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2014.07.21

# 「読ませるIT翻訳」の宿題~資料の信頼性ということ~

ちょっと時間が経ってしまいましたが、5/31と6/14にサン・フレア アカデミーで開催した標題のセミナーで、

high-level

という単語を"宿題"にしました。

おおむねはセミナーのときに説明しましたが、宿題の趣旨は以下のとおりです。

high-levelという語が、「高級」とか「ハイレベル」を表すのではなく、「概要、大枠」の意味で使われることが多いのは経験的にわかっています。が、これを明確に示した信頼性の高い資料が見つかっていません。何かないでしょうか。

これに対し、何人かの方から"答案"をいただきましたので、一部を紹介しつつ、私なりの"解説"をしておこうと思います。

ある方からは、

・シソーラスにおける上位語はおおまかな意味を持ち、下位語になるほど具体的になる

・以前から「トップダウン」という言葉があり、ここでも上位から下位になるほど具体化する

というご指摘をいただきました。そうですね。そういう事実は確かにあります。が、これも定着している慣例を示していただいただけで、「経験的な定義」の域を出ていません。


それから、いくつか個人ブログをご紹介くださった方もいます。

http://blog.livedoor.jp/projectfinance/archives/51890277.html

http://bistrogoody.blog56.fc2.com/blog-entry-112.html

http://homepage2.nifty.com/tnatori/trans/mistrans.html#041005a

最後のページは私も見たことがありました。これらも、傍証としてはなかなか有力です。が、私が欲しかった「信頼性の高い」情報とは異なります。

※セミナーのとき、「信頼性の高い資料を探してください」という言い方はしなかったと思いますが、趣旨は伝わっていたものと思います。


一方、プログラミングでよく出てくる high-level language の話を出してくださった方もいます。訳語としては「高水準言語、高級言語」と言われるやつですね。人間には判読できない機械語に対し、PascalとかJavaのように基本的には英語と似ていて人間が意味をつかみやすいプログラミング言語のことを high-level (programming) language と言います。

これは、確かに今回の話に近いと言えなくもありません。「高水準言語」についてはよく、

記述の抽象度が高いプログラミング言語

と言われることもあります 。これは日本語版Wikipediaからの引用ですが、英語版でも、

In computer science, a high-level programming language is a programming language with strong abstraction from the details of the computer.
(太字は引用者)

と書かれています。ただし、機械語と比べてC言語とかJavaの「抽象度が高い」というのは、感覚的にはちょっとわかりにくいかもしれません。詳しくは、上の英語版Wikipediaの記述で、abstractionにリンクが貼ってあります。そちらをどうぞ。

そしてこれも、こういう用法があるというだけで、最初の疑問に対する明解な答えになっているとは言い切れないようです。辞書を見ると、

a high-level computer language is similar to human language rather than machine language(LDOCE)

とか

〈プログラム言語が〉高水準の《自然言語に近いもの,たとえば BASIC, COBOL, FORTRAN などについていう》
(リーダーズV3)

と、すでに専門用語の語義として定着したものとして書かれているからです。

実際、「概要、大枠」の意味を挙げてある辞書というのは、私の手元でもオンラインでも、実はひとつもありません。オンライン辞書については、今日の時点で思いつく限りを当たってみましたが、これだという記述は、残念ながら見つかりませんでした。


私がすでに確認している資料は、ひとまずWikipediaの以下の項目くらいです。

High- and low-level - Wikipedia, the free encyclopedia

A high-level description is one that is more abstracted, describes overall goals and systemic features, and is typically more concerned with the system as a whole, or larger components of it.

これなら、まさに「概要」に当たりそうです。

私と同じく、このWikipediaの記述に目をつけた個人ブログはやはりありました。

リンク:high-level ですが、何か?―『明日は誰のものか』謝辞(その3) | 英日 誤訳どんぶり


が、Wikipediaのこの記述も「十分な出典、根拠」があるとは言いがたい。その証拠に、このエントリにはこういう注意書きがあります。

This article does not cite any references or sources. Please help improve this article by adding citations to reliable sources. Unsourced material may be challenged and removed. (December 2009)


英語版Wikipediaにすらこう書いてある以上、現時点では

一定以上の信頼性のある資料はない

と結論するしかなさそうです。

えー、宿題を出しといてそれが答えかよーっ、とお叱りを受けそうですね。少なくとも、英語圏の文章で言及している資料が欲しいところです。


リンク:meaning - What is a "high-level conversation"? - English Language & Usage Stack Exchange

ここでは、Q&Aの形で

A high-level conversation is one where you discuss generalities instead of focusing on details.

という回答が上がっています。


同じようなQ&Aサイトばかりですが、

リンク:Business Plans - Writing the Executive Summary

では、

The Executive Summary area that's included in formal business plans, is a high-level overview of the business plan document that includes a summary of information about:


いずれも、私が求めていた「信頼性の高い資料」には当たりません。が、少なくとも日本人の書いた個人ブログよりは、資料としてちょっとだけ拠り所になりそうです。

ということでセミナーの補足をしました。

「読ませるIT翻訳」、第4弾は秋ごろに……、たぶん……あるんじゃないでしょうか。


12:00 午前 翻訳・英語・ことば |

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