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2020.06.26

# OEDのオンライン版~まさに格の違い~

3月くらいから、Oxford English Dictionary(OED)のオンライン版を使い始めました。

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通常のサブスクリプション料金は年間215ポンドまたは295ドルと、国内辞書サイトで最も高いジャパンナレッジと比べても、かなりいいお値段です。

さすがにこの値段だし、手元にはCD-ROM版の『OED 2nd』がある(こちらでも、2006年くらいまでの比較的新しい語句が Draft Entry として収録されている)ので、今まで見送っていたのですが、3月頃ふと見たら、割引きキャンペーン中でした(来年の3月いっぱいやってます)。なんと

年間90ポンド!

当然その先は通常料金に戻るのでしょうが、それでもこれはお試しのいい機会、ということで使い始めました。

結論から先に書くと、産業翻訳者にも間違いなく役に立ちます。私は、来年以降も正規料金で使い続ける予定です。それ以上に、ひと言で言って、

辞書(サイト)としての格の違い

をまざまざと見せつけられた思いです。

「世界最大の辞書」の名にふさわしい内容は言わずもがな、辞書サイトとしての機能という点でも、他のサイトを圧倒しています。


まず、インターフェースに品があります。日常的に使う以上、これって実は重要。

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(クリックで拡大できます。以下同)

検索フィールドのほか、最新の更新情報なども載っていることがひと目でわかります。

たとえば、私がつい先日調べた presser という単語を引いてみます。

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最初の検索結果ページでは、
・2 つのエントリがあること、
・各エントリの概要(最初の2行)
などが示されます。それだけではなく、Widen search? として、いま調べている単語を phrase 検索する、definition の中から検索する、full text 検索するなどのオプションが並んでいます。

しかも、ページの右のほうにはさらにオプションが表示されていて、いろいろな観点で検索を絞り込むことができます。

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今回探していたのは、noun の2番目です。そちらをクリックしてみると、

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いわゆる「プレスカンファレンス」を意味する口語ということがわかります。ちなみにこの語義、今のところ英和辞典ではどれにも載っていません。英辞郎くんも含めて。一方、英英だと American Heritage とか Cambridge、Merriam Webster に載っていました。英語圏の辞書サイトと、日本の各出版社との間で時差がある一例でしょう。

項見出しのすぐ下には、View as: Outline | Full entry というスイッチがあります。右上にはQuotations: Show all | Hide allという切り替えもあり、もちろん Thesaurus などへのリンクもあります。

ページの右端には、前後の見出しも出ています。

そして、「辞書(サイト)としての格の違い」の最たるポイントが、

This is a new entry (OED Third Edition, March 2019).
Entry history
Entry profile

と書かれた部分。この見出しがいつ収録されたか、初出の用例はどこから採取したかといった詳しい情報が載っています。

まあ、ふつうに辞書を使っている分には、こんなところまで見ることはそうそうないかもしれませんが、この例のように新しい語義だと、「いつ頃から使われてるんだろ?」と疑問に思いますよね。そういう情報がちゃんと載っている。


別の例として、authenticate という動詞を引いてみます。

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6. の語義 Computing というラベルで、IT の文脈に出てくる意味がちゃんと載っています。自動詞も他動詞もあり、初出は1977年の Computerworld。IT 屋さんにはおなじみの雑誌名ですね。1993年の用例も UnixWorld

そして、ここで注目なのが、右のほうにある書誌情報(←この用語の使い方はあってるのかな……)です。

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この項目が2014年6月に更新されていることがわかるだけでなく、Previous version: OED2 (1989) というリンクもあります。そう、

旧版の様子まで見られる

のです。これって、すごくないですか? 「格の違い」ということを、わかっていただけたでしょうか。

OEDの偏執狂的なまでの編集方針については、ご存じの方も多いと思います。

とか、

あるいは

が参考になります。OEDの背景にある哲学を簡単には言い表すことはとてもできませんが、

英語という言語の、時間的にも空間的にも広大な世界に散らばっている、そしと次々と現れる無数の言葉の実相を記録にとどめておきたい

そんな執念が形をとったものと言えます。その執念が、オンラインでも見事に再現されている、そんな感じがします。

OEDなんて、英文学の専門家くらいしか使わないんじゃん?――

OEDという辞書の存在は知っていても、大半のイメージはこんなものではないでしょうか。でも、繰り返しますが、産業翻訳者にも間違いなく役に立つはずです。ためしに、

Updates to the OED

のページを見てみてください(こちらはサブスクライブしてなくても見られます)。今年4月だけでも、

Covid-19
infodemic
self-isolate/isolation
self-quarantine
social distancing

などが追加されています。

08:33 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 |

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