« # 「日本翻訳ジャーナル」7/8月号 | トップページ | # 「読ませるIT翻訳」第2回のご報告、その他 »

2013.07.15

# forwad compatibilityとbackward compatibility

某所で出題した課題文に、forward compatibilityという用語が出てきます。

forward compatibility
backward compatibility

ついでに、

upward compatibility
downward compatibility

さらに、

upper compatibility
lower compatibility

まで含めると、用法がカオスになっています。英語だけ見ても使われ方は混乱してますし、訳語もばらばら。そして、あらためて調べてみたら、少なからぬ辞書で説明までいいかげんであることが分かりました。

手元にある辞書やオンラインの用語サイトなどから、

forward compatibility/backward compatibility

upward compatibility/downward compatibility

の訳語と語義を一覧にしてみました。

compatibility訳語・語義一覧
(ExcelファイルがDLされます)

upper compatibility/lower compatibility

を含めなかったのは、ざっとの感触でしかないのですが、この組み合わせが日本語サイトで多くヒットするわりに、英語サイトのはあまりヒットしない感じだからです。


英語としての用法についても、訳語まで含めた場合でも、「これが絶対に間違いない記述」と断定できる資料はありません。しかたがないので、以下の一例を基準にしました。

Word 2007以降で、docxだけでなくdocも開ける……A

Word 2003で、docxを開ける(プラグイン必要)……B

一般的に、Aの互換性のほうが簡単ですね。プレステ2でプレステのゲームも動くとか。逆に、Bのほうが難しいのは感覚的によくわかります。プレステではプレステ2のゲームはまず動きません。実現する場合でも、Wordのプラグインのような工夫が必要。「白黒テレビでもカラー放送を受信できた」のはBの例ですね。

私が作った表では、このうちAをクリーム色、Bを水色に塗り分けてみました。

これを見ると、有名どころの辞書でも、訳語にばらつきがあるだけでなく、説明までけっこう杜撰なことがわかります。


リーダーズには、4つのうち3つのエントリがありますが、よく見ると説明がどれも同じになっています。

英辞郎は、訳語のうえでは対がとれていますが、やはり説明が4つとも同じ

ランダムハウスや、日外アソシエーツの『コンピューター用語辞典』など、多くの人が頼っているはずの辞書でさえ、実は解説が

何を言ってるかよく分からない

(分かる人いたら教えてください)。

研究社の『英和コンピューター用語辞典』でも、対になっているはずの概念の説明がやっぱり同じでした。


ここまで混乱している概念/用語も、なかなか珍しいのではないでしょうか。


【追記】

OEDに、upper compatibilityだけ語義の記載があったので、Excelファイルを更新しました。

11:30 午後 翻訳・英語・ことば |

はてなブックマークに追加

« # 「日本翻訳ジャーナル」7/8月号 | トップページ | # 「読ませるIT翻訳」第2回のご報告、その他 »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: # forwad compatibilityとbackward compatibility:

コメント

これは、面白くて為になるお話でした。
素人的には、「互換性」にいろいろなケースがある、ということが驚き! 私の頭の中では全てゴッチャになっていました。

具体例を示されると、よく分かります。
(A~DはExel表の分類です)
B(水色):forward compatibility 前方互換性
  Word 2003で、docxを開ける(プラグイン必要)

C(黄色):backward compatibility 後方互換性
  Word 2007以降で、docxだけでなくdocも開ける

辞書の説明は間違っていますね。間違いの方向性はおおむね、Bの意味を分かっていない。

でもそのココロは何となく理解できます。
世間一般には、互換性というと「C:backward compatibility」しか考えないから。
「B:forward compatibility 前方互換性」は出来なくて当たり前。この世に存在しない現象(プラグインするくらいなら、新バージョンに入れ換えるも同じ)と思っているから、
説明がいい加減になってしまうのでは。

--------
D:upward compatibility 上位互換性
  より上位の機種やモデルに対して使用可能なこと
E:downward compatibility 下位互換性
  より下位の機種やモデルに対して使用可能なこと

厳密には、上位・下位は、新・旧とは異なる概念ですよね。
新版=上位であることが多いかもしれませんが。

例を示すと、OSのWindowsスタンダード版とPro版、Win7の32ビット版と64ビット版で、それぞれソフトやデータが扱えるかというような趣旨でしょうか?

そうすると通常、Eはあり得るが、Dは出来なくて当たり前(プラグインが必要なら上位版を買うも同じ)

ユーザーとしては、新/上位版は、すべからく旧/下位版を使えるものであってほしい。backward/downward compatibility があることを期待する。
逆forward/upward compatibilityは、さすがに求めない。
けれど、現実にはbackward/downward compatibilityも、必ずしも保証されないのですね。

投稿: | 2013/07/16 11:55:14

コメントを書く

## コメントは承認制なので、公開されるまでに時間のかかることがあります。



(必須ではありません)