# COVID-19、辞書界の対応
3月19日に退院して(参照:# 前々回のエントリ)1か月。
入院中から、新型コロナウイルスによる社会への影響はだいぶ深刻になっていたので、退院してからはもうすっかり自宅から外に出ない生活が続いています。
といっても、同業者の大半は元の生活と大差ない日常を送っているのかもしれませんが……(お子さんが家にいるようになった、という方は多そうですね)。
同業者のなかでも、私はフェローとかJTFとかで外出の機会は多かったほうなのですが、フェローはGW明け(その後延長されて5月なかば)まで休校が決まり、JTFの理事会などもすべてオンラインになったため、文字どおり「一歩も家から出ない」日々です。
■
「コロナウイルス」coronavirus という単語自体は、もう以前からあります。今回は「新型~」ですからね。では、最近よく見かける COVID-19 について、辞書界はどう対応しているのか、ちょっと調べてみました。
ちなみに、英語の coronavirus は三大英和やリーダーズ2などにかなり古くから載っています。日本語カタカナ「コロナウイルス」は、めぼしい国語辞典ではまったく採用例がなく、比較的新しい『広辞苑七』(2018年)と『大辞林 4.0』(2019年)で採用されていました(どちらも追い込み見出しの扱い)。
RNAウイルスの一つ。人に風邪の症状を起こす。エンベロープの表面にある突起が太陽のコロナのように見えるからいう。サーズ(SARS)‐コロナ‐ウイルスやマーズ(MERS)‐コロナ‐ウイルスなど。【広辞苑七】
新語辞典系では、『現代用語の基礎知識』の2006年版から「重症急性呼吸器症候群(SARS/サーズ)」の項に名前が見えます。
この病気の原因はSARSコロナウイルスとわかった。潜伏期間は2~10日で、死亡率は10%前後と高い。
では、COVID-19 のほうはどうでしょう。手元の英和・英英にはもちろん載っていません。こういうときこそ、オンライン辞書の出番です。
私の EBWin4 に登録してあるオンライン辞書をひととおり見た限りでは、以下のとおりでした(画像はそれぞれ拡大できます)。
◆Wiktionary(https://en.wiktionary.org/wiki/COVID#Translingual)
◆Cambridge Online(https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/covid-19)
◆Merriam Webster Online(https://www.merriam-webster.com/dictionary/covid)
◆Urban Dictionary(https://www.urbandictionary.com/define.php?term=Covid)
Webster はわりといつも早いのですが、Cambridge もなかなか検討しています。Urban は、これはもう何でもありというところで感心しないのですが、いちおう(英語圏での濫用ぶりがよくわかる資料ではあります)。
Oxford 系だと、無料版(ODEにほぼ相当)はまだですか、総本山たる OED は(この前、キャンペーン価格だったので契約しました)はちゃんと収録していました。
◆OED(https://www.oed.com/view/Entry/88575495、ただし有料)
語源なども詳しく載っていますし、最新の用例は4月7日の Times です。やはり、
有料サービスと無料サービスの違いがこういうところに表れる
ようです。
では、日本の有料サービスはどうでしょうか。
◆KOD(有料、URLは割愛)
和英辞典のEV(新語)として追加されていました。研究社さんも、なかなか仕事が早い。
ただし、英和のほうには「COVID-19」という見出しはありません。どうせなら連動して追加すればいいのに……。ただし、infodemic というなかなか興味深い単語の解説中に出ています。
◆ジャパンナレッジ(有料、URLは割愛)
こちらは、更新の早い『デジタル大辞泉』まで含めて、まだ立項がありません。全文検索してみると、『週刊エコノミスト』2020年3月17号の記事がヒットします。そう、ジャパンナレッジでは、『週刊エコノミスト』が読めるんですよ。「海外企業を買う /279 ジョンソン・エンド・ジョンソン ESG投資や新型コロナで注目」という記事の中でした。
『デジタル大辞泉』には、一刻も早く対応してほしいものです。
■
はたして世の中は、世界は、これからどうなっていくのでしょうね。今日の時点で、まったく予測がつきません。
わが国では、緊急事態宣言の発令からもうすぐ2週間。発令の効果が目に見えて表れてくるのかどうか。効果が出たして、それでまったく以前どおりに、というわけにはいくはずもなく。
世界的には、もう規制を緩めてみんなでゆるゆると免疫を獲得しようよ、という動きも出てきているようですね。何か月後かに、あるいは何年後かに、
この記事を笑いながら読み直せる日
が来ることを祈るばかりです。
05:52 午後 日記・コラム・つぶやき 辞典・事典 | このエントリ | コメント (0)
最近のコメント