# トンデモな発注で情報流出だって
先日、機械翻訳のトンデモ出力のことを書きました。そのときの要点をまとめます。
・機械翻訳には、もっともっと進化してもらいたい
・ソリューションを提供する側も使う側も、もっとちゃんと考えてほしい
・お役所仕事の典型なんだろうけど
それから1か月も経たないうちに、今度は、そんなお役所仕事のもっとお粗末な顛末が発覚しました。
ニュース記事はすぐリンクが切れてしまうので、魚拓を貼っておきます。
魚拓:http://megalodon.jp/2015-0401-1020-55/mainichi.jp/select/news/20150331k0000m040165000c.html
ニュースでは「インターネットの掲示板で仕事を依頼するサイト」としか書かれていませんが、こちらのブログで、ランサーズという会社のサービスであることがわかります。
リンク:原子力規制委員会の内部文章がランサーズ経由で漏洩!? - Hagex-day info
その後の経緯についても、同ブログの後続記事で詳しく書かれています。
リンク:原子力規制委員会のデータはやっぱり流出してはダメな奴でした - Hagex-day info
そして、その翻訳案件の依頼記事も、まだ見られる状態。
リンク:至急 原子力パワーポイントスライドの翻訳 の依頼/外注 | 英語翻訳・英文翻訳の仕事 | ランサーズ
ただし、こちらはいつなくなるかわからないので、スクリーンショットも貼っておきます。
(縦長の画像です。ブラウザの新規ウィンドウ/タブで開いて等倍にしてみてください)
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機械翻訳とならんで最近、急成長しているのが、こういうオンラインの翻訳サービスです。形態は少しずつ違いますが、だいたい「クラウド翻訳サービス」と呼ばれています。
ネット上で翻訳依頼が発生し、登録している翻訳者が基本的には早い者勝ちでその案件をゲットして翻訳する、という流れ。
そういう需給が成り立つ場面では、なかなか有効なサービスだろうと思います。翻訳の品質を保証する仕組みもいろいろとあるみたいです。
が、機械翻訳と同じく、やはり使い方を間違えたらトンデモないことになるのは当たり前。そのうち何か起きるだろうとは思っていましたが、いきなりこれです。
依頼内容の秘密保持なんて、基本中の基本でしょう。
それが、こうやって平気で流出し、しかも依頼したほうはその事態の重要さにあまり気付いていない様子。
今回のケース、国の行政のあり方とか、原子力行政の呆れた実態とか、いろんな要素がからんでいるとは思います。翻訳業界の問題としてだけ考えます。
安直な機械翻訳でも、いいかげんなクラウド翻訳でも、ひとことで言うと
翻訳ということをナメすぎてる
と思うわけです。
発注する側も、ソリューションを提供する側も、
翻訳なんて、たいしたリソースをかけなくても、なんとかなるでしょ。
くらいの意識でしかない。
翻訳者のステータスがないがしろにされているとか、そういう話ではありません。よく言われることですが、欧米では、翻訳者名が作品に載らないことも多いそうで、日本のほうが翻訳者の名前は表に出てきている。そういうことではないのです。
欧米には、大学にも翻訳課程というのがあって、学位や資格もある。つまり、翻訳者個人ということではなく、翻訳という情報処理の重要さが社会的にきちんと認識・認知されているということです。
話が飛ぶようですが、先の大戦で、連合国側が暗号化と暗号の解読ということに、どれだけのリソースを使ったことか。先日公開された、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』とか、2002年の映画『ウインドトーカーズ』を見るとよくわかります。
つまり、連合国側は、情報ということの大切さを当たり前のようにちゃんと理解していた。そこの認識に雲泥の差があったから、ナチスドイツはエニグマの暗号化性能を過信したし、日本だって暗号を完全に解読されて山本五十六を死なせてしまった。
翻訳というプロセスを軽視することには、なんだか、そういう情報軽視の風潮と通じるものを感じます。
文化の定義はいろいろですが、文化を支えているのは情報です。情報を軽んじた文化は、衰退するんじゃないか、そこまで危惧してしまう、この1か月でした。
10:57 午前 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | URL
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