# SIIの電子辞書ビジネスからの撤退に思う、その3
カシオ、シャープ、SIIの3社のコンテンツについての考え方に、もう少し踏み込んでみます。
カシオもシャープも120~180と3桁のコンテンツ数を誇っていますが、製品ページをちょっと見ればわかるように、そのかなりは
・歳時記とか薬の本のような日常的リファレンス本
・英会話など、どちらかと言うとハウツー系コンテンツ
・日経ビジネスなどのビジネス書のうち用語集の体裁をしたもの
が占めています。
一家に一台の「生活家電」としてはこのほうがありがたいのかもしれませんね。
そういうコンテンツを除き、本来的な意味での辞書だけをまとめて比較した表を以前にもアップしましたが、今回は以下に書いたシャープの2機種を追加してみました。
翻訳者ご用達電子辞書の収録コンテンツ一覧 - 10/26版(Excelファイル)
(※クリックすると、すぐにファイルがダウンロードされます)
英語のプロ向け機種と思われるのは
SIIのDF-X10001(F列)
カシオのXD-U18000(J列)
ですが、カシオはウィズダムやオーレックスのような学習辞書、古語辞典、それから百科事典が充実しています。汎用性が高い、想定ユーザーが広いということでしょう。
実際、カシオの機種は私も気になることがあります。
わからないのは、シャープの製品です。
リンク:タイプ別で選ぶ(ビジネス・語学)| 電子辞書:シャープ
ここを見る限り、上の2機種に該当しそうなのは
PW-SB1
PW-A9300
の2機種ですが、まず実売価格にびっくり。PW-SB1が21,713円、PW-A9300が19,400円(ともに価格.com)だそうです。ちなみに、価格の高い順に並べてみたら、いちばん高いのは2008年モデルでした(それでも36,000円)。
PW-SB1もPW-A9300も、英和大が「ジーニアス」のみ、英英がOALDのみと、ふつうのビジネス用途ならともかく、通翻訳者のご用達にならないのは明らかです。
特に首をひねってしまうのが、このあたりのラインアップです。
200万語専門用語英和和英大辞典(日中韓辭典研究所)(PW-SB1)
専門用語100万語和英大辞典(日中韓辭典研究所)(PW-A9300)
英語類語使い分け辞典(創拓社出版)(両機種)
例解 慣用句辞典(創拓社出版)(両機種)
日中韓辭典研究所の辞書はWeblioに収録されていて、以前、友人から聞いた情報をエントリにしたことがあります。けっして怪しいデータではありませんが、異色であることは確かです。
創拓社というのは、どっちかというとハウツー語学系でしょうか。私は知りませんでした。
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こうやって、電子辞書各社の特徴を並べてみると、辞典・事典というものに対する世間一般の認識と、通翻訳者の意識には、相当のずれがあることがはっきりします。
通翻訳者に近いのは大学の先生とか研究職の一部かもしれませんが、それをぜんぶ合わせても、マーケットとして弱小なんですよね、きっと。
いろいろと考えさせられました。
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コメント
英語類語使い分け辞典(創拓社出版)
例解 慣用句辞典(創拓社出版)
を含め創拓社出版の辞典を何冊か持っていますが、情報が簡潔にまとめられていて、悪い辞書ではないですよ。まあ通翻訳者向きというよりは一般向きですが。
投稿: バックステージ | 2014/10/27 3:49:39
バックステージさん、なるほど、そうですか。情報提供に感謝です。
そうですね、それほどいいかげんなコンテンツを収録するはずはありませんからね。
投稿: baldhatter | 2014/10/27 8:14:12