# 柳瀬尚紀の『ことばと遊び、言葉を学ぶ』
先週末に買って読んだエッセイ本を、もう一冊ご紹介。
久しぶりに柳瀬節を読みました。
私の好きな翻訳者のひとりで、エッセイも昔から好んで読んできましたが、最近しばらくまじめに追っていなかったので、うかつにも、『日本語は天才である』というのが出ているのを知りませんでした。
これも慌てて注文しましたが、本書でも
日本語の豊かさを信頼していて、探せば必ずぴったりの語が見つかるという信念があるからです。
という言葉が、とても印象的でした。
さらに、あとがきではこうも書いています。
私は、翻訳というものについて、翻訳者の個性というよりは、翻訳の言葉が日本語のほうから降ってきてくれるものだと考えるようになりました。翻訳をするときには、私は、日本語を通訳しているだけなのです。
英語も日本語もあれほど自由闊達縦横無尽変幻自在空前絶後に操れるようになって初めて出てくる言葉ですね。ずっしりと、重みがあります。
柳瀬氏の訳業は、ルイス・キャロルからロアルド・ダール、ジェイムズ・ジョイスまで幅広く、私もさすがに『ユリシーズ』は読んでいませんが、たとえばこんな作品で手軽に接することができます。
19世紀イギリスのナンセンス作家、エドワード・リア。たぶん、日本には柳瀬氏が紹介したと言っていいはず。
伝承童謡 Nursery Rhymes(マザーグース)から、ルイス・キャロル、そして20世紀的痛烈ギャグ集団モンティ・パイソンまで連綿と続く、英国ナンセンスジョークの系譜に位置する重要なひとりです。
そして、柳瀬氏が、文字どおりぼろぼろになるまで使い込んだというのが、
『熟語本位 英和中辞典』
言わずと知れた、斎藤 秀三郎編の名辞書です。今では、CD-ROMも付いた新版が出ています。
今までなかなか買えずに--むかし書籍版を持っていたので、正確には買い換えられずに--いたのですが、これを機に購入に踏み切りました。
だからといって、柳瀬尚紀の真似ができるわけではとうていありませんが、氏がほれ込んだ辞書に、あらためて触れてみたいと思いました。
■
ところで、本書『ことばと遊び、言葉を学ぶ』のイラストは、古川タクが付けています。
って、ご存じでしょうか。知る人ぞ知るアニメーション作家なのですが、日本のいわゆる「アニメ」ではないアニメーション作品の世界の人です。
こんな感じの絵、見たことありませんか?
「みんなのうた」、などでもときどき見かけます。
エドワード・リアは、イラストも自分で描くのですが、古川タクの絵はちょっとリアの絵にも通じるところがあります。
10:08 午後 書籍・雑誌 翻訳・英語・ことば | URL
この記事へのコメントは終了しました。
コメント