# あいかわらず日本語環境ではまったく電子書籍を読む気になれない件
リンク: Amazon.com の書籍販売部数、紙版が電子版に抜かれる - japan.internet.com
Amazon.com は1995年7月より紙版書籍の販売を手がけ、2007年11月に電子書籍リーダー端末「Kindle」と Kindle 向け電子書籍「Kindle book」の販売を開始した。Kindle book の販売部数は、2010年7月にハードカバー版、2011年1月にペーパーバック版のそれを超えた。
一社独走には問題があるかもしれませんが、なにしろ Kindle の手軽さは圧倒的ですもん。
まず Kindle 端末自体がハードウェアとして実に優秀だし、何よりコンテンツを読めるようになるまでの手間が驚くほど少ない。Amazon でポチっとするだけで、Kindle 本体にすぐダウンロードされるのはもちろんのこと、iPad や iPhone 上の Kindle アプリにもすかさずデータが同期されるので、文字通りいつでもどこでも続きを読むことができます。
Kindle で採用されているデータのフォーマット自体はオープンではありませんが、自社の Kindle 端末にこだわらず、iOS デバイスや Android プラットフォームにも対応アプリを展開して、いわば Amazon 電子書籍データを読むための Kindle エコシステムというべきものを築いたのが、この成功の秘訣なのだと思います。
翻って、電子書籍 "元年" をとっくに過ぎたはずの日本の電子書籍マーケットがいったいどうなっているのかというと、商品レベルでは単発的にヒット作がいくつか生まれているものの、読書環境としてはまったく魅力のない状態が続いています。
日本語の電子書籍(小説でも漫画でも)を読んでみたいな、と思ったらどうなるのか。ためしに、代表的と思われる電子書籍サイトを久しぶりに確認してみました。今回は、Google で「電子書籍」を検索した結果と、Wikipedia の「電子書籍」の項を参考に、以下のサイトを選んでみました。
eBookJapan
「立ち読み」をクリックすると、こんな画面が表示されます。
独自フォーマットなんで、専用のリーダーが必要だということです。eBookJapan は、マンガの作品数で世界最大を誇っており、売上もそれなりにあるみたいですが、そのわりに画質がイマイチ。わざわざ専用リーダーをインストールするほどの魅力を感じません。
パピレス
一般書籍を含めると日本最大だとか。こちらのサイトで「初めての方へ」のページを見ると、こんな感じです。
フォーマットが無秩序なのはパピレスさんのせいじゃありませんが、これを見ただけで、もう先に進む気が失せてしまいます。フォーマット別にいちいちリーダーをインストールする必要があるって、スマートじゃありませんねぇ。
ちなみに、このサイトの「推奨動作環境」には ---
いまだに「Internet Explorer 6.0以上を推奨」とか書いてあって、その辺のズレ方がいかにも、という感じでした。
ビットウェイブックス
同じような「ご利用方法」のページに行くと ---
読めるようになるまでにステップが 8 つもあるうえに、ファイル形式を確認すると、
やっぱりこんな感じ。はい、さようなら。
honto
ぜんぜん知らないサイトですが、Google検索したら広告のトップに表示されたので、いちおう調べてみました。
「ご利用ガイド」というページが用意されていますが、このガイドにぜんぶ目を通すことさえ面倒くさくなるような作り。
■
たしかに、縦書きとかルビとか、日本語環境の書籍にはいろいろと制約もあるので、それに対応するためにいろいろなフォーマットが試行錯誤されているという面はあるのでしょうが、この現状、あまりにカオスです。
ところで、eBookJapan の立ち読みデータを見ていたら、最後にこんなページがありました。
第27版
って、紙モノのときのデータですよね、きっと。そんなもの電子データに載せて、何か意味があるの? 要するに、今までの出版物の奥付もそのまんまスキャンしたってことなのかな。こんなところにも、やる気のなさを感じちゃうんですけど。
02:06 午前 パソコン・インターネット | URL
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コメント
佐藤信彦です。
おぉ、僕の書いた記事だ(^^)v
Amazon.com の書籍販売部数、紙版が電子版に抜かれる - japan.internet.com
http://japan.internet.com/busnews/20110523/2.html
僕は「青空キンドル」経由で「青空文庫」のお世話になってます。素晴らしいですよ。
青空キンドル
http://a2k.aill.org/
青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/
僕の簡単な紹介ブログ記事
「小説を読むのには理想的なデバイスだ」
http://life-with-guitar.cocolog-nifty.com/nobusato/2011/04/post-9836.html
もう少ししたら、江戸川乱歩の作品が著作権切れになるようで、すっごく楽しみにしてます。散々文庫本やらで読んだけど、改めて読み直したいから。
投稿: 佐藤信彦 | 2011/05/25 10:11:27
佐藤信彦です。
そうそう一つ書き忘れてました。
こんなようなおも白い話もあります。
オライリー・ジャパン、電子書籍の DRM フリー化推進
http://japan.internet.com/busnews/20110523/3.html
投稿: 佐藤信彦 | 2011/05/25 10:59:27
> おぉ、僕の書いた記事だ
あ、やった。実は、もしかしたらそうかなぁと思いながら引用してたんですよ :)
> 僕の簡単な紹介ブログ記事
こちらの記事にコメントしたような気がしてましたが、Twitter で何かつぶやいただけだったかな。さっそく TB 追加しました。
> もう少ししたら、江戸川乱歩の作品が著作権切れになる
おお、それはいいなぁ。私も全集が出るたびに、とまでは言わないけどよく読みました。いちばんたくさん揃えたのは、もうかなり前ですが、表紙絵がぜんぶ天野喜孝だったシリーズ(講談社かな)。あれは装丁がきれいでした。
> オライリー・ジャパン、電子書籍の DRM フリー化推進
実はその記事も引用しようかといっぺん考えました :)
投稿: baldhatter | 2011/05/25 11:40:45
3.0規格の目処がついてきたのか、アマゾンは、EPUBを正式にサポートするようです。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1105/19/news031.html
日本でも電子出版の規格が林立していますが、印刷会社が噛んでいるものが多く、迅速な普及は期待できそうにありません。アマゾンは風穴を開けられるかな。
投稿: ミストラル | 2011/05/25 17:59:03
> アマゾンは、EPUBを正式にサポートするようです
おお、情報ありがとうございます。日本がどんどん足踏みしているうちに、あちらはどんどんこうやって環境が整っていく。なんだか哀しくなりますよ。
投稿: baldhatter | 2011/05/27 15:43:01