# 最近買った国語辞典たち ~ すべて書籍版
紙の国語辞典が3冊増えました。
本棚の整理と入れ替えが済んでいないので、PCデスクのすぐ横に積んだまま使っています。
きっかけは、この本でした。
言うまでもなく、「日国」こと『日本国語大辞典』の編者である松井栄一(まついしげかず)さんが、祖父~父~ご自身という三代にわたる辞書一家のことと、日国の完成に至る経緯を紹介した本。
『舟を編む』で感動した方は、その次に読むといいかもしれません。
この経験を踏まえ、日本語を学ぶ外国人に役立つようにと、配慮を加えた新しい辞書の第一歩として、私は『日本語新辞典』を二〇〇五年に刊行しています。
松井先生の『類語使い分け辞典』は持っていましたが、不勉強なことに、この辞書のことは知らなかったので、さっそく買ってみました。
辞書その他のセミナーで、私はよく「(英日翻訳で)日本語を書くとき、
自分の言葉選びに根拠を持てる
ようにしよう」という話をします。ところが、一般の国語辞典は、類語や使い分けなどの情報、それがわかる用例が十分とは言えません。そういう情報を得たければ、
外国人相手の日本語教師向けの参考書
が便利。ということもセミナーでよく紹介しています。スリーエーネットワークの一連の本などです。
『日本語新辞典』は、そういう「現代日本語の使い方についての情報をなるべく載せよう」という方針で作られました。
類語情報は、先に挙げた『類語使い分け辞典』とかぶっている部分もありますが、収録されているのは『類語使い分け辞典』が501グループ、約2400語。『日本語新辞典』が約1,500グループ、約4,500語と、だいぶ多くなっています。
たとえば、「特に/殊に/とりわけ」の使い分けなどは『日本語新辞典』にしかありません。「議論/論議」の使い方なども、かなり詳しく説明してくれています。
「相棒」の項に、「◆相手が目上の場合はあまり使わない」などの補足があるのも助かります。ちなみに、『新明解』には、「上下の意識なく一緒に仕事をする仲間」と書いてありますが、これはあくまでも意識の問題で、実際に「相棒」と呼ぶかどうかという「用法」を説明した情報ではないと思われます。
もう少し使い込んだら、改めてレポートを書くかも知れません。
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他の2冊は、先週の土曜日に久しぶりにJAT(日本翻訳者協会)の忘年会に出かけたとき立ち寄った八重洲ブックセンターで見かけた1冊。
そして、あとからネットで買った1冊。
副詞や形容詞について、すべて「プラスイメージかマイナスイメージか」という解説が付いています。
みるからに[見るからに]
【解説】外見から典型的であることを推量する様子を表す。ややマイナスイメージの語。
こんな具合です。
副詞と言っても、広く連用修飾語が収録されているので、「ちかって」のような動詞の連用形とか、「ただもう」のような複合語も載っているところが◎です。
また、索引もかなり工夫があって、どんな人が使うかという観点や、どんな心理で使うかというシチュエーションから引くこともできます。
比較表現を訳すときにできれば使いたくない「より~」については、こんな例文と解説が載っています。
④よりよい地球の未来を目指します。(CM)
⑤計画がより具体化したところで改めて検討する必要がある。④のように次にくる形容詞との結合が強くなると、一語の形容詞として扱われる。
⑤は信仰を表す動詞に係る修飾語の用法である。かなりかたい文章語で公式の発言や報道に用いられ、くだけた会話には登場しない。
安くない買いものでしたが、この2冊、かなり役に立ちそうです。
04:23 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | URL
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コメント
こういう辞書たちと、信頼できるコーパスとの組み合わせ……というスキル、つまり辞書のエントリーを自分で書く(のに等しい作業を行う)というスキルを伝授するセッションをぜひぜひ開催したいところです。
投稿: Sakino | 2016/12/08 8:19:54