念のため、基本データです。
『ウルトラマン』 1966年7月~翌4月放映
『帰ってきたウルトラマン』 1971年4月~翌3月放映
上の質問、「ウルトラマンが M78 星雲に帰っている間」というのは、てっきりこの 5 年間のことを指しているのだと思って、私はそれを前提にして答えたわけですが、質問者の疑問はそうじゃなく、
「ウルトラマンが変身して、戦って、3分経過するとM78星雲に帰るけど、再び地球に帰ってくるまでの間、ハヤタ隊員はどうなっているのか?」
ってことだったそうです。ふーん、その発想はなかったワ。
■
ハヤタ隊員、もとはただの地球人で、科学特捜隊の隊員でした。後年は悪代官になったりして人相もだいぶ悪くなってしまいますが、この頃は 25 歳の爽やか系青年でした(あくまでも昭和水準)。
そのハヤタ隊員、第 1 回放送でいきなり謎の飛行体に衝突して死んでしまいます。それが実は、宇宙怪獣を追ってきた別の宇宙人(= M78星雲の住人、名前はまだない)の乗り物で、言ってみれば凶悪犯を追跡中のパトカーが民間人に接触して死なせちゃったという状況になっちゃいました。
で、責任を感じたM78星雲の宇宙人(名前はまだない)が「ごめんごめん、かわりにワシの命やるわ」と言って一心同体になり、さらに義理がたいことに、そのまま地球にとどまってくれることになります。ちなみに、「ウルトラマン」というのは、初めての変身後に人間の姿に戻ったハヤタの命名です。
それで、上の根本的な疑問の答えになるわけですが、別に毎回戦いが終わるたびにM78星雲に帰ってたわけじゃないんですよ。たしかに、怪獣を倒すといつも空に向かって飛んでいくんで、そう思われたのかもしれませんが、さすがのウルトラマンにとっても、
M78星雲は遠い
のです。いつも空に向かって飛んでいきますが、たぶん手近なところに降り立ってからハヤタの姿に戻って、「おーい」とか言って手を振りながら現れたりしてるんです。
もし本当に毎回 M78 まで帰ってたとしたら、彼とハヤタは一心同体ですから、その間ハヤタは行方不明ってことになりますね。
■
とまあ、本来の疑問の答えはこれだけで、以下は蛇足。
質問の真意がわかる前に、私はこう答えました。
「ウルトラマンの上司みたいなやつ(後付け設定で兄ってことになる)が命を二つ持ってて、そのひとつをもらい、人間として生き返ります」
最終回でとてーも強い怪獣が出てきて、ウルトラマンはあっさり負けて死んでしまいます。つまり一心同体だったハヤタ隊員も死んでしまうわけですが、M 78 星雲の人はとことん義理がたいらしく、この好青年をちゃんと生き返らせてくれるんですね。で、ただの地球人として生き返ったハヤタ隊員、初回から今までの記憶がぜんぶなかったことになってます。
「上司みたいなやつ」と説明しましたが、この頃はもちろん、「ウルトラ兄弟」なんて設定はありません(「ゾフィ」という名前は脚本上も存在したらしい)。が、当時の子どもにばくぜんと「ウルトラマンと似た同族がいるんだな」という印象は残しました。
そしてその 5 年後にウルトラマンは「帰ってきた」ことになりますが、このとき地球にやってきたのは、最初のウルトラマンとは
別の固体
でした。つまり、固有名詞「ウルトラマン」が帰ってきたってことじゃなく、「ウルトラマン」という種族もしくはシンボルが帰ってきたということになります。
当時の子どもたちが「嘘つきー」と思ったのはたぶん最初のうちだけで、あろうことかヒロインやその兄が宇宙人にあっさり殺されてしまうという神的展開に度肝を抜かれているうちに、「ウルトラ兄弟」などというぶっ飛んだ設定が生まれ、その設定ゆえに過去の同族が登場するというファンサービスも成立して、それにあっけなく乗せられたりしたようです。
が、当時の純朴な子どもたちにとってさえ、このとき「帰ってきた」やつの固有名は何なのか、というのは疑惑のタネでした。1971 年に地球に来た固体は、シンボルとして「ウルトラマン」と呼ばれていただけで、かわいそうに固有名がなかったんですね。子ども向け雑誌の記事で紹介されたいくつかの笑える名前を経て、最終的に「ジャック」なんて名前が付いたのは、だいぶ後のことになります。当時の視聴者がかなり成長して、その後付け設定に失笑してしまう年齢になった頃、だったと思います。
最近のコメント