# 『翻訳事典 2019-2020』がすごい!
全体にすばらしいコンテンツぞろいの今回、特に話題になっているのが、p.33からの特集記事
●「機械翻訳と人間翻訳者
です。
業界全体が機械翻訳(とその後処理としてのポストエディット)一色になろうとしているなか、この特集記事は、その大きなうねりに貴重な疑問を投げかけています。
なかでも、
「ニューラル機械翻訳 翻訳者の目で検証してみよう」(高橋さきの)
「私が考える「翻訳」 機械翻訳+PEと翻訳の違い」(井口耕二)
の2本には、同業者の多くが感動し、歓呼の声をあげています。
今回の「翻訳事典」、なかでもこの機械翻訳特集がこれだけ話題になっているのは、記事のすばらしさもさることながら、そもそも機械翻訳をこういう方向性で取り上げようとしたアルクの、つまりは
編集人の佐藤直樹さん
の方針も大きかったと言えます。
毎年この「翻訳事典」を編集しながら、長年にわたって翻訳業界を真摯な視線で見つめてきた佐藤さん自身が、機械翻訳をめぐる昨今の流れに疑問を感じ、編集者として、出版人として何らかの一石を投じずにはいられなかった---そんな思いが誌面の端々から伝わってくるからこそ、その思いに共感が集まっているのだと感じています。
翻訳者志望の方には、p.45からの特集
●「翻訳者志望者への 直言、助言、愛のムチ」
も必読です。実務翻訳は豊田憲子さん、出版翻訳は田内志文さん(これはかなり珍しい!)、そして映像翻訳はJVTAの新楽直樹さんが担当。ありがちな「あなたも翻訳者になろう」的な内容ではなく、今の翻訳業界をしっかり見据えたうえでの、貴重なアドバイスになっています。
そのほかの記事も、掛け値なしに、読み応えたっぷりです。
●新潮社「翻訳校閲ゼミ」レポート
私も聴講した回ですが、実によくまとまっています。
●辞書をめぐる冒険 レキシコバトル
十人十色が9/8に開催したイベント「辞書をめぐる冒険 Part2」のレポート。私も出てきますが、そんなことより、ほかの登壇者にご注目ください。見坊行徳さん(国語辞典マニア)、和爾桃子さん(出版翻訳者)、関山健治さん(辞書研究者)、大久保克彦さん(言わずと知れたEPWINGジェダイ)、土部隆行さん(インドネシア語翻訳者)
いま思い返しても、よくこれだけ贅沢なメンバーが集まったと思います。簡単ですが、そのときの様子を感じとっていただけるはず。
●フリーランスなら知っておきたい税金のこと
昨年、井口富美子さんと庄野彰さんが登壇したJTFセミナーのレポートです。これから個人事業者になろうという人は必読。
●翻訳で活きる人 ヒト ひと
いろんな同業者が登場します。フェローで私のクラスも受講したことがあり、私なんかよりずっと活躍していらっしゃる方。いつも元気な女性の同業者も何人か登場します。
字幕翻訳の岡田壮平さんとは、昨年ゆっくりお話しする機会がありましたが、こうして活字になっているのはうれしいかぎり。
●特別付録DVD
今回の大きい目玉のひとつは、翻訳事典として初のDVDコンテンツが付いたこと。
「プロ翻訳者の仕事場」では、越前敏弥さんの仕事環境や仕事のしかたをじっくり見ることができます。
「動詞のパワーを全開に!」には、日英翻訳でおなじみの遠田和子さんの講演がそのまま採録されています。
そして、「公開! 辞書ソフトの使い方」は、私がEBWin4の使い方を動画付きで紹介したもの。
……なのですが、ご覧になった方はおわかりのように、画質があまりよくありません。私の手元にはもっと画質のいいファイルがあるんですが、DVD用に変換すると、どうしてもこうなっちゃうんだそうです。
かろうじて画面の字は読めるので、多少なりともお役に立てばいいのですが。
●巻頭マンガ「ススメ! 翻訳ガール」
DVD付録と同じくらい、あるいはそれ以上に新機軸だったのは、この巻頭マンガかもしれませんね^^
まあ、なんというか……。私も驚きましたw
ムックは、書籍と違って基本的に増刷がありません。翻訳事典のバックナンバーは今でも買えますが、ことによると今号は売り切れという事態も考えられます。お買い求めは、ちょっと急いだほうがいいかもしれません。
【2/2 追記】 最高で59位を記録しました! Amazonでは品切れになったようです
03:34 午前 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | URL
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