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2012.09.30

# 今度はテレビ東京のサイト - 機械翻訳システムの害はかなり広いのかも

この春、東北観光博の公式サイトや奈良県のホームページで、機械翻訳の出力がそのまま公開されていてトンデモないことになったことは、すでにみなさんもご存じのことと思います。

関連リンク: 東北観光博機械翻訳騒動~翻訳者の視点 - Togetter

拙ブログの過去記事: # またも機械翻訳騒動。だけどそれだけのことではないかもしれず

そして今日また、テレビ東京の外国語サイトがトンデモないことになっていることがわかりました。
リンク: テレビ東京HPが自動機械翻訳でめちゃくちゃな英語になっている。 - Togetter


しかも、今日9/30は International Translation Day じゃないですか。そんな日に、こんな情けない事態を目にしなきゃいけないとは……

たとえば、こちらをご覧ください(削除されてしまったら、魚拓リンクに切り替えます)。

リンク: Kioroshi group cup figure skating Japan opening 2012 (Japan Open 2012): TV TOKYO

リンク: KITCHEN TALK: TV TOKYO

前者はフィギュアスケートの大会、後者はテレ東の料理番組のページです。

前者は協賛者である「木下グループ」の表記が「Kioroshi group」になっているなど、そもそも失礼極まりない内容です。英語の本文も、たとえば、

【元の日本語】
フィギュアスケートの人気・実力が高い日本、欧州、北米の注目選手達がさいたまに集結!
(引用元: http://www.tv-tokyo.co.jp/japanopen2012/info.html#outline

【機械翻訳】
Japan which is high in popularity, ability of figure skating, Europe, North American attention players are the concentration in Saitama!

と、まったく意味不明な語の並びだらけです。


2つ目は「ケンタロウさんの降板に関しまして」と題する内容の翻訳ですが、

【元の日本語】
所属事務所から療養が長期に渡り治療に専念したいことから、番組を降板したいとの連絡がありました。
(引用元: http://www.tv-tokyo.co.jp/danshigohan/

【機械翻訳】
Because medical treatment wants to devote itself to treatment from position office for long term,
There was communication that we wanted to leave program.

私の英語力では、どうやっても解釈できませんw

実は、東北観光博もテレビ東京も、機械翻訳には同じシステムが使われています。そのシステム導入に関するニュースリリースがこちらのようです(ただしサードパーティの引用)。

リンク: テレビ東京公式ホームページ 英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語に自動翻訳 4月2日から本格導入|株式会社テレビ東京ホールディングスのプレスリリース

この中に、システムの提供元がはっきり書いてあります。

東北観光博のとき、この提供元は「システムとして提供しているだけ」と言っていたようです。また、東北観光博については「用語集の提供がなかった」という弁明もありました。

が、上に書いたような英語の出力を見れば、出力の精度は単に用語集があるかどうかという問題でもないと言えるでしょう。


「機械翻訳だからしかたないでしょう」


世の中的には、おおむねこれで済んでしまう話なのでしょうか。

実際、機械翻訳を表示するサイトにはたいてい免責条項が書いてありますよね。テレビ東京にも、こんなページがありました。

リンク: 翻訳 (英語 English・中国語 Chinese・韓国語 Korean):テレビ東京

民間の自動翻訳サービスによって、テレビ東京ホームページを英語・中国語・韓国語に翻訳します。 これは、自動翻訳システムによる機械的な翻訳なので、必ずしも正確な翻訳であるとは限りません。 翻訳後、日本語ページの本来の意味から外れたものになってしまうことがありますのでご注意ください。

尚、テレビ東京は翻訳された内容にいかなる責任も負いません。


提供元は「システムを提供しているだけ」と言い、そのシステムを使うほうも「責任を負いません」と言い逃れている。


そんな情報、発信する意味があるのですか?


これでは、匿名で言いたいことを言い放つ巨大掲示板や、何の裏取りもせずRTされるツイートと一緒じゃありませんか。

しかも、いやしくもマスコミの一角を担っているテレビ局が、情報発信のためのサイトで、やっていいこととは思えないのですが。

すでにTwitterでは、翻訳クラスタを中心としていろいろと「何とかならないか?」という話が出ています。

とりあえず私は、実名で、テレビ東京さんの問い合わせフォームに書き込みしてみました。ただし400字という制限があったのでぎりぎりの内容です。以下、その全文を引用します。

----------------------------------------
御社サイトにて、以下のようなページを拝見しました。

http://www.tv-tokyo.co.jp.e.ck.hp.transer.com/japanopen2012/info.html#outline

機械翻訳の出力であることは明らかですが、発信すべき情報としてあまりにひどくはありませんでしょうか。「木下グループ」すら不正確にKioroshi groupと書かれています。

御社の外国語サイト生成については、
http://www.tv-tokyo.co.jp/translate/
ここに書かれている内容が前提になっていると拝察しますが、

「尚、テレビ東京は翻訳された内容にいかなる責任も負いません」

というのは、正確な情報発信を責務とするはずのマスコミ企業としては、その責任を放棄するものと言えませんでしょうか。

「外国語サイトがないよりマシ」という発想でこのような外国語翻訳サイトを運用しているのかもしれませんが、これでは「ないほうがマシ」でしょう。

当該のサイトならびにシステムにつき、ご再考をいただくよう切望いたします。
----------------------------------------

本当はこの2倍くらいの長さでした。書こうとした内容は、今ここで書いているようなことです。

06:19 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (2) | トラックバック (1)

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2012.09.29

# 北臺さんのiPhone5、キター!

国内発売から約1週間、北臺さんの新作きましたよー。

これ見たらさー、やっぱ欲しくなるよねー。


北臺さんのブログはこちら。

リンク: ワタタツのウィッ記 - iPhone 5 ビデオ吹き替え - なんでこがいに並外れた iPhone 5 ができたんか言うたら...

09:44 午後 iPhone/iPad | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.09.26

# SimplyTermsとTrados

side Tradosに、BuckeyeさんのSimplyTermsを使ったPowerPointファイル翻訳のフローのことを書きました。

私が取り上げている以上、ここではTrados作業もからんでいるのですが、もちろんSimplyTerms自体とTradosが直接関係するわけではありません。Tradosの部分を除いて読んでいただくこともできます。

04:58 午後 翻訳・英語・ことば, パソコン・インターネット | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.09.23

# Weblioを使うときの注意

(はじめは、「辞書の権威」という大仰な見出しにしようかとも思ったのですが、ちょっと手に余るので、現実的な話にとどめることにしました)

Weblioのことをこのブログで初めて紹介したのは、もう6年も前のことでした。その後、収録される辞典/事典/用語集の数は着実に増え、最近はGoogle検索してもかなりの確率で上位にくるようになりました。


ただ、そうなると気になるのが、はたして収録されているデータの信憑性はどうなのかということ。辞書と付き合うとき、

信じるはバカ、引かぬは大バカ: Buckeye the Translator

が大前提であるのは言うまでもありませんが、そのためには、辞典/事典/用語集の素性をわかっておく必要があります。

たとえば、installation という単語を引いてみます(Weblioのサイトからでもいいですし、ググってもたいてい上位にきます)。

リンク: installationの意味 - 英和辞典 Weblio辞書


語義は、辞書ごとのセクションに分かれて表示されますが、各セクションの頭には必ず、出典を示すリンクがあります。

1209231

左側の「研究社 新英和中辞典」をクリックすると、Weblio内で出典を簡単に説明したページにジャンプし、右側の「研究社」ロゴをクリックすると研究社のサイトに進みます。

せっかくなので、installationのページに並んでいる出典を確認してみます。


Ws000000

Ws000001

の2つは、どちらもサイトのトップページに飛ぶので出典がすぐ出てくるわけではありませんが、サイト内で検索すれば出典がどんな辞書か簡単にわかります。新英和中はまあいいとして、同じ研究社の『英和コンピューター用語辞典』も、日外の『斎藤和英大辞典』も、(ちょっと後に出てくる)『コンピューター用語辞典』や『機械工学英和和英辞典』も、素性ははっきりしています。


では、4つ目に出てくる(2012/09/23現在)、「和英マシニング用語集」

Ws000002

ってのはどうでしょう。リンク先はやはりトップページですが、ページ下部に行くとサイトマップがあって、「マシニング関連和英辞典」というリンクがあります。説明はいっさいないので、権威付けにはやや欠けますが、天下の住友電工が掲げている以上、業界用語としてまるでデタラメというわけでもなさそうです。


そのすぐ後には、

Ws000003

がありますが、ロゴからではなく「マイクロソフト用語集」のリンクから進むと、おなじみの「Microsoftランゲージ ポータル」が開きます。ここを疑ってしまうと、たぶんIT翻訳業界のあちこちが成立しなくなります。


少し進むと、だいぶ毛色の違うロゴ。

Ws000004

そんな協会があるんですねw リンク先に「河川・水資源 日英用語集」という項目があって、無条件に使えるかどうかは別として、いちおうある程度の業界団体が作っているとわかります。


その次の

Ws000005

これはWeblioでよく見かけます。リンク先が go.jp ですから、信憑性はともなく権威はありますね。少し後にある

Ws000006

こちらもほぼ同様です。


その近くにある「ライフサイエンス辞書」はどうでしょうか。

Ws000007

おっと。リンク先は京都大学ですねー(kyoto-u.ac.jp)。「About Us」を見ると、このサイトの詳細がわかりますし、なかなか使えそうです。


……と、ここまでは素性もわかるし、アテになるかどうか、少なくともその判断材料はそれなりにありました。問題はここからです。

Ws000008

このロゴ、ある時期からとてもよく見かけるようになりました。「日英・英日専門用語辞書」ということですが、編集しているのは「日中韓辭典研究所」というところ。代表者は春遍雀來(ハルペン・ジャック)という人で、辞書編集者として実績があるようです(なにかご存じの方がいらっしゃれば、ぜひ情報をご提供ください)。そのうえ、収録データについても詳しいページがあって、

The CJK Dictionary Institute, Inc. - Chinese, Japanese and Korean (CJK) Dictionary Data

基本的には、別資料からの孫引きではなく、すべてこの方が収集したデータということなのでしょうか。信頼できるのかどうか、ちょっと悩んでしまいます。

そして、最後に登場するのがこれです。

Ws000009

「クロスランゲージ 37分野専門語辞書」。あのクロスランゲージさんですね。

Weblioサイト内では、「ビジネス、科学技術、医療、医学分野など複数の分野の専門用語を収録した総合的な英和対訳辞書です」と説明されています。リンク先は同社のトップページですが、今までのサイトと違って、この「37分野専門語辞書」についての説明はまったく見つかりません。

Google検索しても、ヒットするのはWeblioのページばかりで、ようやく見つかったのがこのページです。

リンク: 仕様|プレミアム機械翻訳|クロスランゲージ

が、このページにも収録語数と分野が列挙してあるだけで、このデータがどんなものなのか、正体を知ることはまったくできませんでした。

念のために付け加えますが、最後の「37分野専門語辞書」のデータがまったく信用できないと言っているのではありません。信頼できる辞書なのであれば、ちゃんと、素性を書いておくべきだということです。

その点では、これを採用しているWeblioについても責任の一端はあると思います。この辞書が追加されたときのWeblioブログにも、

「早期ビリルビン」、「有機すず重合体」、「nannoplankton」など、ビジネス、科学技術、医療、医学分野など複数の分野の専門用語を収録した総合的な英和対訳辞書です。

としか書いてないからです。

もっとも、根拠薄弱なまま採用されているデータはこのほかにもけっこうあるみたいです。この手のサイトは取扱い要注意、という原則はやはり忘れるべきではありません。

09:35 午前 辞典・事典 | | コメント (10) | トラックバック (0)

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2012.09.20

# 翻訳単価データについて

前エントリに書いたように、翻訳単価の推移について、私の手元にあるデータを紹介してみます。

まずお断りしておかなければなりませんが、私自身が慣れていて感覚的にわかりやすいという理由で、データは

・英日翻訳
・原文ワード単価

のみを扱っています。あしからずご了承ください。


次に、各種の雑誌やムックを手元にすべて揃えてあるわけではないので、あくまでも私のわかっている範囲の話だという点もご承知おきください。

そしてもうひとつ。データは産業翻訳全体のものと、IT・ローカライズ業界のものが混在しています。データごとに明記しました。

【あきーらさんに指摘されて追記】
データは、各誌が「翻訳会社へのアンケート」結果として掲載していたものなので、直接取引の分は含まれていません。そちらはそちらで、またいろいろと違ったデータが出そうです。

1999年頃のデータ
(IT・ローカライズのみ)

私のわかるいちばん古いデータとして、かつて河野弘毅さんがブログに書いていた内容を、すいません、無断引用します(これ以前についてもいろいろとデータをお持ちの方はいらっしゃることと思います)。

私の見聞した範囲では英文原稿 1 ワードあたり最低で 5 円、最高で 35 円という仕事を聞いたことがあり、一般的には 7~25 円の範囲内かと思います。(中略)平均的なワード単価がどのくらいになるのか私には分かりませんが、私の印象ではワード 15 円の仕事を請ける翻訳者はかなりいるように思います。

あくまでもざっくりですが、平均で15円/ワード、ということのようです。


2004年頃のデータ
(IT・ローカライズのみ)

「コンピュータ翻訳&ローカライズ 完全ガイド」というムック(イカロス出版)より。ITバブルはもうとっくにはじけています。

200406_lcalize

最多が10円。並び方が他のグラフとは違いますが、最安~最高のレンジは8~25円

単純平均を計算すると、11.7円/ワード、になります。


2007年頃のデータ
(産業翻訳全般)

「通訳翻訳ジャーナル」2007年10月号のデータです。

200710_tsuhon

最多はやはり10円。最安~最高のレンジは5円~24円

単純平均は、14.6円/ワード
やはりIT系はかなり低めということでしょう。


2010年5月頃のデータ
(産業翻訳全般)

『産業翻訳パーフェクトガイド』(2010年版)のデータです。


201005_perfect

最多は9、10円。最安~最高のレンジは5円未満~21円以上

単純平均は、9.9円/ワード
前項と比べても、極端に下がっているように見えます。前項からここまでの間にリーマンショックが入っています。


2012年9月頃のデータ
(産業翻訳全般)

『新版 産業翻訳パーフェクトガイド』、最新のデータです。

最多は9、10円、最安~最高のレンジは5円未満~15、16円

単純平均は、9.0円/ワードになりました。

産業翻訳全般としても、2007年~2010年~2012年の3回のデータで、平均が

14.6円 → 9.9円 → 9.0円

と下がっています。この傾向を実感できるかどうかは、各自が置かれている状況によって、おそらく翻訳者さんごとに違うでしょうね。

私としては(自分の単価ということではなく、見聞きする範囲を総合して)、おおよそこんなものなのかな、という気がするのですが、みなさんどうでしょうか。

最新のデータで気になるのは、上限がいきなり15、16円で止っちゃっているところです。20日朝のTwitterで疑問が投げかけられたのも、おそらくこの点でしょう。

イカロスさんの編集部が、これより上にあったデータを特異値として意図的にカットしたということはないでしょうから、たまたま集まったデータの中にこれより上がなかったのかもしれません。

でも、これより上の単価というのは間違いなく存在してますし、二極化している上のほうが今回のデータには表れてきていないんですね。

04:58 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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# 産業翻訳パーフェクトガイド

「通訳翻訳ジャーナル」と同じイカロス出版から、翻訳関連のムックが出ました。

『新版 産業翻訳パーフェクトガイド』

同じイカロスさんから出ている「通訳者・翻訳者になる本」や、アルクさんの「翻訳事典」のように毎年定期的に出るものではなく、たぶん2010年に出たのが最初で、今回はその「新版」という位置付けのようです。

2年前のパーフェクトガイドは2010年の5月に出ていて、私が同年のJTFセミナーで話をするとき、翻訳単価の推移についてのネタとして使いました。


さて、今回のパーフェクトガイドにも翻訳単価のデータが出ているわけですが、今朝(9/20)のTwitterでさっそく、「単価データが少し低すぎないか?」という疑問の声を見かけました。

そこで、翻訳単価の推移を、次のエントリでまとめてみることにします。ネタの大半は、前述したJTFセミナーで使った資料です。

03:18 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.09.07

# 「日本翻訳ジャーナル」9/10月号

「日本翻訳ジャーナル」の9/10月号が発行されました。


リンク: JTF 日本翻訳連盟│日本翻訳ジャーナル

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先日(6/15)の翻訳フォーラムシンポジウムについてのレポートが載っているほか、どのコーナーも売れっ子通訳、名物翻訳者などが勢揃いしています。


松田委員のコーナー「匠の世界」には、通訳の小熊弥生さんが登場。

私のコーナー「フリースタイル、翻訳ライフ」は、翻訳フォーラムでおなじみのあきーらさんに執筆をお願いしました。

そして、遠田委員のコーナー「Word Smyth Café」には、翻訳クラスタのフィクサーとも言うべき、あの大物がつに降臨www


いつものとおり、無料でダウンロードできますので、ぜひお読みください。

07:51 午後 翻訳・英語・ことば | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.09.05

# CODの初版復刻版

こんなものを買ってしまいました。


これは仕事用というより、ほとんど趣味の世界ですね。

もともと、Oxfordファミリーの中でもCOD(COED)ってけっこう好きで、今はもっぱら電子版(11th)しか使いませんが、大学生のときには、当時最新だった第6版のほか、少し遡った第4版、第5版とかもそろえてありました。

さすがに初版を手に入れようと思ったことは一度もなかったのですが、刊行100周年を記念して、実にお手頃な価格で復刻されたのが本書です。

さっそく、1911年刊行のこの初版と、電子版の第11版を比べてみます。


当たり前のことですが、これよりだいぶ後に追加された単語、つまり当時の新語は収録されていません。たとえば、

hobbit

という語(言うまでもなく、J.R.R.Tolkienの造語です)は、作品の発表が1937年なので、初版に載っているはずもありません。

hobbit
noun a member of an imaginary race similar to humans, of small size and with hairy feet, in stories by J. R. R. Tolkien.

ORIGIN
1937: invented by Tolkien in his book The Hobbit, and said by him to mean 'hole-dweller'.

それから、当然ながら時代とともに語義が変わったり増えたりする単語というのもありますね。ためしに、

cute

という単語を引いてみると、11thにはこう書かれています。

cute
adjective
1 endearingly pretty. /North American informal sexually attractive.
2 North American informal clever; shrewd.

これが、初版ではこうです。

cute
a. (colloq.). Clever, shrewd ; ingenious

つまり、今では一般的な「かわいい」系の使い方は、20世紀初頭にはまだなかったということになります。念のために、親分であるOEDを確認してみました。

cute, a. colloq.
1. Acute, clever, keen-witted, sharp, shrewd.

2. (orig. U.S. colloq. and Schoolboy slang.) Used of things in same way as cunning a. 6. Now in general colloq. use, applied to people as well as things, with the sense ‘attractive, pretty, charming’; also, ‘attractive in a mannered way’.

「かわいい系」の語義は、2. として載っています。そしてこの後には1834年、1857年、1868年... と、かなり古い年代の用例がちゃんと採録されています。

ということは、COD初版が出た1911年には「かわいい系」の語義がちゃんとあったんですね。にもかかわらずCODには載らなかった。この辺の違いがなかなか興味深いところです。紙面の制約というだけではなく、OEDとCODという辞書の性格の差かもしれません。

同じような例で、

mystery

をひくと、11thには2番目の語義として

a novel, play, or film dealing with a puzzling crime.

と、小説のジャンルとしての語義が書かれていますが、初版にはありません。

モノとしての変化などがわかる例もあります。

handkerchief

をひくと、初版では "Square of linen, silk, &c" ですが、11th になると "a square of cotton or other material" と、材質についての記述が大きく変わっています。


というわけで、翻訳の役に立つわけではありませんが、ときにはこんな楽しみ方もいいものなんでした。

03:02 午後 辞典・事典 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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2012.09.04

# 「通訳翻訳ジャーナル」秋号

発売からちょっと日が経ってしまいましたが(8/21発行)、拙文の掲載されている秋号が出ています。

リンク: 通訳・翻訳のことなら通訳翻訳WEB


イカロスさんのページの案内では、まず小熊弥生さんがドーンという感じで登場していて、拙文の案内はずーーっと下のほうですが......


この春から始まった翻訳フォーラムの連載「翻訳者のための作戦会議室」の第3弾です。

11:23 午前 翻訳・英語・ことば, 書籍・雑誌 | | コメント (2) | トラックバック (0)

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2012.09.03

# 「無生物主語」をめぐる珍訳、その2

前項からの続きです。


前回見たように、「無生物主語」の構文には一定の特徴があります。

・この構文によく用いられる動詞がある。

・いわゆる SVOO や SVOC の形をとることが多い。

・<主語> + <動詞> のセットが目的語(特に「ヒト」)に対して独自のはたらきを持つ。

・訳すときには、能動態/受動態も併せて考慮することが多い。


では、私の手元にある何社かのスタイルガイドで、「無生物主語」構文に関するルールがどう書いてあるのか、みてみましょう(大手のスタイルガイドではこのルールが書かれていることも多いようですが、全体で言うとルールを明記しているほうが少数派です)。



まずA社のスタイルガイド。

Your printer manual indicates what size of paper can be used.

これは、ロイヤル英文法の分類で言うと<F>型です。

次に、B社のスタイルガイド。これは版によって違いがあるのですが、詳しいほうだけ取り上げます。

一般に、製品、プログラム、機器などの無生物を動作の主体として文頭に置くことは避けます。英語の表現にひきずられるような無生物主語の使い方にならないように注意します。無生物主語の原文を訳すときは、通常、主語を省略して受動態にします。

英語の例文はありませんが、

○ ~が表示されます。
× Windows は~を表示します。

と書いてあって、これはロイヤル英文法の<F>型に近いでしょう。面白いのは、以下のような場合が例外として挙げられていることです。

○ ~ 関数は、戻り値 yyy を返します。
   ※「動作を伴わない記述」と説明されています。動詞はreturnでしょう。

○ Excel は表計算アプリケーションの一種です。
   ※「動作を伴わない記述」と説明されています。

○数式は自動的に計算されます。
   ※「受動態を使う場合」と説明されています。

○選択したセルが強調表示になります。
   ※「状態の変化を示す場合」と説明されています。

例外も何も、こういうのはどれも、前エントリで見たような本来の「無生物主語」の構文でも何でもないですよね。親切と言えば親切ですが、もともとの「無生物主語」の説明が十分でない証拠です。

C社のスタイルガイドも似たような内容です。

○ ...が表示されます。
× システムが、...を表示します。

という例文を示したうえで、

動作の主体でないかぎりは、文の主語として使用できます。

その例として、

○情報が検索されます。
○表は、データを格納するオブジェクトです。

が挙げられています。B社とほとんど同じ。

それでは、改めて「無生物主語の構文で変な訳になった例」を見てみましょう。

The client nodes get the data from your data sources and send it to the server.

During every synchronization session, the Sync Server receives client transactions in the Mobile client database and places them in the In-queues.

どちらの文も、使われているのはロイヤル英文法の分類に該当する動詞ではありません。

get……「取得する」、「読み取る」という、この主語本来の動作を表す(<D>型ではない)

receive……「受信する」、「受け取る」という、この主語本来の動作を表す

そして、無生物主語に固有の動詞の作用を受ける目的語、もありません。

ということは、この2つのような文なら、別に「無生物主語を訳文の主語にしない」というルールに無理矢理あてはめる必要はないはずです。

・クライアントノードは~データを取得する

・Sync Serverは~トランザクションを受け取る

と訳して何の不都合もありません。

以下は勝手な推測です。

クライアントノードでは~」みたいな珍訳は、もちろんスタイルガイドを発行したソークラの意図した訳文ではないでしょう。スタイルガイドでの指定が不十分だったという責任はありますが、

スタイルガイドを過剰適用

してしまった翻訳者や翻訳会社の責任も大きいのではないでしょうか。

いや、クライアントレビューのときにそれをOKとしてしまったのは、ソークラの責任か......。

責任の所在はともかく、こういう

変な日本語を変と言える

環境を作っていかないと、「IT翻訳」はこれからも馬鹿にされ続けることになりそうです。

08:11 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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# 「無生物主語」をめぐる珍訳、その1

The client nodes get the data from your data sources and send it to the server.

という何でもない原文が、こんな意味不明な訳文になっていることが、悲しいかなIT翻訳の世界では少なくありません。

クライアントノードでは、データソースからデータを取得して、それをサーバーに送ります。

どうして、ごく素直に「クライアントノードはデータソースからデータを取得し~」としないで、「クライアントノードでは~」などという訳になるのでしょうか。


その原因は、「無生物主語をそのまま主語として訳さない」というルールが、各社のスタイルガイドに中途半端な形で載っているからです。以前からこの話をまとめたいと思っていました。

以下、かなーり長くなります。

まず、ネット上でいくつか情報を拾ってみました。

おなじみのこのサイトがヒットしました。
リンク: 翻訳の泉 - 第2回 受身の話

例文がいくつか挙げられています。英文だけ載せ、使われている動詞に注目してみます。

This procedure enables the values of capacitors 18 and 20 always to be changed in the correct direction in the determination of the trajectory.--[1]

This method of using a non-ITO pixel electrode simplifies the process of fabricating a Si active matrix array.--[2]

If the proposed corporate action creates dissenters' rights,the notice must state that shareholders and beneficial shareholders are entitled to assert dissenters' rights.--[3]

This invention relates to semiconductor processing.--[4]


次に、DHCさんの通信講座ページがヒットしました。例文はこうです。

This method will enable you to access your e-mail from anywhere in the world.--[5]


Smack Translationsのページも見つかりましたw
リンク: 第三回 沖縄翻訳セミナー 【英日】翻訳入門ワークショップ まとめ

A few hours' talk should enable them to reach an agreement.--[6]


そして、JATではなくJTA(=日本翻訳協会)にもこんなページがあり、
リンク: 模擬試験対応  - (社)日本翻訳協会 新・翻訳検定 JTA公認翻訳専門職資格試験

例文が5つ挙げられています。

His father’s death compelled him to give up school.--[7]
A year in America will cost you much money.--[8]
Quick treatment would save his life.--[9]
The noise in the street kept him awake all night.--[10]
A little care would have prevented him from injuring himself.--[11]


さらに、今度はJATの、過去記事アーカイブのようですが、富井篤さんの記事が見つかりました。

そもそも無生物主語構文は、「因果関係」を表す時に使われる構文で、日本語のように、「原因」と「結果」をそれぞれ節や文で書くのではなく、「原因」を主語に、「結果」を述部に据え、一つの文章で「因果関係」を表してしまう構文です。代表的な三つのパターンに入る前に、それぞれのパターンに共通した和訳手法を紹介します。

Higher operating temperatures shorten the lubricant life.--[12]
The rotation of the drum causes the water to flow out of the outlet opening.--[13]
The use of pressure-tight solenoids allows a low-cost valve design.--[14]


どうでしょうか。

こうやって例文を並べてくると、いわゆる「無生物主語の構文」に使われる動詞には一定の傾向があることがわかります。

そこで、『ロイヤル英文法』の登場です。

例文は省きますが、

原因や理由,方法や手段,条件となるものなど(無生物)を主語にして,それが人間を「~させる,する」という形で表すものが無生物主語の構文である。無生物が主語になる場合と,疑問詞が主語になる場合とにわける。

と説明したうえで、この構文に使う動詞が、次のように分類されています。

<A>「~させる」型-cause,make; compel,force,oblige; allow permit,enable,その他使役の意味の動詞
<B>「~するのを妨げる」型-keep,prevent,stop
<C>「~を連れていく/くる」型-bring,carry,take,lead
<D>「~(の状態に)する」型-get,put,set; drive
<E>「~(の状態に)しておく」型-keep,leave
<F>「~を示す」型-prove,reveal,show,suggest,teach,tell
<G>「~(の犠牲を)払わせる」型-cost,deprive,require
<H>「~(の手間)を省かせる」型-save,spare
<I>「~を思い出させる」型-remind
<J>その他-give,obtain,findなど

さすがです。これでだいぶこの構文の動詞群を整理できた気がします。

翻訳の泉の例文[1]は<A>型、例文[2]は敢えて言うと<D>型でしょうか。例文[3]と[4]は、どちらも<F>型です。

DHCとスマックの例文は、ともに<A>型。

JTAの例文は、[7]が<A>型、[8]が<G>型、[9]が<H>型、[10]が<E>型、[11]が<B>型ということになります。


富井篤さんの例文は、[12]が<D>型、[13]が<A>型、[14]も<A>型です。


こういう文型のとき、英文の主語をそのまま訳文の主語にはせず、それぞれ訳し方を考えてね、という話なら問題ありません。


では、特にIT系に多いと思われるスタイルガイドの指定には、どんな問題があるのでしょうか。項を改めます。

07:29 午前 翻訳・英語・ことば | | コメント (1) | トラックバック (0)

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