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2017.09.01

# いろいろな類語辞典(日本語) - 書籍版

続いて、書籍版です。手元にある類語辞典の一部を並べてみました。

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本棚、圧迫されますよねぇ。自炊も考えてはみるものの、書籍としての辞書というモノに愛着があって、なかなか踏み切れません。せめて、索引だけでもEPWINGデータにしたい。

以下、それぞれの特徴を説明しながら、入手状況についても触れています。



『講談社 類語辞典』

オーソドックスな分類型の類語辞典です。以下は、「帰る」を引いたところ。「帰る」に関連したいろいろな言葉とその説明が、細かいカテゴリごとにグループ化して表示されています。

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たくさんの類語のなかから使いたい言葉を選ぶときに使います。その点は、電子版が手に入る『日本語大シソーラス』と同じですが、語釈や、ときには使い分け情報まで載っている点が便利です。書籍版が、ふつうに手に入ります。

『使い方の分かる 類語例解辞典』 小学館

同じく分類型で、実際には索引から引きますが、こちらは類語をたくさん並べるというより、書名どおり「使い分け」の説明に重点が置かれています。

そして、実は書籍版を買ってしまってから、電子版が手元にあったことに気づいたタイトルでした。この辞書は、初版が1994年ですが、わりと早くから電子化の波に乗っていたようです。かつては、EPWING版もありました。

私の手元にあるひとつが、セイコーインスツルの初期PASORAMA対応モデル、「SR-G9003」です(まだ、中古で買えます)。

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もうひとつは、かつてMicrosoft Officeに付属していたBookshelf 2.0です。こちらは、中古を狙っているとときどき出回ります。

関連リンク:side A: # カシオXD-N10000 - 『日本国語大辞典』とBookshelf

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Bookshelf版のほうが、だんぜん見やすいですね。SR-G9003付属(DAYFILERシリーズの前)のPASORAMAは、インターフェースがまだまだ未熟でした。

このように、『使い方の分かる 類語例解辞典』の場合は、同じく「帰る」を引くと、「帰る/引き返す/戻る」の使い分けが、マトリックスも交えて示されます。

私は主に、翻訳答案を添削するとき、微妙に違う言葉を修正するとき、その根拠にこういう使い分け情報を利用しています。添削するときの根拠がほしい---これも、紙の辞書が増えている大きい理由のひとつです。

『使い方の分かる 類語例解辞典』でいいのは、「だが/しかし」のような機能語も出ていること。講談社には載っていません。

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書籍版は、ふつうに入手できます。

『現代語古語類語辞典』 三省堂

最近手に入れたこれ、なかなかおもしろい発想で編集されています。

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ある言葉を引くと、現代語から古語まで(時代を分けて)類語が載っているという変わり種。分類型ではなく、主見出しの五十音順です。

たとえば、「帰る」を引くと、

[近代](明治から昭和20年まで) というラベルで、「回帰、ひきあげる、リターン」、[近世](江戸期)として「とんぼがへり、まひもどる」、[中世](鎌倉・室町期)として「帰還、帰着、とってかへす」などが載っています。

必然的に、漢語だけでなく、カタカナ語や、

和語もたくさん載っている

というのが特長です。そのうえで、「京都に帰る」のは「帰京、帰洛」とか、「行くことと帰ること」は「ゆきつもどりつ、往返」などと、関連表現も載っています。

また、たとえば「ころがる」を引くと、「ころがるさま」として

[近代]ごろごろ。[近世]すってんころり。[中世]ころころ。ころり。ごろり。

などと擬態語まで載っている。「古語」と銘打ってありますが、いま使えない言葉とは限らないのです。

ページをめくっていると、」楽しくてついつい寄り道してしまう」タイプの辞書と言えます。これも、書籍版をふつうに購入できます。

『表現類語辞典 新装版』 東京堂出版

おもしろい辞典をたくさん出している東京堂出版ならではの一冊です。書籍版が手に入るはずです。

編者のひとり藤原与一による「序」が、やたらと熱い。

これも、主見出しの五十音で引けるタイプで、それぞれの語の説明文が徹底しています。類語から言葉を選ぶという使い方ではなく、じっくりと

それぞれの語義と向き合う

ための辞書という感じです。

たとえば「かなり」という副詞を引くと、主見出し「かなり」の大項目のなかに、「かなり、だいぶ、相当、ずいぶん、よほど、なかなか」が載っていて、程度の大きさを中心に説明されています。

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「だいぶ」は、「<かなり>と近い使い方をする」とか、「相当」は「前の二語よりもかなり程度が大きい場合を言う」、「ずいぶん」は「前の三語に比べて、程度のよりはなはだしいさまを言う」とか、それぞれの類義語どうしが比較されている点に注目です(ただ、それが間違いなくそうかどうか、自分の感覚と合うかどうかは別)。

用例は、すべて近代文学から採られているのが特長的。

『日本語 語感の辞典』 岩波書店

類語辞典とはちょっと違うかもしれませんが、ひとつ前の『表現類語辞典』をもっと推し進めたような辞書です。

たとえば上のスクリーンショットは「永遠」の説明ですが、長嶋茂雄の引退スピーチを引用しながら、

時を超越した栄光を称えることばとしては、「永久」より「永遠」のほうがさらにふさわしく耳になじむとする日本人の語感を物語る事実である。

と説明していて、なるほどと思わせます。書名どおり、「語感」を説明する辞書というわけです。編者・中村明の個人的な語感に寄りすぎていると考える人もいるようですが、これも読んでいて楽しい辞書です。

書籍版が、ふつうに入手可能。

『日本語類義表現 使い分け辞典』 研究社

いわゆる類語辞典のイメージとは違います。「帰る」(動詞)とか「かなり」(副詞)のような中心的な語彙ではなく、助詞や助動詞、接続詞などの使い分けを詳細に説明しています。

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たとえば上のスクリーンショットは、「~なら、~たら、~ば、~と」という、おなじみの使い分けに関するページ。

ただし、説明に使われる文法用語が容赦ないので、読み解くのはなかなか苦労です。「語感」のような本ではなく、むしろ徹底的に

理屈で使い分けを説明

するタイプの本と言えそうです。

このほか、国語辞典で類語の使い分け情報が充実しているのが、

『小学館 日本語新辞典』

です。

判型が、国語の小辞典ではなく中辞典、つまり広辞苑などと同じなので―厚みはそこまでない---、さらに本棚を圧迫します。

03:25 午後 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 |

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コメント

禿頭帽子屋様こんにちは。talonと申します。
二度目の投稿となります。

私は完全版Bookshelf(以下BS)とBS Basicの二種類があるのを知らずに後者の2.0版を購入しました。
完全版とは違い、Basic版の方は国語・英和・和英の三冊はフルで使えますが、
それら以外のAHDや類語辞典などはプレビュー版でフルでは
使えませんでした。
中古で数百円ですが、もう少し調べてから購入してもよかったかなとも思いました。

ちなみにBS 2.0(Basic)はプログレッシブ英和中辞典第3版、
一つ前ヴァージョンのBS 無印 (Basic)には同中辞典第2版が
収録されていました。
2版にあって3版に掲載されていない単語の語義も見かけましたので新旧見比べるのも楽しいものだと思い、今は両方とも私のPCに格納されています。

長文失礼いたしました。

投稿: talon | 2017/09/04 22:23:35

talonさん、コメントありがとうございます。

はい、Bookshelf(完全版)とBookshelf Basicは別ものです。

私が持っているのはBookshelf 2.0と、Bookshelf 3.0です。

Basicのほうは、こちらのWikipediaページを見ると収録コンテンツがわかります。https://ja.wikipedia.org/wiki/Microsoft_Bookshelf_Basic

完全版Bookshelfのほうは2.0までしか出なかったはずで、それ以前のバージョンにいったいどんなコンテンツが収録されていたのか、私も知りません。

完全版もBasicも、ヤフオクなどにときどき出回るようです。


> 今は両方とも私のPCに格納されています。

ですよね。版の違う辞書も、できるだけ共存させておくとけっこう楽しめます。

投稿: baldhatter | 2017/09/05 10:07:27

禿頭帽子屋さま、この度は詳しい情報をありがとうございます。

Bookshelfは2.0まではepwing化が可能なようなので、
文字通り非常に時間がかかるそうですが、環境が整えば
試してみようかなと思います。

それでは失礼いたします。

投稿: talon | 2017/09/05 19:34:21

> Bookshelfは2.0まではepwing化が可能なようなので

それって、このページのことでしょうか?

http://bookselfbasic.seesaa.net/article/182865763.html

こちらに書いてあるのは、Bookshelf Basicみたいです。私もBookshelf 2.0で試したことがあるのですが、うまくいっていません。

投稿: baldhatter | 2017/09/05 20:49:48

あ、そうか。Basic 2.0をお持ちだから、↑の情報で変換できるのですね。

投稿: baldhatter | 2017/09/05 21:14:18

禿頭帽子様
何度もお返事ありがとうございます。
言葉足らずで申し訳ありません。
そうです。私はそのサイトのソフトで変換予定です。

ただ、ひょっとすると完全版Bookshelf2.0のepwing化には
http://kazuo.fc2web.com/dic/ddwin2.htm
のページで
[プログレッシブ (Progressive) 関連]
の項目にあるリンク先ページのソフトが使えるかもしれません。
(直接リンクを貼ると書き込めない様ですので……)

ご参考になれば幸いです。

それでは失礼いたします。

投稿: talon | 2017/09/05 23:50:49

talonさん、引き続き情報ありがとうございます。


実は、ここのやりとりをしながら、先ほどヤフオクで「Basic 2.0」(のはず……出品者が間違ってなければ)を150円で落としたところです。

届いたら、さっそくEPWING化を試してみる予定です。

投稿: baldhatter | 2017/09/05 23:59:45

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