# 松山に行ったことを初めて書いてみる
四国松山。
のことを書こうとしている。かの地には毎夏訪れているが、ひとえに私事にかかることゆえ、本ブログに載せることは控えてきた。が、今年はネタとすべきものがなかなかに多く、またこの城下町を舞台にした司馬遼太郎翁原作のドラマ『坂の上の雲』第 2 部放映の期に当たってもいるので、数か月を経たとはいえ、この夏の訪問で目にしたことなどを書いてみるのは一興かもしれない。
伊予松山といえばもちろん道後温泉で知られるが、筆者が定宿のひとつとしているのも、道後温泉の宿である。その宿のロビーに、今年はこんな小道具が置かれていた。なんとも自虐的ではある。
蛇口をひねればポンジュースが出てくる。
という、今では人口に膾炙したと言える戯言を、昨年は松山空港が実行してしまったが、それと同類のものである。こちらは家族連れゆえ、こういうサービスも存外に楽しい。
子どもたちが松山行きで毎年楽しみにしていることのひとつはもちろん海水浴で、その目的地は例年、北条鹿島である。
愛媛県北条市。今は松山市に編入されているこの静かな港町は、中世、河野水軍の拠点として栄えた、いわば海賊の基地であった。その洋上、と言っても渡し船が数分も海上をすべれば届くという位置に浮かぶ小島である。
河野水軍が先勝を祈願したという鹿島神社があり、さらに時代をさかのぼれば朝鮮出兵に際して神功皇后がこの島に寄ったとも言われている由緒正しい島だが、松山市への編入以来、環境整備がやや滞っているらしい。
鯛めし、がたいそう美味である。
これまで、道後温泉のほかに定宿としていた宿もいくつかあったが、その後いずれも廃業または規模の縮小という途をたどっている。残念なことではあるが、これも世の常と言えばそうであろう。最近は、道後の地からさらに奥にある温泉ホテルを利用している。
昭和の高度経済成長期に日本各地の農村部を、まるではやり病のように襲った成金趣味が結晶したような、そんな名残をたっぷりとどめながら、今でもそれなりの営業努力をもって一定の集客を保っている。ジャングル風呂など、ある種の異次元空間であろう。筆者はけっこう気に入っているのだが、平成のこの世に、はたしていつまで存続を許されるものか。
このホテルには、なんと自前のロープウェイがあって、お盆前後の夕方にはひぐらしが聞こえるほどの高度にまで登るのだが、
悲しいかな、こちらも運休中、事実上の廃止という運命をたどっていた。
人の営みを離れた人工物が放つ寂しさは、ひぐらしの声の比ではないようである。
どうしたことか、閉鎖されたロープウェイ基地の傍らにはこのような異物もしくは遺物が放置されていたが、もちろんこれが演出のはずもなく、いずれは撤去されてしまうものと思われる。
このホテルにジャングル風呂などという時代錯誤の設備があることはすでに述べたが、それとは別に有料貸し切りの風呂が何種類かあり、これを使うとなかなかの贅沢な気分を味わうことができる。
山中の半屋外ゆえ、虫が飛び込んでくるのはいかんともしがたいのだが、
湯に落ちた虫を救うための道具にこんな言葉の添えてあるところが、伊予の人ならではの柔らかさ、である。
■
司馬ファンのみなさん、お目汚したいへん失礼いたしました。
松山空港をはじめ、町中の至るところがこんな様子です。来年の第 3 部が終わるまで続くことでしょう。
実は、第 1 部の放送は見逃していたので、この夏はドラマにもその関連施設(もしくは便乗商法)にもあまり興味がなく、それよりは
これを見たかったなぁというくらいだったのですが、今ちょうど再放送から見はじめているところです。来夏行ったら、ミュージアムとかも見てくるつもりです。
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コメント
> 道後の地からさらに奥にある温泉ホテル
それは「花と緑の温泉リゾート・ホテル奥道後」ですね
http://www.okudogo.co.jp/index.html
ジャングル温泉26湯めぐり!!
ロープウエイは惜しくも、2009年11月で無期限休業になってしまいました。いつか行こうと思っていたのに、残念です。
ぐぐったら写真入りのロープウエイ搭乗記ブログがありました。
http://ameblo.jp/nnccb139/entry-10255999568.html
投稿: 白い都 | 2010/12/04 18:01:12
大学受験直後に幼なじみと一緒に出かけた四国一周旅行。
三泊目が道後温泉の宿でした。信号待ちで、中年のおばちゃんに、怪しげなところへの誘い言葉をかけられたのが強烈な記憶として刻印されています。
好天の下、松山城?で撮った写真などが残っていたりします。
日暮れて道遠し、、、
投稿: あきーら | 2010/12/05 0:48:32
どうも。
10年以上前に1月の広島に行ったときに瀬戸内海を初めて見まして、ちょうど凪いだ海が綺麗だなと思いました。あの辺にいつか住みたいです。
今日の坂の上の雲の第5回の再放送で、真之に鯛そうめんをご馳走してあげなさいと正岡子規が妹の律に言ってました。鯛なんですね。
朽ちた娯楽施設には、なんとも言えない侘しさがあります。ジャングル風呂は行かない間に廃れてしました。
湯に落ちた虫を救うとは、海の男たちの魂なんでしょうか。
投稿: 竹花です。 | 2010/12/05 0:49:06
> それは「花と緑の温泉リゾート・ホテル奥道後」ですね
はい、正解。
実は、今回は書かなかったんですが、昔はテレビドラマのロケにもよく使われていたみたいです。私も見たことがあるのが(最近ケーブルで)『ザ・ガードマン』の第312話。ゲストの林隆三と緑魔子がこのホテルに泊ります。今はなくなってしまった金閣寺のレプリカとか、今は通行止めになっている遊歩道とか、そういう往年の名物がしっかり写ってました。
投稿: baldhatter | 2010/12/05 14:09:19
> 怪しげなところへの誘い言葉をかけられた
はい、道後温泉のメインエリアのすぐそばに、今でも「怪しい」一角があります。今までは、ホテルの部屋からそういう一角の存在に気づいていただだけで実際に近くを通ったことは一度もなかったのですが、今年の夏、ひょんなことからそのエリアを通ったら、ちゃんとストリップ小屋も営業してました。
そちらの客引きはあまり見かけないのですが、一度だけ声をかけられ、そのままおばちゃんと立ち話になったこともありました。
投稿: baldhatter | 2010/12/05 14:15:53
> 鯛そうめんをご馳走してあげなさい
そう。鯛そうめんも美味いっす。
> 湯に落ちた虫を救うとは、海の男たちの魂なんでしょうか
そういえば、同じ愛媛県の宇和島には、近海から引き上げられた紫電改を展示している博物館があります。
http://www.town.ainan.ehime.jp/sight_spot/1_15_shidenkai.html
2004年に行きました。
投稿: baldhatter | 2010/12/05 14:19:41
おお、この紫電改はレストアではなく、プロペラも曲がっていて堕ちたときのままなのですね。渋いです。
投稿: 竹花です。 | 2010/12/05 21:07:39
> プロペラも曲がっていて堕ちたときのままなのですね
はい。実物を間近で見ていると、なんとも言えない威圧感を感じます。真夏の観光シーズンでしたが、博物館にはほかに客もなく、時間が止まったように静まり返っていました。
そのとき撮った写真も今度アップしてみますが、こちらのサイトで詳しく紹介されていました。
http://underzero.net/html/tz/tz_263_1.htm
投稿: baldhatter | 2010/12/05 21:17:30