# 「無生物主語」をめぐる珍訳、その1
The client nodes get the data from your data sources and send it to the server.
という何でもない原文が、こんな意味不明な訳文になっていることが、悲しいかなIT翻訳の世界では少なくありません。
クライアントノードでは、データソースからデータを取得して、それをサーバーに送ります。
どうして、ごく素直に「クライアントノードはデータソースからデータを取得し~」としないで、「クライアントノードでは~」などという訳になるのでしょうか。
その原因は、「無生物主語をそのまま主語として訳さない」というルールが、各社のスタイルガイドに中途半端な形で載っているからです。以前からこの話をまとめたいと思っていました。
以下、かなーり長くなります。
まず、ネット上でいくつか情報を拾ってみました。
おなじみのこのサイトがヒットしました。
リンク: 翻訳の泉 - 第2回 受身の話
例文がいくつか挙げられています。英文だけ載せ、使われている動詞に注目してみます。
This procedure enables the values of capacitors 18 and 20 always to be changed in the correct direction in the determination of the trajectory.--[1]
This method of using a non-ITO pixel electrode simplifies the process of fabricating a Si active matrix array.--[2]
If the proposed corporate action creates dissenters' rights,the notice must state that shareholders and beneficial shareholders are entitled to assert dissenters' rights.--[3]
This invention relates to semiconductor processing.--[4]
次に、DHCさんの通信講座ページがヒットしました。例文はこうです。
This method will enable you to access your e-mail from anywhere in the world.--[5]
Smack Translationsのページも見つかりましたw
リンク: 第三回 沖縄翻訳セミナー 【英日】翻訳入門ワークショップ まとめ
A few hours' talk should enable them to reach an agreement.--[6]
そして、JATではなくJTA(=日本翻訳協会)にもこんなページがあり、
リンク: 模擬試験対応 - (社)日本翻訳協会 新・翻訳検定 JTA公認翻訳専門職資格試験
例文が5つ挙げられています。
His father’s death compelled him to give up school.--[7]
A year in America will cost you much money.--[8]
Quick treatment would save his life.--[9]
The noise in the street kept him awake all night.--[10]
A little care would have prevented him from injuring himself.--[11]
さらに、今度はJATの、過去記事アーカイブのようですが、富井篤さんの記事が見つかりました。
そもそも無生物主語構文は、「因果関係」を表す時に使われる構文で、日本語のように、「原因」と「結果」をそれぞれ節や文で書くのではなく、「原因」を主語に、「結果」を述部に据え、一つの文章で「因果関係」を表してしまう構文です。代表的な三つのパターンに入る前に、それぞれのパターンに共通した和訳手法を紹介します。
Higher operating temperatures shorten the lubricant life.--[12]
The rotation of the drum causes the water to flow out of the outlet opening.--[13]
The use of pressure-tight solenoids allows a low-cost valve design.--[14]
どうでしょうか。
こうやって例文を並べてくると、いわゆる「無生物主語の構文」に使われる動詞には一定の傾向があることがわかります。
そこで、『ロイヤル英文法』の登場です。
例文は省きますが、
原因や理由,方法や手段,条件となるものなど(無生物)を主語にして,それが人間を「~させる,する」という形で表すものが無生物主語の構文である。無生物が主語になる場合と,疑問詞が主語になる場合とにわける。
と説明したうえで、この構文に使う動詞が、次のように分類されています。
<A>「~させる」型-cause,make; compel,force,oblige; allow permit,enable,その他使役の意味の動詞
<B>「~するのを妨げる」型-keep,prevent,stop
<C>「~を連れていく/くる」型-bring,carry,take,lead
<D>「~(の状態に)する」型-get,put,set; drive
<E>「~(の状態に)しておく」型-keep,leave
<F>「~を示す」型-prove,reveal,show,suggest,teach,tell
<G>「~(の犠牲を)払わせる」型-cost,deprive,require
<H>「~(の手間)を省かせる」型-save,spare
<I>「~を思い出させる」型-remind
<J>その他-give,obtain,findなど
さすがです。これでだいぶこの構文の動詞群を整理できた気がします。
翻訳の泉の例文[1]は<A>型、例文[2]は敢えて言うと<D>型でしょうか。例文[3]と[4]は、どちらも<F>型です。
DHCとスマックの例文は、ともに<A>型。
JTAの例文は、[7]が<A>型、[8]が<G>型、[9]が<H>型、[10]が<E>型、[11]が<B>型ということになります。
富井篤さんの例文は、[12]が<D>型、[13]が<A>型、[14]も<A>型です。
こういう文型のとき、英文の主語をそのまま訳文の主語にはせず、それぞれ訳し方を考えてね、という話なら問題ありません。
では、特にIT系に多いと思われるスタイルガイドの指定には、どんな問題があるのでしょうか。項を改めます。
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コメント
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投稿: Puma vetements | 2012/09/04 7:28:54