# またも機械翻訳騒動。だけどそれだけのことではないかもしれず
東北観光博のサイトで、機械翻訳のトンデモない誤訳・珍訳が続出した騒動はまだ記憶に新しいところですが、今度は奈良市観光協会のサイトだそうです。
リンク: 奈良観光、誤訳だらけ…外国語HP一時閉鎖 : ニュース : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
ニュース記事はしばらく経つと消えてしまうので、以下に引用しておきます。
自動翻訳システム、確認怠り 東大寺の大仏はミスター・オサラギ?――。奈良市観光協会が今春更新した外国語版のホームページ(HP)に、多くの誤訳があるとの指摘を受け、協会がHPを一時閉鎖していたことがわかった。経費を抑えようと自動翻訳システムを使ったためで、「国際観光都市として恥ずかしい限り」と担当者は平謝り。HPの再開のめどは立っていない。
寺社や伝統工芸などを紹介するHPは3月に模様替え。従来の英語、韓国語、中国語、フランス語のページに、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、イタリア語のページを追加した。
この際、1言語で150万円だった翻訳の外部委託をやめて、全部で35万円のインターネットを利用した自動翻訳システムに変え、固有名詞の読み方もあらかじめ登録していなかったことからミスが続出。確認作業も怠っていたという。
例えば英語では、東大寺の大仏を、姓の「おさらぎ」と認識して「Mr.Osaragi」と翻訳。「仏の慈悲」は「仏」を略語と解釈して「French mercy(フランスの慈悲)」とした。「平城京へ都が遷された」との部分は、訳せなかった「遷」の字が英文に混じっていた。
こうした誤訳は「数え切れないほど」あり、観光ガイドらから「とても外国人に見せられない」との苦情を数十件受けた協会は23日にHPを閉鎖。現在、更新前のHPを公開中だが、担当者は「自動翻訳で内容を更新するには、単語登録しなければならない言葉が多過ぎる」と頭を抱えている。 (2012年5月26日 読売新聞)
この記事では言及されていませんが、請け負ったのは、東北のときと同じ会社だそうです。
東北博の騒動のあと、機械翻訳を導入しているところはどこも自サイトを点検したのかと思ってました。実際そうしたお役所などもあったようですが、奈良市ではそういう意識がまったくはたらいていなかった模様です。
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機械翻訳の功罪とか、そういう話をするつもりは今回ありません。
私が気になっているのは、今のこの国の社会システムの問題です。
原発事故の後、もう追いかけるのもイヤになるくらい技術的にも組織的にも杜撰さが次々と明らかになる東電と原発ムラ(その他もろもろ)。
経済原則に追い立てられて安全性を軽視し、ついには多くの人命を犠牲にする交通機関。
(そのほかにも例を挙げようとしたけど、キリがない......)
なんかこうね、
社会システム全体が弱体化している
という気がするわけですよ。
そういうとき必ず思い出すのが、『銀河英雄伝説』の後半、ヤンたちがちょっとした道路の渋滞にはまっちゃうだけの場面です。ちょうど今の日本と同じように、ヤンは「社会システム全体があちこちで機能不全を起こしている」と感じる。その後たいした時間をおかずに、自由惑星同盟は銀河帝国に完全に屈服することになる。
そういう危うさ。
個人レベルにしちゃうと、「みんなもっと、自分のやるべきことをきっちりやろうよ」という話になるのですが、そんな自覚とか責任感がいつの間にか溶け出してしまうような、変な社会になってきている。
ふだんの生活レベルは、私の世代でさえ子ども時代からは想像できないほど便利に快適になったこの国。その私がまだ生きているうちに、この国の存在基盤が根こそぎひっくり返ってしまう日がとつぜん訪れないとも限らない。
その前に立ち直ってくれるのかなぁ。
11:02 午前 翻訳・英語・ことば社会・ニュース | このエントリ | コメント (2) | トラックバック (0)
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