« 2016年1月 | トップページ | 2016年3月 »

2016.02.29

# センテンス単位のインターフェース

長くなるので前エントリーでは触れませんでしたが、CATツールが翻訳の世界に持ち込んだいちばん大きいマイナスは、センテンス単位のインターフェースです。

センテンス単位の翻訳が当たり前になりすぎたせいで、ぶつ切り翻訳が当たり前になって、それがもう普通にまかり通りつつあります。

いろいろな事情で、CATツール案件を引き受けざるを得ない場合は(私も、一部はそうです)、できるだけツールのインターフェースから自由になった形で翻訳することをおすすめします。

文章は、全文を通してひとつの世界を構築しています。

その世界を構成する次の単位が段落、最小単位が文です(単語だとか、そういう話は別として)。その段落と段落、文と文は、いろいろな関係でつながっています。

接続詞などなくても、文と文の間にはつながりがあるものです。抽象→具体とか原因→結果の展開だったり、だいてい原文を読むときには無意識にそういう関係を読み取っています。あるいは、前方予測性とでも言いましょうか(なにか専門用語があるのかもしれませんが)、前の文を読んだら、次の文は当然こうなるという流れがありますよね。逆に、後方参照性かな、後ろの文を読むとき、前の文が前提になっているという流れ。

そういう文と文のつながりは、ふつうなら訳文にも反映するところです。

ところが、センテンス単位のインターフェースに接していると、そういう関係がたちまち見えなくなってしまいます。自分がどんなに注意しているつもりでも、目の前に置かれた「ワク」の力というのは想像以上に強いものです。

以下、具体例を挙げてみます。

As humanity evolves, we find more efficient ways to communicate. Grunting led to talking, which led to writing, which led to letters. We put those letters down with giant feather quills, then with printing presses, then with small plastic keys, and sent them out into the world first as bound books, as telegrams, and as emails. But it's only now, in space year 2015, that we've truly understood our ultimate form of communication ― emoji.
http://www.theverge.com/2015/11/4/9668136/emoji-keyboards-put-ghosts-and-smiling-poop-at-your-fingertips

某定例トライアルにも出題した文章です。

第1文で、"more efficient ways" を読んだ時点で、読み手はおそらくwaysの説明を期待します。第2文には、その期待どおりwaysの例示(talking→writing→letters)が続きます。例示であると同時に経時的変化です。その変化軸が第3文にも続きます。しかも、第3文は前半(feather quills→printing presses→small plastic keys)と後半(bound books→telegrams→emails)のそれぞれに流れがあります。

そういう流れ・つながりを翻訳に反映しないと、たぶん読みにくい日本語になるはずです(実際には、thoseとかthenとかキーワードがあるので、素直に訳していけば大丈夫でしょう)。

これは元がニュースなので、単純な産業翻訳案件とは違う、という感想もありそうなので、ではもうひとつ。家電製品の取扱説明書を見てみましょう。ネットでぱっと見つけて拾ってきた文書です。

Most electric cooking equipment uses two different electrical circuits. The heating elements usually run on 220 volts, and accessories such as lights, timers and rotisserie motors run on 110 volts. There are a few notable exceptions. Some smaller "apartment" cooktops run on 110 volts. Also, in some fixed-temperature switch applications, 110 volts is applied to a 220 volt surface unit (burner) to achieve a "low" heat setting.
http://www.appliancerepair.net/oven-repair-1.html

これも、第1文の "two different electrical circuits" を読んだ時点で「その2つの説明が続くよね」という予測がはたらきます。第2文でその予測が解決されます。第3文の "a few notable exceptions" でも同様の予測がはたらき、第4文と第5文がその説明になっています。

第1文の前方予測性を考えたら、第2文の訳としては、たとえば「ひとつは~、もうひとつは~」と訳したいところです。少なくとも「220ボルトで動作する~と、110ボルトで動作する~です」くらいにはしたくありませんか?

では、こういう原文が、こんなインターフェースで目の前に出てきたらどうでしょう。

1602291

第1文のことを忘れて、第2文を「~は220ボルトで動作し、~は110ボルトで動作します」と訳しても、たぶん合格でしょう。むしろ、第2文だけの独立性が保たれているのだから、既訳として残すには下手をすると、こっちの訳し方のほうが推奨されかねません。

いろいろ候補を考えたうえで、こういう訳になったのなら、それはそれで、その人の翻訳流儀と考えてもいいでしょう。が、ひとつのセンテンスに対してひとつの訳文を対応させ、そのほかの訳の可能性をみじんも考えなかったとしたら、それはすでにかなり重症です。

こういう訳で合格(もしくは推奨)という世界で仕事をしたいかどうか、それはもちろん個人の自由です。

ひとつだけ注意したいのは、こういうセンテンス単位で作業していて、「自分は意識しているから大丈夫」と思って接している場合です。本当に大丈夫かということ。

いえいえ、人のことを言ってるのではありません。わが身をふり返っての実感を書いているだけです。

12:08 午後 TRADOS, 翻訳・英語・ことば | | コメント (4)

はてなブックマークに追加

# 翻訳 "支援" ツールという幻想

自分自身が長年のTrados使いでもあり、今でもTrados講習を担当したりしていますが、それでいて、というかそうだからこそ、翻訳 "支援" ツールの限界や危険性については、あちこちで論じてきたつもりです。


翻訳 "支援" ツールが本格的に登場してもう20年。

そろそろ、翻訳 "支援" ツールなんて幻想だということを、業界全体で認め、アプローチを変えるべきときに来ているのではないだろうか、そんな話をまとめてみました。


・翻訳 "支援" ではなく、翻訳 "業務支援" ツールだということ

・翻訳メモリー

・必然的な品質の低下

・低下した文章への慣れ

・せめて、囲いこみを

1. 翻訳 "業務支援" ツールということ

前から言っていることですが、CATツールは翻訳 "支援" ツールではなく、翻訳 "業務支援" ツールです。

これは、成り立ちの経緯から考えればごく当たり前と言えます。

CATツールは「翻訳にかかる経費をおさえたい」という発注側の発想から生まれました。具体的に言うと、「同じ翻訳に何度もお金を払うのは無駄だ、なんとかしてくれ」という注文です。

そこには当然、「効率改善」も含まれますが、これも「翻訳の効率」ではなく「翻訳業務の効率」です。

「翻訳品質の向上」という考え方も、多少はあったかもしれませんが、そこでいう「品質」というのは、せいぜいが用語の統一(もう一歩進んだとして、表現の統一)まででしょう。原理的に言って、CATツールがそれ以上の品質向上につながるわけがありません。むしろ、品質の低下を招いているはずです(この点は後述)。


どんな点から考えても、翻訳者からの要請で生まれたものではありません。

用語や表現の統一程度の「品質の保証」なら、(心ある)翻訳者なら自分でやっていたでしょう。「効率化」も同様で、(気のきいた)翻訳者なら自分なりの効率化を図っていました。

発注側や翻訳会社が、「翻訳者の負担を減らそう」と考えたのではないことも明らかです。だって、もしそうなら、「マッチ率によって単価に傾斜をつける」のはおかしいからです。


なかには、指定されてではなく自主的にCATツールを使っていて、「傾斜単価に利用されてはいない」とか、「自分なりの効率化と品質向上に有効」という人もいるようですが、それは例外的でしょう。翻訳品質については、なにか別の形で補っているはずです。そもそも、この後で述べるように、自分の過去訳を参照するのなら一般のメモリー運用とはだいぶ事情が異なります。


2. 翻訳メモリー

CATツールの成果で唯一、翻訳メモリーという名のデータベースは、限定付きで意味があると思っています。Tradosなどで実現されている、あいまい検索まで可能なデータベースです。

Google先生も、かなりアバウトな検索結果を出してくれますが、あれは広すぎます。翻訳メモリーのあいまいさ加減は、過去の翻訳を検索・参照するときには確かに便利です。

ただし、翻訳メモリーが便利なのは

自分の過去訳を参照する

ときに限ります。他人の残した既訳---運用されているたいていの翻訳メモリーはこれです---は、実はほとんど参考になりません。なぜなら、翻訳メモリーというのは、まさに

メモリー = 記憶

であるべきで、そこには原文と訳文だけでなく、

訳したときの思考経路

まで残っていなければならないからです。自分の過去訳であれば、翻訳メモリーに残っている原文と訳文だけでなく、自分自身の

メモリー = 記憶

の中に、その思考経路が残っているものです(よほど古いとダメなこともありますが)。「ああ、この案件で、あのときのファイルでは、あんな表現はこう訳したんだっけ」みたいな。

他人が残した既訳にそんな関連付けはありません。しかも、メモリーを使う以上は「既訳に合わせる」のが大前提です。すると、どういうことが起きるのか---


3. 必然的な品質の低下

訳したときの思考経路をたどれないまま、「既訳に合わせ」て他人様の既訳をなぞったり、部分的に利用したりして、ちゃんとした訳文を書くのはかなり大変です。容易に、変てこな日本語になってしまいます。

必然的に、翻訳メモリーを使って訳し終えた全体の翻訳は、前のバージョンより劣化します。同じメモリーを使い続けていけば、たとえば同じ製品のマニュアルは版を重ねるごとに、どんどん劣化していくはずです。

かつては、いったん大きい翻訳プロジェクトが終わると、最終版を仕上げつつ、終わったメモリーを精査するというプロセスを経ている会社もありました。おかしな既訳を直すとか重複を削除するとか、そんな作業を私もかつてやっていました。

でも、今やどこでもそんなことしてないようです。その証拠に、心ある翻訳者がCATツールを使っている現場には、必ずと言っていいほど「このメモリー使えない~!」という怒号が飛び交っています。


もちろん、一律に「既訳に合わせてください」ではなく、「既訳がおかしかったら、どんどん直してください」と言ってくる会社もありますが、それって、そもそもCATツール使うという前提が破綻しています。


4. 低下した文章への慣れ

そうやって、成果物が劣化し続けて20年以上経った結果どうなったか。

たぶん、日本中のユーザー全体が

おかしな日本語に麻痺

してしまいました。

たかだか20年ですが、その間に情報の密度がどんどん濃くなってきたからでしょうか、ユーザーが麻痺という方向に適応するには十分な時間だったようです。

あげくの果てに読まされるのが、こんな文章です。

より速くよりスマートに翻訳しながら、統一感のあるブランド展開を実現します。 SDL Trados Studioは、翻訳プロジェクトおよび企業用語集の編集、レビュー、管理を行う言語サービス部門向けの包括的な翻訳環境を提供します。 世界中の20万人を超えるプロの翻訳者が信頼するソフトウェアで、世界トップクラスのローカライズ済みコンテンツを提供し、グローバル市場での販売やマーケティング活動をサポートしましょう。
http://www.sdl.com/jp/cxc/language/translation-productivity/trados-studio/

これが、2/29時点で SDL Trados Studio 2015 のトップに出てくる日本語です。

ちなみに、原文はこう。

Translate faster and smarter while presenting a unified brand to the world. SDL Trados Studio is the complete translation environment for language professionals who want to edit, review and manage translation projects as well as corporate terminology. Deliver world-class localized content to support your global sales and marketing efforts with software trusted by over 200,000 translation professionals worldwide.

トップに堂々とこういう日本語を出しているということは、これがこの会社の考える

スタンダードな日本語

ということになりますよね。

市場シェアトップのCATツールが、そういう会社の製品であるという事実は、もっと知っておくべきでしょう。


5. せめて、囲いこみを

たぶん、IT 業界、特にローカリゼーション業界はもう手遅れでしょう。この20年間の流れを逆転させることはできません。IT 界隈は、上に挙げたような日本語に毒されきっていて、ユーザーももう慣れっこになりました。

こんな日本語でいいのなら、これからもどんどん翻訳 "支援" ツールを使っていけばいい。が、せめてこんな日本語は IT 業界だけに囲い込んで、そこから外には出てこないようにしたい。

同じ IT でも、Web ページやマーケティング素材にCATを使わせるところがありますが、まったく意味ありません(そういう案件が、私のところにも来ますが、ぜんぶベタで訳してからCATツールに流し込むという本末転倒で対応しています)。

翻訳 "支援" ツールというのは幻想だったと、業界もそろそろ認めてはどうでしょうか。少なくとも、そういうウソはやめたほうがいい。

10:41 午前 TRADOS, 翻訳・英語・ことば | | コメント (2)

はてなブックマークに追加

2016.02.25

# タイピングの話

テリー斉藤さんが、先週のJTFツールセミナーの話をもとに、タッチタイピングの話を書いてらっしゃるので、私も自分のタイピングのことを書いてみることにしました。

リンク:タッチタイピング | 翻訳横丁の裏路地


私はもうずっと、かな入力ですが、かな入力は通翻クラスタでもごくごく少数派です。私の知っている限りで、私のほかに数人しかいません。

「かな入力のほうが打鍵数が少なくて効率的」

というのが一般的な言われ方ですが、そうとは限らない部分もあり、少なくとも単純に2倍の効率にはなりません。

  • QWERTYキーボードで、ローマ字入力は3段しか使わない(数字は除く)。かな入力では4段使う。しかも、段数だけでなく使うキーの範囲も、かな入力のほうが広い。

    109key

    かな入力だと、ローマ字入力ならほぼ使わない赤線で囲った範囲のキーが必要です。特に右手小指のカバーする範囲は広すぎ(だから、右手のホームポジションを1つ右にずらすという流儀もあるらしい)。それから、数字の入力にはどうしてもテンキーを使うので(そのつど英数入力に切り替えるのでない限り)、右手の移動範囲も広がります。

  • 濁音・半濁音のときは、濁点・半濁点を追加で打つので、ローマ字のときと打鍵数は同じ。
  • 拗音を含むときは、「nyu」に対して「にゅ」なので、2/3にしかならない。
  • 句点・読点と、長音記号を入力するとき、いちいちShiftキーが必要。

トータルすると、打鍵数はローマ字入力の1/2とはならず、ざっくり言って2/3くらいでしょうか(正確な数字はどっかにありそう)。


そういう効率ではなく、かな入力のメリットはやはり、日本語の文字をそのまま打てるというところでしょう。

> 自分がローマ字入力するのに、頭にアルファベットなんて飛び交っていないけどなぁ。初学者用の話なんだろうな
(2/18、テリーさんのツイートより)

たしかに、ある程度以上ローマ字入力をしていれば、アルファベット → 日本語という変換プロセスはもうとっくにルーチン化しているはずですが、それでも、ローマ字入力する方の脳内がどうなっているのか、私にはまったくわかりません。


通翻クラスタの一定年齢以上の方と同様、私もタイピングの初めは英文タイプライターでした。英語の恩師のところで、けっこう早くから触ってはいましたが、購入して本格的にタイピングを覚えたのは大学に入ってから。

1602251

当時けっこう割高でしたが、このデザインにひかれました(だから、Apple IIcが出たときも、すぐ飛びついた。この手のデザインに弱いんだな)。

英語屋でしたから、当然タッチタイピングは覚えました。

アルファベット入力にはそのくらい慣れていましたが、それでも、日本語ワープロが登場してJISキーボードを初めて目にしたとき、最初っからローマ字入力という選択は考えもしませんでした。

せっかく日本語を直接入力できるんだから、使わないともったいないじゃん

そう考えた記憶が、ぼんやりあります。

日本語入力の習得は我流でしたが、アルファベット打鍵でタッチタイピングの基本はできていたので、それを日本語に置き換えただけで済んだようです。


その後、編集プロダクションにいたとき、富士通の親指シフトも覚えました。あれは確かに早かったと思いますが、その後は使う機会がなく、きれいに忘れちゃいました。

誤入力のパターンを見ていると、かな入力かローマ字入力かわかることがありますよね。

ときどきアルファベット1文字が残っていることがあります。「入r力」みたいに。これ、かな入力ではまずありえません。

逆に、かな入力で多いのが濁点と半濁点の間違い。

プロパティ

と打ったつもりが

ブロパティ

になっていたりとか。「フ」を打ってから濁点・半濁点を追加するからこうなるわけで、ローマ字入力なら最初から buとpuで、たぶん間違えようはありません。


そんな風に、かな入力ならではの誤入力はけっこうあるので、私は上の例に出した「プロパティ」のように自分の仕事で多用する単語は、どんどん単語登録するようになりました(そういえば、単語登録するときの読みの付け方も、かな入力とローマ字入力では違ってきます)。

その単語登録の件数が今ではかなり膨大になっています(今数えてみたら、3,000超)。「かな入力+単語登録の効果」で言えば、総合的な入力負荷は、何もしていない人の半分くらいになっているかもしれません。


それでも、我流は我流なので、増田式は聞いてみたかったな……。

10:52 午前 翻訳・英語・ことば, パソコン・インターネット | | コメント (12)

はてなブックマークに追加

2016.02.18

# 4月10日は、仙台TRACでセミナー

2016年の上半期、セミナーなどに登壇する予定がだいぶ固まってきました。一部はすでにお伝えしましたが(末尾に改めてまとめます)、もうひとつ追加。

JAT(日本翻訳者協会)のサイトにはまだ案内が載っていませんが、メーリングリストで流れたので、こちらでもお知らせしておきます。

JATの地域活動委員会のひとつである東北地区活動委員会(TRAC)にお呼びいただきました。4月10日(日)、仙台で私のセミナーと、午後にはお花見があります。

【追記】
JATのページにも告知が出たようなので、リンクを貼っておきます。

リンク:イベント セミナー | 第8回TRAC定例会 「辞書と文法とスタイルガイド - 読みやすい日本語を書くために」&TRACお花見 | 日本翻訳者協会


メーリングリストで届いた案内は以下のとおりです。


「辞書と文法とスタイルガイド - 読みやすい日本語を書くために」

開催日:2016年4月10日
時間:10:30 am - 1:30 pm
場所:仙台市民会館 第6会議室
定員:30名
会費:JAT会員1,500円 / 非会員2,500円
お花見:2:00 pmより(場所は未定、食べもの&飲みものの屋台があります)
お問い合わせ:trac@jat.org

セッション内容:
自分の書いた訳文について説明責任をはたすには、きちんとした根拠が必要です。原文側でも訳文側でも、その根拠の土台となるのは、文法、語法、語義の正しい理解です。そのためには、文法の基本を理解し、正しい辞書の使い方を知る必要があります。
このセミナーでは、まず最低限の文法用語を復習しつつ、翻訳者が理解すべき概念という観点から、日英の文法を再確認します。次に、電子媒体が当たり前になった今だからこそ、知っておきたい辞書の使い方を説明します。
もうひとつ。お客さんに読んでもらうためには一定のスタイルガイドに沿うことも必要です。その工夫についてもお話しします。
そのうえで、辞書・文法・スタイルガイドを武器に読みやすい日本語を仕上げるコツをいっしょに考えましょう。
2014年の2月、IJET-25のプレイベントでお邪魔して以来、2度目の仙台です。みなさん、よろしくお願いいたします!
*セッションは日本語で行われます。



仙台には、2014年---ああ、もうあれから2年も経つのですね---に、IJET-25のプレイベントでお邪魔しました。

個人的にも初めての仙台でしたが、このときも雨男の面目躍如、仙台地方としても数十年ぶりという大雪に見舞われてしまいました。そのときの様子は、こちらの記事に。

リンク:# IJET-25、プレイベント仙台のご報告

このプレイベントがきっかけで、この地に東北地区活動委員会「TRAC」が誕生しました。


そして、今年の6月には、この仙台でIJET-27が開かれます。

IJET-27 in Sendai! | Japan Association of Translators

Ijet27_banner


花見という楽しいイベントに誘われたからでもありますが、いや、前回できなかった仙台~石巻観光をしたいからでもありますが、いや、たぶんこれもIJET-27のプレイベント的な扱いなんだと思います。それに少しでも協力しようと考えたしだいです。


仙台および周辺のみなさん、またよろしくお願いいたします! 東北地方で花見なんて、人生初めて!

ということで、当面のセミナー予定をまとめておきます。一部、まだ記事にしていない新着情報もあります。

3/18(金)14:00 ~ 17:00

JTF関西セミナー
「翻訳の基礎スキルを見直そう」


3月26日(土)14:00~17:00

サン・フレア アカデミー
「続・読ませる翻訳セミナー ~辞書引きの実践と、的確な日本語の選び方~」


4月10日(日)10:30~13:30

JAT東北地区活動委員会
「辞書と文法とスタイルガイド - 読みやすい日本語を書くために」


5月16日(月)14:00~16:30
5月27日(金)14:00~16:30

JTFスタイルガイド委員会主催
「2016年JTFスタイルガイドセミナー」

昨年と同様、セミナーは2回行われます。私がお話しするのは27日で、同日の第1部には磯崎さんも登壇なさいます。また、16日には、昨年のセミナーで話題になったTrans QAの詳しい解説と、もっと手軽なWeb版スタイルガイドチェッカー(西野さん開発)の話もあります。


01:23 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

はてなブックマークに追加

2016.02.17

# 映画『スティーブ・ジョブズ』

★★★☆☆

たぶん、あまりヒットせずに1~2週間くらいで終わってしまいそうなので、早々に観てきました。

上の★は映画としての一般的な評価です。個人的にはたいへん好みですが、Appleの歴史をある程度以上知らないと楽しめないはずなので、おすすめはまったくしません。

<続きを読む> 以降はネタバレがありますが、ひと言だけ。


これは、スティーブ・ジョブズ本人の映画というより、

ジョブズに関係した人々、かく闘えり

という映画かもしれません。



以下はネタバレあり。


今回の映画化は、"公式伝記『スティーブ・ジョブズ』の映画化" ということになっています。したがって、あの本を読んだ人なら楽しめると思います。

具体的に言うと、ジョブズの実父についてのくだりまで覚えていれば、とある回想シーンで「おおっ」と感心できます。

脚本が、『ソーシャル・ネットワーク』のアーロン・ソーキンだけあって、ほぼ全編、怒濤のように台詞が押し寄せてきます。省略されている内容もかなりあったので、字幕だけでは厳しいようです。

ストーリーの柱になるのは、Macintosh、Next Cube、iMac という、ジョブズの人生でも大きい転機となった3つの製品発表会。

しかも、それぞれの発表会が始まるまでの人間ドラマだけを描き、おなじみのジョブズのプレゼンテーションはいっさい出てきません。この作り方は巧いと思いました。

ジョブズの関わった製品発表ということなら、もうひとつ iPod---もしくはiPhoneかもしれませんが、やはりiPodでしょう---も出てきそうですが、映画はそこまで描きません。iPod のことは、ある形で触れられるのですが、そこはクライマックスのひとつなので、さすがに書かないでおきます。


そして、この映画で描かれるのはもちろん、成功者スティーブ・ジョブズの姿などではなく、

世紀の問題児スティーブ・ジョブズ

の姿。そして、その問題児のまわりにいた人々が、彼にどう翻弄され、彼といかに闘ったかというドラマです。

ジョアンナ・ホフマン

アンディー・ハーツフェルド

スティーブ・ウォズニアック

ジョン・スカリー

クリスチアン・ブレナン

リサ・ブレナン

このなかで、ジョアンナ・ホフマンとアンディー・ハーツフェルドが、かなり本人に近くて、見応えがありました。

1602171

左がアンディー・ハーツフェルド、右がジョアンナ・ホフマンです。

そして、

160217joanna

こちらが実物のジョアンナ・ホフマン。

160217andy

これがアンディー・ハーツフェルド本人です。

似てるでしょ^^ ウォズニアックとスカリーも、それぞれいい感じなのですが、このふたりの存在感が見事。


ジョアンナ・ホフマンを演じたのは、ケイト・ウィンスレットなんですね。私がちっともおもしろいと思わなかったあの『タイタニック』の女の子が、ずいぶん立派に成長しました。


仕事のうえでは、アンディー、ジョアンナ、ウォズニアック、スカリーの4人と問題児ジョブズが激しくぶつかり、ののしり合い、最後には決着するのかというと必ずしもそうではなくて、一方もしくは両方にもやもやを残したまま、物別れに終わってしまう。

プライベートでは、リサとクリスチアンの扱いに手を焼く。父親であることを拒否しながらも、ちらっと父親らしいところを見せるけど、それも長続きはしない。

しかも、それらがすべて、製品発表イベントの開始直前という緊張感のなかで進行していく。いざ、ジョブズがステージに……というところで話は転換して次のイベントへ。

そういう過程を経て、ジョブズ本人の成長を描いている……というわけでもありません。最後の最後まで、やっぱり困ったやつのまま。"コントロールフリーク"だったジョブズが、なによりコントロールできなかったのは自分自身だった、ということでしょう。


ウォルター・アイザックソンの原作『スティーブ・ジョブズ』も、ジョブズの困ったところにはかなり踏み込んだと思いますが、この映画では、原作よりもっと「問題児」ぶりが際立っています。

Wiredには、林信行氏によるレビューがあります。

リンク:ジャーナリスト林信行は、映画『スティーブ・ジョブズ』をどう観たか:スティーブ・ジョブズはいかにして語れるか? « WIRED.jp


あ、リンクはこっちがいいか。

リンク:スティーブ・ジョブズはいかにして語れるか?:映画『スティーブ・ジョブズ』公開記念 « WIRED.jp

上の記事も含めた、Wiredの特設ページで、ほかに脚本家アーロン・ソーキンと、『スティーブズ』の漫画家うめのインタビューも載ってます。


『スティーブズ・ジョブズ』を連載中のヤマザキマリと、『スティーブズ』を連載中の松永さん、うめ夫妻がこの映画にどんな感想を持ったのか、聞きたいところです。

03:17 午後 | | コメント (0)

はてなブックマークに追加

2016.02.14

# 辞書世界の新しいトレンドか - ATOK辞書のラインアップ

昨年1年くらいかけて、「翻訳者が使う辞書環境」のことを自分なりにいろいろと調べ、あちこちで話したり書いたりしてきたことは、すでに何回かお伝えしました。

おかげで、現状と対策がおおむね見えてきたかな、というところでしたが、ここにきて(2016年2月)、また新しいトレンドが出てきました。前エントリでも書いた、ATOK(ジャストシステム)の連携辞書です。

もちろん、これまで慣れてきたEPWING辞書ブラウザなみの検索機能はないのですが、LogoVistaの新タイトルが汎用ブラウザに対応しなくなった今となっては、このATOK連携辞書が充実していけば、新しい選択肢になりうるかもしれません。


現時点で、どんな辞書があるのか、まとめてみました。

リンク先はすべて、ジャストシステムのオンラインショップです。特に、各辞書の版にご注意ください。

ジャストシステムの製品は、会員になっておくと若干お得です。

また、たいていはパッケージ版とダウンロード版があり、ダウンロード版のほうが若干お得。インストールCDがないと不安になるかもしれませんが、製品登録しておけば、会員専用ページで再ダウンロードできるので、心配はありません(インストール時に必要なシリアル番号も表示されます)

会員価格でダウンロード版だと、一般価格のパッケージ版より1,000円くらい安くなるようです。


明鏡国語辞典・ジーニアス英和/和英辞典 /R.4 for ATOK

パッケージ版

ダウンロード版

以下の辞書のセットです。

・明鏡国語辞典 第2版。現時点で最新版であり、LogoVista製品と同等です。

・ジーニアス英和 第4版/和英 第3版。ジーニアスは、最新(G5)ではなく、ひとつ前のバージョンです。ご注意ください。


三省堂 スーパー大辞林・敬語のお辞典 for ATOK

パッケージ版

ダウンロード版

「スーパー大辞林3.0」という、書籍版『大辞林 第三版』を増補したデータです。これ、単体で入手できるのは、この製品だけのようです(そのほか、iOS用などのアプリあり)。


広辞苑 第六版 for ATOK

パッケージ版

これは、パッケージ版しかないみたいですね。今のラインアップのなかでは比較的古い製品で、インターネット連携機能について「対応ブラウザはInternet Explorerのみです」などと書いてあるのは、今だったらどうなるのか気になるところです。


角川類語新辞典 for ATOK

パッケージ版

ダウンロード版

これも、単体のデジタル製品は出ていません。アプリケーションはあります。1981年に出た版のままですが、まあ新語を求めるタイプではないので問題ないでしょう。

ただし、こちらはATOK連携辞書ではなく、連想変換辞書なので、変換中に参照できるタイプです。イミクルには対応していません。


ロングマン英英/英和辞典 for ATOK

パッケージ版

ダウンロード版

以下の辞書のセットです。

・ロングマン現代英英辞典(LDOCE)4訂増補版

・ロングマン英和辞典

ロングマンは、最新版ではなく第4版です。もっとも、新語ではなく基本語彙を確認する目的のほうが多いでしょうから、あまり問題はないかもしれません。

参考までに、LDOCEの最新は第6版(2014年)ですが、最新版はCD/DVD-ROM付属の商品がなく、どうもオンラインのサブスクリプションが付くだけのようです。

CD/DVD-ROMが付属する範囲の最新は第5版で、LDOCE5であれば、単体として使うほか、Logophileでも使えます。

ロングマン英和辞典のほうは、SIIなどの電子辞書に載っているのと同じ版です。というか、新版は出ていません。

これも、単体のデジタル製品はなく、電子辞書か、アプリしかありません。


医学辞書2015 for ATOK

パッケージ版

ダウンロード版

すいません、こちらは私の専門外なので、よくわからないのですが、製品紹介ページに、辞書の詳しい説明がありません。

収録語数50万語以上。日本語入力システム「ATOK」と連携し、医療用語や病名をスムーズに変換。電子カルテの入力はもちろん、各種書類やレポート作成がスピーディーに行えます。

辞書の素性が書いてないとは……。まるで●eblioの一部のデータみたいで、これはよろしくありません。あ、こちらの製品情報ページに載ってました。

リンク:医学辞書2016 for ATOK

出典は必ず確認して購入しましょう^^


ライフサイエンス辞書Plus 2015 for ATOK

ダウンロード版

ダウンロード版だけです。また、こちらは「専門用語変換辞書」なのですが、辞書を検索したときにも表示されるということです(井口富美子さん情報)。

これも、製品についての詳しいページはこちら。ライフサイエンス辞書は、定評があります。

主なラインアップはこんなところですが、ほかにも以下のようなデータがあります。タイプ別に名前だけ挙げておきます(私は使ったことありません)。

専門用語変換辞書

・NHK 漢字表記辞書2015 for ATOK(ダウンロード版のみ)

・共同通信社 記者ハンドブック辞書 第12版 for ATOK(ダウンロード版のみ)

・社団法人日本原子力学会 原子力用語辞書2010 for ATOK(ダウンロード版のみ)


連携辞書

・角川俳句歳時記 第四版 for ATOK(パッケージ版、ダウンロード版)

・建築・土木用語変換・対訳 for ATOK(ダウンロード版)

01:35 午後 翻訳・英語・ことば, 辞典・事典 | | コメント (0)

はてなブックマークに追加

2016.02.11

# ATOKの辞書環境 ~イミクルで注目度アップ

ジャストシステムの日本語入力システム「ATOK」は、翻訳者のあいだでも以前から定評があります。

いろいろな辞書アドインを連携する機能は以前からあったのですが、この2月に発売された新バージョン「ATOK 2016」に、イミクルという機能が追加されたのを機に、少なくとも私のまわりでは、ちょっとした話題になっています。


簡単に言うと、従来はあくまでもATOKの補助機能だったので、入力中や変換中に辞書を参照することもできる、というくらいの扱いでした。

一方、新しいイミクルだと、

範囲選択して任意に引ける

ようになった。この1点がかなり大きいのかもしれません。


この新機能のおかげで、初めて(もしくは、久しぶりに)ATOKを入れてみる、という方もちらほら。


ただし、ATOKにおける辞書の設定や動きはちょっとわかりにくいかもしれません。そこで、いつものように自分の整理も兼ねて、ATOKの辞書についてまとめてみました。

【追記】

翻訳者であり勉強会「十人十色」の代表でもある井口富美子さんが、ほとんど同じタイミングでATOKの記事をアップしていらっしゃいました。そちらのほうが丁寧に説明してある点も多いので、ぜひ併せてご覧ください。

リンク:ATOK2016新機能とATOKのおさらい | It's a Wonderful Life



通常の変換中

まず、スペースバーを押してふつうに変換するとき、候補ウィンドウが出てきて、ちょっと遅れてその右に辞書ウィンドウが開きます。

1602111_3

候補ウィンドウで、右向き > が表示されている候補には、なんらかの辞書情報があります。辞書が複数ある場合にはタブ表示され、Ctrl+Endキーでウィンドウを切り替えることができます。

※右向き矢印が何種類かありますね。この違いは、今のところ私にもわかりません。

※スペースバーを何回押すと候補ウィンドウが表示されるかは、[プロパティ(環境設定)]→[ATOKのプロパティ]→[設定項目]→[候補ウィンドウ]と進み、[候補ウィンドウ表示までに必要な変換回数]で設定できます。辞書ウィンドウが開くまでの待ち時間設定はないようです。


特定の辞書で変換

上のスクリーンショットは「こんめい」を変換したところですが、漢字候補のほか、いちばん下には confusion という英訳の候補も出ています。これはジーニアスが変換辞書として機能しているからです。

いわば、「辞書を引きながら変換する」という感じでしょうか。

ふつうに変換するとこうやってずらって出てきますが、特定の---たとえば、「こんめい → confusion」のような---和英変換をいきなり引くという使い方もできます。

たとえば、同じく「こんめい」と入力して[F4]キーを押すと、こうなります。

1602112_2

さらに[F4]キーを押すと、

1602113

こうやって辞書の内容も出てきます。つまり、ふだんのスペースバーではなく、別のキーで変換候補を出すということです。

※[F4]キーというのは、たまたま私の環境でそうなってるだけです。

1602114

これが私の環境での設定画面です。


イミクルで引く

これが今回いちばんの売りですね。単語を選択してCtrlキー2回を押すと、登録されている辞書をすべて検索できます。

1602113_2

起動キーは変更できるのですが、Ctrl x 2のほかも、Alt x 2か Shift x 2だけしか選択肢がないので、ここはちょっと変わるといいかもしれません(AHKで変えるという手はありそう)。

それから、変換中に辞書が出てきたときは、Ctrl+End で辞書を切り替えられたのですが、イミクルの場合は、同じショートカットがきかず、マウスでクリックするしかありません。Ctrl+Endすると、文章の最後に移動してしまいます。

これは、イミクルを使っても、フォーカスは元のアプリケーションから移動しないので、たぶんそのせいだと思います。

なお、今回はATOK 2016プレミアム版などに付属する『精選版 日本国語大辞典』と『ジーニアス医英和辞典 第5版』が話題になっていますが、これまでジャストシステムからATOK用に発売されていた辞書はどれも、イミクルに対応しています。

ややこしいのですが、上記のような辞書機能のほか、ATOKには「連想変換」という機能もあります。こちらは、類語辞典のような機能です。

1602116

「日本語使いさばき辞典」と「文章表現辞典」は、もともと組み込まれている標準辞書、「角川類語」はオプションで追加した辞書です。

横長にしか広がらないという、ちょっとがっかりなインターフェースですが、類語をさっと確認したいときには便利です。

11:29 午前 翻訳者のPCスキル, 辞典・事典 | | コメント (0)

はてなブックマークに追加

2016.02.10

# 翻訳中の頭と作業インターフェースの話

翻訳に使うインターフェースについては、これまでにも、

side A: # 原文-訳文の縦並びと横並びについての仮説

などで、何回か書いたことがありました。


今回は、翻訳しているときの「頭のはたらき」との関係から、このことをまたちょっと考えてみました。もちろん、今回も個人的な感覚の域を出ない話ではあります。

翻訳フォーラムなどで翻訳の話をすると、よく

英語と日本語の間を、何十回、何百回と行き来する

というような言い方をします。1秒間に何万回とか、ヘルツで測れそうな極端な言い方もありますが ^^


たしかに、翻訳中の翻訳者の頭の中では、英語と日本語の間を、意識的にでも無意識にでもいろんなレベルで行ったり来たりします。

もしかすると、翻訳インターフェースって、こういう頭のはたらきと無関係ではないのかもしれない、というのが今回の仮説です。


1602101

これは、2007までのTradosの画面です。Tradosと言っても専用のインターフェースがあるわけではなく、Word上でこのように、原文と訳文が交互に並んでいました。

今でも、特定のジョブにはこのインターフェースを使っています。定型の文や表現がそれなりに出現するからですが、定型以外には、既訳の再利用という目的はほとんどなく、むしろ過去の言い回しを避けるために使っています。


1602102

こちらは、特になんの指定もなく、いちばんフリーハンドで作業できるときの一例。

パラグラフ単位で、原文の下に訳文を書いていき、最後に訳文を消して納品状態にするという、わりと原始的な使い方です。Tradosなどの翻訳支援ツールは使っていませんが、こういうバイリンガル状態で残しておけば、過去の訳し方はだいたい参照できるものです。


さて、支援ツールの有無はありますが、上ふたつの使い方で共通しているのは、インターフェース上で

原文と訳文の間を行き来しやすい

という点です。同じファイル上で、どこにでもカーソルキーだけで移動でき、英語と日本語のあいだが、なんというか地続きになっています。


1602103

一方、こちらがTrados Studioのインターフェース。

横並びになったうえに、英語と日本語のあいだを行き来するには、デフォルトだと[F6]キーを押す必要があります。感覚的にわかりやすくするために、私は[Tab]キーを割り当てていますが、それでも英日間を移動するたびに、なんというか

よっこらしょ

と、敷居をまたぐような感覚があります(少なくとも、私には)。


Trados Studioに限らず、最近の翻訳支援ツールはこれと似たインターフェースが多いようです。


まず、英語と日本語がそれぞれ「枠」で囲まれていますよね。その時点でもう、上のような地続きの感じがほぼ失われています。だから、英日間を移動するたびに、壁の存在が意識され、「英語と日本語の間を、何十回、何百回と行き来する」という感覚が阻害されてしまいます。


頭の中で無限回の行ったり来たりをする以上、その「頭」と「手」と「目」をつなぐインターフェースも、同じように自由に行ったり来たりできなければいけないはず。


そう考えると、どんな形にせよ、

翻訳者の思考に不要な負荷をかける

インターフェースには、くれぐれも用心すべきです。

03:42 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

はてなブックマークに追加

2016.02.07

# 「ATOK 2016 プレミアム」と、G5の新語

昨年のうちにちょっと話題になりましたが、今回のプレミアム版には、G5と『精選版日本国語辞典』が付きます。

定価は12,000円ですが、ジャストシステムの会員だと10,000円弱です。


前エントリで書いたように、LogoVistaのG5が到着したばかり。ダブってしまいましたが、LogoVistaブラウザを立ち上げずに引けるというのは便利かもしれません。範囲選択してCtrlキー2回でも引けます。


ということで、新語の採用状況や訳語の変化を調べてみるために、「私家版英語辞典@帽子屋」に載せている単語を、Ctrl x 2 で、片っ端から引いてみました。


backronym

バクロニム《元は頭字語でない単語の各文字に後から語を当ててある意味を持つ頭字語化した語;SOS (Save our ships.)など》


decision making

(集団・組織などの重要な件に関する)意思決定


digital native

デジタルネイティブ《幼い頃からインターネットや IT 技術に慣れ親しんで育った世代》.


hacktivism
hacktivistとして追加されています。

【hacker+activist】 《略式》[コンピュータ]政治的ハッカー


initiative
訳語と構成がかなり変わって、こうなりました。かなり整理されたと思います。

1 〔…のための/…する〕新構想, 新規計画, 新しい試み〔for / to do〕
2 (人の指示を待たず)自ら決定[行動]する力, 自発性
3 [the ~] 〔…する/…における〕主導権, イニシアチブ〔to do / in〕
4 《米》[法](国民の)発議権

G4ではこうでした。
1 自発性, 企業心, 独創力, 進取的精神
2 (事態改善への新規の)構想, 計画, 新しい試み, 戦略
3 [通例 the / one's ~] 手始め, 開始, 首唱;[the ~] 主導, 主導権, イニシアチブ, 〔法〕 (国民の)発議権


leverage
語義が追加されています。

1 …を(巧みに)活用[利用]する.


pluto
動詞の語義が追加されました。語源については何の説明もありませんが、2006年に冥王星が準惑星に格下げされてしまったことから来ています。

1 …を降格させる;…の価値を下げる(demote)2(特定のグループなどから)…を除外する, 外す(remove)


spear phishing

[名] スピア[ねらい撃ち]フィッシング《特定の人物やグループに対して知人などを装ったメールを送るフィッシング詐欺》


virality
は載っていませんが、viral に語義が追加されました。

2 (インターネットなどを介して)拡散する, 有名になる


wikiality

ウィキアリティ《客観的な事実ではなく, 多くの人がそうだと思うことによって真実だとみなされていること》


wonk
これも訳語が追加されています。

2 (細部にまでこだわる)政策通


ご覧のとおり、新しい単語や語義がかなり追加されいることがわかります。さすが、電子編集をいち早くとりいれた辞書だけのことはあります。


こういう語をこれまで取り上げていた自分にも、ちょっと感心 ^^


01:56 午後 翻訳者のPCスキル, 辞典・事典 | | コメント (0)

はてなブックマークに追加

2016.02.04

# LogoVistaから「G5」

『ジーニアス英和辞典 第5版』のデータ版が、書籍の発売(2014年12月)から1年以上経って、ようやく登場しました。

ご覧のとおり、LogoVista版です。

リンク:LogoVista

和英は第3版なので、これまでのデータ版と変わりません。

そのほかの特長などは、LogoVistaのサイトに詳しく載っています。学習英和辞典として、さっそくアップデートしておいて損はないタイトルでしょう。

ただし、

EPWINGブラウザにはまったく非対応

です。LogoVista純正ブラウザを使うしかありません。


EPWINGブラウザでひととおり試した結果は、以下のとおりです。


Jamming

[辞書の追加と削除]で登録でき、辞書ウィザードにも出てきます。ところが、登録後にJammingを起動しようとすると、

1602043_2

というアプリケーションエラーが出て、起動すらできなくなってしまいます。こんなエラー、初めて見ました。

試しちゃいけませんが、もしこうなってしまった場合は、

<Jammingのインストールディレクトリ>\初期設定\dicpath

というファイルをエディタで開き、該当する行を削除してください。ファイルの末尾にあると思いますが、具体的には、こんな2行です。

1602041


Logophile

LogophileDicManagerで登録しようとすると、その時点でエラーが出ます。Jammingの場合より、たちがいいとも言えます。


EBWin4

やはり、追加しようとした時点でエラーになります。


dessedで変換

それじゃ、とうことで、LogoVistaデータをEPWINGデータに変換する秘密兵器、dessed を使ってみました。

一見すると、変換は正常に終わります。各ブラウザで登録もできました。が、実際に検索してみると、まともに機能しません。Jammingでは見出しだけ、Logophileではなんだか空っぽ、EBWin4はアプリケーションが死にます。

こうなってくると、もう本格的にLogoVistaに対する運動を展開するしかありません。

以下、私が考えている要望です。

まず、いちばんいいパターン。

正規購入者だけEPWINGデータを使えるようにする

たとえば、EPWINGブラウザの開発者にも協力してもらって、IDXファイルを読み込むときにシリアル番号を要求するようにするとか。難しいかなぁ。

でなければ、LogoVistaさんのほうで、EPWING変換サービスを始めてもらう。これ、有料でもいいと思うので、そしたらそこそこ商売になって現実的な気がします。どうでしょう、LogoVistaさん。


それがダメであれば、

LogoVistaブラウザを、とにかく使いやすくしてもらう

改めてLogoVistaブラウザを使い込んでみて、ここがいかん、こうしてほしいという要望をまとめようと思っています。で、それをもってLogoVistaに乗りこみます。

もし、この方向で前進したら、その次に、

LogoVistaブラウザで、EPWINGデータも読み込めるようにしてもらう

そうなったら、現行のEPWINGブラウザが不利になりそうですが……。

01:59 午後 翻訳・英語・ことば, 辞典・事典 | | コメント (1)

はてなブックマークに追加

2016.02.01

# JTF関西セミナー「翻訳の基礎スキルを見直そう」

こちらも、ようやく告知できるようになりました。

3月26日(土)のサン・フレアより前に、JTF関西セミナーに登壇します。昨年の8月(ほんま会)に続き、予想外に早く大阪行きということになりました。

リンク:JTF関西セミナー 第4回「翻訳の基礎スキルを見直そう」

3/18(金)14:00 ~ 17:00

です。

案内の詳細にもあるとおり、翻訳の基礎といっても、「原文の読解とか訳出の定石よりもっと手前の、翻訳者としての土台」の部分についてお話しする予定です。

・辞書のこと(残念ながら、今回は簡略版です)

・英語と日本語の文法の基礎

・スタイルガイドや一般的な表記のこと


おそらく、多くの翻訳者にとってはもう常識、という話かもしれません。でも、どのトピックも、私自身がこの数年でいろいろ実感してきたテーマでもあります。


たとえば、上のほうに「お話しする」と書きました。これ、「お話する」ではなく「お話しする」と書くのが本来は正しいと言われています。その理由を、適切な言葉できちんと説明できるでしょうか。

言ってみれば、そういう「翻訳者としての理論武装(ちょっと大げさかな)」に必要な基礎ということです。


今のところ、予定としては当日の午前中に大阪入り、翌日3/19(土)にちょっと遊んでから帰る、というところかなぁ。

03:43 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0)

はてなブックマークに追加