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2011.02.16

# 『てにをは辞典』(三省堂)

久しぶりに紙の辞典を買いました。

たとえば、unique という単語をコンピュータ系の翻訳では「一意」と訳すことになっています。unique name だったら、要するに「ほかと重複しない名前」ってことなのですが、「一意」という定訳を使うとすれば、

一意の名前
一意な名前

のどちらがいいのか悩むことがあります。もちろん国語辞典的に言えば「一意」は名詞であって形容動詞ではないので、「一意な」は無理があるのですが、実際の IT 翻訳ではよく見かけます。

ちなみに、今 Google 大明神におうかがいをたててみたところ、

"一意な名前"……もしかして "一意の名前"(約 42,300 件)
"一意の名前"……約 384,000 件

ってことなので、やはり「一意な」は無理がありそう。

『てにをは辞典』には、こういう語尾や助詞とのつながり、「自然→界」のような造語要素、「不思議に→気が合う」のような修飾関係など、「言葉と言葉のつながり」(コロケーション)が用例としてたくさん収録してあります。

とは言っても、用例の収録元が主に文芸作品なので、産業翻訳でストレートに役立つとは限りません。先ほどの「一意」にしても、実際には「一意→的に」という用例しかなく、上に書いた私の疑問は解決されませんでした。

でも、やはり頻繁に遭遇する「固有」という単語の場合、大辞林や大辞泉では形容動詞としても分類されているので、「固有な」という形が可能ということになりますが、『てにをは辞典』でひくと「固有→の」という助詞の続き方しか例がないので、世間一般的には「~の」としたほうが自然なのかな、という見当がつきます。

「一意な」がいい例ですが、日頃自分が接している用語が、実は分野限定の特殊なものだということに気づく役に立ちそうです。

12:22 午前 辞典・事典 |

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コメント

購入してしまいました (^^)
怖くて文章を書けなくなってしまいそうですが...

投稿: けいまま | 2011/02/16 9:37:39

> 怖くて文章を書けなくなってしまいそう

それはありますね。でも何とか乗り越えて前に進みたい^^;

投稿: baldhatter | 2011/02/16 13:24:36

究極版 逆引き頭引き日本語辞典―名詞と動詞で引く17万文例
のお世話になってる人は、ギョーカイに結構いたはずと思います。

投稿: Sakino | 2011/02/20 14:43:08

(Sakinoさん、お名前がなかったんで IP から過去の投稿を探してお名前追加しました)

これ、今はもう入手困難? この手の辞書こそ電子版が出てほしいなぁ。それでも、こういうコロケーションの辞書は、ひと昔前に比べると色々と出てくるようになったと思います。

投稿: baldhatter | 2011/02/24 21:32:09

(すみません。いまだに名前書き忘れとは……トホホ。)


『究極版 逆引き頭引き日本語辞典』は、ファンから、『「を」の辞典』って呼ばれていて、今度の、『てにをは辞典』は、その進化形だと思います。

中身が増えただけでなく、整理もされているようですよ。なので、こちらだけを持っていればよいのかな、と。でも、電子辞書版は、すごくほしいですよね。載っている語彙も、デコとボコはあるけれど、なかなか多岐にわたっているようです。

用例をとった文献類も巻末に整理されていますが、当然ですけれども、学研大国語辞典より新しいものがまざっていて……^^;。

以下、勝手な感想ですが、「てにをは」辞典は、確信犯的に「は」も入れちゃったタイトルなのかなと。中を開いてみると、予想通り、「(て)にを」辞典。そして、そこに使いでがありそうに思います。なるほど、『新★和★和活用大辞典』ということか、と。

「活用」というのは、助辞→格変化→活用^^というのもあるのだけれど、勝俣のいう活用/collocation(英語タイトルと日本語タイトルということ)→連語と考えた方が妥当という気もします。ま、もちろん、中身の対応性ということなのですが。

投稿: Sakino | 2011/02/26 13:13:54

みなさん、こんにちは。

「逆引き・頭引き」の大ファンで、学校でも紹介しまくっていたのですが、今度のこれはさらにいいですね。授業中に文例を読み上げると、生徒が前のめりに食いついてくるのがわかります。

これで、電子データがあったらねえ。ていうか、絶対本を作る過程では発生したはずなんだから、それを商品化してくださればいいだけで…ビューワなんて要らないから、テキスト巻紙でいいから…。

題名の「てにをは辞典」っていうのは、微妙(従来の意味の)ですよね。シロウトからすると「表紙と中身が違う!」って感じるみたいです。かといって、「活用辞典」「連語辞典」「コロケーション辞典」じゃ本屋で目立たず売れないだろうし。

そういや、今とても売れているらしい「語感辞典」もタイトルの妙なのかなあ。中身を見るとこういうのって前からあったじゃないと思えるんですが、題や装丁、売り方で新鮮な印象を与えている気がします。

投稿: Nest | 2011/03/01 10:43:29

Sakino さんも Nest さんも、やっぱベテランのみなさんは辞書に一家言お持ちですよね。大事な商売道具なんだから当たり前なわけですが...

ところで、「てにをは」って「弖爾乎波・天爾遠波」という字が当てられていたんですね(文字が化けちゃうかな)。このなかで最初の「弖」だけは初めて見ました。「弓」に下線が付いているわけじゃなく、こういう字。「底」の字の "まだれ" を除いた字(テイ)の異体だそうです。

投稿: baldhatter | 2011/03/05 11:20:06

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