« # 34,501ワードを10時間で……? | トップページ | # 師走のご挨拶 - 2009年 »

2009.11.30

# 翻訳者は関連資料をどのくらい見なければいけないか

翻訳のとき、的確な訳語を決定したり、用語や概念を正しく理解したりするために「関連資料」を調べることはもちろん翻訳仕事の一部です。ここで言う関連資料とは、その類ではなく、翻訳時にクライアントやベンダーから指定される、
・作業指示書
・スタイルガイド
・用語集など
・過去の翻訳物など、翻訳対象に関する参考資料
のことを指しています。

分野やクライアントの性質によっては、この手の資料がほとんどない場合もあるでしょうが、IT 翻訳ではある程度の分量が支給されることが少なくないようです。

でも、その量があまりにも多いと、「これ、ぜーんぶ読めってーの?」と言いたくなります。

私自身が翻訳会社に勤務していたときは、翻訳者さんにその辺のところがあまり負担にならないよう、できるだけ配慮していたつもりなのですが、それでも多かったかもしれないなぁと、自分が受注する側になってからよく思いました。


整理されていない指示書
ある程度大きい翻訳プロジェクトの場合、進行に従ってルールの変更や追加、ソースクライアントからのフィードバックなどがあることは珍しくありません。翻訳会社は、そういった経緯を吸収して整理し直した指示書を出すべきなのですが、いかにもツギハギ的な指示書をよく見かけます。それを読み取って理解するほうの負担を考えてください。


複数のスタイルガイド指定
たとえば、クライアント独自のスタイルガイドのほかに、「記載内容以外はマクロソフトの仕様に従ってください」なんて指示があったり、それとは別に翻訳会社独自の細かい指示や仕様が追加されていたり。私の場合、今ではもうスタイルごとにけっこう細かくスクリプトを用意してあるのでさほど困りませんけど、そういう準備がない翻訳者さんだと、これだけでかなり負担になっているんだろうなぁと思います。


ばらばら複数の用語集
用語集が1つのファイルにまとまっていないケースもよくあります。たとえば「基本用語 + 特定カテゴリの用語 + 製品コンポーネントのリスト + 関連マニュアルのリスト」みたいな感じで。まあ、ぜんぶテキストにして grep するから実害はあまりないんですけど(そんなわけで MultiTerm の出番はあまりない)、なんというか担当者の頭ん中が disorganized なんだなぁ、と思ってしまいます。


ソースクライアントから受け取って丸投げされた資料
「製品の概念についてはこちらを読んでください」なんてあっさり言われて、開いてみたら 100ページ以上もある英文ドキュメントだったり......orz 自分は読んだかい~?!


翻訳会社さん(の特定の担当者)としては、成果物のレベルを確保するつもりでいろいろと送りつけているんでしょうが、かなりの場合、逆効果なんじゃないでしょうか。上流工程でいろんな処理を済ませたい、という気持ちは判るんですけど。

どうしても指示が多くなるのなら、少なくともその内容をきちんと整理して、翻訳者の負担を軽くするように考えたほうが、トータルな労力は減るはずです。

もちろん翻訳者のほうも、そういうときは言いたいことを言ったほうがいいし、言える関係をふだんから築いておくべきなんでしょうね。

12:14 午前 翻訳・英語・ことば |

はてなブックマークに追加

« # 34,501ワードを10時間で……? | トップページ | # 師走のご挨拶 - 2009年 »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: # 翻訳者は関連資料をどのくらい見なければいけないか:

コメント

資料をじっくり読むのがすごく苦手なんです。だから大量の資料を渡されるとそれだけでブルーです。でも逆に資料がまったくないと、ちょっと不安。質の良い、適度な量の資料があれば、それだけで随分気が楽になります。

投稿: ぷーまま | 2009/11/30 10:14:39

> 質の良い、適度な量の資料があれば、それだけで随分気が楽になります。

ですよねー。
そういう声を届けられるように、これからは翻訳者と翻訳会社の関係も変えていけたら、と思います。

投稿: baldhatter | 2009/11/30 12:54:37

>どうしても指示が多くなるのなら、少なくともその内容をきちんと整理して、翻訳者の負担を軽くするように考えたほうが、トータルな労力は減るはずです。
>
それができるプロマネさんは2人しか知りません。
時々「この人たちの介在価値あるんかい」と腹立たしく悲しくなります。

投稿: すみっこ兼業翻訳者 | 2009/12/12 10:23:17

> プロマネさんは2人しか知りません

PM さんはプロジェクトを総合的に管理する人だから、こういう指示は社内翻訳者さんが管轄したほうがいいと思います(私がいた会社ではそうでした)。

投稿: baldhatter | 2009/12/12 21:40:56

この記事へのコメントは終了しました。