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2005.07.14

# 松崎氏の再投稿

東宝東和(株)制作室の松崎忍氏(今回はフルネームだ)、先の投稿に対する多数のコメントを受けて再登場です。最後にちゃんと、

> 東宝東和の映画にも誤訳、映画を見誤った字幕があるやもしれません。万が一、そうした事例に
> お気付きになりましたら、ぜひお知らせください。直せるかぎりは直せるところで直してまいります。

と宣言しちゃうことからしても、ご本人は適度なポリシーをもって本当に誠実に仕事をなさっているんだろうと思う---「直せるかぎりは直せるところで」というところに巧みな予防線も感じるけどね---。だからどうしても、自分のポリシーや仕事は擁護したくなるんだろう、その気持ちはよーく分かる。

が残念ながら、今回の投稿もまた多くの反論・反感を引き出すことにしかならない(これもそうだけど)、ということにご本人は気づいていない模様。

松崎氏の業界擁護論がどうやっても破綻してしまう原因は、彼が「個人の誠実な職業観をベースにして業界全体を擁護しようと試みている」点にあるのだろう。

「1人芝居のQ&A(DAY-9)」の内容が事実に反すると、松崎氏はほとんど義憤に駆られているかのように主張する。氏の観点ではそうなのかもしれない。だが、業界諸氏が今考えねばならないことは、落合氏がなぜ「妄想です」と前置きしてまであれを書かねばならなかったのかという、そのことではないか。そして、映画字幕の動向に注目している多くのファンには、あの記事の内容が事実と思えるほど当たり前の「イメージ」になっているという、その現象ではないか。事実がどうあれ企業が顧客に与える「イメージ」がいかに重要であるかなど、ここで説くまでもないはずなのだが、松崎氏は自身の仕事に信念を持っているがゆえに、そんな単純なことも見えにくくなっているように思う。

そのような業界イメージを作り出してしまった責任が映画業界全体や映画翻訳家協会にあるとすれば、落合氏のあの記事を「謂れのない汚名」として一蹴することはけっしてできないだろう。

そういえば、翻訳家協会についてマイナスイメージがつきまとうのは、他ならぬ同協会の会員その人の言動にも原因の一端があるという話をあげておこう。「字幕翻訳というのは常にスケジュールがタイトで大変なのよ」とインタビューに応じる同じ人物が、「字幕製作者が増えないのは今の人数で十分だから」と答えているのだそうだ。どうやら、字幕制作の現場とは、一般物理常識が通用しない世界のようだ(と、小生ならこの程度の揶揄で済むところだが、同じ世界で生きてきた落合氏にとって、事態はもっと切実であるに違いない)。

さて、後半では松崎氏の字幕制作に関するポリシーが前回より具体的に展開されるわけだが、ここでも氏の論理はあっさりと破綻している。自分のポリシーと現実認識に大きなズレがあるせいで、ちゃんとした論旨はあるのに、それを支えるべき事例の選択を大きく誤っている---まるで、悪い論文の見本市みたいだな---。

>「透明な字幕」なんてものは有り得ません
> その映画の本質を直感的につかみ取っていく力の大小(あるいは有無)が、字幕翻訳家の「上手さ」

いちいちごもっとも。

> 「面白さを1つでも多く伝えたい」

異論はあるかもしれないが、これも立派に一つのポリシーだ。

そこへ、「上手い」字幕の代表例として戸田氏を挙げたのでは、論旨と例示がまったく呼応してないわけで、いくら筆を費やしてもせっかくの字幕論に説得力が微塵もなくなってしまう。戸田氏の字幕をもし本当に上手いと思っているのなら、氏の字幕論自体が成立しないことになる。本当は上手いと思っていないのなら、氏の字幕論の事例として引くことが誤り。いずれにしても、「はじめに戸田ありき」の論理では、破綻するのは当然すぎるくらい当然。そのことに、ご本人は気付いていない様子。

「透明な字幕」どころか、あまりに濃厚に翻訳家の色が付きすぎている。「映画の本質を直感的に」つかんでいない、むしろ歪めている。ファンはそう糾弾しているのです。そして、それよりはるか以前の問題として「辞書くらい引けばいいのに」と呆れているのです。

もし気付いていてなお、「そんなことはない、上手い字幕だ」と主張なさるのだとしたら、それは「素人は口を出すな」式の、業界人の傲慢に過ぎないのですが、

> 字幕制作に携わる者としては、いっそう身を引き締めてみずからの仕事に取り組むだけです。

こう述べる松崎氏の言葉に嘘はないのでしょう。それだけになお一層、彼の論理の空回りだけが、いっそ業界人の悲哀を感じさせるのでした。

02:41 午前 翻訳・英語・ことば |

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