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2020.06.27

# 無料の辞書サイトでどこまでいける?

前回は、オンライン辞書のなかでもおそらく最も料金の高いサイトを取り上げました。そこで、今回は逆に

無料の辞書サイトで、どこまでまかなえるか

を考えてみます。オンライン辞書については、これまでも何回かご紹介していますが(参照:オンライン辞書サイトを比較してみた)、情報は毎回新しくなっているので、何度やってもいいでしょう。

なお、英辞郎とWeblioは取り上げていません。自己責任でお使いください ^^;

無料で使える辞書サイト

コトバンク

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(クリックで拡大できます。以下同)

国内の無料辞書ポータルとしては最大です。収録されている辞典・事典の一覧はこちら。更新情報も載せているので、辞書ポータルとしては良質と言えます。

【概要】
国語辞典と百科事典は充実しています。英語系は学習レベルのみ

【英語系コンテンツ】
小学館『プログレッシブ英和中辞典(第4版)』
小学館『プログレッシブ和英中辞典(第3版)』

プログレッシブの最新は英和が第5版(2012年)、和英が第4版(2011)ですが、学習辞典という目的からは問題ないでしょう。

(帽子屋からひと言)
学習英和としては悪くありませんが、さすがに、翻訳者として使う以上これだけではどうにもなりません。コトバンクは小学館系列のサイトなのですから、せめて『ランダムハウス』が入ってくれたら、それなりに翻訳者ご用達になると思うのですが……

【国語系コンテンツ】
小学館『デジタル大辞泉』
小学館『デジタル大辞泉プラス』
三省堂『大辞林 第三版』
小学館『精選版 日本国語大辞典』

大辞泉シリーズは、どちらもオンラインで更新され続けているので、版の表示はありません。『デジタル大辞泉プラス』は、

人物・企業・商品・文学や映画などの作品・作中人物・観光スポットなどを広く集めた「固有名詞に特化した辞典」

なので、映像とかエンタメ系の翻訳者には便利です。

『大辞林』も、最新は第4版(2019)ですが、翻訳者が使う国語の中辞典としては『広辞苑』より向いています。

『精選版 日国』は、なんで無料で使えるの? というラインアップですが、翻訳者が常用する国語辞典ではありません。

(帽子屋からひと言)
翻訳者に必要なのは、大~中規模の国語辞典よりむしろ小型国語辞典です。語法にうるさい『明鏡国語辞典 第二版』(大修館)や、現代日本語の相をよく反映している『三省堂国語辞典 第七版』『新明解国語辞典 第七版』(三省堂)などが別途必要です。

【百科系・現代用語系コンテンツ】
小学館『世界大百科事典 第2版』
ブリタニカ・ジャパン『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』
小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』
朝日新聞出版『知恵蔵』

百科系は、ほぼ十分という感じです。

その他、人名事典とか、各種のビジネス系用語辞典も収録されています。よくも悪くも、とりあえずまず調べてみるサイト、と位置付けておけそうです。


ルミナス英和・和英辞典

ご存じのように、研究社にはKODという有料の辞書サイトがあります。『ルミナス英和・和英』はそちらにも収録されていますが、なぜかルミナスだけは無料版もあります(明記されていないが、内容は第二版のはずです)。

(帽子屋からひと言)
無料で使える英語系のコンテンツは、以上で終わりです(Weblioには少しある)。三大英和辞典やリーダーズなど、翻訳者として必携と言えるメインの辞典は、オンラインだろうとインストール版だろうと、やはりお金を出してそろえる必要があります。

ここからしばらくは、英英辞典が続きます。


Collins Dictionary

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同じサイトで、COBUILD(学習英英)も、English版、American版も一度に見られるのが便利です。上の図は、私がよくCOBUILDの特徴を説明するために示す insight の例です。COBUILDの「センテンス定義」がなぜ英語学習者にとって、ひいては日英翻訳にも有益か、この例でおわかりいただけると思います。

If you gain insight or an insight into a complex situation or problem, you gain an accurate and deep understanding of it.

① 可算としても不可算としても使える名詞であること、② gainという動詞を使うこと、③ 後ろの前置詞には into を使うこと、という文法・語法まで、意味と同時にわかるわけです。

さらには、コロケーションとかトレンドといった情報も載っていて、情報はなかなか充実しています。

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(帽子屋からひと言)
英英の辞書サイトとして必ず押さえておきたい筆頭です。なお、しばらく前からEBWin4では表示できなくなっています。表示できないだけではなく、EBWin4自体が死んでしまうので、いったん[Web辞書の編集]機能で[Enabled]のチェックを外しておくといいでしょう。

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Cambridge Dictionary

辞書特集などでもあまり名前はあがってこないのですが、Cambridge University による辞書サイトです。イメージ的に古そうな印象があるかもしれませんが、ちゃんと新しい単語や語義も載っています。

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ちなみに上の例は、「プレスカンファレンス」の意味の presser です。現時点で、英和辞典にはほぼどれにも載っていません。

おもしろいのは、BUSINESS としてときどきビジネス系の語義が載っていること。

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予想以上に、産業翻訳にも使えるということです。

(帽子屋からひと言)
学習英英として、Cambridge Advanced Learner's Dictionary 3rd(CALD3)が手元にありますが、その内容をベースに新しい単語・語義が追加されているので、思いのほか重宝します。用例も豊富。なお、English-Japanese にも対応していることになっていますが、出てくる日本語は……まあ、期待できません^^


LONGMAN

macmillan dictionary

語義説明の流儀によって、お好みでどうぞ。個人的に、Macmillan の平易さはけっこう好きです。

(帽子屋からひと言)
Macmillan のほうは最近、新語に強くなりました……と思ったら、どうやら読者投稿による語義が載るようになったようです。これは鵜呑みにはできません。


Merriam Webster

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"Webster"という名前は、紆余曲折を経て、辞書を表す一般名詞になってしまいましたが、こちらはいわゆる「Webster の大辞典」(Webster's Third New International Dictionary)の伝統を継ぐ本家 Merriam Webster のサイトです。さすがに、新語対応が早い。内容は Collegiate 版に当たります


Merriam Webster Learner's Dictionary

Merriam Webster 版の学習英英です。学習英英といっても、Longman やCOBUILDより定義がネイティブ向けに近く、こちらのほうがしっくり来るときも、よくあります。

(帽子屋からひと言)
LogoVista から出ている『メリアム・ウェブスター英英辞典』は、上の学習英英に当たります。製品名称が非常によろしくない。また、上の2つとは別に、Webster's Third New International Dictionary に当たる Unabridged 版は、有料サイトとして公開されており、しかもオンラインで更新が続いています。第4版が出る見込みはまずないということでしょう。


Oxford Dictionary

ちょっと、入口が使いにくくなった印象です。ODE(Oxford Dictionary of English)に相当する無料版は、Lexicoという名前になりました。

LEXICO

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こちらも新語対応が早く、Thesaurus や Grammar へのリンクもあります。Oxford はもちろんイギリス英語のサイトですか、US にも対応しています。

(帽子屋からひと言)
Oxford系の辞書といえば青系、だったのですが、Lexico では基調が緑になりました。何があったのでしょうか^^


Wordsmyth

ご紹介するのは初めてです。しばらく前に見つけたのですが、一般の出版社系ではなく、Robert Parks さんという人が始めたプロジェクトから生まれ辞書サイトのようです。

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このサイトでおもしろいのが、検索フィールドの下にある
・Beginner's Dictionary
・Intermediate Dictionary
・Advanced Dictionary
というレベル選択の機能です。たとえば、同じく insight を[Beginner]で引いてみると、

definition 1: the power to understand deep meanings or truths.
definition 2: an instance of this power.

と定義されています。1と2の違いは、COBUILDが "insight or an insight" と説明していた可算/不可算の違いに当たります。レベルを[Advanced]にしてみると

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definition 1: the power of mind to grasp an essential meaning or truth.
definition 2: the understanding or knowledge of essential meanings or truths.

とだいぶ詳しくなります。こんな風に、レベルを変えて説明されていると多角的に把握しやすくなることがあるので、とらえにくい単語に遭遇すると、ときどき使っています。


ライフサイエンス辞書

名称とは違い、科学一般の語句に広く対応しています。

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英和・和英のインターフェースだけ使っていると、ただの用語集くらいにしか見えませんが、[シソーラス]に切り替えると、類語ではなくいろいろな関連用語が見つかります。また、[コーパス]にすると、

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膨大な数のコーパスを見ることができます。

(帽子屋からひと言)
『ライフサイエンス辞書』は、毎年EPWINGデータも販売されています。絶滅危惧種のEPWING仕様を応援したい方は、こちらの購入もご検討ください。


DictJuggler.net 辞遊人

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一見すると、古風な辞書ポータルといったインターフェースなのですが、ここにある「翻訳訳語」は、たいへん貴重な辞書です。詳しくは、こちらの説明をご覧ください。


以上、無料で使える辞書サイトについてまとめると、こういうことになります。

・英英は◎ 学習レベルから一般レベルまで、無料サイトだけでも十分。
・英和・和英は× 無料サイトだけではどうにもなりません
・国語は△ 大辞泉、大辞林は役に立ちますが、小型国語辞典は必要です。

02:04 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 |

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