# 基本と無意識化~関西セミナーの報告を兼ねて
先週の金曜日(3/18)、お伝えしていたとおりJTF関西セミナーに登壇してきました。
会場は、2012年1月以来4年ぶりに訪れた大阪大学中之島センター。曇天ながら温かい一日でした。
当日は、「翻訳の基礎スキルを見直そう」と題して、日本語文法や英文法、辞書など基本スキルの話をしてきました。常に自分の訳文を「疑い」、「説明する」ためにはこんなスキルがあったほうがいい、という趣旨でお話ししたつもりです。
ちょうどその翌日、東京では村井章子さんの講演があったらしく、そこに参加した方のこんな報告を拝見しました。
「翻訳は英文法よりも文脈」「翻訳者が『この言葉の意味は・・・主語はどれで・・・目的語は、・・・文型は;・・・』」と考え始めたらその時点で問題と思った方がよい。
自分が、文法用語なども交えて英文法の話をしてきたばっかりだったので、なるほどと思い、ぜひ私も直接お話をお聞きしたかったと思ったしだいです。
19日の村井章子さんのお話を聞いて、上の言葉を曲解してしまうような方は、会場にはいらっしゃらなかったのだろうと思います。
言うまでもありませんが、この言葉は「英文法を軽視していい」ということではけっしてないはずです。
適切な英文法知識に基づいて的確に読むのは当たり前
であって、その前提に立ったうえで
文脈をしっかり読み取ることが大切
だということでしょう。話を聞いていない私の解釈なので、もっともっと深い意味があるのでしょうが、少なくともこの点だけは間違っていないと思います。
どんな分野だろうと、基礎スキルというのは意識の上にちょくちょく顔を出すのではなく、何も考えずに運用できるようになっていなければならない。つまり、
無意識化(自動化)
されているべきものです。だからこそ「基礎」スキルなわけです。
そうした基礎があって初めて、もっと上級のスキルや自分なりのノウハウがその上に構築される。
ただ、無意識に運用できるのはいいのですが、自分がいったん無意識化した領域を、
自覚的にきちんと説明
できるかどうか。そこは今一度、自分に問うてみる必要があるのではないだろうか――私が考えている、そして関西セミナーで伝えたかったのはそういうことでした。
別に、教師として誰かに伝授するとか、そういう話ではありません。
「なんで自分がここをこう解釈したのか」、「この言葉を選んだのはなぜか」ということを、翻訳者は求められたらちゃんと説明できたほうがいい、そういうことです。
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あ、そうだ。
今回ご参加くださったある方が、前日にくださったメールにこんな句を書いてくれました。
明日は浪速か陸奥か、男帽子屋どこへ行く
なかなかうまい言葉^^ とても励みになりました。ありがとうございます。
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コメント
フォースだけに頼ると暗黒面に落ちる可能性がある。それを防ぐには文法等による論理と理性もしっかり備え、フォースを言葉による説明にまで落とし込める必要がある、ということだと理解しました。最近のJTFセミナーはいずれも充実していますが、今回も非常に有益でした。ありがとうございます。
投稿: まほろばのだば | 2016/04/01 21:30:07