« # 翻訳単価データについて | トップページ | # SimplyTermsとTrados »

2012.09.23

# Weblioを使うときの注意

(はじめは、「辞書の権威」という大仰な見出しにしようかとも思ったのですが、ちょっと手に余るので、現実的な話にとどめることにしました)

Weblioのことをこのブログで初めて紹介したのは、もう6年も前のことでした。その後、収録される辞典/事典/用語集の数は着実に増え、最近はGoogle検索してもかなりの確率で上位にくるようになりました。


ただ、そうなると気になるのが、はたして収録されているデータの信憑性はどうなのかということ。辞書と付き合うとき、

信じるはバカ、引かぬは大バカ: Buckeye the Translator

が大前提であるのは言うまでもありませんが、そのためには、辞典/事典/用語集の素性をわかっておく必要があります。

たとえば、installation という単語を引いてみます(Weblioのサイトからでもいいですし、ググってもたいてい上位にきます)。

リンク: installationの意味 - 英和辞典 Weblio辞書


語義は、辞書ごとのセクションに分かれて表示されますが、各セクションの頭には必ず、出典を示すリンクがあります。

1209231

左側の「研究社 新英和中辞典」をクリックすると、Weblio内で出典を簡単に説明したページにジャンプし、右側の「研究社」ロゴをクリックすると研究社のサイトに進みます。

せっかくなので、installationのページに並んでいる出典を確認してみます。


Ws000000

Ws000001

の2つは、どちらもサイトのトップページに飛ぶので出典がすぐ出てくるわけではありませんが、サイト内で検索すれば出典がどんな辞書か簡単にわかります。新英和中はまあいいとして、同じ研究社の『英和コンピューター用語辞典』も、日外の『斎藤和英大辞典』も、(ちょっと後に出てくる)『コンピューター用語辞典』や『機械工学英和和英辞典』も、素性ははっきりしています。


では、4つ目に出てくる(2012/09/23現在)、「和英マシニング用語集」

Ws000002

ってのはどうでしょう。リンク先はやはりトップページですが、ページ下部に行くとサイトマップがあって、「マシニング関連和英辞典」というリンクがあります。説明はいっさいないので、権威付けにはやや欠けますが、天下の住友電工が掲げている以上、業界用語としてまるでデタラメというわけでもなさそうです。


そのすぐ後には、

Ws000003

がありますが、ロゴからではなく「マイクロソフト用語集」のリンクから進むと、おなじみの「Microsoftランゲージ ポータル」が開きます。ここを疑ってしまうと、たぶんIT翻訳業界のあちこちが成立しなくなります。


少し進むと、だいぶ毛色の違うロゴ。

Ws000004

そんな協会があるんですねw リンク先に「河川・水資源 日英用語集」という項目があって、無条件に使えるかどうかは別として、いちおうある程度の業界団体が作っているとわかります。


その次の

Ws000005

これはWeblioでよく見かけます。リンク先が go.jp ですから、信憑性はともなく権威はありますね。少し後にある

Ws000006

こちらもほぼ同様です。


その近くにある「ライフサイエンス辞書」はどうでしょうか。

Ws000007

おっと。リンク先は京都大学ですねー(kyoto-u.ac.jp)。「About Us」を見ると、このサイトの詳細がわかりますし、なかなか使えそうです。


……と、ここまでは素性もわかるし、アテになるかどうか、少なくともその判断材料はそれなりにありました。問題はここからです。

Ws000008

このロゴ、ある時期からとてもよく見かけるようになりました。「日英・英日専門用語辞書」ということですが、編集しているのは「日中韓辭典研究所」というところ。代表者は春遍雀來(ハルペン・ジャック)という人で、辞書編集者として実績があるようです(なにかご存じの方がいらっしゃれば、ぜひ情報をご提供ください)。そのうえ、収録データについても詳しいページがあって、

The CJK Dictionary Institute, Inc. - Chinese, Japanese and Korean (CJK) Dictionary Data

基本的には、別資料からの孫引きではなく、すべてこの方が収集したデータということなのでしょうか。信頼できるのかどうか、ちょっと悩んでしまいます。

そして、最後に登場するのがこれです。

Ws000009

「クロスランゲージ 37分野専門語辞書」。あのクロスランゲージさんですね。

Weblioサイト内では、「ビジネス、科学技術、医療、医学分野など複数の分野の専門用語を収録した総合的な英和対訳辞書です」と説明されています。リンク先は同社のトップページですが、今までのサイトと違って、この「37分野専門語辞書」についての説明はまったく見つかりません。

Google検索しても、ヒットするのはWeblioのページばかりで、ようやく見つかったのがこのページです。

リンク: 仕様|プレミアム機械翻訳|クロスランゲージ

が、このページにも収録語数と分野が列挙してあるだけで、このデータがどんなものなのか、正体を知ることはまったくできませんでした。

念のために付け加えますが、最後の「37分野専門語辞書」のデータがまったく信用できないと言っているのではありません。信頼できる辞書なのであれば、ちゃんと、素性を書いておくべきだということです。

その点では、これを採用しているWeblioについても責任の一端はあると思います。この辞書が追加されたときのWeblioブログにも、

「早期ビリルビン」、「有機すず重合体」、「nannoplankton」など、ビジネス、科学技術、医療、医学分野など複数の分野の専門用語を収録した総合的な英和対訳辞書です。

としか書いてないからです。

もっとも、根拠薄弱なまま採用されているデータはこのほかにもけっこうあるみたいです。この手のサイトは取扱い要注意、という原則はやはり忘れるべきではありません。

09:35 午前 辞典・事典 |

はてなブックマークに追加

« # 翻訳単価データについて | トップページ | # SimplyTermsとTrados »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13481/55723601

この記事へのトラックバック一覧です: # Weblioを使うときの注意:

コメント

帽子屋さん、ライフサイエンス辞書は医薬分野ではものすごくお薦めですよ。10年くらい前、もっと前からかな。

ただ、最近EPWINGを作るのをやめてWebベースに移ってしまったようです。その分新しい用語が更新されているようですが……わたしはギリギリEPWINGを手に入れてそれで引いてます。

投稿: ヨシダヒロコ | 2012/09/23 12:03:07

はい、EPWING版は私のJammingにも入っています。

今確かめたら、利用規程が「2010.1改訂」でした。

投稿: baldhatter | 2012/09/23 12:08:29

ライフサイエンス辞書を作って折られる金子さんは、昔、翻訳フォーラムものぞいてくださっていて、私自身ご教示いただいたこともあります。もとをたどれば、生化若手の会の有志を母体にしてはじまったプロジェクトと(勝手に)理解していますが、ほんとうによい仕事をしてくださっており感謝の念にたえません。

投稿: Sakino | 2012/09/23 13:10:34

あぁ、そうだったんですねー。

先人の経験と知恵を使わせていただけるありがたさ。

投稿: baldhatter | 2012/09/23 13:26:39

日中韓辭典研究所は、LogoVistaから『英和和英100万語専門用語対訳大辞典』を出しています。この辞書の書籍版は刊行されていません。

http://www.logovista.co.jp/LVERP/shop/ItemDetail.aspx?contents_code=LVDNC01010

投稿: バックステージ | 2012/09/23 20:55:27

はい、私もそのリンクには気づきました。LogoVistaの『英和和英100万語専門用語対訳大辞典』に、どこまでちゃんと説明が書いてあるのか、気になります。少なくとも、サイトの説明では納得できませんね。

投稿: baldhatter | 2012/09/23 21:14:35

『英和和英100万語専門用語対訳大辞典』を持っていますが、ダウンロード版なので、パッケージに何が書いてあるかは知りません。

ちなみに引いて出てくるのは、英語と日本語の対訳、それと分野だけです。

投稿: バックステージ | 2012/09/23 21:25:15

それと私としては、これらの辞書の内容について、baldhatterさんの感想を伺ってみたく思います。
installationという単語を引いて出てきた結果は、baldhatterさんから見て納得できるものだったのでしょうか。権威はあるけど使えない辞書だったということはなかったでしょうか。

投稿: バックステージ | 2012/09/24 15:39:23

> baldhatterさんの感想を伺ってみたく思います

なるほどー、ごもっともなご指摘です。大ざっぱに言うと、最後の正体不明のやつを除けば「それぞれ使い途はあるだろう」というところです。細かく言うと、

・コンピュータ系(Microsoft、研究社、日外)の辞書はどれも△。
・河川用語などは私自身が専門外なので判定不可。
・斎藤和英は、和英なのにこうしう表示をする意味が不明。
・日本語WordNetは今後に注目。

というところです。コンピュータ系がどうして△かは、こちらをご覧ください。
http://baldhatter.txt-nifty.com/dic/2011/06/installation.html

投稿: baldhatter | 2012/09/24 15:54:21

国際建設技術協会の「河川・水資源 日英用語集」、語彙はすごく多いみたいです。
編集者は、専門家(業界の大物?、元官僚?、外郭団体)のようです。多くの語彙を採用したためか、和製英語に近い語があると思うのは 私一人でしょうか。

投稿: y_ya | 2015/08/05 6:15:31

コメントを書く

## コメントは承認制なので、公開されるまでに時間のかかることがあります。



(必須ではありません)