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2010.11.14

# まじめな翻訳の話 - 前置詞

たまにはまじめな翻訳の話もするのでした。

私は翻訳学校というものに通ったことがないし、教えたこともないので、具体的な翻訳テクニックとしてどんなことが教えられているのか知らないのですが、前置詞の扱いはもちろん重視されているのだと思います。

なんでこんなことを書いているかというと、たまたま前置詞の訳し方が問われそうな、しかも判りやすい例にちょうど遭遇したからです。

The key difference between them is that AAA was designed for ease of use, while BBB was designed for high performance.

こんなとき、2 つある前置詞 for をどちらも「~ために」と訳して済ませている訳文も少なくありません。というか、マニュアルやヘルプにはそんな訳文があふれています。

大きな違いは、AAA が使いやすさのために設計されたのに対して、BBB は高パフォーマンスのために設計されたという点です。

for の後ろが名詞句なら、「~用」なんて訳も定番です。上の例なら、「高パフォーマンス用」とか。

こういうときの前置詞は、その辞書的な意味を訳出するだけでもだいぶ違ってきます。この場合の for は、意図・目的のはずですから、「使いやすさを目的として~」とか「パフォーマンスの向上を意図して~」とか、そんな風に

前置詞の語義をフレーズとして訳出する

わけです。

もう一歩進めて「使いやすさを前提に設計された~、高パフォーマンスを優先して設計された~」などとしてもいいでしょう。

こんなこと、現役の翻訳者さんならほとんど無意識にやっていそうなのですが、実際の(機械翻訳ではない)マニュアルやヘルプでこの手の訳文が珍しくないところを見ると、そうでもないのでしょうか。それとも、マニュアル/ヘルプだと、翻訳メモリー上の統一という制約があって、なんでもかんでも「~のために」、「~用に」としているのでしょうか。

最近たびたび言ったり書いたりしてますが、「~のために」とか「~用に」ばっかりで済ませてオーケーの世界は、そう近くない将来、機械翻訳にとって代わられます。統計ベースなら、ここで「工夫」としている訳し方でさえ、機械でこなせるようになるかもしれません。

ここしばらく、「機械翻訳に代用され得ない翻訳とは何か?」というテーマが頭を離れません。ついまじめな話を書いてしまったのは、たぶんそのせいでしょう。

02:33 午後 翻訳・英語・ことば |

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コメント

ぱっと思いついた選択肢としては、あと、「重視して」がありました。

投稿: Buckeye | 2010/11/14 15:28:55

確かに目からウロコです。

投稿: 竹花です。 | 2010/11/15 8:24:43

ちょうど「for」が頻出する文章を翻訳中で、いささかうんざりして
いたところでこの記事を読み、「そうかあ、みんなやっぱり苦労して
るんだ」とちょっと気持ちが軽くなりました。

〉「機械翻訳に代用され得ない翻訳とは何か?」

これは翻訳者としては考えなければならない課題ですね。「付加価値」
などというのもキーワードの一つになるでしょうか。

投稿: Jack | 2010/11/15 14:31:45

もうちょい書き換えの範囲を広げるなら、「~になるように」を使う手もありますね。「使いやすくなるように設計された」、「パフォーマンスが高くなるように設計された」などとするわけです。

さらに大きく書き換えるなら(↓)とか?

大きな違いは、設計時に重視されたのがAAAは使いやすさ、BBBはパフォーマンスだったという点です。

投稿: Buckeye | 2010/11/15 16:47:00

> ぱっと思いついた選択肢としては、あと、「重視して」がありました

「優先」を使っているから、対比としては「重視」もいいですね。柔らかめな文章のときは、「~ように」も使います。ただ、この手の言い換えはうまくやらないと文がもたつくこともあります。

> 。「付加価値」などというのもキーワードの一つになるでしょうか。

これはいつも考えているのですが、「価値」というの受け手が評価してくれないと成り立たないので難しい。

>

投稿: baldhatter | 2010/11/19 20:10:43

> 確かに目からウロコです

この表現、「うろこ」を漢字で書いてもカタカナで書いても、どっちでも落ち着きが悪い気が個人的にはします。

投稿: baldhatter | 2010/11/19 20:12:54

亀レスですが、実は、私は「ために」派です。重なるから、あるいは考えないで使うからまずいのであって、ということで。

「ために」の何がいいかというと、ヒラガナで主張をしないから。forの部分の訳に、漢字を持っているのは、意図的に行う以外は、やめた方がいいと思っています。

その意味で、「~をめざして」「~するべく」など、ひらがなでの選択肢をいくつもためこんでいます。

投稿: Sakino | 2010/11/25 11:05:27

> 「ために」の何がいいかというと、ヒラガナで主張をしないから

あぁ、なるほど。ひらがなと漢字の違いというのはありますね。今までにも何度か拝見したことがありますが、Sakino さんの「ひらがな」あるいは「和語」に対するこだわり、今度まとめて聴かせてください。

投稿: baldhatter | 2010/11/25 11:35:13

「こだわり」部分はともかく、前置詞相当部分が漢字だと、ナナメヨミしにくいというのが一つと、元々が真っ黒(漢字が多い)内容の場合には、漢字を減らさないと読者に逃げられるという実利的なはなしは、あるかもしれません。接続詞を、たいがいは、ひらがなで書くのと似たような理由です。(別に、意識して使うのまでマズイというつもりはないです^^;)

投稿: Sakino | 2010/11/25 16:02:05

> 元々が真っ黒(漢字が多い)内容

Sakino さんの分野だと真っ黒になりやすいのでしょうね。ITだと周りがカタカナだらけになることはあっても、漢字が多くなるという傾向はあまりないのです。

IT翻訳は特に、そういう「こだわり」の部分を切り捨ててとにかく統一しろ、みたいになりがちで窮屈です。

投稿: baldhatter | 2010/11/27 18:38:18

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