍しい記事ですが、確かに電子楽器って、もっと電子技術を取り入れる余地がありそう。

さて、今回の翻訳記事には大きな誤訳があります。

The Performerはボタン操作だけで、オープンでフレットのない弦を、演奏者がプログラムしたとおりに自動的にチューニングする。

弦楽器のことを少しでも知っていればきっと推察できる誤訳ですが、そうでなくても、「オープンでフレットのない弦」という日本語はまったく意味不明でしょう。原典はこう。

With the touch of a button, The Performer is designed to automatically tune open, unfretted strings to whatever notes the player programs into the system's computer.

unfretted は「フレットを押さえていない」ということ。弦楽器の世界では、これを「開放弦」と言います。つまり、"open" と "unfretted" はほとんど言い換えに等しく、あわせて「開放弦を好きな音程に調整できる」という意味のはずです。

CNET さんの翻訳者さんにも不得意分野はあるわけでした。

07:00 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.10.31

# Babel Fish にはほど遠いけど

リンク: 現代版「バベルの塔」も完成間近?--新種の同時翻訳技術が登場 - CNET Japan

指向性の高いスピーカーで聞き手にだけ聞こえるようにするタイプと、バイザー上の小型液晶ディスプレイに表示するタイプが研究されているそうです。

また「Muscle Translator」というアプリケーションでは、人が言葉を発する際の顔の筋肉の動きを、電極が電気信号としてとらえる。この信号を音声へと翻訳するのだ。これを利用すれば、例えば映画館の中で声を出さずにだれかと電話で話すといったことができるかもしれない。

電極の代わりに、人の顔に無線チップを埋め込むことになる可能性もあるという。

埋め込み型となれば、Babel Fish の遠ーい祖先くらいには位置できるかもしれませんね。

ちなみに、「Bable Fish と翻訳コンニャクとでは、どちらのアイデアが先立ったのか?」という大命題があったのですが、ドラえもん学コロキアムによれば、翻訳コンニャクの雑誌初出は 1976 年 6 月ということで、H2G2 のラジオ放送より 2 年ほど早かったことになります。

12:48 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.10.22

# ドはドーナツ

前回、「ドレミ」の話が非常に気になったので、引き続き少し調べてみました(拙 Blog では今まででいちばん毛色のエントリになっています)。

すでにいくつかの Blog でも紹介されているようですが、「ドレミ」という音階名は、

11 世紀イタリアのベネディクト修道士グイード・ダレッツオが、聖ヨハネ賛歌をもとに考案した。

というのがどうやら定説になっているようです。

Ut queant laxis
Resonare fibris ( しもべ達が声帯ものびやかに)
Mira gestorum
Famuli tuorum (汝の奇蹟の数々を歌えるように)
Solve polluti
Labi reatum (けがれたる唇の罪を免じたまえ)
Sancte Iohannes (聖者ヨハネよ)

この歌詞の各ライン冒頭の音が、原曲ではドレミ...各音に対応している(楽譜はこちら)ので、それをとって

Ut、Re、Mi、Fa、So、LA、Si

とした(その後 17 世紀に、Ut だけは、もっと歌いやすく Do に変えられた)のだそうです。

ところで、「ド〜はドーナツっのド」という訳詩(ペギー葉山)で知られる例の唱歌の方は、もちろんミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』がオリジナルなわけですが、ついでに英語歌詞のこの部分も載せておきます。

Doe, a deer, a female deer
Ray, a drop of golden sun
Me, a name I call myself
Far, a long, long way to run
Sew, a needle pulling thread
La, a note to follow sew
Tea, a drink with jam and bread

つまり、DO-RE-MI... の各音名を簡単な英単語に置き換えているのでした。実に英語的な発想と言えます。しかも、LA が「ソに続く音」などとごまかされていたり(たしかに la に結び付けられる英単語ってないです)、SI が TI になっていたりする辺りはご愛嬌と言うしかありません。

ちなみに、小生は「ドレミファソラシド」よりも、まして「ハニホヘトイロ」よりも、「CDEFGAB」という言い方がいちばんピンと来ます。「イ短調」と聞くと、必ず「A マイナー」と変換しなくてはなりません。これはもちろん、小中学校の音楽の授業がいまいち面白くなく、同じ時期にはギターのコード譜ばかり見ていたせいです。

11:23 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.10.21

# ←この記号は何という?

さて、拙 Blog の見出しにいつも付けている # 記号の話です。

これ、英語では pound sign と言うのですが、「日本語では何と言うのが普通か」ということが職場で話題になって、「電話の音声案内なんかだと、『〜終わりましたら、シャープを押してください』というし、やっぱ『シャープ』が一般的では?」という意見が出ました。そこでふと思ったわけですが、日本語の音楽用語で使う「シャープ」と「フラット」は、そもそも何語なんだろうか、と。

同僚がググってヒットしたのが、上月光氏の Blog

# は sharp、♭ は flat なのでした。

でも、それ以上に面白かったのが、「ドレミ」の話。

すべて聖書から来ていて、意味があるとのことなのです。彼も知らないのですが...。これを正確に説明できる人は世界に1人しかいなく、その人はウィーン国立音楽大学の教授だったのですが、死んでしまったそうです。ド(Do)は、ラテン語のDomine(主よ、の意味)かなあ?とか話し合って盛り上がりました。

おお、なんとミステリーな展開。

今まで見ていなかった分野ですが、上月氏の Blog は、文体も平易でいながら品があり、これから巡回リストに入れておこうと思った次第です。

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2005.09.28

# ローカライズ業界のこと

河野弘毅氏の Blog を毎日巡回していますが、今日(9/28)のエントリは、ローカライズ業界の現状を端的にまとめていて参考になります(同じ業界にいれば、おそらく誰もが共通して漠然と認識していることなのですが)。

そして、そのベースにあるのが見田宗介の『現代社会の理論』。
(Oops! けっこう前の刊行で、なんかヒットしてたみたいですね)

岩波新書なので、今読んでいる山口雅也の次に読んでみようかな、っと。

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2005.09.27

# Speak English, Doc!

リンク: IT上級者の会話は意味不明……「もっと易しく話して」とのリクエスト多 (MYCOM PC WEB)

国語審議会あたりの「カタカナ語を減らそう」キャンペーンとは、また別の次元の話です。英国での調査ですから、やはり英語で話していても、IT 用語は判りにくいようなのでした。

英Computer Peopleは、IT関連の専門用語がオフィスワーカーなどに与えている影響を調査した最新レポートの発表を行った。社内のIT部門のスタッフには、もっとわかりやすくサポートしてほしいとのリクエストも多数寄せられている。

同レポートは、英国内の様々な業種を対象として、約1,000名のオフィスワーカーに実施したアンケート調査に基づくとされている。調査結果によれば、社内のITスタッフなどと会話している時に、難解なIT専門用語が使われたため当惑してしまったことがあるとの回答が、全体の67%に上っている。まるでIT上級者が見知らぬ外国語でも話しているように感じたことがあるとの回答は56%、使われたIT専門用語を理解できずに困っていることを、会話中の ITスタッフは気づいてすらいないようだったとの回答は40%に達したという。

今回の調査では、「帯域」「HTML」「ホスト名」「エイリアス」「IPアドレス」が、難解なIT専門用語のトップ5に挙げられたようだ。また、約 7割の回答者が、自分のよく知っている例に置き換えて、もっとわかりやすい説明を行ってほしいと望んでいることが明らかにされており、図表などを用いた、視覚に訴えながらの丁寧なサポートをリクエストする声も少なくなかったという。

でも、どんな分野でも専門用語なんて難解に決まっています。ボイラーの話だろうと銃火器の話だろうと経済の話だろうと、一般人には縁のない用語や概念があって当たり前。それなのに特に IT 用語だけがこうして問題になるのは、つまりコンピュータを含む情報テクノロジの重要性が、現代社会にあってそれほどまで畸形的に肥大化しているということです。(ボイラーや銃火器のことなら、知らずにいても生活に支障はない)。

だからこそ、「コンピュータは易しい」という大いなる誤認は早急に一掃してもらいたい。コンピュータは、ブラックボックスとして使えるものではないということを、まず常識にしてほしい。

11:32 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.09.12

# 犬の逝去

リンク: 日本オラクルの二代目社員犬ハイディが逝去

ちょっと古いニュースですが、小生は今日になって同僚---その机のそばには、三代目社員犬である "ウェンディ" のぬいぐるみが鎮座しているわけですが---に初めて聞きました。

まあ、死亡通知などでは身内の者について「逝去」という言葉を使うこともあるようですが、いかに名物犬とはいえ、ニュースリリースで「逝去」というのはいかがなものかと...。

知らない人のために付け加えておきますと、日本オラクルさんには、「社員犬」と称するマスコット犬がいまして、初代が "サンディ"、二代目が "ハイディ"、そして現在の三代目が "ウェンディ" です。

マスコット犬とはいえ、週に 2 回はちゃんと出社して社員を癒すという業務があり、ハイディは 2 年前の 2003 年に高齢(換算年齢 70〜80 歳)を理由に引退していました。

日本オラクルの二代目社員犬として十二年間、日本オラクルに勤めたハイディが8月12日に他界をいたしました。享年14歳7ヶ月でした。ハイディは、 1991年4月に入社以降、2003年の3月に日本オラクルを引退するまで、日本オラクルの文化の醸成に多大な貢献を果たしました。

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2005.08.30

# 風が吹けば桶屋

リンク: Omnipelagos.com

また百式さんで楽しいサイトが紹介されていました。

「風が吹けば桶屋がもうかる」式の展開を英語で見せてくれます。2 つの語句を入力すると、最初の単語の語義を一部引用し、関連する語句を順々にあげていって、2 番目の単語にたどりつきます。

語義の引用元は Wikipedia ですが、しばらく楽しめます。英語の勉強と雑学の仕入れに使えるかもしれません。

12:53 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.08.03

# 枯れる...とは

以前からちょっと気になっている言葉です、「枯れる」とか「枯れた」とか。

「秀丸のような枯れたエディタは〜」とか「Windows も 2000 でようやく枯れてきた」のように使われていますが、これはマイナスイメージの用語ではなく、「バグフィックスやアップデートを経て、安定したソフトになった」というほどの意味のようです。「涸れる」とか「嗄れる」ではありません。

e-Words では次のように定義されています。

枯れた
ソフトウェアやハードウェアが発売・公開されてから長期間が経過し、多くの人の手によって不具合などが検証・修正され、利用に当たっての注意点などの情報が大量に蓄積されている状態のこと。安定した導入・運用ができるという良い意味で使われる。

国語辞典に載っている語義でいうと、

枯れる
2. ア: 長い経験の結果派手さが消え、かえって深い味を持つようになる。老練になる。円熟する。 (広辞苑)

この辺りが近そうですが、それでもやはり前掲のような用法は PC 関連特有の表現ではないかと思います。

さて、これは日本語独特の表現なのでしょうか? 英語にすると、matured とか sophisticated かな、と考えてみるのですが、日本語の「枯れた」に近い用例はまだ見つかっていません。しばらく追跡してみたい用語です。

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2005.07.27

# ゴリラ

リンク: ITmedia エンタープライズ:「DB以外でもゴリラになる」、オラクルのミドルウェア戦略.

「ゴリラ」のこの用法、どのくらいポピュラーなんでしょうか。また、およそ意味は想像できますが、いまいちイメージ悪いように思うんですけど。

ちなみに、Answers.com で検索すると、一般用語としては載っておらず、Investopedia.com というサイトからの引用として次のように定義されています。

Gorilla A company that dominates an industry without having a complete monopoly.

Investopedia Says: This term is a reference to the old jokes about the 800-pound gorillas, who "do whatever they want." For example, you'll hear people say "Microsoft is an 800-pound gorilla."

「完全な独占企業ではないが業界で支配的な企業」ということですが、"800 pound gorilla" は、企業に限らず「ある範囲で絶大な力を持つ存在」の意でよく使われているようです。今ちょっとググってみたら、そのまんま "800 Pound Gorilla" という会社までありました。

で、この話の由来になった 800 ポンドのゴリラって...。誰か知ってます?

12:53 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.07.14

# 「なぜか」じゃない

リンク: なぜか懐かしいボンネットバス、観光客集めの目玉に : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

「気になるニュースのことば」です。ボンネットバスを「なぜか懐かしい」と言うのは変です。

初めて見た事物なのに「なぜか」懐かしい、未来を想定したはずなのに「なぜか」懐かしい、そういう用法なら分かりますが、実際に姿を消して久しいんだから、「なぜか」じゃなくただ「懐かしい」だけでしょう。ちょっと目を引く妙な日本語の一例ですが、新聞社が使ってはいけません。

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# 松崎氏の再投稿

東宝東和(株)制作室の松崎忍氏(今回はフルネームだ)、先の投稿に対する多数のコメントを受けて再登場です。最後にちゃんと、

> 東宝東和の映画にも誤訳、映画を見誤った字幕があるやもしれません。万が一、そうした事例に
> お気付きになりましたら、ぜひお知らせください。直せるかぎりは直せるところで直してまいります。

と宣言しちゃうことからしても、ご本人は適度なポリシーをもって本当に誠実に仕事をなさっているんだろうと思う---「直せるかぎりは直せるところで」というところに巧みな予防線も感じるけどね---。だからどうしても、自分のポリシーや仕事は擁護したくなるんだろう、その気持ちはよーく分かる。

が残念ながら、今回の投稿もまた多くの反論・反感を引き出すことにしかならない(これもそうだけど)、ということにご本人は気づいていない模様。

松崎氏の業界擁護論がどうやっても破綻してしまう原因は、彼が「個人の誠実な職業観をベースにして業界全体を擁護しようと試みている」点にあるのだろう。

「1人芝居のQ&A(DAY-9)」の内容が事実に反すると、松崎氏はほとんど義憤に駆られているかのように主張する。氏の観点ではそうなのかもしれない。だが、業界諸氏が今考えねばならないことは、落合氏がなぜ「妄想です」と前置きしてまであれを書かねばならなかったのかという、そのことではないか。そして、映画字幕の動向に注目している多くのファンには、あの記事の内容が事実と思えるほど当たり前の「イメージ」になっているという、その現象ではないか。事実がどうあれ企業が顧客に与える「イメージ」がいかに重要であるかなど、ここで説くまでもないはずなのだが、松崎氏は自身の仕事に信念を持っているがゆえに、そんな単純なことも見えにくくなっているように思う。

そのような業界イメージを作り出してしまった責任が映画業界全体や映画翻訳家協会にあるとすれば、落合氏のあの記事を「謂れのない汚名」として一蹴することはけっしてできないだろう。

そういえば、翻訳家協会についてマイナスイメージがつきまとうのは、他ならぬ同協会の会員その人の言動にも原因の一端があるという話をあげておこう。「字幕翻訳というのは常にスケジュールがタイトで大変なのよ」とインタビューに応じる同じ人物が、「字幕製作者が増えないのは今の人数で十分だから」と答えているのだそうだ。どうやら、字幕制作の現場とは、一般物理常識が通用しない世界のようだ(と、小生ならこの程度の揶揄で済むところだが、同じ世界で生きてきた落合氏にとって、事態はもっと切実であるに違いない)。

さて、後半では松崎氏の字幕制作に関するポリシーが前回より具体的に展開されるわけだが、ここでも氏の論理はあっさりと破綻している。自分のポリシーと現実認識に大きなズレがあるせいで、ちゃんとした論旨はあるのに、それを支えるべき事例の選択を大きく誤っている---まるで、悪い論文の見本市みたいだな---。

>「透明な字幕」なんてものは有り得ません
> その映画の本質を直感的につかみ取っていく力の大小(あるいは有無)が、字幕翻訳家の「上手さ」

いちいちごもっとも。

> 「面白さを1つでも多く伝えたい」

異論はあるかもしれないが、これも立派に一つのポリシーだ。

そこへ、「上手い」字幕の代表例として戸田氏を挙げたのでは、論旨と例示がまったく呼応してないわけで、いくら筆を費やしてもせっかくの字幕論に説得力が微塵もなくなってしまう。戸田氏の字幕をもし本当に上手いと思っているのなら、氏の字幕論自体が成立しないことになる。本当は上手いと思っていないのなら、氏の字幕論の事例として引くことが誤り。いずれにしても、「はじめに戸田ありき」の論理では、破綻するのは当然すぎるくらい当然。そのことに、ご本人は気付いていない様子。

「透明な字幕」どころか、あまりに濃厚に翻訳家の色が付きすぎている。「映画の本質を直感的に」つかんでいない、むしろ歪めている。ファンはそう糾弾しているのです。そして、それよりはるか以前の問題として「辞書くらい引けばいいのに」と呆れているのです。

もし気付いていてなお、「そんなことはない、上手い字幕だ」と主張なさるのだとしたら、それは「素人は口を出すな」式の、業界人の傲慢に過ぎないのですが、

> 字幕制作に携わる者としては、いっそう身を引き締めてみずからの仕事に取り組むだけです。

こう述べる松崎氏の言葉に嘘はないのでしょう。それだけになお一層、彼の論理の空回りだけが、いっそ業界人の悲哀を感じさせるのでした。

02:41 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.07.11

# 実名の投稿@落合氏 Blog

字幕制作サイドから、このような実名入りで応答があるというのは、ほとんど初めてのことではないでしょうか。東宝東和・字幕制作担当の松崎氏には敬意を表します。

窓口でまともな応対をしない、誤りをいっさい認めないなど、配給会社についてはネガティブなケースばかりが目につく中、業界サイドからようやく、このようなまともな---松崎様、失礼します---対応が見られるようになった、このこと自体がすでに、何か大きな転換点が近いことを示唆しているのかもしれません。

「業界全体」という問題について:

> あたかもそれが業界全体に当てはまるような書き方は止めていただきたい。

個別論が展開されてゆく中で必ず一度は出現する反論です。個別のケースが一度や二度ではなく、あまりに短時間に目に余る形で続けて出現したとき、それを目撃し被害を受けた者には、全体を検証することなく個々のケースについて抗議の声をあげる権利がある、と小生は思います。

洋画字幕については、個別の作品であまりにひどく商品の品質が低下しており、一般消費者である我々は「業界全体に当てはまるような」言い方をせざるをえない、言い換えれば、すでに業界全体への抗議となるくらい、個別事例の程度が悪化しているのだと、そのように受け止めていただきたい。

そして、そのような文脈で個別抗議があがったとき、全体として為すべきことは何か? それは「そのようなケースばかりではない」と反論することではなく、業界全体としてもそのような抗議を正しく受け止め、抗議に値する個々のケースを是正してゆくこと、ではないのでしょうか(そのような機構が、どの業界にも存在するはず)。

JR 西日本で大惨事が発生し、その原因が日常的な業務姿勢にあるという批判が上がったとき、他の JR 各社ならびに私鉄各社はどう対応したか。特定メーカーの商品に異物混入事件が発生したとき、業界全体はもとより、他の食品メーカーがどれほど過敏な反応を示したことか。私たち消費者は今、それと同じような対応を映画業界に期待しているだけなのです。

(ただし、松崎氏は「個人の意見」と断り書きをなさっており、業界全体を代弁しているというわけではありません。むしろ、自分たちがきちんとお仕事をなさっているからこそ、実名入りでこのように主張なさりたかったのであって、その意味で今回の投稿は高く評価したいと思うわけです)。

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戸田氏の仕事について:

> 戸田さんに頼むのは単純に字幕が上手いからです。

ストーリーやキャラクタの理解を明らかに損ねるような字幕。常識に反し、見た瞬間に鑑賞を阻害するような字幕(北極大陸、66回の〜など)。映画中での事実さえ無視し、観客をうろたえさせる字幕(「妻になります」など)。会話に現れる人間関係がたびたび整合性を欠き、観る者に混乱をもたらすような字幕(一貫しない二人称、敬語の使用/不使用など)。セリフの品位をまったく度外視した語尾の多用(「〜てる」)...。

このように指摘される箇所が1つの作品中に一つや二つではない...。そのような字幕を、なぜ未だに「上手い」と評価できるのか、理解に苦しみます。

>「字幕でドラマを作っていく」上手さは群を抜いている

これはもっと疑問です。「ドラマを作っていく」とはどういう意味なのでしょうか。字幕翻訳家とは「ドラマを作っ」たりしてよい職業なのでしたか? 字幕に限らず翻訳には翻訳者の解釈と創作が不可避だという議論も確かにありますが、行き過ぎた創作や誤った解釈は必ず批判の対象になるのです。

小生にはほとんど、「勝手にドラマを作っていく上手さ」と読めてしまいましたが。

--------------------------------------------
冒頭に書いたように、松崎氏の今回の行動に小生は敬意を表します。本稿も、松崎氏個人を攻撃するものではありません。あくまでも、氏の擁護論(業界擁護、戸田氏の擁護)それ自体がすでに業界の限界を露呈しているのであり、その意味では非常にタイムリーなコメントだったと思われます。

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2005.07.07

# How many times must we...?

リンク: 『キングダム・オブ・ヘブン』字幕改善署名(開始!)

字幕改善連絡室さんで、恒例の(!!)改善署名の受付けが始まりました。小生も後で参上いたします。

落合寿和氏も Blog で嘆かれています。

ただ、異常なのは消費者の腰が非常に低く「企業様」に改善を乞う図式です。 (中略) 私はこんな企業を見た事がありません。いや、正確に言うと映画の配給業界以外では見た事がありません。

字幕改善連絡室を中心とする諸氏は、最初からこの「企業としての異常さ」を訴えてきました。

いろいろな企業や業界で数々の不祥事が発覚し、各社がそれなりに懸命な姿勢を見せようとして苦しんでいる今日にあって、日本の映画配給業界だけがなぜか涼しい顔をしていま。誤訳=欠陥商品の存在を指摘されてもなおまともな対応をしない、これは企業として立派な不祥事なのだということに、もう気付いてもらわねばなりません。

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2005.07.05

# 誤訳がトレンドか?

リンク: 「誤訳で意味反対」 学術会議の温暖化声明

フォースの大きな流れを感じる...^ ^。

主要国首脳会議(グレンイーグルズ・サミット)に向け、日本学術会議(黒川清会長)など11カ国の学術団体が6月にまとめた地球温暖化に関する共同声明で、小泉純一郎首相にも提出した日本語仮訳には大きな誤訳があり意味が正反対になる、と複数の関係者が指摘していることが5日、分かった。

 問題になったのは、学術会議が、大気中の温室効果ガスの濃度に関し、世界の国々にとって「無理のない程度の削減目標」の在り方の研究を進める、とした部分。

 これに対し、複数の専門家から「受け入れがたい悪影響を回避することができるような目標」とすべきで、「無理のない程度の」では意味が逆になるとの指摘が寄せられた

昨日の今日で、またも目立ち度の高い誤訳が出現した模様です。不思議な現象ではありますが、この流れに乗っちゃって自分も派手な誤訳をしないよう気をつけないと w。

08:10 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.07.04

# NHK 誤訳問題の顛末その2

さて、抗議メールを受け取った(はずの)NHKはどう出たか? ということで顛末の続きです。ここで実は、映画産業との決定的な違いがあったのでした。

リンク: 【回答】Nスペ終戦60年企画に対する抗議への返信

週明け月曜日の今日(7/5)、彼のところに NHK から返信メールが届きました。先方の承諾を得たうえで、メール全文も引用されています。

NHK は、本放送での字幕の不適切さをきちんと認め、月曜深夜(7/5 0:15 〜 1:10)に予定されている再放送分では、問題の箇所を正しく修正すると表明したのです。その対応の迅速さには、ちょっと驚かされましたが、よく考えてみればこれは、出版物の誤植を指摘されたときの出版社が示すのと同じ、社会的にごくまっとうな対応のはずです(さらに意地の悪い見方をするなら、今の NHK だからこそ、このような対応を見せたといえなくもない)。

純粋な動機を持ち続け、走り続けることをやめない Etranger 氏の行動力は尊敬と感嘆に値すると前から思っているのですが、その彼の行動が、たとえ小なりとはいえ正しく報われたことに、全面的に賞賛の拍手を送りたいと思います。

--------------------------------
さて、今回のこの NHK の対応を見るにつけ、やはり日本の映画業界というところが相当に腐っているのだと、改めて言わざるをえません。

もうはるか昔に何の根拠もなく決められた「字数制限」なるものを金科玉条とし、「字幕の情報量は原語の30%程度」などという定説に安住してきた映画字幕産業。その第一人者と祭り上げられ、辞書を引く労さえ惜しんだあげくに数々の誤訳・珍訳を量産し続けている字幕作家。それをまったくのノーチェックで商品として市場に出し、かりに間違った字幕を指摘されても、その非はいっさい認めず、消費者からのクレームには木で鼻をくくるような対応しか示さない配給会社。

こんな杜撰な世界に対して、少しずつですが確実な動きが見えつつあります。字幕改善連絡室を中心とした一連の誤訳指摘の運動、メジャーではない字幕産業に携わる人たちの声。周囲からはキワモノと目される立場ではありながら、今の字幕や映画業界のあり方に疑問を呈する評論家や一部メディア...。

今回の NHK の「まともな、しかし本来は当たり前な」対応が、この動きに少しでもプラスになることを祈りつつ、今夜の再放送を待つことにします。

11:44 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# NHK 誤訳問題の顛末その1

「50mm機関銃」といえば、専門用語の誤訳として今ではすっかり有名です(ご存知ない向きは、「続きを読む」で注釈をどうぞ)。映画の字幕なら実害は少ないわけですが、ドキュメンタリーや報道番組の場合、たった 1 つの誤訳が致命的な誤解につながる場合があります。

今回そのケースがあったのは、NHKスペシャル「僕らは玉砕しなかった〜少年少女たちのサイパン戦」でした。本放送は 7/2(土)。

リンク: 【抗議】Nスペ終戦60年企画『僕らは玉砕しなかった〜少年少女たちのサイパン戦』を観て

引用先の Blog にあるように、問題となったのは concussion grenade という、まあ専門用語でしょうね。「震盪手榴弾」と訳されることが多いようですが、要は相手を気絶させるだけで、殺傷能力のない手榴弾です。

ところが、件の番組中で付いた字幕は、次のようなものだったそうです。

(原文)And so... many times, we'll just toss a concussion grenade in the cave. (訳文)だからその時は洞窟に手りゅう弾を投げ入れた

「手榴弾」という字幕を見たら、子供でも大人でも 100% が「じゃあ殺すつもりだったんだ」と理解してしまう。すると、ここでは発話者である元米兵の発言、ひいては歴史的な事実までが、まったく違ったものになってしまうわけです(そのとき使用されたのが本当に concussion grenade だったのかどうか、という話は今は問題外)。

この Blog は、小生の知り合いで ICC など国際情勢について常に真摯な目を向けている人なのですが、彼はリアルタイムでこの字幕を見て、即 NHK に抗議メールを送りました。それが、本放送のあった 7/2 土曜日のことです。

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注: 50mm機関銃とは?
英語では、Cal .50と表記される(Cal = Caliber、0.5 の 0 が略される)。単位はインチ、つまりこれは 0.5インチ=訳1.27cm=12.7mm の口径。普通はそれを了承の上で「50口径」と書かれる。この辺にピンとこなければ何ともないらしいが、口径(直径)5cmの機関銃などというものを想像すると、これは相当に無茶苦茶である。バイクを「ヘリコプター」と訳せたり、「ボランティア軍」だの「ローカルな星人」だのいう日本語を平気で書けたり、「北極大陸」などという地理的非常識を披露できたりする某大家ならではの、珍訳中の珍訳と言えよう。

11:03 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.06.30

# 業界ネタから英語の話

リンク: The Other Shoe Just Dropped: Lionbridge Acquires Bowne Global: Corante > Going Global >

つい数日前に噂として登場しましたが、それが確定した模様です。

このBlogは英語も面白いので、前回のと併せて拾ってみました。

Lionbridge & Bowne: Waiting For the Other Shoe To Drop

So now that SDL has announced its plans to buy TRADOS, the buzz around the industry is when Lionbridge is going to finally pull the trigger on purchasing its larger competitor Bowne Global Solutions (BGS). Based on what I'm hearing, the question isn't "if" but "when."

「SDLがTRADOS買収計画を正式発表した今、業界の話題は、Lionbridge がいつ、ライバル社たるBowne Global Solutions(BGS)の買収の最終決定を下すかということだ。聞くところによれば、買収は「あるかどうか」ではなく「いつ」という段階である。」

今回のタイトルは、前回のタイトルを受けています。"wait for the other shoe to drop"というのは、「ほぼそうなることを予期する」ということなので---片方の靴が落ちるのを待っている---、"The Other Shoe Just Dropped" となるとそれが「決定した」---靴が落ちた---となります。

ニュースサイトでも個人 Blog でも、タイトルの付け方はみんな凝ってますね。

08:10 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.06.28

# また業界ネタですが

リンク: Lionbridge & Bowne: Waiting For the Other Shoe To Drop: Corante > Going Global >

TRADOSがSDLに買収されるというビッグニュースに続き、今度はMLVどうしの合併ですと(これについては、案の定、独禁法は大丈夫かという懸念も見かけますが)。

Bowne があまり調子よくなさそうな噂は聞いていましたが、この両社が一緒になった存在感というのは、コンピュータ界におけるかつての IBM 以上、今の MS 級かもしれません。巨大 MLV が誕生したからといって、すぐに日本での勢力図が激変するとかいうことはないのでしょうが、最近は、どのクライアントもやはりローカライズをグローバル化したがっている(ヘンな言葉だな)。つまり地域の事情に合せて手間暇と金をかけるようなローカライズはもうやめて、なるべく単純に均一に、コストを抑えていこうという傾向が見られたりもするので、その流れを考えると、このような巨大な MLV の出現は気になります。

デカイということは、処理量(単位時間当たりの翻訳量)が増えるということで、当然スケールメリットが伴う。デカイだけに色々なツールもどんどん自社開発できるから、そこでますます効率化・高速化が図られる。処理すべきマニュアルやオンラインヘルプが大きい大企業ほど、このような処理のできる MLV は歓迎するでしょう。

クライアントにとっては、自分たちが手間をかけずに(Glossary を用意したりファイルをハンドリングしたり...)アウトプットだけが返ってくる、つまりは超優秀な自動翻訳機械があればいい。寡占化した MLV がそのように機能するようになったら、かなりコワイわけです。

01:05 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.06.21

# かなり驚きの業界ネタ

リンク: SDL to acquire TRADOS: Corante > Going Global >

"SDL" も "TRADOS" も、業界外の人にはまったく意味をなさない単語かと思いますが、小生の所属している業界では、かなりビッグなニュースです。

TRADOS とは、業界でほぼデファクト・スタンダードとなっている「翻訳支援ツール」の名前(およびその開発販売メーカーの名前)です。かたや、SDL というのは、翻訳サービス会社です。

つまり、翻訳業界の標準とも言えるソフトウェアのメーカーを、同じ業界の一翻訳会社が買収してしまうという...。

そうですね...、スクエアエニックスが SCE(Sony Computer Enterprise) を買収する、みたいな構造だと言えば、業界におけるこのニュースの重大さがお判りいただけるかもしれませんね。

もう少し詳しく言うと、翻訳支援ツールというのは、自動翻訳ソフトではなく、一度翻訳した原文-訳文の単位を「翻訳メモリー」と呼ばれるデータベースに登録していき、以降はその DB から流用することで翻訳効率を高めるというソフトです。で、TRADOS はそのツールで圧倒的にシェアを占めている会社。

SDL は、翻訳サービス会社といっても、多数の言語を扱い全世界にオフィスを展開している、いわゆる MLV(=Multi-Language Vendor)であり、翻訳業界でも相当の大手です。しかも自社でも SDLX という翻訳支援ツールを開発しています。

この買収が実現すれば---ほぼ確定のようなのですが---、全世界の翻訳会社は、必須のツールを別の翻訳会社から買うという図式になるわけで...。うーん...。

04:37 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2005.06.17

# CNetの翻訳見出し

リンク: デルか、出ないか--M・デル、Mac OS搭載マシンの提供に意欲 - CNET Japan

Dellの創業者兼会長であるMichael Dellは、Fortune誌とのインタビューのなかで、チャンスさえあれば自ら「スイッチ」してもいいと考えていることを明らかにした。

 「もしAppleがMac OSを他社へ公開することに決めれば、喜んでこれを顧客に販売したい」Dellは電子メールに記している。

記事については後回し。まずは記事の見出しに注目〜。当然ながら、原典がこんな駄洒落なわけはないので、さっそく原文記事に飛んでみますと---

Dell founder thinks different about Apple

こちらは駄洒落ではなくて、Apple のキャッチコピー "Think Different" のもじりになっています。

さてさて、Mac on Intel がいよいよ現実となって、Mactel という呼び方も見かけるようになりました。

Intel マシン上で Mac OS と Windows のデュアルブート、という話の方はまだ可能性がありそうですが(こちらの記事)、Apple マシン以外で Mac OS が動くことは、まずありえないでしょう、と UMAX マシンを愛用していた小生は思うのでした。

07:28 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.06.14

# ニュースに注意

ニュースの文言には、書く方ももう少し気を遣ってほしいし、読む側は常に警戒が必要です、というサンプル。

ロイター: 北朝鮮総書記、正気かどうかわからない=米国務長官

 [ワシントン 13日 ロイター] ライス米国務長官は、北朝鮮の金正日総書記が正気かどうかわからないと発言した。

 ライス長官はMSNBCテレビの番組でのインタビューで、金総書記が正気と思うかと質問されたのに対し、「わからない。会ったことがないので」と話した。インタビューは13日に収録され、14日に放映される。

見出しだけ見たら、「ジョンイルの正気を疑っている」ように読めます。思わず肯いちゃったわけですが...。ちなみに、同日の Sankei Web での見出しは「金総書記、正気か分からぬ 米国務長官が発言」でした。似たりよったりですが、これはもしかして、記者さんのバイアスのせいでしょうか。


時事通信: 吸血コウモリにかまれ11人死亡=800人にワクチン接種−ブラジル

 【サンパウロ13日時事】アマゾン川河口に位置するブラジル・パラ州の密林地帯で、チスイコウモリにかまれた住民が次々に狂犬病を発症し、13日までに子供10人を含む11人が死亡した。同州では1年余り前にも2カ所でチスイコウモリ経由の狂犬病が流行し、計21人が死亡している。  州健康局によると、5月に州東北部のアウグストコヘア近郊で子供4人が相次いで死亡。5人目の子供が州都ベレンの病院に運ばれ、狂犬病が判明した。その後、8人が感染していることが分かったが、入院した9人のうち7人が死亡した。  当局は一帯で800人以上にワクチンを接種したほか、コウモリの駆除などを行っているが、被害はさらに広がる恐れがある。  (時事通信) - 6月14日9時1分更新

因果関係がまったく曖昧な見出しです。扇情新聞ならともかく、時事通信がこんな発信をしてはいけません。ちなみに、同じく Sankei Web での見出しは「吸血コウモリで狂犬病流行 ブラジル北東部、10人死亡」でした。こちらはマトモですね。

07:00 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.05.31

# install と installation

installation という用語に困らされることが多い。

動詞 install から派生した名詞なんだから、普通の訳語はもちろん「インストール」。「インストレーション」とされる場合もあるが、意味するところは同じで、アプリケーションをシステムに組み込むという「行為、作業、プロセス」のことだ(ちょっと古いと「導入」なんて訳されることもある)。Wikipedia などでも、普通はこんな定義になっている。

Installation is the process of putting a program in a computer system such that the program works as desired.

ところがドッコイ。実際の英文では、「行為、プロセス」の意味では通用しないケースも頻繁にあるのだった。たとえば、こんな英文が実在する。

Large installations may have many application server installations...
「大規模なインストールには多くのアプリケーション・サーバー・インストールがあり〜」

How to install Multiple Installations of iAS...
「iASの複数のインストールをインストールする方法」

判る人には判るのかもしれないが、installation は「行為、プロセス」ではなく「インストールした先、インストールした環境」を表しているわけでした。ところが、各種の専門辞書やネットを検索しても、このような定義はほとんど見つからない。ネットで今のところ見つかっているのは、IBMの用語集ページくらいで、ここではちゃんと、

installation: インストール,インストール済み環境 [インストール後のシステム環境を指す場合],取り付け

と定義されている。さすが Big Blue、パチパチパチ。

つまり上にあげた例文は、それぞれ「大規模なインストール環境には、多くのアプリケーション・サーバーがインストールされている」、「iASを複数のインストール先にインストールする」ということになるわけですね。

翻訳上の注意点としてまとめるなら「抽象名詞は意味の範疇に気をつけよう」ということでしょうか。この点、辞書も役に立たないことがたびたびあります。

ところで、install と installation の関係は、live a happy life とか die a dog's death という成句に見られる live - life、die - death という関係、つまり同族目的語に類するのでしょうね。だから、installation を「インストール」と訳したのではよろしくない。ちょうど「犬死を死ぬ」とは訳せないのと同じことのようなのでした。

04:10 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.05.10

# 雇い兵...?

リンク: 邦人拘束:
斎藤さんの勤務会社 米軍の警備支援が業務

記事そのものではなく「雇い兵」という言葉に反応。「傭兵」じゃないの? と思って調べてみたら、やはり「傭」の字が常用漢字ではないという理由による、新聞言い換え用語でした。

カエサルが使ったのは、ガリアの「雇い兵」ですか?

12:54 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (1)

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2005.04.26

# モーメンタム...ですか?

リンク: ITmedia Survey:先例主義の科学


タイプライターのキー配列については、単に「絡みにくいように」というだけではないそうで、その辺はこちらのサイトさんが参考になりました。

Dvorak jp さん

Dvorak があのドボルザークの親戚だったというのも初耳でした!

さて、この記事の解説するところの「モーメンタム」...? 威勢がいいときなら「いきおい」、否定的には単に「惰性」、今まではそんな風に呼ばれていた現象のことでしょうかね?

確かに、今までは漠然としか捉えられていなかった現象を「研究」してみると何か傾向みたいなものが見えてくる、それはそれで面白いものでしょう。でも、そこにわざわざ momentum などという物理用語を持ち出してネーミングするものだから、実体より先にその "借りものっぽさ"が気になってしまう。用語が気になりだすと、もうそこには胡散臭ささえ感じてしまう、のですね小生は。

path-dependency という用語にしても、背景にヨーロッパ的な「自由意思」という概念がない限り出てこなかったんじゃないかなー、と思うのですが、それぞれの分野で今この用語を使っている人たちに、もちろんそんな意識はないでしょう。本人たちはごく真面目なわけで、こんな "借りもの"の奇妙さは感じていないに違いありません。

そんな風に「学問」になりたがっている「学」の不思議さ、ましてそういう新たな研究の方向性を今さら「科学」と呼びたがる神経に至っては、もう不可思議領域なのですが、たぶんこの手の記事がすぐ目につくのは、小生がこの方面を不思議領域と思って眺めているせいなのでしょうね(要はさ、経済とか経営とかは、小生にとってトンデモの 2 歩手前くらい、のカテゴリだってこと)。

12:57 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (5) | トラックバック (0)

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2005.03.07

# Answers.com

しばらく前に百式さんの紹介記事を見て、それ以来愛用しているのが Answers.com です。

http://www.answers.com/

普通の英英辞書から技術系の辞典まで、かなり広い範囲の辞書を串刺し検索できるのが嬉しいのですが、なんと、Firefox 用のアドインまで用意してあるのがスバラシイ(I.E.用ももちろんある)。

商売柄、市販の辞書は役に立たないことが多く、オンラインの辞書やネット検索は必要不可欠です。翻訳業界の中には、「インターネットはしません」と公言している某字幕作家もいますが、少なくとも産業翻訳に携わっている真面目な翻訳者の方なら、みなさん同様だろうと思います。

たとえば "document" という単語を検索すると、

American Heritage Dictionary
Computer Desktop Encyclopedia
Merriam-Webster's Dictionary of Law
WordNet
Wikipedia

などのオンライン辞書から検索結果がルックアップされます。

おもしろいのが、Translation の結果一覧。 WizCom Technologies Ltd の翻訳エンジンを使っているらしいのですが、ちゃんと日本語も出てきます。

12:57 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.03.04

# ミドルエンド?

たとえばこの記事を呼んでいると出てくるのが、「ミドルエンドクラス」ということば。

えっ!?

もともとあったことばは、

ハイエンド: highend、high end、high-end
ローエンド: lowend、low end、low-end

これ、直訳すれば「高級な方の端っこ」と「低級な方の端っこ」ですよね? 両端だからこそ "-end" なわけで、真ん中のものを指して「〜エンド」とは言えないでしょう。ヘンテコ和製英語ですよね。

試しに Answers.com で引いてみましたが、やはり high-end と low-end (ハイフンつなぎがいちばん有力っぽい)は記載されていて、middle-end は載ってませんでした。

09:06 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2005.03.02

# 「温度差」

しばらく前から目に/耳にしますよね、「温度差」。

goo の国語辞典を検索すると、基本辞書である『大辞林』のエントリだけでなく、三省堂提供「デイリー 新語辞典」などのエントリも併せてヒットするので便利ですが、「温度差」は次のように説明してありました。

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一つの物事に対しての熱意の差を比喩的にいう語。〔「行政改革に対する温度差がある」などと用いる。1990 年代初頭から用いられるようになった〕
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ふーん、「熱意の差」ねー。上の用例に見るように、どうも使われ始めたのは政治的な文脈なのかな、と思いますが、もう少し調べてみたいと思っています。

12:55 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2005.02.22

# 「ら入り」言葉

ブルートレイン: 「あさかぜ」ら4台、雄姿を披露 東京

「ら抜き」言葉ではなく「ら入り」言葉ですね(笑)。
国語辞典をいくつか引いてみても、人間以外の複数形に「〜ら」を付けるという用例はなかなか見つからないのですが......。それともこれは、人気のあるブルトレのことてて、擬人化した表現なんでしょうか、毎日さん?

昨今の "教養ブーム" の一環で、「正しい日本語」みたいな本は次々と出版されているわけですが、新聞でおかしな日本語を見かけることも当たり前になってしまってますねー。

12:58 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2004.12.03

# 私家版英語辞典、公開

しばらく前から、「普通の辞書ではほとんど見かけない英語」を書き溜めていました。仕事上の必要に迫られたものなので、IT 関連用語がメインです。右カラム「帽子屋のブログ」からどうぞ。

12:34 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2004.12.01

# retcon について

retcon = retroactive continuity: 定訳なし。直訳すれば「遡及的な連続性」

The common situation in fiction where a new story "reveals" things about events in previous stories, usually leaving the "facts" the same (thus preserving continuity) while completely changing their interpretation.
(フィクションにおいて、前作の出来事に関する新しいストーリーが "明らかに" されること。通常、事実はそのままにしておき---したがって連続性を保たせておいて---その解釈を変えるという手を使う)

Wikipedia は本当に便利だ。用語集のネタを探していて、ふと Godzilla をひいたら、英文であるにもかかわらず「ゴジラ」の語源まで書いてあったりして、けっこう面白い。ただし事実誤認もあるので、機会があれば指摘してあげよう。

Godzilla died at the end of the original 1954 film. Subsequent films in the series retconned the first movie by assuming that Godzilla wasn't killed, and that the body of the monster was never found.
(ゴジラは1954年第1作のラストで死ぬが、シリーズ第2作では、実はゴジラが死んでおらず、その死体が見つからなかったのだと retcon された)

『ゴジラの逆襲』に登場したのは2匹目なんだってば。第1作ラストの志村喬の台詞がちゃんと伏線になってるんだから。で、目についたのが、ここで使われている "retcon" だ。

この単語、普通の辞書には載っていないのだが、Jargon File にはしっかり載っている。

retcon = retroactive continuity: 定訳なし。直訳すれば「遡及的な連続性」

The common situation in fiction where a new story "reveals" things about events in previous stories, usually leaving the "facts" the same (thus preserving continuity) while completely changing their interpretation.
(フィクションにおいて、前作の出来事に関する新しいストーリーが "明らかに" されること。通常、事実はそのままにしておき---したがって連続性を保たせておいて---その解釈を変えるという手を使う)

つまり「ところがどっこい」的に強引な設定変更のことだ。
「沖田艦長は死んだ。ところがどっこい、脳死ではなかったので蘇った」とか「アッシュは死んだけどクローンがいた」とか(これは結局、文庫版最終巻あとがき筆者の妄想で済んだけど)、「有末静のクローンが作られた」とか(こちらは実現しちゃった話)...。

Wikipediaもエラいが、Jargon Fileもやっぱりエラい。

12:20 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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