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2007.04.10

# 翻訳屋はネットの片隅で字幕屋本が変だと叫ぶ

しばらく休眠していた「字幕改善連絡室」が再稼働しています。原因は、"字幕屋さん" が書いたこの1冊。

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ

全体的には良質な本です。しかしながら、映画『ロード・オブ・ザ・リング』の字幕をめぐる記述には、

大きな誤謬もしくは誤解

があるので、ちょっと一言書いておきます。

本質的にはどんな情報伝達にも完璧は望めず、誤解や誤記は避けがたいものなのですが、少なくとも自分の専門分野については、
・不正確な情報把握
・誤った認識
・伝聞のみによる記述
は避けるべきでありましょう。

しかし、この本の筆者は映画『ロード・オブ・ザ・リング』の字幕をめぐる記述でその原則を忘れてしまった模様です(この本の他の箇所に類似の誤謬があるのかどうか、それは判断不可能。この筆者の轍を踏まないよう、小生も自分が責任をもって書ける範囲だけを指摘しています)。

大ヒット映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの字幕が原作小説ファンによって激しい非難の嵐にさらされたとき、その配給会社の制作部長は映画フィルムを丸々一本捨てる覚悟で、「原作ファンが求める字幕」を打ち込んでみせたそうだ。

これが、字幕改善運動に関する不正確な情報把握を露呈している最大の問題箇所。
当時は言うに及ばず、今でさえネットをちょっと調べれば、あの運動が

「原作小説ファンによる非難」などではなかった

ことはすぐに判ります。原作本の存在しない作品についても同趣旨の字幕改善運動が展開され、『キングダム・オブ・ヘブン』のときには約4,000名もの署名が集まったという事実も、ネットにその証跡が多々残されています。

すべての "字幕屋さん" が字幕改善の経緯や趣旨を理解していて当然などとゴーマンかますつもりはありませんけどね。少なくともあの流れが洋画配給業界にとって小さくはない出来事だった---このエピソードが後段で「伝説」と表現されていることこそ、その何よりの証左---、その「事の大きさ」は認識していてしかるべきでしょう。そして、それを認識していれば、今回の執筆に当たってその真相を改めて正しく把握しようという努力を惜しむべきではなかったはずです。

それとも、映画業界には今でも、あの一連の経緯を「原作小説ファンによる非難」だったと定義付けておかねばならない何かがあるのでしょうか。業界のことをここまで書いた太田氏でさえタブーとしなければならない何かが。

上記引用箇所には、もう一つ「伝聞のみによる記述」というエラーがあるわけですが、長くなったので稿を改めます。

03:02 午前 映画・テレビ 翻訳・英語・ことば |

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コメント

通りがかりで失礼いたします。
小さな「誤謬」かもしれませんが、「二の轍を踏む」はおかしいのではないでしょうか?
たとえブログであっても、翻訳関係者ならもう少し気をつけられた方がよろしいかと思います。

投稿: ひよこ | 2007/04/10 5:46:19

ひよこさん(連絡先のないのが残念です。通りがかりということでこれを目にすることもないかもしれませんが)、ご指摘ありがとうございます。
いつも自分がいろいろと人のあげ足をとっていながら、慣用句を誤って覚えていたようです。本文は訂正しました。

投稿: baldhatter | 2007/04/10 10:44:49

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