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2011.02.11

# 第9回翻訳環境研究会 - 牧野一成さん

2/8 に開かれた、JTF の第 9 回翻訳環境研究会に行ってきました。

講演者の牧野一成さん(以下、ポールさん)は、昨年の 9 月に JAT Project Tokyo の前夜に初めてお会いしたばかりなのですが、Twitter 翻訳クラスタの常連なので、実際よりずっと身近に感じていた方です。でも、そのときは Twitter 名刺しかいただかなかったので、ポールさんがヤン坊マー坊の中の人だったとはちっとも存じませんでした。

講演の概要: 「ヤンマーのマニュアル翻訳者が語る、翻訳の実情と翻訳者の役割」

当日は、やはりオンラインでだけ以前から知っていた他の翻訳者さんともお会いすることができました。ポールさんの講演の詳しい内容は、そのなかの一人、"テリー"斉藤さんがかなり詳しくブログに書いてくださったので、ぜひそちらをご覧ください。

リンク: JTF主催:第9回翻訳環境研究会に出席して|翻訳横丁の裏路地

それから、当日の実況ツイートもこちらにまとめられています。

リンク: Togetter - 「2010年度第九回翻訳環境研究会」

いわゆる産業翻訳者を、分野ではなく仕事の形態から大きく分けると、

- フリーランス(在宅翻訳者)
- 社内翻訳者

という 2 種類になることはわりと知られています。私のように、この両方を経験している人も少なくはないでしょう。ただし、ここで言う「社内翻訳者」は「翻訳会社の社内翻訳者」を指すことが多く、ポールさんのように「企業の社内翻訳者」という立場の翻訳者さんがいることは、意外と知られていないかもしれません(翻訳関係の雑誌やムックでもあまり紹介されていないようです)。

翻訳業務の流れとしても、「ソースクライアント → 翻訳会社 → 翻訳者」という流れが一般的で、ヤンマーのような大企業は、この流れの中で言えば「ソースクライアント」に位置することになり、その中にある翻訳部門というのは、思いのほか実態が見えてこないものです。

ポールさんが所属する YTSK(ヤンマーテクニカルサービス)というのは、ヤンマーという巨大なグループ企業のドキュメント部門なわけで、そういう "組織内組織" で働くというのはきっと、私のようなお気楽フリーランスには想像もつかない縛りとかしがらみがあるのだと思います。

翻訳メモリーの使い方にしても、私たちのように「発注元からメモリーが来て、それを前提に作業する」のではなく、各言語ばらばらに存在している過去の資産をいかに効率的に利用するか、という発想で「運用」しなければならないのは、けっこうしんどいことでしょう。

それでも、単に「請け負い仕事」としてではなく翻訳やドキュメンテーションという業務に携わっているという自負が、ポールさんご自身からも、プレゼンテーション内容からも感じられました。

「ただのブローカーでしかない翻訳会社もある」、「いろんな翻訳会社が営業に来るが、売り込み内容にほとんど違いを感じない」などとかなり手厳しい指摘ができるのも、それだけ社内の態勢がしっかりしていることの証だと私はとらえました。

ヤンマーほどの大企業ならではと少し羨ましかったのは、入社後の研修時代、工場に行って実際に組み立て作業などを経験できたというお話。ネジを扱う動詞ひとつにしても、remove と pull out(だったかな?)はどう違うか、感覚的に理解できたとか。

最後の質疑もけっこう盛んだったので、私自身が聞きたかったことは聞きそびれてしまいました。STE(Simplified Technical English)の導入がこれだけ進んできたら、ゆくゆくは機械翻訳にもかなり対応できそうに思ったのですが、機械翻訳に(全部ではないにしても)移行するという予定はあるのでしょうか?

私自身、フリーランスとしてちょうど丸 4 年が経ち、翻訳というものにこれからどう関わっていくのか、いろんな意味で考え直さねばならない時期にきていると感じているところです。その意味でも、今回の環境研究会は実にいい刺激になりました。

以下、おまけです。

リンク: ヤン坊マー坊 ヒストリー | ヤンマー株式会社

08:24 午後 翻訳・英語・ことば |

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コメント

自分の翻訳初めはメーカーの社内翻訳者(ただし専任ではない。肩書きは「翻訳事務」。採用時は仕事量半々といわれましたが、実際は…)だったんだということを思い出しました。珍しい存在なんですね。もっとも20年以上前ですので、やっとワープロが普及して来た頃で、翻訳メモリとかそういうことには一切悩まなかったのですが…

投稿: Susie | 2011/02/12 9:01:59

Susieさん、コメントありがとうございます。
(こちらでは初めてでしたよね)

実はこれ本文で書こうかと思ったのですが、

> 意外と知られていないかもしれません

知られていないだけで、「企業の社内翻訳者」を経験している翻訳者さんって、少ないわけではないんですよね。私の知っている範囲でも何人かいらっしゃったと思います。文芸は違うでしょうけど、こと産業翻訳に限っては、私のような語学畑出身よりむしろそういうケースのほうが多いかもしれません。

IT翻訳だって、システム屋さんとかエンジニアさんが、現役時代に英語に接する機会も多かったので、自分のキャリア + 英語という発想で翻訳者として応募してくる人がかなりいますしね。

投稿: baldhatter | 2011/02/12 15:35:41

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