# Merriam Webster - オンラインの有料版と無料版
昨日のエントリで、ランダムハウスの日本語版がほとんど入手不可と書きました。
現在、電子データ版をほとんど入手できないもうひとつの大物が、これ。
Webster's Third New International Dictionaryです。
Random House Websterについてのエントリでもちらっと書いたとおり、"Webster"というブランドは誰でも使えるようになっていますが、Third New International は、現在のMerriam-Websterにつらなる、いわば「正統派Webster」の最新版です。
最新版といっても発行は1961年。
つまり、私と同い年なわけで、とても「最新」とは言えない。第4版の編集が進んでいるという噂もありますが、いつ出るものやら定かではありません。
したがって、正統派をうたうMerriam-Websterとして情報がこれより新しいのは、
こちらのCollegiate版(11th)ということになります。
では、Merriam-Websterさんは最近お仕事してないのかというと、そんなことはなくて、やはり現在はオンライン版が充実しています。
しかも、無料版と有料サブスクリプション版があるので、その比較も含めてご紹介しておこうと思います。
無料版はこちら。
リンク:Dictionary and Thesaurus | Merriam-Webster
基本的な特徴は、英英の各種オンライン辞書について書いた以前のエントリに書きました。
Websterの伝統にのっとった、百科事典的に詳しい説明が特長です。また、メインの語義のほか、やさしく言い換えた語義が載っていたり、学習辞典へのリンクがあったりするのも親切。
一方、こちらが有料サブスクリプション版。
リンク:Merriam-Webster Unabridged
その名も Unabridged。
年間29.95ドルなので、KODの半分くらいですが、1冊だけでこれ、と考えると割高かもしれません。
では、無料版と有料版を比較するために、commodityという単語を引いてみます。
「ハードウェアがコモディティ化した」という使い方があります。コトバンクを見てみると、
コモディティとは一般化したため差別化が困難となった製品やサービスのことをいう。
と解説されていますが、この語義が載っている辞典はまだわずかです(手元で確認できたのは、Longman Advanced American Dictionary 2nd、American Heritage 5th、リーダーズ第3版くらいでした)。
まず、無料版から(クリックして拡大してみてください)。
赤線で囲んだのが、最近の用法に当たる語義です。語釈はすこし違いますが、1 c と 4 がどちらも該当します。1はeconomic goodとしての下位分類、4はもっと広い使い方ということでしょうか。
いずれにしても、こういう新しい用法がちゃんと収録されていました。さすがです。
ちなみに、See commodity defined for English-language learners というリンクがあります。このリンク先にあるのは、Merriam Webster Advanced Learner's Dictionary の内容。LogoVistaさんが『メリアムウェブスター英英辞典』という曖昧な名前で売っているのと同じです。
では、次に有料版。
無料版の 1 c と同じ語義が、2 c として立項されています。が、無料版の4のような詳しい語義はありません。
有料版のほうが役に立たない……という単純な話ではありません。新しい用法の情報が少ない分、本来の歴史主義に即して、archaic というラベルの付いた語義が 1 として立項され、例文も載っています。
要するに、有料版のほうは、Third International で止まってはいるものの正統派Websterの伝統を守りつつ、新しい用法も慎重に採り入れている。いわば、学究的な内容だということ。
対する無料版のほうは、多くのユーザーの役に立つよう無料で提供し、新しい使い方もどんどん紹介していくという現実路線。
そういう違いなのでしょう。無料版と有料版の差別化としては、なかなか妥当だという気がします。
それにしても、無料でこれだけの充実度。感謝です。
12:03 午前 翻訳・英語・ことば 辞典・事典 | URL
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