# 新・午前十時の映画祭 ~ 『アラビアのロレンス』
この時代の大作でおなじみの、冒頭のOvertureって、やっぱいいですねえ。観たことのある映画なら、この数分間だけでいろいろと記憶が喚起されて盛り上がるし、初見のときも期待がどんどんふくらむし。
この映画、子供の頃はじめて観たとき(もちろんテレビです)には、オマー・シャリフ演じるアリにぞっこんになりました。逆かな、アリを演じたオマー・シャリフに、かも。だから、その何年か後に『ドクトル・ジバゴ』のリバイバルがあったときには初日に駆けつけたくらい。
アリをひいきにするあまり、主人公であるロレンスというキャラクターに逆に感情移入できなかったことも、よく覚えています(調べたら、初のテレビ放映って1978年。ずいぶん後だったんですね)。
もちろん、その後はロレンス自身の葛藤や苦悩にも目はいくようになったし、それだけに今回も後半は特に辛いなあと思いつつ足を運んだわけですが――
そういうアリとロレンスの、あるいはイギリスとアラブの関係というのがちっぽけに見えるくらい、この映画の主役はやっぱり
砂漠
なんですね。だから、冒頭も石畳で始まる。と考えなきゃ、いきなりあの直上カットは冒頭として不自然です。
今どきならきっとCGで済ませてしまいそうな見事なロングショット。地平線に人影が見えてから近づいてくるまでの時間の長さ。砂漠をわたる風と砂の動き。
なにより、いつ終わるとも知れない砂漠横断の描写にあれだけの時間をかけられたという、(映画史の中でもおそらく、ある時期にしか許されなかった)映画的時間の優雅さ。
それだけに、砂漠を渡りきって目に飛び込んでくる海の青。
そのどれもが計算しつくされた美しい構図で、227分という時間の長さをちっとも感じさせない。
そんな美しい画面を、デジタル版で観られるようになったというのは、限りない贅沢すね(昔スクリーンで観たときは、フィルムがかなりくたびれてました)。しかも、音も素晴らしい。バイクのエンジン音とか、ラクダや馬の群れの足音、映画館でしか体験できません。
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後でいろいろ調べてた家内が、「ファイサル王子って、オビ=ワンだったんだ...」と驚いてましたが、アラブの族長の一人を演じていたのが、『道』のザンパノであることにはまったく気づいていない模様。
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コメント
『アラビアのロレンス』かあ。いいなあ、ぜひ大画面で観たいですね。
>CGてんこもりの作品を観る気がどんどん失せていく
同感、というか、『アイアンマン3』を子供と観に行った私の立場は(爆)。
>ファイサル王子がオビ=ワン
ウケました。一瞬、どっちのオビ=ワン?とか思ってしまいましたけど、決まってますよね。ザンパノ族長は、こんな役多い気がします。
投稿: | 2013/06/29 8:29:52
アリが地平線の彼方から現れる有名なシーン、VHSビデオでは最初アリの姿が見えず、存在しないものを俳優の演技で見えると思わせる斬新な演出なのか?(あるいは砂漠の民は目がいいから常人には見えないものが見えるという表現なのか)と思ってたんですが、後でDVDで観たらちゃんと最初のカットから見えました(笑)
すごく暗い話で、そんな話を巨費を投じて映画化して商業的に成功させてしまったのが驚異的です。(もちろんストーリーに感情移入できなくても映像だけで酔える作品ではあるんですが、それにしても大衆におもねるような演出が一切ないのがすごい)
アレック・ギネスはスターウォーズに出演したことをかなり後悔してたらしいですね。僕はSWのギネスも好きだし、あの人が出たおかげで映画の格調がぐっと高くなってよかったと思ってますが。
投稿: おじゃま丸 | 2013/06/30 9:46:29
> 一瞬、どっちのオビ=ワン?とか思ってしまいましたけど
(お名前がないのが残念です)
そうか、言われてみればそうですよね。若い頃のオビ=ワンはまったく頭になかったなぁ。
投稿: baldhatter | 2013/06/30 20:45:59
> 後でDVDで観たらちゃんと最初のカットから見えました
スクリーンで観ても、最初はほとんど分からなかったですよ。
> すごく暗い話
暗いんですよ、基本。でも、それをああいう風に描いちゃう大きさがスゴいと改めて思いました。
投稿: baldhatter | 2013/06/30 20:51:12
アラビアのロレンスは、単車のシーンが印象に残ってますね(大脱走もそうですが)。
単車好きになったのは、これらの映画のせいかもしれない。
新・午前十時の映画祭というのは、面白い企画ですね。しかも当方の近所の映画館でもやってることが判明!
できれば、『荒鷲の要塞』や『鷲は舞い降りた』、『針の目』などの作品をもう一度映画館で観たい。
投稿: prof | 2013/07/01 16:21:27
ゴメンナサイ、最初のコメントは私です。
ピーター・オトゥールは『ラ・マンチャの男』が好きなんですけど、ロレンスもよく似合っています。
投稿: みっち | 2013/07/01 19:23:12
偶然、今年名画座で観ました。
>CGてんこもりの作品を観る気がどんどん失せていく
砂漠のシーンはCGに比べて、とても時間をかけて丁寧に作ってあると関心さしました。それに何て言っても、10分間の休憩がある映画なんて何年ぶりかで見ました。(なんか当時は映画を見るのも優雅だっんだな。)しかもこの休憩を挟んで展開がガラリ変わってしまい、ロレンスをヒーロではなく弱さをもつ人間として描いてところも最近のハリウッド映画とは違ってました。
投稿: krispy | 2013/07/06 23:04:24
profさん
> できれば、『荒鷲の要塞』や『鷲は舞い降りた』、『針の目』などの作品を
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%88%E5%89%8D%E5%8D%81%E6%99%82%E3%81%AE%E6%98%A0%E7%94%BB%E7%A5%AD#.E4.B8.8A.E6.98.A0.E4.BD.9C.E5.93.81
こちらに過去の上映一覧がありますが、それらよりもっとメジャーな作品ばっかりかもですねぇ。
投稿: baldhatter | 2013/07/15 22:25:19
みっちさん、何となくそんな気はしてました。
> 『アイアンマン3』を子供と観に行った
のあたりで特に^^
krispyさん、コメントありがとうございます。
> 偶然、今年名画座で観ました。
へー、今でもこういう映画をかけてくれる"名画座"がありますかぁ。
投稿: baldhatter | 2013/07/15 22:26:51
帽子屋さん、
すみません、対応が遅れまして
>へー、今でもこういう映画をかけてくれる"名画座"がありますかぁ。
正確に言うと、川崎チネチッタで「名画座」という名前で、「午前十時の映画祭」と同様、昔の毎月1本上映してます。そこで、今日「卒業」を見てきました。こういった昔の映画を映画館の大スクリーンで見えるのはいいですね!来月はオードリー・ヘップバーンの3作「ティファニーで朝食を」、「パリの恋人」、「麗しのサブリナ」を日替わりで上映予定です。
投稿: krispy | 2013/08/24 21:36:17
krispyさん、情報ありがとうございます。
そう、今でもそういう風に昔ながらの「名画座」的興行を続けているところもあるんですよね... そういう映画館が1つだけでも
投稿: baldhatter | 2013/09/16 14:00:44