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2009.01.04

# サイボーグ戦士、誰がために

石ノ森プロが、誕生 45 周年ということで「サイボーグ009」の新しいプロジェクトを開始したそうで。

ネタ元: サイボーグ009、あれから45年。私たちの未来は・・・。|「翻訳会社、やってます!」奮闘記 Part2

公式サイト:MESSAGE - サイボーグ009公式サイト 009ing

石ノ森章太郎は、言うまでもなく日本漫画界の巨人の一人であり、故・手塚治虫とも並び称せられることの多かった人ですが、その存在の大きさのわりには、

風呂敷を広げるだけ広げておいて、収拾を付けられなくなった

という印象の作品も少なくない、というのが私の評価です。

小粒に収まっている作品群はそうでもないのですが、『リュウの道』とか、この『サイボーグ009』のように、構想が大きい(もしくは途中から大きくなった)作品ほど尻すぼみの感があります。『サイボーグ009』が「天使編」で唐突に終わってしまったときは唖然とさせられたものです。

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今回は、21 世紀になった今をテーマとして、このサイボーグ戦士たちをまた いろいろとメディアに展開しようという試みらしい。

あれから45年。

人類は 戦争をやめたか。
武器を 捨てたか。
差別や貧困を 根絶したか。
物質文明は 人を幸福にしたか。
美しい地球を 取り戻したか。
科学は すべてを解決したか。
神は いたか。
世界は もう、サイボーグ009を必要としなくなったか。

「必要としなくなった」というより、彼らの闘いに何かを託せるような、そんな単純な世界ではとうていなくなってしまった、というしかない状況だよね、たぶん。

現代社会は、彼ら 9 人が登場した 1964 年当時よりはるかに複雑に、そして混沌とした世界になってしまったし、まして「倒すべき敵」などは想定することすら難しくなった。東西とか南北とか対立の軸が見えやすかった 60 年代当時ですら自分たちの無力感に苦しめられることの多かった 009 たちが今この世界に再登場したとして、いったい彼らはどんな道を歩まねばならないのだろうか。

「ブラックゴースト」という判りやすい敵が滅び(地下帝国ヨミ編)、エビソード的な単発ストーリーをいくつか続けた後に、あの「天使編」を描き始めた作者石ノ森が、ついにはサイボーグ戦士たちの運命の終着点を見出せなくなってしまった、そのこと自体が「ますます判りにくくなる時代の到来」を告げるものだったと考えることもできる。

であるとすれば、009 たち 9 人の出番もおそらくあの時点ですでに終わっていた --- その後も断続的に続いた連載はすべて外伝あるいはパラレルワールドものとしか読めない --- はずであり、彼らの再登板を願うのであれば、それはよほど違った形のものでなければならない。

同じ石ノ森章太郎原作をベースにした仮面ライダーにしても、2000 年に蘇って以降はすっかり現代社会への適応を果たしたものと見えるし、同じく昭和のヒーローだった鉄腕アトムが浦沢直樹の『PLUTO』という当世風の新解釈で復活した例もあるのだから、「今の世界が必要とするサイボーグ009」が出現することを、ちょっとだけ期待してみようか。

03:57 午後 日記・コラム・つぶやきアニメ・コミック・サブカル |

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明けましておめでとうございます。 ブログペットに負けぬよう適度に更新する所存でございます。 本年もよろしくお願いいたします。 あれから45年。It has been 45 years. 人類は 戦争をやめたか。Has the human race stopped having wars? 武器を 捨てたか。Did w...... [続きを読む]

受信: 2009/01/04 17:35:07

コメント

大人買いへの後押し情報&トラックバック、ありがとうございます(^^)。

>「今の世界が必要とするサイボーグ009」が出現することを、ちょっとだけ期待してみようか。

今の時代においてサイボーグ009は、どのように再定義されるのでしょうね。
商業主義に利用されて終わるだけかもしれませんが(苦笑)、期待してみたい世の中です。

投稿: ishida | 2009/01/04 17:34:46

♪赤いマフラー~ なびかせて~
♪赤い夕焼け~ 寄せる大波~
初期アニメのオープニングとエンディングにどっぷり浸ってしまう年代としては、うれしいような、触ってほしくないような、複雑な気分です。

>風呂敷を広げるだけ広げておいて、収拾を付けられなくなった
これは石ノ森章太郎のイメージでもありますねf^^;。『幻魔大戦』もそうだし、ってあれは原作の問題もあるんですが。

魅力的な設定を生み出すだけでなく、それを追い続けて壮大な物語に仕立て、まとめるというような姿勢も環境も、現代の作家には求められていないのだと思います。トールキンの「中つ国」は、おそらく幸運な例外ではないでしょうか。

投稿: みっち | 2009/01/04 20:46:46

ダニエル・クレイグの007の方はソマリアとか中米とかいろいろネタを見つけているみたいですね。

投稿: | 2009/01/04 22:50:47

サイボーグ009。そもそもが、周囲の少女たち^^;のあいだでは淡い恋愛対象としてのみ消化されていたような。「時を駆ける少女」の復活みたいに、わすれさった胸のときめきを思い出させてくれるようなバージョンになる、なんていうことはないのだろうな。

投稿: | 2009/01/04 23:05:11

>風呂敷を広げるだけ広げておいて、収拾を付けられなくなった

手塚治虫には『どついたれ』や『一輝まんだら』のように未完のものもありますが、大体うまくまとまっていますよね。『アドルフに告ぐ』は物語の最初の絵と最後の絵が同じで、ということは書き始めた時点で構想が最後までまとまっていたということです。ちなみに江戸川乱歩は『悪霊』という小説の結末が思いつかずに、連載を中断して謝罪しています。

手塚や石ノ森が凄いのは、愛されるキャラクターを複数生み出したことでしょう。

モンキー・パンチは『ルパン三世』
吉沢やすみは『ど根性ガエル』
ゆでたまごは『キン肉マン』
高橋陽一は『キャプテン翼』

を超えられなかったように、大抵は生涯1キャラですが、そうではないのが凄いところです。他には鳥山明(2発屋ですが)や浦沢直樹など、数えるほどしかいないのではないでしょうか。

投稿: バックステージ | 2009/01/05 10:52:54

さすがにコメントがたくさん付くネタでした^^
以下、順不同になりますが。

> 商業主義に利用されて終わるだけかもしれませんが

平成ライダーなんかは、玩具メーカーの意向とクリエータたちの意欲がなかなかうまく噛み合っているんじゃないでしょうか(と言いながら実はクウガしか見てはいないんだけど)。

> 淡い恋愛対象としてのみ消化されていたような

現代の "腐女子" へと続く系譜かもしれませんね :P

投稿: baldhatter | 2009/01/05 11:32:23

> トールキンの「中つ国」は、おそらく幸運な例外

『指輪物語』の奇跡は、作者が職業作家ではなく大学教授だったことに一因があると私は思います。

> ソマリアとか中米とかいろいろネタ

実社会のほうがフィクションよりはるかに複雑ですから、お話を作る人はいろいろと大変でしょう。

投稿: baldhatter | 2009/01/05 11:37:01

> 『どついたれ』や『一輝まんだら』のように未完のもの

公式に未完ということではなく、尻すぼみになってしまった失敗作というのは手塚にもなくはないんですけどね。

> 大抵は生涯1キャラ

ああ、言われてみればそうですね。モンキーパンチは『一宿一飯』なんか好きですが、メジャーなキャラにはなってませんし。本当に大物かどうかをその辺で線引きするという視点もありますね。

投稿: baldhatter | 2009/01/05 12:10:43

少し内容がズレますが…
先日、古いビデオテープの内容を整理していたら、なぜか平成009(TVアニメ)が録画されていました。
自分は芦田版で育ったので、原作に近づいているはずの設定などに何となく違和感を覚えたのか数話しか見たことがなく、すっかり忘れていたのですが。
「音楽:小室哲哉」
この頃から既に財政は逼迫していたのか?と思うと、何となくしみじみとしてしまいました。
またアニメ化とかするんでしょうか…。

投稿: | 2009/01/05 23:51:37

千雲さん、コメントありがとうございます。
(LotR 読み解き工房でお見かけした千雲さんでしょうか?)

> 「音楽:小室哲哉」

そうそう、これこれ。私もみなさんにコメントをもらってから YouTube で主題歌を見て気づきました。ちょっとビックリ。

投稿: baldhatter | 2009/01/06 0:11:46

メッセージの英訳が興味深かったです(評価は別として)。特に
  神は いたか。
  Where are the angels and demons?
こう意訳した人に、話を聞いてみたい気がします。英米人がこの対比を見たらどう思うのか、も。

投稿: | 2009/01/10 11:23:18

> 神は いたか。
> Where are the angels and demons?

たしかに、全体にほとんど直訳っぽい中でこのラインだけ異色です。私がひとまず考えられるのは、未完の「天使編」をふまえて angels としたのかな、ということくらい。

投稿: baldhatter | 2009/01/11 3:20:57

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