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2019.01.25

# 柳瀬尚紀『辞書を読む愉楽』

個人的にまだ柳瀬尚紀ブームが続いていて、今年に入ってから最初にAmazonで注文したのはこれだった。

柳瀬氏は2016年7月に73歳で亡くなったが、この本に収められているのは、『本の旅人』(KADOKAWA)に1995年11月から2003年1月まで連載していたエッセイ。

タイトルどおり、毎回必ずなんらかの辞書に言及があるので、この本を起点に、また次々と辞書を買ってしまう。とても危険な一冊だ。


辞書の話といってもスゴいのは、連載当時の最新と言える電子版もちゃんと使っているところ。


当時、柳瀬氏は52歳~59歳。

今の自分と大差ないが、氏は1943年生まれで、世代がまったく違う。戦中生まれでありながら、1995年には当たり前のようにコンピューターを使っていらっしゃる。知人に作ってもらったPCに、7連だか8連だかのCD-ROMドライブをつないで電子辞書を使いまくっていたのだそうだ。

だからこのエッセイには、まだ書籍版しかなかった『日国』のような定番だけでなく、OED のCD-ROM版 ver.3.0 などまで登場する。リーダーズのほかにリーダーズ・プラスもそろっていて、国語辞典だと大辞林とか大辞泉も次々とCD-ROM版が出始める時代。その検索性の愉しさに感心する様子が、たびたび描かれている。

それどころか、氏がこの頃使っていたとして紹介されるCD-ROM辞書のなかには、今では手に入らないタイトルまで並んでいて逆にうらやましいくらいだ。


もちろん、辞書の話に限らず、氏のエッセイは読んでいて愉しい。

ちなみに、「インターネット」という記事(1996年11月号掲載)には、

英語では the Internet と、定冠詞がついて頭文字は大文字で記される。

と書かれている。IT系の文書ではだいぶ前から小文字表記も珍しくなかったが、小文字表記が正式に認められたのは、わりと最近の話だ。


柳瀬尚紀は競馬が大好きだったので---東江一紀さんもそうだったらしい---競馬ネタになるとあまり楽しめないのは惜しい。今からでも覚えようかしら。


将棋ネタも多くて、2001年11月号掲載の「定跡」という話には、藤井猛竜王(当時)という名があった。将棋に疎い私は、「最近話題の、なんだっけ、藤井聡太くんか。あれのお父さんかしら」と思って調べてみたが、聡太くんは祖父母に将棋を習ったらしい。


「チューインガム」というエッセイには、イチローが大リーガーとして登場する。2001年6月号の掲載で、野球にもあまり詳しくない私などは

「え、イチローって、あの頃もう大リーグにいたの? もう18年たつのに?」

と思ってしまったのだが、調べてみたら、鈴木一郎は2001年4月にマリナーズで初出場していた。なるほど。


というわけで、どこを読んでも楽しい柳瀬尚紀。


09:44 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば |

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