# インタビューは危険なもの
雑誌の記事、ましてや「インタビュー」の内容なんて鵜呑みにするもんじゃない、ということはどこでも教えていないんだよね、きっと。
リンク: J-CASTニュース : 「頑張れば夢かなうは幻想、傲慢」 山田太一発言ネットで大反響
特にこの手の内容の場合は、発言者の意図が容易におかしな方向に伝わってしまいますからね。マスコミの側でも、インタビューなどという不完全な形式はあんまり多用すべきじゃないでしょう。
インタビューって、本人の言葉が忠実に活字で再現されること自体ほとんどないのだから、活字で書かれていることから発言者の意図を正しく読み取ることは相当に難しい作業だと自覚して挑む必要があります。
多くの人が前向きに生きるには、可能性のよき断念こそ必要ではないでしょうか
たとえば、この「よき断念」という言い方に込められた真意は何なのか。それをちゃんと読み解かなければ、太一さんの真意はたぶん伝わらない。しかも、本人が実際にそう言った場合と、インタビュアーがそう解釈して言葉にした場合とでも意味は違ってくる。
そういう前提をクリアしないヒトたちが、この発言における「よき」という単語を無視して「可能性の断念こそ必要」と読んでそこに反応したりしている。ネット上の "論争" の大半も、たぶんこんなふうに経過してるんだろうな。
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コメント
むか~し、国体に出たとき地元新聞の記者さんから取材があり、翌日、記事になったんですが、たしか「最後のフリーの演技では10点目指してがんばります」みたいな話になってました。当時は6点が満点だったわけで、それでどうして10点が目指せるのか、言ったことになってる本人にもさっぱりわやでしたわ。
それはともかく。
文字より怖いのは映像。「インタビューで本人がしゃべったとおり」だと言えばそのとおりだけど、編集によって本人の意図とは反対にとるのがノーマルっていう切り方、つなぎ方ができてしまうことも珍しくないわけで。
昔子育て系の話でテレビに出たとき、見え見えの誘導質問をずいぶんされ、部分的に切りだしたら相手が望む答になるってことがないように答えるのにつかれたって経験があります。
投稿: Buckeye | 2009/01/14 10:39:32
こんにちは。最近の若者は、優秀でしたたかではあるけど、人目を気にする分だけ、プライドを傷つけらえると簡単に大きなダメージを受けます。だから強いのか弱いのかわからない。昔は「挫折から学べ」「失敗してみろ」と若者に声をかけたと思うのですが、最近は、ほんとうに失敗すると根本からボキッと折れるんじゃないか、と思わせるようなところがあって。そういう若者たちを見たうえでの「よき断念」のアドバイスだったのでしょうね。
山田太一さん本人にとって、誤解されるのは一向にかまわないような気がします。彼の真意がすぐにわかるような相手なら、アドバイスは必要ないでしょう。山田さんの言葉に反発したり、ムカついたりしながら、ほんものの挫折や失敗への心の準備をし、実際に挫折したときにはそれを乗り越えて成長してほしいと思います。
投稿: | 2009/01/14 11:31:42
> 当時は6点が満点だったわけで、それでどうして10点が目指せるのか
アハハ。間抜けな話ですねー。
> 部分的に切りだしたら相手が望む答になるってことがないように答える
それはものすごい芸当ですよ。
投稿: baldhatter | 2009/01/14 13:59:38
> こんにちは。
(えーっと、IP から察するに Jenny さんですよね?)
> ほんとうに失敗すると根本からボキッと折れ
脆いですよね。我が子やその周囲を見ていてもそうですし、10年以上前の教え子たちの中にも、驚くほどの脆さがありました。
> 山田さんの言葉に反発したり、ムカついたりしながら、ほんものの挫折や失敗への心の準備をし
なるほどなるほど。今の子たちにはむしろ、そういう「シミュレーション」的な捉え方をするとうまくフィットするのかもしれませんね。
投稿: baldhatter | 2009/01/14 14:03:59
>(えーっと、IP から察するに Jenny さんですよね?)
あっ、ごめんなさぁ~い。わたし(Jenny)です。名前を入力しなくても投稿できてしまうのですね。というか、投稿を承認していただいたのですね^^;
> 今の子たちにはむしろ、そういう「シミュレーション」的な捉え方をするとうまくフィットするのかもしれませんね。
「挫折」や「失敗」をなかなかそうだと認めない、正視できないような印象も受けます。行きたかった学校に行けなかったとか、望んだ職業に就けなかったとか、失恋したとか、何か辛いことが起きても、周囲は「落ち込む必要はない」と言って励ますし、本人も「まぁ、ほかの選択肢があるからいいや」と思う。
そうやってやりすごすうちに、成功するなら花火みたいに大きく目立って成功しないと意味がない、それ以外はカス、みたいなバランスの悪い考え方になって。それって自分で自分をつらくしてない? って聞きたいのだけど・・・
すみません、勝手にいろいろ書いてしまって m(_ _)m
年末、若い後輩と接することがいろいろあったものだから。みんな、すごくよい子たちなんです。でも自分たちでがんばってもらうしかないですね。
投稿: Jenny | 2009/01/14 15:45:19
> 「まぁ、ほかの選択肢があるからいいや」と思う
「ほかの選択肢」を思いつかないともっともっと行き詰まっちゃって自死を選んじゃったりします。そういう場合も含めて、
> 大きく目立って成功しないと意味がない、それ以外はカス、みたいなバランスの悪い考え方
たしかに "all or nothing" な硬直直線思考が目立つ気はしますし、その傾向って「勝ち組/負け組」という言い方が登場してからますます強くなっているように思います。
投稿: baldhatter | 2009/01/14 15:59:40
生きてることが辛いならいっそ小さく死ねばいい…
も「辛けりゃ死ねば」と歌ってるとか曲解されたり。
投稿: 竹花 | 2009/01/14 16:19:36
> 生きてることが辛いならいっそ小さく死ねばいい
ああ、そーゆー歌があるんですね。聞いたことがないので(森山直太朗という人も知りませんでした)歌詞を検索しましたが、なるほど、これはいろいろ言われていそうです。
投稿: baldhatter | 2009/01/14 17:20:19
楽曲の場合、サビをキャッチーにする(例えばCMとのタイアップ曲との場合、サビだけ先に作る)手法が幅を効かせています。森山直太朗のこの歌のように、歌詞全体を聴くことを前提にしている歌の方が少ない気がします。
ちなみに森山直太朗の母親は森山良子、姉の夫はおぎやはぎの小木博明で、親戚にムッシュかまやつがいます。有名な曲に『さくら(独唱)』があります。
投稿: バックステージ | 2009/01/15 23:04:28
> 森山直太朗の母親は森山良子
ああ、どうりで声はきれいだと思いました(YouTube にて)。
> サビをキャッチーにする手法
大半の流行り歌のように、毒にも薬にもならないような曲なら害はないんですけどね。
投稿: baldhatter | 2009/01/16 0:16:55
佐藤信彦です。
Jennyさんのコメントを読んで、先日の日経新聞で目にした「カーナビ親」という言葉を思い出しました。「先回りして子供にあれこれ指図する」親を指すようで、「なかなか子供が自立しない」といった話が書いてありました。
「カーナビ親」のなかには「子供が自ら道を選んだように見えるものの、実は親が決めている」なんてパターンがあるらしい。そして、いざ失敗すると「あなたがそのような選択をしたのだから云々……」と責任を子供だけに負わせるなんて話も。まぁ、これは極端な例だろうけど、自分と子供の関係を振り返って「注意しなくちゃ」と、珍しく新聞記事を読んで感じました:-p
よほど天才的な子供でもない限り、親が子供の進路をある程度絞り込んで提示し、その中から選ばせたり、適当な方向に誘導したり、といったことは一般的と思います。でも、さじ加減が難しい。がっちり敷いたレールの上を走らされて(イロイロな意味で)大成功する人もいれば、道から外れることを許されない反動でぐれちゃうこともあるでしょう。人間の育て方には正攻法や正解などなくて、レールを敷くような育て方から、目的地だけ示して自分で道を選ばせる方法、崖から突き落として大海原に投げ込むなどなど、さまざまな姿勢が考えられます(^^;)。同じように育てても、子供の性格や親子関係、周囲の環境、時代などさまざま要因で、得られる結果が大きく変わるはず。
理想的には、生き方という哲学を教えておき、あとは自分に選択させ、小さな失敗を繰り返して学んで行ってもらう、なんでしょう。難しいですね。
投稿: 佐藤信彦 | 2009/01/16 13:26:24
> 難しいですね
佐藤さんの親としての一面を垣間見させていただきました :)
(私の頭の中では、昨年12/30の佐藤さんのエントリ「キーック」の写真が再生されています)
わが家でも長子が生まれる以前から、親として「○○しちゃだめだよね」という否定形のコンセンサスはいろいろありましたが、「●●すればいい」という肯定形の方針はあまり立てることができませんでした。
長子(男子)に対しては「カーナビ親」にはならずに済んだかなと思いますが、娘たちに対しては私も要注意かも。
投稿: baldhatter | 2009/01/16 19:37:32