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2019.08.01

# 「辞書のホントの使い方」、ちょっと詳しくご紹介

先日お伝えした翻訳フォーラム・レッスンシリーズ#14「辞書のホントの使い方」ですが、どんな内容になるのか、ちょっとだけ具体的にご紹介します。

本日時点で、すでに定員の3分の2くらい席が埋まっています。直前枠(9/20~)もありますが、なるべくお早めに^^

 

 

たとえば、5月のシンポジウムや先日の大阪でのセミナーで井口耕二さんが例に出した

millions of

は、いわゆる三大怪獣英和大辞典ではどうなっているでしょうか。

『研究社 新英和大辞典第6版』(以下、「新英和」)

3 [pl.] 多数, 無数. millions of books 無数の本.

『ランダムハウス英和大辞典 第2版』(以下、「RHD2」)

3 《millions》million で表される数量[額],100万台
▶ 100万以上10億未満:
His fortune was in the millions of dollars. 彼の財産は何百万ドルにものぼった.

『ジーニアス英和大辞典』(以下、「G大」)

[語法]
(1)数詞または数量詞がつく場合も -s をつけない( →hundred [語法](1)): two ~ 200万 / several ~ 数百万.
(2)端数のあるとき及び名詞を修飾するときも -s をつけない: six ~, three hundred and five thousand 630万5千.
5 [~s of ...] 何百万という…;((略式))非常に多数の…(→hundred 9)∥Fossil fuels are called nonrenewable resources because it takes millions of years to replace them. 化石燃料は回復するまで何百万年もかかるので回復不可能資源と呼ばれている. 

この例だけでも、三大怪獣英和の特徴がよくわかります。

「新英和」の売りは、「バランスのよさとピンポイントの精度」です。この3つのなかではいちばん情報量が少ない。にもかかわらず、millions ofの訳としては、不正確になる可能性がある「何百万の」ではなく「無数の」を載せている。この的確さが新英和です。だから、私は「ひとまず引く」ときにはまずここから引きます。

「RHD2」で目を引くのは、なんといっても「100万以上10億未満」という注釈でしょう。かつては専門用語の多さも身上のひとつでした。さすがに少し古くはなりましたが、今でも基本的な専門用語については頼りになります。それも含めて「語義分類と事実の解説の細かさ」がRHDの特長です。たとえば、他の辞書が5項目に分けている単語がRHD2では8項目というように、分け方が細かい。millions ofに対するこの注釈も、細かい解説の一例です。

「G大」では、他の大英和にない「語法」情報が光ります。ジーニアスは、学習用の『ジーニアス英和辞典』が先に編纂され(このとき、業界に先駆けて本格的にコーパスが使われました)、それをふくらませてG大が作られました。そのため、大英和でありながら、学習辞典のような情報が豊富に載っている。加算と不可算の記号を名詞すべてに付けているのも、G大だけです。

三大英和については、これだけ押さえておくだけでも、使い分けができるようになるはず。

次は、英英辞典のCOBUILD。

セキュリティの文脈でよく出てくる

vulnerability

という単語。語法に詳しいG大を見ても、[U] つまり不可算という情報しかありません。が、COBUILDを引いてみると、形容詞vulnerableの派生語として載っているだけですが、ちゃんと使い方がわかります。

少し古い版(DAYFILER搭載版など)だと、N-VARというラベルが付いています。最近の版(オンライン版)では、variable nounがこれに当たり、どちらも「基本的に不可算だけど、加算にもなる」名詞というラベルです。念のために、COBUILDの凡例(参考記事:# COBUILDの凡例はこちら)を見ると、こう説明されています。

N-VAR
A variable noun typically combines the behavior of both count and uncount nouns in the same sense (see N-COUNT, N-UNCOUNT). The singular form occurs freely both with and without determiners. Variable nouns also have a plural form, usually made by adding -s. Some variable nouns when used like uncount nouns refer to abstract things like hardship and technology, and when used like count nouns refer to individual examples or instances of that thing, e.g. Technology is changing fast ... They should be allowed to wait for cheaper technologies to be developed. Other refer to objects which can be mentioned either individually or generally, like potato and salad : you can talk about a potato, potatoes, or potato.

http://www.sanseido.biz/main/Dictionary/Hanrei/CobldEJ.aspxより、赤字は引用者)

語法については、最終的に英英の学習辞典も忘れずに確認したい、という例でした。

最後は、これも英英辞典ですが、版が変われば情報も変わるという話。

たぶんどの電子辞書端末にも入っているODEで、

compromise

という単語を引いてみてください。あ、動詞のところだけ見ればOKです。

ちなみに、カシオの電子辞書端末だと、ODEは今でも「改訂2版」のようです。DAYFILERの最終モデルあたりでは第3版が採用されています。あ、そうそう。ODEとOEDの違いはご存じですよね?

では、今度はオンライン版のOxford Dictionaries(https://www.lexico.com/en)でも引いてみて、内容を見比べてみてください。

語義の分け方なども変わっていますが、注目すべきはここです。オンライン版にしかありません。

3.1 Cause to become vulnerable or function less effectively.
‘yo-yo dieting can compromise your immune system’
‘last month's leak of source code will not compromise your IT security’

https://www.lexico.com/en/definition/compromiseより)

「危うくする」という元々の意味が、システムとかコンピューターなどについて使われるようになった用法です。「侵害する」とか「侵入する」と訳されることもありますが、まだ載っていない辞書がほとんどです。『リーダーズ第3版』には、「危殆化する」などという特殊な訳語が載っています。

これは、同じ辞書でも版が新しくなれば情報がどんどん変わるという例です。

 

いかがでしょうか。

ほんの2例だけですが、今回のセミナータイトルに付けた「大辞典・学習辞典・英英辞典はここを読め」という副題の意味を、ちょっとは感じてもらえたのではないかと思います。

ということで、

・具体例で、各辞典の主な特徴をつかむ

・各辞典の凡例を知る

・われらの味方「うんのさん」の用例を使いこなす

・無料で使えるEPWING辞書「WordNet」を使いこなす

・国語辞典で日本語を調べるとき、読み取るべき情報を知る

などなど、濃~い内容でお届けする予定です。

01:23 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 |

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