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2018.02.09

# 『図解 英語基本語義辞典』と『図解 英単語イメージ辞典』

『図解 英語基本語義辞典』という名辞書がありました。

1989年に桐原書店から出版されました(私が持ってるのはこれ)。今は絶版。

まだ中古は出回っているものの、10,000円を超える高値が付くことも珍しくありません(この記事の執筆時点で4,000円ちょっとから、上は30,000円くらいまで)。

その後2012年には、国際語学社というところから再版されましたが、

こちらも今は中古だけのようです。

この辞典の前書き(pp.vii~xi)で、「なぜ語義の図示・図解なのか」という問いに著者の政村秀實氏は次のように答えています。

簡潔に言えばイメージだからと答えたい.ことばのイメージは,意識して頭の中に描かれるものではなく,人が生まれてから現在に至るまでの生活の実体験を通してつくられるものである.ところが外国語の場合は,ことばと実体験を結ぶ場がきわめて少なく,このために自然な状態でイメージを育てることが非常にむずかしい.

著者には、こういう「イメージ」を中心にした著作がいくつかあります。そして、この2月にはこういう辞典が出ました。

『図解 英語基本語義辞典』の後継なのだろうと予測していましたが、大修館書店のサイトで見本ページを確認できたので、さっそく購入しました。

でも、結論から言うと、

同じ著者の系譜には違いないが、かなり別もの

です。使い途はあるのでもちろん損をしたとは思っていませんが、『基本語義』と比べると、がっかり感が大きかったことも否めません。


まず、収録語数とボリュームがだいぶ変わりました。

『図解 英語基本語義辞典』(以下、『基本語義』)は500語(辞書には書かれていない。Amazonの商品説明より)で、本文は483ページ。1ページ1単語が原則です。

『[図解]英単語イメージ辞典』(以下、『イメージ辞典』)は1,416語で、本文は708ページ。1ページ2単語で、例外はなさそう(708 x 2 = 1416)。


これだけ見ると、内容が充実したように見えるのですが(そういう面はもちろんある)、肝心の

図示・図解

の部分がかなり変わってしまいました。また、ページ数は増えた一方で語数が3倍に増えた分、1単語あたりの例文は減っています。


先ほど冒頭を引用した「なぜ語義の図示・図解なのか」を見ると、『基本語義』の図示・図解は、以下のように説明されています。

A.分析的方法

(1)語源の図示・図解

(2)意味の物理的図解

B.感覚的方法

(1)語源のイメージ図示

(2)典型的場面の具体的な図示

たとえば、A(1)の例がembarass。

1802091gogiembarrrass

A(2)の例がanother。中高生にとっても、重要語のひとつです。

1802092gogianother

また、B(1)例がrunです。

1802093gogirun


一方、『イメージ辞典』のほうは、「はしがき」にこう書かれています。

絵本のような英語の辞典をつくってみたいという思いが編集部と通じ合い,本書への取り組みが始まりました。すべての見出し語(1461)語にその語義イメージを描き出すこと(一語一絵).これが本書の大きな特徴です。
(赤字は引用者)

つまり、同じ著者ではあるが、方針が違っているらしいということです。

たとえば、上にあげたembarrassはこうなりました。

1802094imageembarrass

たしかに、ただの「絵本」です。embarrassingな場面を絵にしただけで、『基本語義』のように「語源の図示・図解」になっていません。ただし、

語源と語義の変遷

については『イメージ辞典』のほうが充実しているので、図示・図解ではなく文字情報を中心として「語源に基づくイメージ辞典」として利用するのであれば、こちらも買い、と言えます。

ただし、『基本語義』では

1802095gogicommit

こういう多面的だった図解が、『イメージ辞典』では

1802096imagecommit

こんな一面的な絵になってしまいましたし、『基本語義』に載っていた

1802097gogireach

reachとarriveの違いを示した図もなくなってしまいました。

やっかいな前置詞 across も、

1802098gogiacross

これが、

1802099imageacross

このように変わってしまい、語源解説は詳しいのですが、図示・図解で直感的につかめるという特長は弱くなってしまいました。


ただし、reachそのもの、あるいはlikelyやrunといった語、つまり『基本語義』でBの(1)に分類されていた単語については、わりと『基本語義』時代のままのようです。たとえば、

18020910imagerun

run などは、『基本語義』よりいい絵ですし、語源と、そこからの語義の展開に関する解説はずっと充実しています。

『基本語義』の分類Aにあたる単語の図解は、いろいろとかなり残念です。

ignore、insult、outsideなど、『基本語義』になかった単語も1,000語近く追加されましたが、ただの「挿絵」です。

explainやpowerのように『基本語義』にあった単語も、ただの「挿絵」になってしまいました。


ということで、『イメージ辞典』のほうが詳しくなった情報も多い反面、旧著と比較してしまうと、かなりもの足りない。両方あれば、いろいろ補完しあっていいかもしれません。

04:51 午後 翻訳・英語・ことば, 辞典・事典 |

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