# 映画『スティーブ・ジョブズ』
★★★☆☆
たぶん、あまりヒットせずに1~2週間くらいで終わってしまいそうなので、早々に観てきました。
上の★は映画としての一般的な評価です。個人的にはたいへん好みですが、Appleの歴史をある程度以上知らないと楽しめないはずなので、おすすめはまったくしません。
<続きを読む> 以降はネタバレがありますが、ひと言だけ。
これは、スティーブ・ジョブズ本人の映画というより、
ジョブズに関係した人々、かく闘えり
という映画かもしれません。
以下はネタバレあり。
今回の映画化は、"公式伝記『スティーブ・ジョブズ』の映画化" ということになっています。したがって、あの本を読んだ人なら楽しめると思います。
具体的に言うと、ジョブズの実父についてのくだりまで覚えていれば、とある回想シーンで「おおっ」と感心できます。
脚本が、『ソーシャル・ネットワーク』のアーロン・ソーキンだけあって、ほぼ全編、怒濤のように台詞が押し寄せてきます。省略されている内容もかなりあったので、字幕だけでは厳しいようです。
■
ストーリーの柱になるのは、Macintosh、Next Cube、iMac という、ジョブズの人生でも大きい転機となった3つの製品発表会。
しかも、それぞれの発表会が始まるまでの人間ドラマだけを描き、おなじみのジョブズのプレゼンテーションはいっさい出てきません。この作り方は巧いと思いました。
ジョブズの関わった製品発表ということなら、もうひとつ iPod---もしくはiPhoneかもしれませんが、やはりiPodでしょう---も出てきそうですが、映画はそこまで描きません。iPod のことは、ある形で触れられるのですが、そこはクライマックスのひとつなので、さすがに書かないでおきます。
そして、この映画で描かれるのはもちろん、成功者スティーブ・ジョブズの姿などではなく、
世紀の問題児スティーブ・ジョブズ
の姿。そして、その問題児のまわりにいた人々が、彼にどう翻弄され、彼といかに闘ったかというドラマです。
ジョアンナ・ホフマン
アンディー・ハーツフェルド
スティーブ・ウォズニアック
ジョン・スカリー
クリスチアン・ブレナン
リサ・ブレナン
このなかで、ジョアンナ・ホフマンとアンディー・ハーツフェルドが、かなり本人に近くて、見応えがありました。
左がアンディー・ハーツフェルド、右がジョアンナ・ホフマンです。
そして、
こちらが実物のジョアンナ・ホフマン。
これがアンディー・ハーツフェルド本人です。
似てるでしょ^^ ウォズニアックとスカリーも、それぞれいい感じなのですが、このふたりの存在感が見事。
ジョアンナ・ホフマンを演じたのは、ケイト・ウィンスレットなんですね。私がちっともおもしろいと思わなかったあの『タイタニック』の女の子が、ずいぶん立派に成長しました。
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仕事のうえでは、アンディー、ジョアンナ、ウォズニアック、スカリーの4人と問題児ジョブズが激しくぶつかり、ののしり合い、最後には決着するのかというと必ずしもそうではなくて、一方もしくは両方にもやもやを残したまま、物別れに終わってしまう。
プライベートでは、リサとクリスチアンの扱いに手を焼く。父親であることを拒否しながらも、ちらっと父親らしいところを見せるけど、それも長続きはしない。
しかも、それらがすべて、製品発表イベントの開始直前という緊張感のなかで進行していく。いざ、ジョブズがステージに……というところで話は転換して次のイベントへ。
そういう過程を経て、ジョブズ本人の成長を描いている……というわけでもありません。最後の最後まで、やっぱり困ったやつのまま。"コントロールフリーク"だったジョブズが、なによりコントロールできなかったのは自分自身だった、ということでしょう。
ウォルター・アイザックソンの原作『スティーブ・ジョブズ』も、ジョブズの困ったところにはかなり踏み込んだと思いますが、この映画では、原作よりもっと「問題児」ぶりが際立っています。
Wiredには、林信行氏によるレビューがあります。
リンク:ジャーナリスト林信行は、映画『スティーブ・ジョブズ』をどう観たか:スティーブ・ジョブズはいかにして語れるか? « WIRED.jp
あ、リンクはこっちがいいか。
リンク:スティーブ・ジョブズはいかにして語れるか?:映画『スティーブ・ジョブズ』公開記念 « WIRED.jp
上の記事も含めた、Wiredの特設ページで、ほかに脚本家アーロン・ソーキンと、『スティーブズ』の漫画家うめのインタビューも載ってます。
『スティーブズ・ジョブズ』を連載中のヤマザキマリと、『スティーブズ』を連載中の松永さん、うめ夫妻がこの映画にどんな感想を持ったのか、聞きたいところです。
03:17 午後 | URL
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