# 『日本人のための日本語文法入門』
私たち翻訳者は、日本語文法の専門家になる必要はありません。
必要なのは、ちゃんとした日本語を書くために必要な最小限の文法概念を理解・整理しておくことです。
これまでも、そんな観点から日本語の文法に関する本を紹介してきましたが、これもかなりおすすめです。
実は、同じ著者のこちらを先に買っていて、
授業で使ったり、紹介したりしていたのですが、こちらは言ってみれば演習編でした。まずは、『日本人のための日本語文法入門』をサクッと読むほうがいいでしょう。
★私が授業で紹介して、『考えて、解いて、学ぶ日本語教育の文法』のほうを先に買っちゃった人、とっつきにくいと思ったら、まず『日本人のための日本語文法入門』から始めましょう。順番が逆になっちゃって、ゴメン!
日本語文法って、いろんな学派・流派があって、言ってることはいろいろ違ってますよね。日本語文法の専門家だったら、お互いに異論反論あるのでしょう。でも、素人である私たちは、納得できる説を見つけて---イイトコ取りして---自分の仕事に活かせばいいんじゃないかと私は思っています。
日本語の文法議論のなかでも、特に議論の的になるのが、たとえば「主語」をめぐる考え方や、「は」と「が」の説明です。テンスとアスペクトについては、ぜひ知っておきたいところです。
この本は、そういう基本について、けっこう納得できました。
目次
第1章 学校で教えられない「日本語文法」
第2章 「主題と解説」という構造
第3章 「自動詞」と「他動詞」の文化論
第4章 日本人の心を表す「ボイス」
第5章 動詞の表現を豊かにする「アスペクト」
第6章 過去・現在・未来の意識「テンス」
第7章 文を完結する「ムード」の役割
第8章 より高度な文へ、「複文」
主語については、「ない」とするのではなく、ひとまず忘れて「述語」を中心に考え始める。述語以外は、主語も含めてすべて、述語に係っていく成分と考える。そのなかに必須の成分と必須でない成分がある。
主語より大切なのは「主題」で、日本語の文は「主題」とそれに関する「解説」で構成されている。「~は」というのは、主題化のための表し方である。
日本語で、自動詞と他動詞とはどういうものか。そこからつながって、ボイスにはどんな機能があるのか。
「あげる」「くれる」「もらう」はどんなはたらきをしているのか
日本語のアスペクトとテンスはどうなっているのか。絶対時制と相対時制も知っておくと便利。
日本語におけるムードとはなにか。
「複文」をどう考えればすっきりするか。
「入門」と題した一般向け新書なので、随所に不足を感じる部分もありますが、その場合は『考えて、解いて、学ぶ日本語教育の文法』を併用するといい感じです。
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