# TRADOS - ローカライズ業界の話
翻訳メモリ(以下、"TM")に関する Buckeye さんのご指摘は、TM をある程度以上使っている人なら深く肯けるものだと思います。
リンク: Buckeye the Translator: 文脈に合わせて訳文を組みたてる
余談ながら、全体の流れを切り捨てることで訳文リサイクルによるコスト効率アップを実現するのが翻訳メモリという考え方だ、と私は考えている。
さらに余談ながら、だから私は翻訳メモリを使いたくないし、力をつけたいなら使わないほうがいいとアドバイスをしている。
この流れで言えば、TM の活用頻度がもっとも高いと思われるローカライズ業界における「翻訳」などは「翻訳」のうちに入らないんだろうなと私も考えます。実際、ローカライズの現場で見られる日常的な作業のかなりの部分は「翻訳」と直接関係のないファイル操作です。
だから、「翻訳(者|家) になりたい」という志望と、ローカライズ業界というのは実はかなり縁が遠いとも言えます。
幸い私の場合は、純粋な翻訳だけでない諸々の作業も性に合っていたので、ローカライズというのは結果的に良い選択だったと思っています。
ローカライズ分野で典型的な、「○○を選択して、△△をクリックします」みたいな定型ばっかりだったら、おそらくかなりの部分を機械翻訳でカバーできるでしょう(実際にその方向を試みているクライアントも多い)。
ところが、たいていのマニュアルはそんな定型句ばかりでなく機能や概念の説明もあるし、さらにはローカライズの枠を越えて IT 系全般ということになれば、Web ページやホワイトペーパー、マーケティング用マテリアルと範囲が広がってきて、そのような素材を同じ翻訳者が訳すと、たちまちボロが出てしまうというケースも実は少なくありません。application が文脈をどんなときにも「アプリケーション」と訳されていたりするのはそんなときです。
この項、続きます。
03:07 午後 翻訳・英語・ことば TRADOS | URL
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コメント
>ローカライズ分野で典型的な、「○○を選択して、△△をクリックします」みたいな定型ばっかりだったら、おそらくかなりの部分を機械翻訳でカバーできるでしょう
それだったら、原文をコントロールすれば翻訳をする必要さえありません。原文を一定範囲の定型文に限り、それに対応する各国語の定型文を用意しておけば、原文が完成し、定型文にはめ込む非定型部分の単語の対訳さえ入力すれば、ローカライズ完了です。
そんなに簡単な話にならないのは、帽子屋さんのご指摘どおりですが。
投稿: Buckeye | 2008/07/01 18:14:11
ああそうだ。私は、IT系って、Webページやプレゼン資料、マーケティング用マテリアルばっか、やってます(^^;)
投稿: Buckeye | 2008/07/01 18:15:37
Buckeye さん、コメントありがとうございます。
> 原文を一定範囲の定型文に限り、それに対応する各国語の定型文を用意
そういう試みはいつくかあるみたいですが、前途多難。特に、今はまだ原文ライティングの段階で足並みがとうてい揃わないようです。
> Webページやプレゼン資料、マーケティング用マテリアルばっか、やってます
私もそちらの比重がどんどん増えています。ぶっちゃけて言ってしまうと、純粋にローカライズ翻訳のほうが「楽にかせげる」んですけどね。
投稿: baldhatter | 2008/07/01 21:23:08
(エントリの内容に直接の関係はありません)
> 「楽にかせげる」
これ本当は「楽に稼げる」と書きたかったのですが、「稼」の字を NG ワードに設定していたので自分のコメントがスパム扱いされてしまいました。
以前、ishida さんのコメントを拒絶してしまったのも同じ原因だったようです。ご迷惑をおかけしました。
投稿: baldhatter | 2008/07/01 21:30:30
(エントリのないように ちょくせつ かんけい ないコメントです)
NG ワード、なかなか ゆうしゅう ですね(^^)。
きゅうきょくの NG ワード とっぱほうほう、おもいつきました。
ぜんぶ、ひらがな・・・。
こんなコメントですが、スパムとしないでください(^^)。
投稿: ishida | 2008/07/02 9:23:24
勉強になり、かつ耳が痛くなるようなお話です。
私は過去にメーカーのシステム開発部門でマニュアルを作成していました (元々は開発を少し→挫折)この時は、システムをほぼ理解し愛情を持ってマニュアル作りにはげめたのですが、今は、納期が厳しいし、他の翻訳者さんと表現を合わせないといけないし、システムの動作を頭の中でイメージするのにも限界があり、「うぅ。この子達 (ヘルプとかマニュアル) に申し訳ない。ごめんね」と思いながら納品してしまいます。
別の記事にもありますが、1つの単純な文でも幾通りもの表現があり、あれこれ考えるんですが、少し前の 100 パーセントマッチ (ノータッチ) のところはこういう表現をしているから、こちらも合わせなくっちゃと思うと、ほんとにジレマンマです。
その点、ホワイトペーパーはほぼ一人で訳すことができるので、難しいけど変なストレスはありませんね。
記事の趣旨から離れているかもしれませんが、なんだかな~の今日この頃です。
投稿: ぷーまま | 2008/07/02 10:14:58
> とっぱほうほう、おもいつきました。
たいへんよくできました。
投稿: baldhatter | 2008/07/02 13:37:37
> 「うぅ。この子達 (ヘルプとかマニュアル) に申し訳ない。ごめんね」
最近、それほど愛情を注げる子もすっかり少なくなりました。かわいそうだけど、生まれからしてどうしようもなかったり、よそ様のところですっかりグレてしまっていたり。
> 難しいけど変なストレスはありませんね
分野によって別のストレスも生まれますが、翻訳をしているという実感はありますね。
投稿: baldhatter | 2008/07/02 13:53:01