# install と installation
installation という用語に困らされることが多い。
動詞 install から派生した名詞なんだから、普通の訳語はもちろん「インストール」。「インストレーション」とされる場合もあるが、意味するところは同じで、アプリケーションをシステムに組み込むという「行為、作業、プロセス」のことだ(ちょっと古いと「導入」なんて訳されることもある)。Wikipedia などでも、普通はこんな定義になっている。
Installation is the process of putting a program in a computer system such that the program works as desired.
ところがドッコイ。実際の英文では、「行為、プロセス」の意味では通用しないケースも頻繁にあるのだった。たとえば、こんな英文が実在する。
Large installations may have many application server installations...
「大規模なインストールには多くのアプリケーション・サーバー・インストールがあり〜」
How to install Multiple Installations of iAS...
「iASの複数のインストールをインストールする方法」
判る人には判るのかもしれないが、installation は「行為、プロセス」ではなく「インストールした先、インストールした環境」を表しているわけでした。ところが、各種の専門辞書やネットを検索しても、このような定義はほとんど見つからない。ネットで今のところ見つかっているのは、IBMの用語集ページくらいで、ここではちゃんと、
installation: インストール,インストール済み環境 [インストール後のシステム環境を指す場合],取り付け
と定義されている。さすが Big Blue、パチパチパチ。
つまり上にあげた例文は、それぞれ「大規模なインストール環境には、多くのアプリケーション・サーバーがインストールされている」、「iASを複数のインストール先にインストールする」ということになるわけですね。
翻訳上の注意点としてまとめるなら「抽象名詞は意味の範疇に気をつけよう」ということでしょうか。この点、辞書も役に立たないことがたびたびあります。
ところで、install と installation の関係は、live a happy life とか die a dog's death という成句に見られる live - life、die - death という関係、つまり同族目的語に類するのでしょうね。だから、installation を「インストール」と訳したのではよろしくない。ちょうど「犬死を死ぬ」とは訳せないのと同じことのようなのでした。
この記事へのコメントは終了しました。
コメント