# 今度はテレビ東京のサイト - 機械翻訳システムの害はかなり広いのかも
この春、東北観光博の公式サイトや奈良県のホームページで、機械翻訳の出力がそのまま公開されていてトンデモないことになったことは、すでにみなさんもご存じのことと思います。
関連リンク: 東北観光博機械翻訳騒動~翻訳者の視点 - Togetter
拙ブログの過去記事: # またも機械翻訳騒動。だけどそれだけのことではないかもしれず
そして今日また、テレビ東京の外国語サイトがトンデモないことになっていることがわかりました。
リンク: テレビ東京HPが自動機械翻訳でめちゃくちゃな英語になっている。 - Togetter
しかも、今日9/30は International Translation Day じゃないですか。そんな日に、こんな情けない事態を目にしなきゃいけないとは……
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たとえば、こちらをご覧ください(削除されてしまったら、魚拓リンクに切り替えます)。
リンク: Kioroshi group cup figure skating Japan opening 2012 (Japan Open 2012): TV TOKYO
前者はフィギュアスケートの大会、後者はテレ東の料理番組のページです。
前者は協賛者である「木下グループ」の表記が「Kioroshi group」になっているなど、そもそも失礼極まりない内容です。英語の本文も、たとえば、
【元の日本語】
フィギュアスケートの人気・実力が高い日本、欧州、北米の注目選手達がさいたまに集結!
(引用元: http://www.tv-tokyo.co.jp/japanopen2012/info.html#outline)
【機械翻訳】
Japan which is high in popularity, ability of figure skating, Europe, North American attention players are the concentration in Saitama!
と、まったく意味不明な語の並びだらけです。
2つ目は「ケンタロウさんの降板に関しまして」と題する内容の翻訳ですが、
【元の日本語】
所属事務所から療養が長期に渡り治療に専念したいことから、番組を降板したいとの連絡がありました。
(引用元: http://www.tv-tokyo.co.jp/danshigohan/)
【機械翻訳】
Because medical treatment wants to devote itself to treatment from position office for long term,
There was communication that we wanted to leave program.
私の英語力では、どうやっても解釈できませんw
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実は、東北観光博もテレビ東京も、機械翻訳には同じシステムが使われています。そのシステム導入に関するニュースリリースがこちらのようです(ただしサードパーティの引用)。
リンク: テレビ東京公式ホームページ 英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語に自動翻訳 4月2日から本格導入|株式会社テレビ東京ホールディングスのプレスリリース
この中に、システムの提供元がはっきり書いてあります。
東北観光博のとき、この提供元は「システムとして提供しているだけ」と言っていたようです。また、東北観光博については「用語集の提供がなかった」という弁明もありました。
が、上に書いたような英語の出力を見れば、出力の精度は単に用語集があるかどうかという問題でもないと言えるでしょう。
「機械翻訳だからしかたないでしょう」
世の中的には、おおむねこれで済んでしまう話なのでしょうか。
実際、機械翻訳を表示するサイトにはたいてい免責条項が書いてありますよね。テレビ東京にも、こんなページがありました。
リンク: 翻訳 (英語 English・中国語 Chinese・韓国語 Korean):テレビ東京
民間の自動翻訳サービスによって、テレビ東京ホームページを英語・中国語・韓国語に翻訳します。 これは、自動翻訳システムによる機械的な翻訳なので、必ずしも正確な翻訳であるとは限りません。 翻訳後、日本語ページの本来の意味から外れたものになってしまうことがありますのでご注意ください。尚、テレビ東京は翻訳された内容にいかなる責任も負いません。
提供元は「システムを提供しているだけ」と言い、そのシステムを使うほうも「責任を負いません」と言い逃れている。
そんな情報、発信する意味があるのですか?
これでは、匿名で言いたいことを言い放つ巨大掲示板や、何の裏取りもせずRTされるツイートと一緒じゃありませんか。
しかも、いやしくもマスコミの一角を担っているテレビ局が、情報発信のためのサイトで、やっていいこととは思えないのですが。
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すでにTwitterでは、翻訳クラスタを中心としていろいろと「何とかならないか?」という話が出ています。
とりあえず私は、実名で、テレビ東京さんの問い合わせフォームに書き込みしてみました。ただし400字という制限があったのでぎりぎりの内容です。以下、その全文を引用します。
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御社サイトにて、以下のようなページを拝見しました。
http://www.tv-tokyo.co.jp.e.ck.hp.transer.com/japanopen2012/info.html#outline
機械翻訳の出力であることは明らかですが、発信すべき情報としてあまりにひどくはありませんでしょうか。「木下グループ」すら不正確にKioroshi groupと書かれています。
御社の外国語サイト生成については、
http://www.tv-tokyo.co.jp/translate/
ここに書かれている内容が前提になっていると拝察しますが、
「尚、テレビ東京は翻訳された内容にいかなる責任も負いません」
というのは、正確な情報発信を責務とするはずのマスコミ企業としては、その責任を放棄するものと言えませんでしょうか。
「外国語サイトがないよりマシ」という発想でこのような外国語翻訳サイトを運用しているのかもしれませんが、これでは「ないほうがマシ」でしょう。
当該のサイトならびにシステムにつき、ご再考をいただくよう切望いたします。
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本当はこの2倍くらいの長さでした。書こうとした内容は、今ここで書いているようなことです。
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テレビ局が提供したWEBページの英語版で、「木下グループ」が「キオロシグループ」... [続きを読む]
受信: 2012/10/02 16:52:48
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コメント
「We experienced the minimum mean audience rating of 2011 and the best average audience rating in "Mita of cleaning lady" with "Mr. Suzuki" 」がすんなり読めるかどうかはともかく、読むとすれば、テレビ東京は「家政婦のミタ」を製作したと理解することになると思います。
こういう情報をマスメディアが発信してよいのでしょうか……というか、こういう情報を発信するシステムを導入していることに、そもそも、テレビ東京さんは、気づいておられるのかどうか。
投稿: | 2012/09/30 18:41:49
(お名前がないのは匿名希望なのか、それとも単に入力忘れなのか、いずれにしても残念ですが)コメントありがとうございます。
> テレビ東京さんは、気づいておられるのかどうか
私もそう思って問い合わせフォームを送ってみたのですが...何の反応もありませんね。Facebookのほうでは「ネットを重視していない」というようなコメントをいただきましたが、との音沙汰のNASAにも、その姿勢が現れているような気がします。
投稿: baldhatter | 2012/10/03 8:14:49