# タイピングの話
テリー斉藤さんが、先週のJTFツールセミナーの話をもとに、タッチタイピングの話を書いてらっしゃるので、私も自分のタイピングのことを書いてみることにしました。
私はもうずっと、かな入力ですが、かな入力は通翻クラスタでもごくごく少数派です。私の知っている限りで、私のほかに数人しかいません。
「かな入力のほうが打鍵数が少なくて効率的」
というのが一般的な言われ方ですが、そうとは限らない部分もあり、少なくとも単純に2倍の効率にはなりません。
- QWERTYキーボードで、ローマ字入力は3段しか使わない(数字は除く)。かな入力では4段使う。しかも、段数だけでなく使うキーの範囲も、かな入力のほうが広い。
かな入力だと、ローマ字入力ならほぼ使わない赤線で囲った範囲のキーが必要です。特に右手小指のカバーする範囲は広すぎ(だから、右手のホームポジションを1つ右にずらすという流儀もあるらしい)。それから、数字の入力にはどうしてもテンキーを使うので(そのつど英数入力に切り替えるのでない限り)、右手の移動範囲も広がります。
- 濁音・半濁音のときは、濁点・半濁点を追加で打つので、ローマ字のときと打鍵数は同じ。
- 拗音を含むときは、「nyu」に対して「にゅ」なので、2/3にしかならない。
- 句点・読点と、長音記号を入力するとき、いちいちShiftキーが必要。
トータルすると、打鍵数はローマ字入力の1/2とはならず、ざっくり言って2/3くらいでしょうか(正確な数字はどっかにありそう)。
そういう効率ではなく、かな入力のメリットはやはり、日本語の文字をそのまま打てるというところでしょう。
> 自分がローマ字入力するのに、頭にアルファベットなんて飛び交っていないけどなぁ。初学者用の話なんだろうな
(2/18、テリーさんのツイートより)
たしかに、ある程度以上ローマ字入力をしていれば、アルファベット → 日本語という変換プロセスはもうとっくにルーチン化しているはずですが、それでも、ローマ字入力する方の脳内がどうなっているのか、私にはまったくわかりません。
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通翻クラスタの一定年齢以上の方と同様、私もタイピングの初めは英文タイプライターでした。英語の恩師のところで、けっこう早くから触ってはいましたが、購入して本格的にタイピングを覚えたのは大学に入ってから。
当時けっこう割高でしたが、このデザインにひかれました(だから、Apple IIcが出たときも、すぐ飛びついた。この手のデザインに弱いんだな)。
英語屋でしたから、当然タッチタイピングは覚えました。
アルファベット入力にはそのくらい慣れていましたが、それでも、日本語ワープロが登場してJISキーボードを初めて目にしたとき、最初っからローマ字入力という選択は考えもしませんでした。
せっかく日本語を直接入力できるんだから、使わないともったいないじゃん
そう考えた記憶が、ぼんやりあります。
日本語入力の習得は我流でしたが、アルファベット打鍵でタッチタイピングの基本はできていたので、それを日本語に置き換えただけで済んだようです。
その後、編集プロダクションにいたとき、富士通の親指シフトも覚えました。あれは確かに早かったと思いますが、その後は使う機会がなく、きれいに忘れちゃいました。
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誤入力のパターンを見ていると、かな入力かローマ字入力かわかることがありますよね。
ときどきアルファベット1文字が残っていることがあります。「入r力」みたいに。これ、かな入力ではまずありえません。
逆に、かな入力で多いのが濁点と半濁点の間違い。
プロパティ
と打ったつもりが
ブロパティ
になっていたりとか。「フ」を打ってから濁点・半濁点を追加するからこうなるわけで、ローマ字入力なら最初から buとpuで、たぶん間違えようはありません。
そんな風に、かな入力ならではの誤入力はけっこうあるので、私は上の例に出した「プロパティ」のように自分の仕事で多用する単語は、どんどん単語登録するようになりました(そういえば、単語登録するときの読みの付け方も、かな入力とローマ字入力では違ってきます)。
その単語登録の件数が今ではかなり膨大になっています(今数えてみたら、3,000超)。「かな入力+単語登録の効果」で言えば、総合的な入力負荷は、何もしていない人の半分くらいになっているかもしれません。
それでも、我流は我流なので、増田式は聞いてみたかったな……。
10:52 午前 パソコン・インターネット 翻訳・英語・ことば | URL
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コメント
「色は匂へど」の時代ではなく、五十音表で習ってきた世代としては、ローマ字入力にはみじんの違和感もありません。「みゃ」と入力するのに、「み」とちっちゃい「や」と入力するのと、m+y+aと入力するののどちらが「自然」かということがらについては、相当量の議論が必要だろうとも思います。
効率の問題だけ議論すれば十分だと思いました。
投稿: Sakino | 2016/02/25 11:46:38
なんのためにそういう議論が必要なのかはわからないけど……「あ・か・さ・た・な」の行ごとに色分けされている国語事典でどこを開けばいいのかわからずに苦労していた身としては、また、最近だとiPadの五十音リスト形式で打ちたい文字がなかなかみつけられず苦労していたり、フリック入力でまずどこに指を置くべきなのかで迷い(かつそこそこの割合でまちがい)、次にどちら向きにフリックするべきなのかで迷い(かつそこそこの割合でまちがい)していたりする身としては、日本語として認識される音そのものを入力するほうが文句なく自然ですね。「じ」とかは音そのものにはならないけど、もともと「『し』に濁点」と習ったわけで特に不自然に感じないし。
投稿: Buckeye | 2016/02/25 13:23:38
自然と言うのが悪ければ、「手で紙に書くのとほぼ同じ感覚」と言っておきましょうか。手書きと違うのは、小さな字で書く文字くらいなわけで。
投稿: Buckeye | 2016/02/25 13:27:40
Buckeyeさん、1点だけ。
> 最近だとiPadの五十音リスト形式で打ちたい文字がなかなかみつけられず苦労していたり
えっ? 五十音リストですか?
投稿: baldhatter | 2016/02/25 13:43:54
うん。iPadのバーチャルキーにはカナキーがないから。ローマ字だと撥音とか入れられない文字があるので仕方なく。
投稿: Buckeye | 2016/02/25 13:52:02
たしかに、ローマ字入力だと入力方法わからないことがよくあります(今でもよくわからない)。
投稿: baldhatter | 2016/02/25 13:59:16
ちなみに、五十音リストだと、
1. 入れたい文字のローマ字表記を思い浮かべる
2. 頭の子音を取り出す
3. aを後ろにつけて行の頭となる文字を思い浮かべる
4. その行を探す
5. このあたりでなんの音だったか忘れるので、改めてどの文字を入れるつもりだったのかを思い浮かべる
6. ローマ字表記をもう一度考える
7. 後ろの母音を取り出す
8. 当該文字をみつける
くらいを各段階、意識的にやる必要があって大変。下手すると、7あたりでどの行だったかわからなくなって1に戻ることもあるし。
投稿: Buckeye | 2016/02/25 14:07:12
ああ、いまになって、ようやく、Sakinoさんが言いたかったことが少しわかった気がする。「みゃ」は1音だから、m+y+aと入力するほうが「日本語として認識される音そのものを入力」してることになると言いたいわけね。
たしかに、一理あるかも。
ただ、その議論ではローマ字のほうが自然な音とかな入力のほうが自然な音があることになるよね。で、どちらが多いかと言えば、圧倒的にかな入力のほうが自然な音のほうだと思うけど。つまり、総体的にどちらが自然かと言えば、やはり、かな入力なのではないかと。
かな入力のほうが不自然となる音について、最初に手で書くとき2文字で書くと習ったこととか、読むときも必ずそういう文字の組み合わせで出てくることとか、日本語の読み書きにおける基盤となる部分がそもそもそういう形になっているっていうのは、横に置いておくにしても。
投稿: Buckeye | 2016/02/25 14:15:14
単純に日本語だけ入力する場合は、かな入力がいいと思います。
かな入力の最大の問題は、ローマ字を打つ場合には結局ローマ字入力を覚える必要があるということです。私がかな入力からローマ字入力に変えた最大の理由がこれで、ローマ字を打とうとすると、えっとえっとー、どこだっけ?となってとたんに効率ガタ落ちになってました。この点、はじめから英語入力ができている場合は支障がないということかと。は、ということは、いま日本語入力に戻せば自分もいけるのかな?
投稿: みっち | 2016/02/27 12:20:47
参戦! 私はローマ字入力派です。
かな入力を選ばなかった理由は、今から25年前、職場に1台目のワープロが試験導入された時に、
とにかく早く(「速く」ではない)打てるようにならねばならず、
そのためには、位置を覚えるべきキィの数が少ないローマ字入力が優位であったから。
職場で先にいじりだした先輩らがローマ字派ばかりで、共用ワープロの入力システム切替えを嫌がったということもあります。合わせろ、と。
今ではどこの会社でもパソコンは一人一台、文字通りパーソナルに設置されておりますから、個人個人の好みで選択すればよいのでしょうが。
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ローマ字入力者の脳内では、ひらがなをローマ字綴りに変換する作業は、あまりしていません。
むしろ、『音』に対応するキィ位置を、身体で覚えているというか。
「にゃ」と言えば、別に考えなくても、指がキィボードのN・Y・Aの上を走る。(私は完全なタッチタイピングはできず、目でチラチラ位置を確認していますが)
たまに、身体記憶が無い音は、ローマ字綴りで何と書くか考えたり、調べたりすることがあります。
入力困難音例:
「ちゅ TYU」 「てゅ THU」 「とぅ TWU」
「じゅ JU/ZYU」 「ぢゅ DYU」 「でゅ DHU」 「どぅ DWU」
「ひゅ HYU」 「ふゅ FYU」
小さい文字「ぃ LI」 「ぇ LE」
「ゅ LYU」←上の入力方法が分からなければ「ふ」+「ゅ」で代替
古文字「ゐ WIで変換」←無変換なら「うぃ」になる
「ゑ WEで変換」←無変換なら「うぇ」になる
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ところが最近、携帯電話の通信機能を使うようになって、
あれは「トグル入力」というのですか、テンキーを何回も押して変換していく方式で、音より『文字』重視になっています。
例えば「にゃ」は「に」+「ゃ」と考えて、「5」2回押し+「8」4回押し
それで、通常のキィボード入力の際に、混乱してしまうことがあります(^_^
;)
投稿: 白い都 | 2016/02/29 12:01:11
> ローマ字を打つ場合には結局ローマ字入力を覚える必要があるということです。私がかな入力からローマ字入力に変えた最大の理由がこれ
そっかー。私らのような英語屋さんだと、タイプライターでの英文字入力が先にあるから、「あとからアルファベット配列を覚える必要」というのは考えてもみませんでした。たしかに、そういうこともありますよねー。
投稿: baldhatter | 2016/05/04 15:43:31
> 『音』に対応するキィ位置を、身体で覚えているというか。
たぶんそうなんでしょうね。
その点はかな入力でも同じで、「位置を身体で覚えている」のですよね。だからこそ、ふだんと違うキーボードになると、それだけで入力速度はがた落ちになる。
> テンキーを何回も押して変換していく方式
それって、携帯(ガラケー)だとそうかもしれませんけど、今どきスマホだと、フリック入力といって、何度も押さなくて済むのですよ^^;
投稿: baldhatter | 2016/05/04 15:46:19