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2013.05.06

# 新・午前十時の映画祭 ~ 『大脱走』

★★★★★

「午前十時の映画祭」というこの企画、2010年からすでに3回も実施されていたのですが、これまで自分に余裕がなかったせいか、ずっと逃してきました。

リンク: 新・午前十時の映画祭 デジタルで甦る永遠の名作

今回は、上映劇場を3つのグループに分け、上映期間をずらしてあります。ウチからだと、

グループA:TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
グループC:楽天地シネマズ 錦糸町

のどちらにも簡単に行けるので(グループBのMOVIXさいたま、は近いけど乗り換えが面倒)、できれば全作品制覇を目指そうかな、と目論んでいます。


と言いつつ、第1サイクル(4/6~19)は逃してしまい、先日、まず錦糸町で『大脱走』を観てきました。


130506


この錦糸町の「楽天地シネマズ」は、いちおうスクリーンこそ4つあるものの、オンラインのチケット予約もなく全席自由席という、今となってはもはや珍しいスタイル。

客層は、ほとんど私ら夫婦より年輩ばかりでした。w


この映画についてはもう今さら言うべきことはありません。

マックイーン、ブロンソン、コバーン。『荒野の七人』組はもうみんな死んじゃいましたねぇ。

脱出組のなかでは、ドナルド・プレザンス(偽造屋ブライス)とジェイムズ・ガーナー(調達屋ヘンドリー)の訓練機奪取空路逃亡失敗エピソードがいちばん切ない。

リチャード・アッテンボローのビッグXを最終的に逮捕するドイツSS将校のカール・オットー・アルバーティは、傑作娯楽戦争物『戦略大作戦』(Kelly's Heroes)では、お茶目なドイツ兵を演じていて、この作品ではシリアスな場面なのに、どうしてもニヤっとしてしまいます。

この映画、私は、7~8年くらい前に東銀座の東劇でもリバイバルを観ていますが、家内は大スクリーンでの鑑賞は初めて。そもそも家内によると、「テレビで見たとき、どの人がどっちの軍なのかもよく判らなかった」とか。

たしかに。子どもの頃初めてテレビで見たとき、自分も似たように感じた覚えがあります。

いちばん違和感があったのは、「捕虜収容所」という場所のイメージ。刑務所とか強制労働所とは言わないまでも、もっと過酷な環境を想像していたので(そのイメージの出どころはよく判りませんが)、舞台となったあの収容所の雰囲気が、最初はなかなかピンときませんでした。

捕虜の扱いがずいぶん丁寧だし、話し方は対等だし、脱走を試みれば射殺はあるけどそれ以外に暴力は一切ないし、物資は当たり前のように手に入るし...。


ということで、もし本作を未見の方は、以下の点をふまえておくといいでしょう。

・戦時中の捕虜の生命・身分は、1929年のジュネーブ条約、「俘虜の待遇に関する条約」で保証されていた。

・本作品の舞台になる収容所は「第三空軍捕虜収容所」といい、空軍将校専用だった。将校となると、やはり兵士とは扱いがいろいろ異なるし、将校自身も兵士とは振る舞いが違っていた。

・(これは映画の冒頭で説明があるが)この当時の捕虜にとって、脱走(を企てること)は敵軍の後方攪乱という名目で、立派に兵役の一部だったので、不名誉とはまったく無縁だった。まして、「生きて虜囚の辱を受けず」という日本式の発想が皆無であることは言うまでもない。

・(これも映画の冒頭で描かれている)ドイツ軍内部でも、ゲシュタポとSSはけっこう嫌われていた。


『大脱走』、グループBは8/24~9/6、グループAは12/14~27と、まだまだチャンスがあります(私も六本木でもう1回観るつもり)。

01:14 午後 映画・テレビ |

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コメント

『大脱走』は大昔(と言っても高校生以上だったと思います)にテレビで見ました。
連合軍の「捕虜収容所」のイメージについては、既に文献等で修正されていたので、そんなものかという感じ。
過酷なイメージは、国際法を守らなかった日本軍の捕虜の扱いでしょう。『戦場にかける橋』(1957年・英米)など。

それでも、脱走が捕虜の「義務」であり、
たとえ逃げ延びることができずに捕まって収容所に戻されても、
相手国の兵員を捕虜捜索に割かせることができれば、それはそれで一応の一応の成功なのだ、という考え方は、目から鱗でした。

-------
捕虜収容所を舞台にしたミステリーで、『捕虜収容所の死』というのがあります。
マイケル・ギルバート作 創元推理文庫
脱走用に堀進められたトンネルの中で、一人の捕虜が死んでいた。殺人者は誰か、捕虜の中に紛れ込んだスパイは誰か、ドイツ軍が捕虜を連れに来るまでに全員が脱出できるか? 
ミステリとスリラーが混合した秀作です。

投稿: 白い都 | 2013/05/06 20:58:26

記事を読んで僕ももう一度見直したくなりました(^^)
観たのはほんとに大昔なので、今観たらいろいろ違った感想を持ちそうです。VHSビデオのパッケージはみんなが一斉にドドドと脱走してる絵だったと思うのですが、実際にはそんなシーンはないんですよね。
あと音楽担当のエルマー・バーンスタインとレナード・バーンスタインがいつもごっちゃになってしまいます(笑)

投稿: おじゃま丸 | 2013/05/09 21:29:15

白い都さん。だいたい私らとその前後の世代なら、初めて見たのはテレビですよね。だから当然吹き替え。この頃の映画はだいたい吹き替えも人気が高くて、DVDでも必ずそこんとこが話題になりますね。

『捕虜収容所の死』、おもしろそうですねー。

投稿: baldhatter | 2013/05/14 2:13:54

おじゃま丸さん。まだ劇場によってはチャンスがありますから、ぜひぜひ。

> エルマー・バーンスタインとレナード・バーンスタインがいつもごっちゃになってしまいます

あはは。それは気付かなかった^^

投稿: baldhatter | 2013/05/14 2:15:27

『大脱走』は子供のころ、本当によくテレビでやってましたね。単車が好きになったのは、この映画の影響かもしれない(笑)。
Steve McQueenは大好きですが、『パピヨン』の囚人役が他の作品のイメージとは違って意外とよかったです。あと、戦争映画であれば、やはり『荒鷲の要塞』や『戦争のはらわた』(意味不明だがすごいタイトルだと感心する)がいいです。
いずれにせよ、学生時代は池袋の文芸坐に入り浸ってましたが、地方在住の今はそれもできず、レンタルDVD中心なのはさびしい、、、。

投稿: prof | 2013/05/15 10:56:42

profさん、コメント返信すっかり遅くなりました。

池袋文芸座、私もほんとにお世話になりました。なにしろ、学校から近すぎた^^

投稿: baldhatter | 2013/06/10 14:09:28

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