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2010.04.21

# 相関と因果

あきーらさんが、昨日のエントリでこのニュースを取り上げていました。

リンク: 技術者から翻訳者へのシルクロード:叩かれた回数の多い子どもは暴力的に育つ、米研究

このエントリに対する Buckeye さんのコメントを一部引用します。

でもそれはあくまで相関であり、因果ではないと思います。 つまり、「育てるときたたいたら暴力的に育つ」ではないと。

相関と因果。このふたつが区別されていないケースって、実はかなり多いのだろうと思います。

そもそも、「原因と結果」という考え方自体が定着していない節すらあって、英語の Cause and Effect なんてとてもわかりやすいと思うのですが、もしかしたら「原因と結果」を

「因果」という仏教用語と一緒

にしてしまったことに一因があるのかもしれない、とふと思いました。

細かい考察を書いている時間が今はないのですが、たとえば因果は「巡る」ものだから円環であるのに対して、 Cause and Effect というのはあくまでも直線というイメージがあります。

あまり深く考えずに(しかも、たいていは科学的な裏付けのないまま)、「こうしたら、ああなった」という図式に飛びつく人が多いのも、「原因と結果」がよくわかっていないことが一因でしょう。

「納豆を食べたら痩せた」くらいの話であれば、業者さんたちが一時的に困ることはあっても、時が過ぎれば笑い話ですむのですが、教育の現場にこういう曖昧な因果論を持ち込むのは、実に有害です。

以下、いろいろ続けようと思いましたが、「原因と結果」だけではなく「十分条件と必要条件」の混同とか問題がいろいろあって、それこそ原因と結果のいいかげんな話になりそうなので、ここでやめておくことにします。

01:20 午後 翻訳・英語・ことば社会・ニュース |

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コメント

このことを前に考えたことがあります。
親のふるまいを見て、「そういうものか」と真似するようになるか、「こんな大人にはなるまい」と反発して努力するか、どちらも因果関係ではあります。ただ、これが五分五分ならいいんですが、努力するのは困難や苦痛が伴い、大方は楽なほうに走るとすれば、暴力的に育ちやすいといえるかもしれません。こうして、世の中は暴力がはびこる一方、ということにf^^;。

投稿: みっち | 2010/04/21 16:34:03

ちと古い版になりますが、広辞苑第四版では以下のように定義してます。

相関:相互に関係しあっていること。互いに影響しあう関係にあること。

定義の後段は「互いに『原因』と『結果』になってる」とも読めるワケで、一般的に広く「『相関』と『因果』を別物として峻別する」ことを求めるのはいささか無理があるかも……、と思います。

また、「示されているのは『相関』であって『因果』ではない」という物言いが、しばしば因果関係を否定しているように受け取られかねない、ってのも難しいところですな(厳密には「『因果』関係があるかどうかは『わからない』」)。

このあたり、世間的には「相関」と「因果」がきちんと峻別できていない人の方が大多数である、と考えて、くどいくらいに説明する程度でちょうど良いのかもしれません。

投稿: ohkoshi | 2010/04/21 19:36:57

相関という語彙が国語辞書にあるそれか数学(統計)用語なのかによって意味が違う、というところが罠なのではと。
数学はそれ自体が一つの言語だ、と大学教授に聞いたことを思い出しました。

投稿: すみっこ兼業翻訳者 | 2010/04/22 6:58:29

> どちらも因果関係ではあります
> 定義の後段は「互いに『原因』と『結果』になってる」
> 国語辞書にあるそれか数学(統計)用語なのか

いろいろ考えるとなかなか難しいものですね。そのうち、また稿を改めたいと思います。

投稿: baldhatter | 2010/04/23 19:19:46

相関と因果はgenericとspecificの関係でもありますね。
「言葉」はgenericなベクトルを持ち、言葉を消費する
ことしか知らない思考はspecificを捨象して腐り始める。
言葉は気づきの道具ですが、言葉を断って沈思黙考する
こともたまには必要なのでしょう。

投稿: Neolecta | 2010/04/24 16:52:04

> 「言葉」はgenericなベクトルを持ち、言葉を消費する
> ことしか知らない思考はspecificを捨象して腐り始める

おもしろいですね。これに近いことを表す四字熟語が

> 言葉は気づきの道具ですが、言葉を断って沈思黙考する
> こともたまには必要なのでしょう。

言葉の大切さを知っている人ほど、沈思黙考あるいは単なる沈黙の価値も知っているのだと思います。

投稿: baldhatter | 2010/04/29 13:22:49

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