# Deja vu
唐突ですが、たまには本業に関係のあることを書きます。ふだん以上に「判らない人には判らない」話で恐縮です。
Idiom WorldServer という翻訳支援ツールがあります(厳密には、包括的なドキュメント管理プラットフォームであって、"翻訳支援ツール" という言い方は正しくないんですが)。Idiom 社のサイトはこちら。こんなニュース記事もあります。
リンク: サン・フレア、Idiom WorldServerの国内独占販売契約を締結 - TECHSCORE
さて、このプラットフォームにおけるデスクトップクライアント、つまり翻訳する人間が実際に使うアプリケーションは "WorldServer Desktop Workbench" という名前なのですが、これ、前進は "Deja vu" という名前のソフトウェアだったんでした。
翻訳支援ソフトというのは、過去の翻訳資産を「原文-訳文」ペアのデータとして蓄積しておき、現在の翻訳対象をそのデータと比較するというのが基本動作なわけですので、このソフトの命名はつまり、「この文は前に見たことがあるぞよ」という「既視感」をテーマにしていると察せられるわけです。
でも、現実のデジャブがほとんどの場合そうであるように、もし翻訳しているときのこの感じがただの錯覚だとしたら何の役にも立たないわけですね。そーゆー意味で、あんまり良いネーミングではなかったのだなと思います。
以上、CSN&Yの名盤 "Deja vu" をかけようとしてふと思った翻訳話でした。
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コメント
バージョンアップの盛んなマニュアルにWorldServerを使うのはありかなーと思いますけど、個々の案件が毎回異なるような翻訳(契約書とか特許とか医薬とか)にまではデジャブといかない気がします。どうなんでしょうね。
IdiomはSYSTRANと組んでいるので、機械翻訳をさりげなく組み合わせるつもりでしょうけど、品質はめちゃくちゃになると思います。
投稿: 通りすがりのローカライズ屋 | 2007/10/26 0:17:40
おお、同業者さんがお通りになったようで。
> 個々の案件が毎回異なるような翻訳
その手の翻訳の場合、Idiom(Deja vu)に限らずメモリベースの翻訳支援ソフトはすべて基本的に不向きです。ただし、どんな文章でも一定の定型句はあるので、部分的に活用することはできます(契約書などでも、定番の表現があってそれに対する定訳がありますよね?)。
現行のIdiomは、そういう部分的な一致の検索が不得手です。
投稿: baldhatter | 2007/10/26 1:11:16
IdiomはSDLに買われてしまったので
WorldServerとDesktopWorkbenchの開発は停止しました。
クライアントから指示があるのでなければ
いまさらIdiomの上で作業するのもなんだかなあ、という感じです。
投稿: | 2008/05/17 11:32:29
(お名前がありませんが)コメントありがとうございます。
> IdiomはSDLに買われてしまったので
な、な、なんと...今年 2 月のことだったのですね。ちっとも知りませんでした。この買収で、いっそ Idiom なんてなくなってくれるといいんですけど。
投稿: baldhatter | 2008/05/17 13:28:22